マンション管理士

修繕積立金が不足したらマンション管理士に相談すべき? 対策の進め方と依頼できること

長期修繕計画を確認したところ、数年後には修繕積立金が足りなくなることが分かった。さらに管理会社から大幅な値上げ案まで提示されると、理事長や理事としては「この提案をそのまま総会へ出してよいのだろうか」と迷うでしょう。

必要な修繕を先送りすれば、建物の劣化が進み、将来の工事費がかえって増える可能性があります。一方で、修繕積立金を大きく引き上げれば、区分所有者の生活へ直接影響するため、単純に「足りないから上げればよい」と割り切れる問題でもありません。

結論からいえば、修繕積立金が不足したからといって、必ずマンション管理士へ依頼しなければならないわけではありません。

管理会社から不足原因や値上げ額の算定根拠について十分な説明を受け、理事会自身が工事内容や複数の資金対策を比較し、なぜその案を選ぶのか区分所有者へ説明できるのであれば、そのまま検討を進められる場合もあります。

反対に、管理会社から大幅な値上げ案だけを示されている場合や、長期修繕計画や工事費の妥当性を理事会だけでは判断できない場合、借入や一時金を含めた別案を比較したい場合には、マンション管理士など第三者へ相談する意味が大きくなります。

つまり、相談するかどうかを分けるのは「修繕積立金が不足している」という事実だけではありません。

理事会が不足した理由を理解し、複数の選択肢を比較したうえで、その判断を住民へ説明できる状態になっているかが一つの基準になります。

理事会として苦しいのは、「建物を守らなければならない」という責任を感じながら、同時に住民へ負担を求める立場にもなることではないでしょうか。必要性は理解していても、自分たちだけで数千円の値上げや数十万円の一時金を決めることには不安が残ります。

だからこそ、最初から値上げの賛否を決めるのではなく、現在地を確認し、不足した背景を整理し、工事内容と資金対策を比較していく順番が重要になります。

この記事では、修繕積立金不足が判明した管理組合が何を確認し、どのような状態ならマンション管理士への相談を検討したほうがよいのかを、理事会と総会での合意形成や再発防止まで含めて詳しく解説します。

TABLE OF CONTENTS
目次

修繕積立金不足でマンション管理士に相談すべきか

まずは、自分たちの管理組合がどの段階にいるのかを確認してみましょう。

マンション管理士への相談価値が高くなるのは、単純に「資金が足りないとき」ではなく、管理組合の中だけでは判断に必要な材料がそろわないときです。

現在の状況 相談の考え方
管理会社から不足原因と計算根拠の説明を受けて理事会でも理解できている 直ちに外部相談が必要とは限りません
大幅な値上げ案だけが提示されている 別案を含めた第三者確認を検討する意味があります
長期修繕計画が古く工事費の根拠も分からない 計画そのものの検証を検討します
値上げと一時金と借入のどれを選ぶべきか判断できない 長期収支を比較できる専門家への相談が考えられます
理事会内や住民間で意見が大きく分かれている 第三者による論点整理が役立つ可能性があります
大規模修繕まで1年から3年程度しかない 資金対策と工事内容の検証を並行して進める支援を検討します
工事仕様や劣化状態そのものを判断したい マンション管理士だけでなく建築士など技術専門家も検討します

ここで注意したいのは、マンション管理士へ相談すれば値上げを避けられると考えないことです。

第三者が検証した結果、管理会社から提示された値上げ額に合理性があると分かる場合もあります。それでも、理事会が根拠を理解したうえで値上げを選ぶことと、提示された数字を評価できないまま受け入れることでは、管理組合としての意思決定の意味が違います。

マンション管理士へ相談する目的は、理事会に代わって結論を決めてもらうことではありません。

管理組合自身が結論を選べる状態をつくることにあります。

修繕積立金が不足していると分かったら最初に確認すること

長期修繕計画の資金収支で将来残高がマイナスになっていたり、目前に迫った大規模修繕工事の見積額に対して資金が足りなかったりすると、理事会では値上げ額の話が先に出やすくなります。

不足するのであれば、早く積立額を引き上げたほうがよいという考え方自体には合理性があります。しかし、原因を確認せず金額だけを増やすと、一度値上げしたにもかかわらず、数年後に再び不足が判明することも考えられます。

最初に把握したいのは、現在いくら残っているのかという一点だけではありません。

長期修繕計画では現在いくら残っている予定だったのか、実際にはいくら残っているのか、その差がいつどのような理由で生まれたのかまで確認します。

計画残高と実際の修繕積立金残高を照合する

まず、長期修繕計画上の現在残高と、貸借対照表などから確認できる実際の修繕積立金残高を比較します。

仮に計画では現在8,000万円残っている予定だったのに、実際には6,500万円しかないのであれば、その1,500万円の差がどこから生じたのかを調べます。

過去の大規模修繕工事が想定額を上回った可能性もあれば、漏水事故や設備故障などの計画外工事で修繕積立金を取り崩したことも考えられるでしょう。また、計画上では修繕積立金を増額する予定だったものの、実際には改定されず、収入側で差が広がっているケースもあります。

この確認を行う目的は、過去の理事会や住民を責めることではありません。

当時は必要な修繕を優先したのかもしれませんし、区分所有者の生活負担を考えて値上げを見送った事情もあったでしょう。

過去の判断を裁くのではなく、現在の計画と現実がどこから離れたのかを把握することが目的です。

管理費会計も一緒に確認する

修繕積立金不足を調べる際には、修繕積立金会計だけではなく、管理費会計にも目を向けます。

管理費会計には、管理委託費、清掃費、設備保守費、共用部分の水道光熱費など、日常管理を支える支出が含まれています。

毎年度の決算が黒字だからといって、必ずしも財務的に余裕があるとは限りません。

予定していた小修繕や保守を実施しなかったために一時的な黒字となっている場合や、駐車場使用料など特定の収入へ強く依存しているケースもあります。

また、管理費と修繕積立金が適切に区分して経理されているかも確認します。現行の管理計画認定制度でも、管理費と修繕積立金等について区分経理が行われていることなどが認定基準に含まれています。

会計資料が作られていることと、管理組合が自分たちの財務状態を理解できていることは同じではありません。

どこから資金が入り、何に使われ、現在いくら残り、この先何に必要となるのかを一つの流れとして捉えることが重要です。

滞納額と実際に使える資金を確認する

長期修繕計画では毎月の修繕積立金が予定どおり入る計算になっていても、実際には未収金が発生していることがあります。

そのため、徴収予定額だけではなく、実際の入金状況や滞納割合まで確認します。

これは現在の資金状態を知るためだけではありません。

将来、借入を検討する場合にも影響します。

住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資」では、管理費と修繕積立金が区分経理され、適正に保管されていることに加え、修繕積立金が1年以上定期的に積み立てられ、滞納割合が原則10%以内であることなどが条件として示されています。

工事直前になってから「不足分は借りればよい」と考え、そこで条件を満たせないと分かれば、資金計画を急いで組み直さなければなりません。

早い段階で滞納状況を確認しておくことには、将来使える選択肢を残す意味もあります。

修繕積立金が不足する主な原因

修繕積立金不足が判明すると、「そもそもの積立額が低すぎたのではないか」と考えたくなるかもしれません。

しかし実際には、収入側と支出側の双方に原因があり、いくつかの小さなずれが10年や20年をかけて積み重なった結果として不足が表面化することがあります。

原因を整理する目的は、過去の管理方法を批判することではありません。

現在の条件に合わなくなっている部分を探し、これから何を修正するべきかを判断するためです。

工事費が長期修繕計画の想定を上回っている

長期修繕計画では、作成時点で把握できる工事価格などをもとに将来の修繕工事費を推定します。

その後に資材価格や労務費が上昇すれば、同じ内容の工事でも実際の発注価格は増えます。

以前の長期修繕計画では大規模修繕工事を1億5,000万円程度と想定していたものの、現在の概算では2億円近く必要になるような場合には、積立そのものは計画どおりでも資金不足が起こり得ます。

こうしたとき、区分所有者から「今まできちんと払ってきたのに、なぜ足りないのか」と聞かれるのは自然でしょう。

その疑問へ答えるには、「工事費が上がったからです」と説明するだけでは十分ではありません。

過去の推定工事費と現在の概算額を比較し、何がどの程度変化したのかを示すことで、初めて不足の背景が見えるようになります。

段階増額積立方式の増額が計画どおり進んでいない

段階増額積立方式では、当初の修繕積立金を抑え、将来に向けて段階的に増額します。

問題になりやすいのは、長期修繕計画では増額を予定していたにもかかわらず、実際には総会で何度も先送りされている場合です。

値上げを見送った当時には、高齢世帯の負担を心配したり、大規模修繕を終えた直後で「しばらくは大きな支出がない」と考えたりした事情があったかもしれません。

その時点では理解できる判断だったとしても、本来入る予定だった収入が数年間入らなければ、将来残高との差は次第に大きくなります。

国土交通省は2024年6月7日のガイドライン改定で、将来にわたり安定的に修繕積立金を確保する観点から均等積立方式が望ましいとしています。また段階増額積立方式については、均等積立方式とした場合の月額を基準額とし、計画初期の額を0.6倍以上、計画最終時の額を1.1倍以内とする考え方を示しました。

ただし、この倍率を満たせば個別マンションの積立額が必ず十分になるという意味ではありません。

実際の工事項目や設備構成を反映した長期収支と照らし合わせて判断します。

長期修繕計画が現在の条件に合わなくなっている

長期修繕計画は、30年先までの工事を一度決めたら変更しない工程表ではありません。

建物や設備の劣化状況、工法、材料、物価、工事価格、金利などには不確定な要素があるため、現実とのずれを定期的に確認する必要があります。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、建物や設備の劣化状況などを踏まえ、5年程度ごとに長期修繕計画を見直し、修繕積立金の額も併せて見直す考え方が示されています。(国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン)

ここで混同しやすいのが、管理計画認定制度における「7年以内」という基準です。

5年程度という期間は、長期修繕計画作成ガイドライン上で、建物状態や工事価格などの変化を計画へ反映するための見直し周期として示されているものです。

これに対して現行の管理計画認定制度では、より正確には、長期修繕計画の作成または変更に係る集会つまり総会の議決日が、認定申請日以前7年以内であることが確認されます。

したがって、5年と7年は同じ要件を別の言葉で表したものではありません。

管理計画認定を取得しているかどうかにかかわらず、工事価格や建物状態が変化しているなら、長期修繕計画を現在の条件へ近づけていくことが必要でしょう。

高額設備の更新費が不足を大きくしている

大規模修繕という言葉から、外壁塗装や屋上防水を中心に考えてしまうことがあります。

しかし築年数が進めば、給排水設備、エレベーター、消防設備、インターホンなどの更新も必要になります。

こうした設備工事は一件当たりの費用が大きく、長期修繕計画への反映が不十分であれば、外壁や防水の大規模修繕を終えた数年後に再び資金不足が発生することも考えられます。

次回の工事を乗り切れるかだけでなく、その先に控える高額設備の更新まで含めて将来収支を見ることが必要です。

機械式駐車場の維持費と収入が計画からずれている

機械式駐車場があるマンションでは、設備の修繕費と駐車場使用料収入の双方を確認します。

長期修繕計画を作成した当時には高い利用率を想定していたものの、その後に自動車を持たない世帯が増え、空き区画が増えていることがあります。

利用者が減れば収入は下がりますが、設備を維持する限り保守費や更新費まで同じ割合で減るとは限りません。

このような状態では、修繕積立金をいくら増やすかだけではなく、現在の規模の機械式駐車場を今後も維持するのかという設備計画そのものが論点になります。

計画外工事が積み重なっている

漏水や給水ポンプの故障など、長期修繕計画では予定していなかった工事が発生することもあります。

一件ごとの金額は大規模修繕ほど高額ではなくても、何度も繰り返されれば修繕積立金残高へ影響します。

同じ設備で不具合が続いているなら、小修繕を繰り返すより、本格的な更新を長期修繕計画へ組み込んだほうがよい場合もあるでしょう。

過去の修繕履歴を確認するのは、単に昔の出来事を記録するためではありません。

将来の支出計画を、実際の建物に近づけるためでもあります。

国土交通省の目安だけで不足と断定しない

国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」では、建物規模などに応じた修繕積立金の参考値が示されています。

ただし、参考値より低いという理由だけで、直ちに「このマンションは不足している」と判断することはできません。

機械式駐車場の有無、設備構成、現在残高、過去の修繕履歴などによって必要額は変わるからです。

反対に、平均的な水準を上回る修繕積立金を徴収していても、大規模な設備更新が重なれば不足することがあります。

公的な目安は合否判定ではなく、自分たちの積立水準に疑問を持ったときの比較材料として利用します。

修繕積立金が不足した場合に考えられる対策

不足原因を整理したら、次に対策を比較します。

この段階で「どうすれば値上げをしなくて済むか」だけを目的にしてしまうと、問題を数年後へ送り、大きな負担として戻ってくる可能性があります。

収入を増やす方法と支出を適正化する方法を組み合わせながら、必要な修繕を継続できる状態を目指します。

修繕積立金を値上げする

毎月の修繕積立金を引き上げる方法は、構造的な資金不足を改善する基本的な対策です。

次回工事まで5年や10年と時間があるなら、早い時期から積立額を調整することで、工事直前に大幅な値上げや一時金が必要となる可能性を下げられます。

一方、区分所有者から見れば固定支出が増えます。

月額5,000円の増額であっても年間では6万円となり、住宅ローンや教育費、老後の生活費など、それぞれの家計事情によって受け止め方は変わるでしょう。

そのため、「必要なので月5,000円上げます」と結論だけを示すより、現在の額を維持した場合の将来残高と比較して説明するほうが納得につながりやすくなります。

一時金を徴収する

工事時期が近く、月額の値上げだけでは必要額へ届かない場合には、一時金を徴収する方法があります。

借入とは異なり利息負担を避けられるため、管理組合全体で見れば総負担を抑えられる可能性があります。

しかし、一時金では区分所有者の負担が短期間へ集中します。

一戸当たり30万円や50万円を求める場合、その金額をすぐ準備できる世帯ばかりとは限りません。

住民が反対する背景には、「修繕したくない」という考えではなく、「必要性は理解しているが一括では支払えない」という現実的な事情が隠れていることもあります。

一時金を検討する際には、管理組合全体の財務合理性だけでなく、実際に区分所有者が負担できる方法なのかも考える必要があります。

借入を利用する

管理組合が借入を利用すれば、高額な一時金を避けながら必要な工事を進められる場合があります。

ただし、借入によって資金不足そのものが消えるわけではありません。

現在必要な工事費を先に調達し、その後の修繕積立金から元金と利息を返済します。

そのため、「いくら借りられるのか」だけでなく、返済を続けながら次の設備更新に必要な資金を確保できるのかまで確認しなければなりません。

借入は不足をなくす魔法ではなく、負担する時期を分散する方法と考えるほうが適切です。

工事内容と修繕周期を見直す

資金不足が分かると収入を増やす方法へ意識が向きますが、工事内容や工事時期にも検討余地がないか確認します。

長期修繕計画に記載された年度は、建物状態に関係なく必ずその年に工事しなければならないという意味ではありません。

調査や診断の結果、状態が良好であれば一部工事を延期できる可能性があります。反対に、劣化が想定以上に進んでいる部分は前倒しが必要になるでしょう。

また、同じ足場を使用できる工事をまとめて実施することで、長期的な支出を抑えられる場合もあります。

ただし、資金不足を理由として、防水や安全に関係する必要な工事を安易に先送りすることは避けるべきです。

建物の物理的な状態については、必要に応じて建築士や設備専門家の技術的判断を加えます。

見積条件と発注方法を確認する

複数の工事見積もりを比較するときには、総額だけではなく条件がそろっているかを確認します。

材料、数量、工事範囲、保証内容が違えば、金額だけを並べても適切な比較にはなりません。

資金不足が分かると、最も安い見積もりを選びたくなるかもしれません。

しかし、必要な項目が抜けた低価格の見積もりであれば、工事開始後に追加工事が発生し、最終的な支出が大きくなる可能性があります。

比較できる条件を整えたうえで、費用と必要な品質の両方を判断します。

補助制度を確認する

耐震、省エネルギー、バリアフリーなどの工事内容によっては、国や自治体の補助制度を利用できる可能性があります。

ただし、対象条件、受付期間、予算は制度ごとに異なります。

補助金が必ず入る前提で不足を解消したことにするのではなく、基本の資金計画を作ったうえで、負担を軽減できる選択肢として利用可能性を調べるほうが安全でしょう。

値上げ 一時金 借入の違い

値上げ、一時金、借入にはそれぞれ異なる性質があります。

どれが最も優れているかではなく、現在と将来のどこへ負担を置くのかを比較して判断します。

対策 主なメリット 主な注意点 向いている状況
月額値上げ 長期的な資金基盤を改善しやすい 工事直前の大幅不足には間に合わない場合がある 工事まで数年以上あり構造的な不足がある
一時金 短期間でまとまった資金を確保できる 一世帯への負担が一時期に集中する 工事が近く不足額が比較的限定されている
借入 高額な一時負担を時間的に分散できる 利息と将来の返済負担が発生する 工事延期が難しく手元資金が足りない
工事見直し 必要資金そのものを適正化できる可能性がある 必要工事の安易な延期は建物劣化につながる 工事内容や時期に見直し余地がある

実際には、一つの方法だけを採用するとは限りません。

月額を引き上げながら不足する一部を借り入れたり、工事内容を精査したあとに残る不足分だけを一時金で補ったりすることも考えられます。

比較する際には目の前の負担だけでなく、それぞれの案を採用した場合に10年後や20年後の修繕積立金残高がどうなるのかまで確認します。

住宅金融支援機構のマンションすまい・る融資

管理組合が共用部分の修繕資金を借り入れる場合には、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る融資」が選択肢の一つになります。

マンションすまい・る融資は、「マンション共用部分リフォーム融資」の愛称です。

2026年8月確認時点の住宅金融支援機構の案内では、管理費と修繕積立金が区分して経理され、適正に保管されていることに加え、修繕積立金が1年以上定期的に積み立てられ、滞納割合が原則10%以内であることなどが条件とされています。

毎月の返済額は、毎月徴収する修繕積立金額の80%以内とされています。滞納割合が10%を超えて20%以内の管理組合では、一定の条件を満たしたうえで60%以内とする必要があります。

返済期間は原則1年以上10年以内ですが、一定の工事を行う場合には20年以内とすることができ、耐震改修、浸水対策、省エネルギー対策のいずれかを行い、マンション管理計画認定を取得している場合には35年以内とできる仕組みがあります。

ただし、借入には審査があるため、条件を満たしていれば必ず希望額を借りられるという意味ではありません。

また住宅金融支援機構は、工事が完了している場合には申込みできないと明記しています。原則は融資承認通知書を受け取ってから着工しますが、やむを得ず着工した場合でも、工事完了前であれば申込みを受け付けられる場合があります。

工事直前になって慌てて調べるのではなく、借入を選択肢に含める可能性があるなら、早い段階で利用条件を確認しておいたほうがよいでしょう。

マンション管理士へ相談したほうがよいケース

修繕積立金不足が見つかったすべてのマンションが、外部専門家へ依頼する必要はありません。

ただし、理事会自身が判断理由を説明できない状態になっているなら、マンション管理士など第三者へ相談する価値は高まります。

大幅な値上げ案だけを提示されている場合

管理会社から大きな修繕積立金の値上げを求められたものの、値上げ以外の選択肢が示されていない場合です。

値上げ幅を抑えた場合にはどの年度で不足するのか、借入を組み合わせた場合には将来残高がどう変化するのか、工事内容や時期を再検討する余地があるのかまで確認します。

値上げすること自体が問題なのではありません。

理事会が、その値上げ額になった理由を説明できないまま決めてしまうことが問題です。

大規模修繕工事まで時間がない場合

次回の大規模修繕工事まで1年から3年程度しかなく、大きな不足が分かった場合には、限られた期間で複数の検討を並行して進める必要があります。

工事費を確認しながら借入可能性を調べ、修繕積立金の増額や一時金を比較し、区分所有者への説明と総会議案の準備まで行わなければなりません。

理事会役員は通常、自分の仕事や家庭生活を続けながら管理組合業務を担っています。

専門知識が必要な判断が短期間に重なると、「もう管理会社へ全部任せたほうが早い」と感じることもあるでしょう。

そのような状況では、意思決定そのものを丸投げするのではなく、論点整理や検討の進行を専門家に支援してもらう方法があります。

理事会や住民の意見が大きく割れている場合

修繕積立金の値上げをめぐって意見が割れると、「修繕したい側」と「お金を払いたくない側」という単純な対立に見えることがあります。

しかし、反対する住民が修繕そのものを不要だと思っているとは限りません。

値上げ額の根拠が見えないことに不安を感じている人もいれば、高齢世帯なら今後の生活費、子育て世帯なら住宅ローンや教育費への影響を心配していることもあります。

一方の理事会にも、「このまま先送りすれば建物が傷む」という焦りがあります。

双方がそれぞれの不安を抱えたまま金額だけを議論しても、話はかみ合いにくいでしょう。

第三者が不足した背景と選択肢を整理することで、「賛成か反対か」という対立から、「どの方法なら今後も建物を維持できるか」という議論へ戻しやすくなる場合があります。

工事内容や見積額に確信を持てない場合

大規模修繕の見積額が大きく、理事会に建築や契約について詳しい人がいない場合にも外部相談を検討できます。

特に外壁や防水だけでなく、給排水設備やエレベーターなどを含む複合工事では、財務面と建築面の双方を確認する必要があります。

マンション管理士へ管理組合側の判断整理を依頼し、物理的な劣化状態や設計などについては建築士や設備専門家へつなぐ体制も考えられます。

長期修繕計画そのものを見直したい場合

今回不足する工事費だけを補っても、その数年後の設備更新で再び不足するのであれば根本的な改善にはなりません。

長期修繕計画、修繕周期、積立方式、将来収支まで含めて見直したい場合にも、第三者へ相談する意味があります。

マンション管理士に相談できること

マンション管理士へ相談する目的は、管理会社の提案を否定してもらうことではありません。

管理組合が自分たちで判断できる状態をつくることです。

修繕積立金不足の原因を整理する

長期修繕計画、決算書、修繕履歴などを確認し、不足した原因を整理する支援を依頼できる場合があります。

現在の積立額だけを見るのではなく、計画時と現在の工事価格の差、予定していた増額の実施状況、計画外修繕、高額設備の更新、駐車場収入などを横断して確認します。

同じ3,000万円の不足でも、積立額が低かった場合と工事価格の上昇が主因だった場合では、取るべき対策も区分所有者への説明も異なります。

長期修繕計画を第三者の視点から確認する

管理会社などが作成した長期修繕計画について、必要な工事項目が含まれているか、修繕周期の考え方に無理がないか、推定工事費の根拠を確認できるか、どの年度で資金が不足するのかを整理します。

第三者検証は、管理会社の間違いを探すことだけが目的ではありません。

理事会が計画の内容を理解し、疑問点を確認したうえで管理組合自身の判断として承認するための作業です。

複数の資金計画を比較する

依頼内容によっては、修繕積立金の増額、一時金、借入などを組み合わせた複数の長期収支を比較する支援も考えられます。

たとえば借入を利用せず積立額を大きく増やす案と、一部を借り入れて現在の負担を平準化する案では、現在と将来の負担配分が変わります。

数字を同じ条件で比較できれば、理事会としても「この方法しかありません」と説明するのではなく、「複数案を比較した結果としてこの方法を選びました」と説明できます。

理事会と住民説明を支援する

マンション管理士には、理事会で検討すべき論点の整理や、住民説明資料、想定される質問の整理などを相談できる場合があります。

専門家が住民を説得することが目的ではありません。

理事会が判断した理由を、自分たちの言葉で説明できるようにするための支援と考えるほうが適切です。

建築士などが必要になる業務を切り分ける

マンション管理士という資格だけで、外壁の詳細な劣化調査、配管内部の調査、改修設計、精密な数量積算、工事監理などの専門技術業務まで当然に担えるわけではありません。

建物の物理的な状態を判断する必要があれば、建築士や設備専門家などとの連携が必要になることがあります。

誰に頼むかを最初に決めるのではなく、何を判断したいのかを明確にしたうえで依頼先を選ぶことが重要です。

管理会社への相談とマンション管理士への相談の違い

修繕積立金が不足したとき、最初に管理会社へ相談することには十分な意味があります。

管理会社は日常管理に関わっているため、現在の会計状況、未収金、設備故障、過去の修繕履歴などを把握している場合が多いからです。

管理会社には提案の根拠を確認する

管理会社から長期修繕計画や値上げ案を提示されたら、工事費をいくらと想定しているのか、何年後に資金が不足するのか、値上げ額をどのような計算で求めたのかを確認します。

管理会社が持っている情報を十分に利用しないまま、最初から別の専門家へ任せる必要はありません。

まず説明を受け、理事会で理解できる部分と理解できない部分を整理します。

マンション管理士には別の判断軸を求める

管理会社から説明を受けても、その提案が唯一の方法なのかを理事会だけでは判断できない場合があります。

そのようなときにマンション管理士へ相談し、管理組合側の意思決定に必要な情報を整理します。

管理会社とマンション管理士を敵対させる必要はありません。

管理会社への相談とマンション管理士への相談の違い 管理会社 管理会社から日常管理の情報を得ながら マンション管理士 マンション管理士が別の視点から資金計画や判断過程を確認し 建築士など 技術上の専門判断は建築士などへつなぐ形も考えられます。
管理会社から日常管理の情報を得ながら、マンション管理士が別の視点から資金計画や判断過程を確認し、技術上の専門判断は建築士などへつなぐ形も考えられます。

ただし、管理会社にもマンション管理士にも事業者ごとの業務範囲や報酬構造があります。

工事受注や施工会社紹介との関係があるのかなど、具体的な利害関係は依頼時に確認しておいたほうがよいでしょう。

相談前チェックリストと準備しておきたい資料

専門家へ相談するためだけに資料を集める必要はありません。

まず理事会自身が現在地を理解するために資料を確認し、その結果として判断できない部分を専門家へ持っていくという順番で考えると整理しやすくなります。

確認すること 主な資料 理事会で見るポイント
計画上の修繕積立金残高 長期修繕計画 現在いくら残っている予定だったか
実際の修繕積立金残高 貸借対照表 決算書 計画との差はいくらあるか
管理費会計 決算書 予算書 継続的な赤字や特定収入への依存がないか
未収金 未収金一覧 決算書 滞納額や滞納割合が増えていないか
積立方式 長期修繕計画 総会資料 均等積立か段階増額か
過去の値上げ 総会議事録 計画した増額が実施されたか
過去の工事 修繕履歴 工事契約書 計画外工事や予算超過がなかったか
今後の工事 長期修繕計画 高額工事が同時期に集中していないか
最新工事費 概算書 見積書 古い計画額との差がどの程度あるか
建物状態 点検報告書 劣化診断資料 工事時期を見直せる部分があるか
高額設備 設備資料 長期修繕計画 給排水設備やエレベーターや駐車場などが計上されているか
管理会社の提案 提案書 値上げ額や長期収支の算定根拠が分かるか
必要な総会手続 管理規約 金額変更や借入に必要な手続を確認できるか

すべての資料がそろっていなくても構いません。

この確認を進めた結果として、「この数字だけ根拠が分からない」「過去の工事資料が残っていない」という事実が判明することも、現状把握の一部です。

分からないことが明確になれば、専門家へ何を尋ねるべきかも具体的になります。

マンション管理士は資料をどう確認するのか

資料の名前だけを並べても、マンション管理士へ何を見てもらうのかは分かりにくいでしょう。

専門家へ相談するときに重要なのは、一枚ずつ資料を読むことではなく、資料同士のつながりを確認することです。

たとえば長期修繕計画では現在8,000万円残っている予定なのに、決算書では6,500万円しかないとします。

そこで修繕履歴を調べたところ、計画外の給水設備工事へ800万円を使い、前回の大規模修繕では当初予算より500万円多く支出しており、さらに予定されていた修繕積立金の増額も一部実施されていなかったとします。

このように長期修繕計画、決算、修繕履歴、議事録をつなげれば、「1,500万円少ない」という結果だけではなく、「なぜ1,500万円少なくなったのか」という背景まで説明できます。

さらに現在の工事見積もりを重ねれば、過去に発生した差と、これから必要になる工事費の増加を分けて考えられるでしょう。

マンション管理士へ相談する価値は、資料を代わりに読んでもらうことだけではありません。

バラバラに存在している情報を、理事会が判断できる形へ組み直していくところにもあります。

理事会と総会で合意形成するときのポイント

修繕積立金の値上げや借入は、数字が正しければ自動的に賛成を得られるわけではありません。

区分所有者が知りたいのは最終的にいくら払うのかだけではなく、なぜ不足し、なぜその対策を選んだのかという過程です。

不足額だけではなく不足した背景を説明する

総会資料に「3,000万円不足するため値上げします」とだけ書かれていれば、住民は「なぜ今まで気づかなかったのか」と感じるかもしれません。

以前の長期修繕計画ではどの程度の工事費を想定していたのか、その後に工事価格や設備更新費がどう変化したのか、計画していた値上げが実施されてきたのかまで示せば、現在の不足へ至った流れを理解しやすくなります。

過去の判断に問題があった場合も、責任追及だけで終わらせるのではなく、現在どの部分を修正する必要があるのかまで説明します。

複数案を比較したうえで推奨案を示す

値上げ案一つだけを提示すると、「なぜ借入を検討しなかったのか」「工事内容は見直したのか」という疑問が残ります。

そこで、借入を使わず積立額を大きく増やす案、借入を利用して負担を平準化する案、工事内容を精査したうえで資金計画を組み直す案などを比較します。

ただし、最終判断まで住民へ丸投げする必要はありません。

理事会として複数案を比較し、そのうえで推奨案を決めたのであれば、選んだ理由まで伝えます。

値上げしない場合の将来も示す

月額5,000円の値上げ案だけを見せれば、住民には毎月5,000円の負担増しか見えません。

そこで、現在の修繕積立金額を維持した場合には、何年後にいくら不足するのかも同じ資料で示します。

値上げする場合と何もしない場合の将来を比較できれば、区分所有者も負担とリスクを同じ条件で考えられます。

これは不安をあおるためではありません。

判断に必要な将来像を隠さず共有するためです。

総会前から情報を共有する

総会招集通知で初めて大幅な値上げを知れば、「もう理事会で決まっているのではないか」と受け止める住民もいるでしょう。

不足が判明した段階から理事会便りや説明資料などで状況を共有しておけば、区分所有者にも考える時間が生まれます。

説明会を開催する場合には、単に賛成か反対かを聞くだけでなく、何が分かりにくいのか、どの負担に不安を感じているのかを確認します。

そこで得た意見を次の資料へ反映することも、合意形成の一部になります。

修繕積立金不足発覚から総会までの実務フロー

修繕積立金不足への対応は、一本の意思決定フローとして考えると整理しやすくなります。

修繕積立金不足発覚から総会までの実務フロー 不足発覚 計画残高と実際残高を確認 不足する金額と時期を把握 不足原因を整理 建物状態と工事内容を検証 長期収支を再計算 値上げや一時金や 借入を比較 理事会だけで判断できるか 確認 必要ならマンション管理士や 建築専門家へ相談 理事会で推奨案を整理 区分所有者へ事前説明 総会で決議 実行後に計画と実績を確認
修繕積立金不足への対応は、一本の意思決定フローとして考えると整理しやすくなります。

ここで重要なのは、専門家への相談を最初から必須工程にしないことです。

資料を整理した段階で理事会自身が内容を理解し、比較して判断できるのであれば、そのまま検討を進められることもあります。

反対に、数字の根拠や選択肢の比較ができないと分かったなら、その時点で外部相談を検討します。

ただし、工事まで半年しかなく資金不足が目前に迫っている場合には、すべての原因分析を終えてから資金対策を始めていては間に合わない可能性があります。

緊急性が高いケースでは、工事内容の検証と借入や増額の検討を並行して進める必要があります。

形式的な順番を守ることより、不足する時期を把握し、残された時間に応じて優先順位を組み替えることが重要です。

築年数と工事までの残り期間別の考え方

同じ3,000万円の不足でも、次回工事まで8年あるマンションと半年しかないマンションでは対応が変わります。

そのため築年数だけで判断するのではなく、建物状態と次の大きな工事までに残された時間を組み合わせて考えます。

築10年未満で工事まで5年以上ある場合

築浅期には修繕積立金残高が増えているため、将来不足すると説明されても実感を持ちにくいことがあります。

現在数千万円の残高があれば、「これだけ貯まっているのに、なぜ今から値上げする必要があるのか」と感じる区分所有者もいるでしょう。

しかし、工事まで時間が残っていることは大きな利点でもあります。

早い段階から少しずつ積立額を調整すれば、工事直前に急激な値上げや高額な一時金を求めずに済む可能性があります。

「まだ先だから動かない」ではなく、「まだ時間があるから小さく修正できる」と捉えることがポイントです。

築10年から20年で工事まで1年から3年の場合

第1回や第2回の大規模修繕を前に、最新見積もりから不足が判明しやすい時期です。

月額値上げだけでは時間的に間に合わず、借入、一時金、工事費の見直しを並行して検討する可能性が高まります。

判断事項が急に増えるほど、理事会は焦りやすくなるでしょう。

それでも、工事を延期できるのか、融資条件を満たすのか、返済後の長期収支が成立するのかを整理してから判断する必要があります。

築20年以上で工事まで1年程度の場合

築年数が進むと、外壁や防水だけでなく、給排水設備やエレベーターなど複数の設備更新が近い時期へ集中することがあります。

同時に区分所有者の年齢構成も変化し、高額な値上げや一時金への負担感が強くなる場合があります。

理事会は建物を守る必要性だけでなく、住民の生活負担も考えなければなりません。

安全や生活インフラに関係する工事を技術面から優先しながら、延期できる工事や資金調達方法を組み合わせ、負担が一時期へ集中しすぎない方法を検討します。

対策後は計画と実績の差を確認する

総会で値上げや借入が決まり、大規模修繕工事まで終えれば、理事会としては大きな問題を解決したように感じるでしょう。

しかし、資金不足を繰り返さないためには、その後の確認が欠かせません。

長期修繕計画上の予定残高と実際の修繕積立金残高を定期的に比較し、差が広がっていないかを確認します。

工事価格が再び上昇したり、計画外の設備故障が発生したり、滞納が増えたりすれば、新しいずれが生まれます。

数千万円の不足になってから大きく修正するのではなく、小さな差の段階で気づければ、必要な対策も小さくできる可能性があります。

大幅な不足が発覚するたびに慌てて値上げする管理から、計画と実績のずれを継続して修正する管理へ変えていくことが再発防止につながります。

修繕積立金不足を繰り返さないための長期修繕計画の見直し

今回の工事費を一時金や借入で確保できたとしても、長期修繕計画の前提が古いままであれば、数年後に同じ問題が再び表面化する可能性があります。

目の前の工事を乗り切るための資金対策と、将来の不足を防ぐ計画管理は分けて考える必要があります。

将来実行できる積立方式へ見直す

段階増額積立方式を採用している場合には、過去の増額が計画どおり実施されてきたかを確認します。

値上げのたびに合意形成が難航し、何度も先送りされているのであれば、計画上の数字を維持するだけでは将来の資金を確保できません。

将来の急激な負担増を抑えるため、均等積立方式へ近づけることも検討対象になるでしょう。

ただし、均等積立方式へ変更すれば、その後一切見直しが不要になるわけではありません。

工事価格や建物状態が変化する以上、定期的な確認は必要です。

5年程度の見直しと管理計画認定の7年以内を区別する

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、建物や設備の劣化状況、工事価格などの変化を計画へ反映するため、5年程度ごとに調査や診断を行い、その結果を踏まえて長期修繕計画を見直す考え方が示されています。

ここでいう5年程度は、長期修繕計画を現実に合わせて運用していくための見直し周期です。

一方、現行の管理計画認定制度では、長期修繕計画の作成または変更に係る集会つまり総会の議決日が、認定申請日以前7年以内であることが確認されます。

したがって、「5年と7年のどちらが正しいのか」という関係ではありません。

5年程度は長期修繕計画を現状へ合わせていくためのガイドライン上の考え方であり、7年以内は管理計画認定申請時に確認される基準です。

制度の数字だけを覚えるのではなく、何のために設けられた期間なのかを分けて理解すると混乱しにくくなります。

2027年4月1日の管理計画認定制度改正を確認する

管理計画認定制度については、2026年7月31日に関係する省令と告示が公布されています。

「マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則及び長期優良住宅の普及の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令」は令和8年国土交通省令第70号、「マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針の一部を改正する告示」は令和8年国土交通省告示第1017号で、いずれも2027年4月1日に施行されます

国土交通省は、2027年4月1日以降の制度について、分譲事業者による認定申請の仕組みを導入するとともに、管理組合の管理者等が申請する場合の認定基準についても見直しを行うと案内しています。

2027年4月以降に認定申請を予定している管理組合では、現在の基準だけを前提として準備するのではなく、実際の申請時点で適用される基準を確認してください。

修繕積立金不足に関するよくある質問

修繕積立金が不足しているかどうかはどう判断しますか

現在残高だけで判断するのではなく、長期修繕計画上の将来収支を確認します。

現在の修繕積立金残高に、工事までに積み上がる予定額を加え、それまでに予定される支出を差し引いた資金が必要な工事費を下回る場合には、何らかの対策を検討する必要があります。

国土交通省が示す専有面積当たりの参考値も比較材料になりますが、その金額を下回ったことだけで資金不足とは断定できません。

管理会社に相談するだけではだめですか

管理会社への相談は重要です。

日常の会計や設備、過去の修繕履歴を把握していることが多いため、まず値上げ額や工事費の根拠について詳しい説明を求めます。

その説明を受けても理事会だけでは妥当性を判断できない場合や、別の資金対策まで比較したい場合には、マンション管理士など第三者へ相談する意味があります。

マンション管理士には何を依頼できますか

長期修繕計画や会計資料の確認、不足原因の整理、増額案や借入案の比較、理事会での論点整理、住民説明資料への助言などを相談できる場合があります。

ただし、実際の業務範囲は依頼するマンション管理士の経験や契約内容によって異なります。

詳細な建物診断、設計、工事監理などについては、建築士や設備専門家が必要になる場合があります。

一時金と借入はどちらがよいですか

一律にどちらが優れているとはいえません。

一時金は借入利息を避けられる一方、一度に大きな負担を区分所有者へ求めます。

借入は現在の一時負担を分散できますが、利息と将来の返済義務が生じます。

不足額、工事までの期間、住民負担、今後の設備更新まで含めて比較する必要があります。

修繕積立金の値上げには総会決議が必要ですか

実際に必要となる手続は、各マンションで現在有効な管理規約を確認します。

修繕積立金額の変更だけなのか、負担割合など管理規約そのものの変更が必要なのかによって、必要となる決議が異なる可能性があります。

一般論だけで判断せず、総会議案を作成する前に現行規約を確認してください。

長期修繕計画は5年ごとですか7年ごとですか

両者は意味の異なる基準です。

長期修繕計画作成ガイドラインでは、建物や設備の状態、工事価格などの変化を反映するため、5年程度ごとに計画を見直す考え方が示されています。

一方、現行の管理計画認定制度では、長期修繕計画の作成または変更に係る集会つまり総会の議決日が、認定申請日以前7年以内であることが確認されます。

したがって、日常的な長期修繕計画の見直しと、管理計画認定を申請する際の要件を分けて考える必要があります。

修繕積立金不足でマンション管理士に相談する意味

修繕積立金不足が分かった理事会が難しい判断を迫られるのは、どの方法にも何らかの負担があるからです。

修繕積立金を値上げすれば毎月の生活費へ影響し、一時金を徴収すれば短期間に大きな支払いを求めることになります。借入を利用すれば現在の負担は分散できますが、返済義務が将来へ残ります。

工事を延期すれば一時的に資金を温存できるかもしれませんが、建物状態によっては劣化が進み、結果的に工事費が増える可能性もあります。

つまり、誰にとっても負担のない万能な方法はありません。

だからこそ、マンション管理士へ相談するかどうかも、「資金が不足しているから依頼する」という単純な基準では決めないほうがよいでしょう。

まず管理会社から説明を受け、理事会で資料を確認し、不足する金額と時期を把握します。そのうえで不足した背景を整理し、工事内容、値上げ、一時金、借入などを比較します。

そこで理事会自身が「なぜこの方法なのか」を説明できるのであれば、必ずしも外部専門家を入れる必要はありません。

反対に、工事費の根拠が分からない、値上げ額の妥当性を評価できない、代替案を比較できない、住民へ説明できないという状態なら、マンション管理士など第三者へ相談する価値が高まります。

専門家へ依頼する意味は、管理組合に代わって答えを決めてもらうことではありません。

「管理会社から言われたので値上げします」という状態から、「資料を確認し、複数の方法を比較した結果として、この方法を選びました」と管理組合自身が説明できる状態へ変えることです。

今回の資金不足だけを乗り切れば終わりではありません。

長期修繕計画と積立方式を見直し、その後も計画と実績の差を確認する仕組みを残せれば、次の理事会が突然同じ問題に直面する可能性を下げられます。

修繕積立金不足は、理事会にとって気の重い問題でしょう。

それでも、問題が分かった時点から現在地を確認し、理由を整理し、選択肢を比較していけば、漠然としていた不安は一つずつ判断できる具体的な課題へ変わっていきます。

まとめ

まとめ 修繕積立金が不足しているからといって、必ずマンション管理士へ 相談しなければならないわけではありません。 管理会社から十分な説明を受け、理事会自身が不足原因と 値上げ額の根拠を理解し、複数案を比較したうえで 住民へ説明できるのであれば、そのまま検討を進めることもできます。 一方、管理会社から大幅な値上げ案だけを提示されている場合や、 長期修繕計画や工事費の妥当性を判断できない場合、 値上げや一時金や借入の比較ができない場合には、 マンション管理士など第三者へ相談する意味があります。

不足が判明したら、最初に計画残高と実際残高を照合し、不足する時期と金額を確認します。その後で原因と工事内容を整理し、複数の資金対策を比較してください。

専門家を使うかどうかを決めるのは、そのあとでも遅くありません。

マンション管理士を「値上げを回避してくれる人」と捉えるのではなく、管理組合自身が判断して説明するための材料を整える専門家として考えると、相談すべきタイミングも見えやすくなるでしょう。

参考資料

国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン

国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン

国土交通省 マンションの管理計画認定に関する事務ガイドライン

国土交通省 マンション管理計画認定制度

国土交通省 マンション関係法令

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