理事長になって前任者から書類を引き継ぎ、区分所有者名簿を開いてみると、数年前の日付や、すでに転居したと思われる人の名前が残っていることがあります。総会資料を発送すれば郵便物が戻り、登録されている電話番号へ連絡してもつながらない。それでも氏名や住所、電話番号を扱う以上、むやみに聞き直してよいのか分からず、「いったい、どこから直せばよいのだろう」と手が止まることもあるでしょう。
名簿が古くなった原因を、前任役員の怠慢だけで説明することはできません。マンション管理では役員が定期的に交代する一方で、変更届の受付方法、名簿への反映方法、管理会社との情報共有、電子データの保存場所、退任した役員が保有するデータの処理まで仕組み化されていないことがあります。
その状態では、一人の理事長が熱心に名簿を整理しても、次の役員が更新方法を知らなければ数年後には再び古くなります。前任者から「このUSBメモリに全部入っています」と渡されても、どのファイルが最新版なのか、管理会社のシステムとどちらを基準にすればよいのか分からなければ、後任者が「触って間違えるくらいなら、このままにしておこう」と考えるのも不自然ではありません。
また、管理組合側には「漏水や災害に備えて詳しく把握しておいた方が安心だ」という気持ちがあります。しかし、情報を提出する側には別の不安があります。電話番号やメールアドレスだけでなく、緊急連絡先や家族に関する情報まで尋ねられれば、「誰が見るのだろう」「退任した理事のパソコンに残らないのだろうか」と警戒する人がいても不思議ではありません。
だからこそ、区分所有者名簿の更新を単なるExcelの書き換えとして考えないことが大切です。必要なのは、誰が現在の区分所有者なのか、管理組合からの通知をどこへ送れば届くのか、実際には誰が住んでいるのか、漏水や災害が発生したとき誰へ連絡できるのかを確認し、その連絡経路を次の役員も維持できる状態へ変えることです。
令和7年改正マンション標準管理規約では、組合員名簿と居住者名簿について、届出があった場合の更新と毎年1回以上の内容確認を行う規定例が示されています。また、電磁的方法を利用可能とする規定例では、組合員名簿等を「書面又は電磁的記録」により作成して保管する構成になっています。
もっとも、マンション標準管理規約は全国のマンションへそのまま適用される法律ではなく、各マンションが管理規約を作成または改正するときの標準的なモデルです。そのため、実際の名簿管理を決める際には、自分たちの現行管理規約や細則、管理業務委託契約も確認する必要があります。
この記事では、何年も名簿を更新できていない管理組合を想定し、まず実行すべき手順の全体像を示したうえで、更新が必要な理由、組合員名簿と居住者名簿の違い、未回答者への対応、管理会社との役割分担、個人情報、Excelやクラウド、役員交代、年1回の確認まで順番に整理します。
まず確認したい名簿更新の7ステップ
「理由より先に、何をすればよいのか知りたい」と感じている理事長であれば、最初に次の7段階を押さえておくと全体を見通しやすくなります。
| 手順 | 行うこと | この段階で決めるポイント |
|---|---|---|
| 1 | 名簿更新の目的を決める | 何のために情報を確認するのか |
| 2 | 現在の名簿と届出を確認する | どの情報が古く、どこに食い違いがあるか |
| 3 | 確認票と案内文を作る | 収集項目、利用目的、回答方法 |
| 4 | 全区分所有者へ確認する | 初年度は変更の有無を含め全体確認 |
| 5 | 回収状況と確認日を記録する | 確認済み、未回答、郵便返戻などを区別 |
| 6 | 未回答者へ段階的に対応する | 再案内、別の連絡手段、所在地確認 |
| 7 | 理事会で結果を確認する | 確認済みと未確認を分けて次の対応を決定 |
業務全体では、方針決定 → 現行情報の確認 → 確認票の作成 → 配布 → 回収 → 未回答者対応 → 名簿への反映 → 理事会確認という流れになります。
最初から完璧な名簿を作ろうとすると、作業量の大きさに圧倒されます。しかし、最初に行うことは現在の名簿を開き、最後にいつ確認したのかを調べるだけでも構いません。重要なのは一度だけ正しい名簿を完成させることではなく、翌年も小さな作業で確認できる仕組みへ変えていくことです。
区分所有者名簿を更新する必要がある理由
古い名簿が管理室に置かれていても、日常生活では直ちに問題が発生するとは限りません。そのため、理事会で名簿更新を提案しても、「今まで特に困っていないのだから急がなくてもよいのではないか」という空気が生まれ、修繕や会計など目の前の案件を優先しているうちに数年が経過することがあります。
実のところ、名簿の問題は平常時ほど見えにくいものです。問題が表面化するのは、総会資料を発送するとき、漏水事故で急いで所有者へ連絡したいとき、管理費等について重要な連絡を行いたいときなど、「今すぐ使いたい」という場面でしょう。
つまり、名簿は存在しているだけでは十分ではありません。必要なときに連絡先として機能し、その情報がいつ確認されたものなのかを説明できる状態まで整って初めて、管理組合の基礎資料として役に立ちます。
年1回以上の確認を行う意味
令和7年改正マンション標準管理規約では、届出があった場合には組合員名簿等を更新し、それとは別に毎年1回以上内容を確認する規定例が示されています。電磁的方法を利用可能ではない場合にも年次確認が示され、電磁的方法を利用可能とする規定例では、書面または電磁的記録による作成と保管が明記されています。
ここで注意したいのは、「一年に一度だけ名簿を直せばよい」という意味ではないことです。4月に全戸を確認した後、6月に住戸が売買され、10月に外部居住の区分所有者が転居したのであれば、それらの届出を随時反映し、さらに定期的な全体確認を行うという二段構えで考える方が実務に合っています。
管理計画認定制度の更新と確認の考え方
管理計画認定制度については、「更新」と「確認」という二つの言葉が出てくるため、一度整理しておくと分かりやすくなります。
マンション管理適正化法施行規則では、認定基準として、区分所有者名簿と居住者名簿が作成され、これらの名簿が年一回以上更新されていることと規定されています。
一方、国土交通省の管理計画認定制度に関する実務案内では、組合員名簿と居住者名簿を備え、年1回以上その内容を確認していることという説明が使われています。
そのため、本記事では理事会で実際に行う仕事を表すときには「年次確認」という言葉を中心に使いますが、管理計画認定制度の法令上の表現は「年一回以上更新」です。毎年現在の内容を確認し、変更があれば反映できる状態を維持するものとして理解すると、実務との関係が整理しやすくなります。
漏水や災害で連絡が取れない不安を減らす
上階の住戸から漏水が続き、下階の天井にも水が広がっている場面を想像してみてください。登録された電話番号へ連絡してもつながらず、その住戸は賃貸に出されているため所有者も現地にはいない。さらに管理組合が把握している所有者住所も以前のものだったとすれば、理事長としては「もっと早く確認しておけばよかった」と感じるでしょう。
国土交通省は、居住者名簿について、設備点検や漏水事故などへの対応で専有部分に立ち入る必要が生じた場合などに、現在居住している人へ円滑に連絡できるようにするという趣旨に沿って必要な情報をまとめるものと説明しています。
もちろん、緊急時の専有部分への立入りや具体的な措置は、自分たちの管理規約と個別事情に応じて判断しなければなりません。それでも、所有者と居住者への連絡経路が整理されていれば、状況説明や対応調整を早く始められる可能性があります。
名簿は防災設備のように目立ちません。しかし、何か起きたときに管理を止めないための基礎情報として考えると、その重要性が見えてきます。
総会運営や管理費等の連絡にも関係する
区分所有者の送付先が古ければ、総会に関する通知や管理組合からの重要な連絡を円滑に行えません。管理費や修繕積立金について連絡する場合も同様で、滞納が長期化してから所有者の所在地を調べ始めるより、平常時から連絡先を整理しておいた方が対応しやすくなります。
ただし、「郵便物が届かなかったら総会決議は直ちに無効になる」といった単純な説明は適切ではありません。総会の招集手続については、区分所有法、現行管理規約、個別事情を確認して判断する必要があります。
名簿更新の目的は、問題が発生した後に証拠を整えることだけではありません。そもそも連絡不能の状態をできるだけ作らないことに意味があります。
名簿が更新されなくなる背景
名簿が何年間も更新されていないと、「前の理事会が何もしていなかった」と考えてしまうことがあります。しかし、特定の担当者の注意力だけを問題にすると、担当者が替わった後に同じことが起こります。
マンション管理では、理事長や理事が定期的に交代することが一般的です。それにもかかわらず、変更届の受付方法、名簿への入力方法、保存場所、管理会社との更新ルールが一人の担当者の記憶に依存していれば、役員が替わった瞬間に情報管理が途切れます。
前任者が個人のパソコンに非常に丁寧な名簿を作っていたとしても、後任者がその場所を知らなければ管理組合の情報として十分には機能しません。さらに、管理を厳密にしようとして入力欄やフォルダ規則、承認手順を細かくしすぎれば、今度は次年度の役員が使いこなせず、仕組みそのものが放置される可能性があります。
大切なのは、「すべてを覚えている優秀な担当者」を期待することではありません。誰が役員になっても、必要な情報へたどり着き、同じ手順で更新できる状態を作ることです。
名簿更新は情報整理であると同時に、属人化を減らす仕事でもあります。
組合員名簿と居住者名簿の違い
名簿再構築に着手するときには、組合員名簿と居住者名簿を同じものとして考えないことが重要です。区分所有者本人が自宅として住んでいる住戸だけであれば違いは目立ちませんが、賃貸住戸、法人所有、セカンドハウス、親族使用が増えるほど、所有者と現在生活している人は一致しなくなります。
組合員名簿は区分所有者を把握する
組合員名簿は、誰が区分所有者なのかを管理組合として把握し、総会その他の管理組合運営に必要な連絡を行うための基礎資料です。
たとえば101号室をAさんが所有し、Aさん本人は別の地域へ住みながらBさんへ貸している場合、組合員として把握すべき対象はAさんになります。
ただし、管理組合内部の名簿にAさんの名前が記載されていることだけで、現在の所有権を最終的に証明できるわけではありません。売買や相続などによって所有関係に疑問が生じた場合には、必要に応じて登記事項証明書等の公的資料を確認します。
国土交通省は、組合員名簿について管理組合の運営上必要な情報をまとめる必要があるとし、具体的な記載事項については各管理組合で検討する考え方を示しています。
居住者名簿は現在住んでいる人を把握する
一方、居住者名簿は、現在その住戸で生活している人へ管理上必要な連絡を行うための資料です。
先ほどの101号室であれば、区分所有者はAさんですが、排水管清掃や設備点検、漏水事故について実際に連絡する相手としてBさんの情報が必要になる場面があります。
所有者へ連絡したことと、現在その住戸で生活している人へ連絡が届いたことは同じではありません。この違いが、二つの名簿を分けて考える理由です。
| 確認項目 | 組合員名簿 | 居住者名簿 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 区分所有者 | 現在その住戸に居住している人 |
| 外部居住の区分所有者 | 対象になる | 居住者としては通常対象にならない |
| 賃借人 | 原則として組合員ではない | 対象になり得る |
| 主な利用場面 | 総会運営や管理費等の連絡 | 設備点検や日常管理や緊急時の連絡 |
| 管理上の重点 | 所有者と通知先を把握する | 現在の居住状況と連絡経路を把握する |
ここでいう「分ける」とは、必ず二つのExcelファイルを作るという意味ではありません。一つのシステムで管理する場合でも、所有者情報と居住者情報を明確に区別し、目的に応じて必要な情報を利用できる状態にします。
防災用の要援護情報は通常の名簿と分ける
防災を考える理事会では、「一人で避難することが難しい人を把握しておいた方が安心ではないか」という意見が出ることがあります。その背景には、災害時に誰かを取り残したくないという思いがあるでしょう。
一方、本人の立場から見ると、健康状態や障害に関する情報まで管理組合が保有するのであれば、「誰が閲覧するのか」「どこまで共有されるのか」という不安が生じます。
病歴や障害の事実などは要配慮個人情報に該当する場合があるため、通常の居住者名簿へ詳細な健康情報を当然のように加えるのではなく、利用目的、閲覧者、利用条件、更新方法などを別に整理したうえで管理することが重要です。
管理する側の「詳しく知っている方が安心」という気持ちが、本人側では「知らないところで私生活を把握されている」という不安に変わる場合があります。善意だけでは埋められない違いがあることを意識しておく必要があります。
区分所有者名簿を更新する7つの手順
ここから、冒頭で示した7ステップを具体的に進めます。
手順1 名簿更新の目的を理事会で決める
最初に決めるのは、確認票のレイアウトではありません。
総会や管理費等に関する連絡を確実にしたいのか、漏水や設備事故に備えたいのか、現在の居住者へ点検案内を届けたいのか、年次確認を継続できる仕組みにしたいのか、今回の更新によって何を改善するのかを整理します。
ここが曖昧なまま項目を作ると、「勤務先も念のため」「家族構成も何かのときに役立つかもしれない」と情報が増えていきます。しかし、住民から「何のために必要なのですか」と尋ねられたとき、理事によって説明が違えば不信感が生まれます。
個人情報保護委員会は、マンション管理組合などが名簿を作成する場合、利用目的を決めて本人へ伝え、書面で収集する場合には利用目的を明記することなどを示しています。
「何を聞くか」より先に「なぜ聞くのか」を決めることで、その後の判断も一貫しやすくなります。
手順2 現在ある名簿と関連資料を確認する
次に、現在保管されている組合員名簿と居住者名簿を確認します。
住所変更届、所有者変更に関する届出、賃貸に関する届出、総会資料の発送先一覧など、現在の氏名や連絡先と関係する資料も一緒に見ます。
管理会社へ管理業務を委託している場合には、管理会社側で管理されている住所や連絡先も確認します。この段階で、「管理会社のシステムだから正しい」「理事会のExcelだから正式」と決めつけないことが重要です。
理事会へ直接提出された変更届が管理会社へ伝わっていない場合もあれば、管理会社では新住所へ更新済みなのに理事会のExcelだけ古い場合もあります。
まず必要なのは、どこに何の情報があり、どこで食い違っているのかを把握することです。古い情報を新しいExcelへ転記しただけで「名簿を更新した」と思わないためにも、この現状確認が欠かせません。
手順3 確認票と案内文を作る
確認票を作るときには、記入欄より先に案内文を考えます。
区分所有者の立場からすると、ある日突然、電話番号やメールアドレス、緊急連絡先の提出を求められれば、「これまで聞かれなかったのに、なぜ必要なのだろう」と感じます。
そこで、名簿更新の理由、利用目的、提出期限、提出方法、問い合わせ先を分かりやすく示し、可能であれば誰が情報を取り扱うのか、どのように保管するのかも簡潔に説明します。
また、「登録内容に変更なし」という回答方法を用意しておけば、変更のない人が毎年すべてを書き直す必要はありません。
初年度だけを考えた確認票ではなく、翌年度以降も簡単に確認できる様式にしておくと、名簿管理が継続しやすくなります。
手順4 全区分所有者へ確認する
何年も確認していない場合には、「変更がある人だけ届け出てください」という方式では不十分な可能性があります。
本人は変更していないと思っていても、管理組合が保有している情報の方がさらに古い場合があるからです。
そのため、再構築を行う初年度は全区分所有者を対象として、現在の登録内容を確認する方法が考えられます。
郵送、各戸への投函、管理会社からの発送など、マンションの事情に合った方法を選びます。Webフォームを併用する場合には、回答しやすいかどうかだけでなく、誰のアカウントで管理するのか、誰が回答内容を閲覧できるのか、役員交代時に権限をどう引き継ぐのかまで決めてから利用します。
便利な仕組みと、継続して管理できる仕組みは同じではありません。
手順5 回収状況と確認履歴を記録する
回答を受け取ったら、名簿の氏名や住所だけを修正して終わらせず、住戸ごとの確認状況も残します。
確認済み、未回答、再案内済み、郵便返戻、調査中などの状態を分け、確認できた日付も記録します。
同じ住所が記載されていても、先月本人に確認した住所と、7年間一度も確認されていない住所では情報の確かさが違います。
さらに、連絡が取れない区分所有者について調査した場合には、結果だけではなく経過も記録します。いつ、どの住所へ発送したのか、郵便物がいつ戻り、返戻理由は何だったのか、管理会社へいつ何を確認したのかという履歴があれば、担当者が交代した後も調査状況を再現できます。
「前任者がかなり調べたらしい」という記憶ではなく、次の人が続きを進められる記録を残すことが重要です。
手順6 未回答者へ段階的に対応する
最初の提出期限で全員から回答が届くとは限りません。
単に忘れている人もいれば、書類を紛失した人、提出方法が面倒だった人、長期不在の人、個人情報の扱いに不安を持っている人もいます。
そのため、最初から強い催告を行うのではなく、「現在までご回答を確認できていないため、変更がない場合もご確認をお願いします」という形で再案内します。
それでも回答がない場合には、登録済みの電話やメールなど、管理組合が適切に利用できる別の連絡手段を検討します。
郵便物が戻ってくる場合は、単なる未回答ではなく所在地情報そのものが古い可能性があります。その場合には過去の届出や管理会社の情報を確認し、必要に応じて登記事項証明書等も確認します。
手順7 理事会で更新結果を確認する
一定期間の回収と未回答者対応を終えたら、理事会で結果を確認します。
たとえば100戸のうち96戸を確認でき、4戸が未確認だったとしても、全戸そろうまで名簿全体を「未更新」と扱う必要はありません。
96戸については確認済みとして整理し、残る4戸について、郵便返戻なのか、所有者調査中なのか、単純な未回答なのかを区別します。
未確認情報を推測で埋めないことも大切です。「おそらく以前と同じ住所だろう」と入力してしまえば、翌年度の役員には確認済みの情報に見えてしまいます。
確認できないものは確認できないと記録し、次の対応へつなげる方が、名簿全体の信頼性を高めます。
理事会で事前に決める項目
確認票を配布する前には、どの情報を集めるかだけでなく、その情報が届いた後にどう扱うかまで整理します。
| 決定項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 利用目的 | 総会運営や管理費等の連絡や緊急時対応など |
| 収集項目 | 目的に必要な氏名や住所や連絡先など |
| 回収方法 | 郵送や各戸投函やWeb回答など |
| 回答期限 | 初回期限と再案内時期 |
| 未回答者対応 | 再通知や個別連絡の進め方 |
| 更新担当 | 回答内容を確認して名簿へ反映する担当 |
| 保管場所 | 紙資料と電子データの保存先 |
| 閲覧権限 | 理事長や担当理事や管理会社等の範囲 |
| 管理会社との役割 | 受付や入力や保管や報告の分担 |
| 役員交代 | アカウントや鍵やデータの引継ぎ |
| 管理会社変更 | 名簿や履歴の返還や引継ぎ |
| 廃棄 | 旧名簿や回答票の処理方法 |
| 年次確認 | 毎年の実施時期と記録方法 |
特に注意したいのは、変更届の受付から名簿への反映までを一続きの流れとして確認することです。
たとえば、所有者や住所の変更届を管理会社が受け付ける場合、その内容を管理会社のシステムへ入力するだけなのか、管理組合が利用する名簿にも反映されるのか、更新された事実を理事会へどのように報告するのかまで決めておかなければ、情報の食い違いが再び発生します。
管理会社との契約が終了する場合についても、名簿や更新履歴をどの形式で返還または引き継ぐのか、旧管理会社側に残るデータを契約上どのように扱うのかまで確認しておくことが望ましいでしょう。
「誰かがやっているはず」という空白をなくすことが、名簿を再び古くしないための重要な対策になります。
名簿再構築チェックリスト
次のチェックリストは、最初からすべてを完成させるためのものではなく、理事会が現在地を確認するために使います。
- 現在の組合員名簿と最終確認時期を確認した
- 現在の居住者名簿と最終確認時期を確認した
- 現行管理規約と名簿関連細則を確認した
- 管理会社が保有している情報を確認した
- 管理業務委託契約における名簿管理の範囲を確認した
- 組合員名簿と居住者名簿の利用目的を整理した
- 収集する情報と収集しない情報を決めた
- 確認票に利用目的を記載した
- 回収方法と回答期限を決めた
- 未回答者への対応手順を決めた
- 確認済みと未確認を区別できる管理表を用意した
- 発送日や返送状況などの調査履歴を残せるようにした
- 回答内容を名簿へ反映する担当者を決めた
- 紙と電子データの保管場所を決めた
- 名簿へアクセスできる人を決めた
- 管理会社との情報更新経路を決めた
- 役員交代時のアクセス権変更方法を決めた
- 管理会社変更時のデータ引継ぎ方法を確認した
- 不要な旧名簿や回答票の処分方法を決めた
- 毎年の確認時期を年間予定へ組み込んだ
- 確認結果を議事録等へ残す方法を決めた
全部にチェックが入るまで作業を始めないという意味ではありません。現在の名簿を開き、最後にいつ確認したのかを調べるだけでも再構築は始められます。
そこで分からない項目が見つかれば、それ自体が次の理事会で決めるべき課題になります。
どの情報を確認すればよいか
名簿を作り直す機会があると、「せっかく全戸へ聞くのだから、この際できるだけ詳しく集めておこう」と考えることがあります。
管理する側から見れば、情報が多いほど安心に感じるでしょう。しかし、情報を提供する側から見れば、勤務先や家族構成まで尋ねられると、「そこまで管理組合へ知らせる必要があるのだろうか」と感じる可能性があります。
個人情報は、多く集めれば管理が良くなるわけではありません。収集した分だけ更新の手間と安全管理上の負担も増えます。
区分所有者の氏名と住戸情報
組合員名簿の土台となるのは、住戸番号と区分所有者の氏名または法人名です。
共有名義の場合には、共有者をどのように記録し、管理組合として誰へ連絡するのかも確認します。
所有者変更があったにもかかわらず旧所有者の名前が残っていれば、総会や管理費等に関する連絡にも影響します。
ただし、管理組合内部の名簿だけで現在の所有権を確定するのではなく、所有関係に疑義がある場合には登記事項証明書等を確認します。
区分所有者の送付先住所
外部居住の区分所有者については、管理組合からの通知を受け取る送付先を確認します。
賃貸住戸やセカンドハウスでは、マンション所在地と区分所有者本人が生活する住所が一致しないため、この情報が古いと総会資料などを適切な場所へ届けにくくなります。
住所等変更登記は2026年4月1日から義務化されています。2026年4月1日以後に不動産所有者の住所や氏名等に変更があった場合には、原則として変更日から2年以内に住所等変更登記を行う必要があります。一方、義務化前に住所や氏名等が変更され、変更登記が済んでいない場合には、2028年3月31日までに登記する必要があります。
したがって、施行日前に生じた変更について、昔の変更日から2年間を数えるわけではありません。
また、住所等変更登記が義務化されたからといって、登記上の住所が管理組合への通知先をすべて代替するわけでもありません。登記制度と、管理組合が日常的な連絡のために把握する送付先とは目的が異なる場合があるため、自分たちの規約や届出制度に沿って確認します。
電話番号
電話番号は、漏水や設備事故など、郵便では間に合わない場面で区分所有者へ連絡するために役立ちます。そのため、理事会としては「できれば全員の番号をそろえておきたい」と思うかもしれません。
ただし、国土交通省の名簿に関するQ&Aが直接示しているのは、組合員名簿については管理組合の運営上必要な情報を、居住者名簿については設備点検や漏水事故等への対応という趣旨に照らして必要な情報をまとめ、具体的な記載事項を各管理組合で検討するという点です。
全国共通のひな型が示されていないという事情だけから、電話番号について全国一律の法律上の提出義務がある、またはないと直接結論付けることはできません。
実際の取扱いについては、自分たちの管理規約や細則、届出様式、利用目的などを確認します。そのうえで電話番号の登録を求めるのであれば、「漏水その他の緊急時や管理上必要な連絡に利用します」というように、具体的な目的を説明することが重要です。
回答する側から見れば、「必須です」とだけ言われる場合と、「このような場面で連絡するために必要です」と理由を説明される場合とでは、受け止め方が変わります。
メールアドレス
メールアドレスも、管理組合から迅速に情報を届ける手段として役立ちます。
電子的な案内やWebサービスを利用しているマンションでは利便性が高いでしょう。
もっとも、電話番号と同様に、個々の情報項目について全国一律の提出義務を国土交通省の名簿Q&Aから直接導くことはできません。自分たちの規約や運用と照らし合わせ、何のために使用するのかを明確にしたうえで取得します。
居住者情報
居住者名簿では、現在その住戸で生活している人へ管理上必要な連絡をするための情報を検討します。
設備点検や事故対応が主目的であれば、居住者の氏名や連絡方法が中心になる場合があります。一方、続柄、年齢、勤務先などについてまで、一律に把握する必要があるとは限りません。
「この情報を具体的にいつ使うのか」と理事会で問い直し、説明できないのであれば収集しないという判断も必要です。
緊急連絡先
本人へ連絡できない場合に備え、親族等の緊急連絡先を登録してもらう方法もあります。
ただし、緊急連絡先として記録される第三者の氏名や電話番号も個人情報になり得ます。
「何かあったときに使います」という曖昧な説明にとどめず、本人と連絡できず、漏水や火災等への緊急対応が必要な場合など、利用する場面をできるだけ明確にしておいた方がよいでしょう。
回答を求めるときに避けたい強い表現
名簿確認を担当する理事にとって、何度も催促するのは負担です。そのため、「提出は必須です」「必ず記入してください」と強く書きたくなることがあります。
しかし、管理規約上の届出対象として位置付けられている事項と、管理上の必要性から協力を求める情報では、根拠が同じとは限りません。
特に電話番号、メールアドレス、緊急連絡先などについては、自分たちの規約や利用目的を確認しないまま「法律上必須です」「拒否できません」と断定することは避けた方がよいでしょう。
国土交通省が示しているのは、具体的な名簿の記載事項を各管理組合で検討するという考え方です。個人情報保護委員会も、名簿を作成する場合には利用目的を決めて本人へ伝え、取得した情報を適切に管理することを示しています。
「必要だから出してください」と言うだけではなく、「何に使い、誰が扱い、どのように管理するのか」を説明できる状態を作ることが、名簿への信頼につながります。
回答がない区分所有者への対応
名簿更新で理事会が最も疲れやすいのは、回答がない区分所有者への対応かもしれません。
一度お願いしても返事がなく、再案内にも反応がなければ、「どうして協力してくれないのだろう」と感じるのも自然です。
それでも、未回答の背景を最初から「協力拒否」と決めつけない方がよいでしょう。見落としただけの人、書類を紛失した人、長期不在の人、個人情報の扱いに不安を持つ人、すでに転居している人、所有者が死亡して相続手続中の住戸など、事情はさまざまです。
最初は穏やかに再案内する
初回期限を過ぎた段階では、「未提出です」と責めるより、「現在までご回答を確認できていないため、変更がない場合も確認をお願いします」と伝える方が穏当です。
返信用封筒をもう一度付けたり、Web回答を用意したりすると、単に手続が面倒だった人から回答を得られる場合もあります。
強い催告へ進む前に、回答しやすい環境を作ることが先です。
個人情報への不安には管理方法を説明する
本人と連絡できるのであれば、回答をためらう理由を確認します。
「誰がこの名簿を見るのですか」「理事を辞めた人のパソコンに残りませんか」と質問されたとき、理事会が答えられなければ、本人の不安はもっともです。
利用目的、保管場所、閲覧者、管理会社との共有範囲、役員交代時の権限処理などを説明できるようにします。
未回答者への対応は、相手に協力を迫るだけの時間ではありません。住民が回答しにくい理由を知ることで、自分たちの管理方法の不足に気付ける場合があります。
郵便物が戻った場合は同じ住所へ送り続けない
外部居住の区分所有者へ発送した郵便が宛先不明などで戻ってきた場合には、同じ住所へ何度発送しても解決しません。
過去の住所変更届、管理会社の登録情報、以前の発送先などを確認し、それでも所有関係に疑問があれば登記事項証明書等を確認します。
ただし、2026年時点では住所等変更登記の義務化前から残る未登記変更について2028年3月31日までの経過措置があるため、登記上の住所が必ず最新の生活上の連絡先だと決めつけることもできません。
登記情報は重要な確認資料ですが、管理組合の通知先名簿とは目的を分けて考えます。
賃貸住戸では連絡経路を探す
区分所有者の連絡先が分からなくても、賃借人が現在住んでいる場合があります。
このとき、賃借人に所有者の個人情報を無理に開示するよう求めるのではなく、管理組合からの書類を所有者へ取り次いでもらえないか相談する方法があります。
賃貸管理会社が分かっている場合にも、所有者へ確認依頼を届けてもらう方法を検討します。
目的は所有者に関する情報をできるだけ集めることではありません。管理組合から必要な連絡を本人へ届ける経路を取り戻すことです。
調査経過を残す
所在を確認できない区分所有者については、調査結果だけではなく経過も残します。
発送日、発送先、郵便物の返送日と理由、電話した日、管理会社へ照会した内容、登記事項を確認した日などを記録します。
担当者の「かなり探した」という記憶だけでは、役員が交代した後に同じ調査をもう一度行うことになります。
後任者が前回の到達点から始められる状態にしておくことが、役員交代を前提とした管理です。
確認できない情報を推測で埋めない
本人確認が取れないと、「以前の住所のままだろう」と処理したくなる場合があります。
しかし、その推測が翌年度の役員から見ると正式な登録情報に見えてしまいます。
確認できていないものは「未確認」、郵便が戻ったものは「郵便返戻」、調査を続けているものは「確認中」というように状態を区別します。
分からないことを正確に分からないまま残すことは、管理不足ではありません。確認済み情報と推測を混ぜないために必要な管理です。
管理会社が名簿を持っている場合の確認ポイント
管理会社へ管理業務を委託していると、「管理会社が名簿を持っているなら、管理組合で確認する必要はないのではないか」と考えることがあります。
しかし、管理会社がデータを保有していることと、管理組合として必要な名簿を利用できる状態にあることは同じではありません。
管理業務委託契約と更新経路を確認する
まず、管理業務委託契約書や仕様書を確認し、名簿管理について何を委託しているのかを整理します。
変更届を管理会社が受け付けるのであれば、その内容をどこへ入力し、管理組合へどのように共有するのかまで確認します。
管理会社のシステムだけで名簿を保管しているのであれば、管理組合が必要としたときにどのような方法で確認できるのかも重要です。
さらに管理会社を変更するときには、必要な名簿や更新履歴をどの形式で引き継ぐのか、契約終了後に旧管理会社側のデータをどのように扱うのかまで契約に照らして確認します。
管理会社と管理組合の名簿共有
管理会社との名簿共有については、「管理会社だから自由に共有できる」「個人情報だから一切共有できない」という二つの極端な理解を避ける必要があります。
個人情報保護委員会は、管理規約や管理業務委託契約の内容にもよるものの、利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを委託しており、その委託内容に組合員名簿の作成や保管等が含まれる場合には、管理会社から管理組合へ名簿を提供することも個人情報保護法上の第三者提供には当たらないと説明しています。
つまり、無条件に情報を行き来させてよいという意味ではありません。管理規約や委託契約に基づく委託関係があり、利用目的の達成に必要な範囲であることが前提になります。
また、同Q&Aでは、委託者には個人データの取扱いについて委託先を監督する義務があることも明示されています。
管理会社のデータも古い可能性がある
システム上に保存されているデータを見ると、紙やExcelより正確に感じるかもしれません。
しかし、理事会へ直接出された変更届が管理会社へ伝わっていなければ、管理会社側の情報が古いこともあります。
反対に、管理会社では更新されているのに理事会のExcelだけ以前の情報が残り、翌年そのExcelを使ってしまう場合もあります。
重要なのは、名簿を一つしか持たないことではありません。複数の情報源が存在するなら、何を基準情報として扱い、変更が生じたときどこへ反映するのかを決めることです。
個人情報を取り扱う際の注意点
名簿を作る話になると、「個人情報保護法があるのだから、情報を持たない方が安全なのではないか」という意見が出ることがあります。
しかし、管理に必要な連絡先まで持たなければ、日常業務や事故対応が難しくなります。
重要なのは、個人情報を持たないことではありません。なぜ必要なのかを定め、必要な範囲で取得し、適切に管理することです。
利用目的を具体的にする
確認票に「管理組合業務に使用します」とだけ書いても、回答する側には具体的な用途が見えません。
そこで、「総会その他の管理組合運営に必要な連絡」「管理費等に関する連絡」「設備点検や漏水事故等への対応」というように、利用場面を想像できる程度まで説明します。
利用目的が明確であれば、住民への説明だけでなく、理事会自身も「この情報をこの用途に使ってよいのか」を判断しやすくなります。個人情報保護委員会も、マンション管理組合による名簿作成について、利用目的を定めて本人へ伝えることや、取得した情報を適切に管理することを示しています。
情報を集めすぎない
「いつか役立つかもしれない」という理由だけで情報を増やすと、回答者の不安と管理組合の安全管理負担が同時に増えていきます。
勤務先、家族構成、健康状態などについては、具体的な利用場面を説明できるか慎重に考えます。
必要性を説明できない項目を集めないことも、個人情報管理の一部です。
閲覧できる人を限定する
理事会役員だからといって、全員がすべての個人情報を見る必要があるとは限りません。
理事長、名簿担当理事、業務上必要な管理会社担当者など、実際の業務に応じて範囲を決めます。
「役員だから見られる」という考え方ではなく、「この業務に必要だから見る」という整理の方が、情報の取扱いを説明しやすくなります。
紙の名簿も安全管理の対象になる
電子データばかりを心配し、紙の名簿を誰でも開けられる管理室の棚へ保管していては十分ではありません。
理事長が自宅へ持ち帰ったままになったり、不要な確認票を一般ごみとして処分したりすることも避けます。
施錠できる保管場所、持出し方法、不要になった書類の廃棄方法まで決めておく必要があります。
Excelで区分所有者名簿を管理する場合の注意点
令和7年改正マンション標準管理規約では、電磁的方法を利用可能とする規定例において、組合員名簿等を「書面又は電磁的記録」により作成して保管する構成が示されています。
そのため、Excelなどによる電子管理を一律に不適切と考える必要はありません。
ただし、標準管理規約は各マンションに自動的に適用される法律ではないため、実際の管理方法については自分たちの現行規約や運用との整合性を確認します。
個人のパソコンだけに依存しない
最も簡単なのは、担当理事のパソコンにExcelファイルを保存する方法かもしれません。
しかし、役員交代のたびにメールやUSBメモリで渡していると、いつの間にか複数のコピーが生まれます。
「名簿最新版」「名簿最新版2」「最終版」といったファイルが並ぶと、次の担当者にはどれを使えばよいのか分かりません。
個人の端末だけに依存せず、管理組合として基準となる保存場所を決めます。
パスワードだけで安心しない
Excelへパスワードを設定することは対策の一つですが、それだけで安全管理が完成するわけではありません。
ファイルを役員全員へメール添付し、それぞれのパソコンへ保存していれば、何個のコピーが存在するのか把握できなくなります。
保存場所、アクセスできる人、複製方法、バックアップ、退任役員が保有するコピーの処理まで一体として考えます。
クラウドで名簿を管理する場合の注意点
クラウドを利用すれば、一つのデータを複数の担当者で確認しやすくなり、基準となるファイルを一本化しやすくなります。
役員交代のたびにUSBメモリを渡す必要も減るため、適切に利用すれば属人化を減らす方法の一つになります。
ただし、個人アカウントを共有したり、退任した理事のアクセス権を残したりすれば、かえって誰が情報を見られるのか分からない状態になります。
利用するサービスに応じて、管理組合用アカウントの利用、認証方法、閲覧権限と編集権限、退任者の権限解除、バックアップなどを検討します。
クラウドだから安全なのでも、クラウドだから危険なのでもありません。管理方法を含めて判断することが重要です。
役員交代でも名簿管理を止めない方法
名簿を一度きれいに作っても、次の理事長が使えなければ数年後には再び古くなります。
引継ぎで大切なのは、ファイルを渡したという事実ではありません。後任者が自分で組合員名簿の保存場所へ到達し、居住者名簿との違いを理解し、住所変更届を受け取ったときにどの情報を更新するのか分かるところまで確認します。
クラウドを利用している場合には、新任役員へ必要な権限を設定し、退任した役員の権限を解除します。紙の名簿なら、保管場所、鍵、更新様式などを引き継ぎます。
前任者が「説明しました」と言える状態より、後任者が「自分で更新できます」と言える状態を引継ぎ完了の基準にした方が、情報管理は長く続きます。
年1回の確認を仕組み化する方法
初年度に全戸確認を行うと、「これを毎年やるのは大変だ」と感じるでしょう。
しかし、一度基礎情報を整えれば、翌年度から同じ規模の調査を繰り返す必要はありません。
変更の有無を簡単に確認できる仕組みにすることで、名簿管理を通常業務へ変えられます。
毎年同じ時期に確認する
毎年9月、通常総会準備の前など、実施時期を年間予定へ組み込みます。
「担当者が覚えていたら実施する」という仕事は、担当者が替われば抜け落ちます。
年間スケジュールに入れることで、個人の記憶ではなく管理組合の業務として残します。
変更なしでも回答できるようにする
「変更がある人だけ提出してください」という方法では、回答がない人について、確認した結果変更がなかったのか、案内そのものを見ていないのか区別できません。
そこで、紙なら「変更なし」にチェックして返送できる様式にし、Webなら簡単な操作だけで「変更なし」と回答できるようにします。
毎年すべてを書き直してもらう必要はありませんが、本人等が確認した事実を残せる仕組みにすることが重要です。
通常総会など既存業務と組み合わせる
通常総会など毎年全区分所有者へ書類を発送する時期があれば、名簿確認案内を同封する方法もあります。
ただし、既存の登録情報を印字して本人に確認してもらう方式では、誤封入に注意が必要です。
別住戸の確認票を送ってしまえば、名簿更新作業そのものが個人情報漏えいにつながります。
効率化するときほど、間違った場合の影響まで考える必要があります。
随時更新と年次確認を組み合わせる
年1回の確認があるからといって、その間の変更届を放置してよいわけではありません。
所有者変更や住所変更があれば随時基準となる名簿へ反映し、それとは別に定期的な全体確認を行います。
この仕組みが定着すれば、年次確認で大量の修正を行う必要も減り、「名簿更新」という大仕事が通常業務へ変わっていきます。
名簿更新で起こりやすい失敗例と改善例
以下は特定の管理組合における支援実績を示すものではなく、実務上起こり得る問題を組み合わせた想定例です。
情報を集めすぎて回答されなくなる例
長期間名簿を確認していなかったため、理事会が「この機会に全部集めよう」と考え、区分所有者の氏名や住所だけでなく、勤務先、家族全員の氏名、年齢、緊急連絡先まで記入する調査票を作ったとします。
理事会側には、「詳しく知っておいた方が安心だ」という理由があります。しかし、回答する側から見れば、「勤務先を何に使うのか」「家族の年齢を誰が見るのか」という不安が生じます。
案内文には「管理組合業務に使用します」としか書かれておらず、質問すると役員ごとに説明が違う状態なら、必要な氏名や住所まで回答したくないと考える人が現れても不思議ではありません。
改善するには、先に利用目的を決め、その目的に対応する情報だけを選びます。
管理側の安心のために情報を増やすのではなく、回答する側にも必要性を説明できるかという視点を持つことが重要です。
管理会社と理事会の住所が食い違う例
区分所有者が管理会社へ住所変更届を提出し、管理会社では新住所へ更新済みだったものの、理事会のExcelには反映されていなかったとします。
翌年、新しい理事長がそのExcelを正式な名簿だと思って総会発送に使用すれば、正しい変更届が提出されていたにもかかわらず、古い住所が再び使われます。
この問題は、管理会社か理事会のどちらかが怠けたというより、変更情報をどこへ集約するのか決まっていないことが原因です。
基準となる情報と更新経路を決めることで、同じ問題を起こりにくくできます。
引継ぎ資料があっても後任者が使えない例
前理事長が個人のパソコンに名簿、議事録、届出書を完璧に整理していたとしても、後任者が保存場所を知らなければ管理組合の情報として機能しません。
「ファイルを渡した」という事実ではなく、後任者が自力で必要な情報へ到達できる状態を目指します。
名簿更新方法、基準データ、管理会社との役割、保存場所まで確認できて初めて、仕組みが次年度へ引き継がれます。
| 失敗例 | 改善例 |
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長期間名簿を確認していなかったため、理事会が「この機会に全部集めよう」と考え、区分所有者の氏名や住所だけでなく、勤務先、家族全員の氏名、年齢、緊急連絡先まで記入する調査票を作ったとします。 理事会側には、「詳しく知っておいた方が安心だ」という理由があります。しかし、回答する側から見れば、「勤務先を何に使うのか」「家族の年齢を誰が見るのか」という不安が生じます。 案内文には「管理組合業務に使用します」としか書かれておらず、質問すると役員ごとに説明が違う状態なら、必要な氏名や住所まで回答したくないと考える人が現れても不思議ではありません。 |
改善するには、先に利用目的を決め、その目的に対応する情報だけを選びます。 管理側の安心のために情報を増やすのではなく、回答する側にも必要性を説明できるかという視点を持つことが重要です。 |
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区分所有者が管理会社へ住所変更届を提出し、管理会社では新住所へ更新済みだったものの、理事会のExcelには反映されていなかったとします。 翌年、新しい理事長がそのExcelを正式な名簿だと思って総会発送に使用すれば、正しい変更届が提出されていたにもかかわらず、古い住所が再び使われます。 この問題は、管理会社か理事会のどちらかが怠けたというより、変更情報をどこへ集約するのか決まっていないことが原因です。 |
基準となる情報と更新経路を決めることで、同じ問題を起こりにくくできます。 |
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前理事長が個人のパソコンに名簿、議事録、届出書を完璧に整理していたとしても、後任者が保存場所を知らなければ管理組合の情報として機能しません。 |
「ファイルを渡した」という事実ではなく、後任者が自力で必要な情報へ到達できる状態を目指します。 名簿更新方法、基準データ、管理会社との役割、保存場所まで確認できて初めて、仕組みが次年度へ引き継がれます。 |
マンション管理士へ相談した方がよいケース
名簿再構築は、必ず専門家へ依頼しなければできない業務ではありません。
管理規約が整理され、所有者の連絡先がおおむね分かり、管理会社との役割分担も明確であれば、理事会主体で進められる場合があります。
一方、名簿を確認したことで、所有者不明、相続、規約の不足、名簿閲覧を巡る対立などが見つかれば、単純な情報更新では解決できません。
管理規約が現在の運用と合っていない場合
長年見直されていない規約では、現在の実務と名簿に関する規定が合っていない場合があります。
標準管理規約を参考にしながら、自分たちのマンションに必要な規定を検討する際には、マンション管理士へ相談する方法があります。
ただし、標準管理規約をそのままコピーすればよいとは限りません。
所有者不明や相続未了がある場合
登記名義人が死亡しているものの相続人が分からない場合や、多数の相続人が関係して所有者への連絡が難しい場合には、通常の名簿確認だけで解決することは難しくなります。
管理組合としての対応整理をマンション管理士へ相談し、登記や相続手続については司法書士、紛争や裁判所手続については弁護士など、内容に応じた専門家へつなぐことも考えます。
名簿閲覧を巡り対立している場合
令和7年改正マンション標準管理規約では、相当の理由を付した組合員による組合員名簿等の閲覧請求に関する規定例も示されています。電磁的方法を利用可能とする規定例では、書面または電磁的方法による請求や情報提供についても規定されています。
ただし、実際の対応では自分たちの現行管理規約を確認する必要があります。
個人情報だから絶対に閲覧できない、組合員だから無条件にすべて閲覧できるという二択にせず、規約上の根拠、請求理由、対象情報、閲覧方法などを整理して判断します。
難しい場合には、マンション管理士や弁護士へ確認した方がよいでしょう。
個人情報取扱細則を整備したい場合
利用目的、閲覧者、保管方法、管理会社との共有、退任役員のデータ処理などを毎年度その場で判断していると、役員が替わるたびにルールも変わります。
一定の運用を細則として整理することで、住民への説明と役員交代時の引継ぎを行いやすくできます。
よくある質問
- 区分所有者名簿は毎年更新しなければいけませんか
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令和7年改正マンション標準管理規約では、組合員名簿等について毎年1回以上内容を確認する規定例が示されています。管理計画認定制度では、法令上は区分所有者名簿と居住者名簿が年一回以上「更新」されていることが認定基準となっています。
標準管理規約は自分たちの規約そのものではないため、実際の運用では現行管理規約も確認してください。
- 電話番号やメールアドレスまで集めても問題ありませんか
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利用目的を定め、自分たちの規約や細則との関係を確認したうえで、管理上必要な範囲を検討します。
国土交通省の名簿Q&Aは具体的な記載事項を各管理組合で検討するとしており、電話番号やメールアドレスについて全国一律の提出義務の有無を直接示しているものではありません。
- 回答してくれない区分所有者にはどう対応しますか
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まず穏やかに再案内し、個人情報への不安がある場合には利用目的や管理方法を説明します。
郵便が戻る場合には過去の届出や管理会社の情報、必要に応じて登記事項証明書等を確認し、対応した日時や結果を記録しておきます。
- 管理会社が持っている名簿を管理組合で確認できますか
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管理規約や管理業務委託契約の内容にもよりますが、利用目的の達成に必要な範囲で名簿管理を委託し、その委託内容に名簿の作成や保管等が含まれている場合には、管理会社から管理組合への名簿提供が個人情報保護法上の第三者提供に当たらない場合があります。
無条件にあらゆる情報を共有できるという意味ではないため、契約と委託範囲を確認します。
- 区分所有者名簿と居住者名簿は分けた方がよいですか
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対象者と利用目的が違うため、情報として区別した方が管理しやすくなります。
必ず別ファイルにする必要はありませんが、一つのシステムで管理する場合でも所有者情報と居住者情報を区別できるようにします。
- Excelで管理してもよいですか
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令和7年改正マンション標準管理規約のうち、電磁的方法を利用可能とする規定例では、組合員名簿等を「書面又は電磁的記録」で作成し保管する構成が示されています。
電子管理そのものを一律に不適切と考える必要はありませんが、自分たちの規約との整合性を確認し、保存場所、アクセス権、複製、バックアップ、役員交代時のデータ処理まで含めて管理します。
まとめ
区分所有者名簿の更新で本当に必要なのは、古いExcelをきれいに書き換えることではありません。
最初に行うのは、現在の名簿がいつ確認されたものかを調べ、何のためにどの情報を確認するのかを理事会で決めることです。そこから全区分所有者への確認、回収状況の記録、未回答者への対応、名簿への反映までを一つの流れとして整えます。
その際には、組合員名簿と居住者名簿を分けて考え、確認できない情報を推測で埋めず、管理会社が保有する情報との更新経路も決めておきます。
個人情報については、詳しく集めることが良い管理なのではありません。管理する側が「知っていれば安心」と感じる情報でも、回答する側には「なぜそこまで知らせるのか」という不安があります。
必要性を説明できる情報を必要な範囲で集め、誰がどのように扱うのかを明らかにすることが、名簿への信頼につながります。
そして、今年だけ正しい名簿を作って終わらせないことが重要です。
役員が交代しても後任者が自力で名簿へ到達し、変更届を受け取ったときに何を更新すればよいのか分かる状態まで残しておかなければ、数年後に同じ問題が起こります。
一度にすべてを完成させる必要はありません。まず現在の名簿を開き、最終確認日を調べる。その結果を次の理事会で共有し、利用目的を決めた後に確認票を作るというように、小さく進めれば再構築は始められます。
必要なときに必要な人へ連絡でき、その状態を次の役員へ無理なく引き継げること。それが、マンションの区分所有者名簿を更新する本当の意味ではないでしょうか。
参考資料
本文の主軸となる制度や個人情報の取扱いについては、次の公式資料を確認できます。