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マンション管理計画認定制度の会計要件とは? 修繕積立金・区分経理・滞納基準を解説

「毎年きちんと決算をしているから、会計面は問題ないはずだ」。そう考えていたのに、管理計画認定制度を調べ始めると、区分経理や修繕積立金の滞納基準という言葉が並び、急に自信がなくなることがあります。

貸借対照表も収支計算書もそろっている。それでも、「この状態で本当に申請できるのだろうか」と迷う理事や理事長は少なくないでしょう。

マンション管理計画認定制度の会計要件で確認されるのは、単純な黒字や預金残高の多さではありません。管理費と修繕積立金等を明確に分け、修繕積立金を他会計へ充当せず、一定以上の滞納が残っていない状態を維持しているかが中心になります。

ただし、会計三要件だけで将来の修繕資金が十分かどうかまで判断するわけではありません。修繕積立金の水準や将来の資金計画は、長期修繕計画に関する別の認定基準と合わせて確認されます。

この記事では、2026年8月時点で公表されている国土交通省とマンション管理センターの情報を基に、管理計画認定制度の会計要件を整理します。必要書類、滞納額の考え方、基準を満たしていない場合の確認方法、2027年4月1日以降の変更との関係まで確認し、自分たちのマンションがどこまで準備できているのか一次チェックできる状態を目指します。

TABLE OF CONTENTS
目次

管理計画認定制度で確認される管理組合の経理

マンション管理計画認定制度は、一定の基準を満たすマンションの管理計画について、マンション管理適正化推進計画を策定した地方公共団体が認定する制度です。

2022年度から制度が始まり、管理組合の運営、管理規約、管理組合の経理、長期修繕計画などが認定基準として確認されています。

認定を取得することで管理状態が見える化され、市場で適切に評価されることが期待されています。また、一定の条件を満たす場合には、住宅金融支援機構による融資やマンションすまい・る債などで優遇措置を利用できる場合があります。

とはいえ、理事会で制度を検討するときには、メリットより先に「自分たちの会計処理で基準を満たせるのか」という疑問が浮かぶことも多いでしょう。

毎年総会で決算を承認しているとしても、それだけで管理計画認定制度の会計要件を確認したことにはなりません。認定では、決算書の数字があることだけではなく、その数字から資金の管理状態を確認できることが重要です。

現行制度で「管理組合の経理」として確認される会計要件は、次の三つです。

会計要件 確認する内容
区分経理 管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理しているか
他会計への充当禁止 修繕積立金会計から他の会計へ充当していないか
滞納基準 直前事業年度終了日時点の対象となる修繕積立金滞納額が全体の1割以内か

この三要件で確認しているのは、修繕のために集めた資金を日常管理のお金と混同せず、本来の目的に沿って管理し、徴収すべき修繕積立金を一定程度きちんと回収できているかという点です。

一方で、「三要件を満たせば将来の修繕資金も十分だ」と考えるのは適切ではありません。

国の認定基準では「管理組合の経理」と「長期修繕計画の作成及び見直し等」が別の項目として設けられています。会計要件では修繕資金を適切に管理し回収できているかを確認し、将来必要となる修繕資金の水準については長期修繕計画などと合わせて確認すると整理すると分かりやすいでしょう。

また、国の認定基準とは別に、地方公共団体が独自基準を設けている場合があります。国の三要件だけで申請可能と判断せず、申請先自治体の最新基準まで確認する必要があります。

要件① 管理費と修繕積立金等を区分経理している

一つ目の要件は、管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理していることです。

管理費と修繕積立金は、どちらも区分所有者から集めるお金です。そのため、「管理組合全体として残高が合っていれば同じではないか」と感じることがあるかもしれません。

しかし、二つの資金では役割が異なります。

管理費は、清掃、管理委託、共用部分の光熱費など、日常的な管理運営を支えるために使用します。一方の修繕積立金は、計画修繕や大規模修繕など、将来を含む特別な支出に備えて積み立てる資金です。

性質の異なる二つのお金を混同すると、現在の日常管理へ使える金額と、将来の修繕のために残しておくべき金額との境界が見えにくくなります。

通帳の残高が十分にあるように見えても、そのうち修繕積立金がいくらなのか説明できなければ、将来の修繕資金を正確に把握することは難しいでしょう。

管理費会計と修繕積立金会計の基本構造

二つの会計は、次のように整理すると理解しやすくなります。

資金の流れ 会計区分 主な役割 管理費 管理費会計 日常管理 清掃費や管理委託費など 日常的な管理運営を支える 修繕積立金 修繕積立金会計 計画修繕 計画修繕や大規模修繕などに 備えて資金を管理する

管理費は「現在の管理を続けるための資金」、修繕積立金は「将来の修繕へ備えるための資金」と捉えると、その違いが見えてきます。

なお、駐車場使用料やその他の使用料をどの会計で扱うかは、マンションの管理規約や会計方法によって異なる可能性があります。そのため、この整理だけから個別マンションのすべての仕訳や税務上の適否まで判断することはできません。

貸借対照表と収支計算書で区分経理を確認する

現行制度では、管理組合の経理を確認する資料として貸借対照表と収支計算書が示されています。

理事会で確認するときには、単に預金残高が一致しているかを見るのではなく、管理費会計と修繕積立金会計について、それぞれの収入と支出を追えるか、年度末の資産や負債がどちらの会計に属しているのか説明できるかまで見ておくとよいでしょう。

毎年同じ決算書を見ていると、「昨年も問題なく承認したから今年も大丈夫だろう」と感じやすくなります。

ところが、管理計画認定という別の視点から確認すると、一部の科目について会計区分が分かりにくかったり、資金の帰属を説明しにくかったりすることがあります。

そこで問題が見つかったとしても、過去の管理を責める必要はありません。現在の資料から資金の流れを説明できる状態なのかを確認し、不明確な部分があるなら申請前に整理することが重要です。

同じ銀行口座で管理している場合の考え方

管理費と修繕積立金を同じ銀行口座で取り扱っているマンションでは、「口座を分けていないから認定できないのでは」と不安になることがあります。

ここでは、一次情報から確認できる事実と、個別マンションごとの判断を分けて考える必要があります。

国の認定基準で明示されているのは、管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理することです。今回確認した認定基準には、管理費と修繕積立金を必ず別々の銀行口座で管理するという認定要件は記載されていません。

ただし、そこから「同一口座でも認定上必ず問題ない」と結論づけることはできません。

同じ銀行口座を使用している場合でも、貸借対照表や収支計算書等から両会計を明確に区分できるかは、実際の会計資料を確認しなければ判断できません。また、認定制度とは別の資金管理上の論点が生じる可能性もあります。

したがって、同一口座で管理している場合には、口座数だけを見て認定可能かどうかを決めるのではなく、まず会計資料上で管理費会計と修繕積立金会計を明確に区別できるかを確認しましょう。

そのうえで判断が難しい場合は、申請先自治体や事前確認を担当する専門家などへ確認することが適切です。

要件② 修繕積立金を他の会計に充当していない

二つ目の要件は、修繕積立金会計から他の会計への充当がされていないことです。

この条件は文章だけで読むと分かりやすいのですが、実際の管理組合では迷いが生まれる場合があります。

たとえば、管理委託費や光熱費が上昇して管理費会計が苦しくなっている一方、修繕積立金会計にはまとまった残高があるとします。

すると、「一時的に修繕積立金から補えばよいのではないか」と考えたくなることもあるでしょう。

目の前の資金不足だけを見れば合理的に感じるかもしれません。しかし、修繕積立金は日常的な管理費の不足を補うために集めている資金ではなく、将来の修繕へ備える目的で徴収しています。

他会計への充当を防ぐ理由

修繕積立金から管理費会計へ資金を回せば、当面の資金不足は解消するかもしれません。

一方で、数年後に予定している大規模修繕で資金が不足すれば、追加徴収や借入れといった別の負担が発生する可能性があります。

「今だけ少し借りる」という処理が、将来の区分所有者負担へ姿を変えることがあるわけです。

修繕積立金から管理費会計へ資金を回せば、 当面の資金不足は解消するかもしれません。 一方で、数年後に予定している大規模修繕で資金が不足すれば、 追加徴収や借入れといった別の負担が 発生する可能性があります。 「今だけ少し借りる」という処理が、 将来の区分所有者負担へ姿を変えることがあるわけです。

そのため、管理計画認定制度では修繕積立金会計から他会計への充当がされていないことを、区分経理とは別の要件として確認しています。

修繕積立金からの支出がすべて問題になるわけではない

ここで誤解したくないのは、修繕積立金会計から支出があること自体が問題なのではないという点です。

国土交通省のQ&Aでは、修繕積立金の管理や運用に必要となる一定の費用、大規模修繕工事に伴う一定の費用などについて、他会計への充当には該当しない例が示されています。

また、保守と修繕を一つの契約で行う場合には、管理費で負担すべき保守費用と、修繕積立金から支出できる修繕費用を適切に区分する考え方も示されています。

つまり、「修繕」という科目名だから修繕積立金から出してよい、「保守」という名前だから管理費だけで払う、と名称だけで判断するのは適切ではありません。

契約内容や実際の支出目的まで確認する必要があります。

過去に資金移動が見つかった場合

認定申請を考えて過去の決算書を見直したところ、修繕積立金会計から管理費会計への繰入れや、会計間の貸借と見える処理が見つかることがあります。

これまで総会で承認されてきた処理であれば、「今になってなぜ問題になるのだろう」と戸惑うこともあるでしょう。

この場合には、資金移動を行った時期と金額だけを切り取って判断せず、その処理が必要になった背景、理事会や総会での取扱い、決算書上の表示、現在までの対応を一連の経緯として整理することが重要です。

こうして背景まで確認すると、単発の処理なのか、それとも管理費会計そのものに慢性的な不足があるのかも見えてきます。

申請前に資金を戻せば必ず基準を満たすとは断定できません。認定で確認される決算書類との関係もあるため、該当する処理がある場合には、資料をそろえたうえで申請先自治体や事前確認を担当する専門家へ確認することが望ましいでしょう。

また、管理費会計の赤字が原因であれば、資金を戻すだけでは同じ問題が再発する可能性があります。

管理費の設定水準、管理委託費、設備保守費、共用部分の光熱費などを確認し、日常管理を管理費会計の範囲で継続できる状態へ近づける必要があります。

認定を通すためだけに数字を直すのではなく、「なぜ修繕積立金に頼る必要が生じたのか」まで振り返ることで、同じ問題を繰り返しにくい管理へ変えていけるのではないでしょうか。

要件③ 3カ月分以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内

三つ目の要件は、直前事業年度終了日時点における修繕積立金の3カ月分以上の滞納額が、全体の1割以内であることです。

この要件では、滞納者が一人でもいれば不適合になるわけではありません。確認するのは、一定以上の滞納がどの程度の金額になっているかです。

ただし、「3カ月分以上」という言葉には注意が必要です。

国土交通省のQ&Aでは、3カ月連続して滞納しているかを見るのではなく、直前事業年度において累計何カ月分の滞納が生じているかを確認すると示されています。

そのため、隔月で未払いが発生していても、直前事業年度中の累計が3カ月分以上になれば対象となります。

さらに、累計5カ月分の滞納が年度末にも残っていれば3カ月分だけを数えるのではなく、5カ月分全額を対象額として扱います。

一方、事業年度の途中で3カ月分以上の滞納状態になった場合でも、年度末までに全額が支払われて滞納が解消していれば、年度末の滞納額としては扱いません。

この三つを押さえておけば、滞納基準の基本的な考え方は整理できます。

修繕積立金滞納額の計算方法

滞納割合を確認するときの分母は、直前事業年度に各戸から徴収すべき修繕積立金の総額です。

分子には、直前事業年度中に累計3カ月分以上の滞納となり、年度末時点でも残っている対象滞納額を用います。

考え方は次のとおりです。

対象となる修繕積立金滞納額 ÷ 直前事業年度に各戸から徴収すべき修繕積立金総額 × 100

この割合が1割以内であるかを確認します。

分子 分母 直前事業年度中に 累計3カ月分以上の滞納となり、 年度末時点でも残っている 対象滞納額を用います。 直前事業年度に各戸から 徴収すべき修繕積立金の 総額です。 対象となる修繕積立金滞納額 ÷ 直前事業年度に各戸から徴収すべき修繕積立金総額 × 100 この割合が1割以内であるかを確認します。

たとえば5カ月分の未払いが年度末にも全額残っていれば、3カ月分だけを抜き出すのではなく、5カ月分全額を分子へ入れます。

反対に、途中で累計4カ月分まで滞納したとしても、年度末までに4カ月分すべてが支払われていれば、年度末の対象滞納額には含めません。

隔月滞納でも対象になるケース

ある住戸で4月分、7月分、10月分の修繕積立金が未払いとなり、その3カ月分が年度末まで残っているとします。

このケースでは3カ月連続の滞納はありませんが、直前事業年度中では累計3カ月分になっています。

したがって、年度末時点で残っている3カ月分は対象額として扱います。

「連続していないから対象外だろう」と考えると、実際より滞納額を少なく計算することになるため注意が必要です。

年度末までに解消したケース

別の住戸で、年度途中に4カ月分の修繕積立金が未払いになったものの、年度末までに4カ月分すべてを納付したとします。

この場合、途中では累計3カ月分以上に達していますが、年度末までに滞納が解消しているため、その年度末の滞納額としては扱いません。

つまり、滞納基準を確認するときには、「累計3カ月分以上になったか」と「年度末に未払いが残っているか」をセットで見る必要があります。

管理費や駐車場使用料の滞納と分けて考える

管理会社から受け取る滞納一覧には、管理費と修繕積立金がまとめて表示されている場合があります。

しかし、この認定基準で確認するのは各戸から支払われる修繕積立金の滞納です。

国土交通省Q&Aでは、駐車場収入などその他使用料からの収入についても、この滞納額基準の審査対象外とされています。

そのため、管理費や駐車場使用料を含む未収金総額をそのまま計算式へ入れるのではなく、修繕積立金部分を分け、月別の収納履歴から対象額を確認する必要があります。

認定申請時に必要な会計確認資料

会計三要件を理解しても、実際の準備になると「結局どの資料を用意すればよいのか」と迷うことがあります。

ここでは、制度上の会計確認資料と、理事会で関連事項を確認するときに一緒に見ておくと判断しやすい資料を分けて整理します。

この二つを混ぜてしまうと、「全部が会計要件の必須提出書類なのか」と誤解しやすいため、役割を分けて考えることが重要です。

制度上の会計確認資料

国土交通省のマンション管理・再生ポータルサイトでは、管理組合の経理に関する確認資料として、主に次の書類が示されています。

会計確認資料 主な確認内容
貸借対照表 管理費会計と修繕積立金会計の資産や負債を確認する
収支計算書 各会計の収入と支出や他会計への充当の有無を確認する
直前事業年度の各月の修繕積立金滞納額を確認できる書類 累計3カ月分以上の滞納と年度末の対象滞納額を確認する

まずは、この三つの資料から会計三要件を確認できる状態を作ることが基本です。

なお、実際の申請時に必要となる書類の名称や提出方法は、自治体や利用する申請手続によって異なる場合があります。申請時には必ず所管自治体の最新案内を確認してください。

理事会であわせて確認したい関連資料

制度上の会計確認資料とは別に、申請準備や問題の原因確認を進めるうえで、次の資料も一緒に確認すると判断しやすくなります。

関連資料 確認すると分かりやすいこと
月別収納状況資料 各戸の滞納月数や年度末までの入金状況を追いやすくなる
総会議事録 決算や会計処理がどのように承認されたか確認できる
管理規約 管理費や修繕積立金の使途と現在の運用を照合できる
長期修繕計画 会計要件とは別に将来の修繕資金計画を確認できる
自治体の申請案内 独自基準や追加資料の有無を確認できる

これらは、すべてが「管理組合の経理」の会計確認資料として一律に列挙されているものではありません。

ただ、会計処理に疑問が見つかったとき、その背景を調べたり認定申請全体を準備したりするうえでは有用です。

申請直前になって資料不足へ気づくと、管理会社への依頼や理事会での再確認に時間がかかることがあります。

最初から完璧にそろえようとせず、まず「制度上の会計確認資料があるか」を確認し、その後に不足する関連資料を追加していくと整理しやすいでしょう。

会計基準を満たしていない場合に確認したいポイント

一次チェックで△や×が見つかると、「認定は難しいのではないか」と不安になることがあります。

しかし、申請してから問題が見つかるより、準備段階で分かったほうが対応できる時間は残っています。

重要なのは、認定のためだけに帳簿の見た目を整えることではありません。なぜ現在の状態になったのかまで確認し、同じ問題が繰り返されにくい管理へ変えていくことです。

区分経理が不明確な場合

管理費会計と修繕積立金会計を決算書から判別しにくい場合には、勘定科目、日常の仕訳方法、決算書の表示方法などを確認します。

その結果、実際の処理は区分されているものの表示方法だけが分かりにくいのか、それとも日常の会計処理自体が混在しているのかを切り分けられるでしょう。

過去に総会で承認された決算書を、認定のためだけに勝手に作り替えることは避ける必要があります。

訂正などが必要になる場合の手続は個別事情によって異なる可能性があるため、管理会社や会計担当者へ確認し、必要に応じて申請先自治体や専門家へ相談してください。

小さく始めるなら、管理費会計と修繕積立金会計を別々に一覧表示できるか確認するだけでも十分です。そこから、どこが曖昧なのかが見えやすくなります。

他会計への充当が確認された場合

修繕積立金会計から他会計への資金移動が見つかった場合には、現在の残高だけを見て結論を出さないことが重要です。

資金を動かした時期や金額に加え、その処理が必要になった背景、理事会や総会での取扱い、決算書への表示、現在までに行った対応を一連の経緯として確認します。

こうして背景まで確認すると、単発の処理なのか、管理費会計に慢性的な不足があるのかも判断しやすくなります。

申請前に返還処理を行えば必ず認定されるとは限りません。個別の会計資料をそろえたうえで、申請先自治体や事前確認を担当する専門家へ確認することが適切でしょう。

また、資金移動の原因が管理費不足にある場合には、修繕積立金を戻すだけでは根本的な解決になりません。

管理費の設定額、管理委託費、設備保守費、共用部分の光熱費などを確認し、日常管理を管理費会計の中で継続できる状態へ近づける必要があります。

滞納割合が1割を超えた場合

対象となる修繕積立金滞納割合が1割を超えた場合には、まず集計方法を確認します。

3カ月連続の滞納だけを対象にしていないか、累計3カ月分以上で判定しているか、年度末までに解消したものを除外しているか、管理費など別の未収金を混ぜていないかを確認するとよいでしょう。

集計方法に問題がなく、それでも1割を超える場合には、各戸の滞納状況とこれまでの督促経過を整理します。

滞納対応では、同じマンションで顔を合わせる相手へ督促することに心理的な抵抗を感じる理事もいるでしょう。

それでも、長期滞納を放置すると、きちんと修繕積立金を納付している区分所有者との公平性や資金回収に影響する可能性があります。

感情的に対応するのではなく、管理規約や管理組合のルールに基づいて進め、必要に応じて弁護士などの専門家へ相談することが現実的です。

特定の法的手段を取れば必ず回収できるとは限らないため、個別事情を踏まえて対応を検討する必要があります。

2027年4月1日以降の会計要件

これから管理計画認定を進める場合、2027年4月1日は確認しておきたい日付です。

国土交通省は2026年7月31日に制度改正に関する省令と告示を公布しており、地方公共団体への申請日が2027年4月1日以降になる場合には、見直し後の認定基準が適用されます。

2027年4月以降も会計三要件は維持される

管理組合の管理者等が申請する場合について、国土交通省が公表している改正後基準と新旧対照表を確認すると、会計三要件そのものは維持されています。

2027年4月1日以降も、管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理すること、修繕積立金会計から他会計へ充当していないこと、直前事業年度終了日時点の3カ月分以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内であることが「管理組合の経理」の認定基準として示されています。

そのため、2027年4月以降に申請する予定だからといって、現在進めている区分経理や滞納状況の確認が無駄になるわけではありません。

「基準が変わるなら今確認しても仕方がない」と手を止める必要はなく、会計三要件については今から準備を進められます。

認定基準全体には別の変更がある

会計三要件は維持されますが、認定基準全体には変更があります。

長期修繕計画については、作成または見直し時期が現行の7年以内から原則として申請日前5年以内へ変更されます。また、計画期間全体の修繕積立金総額が、見込まれる修繕工事費総額を下回らないよう設定する基準も追加されます。

さらに、新たに「良好な居住環境の維持及び向上」という認定項目が設けられ、防災に関する方針の作成と区分所有者等への周知が求められます。

この記事の主題は会計要件であるため、改正内容をすべて詳しく扱う必要はありません。

理事会として押さえておきたいのは、「会計三要件は維持される一方で、2027年4月以降の申請では認定基準全体に別の追加や変更がある」という点です。

申請予定日が2027年4月1日以降になる場合には、会計要件の確認と並行して、改正後の認定基準全体も確認しておきましょう。

マンション管理士による事前確認の流れ

会計三要件を確認した後も、管理計画認定では管理規約や長期修繕計画など別の項目を確認する必要があります。

「理事会だけで全部判断するのは難しい」と感じるのは自然でしょう。普段の管理業務と並行して制度資料を読み込み、必要書類をそろえる作業には負担がかかります。

マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用する場合には、事前確認講習を修了したマンション管理士が、管理計画について国の認定基準への適合状況を確認します。

適合している場合には、マンション管理センターから事前確認適合証が発行され、その後に地方公共団体への認定申請へ進みます。

事前確認講習を修了したマンション管理士が、 管理計画について国の認定基準への適合状況を確認します。 適合している場合には、マンション管理センターから 事前確認適合証が発行され、 その後に地方公共団体への認定申請へ進みます。

事前確認適合証は最終的な認定ではない

事前確認適合証が発行されても、それだけで地方公共団体による認定が完了したわけではありません。

最終的な認定を行うのは地方公共団体です。

また、地方公共団体が独自基準を設けている場合、その独自基準はマンション管理士による事前確認の対象外となります。

そのため、事前確認を受ける場合でも、申請先自治体の独自基準や追加書類を別途確認しておく必要があります。

「事前確認を通ればすべて終わる」と考えるより、国の認定基準を事前確認で整理し、その後に自治体固有の条件も確認すると捉えるほうが実務の流れを理解しやすいでしょう。

会計要件チェックリスト

ここまで確認したら、自分たちのマンションの状態を○△×で整理してみましょう。

○は資料から基準への適合を確認できる状態、△は資料不足や判断が難しく追加確認が必要な状態、×は基準と異なる処理や数値が確認されている状態の目安です。

チェック項目 ○の目安 △の目安 ×の目安 判定
管理費会計と修繕積立金会計を区分している 決算書から明確に判別できる 表示方法などに確認が必要 会計区分が確認できない ○ △ ×
各会計の収入と支出を追える 金額の帰属を説明できる 一部の科目が不明確 複数会計が混在している ○ △ ×
修繕積立金から他会計へ充当していない 該当する資金移動がない 過去の処理を要確認 他会計への充当が確認される ○ △ ×
修繕積立金の支出内容を説明できる 契約や資料から確認できる 一部費用の性質が不明 目的外支出の可能性がある ○ △ ×
年間に徴収すべき修繕積立金総額を把握している 金額と算定根拠を確認できる 金額のみ確認できる 把握できない ○ △ ×
月別の収納状況を確認できる 各戸の履歴を追える 一部資料が不足している 月別資料がない ○ △ ×
累計3カ月分以上で滞納を判定している 隔月滞納も含めて確認している 集計方法の再確認が必要 3カ月連続だけで判定している ○ △ ×
年度末までの解消状況を確認している 年度末の未解消額が分かる 入金時期の確認が必要 年度途中の滞納だけで判定している ○ △ ×
3カ月分を超える滞納は残額全体を確認している 5カ月残存なら5カ月分を算入している 算定方法を確認中 3カ月分だけを算入している ○ △ ×
対象滞納額が全体の1割以内 10%以内と確認できる 境界付近で再確認が必要 10%を超えている ○ △ ×
貸借対照表を準備できる 対象資料がある 内容確認中 資料がない ○ △ ×
収支計算書を準備できる 対象資料がある 内容確認中 資料がない ○ △ ×
月別滞納額を確認できる資料がある 必要な期間を確認できる 一部期間が不足している 資料がない ○ △ ×
自治体独自基準を確認している 最新情報を確認済み 確認途中 未確認 ○ △ ×
申請予定日を確認している 適用基準が明確 2027年4月前後で未確定 申請時期が未定 ○ △ ×

このチェックリストですべて○になっても、管理計画認定全体の取得を保証するものではありません。

会計以外にも管理組合の運営、管理規約、長期修繕計画などの認定基準があり、地方公共団体独自の条件が加わる場合もあるためです。

一方、△や×が見つかったとしても、そこで準備を止める必要はありません。

△なら不足している資料や確認先を明確にし、×ならなぜその状態になったのかを整理します。

「認定できるか分からない」という大きな不安を、「次の理事会までにこの資料を確認する」という具体的な作業へ変えられれば、一次チェックとしては大きな前進でしょう。

管理計画認定制度の会計要件FAQ

管理費と修繕積立金を同じ口座で管理していると認定されませんか?

国の認定基準で明示されているのは、管理費及び修繕積立金等について明確に区分して経理することです。

今回確認した国の認定基準には、両者を必ず別々の銀行口座で管理するという認定要件は記載されていません。

ただし、ここから「同じ口座でも必ず認定上問題ない」と判断することはできません。貸借対照表や収支計算書から両会計を明確に区分できるかを確認し、個別判断が難しい場合には申請先自治体などへ確認してください。

修繕積立金を一時的に管理費へ回した場合はどうなりますか?

現行の認定基準では、修繕積立金会計から他会計への充当がされていないことが求められています。

そのため、「一時的だったから問題ない」と一律に判断することはできません。

資金移動の時期や金額だけではなく、その背景、決算書上の処理、総会等での取扱い、現在までの対応を整理し、認定で確認される年度との関係も含めて判断する必要があります。

修繕積立金に滞納者がいるだけで認定できませんか?

滞納者が存在するだけで、この会計基準へ直ちに不適合になるわけではありません。

確認するのは、直前事業年度中に累計3カ月分以上となった滞納について、年度末時点で残っている対象額が全体の1割以内かどうかです。

そのため、滞納者数だけではなく、住戸ごとの月別収納状況と年度末の残額を確認する必要があります。

3カ月分以上の滞納額が1割以内とはどう計算しますか?

直前事業年度に各戸から徴収すべき修繕積立金総額を分母とし、累計3カ月分以上の滞納となり年度末にも残っている対象額を分子として割合を計算します。

3カ月連続である必要はなく、隔月の未払いでも累計3カ月分以上なら対象です。

また、5カ月分が年度末に残っていれば5カ月分全額を数えますが、年度末までに全額を支払って滞納が解消していれば、その年度末の対象滞納額には含めません。

会計関係ではどの書類を確認しますか?

会計三要件の確認資料として国土交通省が示しているのは、主に貸借対照表、収支計算書、直前事業年度の各月の修繕積立金滞納額を確認できる書類です。

一方、総会議事録、管理規約、収納状況資料、長期修繕計画などは、会計処理の背景や認定申請全体を整理するうえで一緒に確認すると有用な関連資料です。

すべてを同じ「会計要件の必須資料」と考えず、制度上の確認資料と実務上の関連資料を分けて準備すると整理しやすいでしょう。

マンション管理士に事前確認を依頼する必要がありますか?

マンション管理センターの管理計画認定手続支援サービスを利用して事前確認を行う場合には、事前確認講習を修了したマンション管理士が国の認定基準への適合状況を確認します。

適合している場合にはマンション管理センターから事前確認適合証が発行され、その後に地方公共団体への認定申請へ進みます。

ただし、地方公共団体独自の認定基準はマンション管理士による事前確認の対象外となるため、申請先自治体の基準も別途確認する必要があります。

2027年4月から会計要件も変わりますか?

管理組合の管理者等が申請する場合については、2027年4月1日以降も会計三要件が維持されます。

区分経理、修繕積立金会計から他会計への充当禁止、直前事業年度終了日時点における3カ月分以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内という三項目は、改正後の認定基準にも示されています。

ただし、長期修繕計画や防災など認定基準全体には変更があります。

2027年4月1日以降に申請する場合には、会計三要件だけでなく改正後の認定基準全体を確認してください。

まとめ

マンション管理計画認定制度の会計要件は、管理費と修繕積立金等の区分経理、修繕積立金の他会計への充当禁止、対象となる修繕積立金滞納額を全体の1割以内に抑えることの三つです。

管理費と修繕積立金等の区分経理 修繕積立金の他会計への充当禁止 対象となる修繕積立金滞納額を 全体の1割以内に抑えること

滞納基準では3カ月連続ではなく直前事業年度中の累計で判断し、年度末までに解消したものは対象外となります。また、5カ月分が年度末に残っていれば3カ月分だけではなく5カ月分全額を対象として確認します。

申請準備では、まず貸借対照表、収支計算書、各月の修繕積立金滞納額を確認できる資料をそろえてください。そのうえで必要に応じて総会議事録や管理規約、収納状況資料などを確認すると、問題の背景まで把握しやすくなります。

認定を取得するためだけに数字を整えるのではなく、「なぜこの会計状態になったのか」まで振り返ることが大切です。そこまで確認できれば、管理計画認定への準備は単なる審査対応ではなく、将来の修繕資金をより適切に管理するための見直しにもつながるでしょう。

参考資料

国土交通省「マンション管理計画認定制度」
制度概要と2027年4月1日以降の改正情報を確認する

国土交通省「マンション管理・再生ポータルサイト 管理計画認定制度」
現行の認定基準と必要書類を確認する

国土交通省「マンションの管理計画認定に関する事務ガイドラインQ&A」
滞納月数や修繕積立金の取扱いを確認する

国土交通省「管理組合の管理者等が申請者となる場合の認定基準」
2027年4月1日以降の認定基準を確認する

公益財団法人マンション管理センター「管理計画認定手続支援サービス」
事前確認と事前確認適合証の仕組みを確認する

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-マンション管理士