「自分が良いと思うのだから、ほかの人も良いと思うはず」と考えることと、「みんなが選んでいるから、自分も選んでみよう」と感じることは、どちらも周囲の人が関係するため混同されがちです。しかし、二つでは判断するときの参照方向が異なります。自分自身を手掛かりに他者を推測するのがフォールスコンセンサス効果であり、他者の選択や人気情報を手掛かりに自分の判断が変わるのがバンドワゴン効果です。
フォールスコンセンサス効果とバンドワゴン効果の違い
二つの違いを理解するときは、「誰を参照して、誰について判断しているのか」を見ると整理しやすくなります。
フォールスコンセンサス効果では、自分自身の意見や選択が出発点です。「私はこう思うのだから、ほかの人にも同じ考えが多いだろう」と、自分の反応を手掛かりに他者の反応やその一般性を推測します。
一方、バンドワゴン効果では、多くの人が支持していることや、すでに人気を集めているという情報が判断材料になります。「これだけ多くの人が選んでいるなら、自分も選んでみよう」と考え、人気や多数派についての情報が本人の評価や選択に関係します。
覚え方としては、次のように整理できるでしょう。
フォールスコンセンサス効果は「自分 → 他者についての推測」です。
バンドワゴン効果は「他者や人気情報 → 自分の判断」です。
ただし、この矢印は認知の参照方向を示したものです。フォールスコンセンサス効果では、自分の考えによって他者の意見そのものを変化させているわけではありません。
Rossらが1977年に提示したフォールスコンセンサス効果では、自分と同じ反応を相対的に一般的なものとして捉えやすいことが中心にあります。後続研究でも、自分がどちらの選択肢を選んだかと、一般の人々が各選択肢を選ぶ割合についての推定との関係として検討されています。
これに対して、バンドワゴン効果は、他者の消費や人気などの外部情報と本人の需要や選択との関係を扱います。Leibensteinは1950年の論文で、他者が同じ商品を消費していることによって個人の需要が増える現象を、消費の外部効果の一つとして論じています。
ここで、一つ境界線を引いておく必要があります。
大勢と同じ行動を取ったからといって、必ずバンドワゴン効果とは限りません。「自分だけ反対すると責められそうだから賛成した」という場面なら、同調や集団規範など、別の社会心理学的な説明が重要になる可能性があります。
したがって、「自分→他者」「他者→自分」という整理は理解を助ける補助線ではありますが、人の心理状態を一つの行動から確定する診断基準ではありません。
| 比較観点 | フォールスコンセンサス効果 | バンドワゴン効果 |
|---|---|---|
| 認知の出発点 | 自分自身の意見や選択 | 周囲の人気や他者の選択 |
| 参照方向 | 自分 → 他者についての推測 | 他者や人気情報 → 自分の判断 |
| 典型的な考え | 「私はこう思うから他人もそうだろう」 | 「多くの人が選んでいるから自分も選ぼう」 |
| 主に生じること | 他者の反応の一般性について推測が偏る | 人気情報が自分の評価や選択の判断材料になる |
| 典型的な場面 | 意見の推測 顧客予測 価値観のすれ違い | 人気商品 行列 ランキング 閲覧数 |
二つを見分ける中心は、「多数派」という言葉ではなく、判断するときに何を参照しているのかという点です。
この軸を持っておくと、研究上の定義だけでなく、身近な行動も整理しやすくなります。
フォールスコンセンサス効果とは
フォールスコンセンサス効果とは、自分自身の意見や信念、価値観、好み、行動などを手掛かりとして、自分と同じ反応が他者にも比較的広く存在すると見積もりやすくなる認知バイアスです。
Rossらの1977年の研究によって広く知られるようになり、その後もさまざまな状況や文化を対象として研究されています。2019年の文化間比較研究でも、参加者自身の選択と、一般の人々がそれぞれの選択肢を選ぶ割合についての推定を比較する、伝統的な研究方法が採用されています。
必ず自分を多数派だと思うわけではない
フォールスコンセンサス効果について、「自分の意見を50%を超える人が支持していると思い込むこと」と理解すると、意味が少し狭くなります。
重要なのは絶対的な過半数ではなく、自分と同じ反応の一般性を、異なる反応を選んだ人より相対的に高く見積もることです。2019年の研究でも、フォールスコンセンサス効果は、自分の反応が必ず多数派だと考えることではなく、自分と同じ反応を相対的に一般的だと捉える現象として説明されています。
たとえば、AとBの二つの選択肢があるとしましょう。
Aを選んだ人が「世の中でAを選ぶ人は30%くらいだろう」と推定したとします。この人自身は、Aが多数派だとは考えていません。
一方、Bを選んだ人へ同じ質問をしたところ、「Aを選ぶ人は10%くらいだろう」と推定したとします。
この場合、Aを選んだ人が推定したAの割合は30%であり、Bを選んだ人による10%という推定より高くなっています。
つまり、Aが過半数だと思われていなくても、自分と同じ選択肢の一般性が相対的に高く見積もられているわけです。
フォールスコンセンサス効果を見るときは、「自分を多数派だと思ったか」だけではなく、自分の選択によって他者の割合についての推定がどう異なるかを見る必要があります。
サンドイッチボード実験で見える推測の違い
Rossらの研究で広く知られているのが、「Eat at Joe's」と書かれたサンドイッチボードを身につけてキャンパス内を歩くよう学生へ依頼した場面です。
かなり目立つ格好ですから、「面白そうだからやってもいい」と感じる学生がいる一方、「そこまで目立ちたくない」と拒否する学生もいました。
研究者が注目したのは、その承諾率だけではありません。
学生たちに、ほかの学生なら同じ依頼をどの程度受け入れると思うかを推定してもらったところ、承諾した学生は、ほかの学生にも承諾する人が比較的多いと予測しました。一方、拒否した学生は、拒否する人が多いと見積もっています。
古典的に紹介される値では、承諾した学生はほかの学生の約62%も承諾すると推定し、拒否した学生は約67%が拒否すると推定しました。
同じ大学の学生について考えているにもかかわらず、自分自身がどちらを選んだかによって「ほかの人ならどうするか」という見積もりが変わっています。
本人には、それほど不自然な推測には感じられないでしょう。
自分が「これくらいならできる」と思えば、その選択には納得できる理由があります。反対に「絶対にやりたくない」と感じる人には、断る理由のほうが自然に見えます。
自分自身が判断した理由は詳しく分かりますが、別の判断をする人が何を感じているのかは、同じ鮮明さでは分かりません。
こうした認知の非対称性も、自分自身を他者推測の足場として使いやすくする説明の一つとして考えられています。ただし、フォールスコンセンサス効果の原因が、この仕組み一つだけで確定しているわけではありません。
なぜ自分と同じ人が多く見えるのか
フォールスコンセンサス効果の背景については、複数の説明が検討されています。
その一つが、選択的接触や利用可能性に関する考え方です。私たちは社会全体から無作為に人間関係を作るわけではなく、学校や職場、趣味などを通して、自分と似た人へ接触しやすくなる場合があります。
ある人の親しい友人がほとんどアウトドア好きなら、休日になるとキャンプや登山の話を頻繁に聞くでしょう。SNSにも同じ趣味の投稿が多く表示されれば、「休日は外へ出掛ける人がかなり多い」という感覚が生まれるかもしれません。
しかし、その人の生活圏では目立たないだけで、休日を家で過ごしたい人もいます。
この場面は、特定の研究結果をそのまま再現したものではなく、選択的接触という考え方を理解するための例です。
大切なのは、「自分の身近な世界でよく見える人」と「社会全体の人々」を、そのまま同じものとして扱わないことでしょう。
バンドワゴン効果とは
バンドワゴン効果とは、多くの人が支持していることや、すでに広く選ばれていることが手掛かりとなり、自分自身の需要や評価、選択がその方向へ傾く現象です。
Leibensteinは1950年の論文で、消費者の需要がほかの人の消費から独立していない状況を取り上げ、他者が同じ商品を消費するほど、その商品に対する個人の需要も高まる現象をバンドワゴン効果として論じました。
なぜ人気が判断材料になるのか
初めて訪れた街で、二つの飲食店が並んでいる場面を考えてみましょう。
一方はすぐに入れますが、もう一方には長い行列があります。どちらの料理についてもほとんど情報を持っていない人なら、「これだけ人が並んでいるなら、こちらのほうがおいしいのかもしれない」と感じる可能性があります。
本人は、何も考えずに他人へ流されているとは限りません。
知らない店の料理やサービスを一から調べるには時間がかかります。そのため、ほかの人が選んでいる事実を、「失敗しにくそうだ」と考えるための情報として利用しているという可能性があります。
一方、「自分だけ違うものを持っているのは落ち着かない」「仲間と同じものを選びたい」という理由で周囲へ合わせる場合もあるでしょう。
この場合には、バンドワゴン効果だけでなく、規範的な同調や所属への欲求など、別の概念による説明も考えられます。
人気を判断材料にしたという表面だけで、その内側にある心理まで一つの効果に決めつけないことが重要です。
オンライン動画で研究された人気と後続選択の関係
バンドワゴン効果は、オンライン上の閲覧数や人気指標との関係でも研究されています。
FuとSimによる2011年の研究では、実際の動画共有サイトから取得された動画データを用いて、それまでに蓄積された閲覧数と、その後に獲得する閲覧との関係が縦断的に分析されました。研究者が動画へ高い閲覧数を無作為に割り当てた実験ではなく、現実のサイト上で生じたデータを分析した研究です。
したがって、「高い閲覧数を表示したことだけが原因で、その後の閲覧が増えた」と単純な因果関係として解釈することは慎重であるべきでしょう。
一方、その分析では、すでに多くの閲覧を集めていた動画ほど、その後も閲覧を集めやすいという、バンドワゴン効果と整合する関係が報告されています。
Fuによる2012年の研究でも、実際の動画共有サイトのデータを使い、閲覧数などの人気指標、サムネイル、説明文と動画選択との関係が分析されています。高い閲覧数を持つ動画ほど、その後の人気がさらに拡大するパターンが報告されていますが、こちらも現実のデータを利用した分析として読む必要があります。
研究から確認できる範囲と、日常生活へ応用した説明は分けて考えたほうがよいでしょう。
研究では、オンライン動画における人気指標と後続の閲覧との関係が示されています。そこから、ECサイトのランキングやアプリのダウンロード数でも必ず同じ心理が働くとまでは言えません。
それでも、「すでに多く選ばれている」という情報が、人が選択肢を見る際の判断材料になり得るという視点は、自分自身の行動を振り返る手掛かりになります。
同じ場面で見る2つの違い
ここまでの違いを、同じ状況で比べてみましょう。
買い物の場合
ある人がパソコンを選ぶとき、処理速度やメモリー容量を何より重視しているとします。
仕事で性能不足に困った経験があるため、「パソコンを買う人なら、多くの人がデザインより性能を重視するはずだ」と考えました。
この場合、自分自身の購買基準を手掛かりとして、一般の消費者が何を重視するかを推測しています。フォールスコンセンサス効果に近い構造です。
一方、もともとは別の商品が気になっていたものの、「売れ筋ランキング1位」という表示を見て、「これだけ選ばれているなら安心できそうだ」と購入商品を変えたとします。
こちらでは、多くの人が購入したという情報が本人の判断材料になっています。バンドワゴン効果として考えやすい場面でしょう。
同じ商品を選んだという結果だけでは、どちらの心理が関係しているのかは分かりません。
職場の場合
ある社員は、在宅勤務のほうが仕事に集中できると感じています。
その経験を手掛かりとして、「同僚にも在宅勤務を望んでいる人が多いはずだ」と実際に尋ねず推測したのであれば、自分自身を参照して他者について判断しています。
一方、本人は在宅勤務を希望しているものの、チームの大半が毎日出社していると知り、「みんなが出ているなら自分も出社しよう」と判断した場合は、周囲の行動が自分の意思決定に関係しています。
もっとも、「みんなが選んでいるから良いと思った」のか、「自分だけ違うと不利益がありそうだから合わせた」のかで説明は変わります。
後者なら、バンドワゴン効果より同調や規範的社会的影響を考えるほうが適切な場合もあります。
SNSの場合
SNSでは、二つの効果が近い場面に現れるため、とくに混同しやすくなります。
自分と同じ意見の投稿を何度も目にして、「世間でも自分と同じ意見の人が多いだろう」と考えたのであれば、自分の態度と他者についての推測との関係が問題になります。
自分自身の態度と一致する方向へ偏ったニュースフィードを使った実験では、そのような情報へ接触した参加者が、自分の意見に対する社会的支持をより高く推定する結果が報告されています。
一方、「この投稿には非常に多くの反応が付いている。それだけ支持されているなら、自分も賛成してよさそうだ」と感じて自分自身の評価を変えたのであれば、人気情報が判断材料になっています。
同じ人気投稿を見ていても、自分の意見の一般性を推測しているのか、人気情報を手掛かりに自分の態度を決めているのかで意味は異なります。
飲食店の場合
ある人は辛い料理が大好きで、「これほどおいしいのだから、友人もきっと喜ぶ」と考え、相手の好みを詳しく聞かずに激辛料理の店を予約しました。
本人には押し付ける意図などなく、「好きなものを一緒に楽しみたい」という善意があります。
ところが友人は、辛い料理が苦手でした。
予約した本人は「そんなに苦手だったの?」と驚き、友人も「先に聞いてほしかった」と困るかもしれません。
ここでは、自分自身の好みを参照して、相手の好みを推測しています。フォールスコンセンサス効果に近い場面と考えられるでしょう。
一方、旅行先で店の情報をほとんど持っておらず、二軒のうち片方だけに長い行列ができているのを見て、「これだけ人がいるなら、こちらを選ぼう」と決めた場合には、他者の選択が本人の判断材料になっています。
同じ飲食店選びでも、何を参照したのかが違うのです。
マーケティングでは両方が別の局面で現れる
マーケティングは、二つの違いを理解しやすい場面です。
ある飲料メーカーで、担当者が酸味の強い新商品を試飲し、「これは新しくておいしい」と感じたとします。開発チームにも似た好みの人が多く、会議では高評価が続きました。
すると、「これなら顧客にも受けるだろう」という安心感が生まれるかもしれません。
自分やチームの好みを手掛かりとして、顧客にも同じ好みを持つ人が多いと推測するのであれば、フォールスコンセンサス効果が問題になります。
マーケターが自分の個人的な製品選好を消費者へ投影する問題は、実際のマーケティング研究でも検討されています。Herzog、Hattula、Dahlらの研究では、マーケティング実務家を対象とした複数の研究を通して、専門家であっても自身の好みを顧客へ投影し得ることが扱われています。関連する研究報告では、全体として714人のマーケティング実務家を対象に6研究が行われたと説明されています。
日本の研究レビューでも、マーケターの製品に対する個人選好が消費者選好の予測へ入り込み、実際の顧客の好みとずれる問題が整理されています。
一方、その商品が発売されたあと、「販売数100万個突破」「人気ランキング1位」といった情報を見た消費者が、「これだけ売れているなら試してみよう」と購入した場合には、人気情報が本人の購買判断に関係しています。
こちらはバンドワゴン効果として考えやすい構造です。
売り手側では、自分の好みを手掛かりに顧客を推測することが問題になり、買い手側では、周囲の人気情報を参照して自分が選ぶことが問題になり得ます。
同じ一つの商品でも、参照している情報と判断対象が異なるのです。
自分の好みを消せば解決するとは限らない
フォールスコンセンサス効果を知っているマーケターなら、自分の好みを無視すればよいようにも思えます。
しかし、それほど単純ではありません。
Herzogらの研究では、多くのマーケターがフォールスコンセンサス効果の存在を認識し、個人的な好みを抑えようとしていることが示されています。一方、その方法の効果は、本人が自分の選好についてどの程度確信を持っているかによって異なると報告されています。
自分の好みがはっきりしている場面では、「これは自分自身の好みだ」と顧客予測から切り離すことが役立つ場合があります。
反対に、自分自身の選好まで曖昧なときには、好みを意識的に抑えようとする方法が、必ずしも望ましい結果につながらないという可能性があります。
つまり、大切なのは自分の感覚を消すことではありません。
「私はこれが好きだ」という情報と、「顧客にもこれを好きな人が多い」という仮説を、別のものとして扱うことです。
見分けるときは3つだけ確認する
日常の場面で二つを見分けるなら、細かな定義を毎回思い出す必要はありません。
まず、最初の手掛かりが何だったかを確認します。
自分自身の意見や選択が先にあり、それを手掛かりに他者の反応を推測しているなら、フォールスコンセンサス効果を考えやすくなります。反対に、多数派や人気についての情報を知り、その後で自分の評価や選択を決めているなら、バンドワゴン効果を検討できます。
次に、何について判断していたのかを見ます。
「ほかの人も自分と同じだろう」という他者についての推測が中心なら、フォールスコンセンサス効果に近いでしょう。「大勢がそうしているから自分も選ぼう」という本人自身の選択が中心なら、バンドワゴン効果に近くなります。
最後に、別の説明がないかを考えます。
人気商品を選んだのは、単に性能が良かったからかもしれません。職場で周囲と同じ行動をしたのは、多数派を魅力的だと思ったからではなく、上司からの圧力や不利益への不安が理由という可能性もあります。
心理効果を見分けるときは、最終的な行動よりも、そこへ至った判断経路を見ることが大切です。
5問で確認する見分けクイズ
第1問 新製品の操作性
ある商品企画責任者が新しいアプリを操作し、「自分は説明書なしで使えたから、高齢の利用者でも簡単に使えるはずだ」と考えてユーザーテストを省略しました。
この場面は、フォールスコンセンサス効果に近いでしょう。
企画責任者が自分自身の操作感覚を手掛かりとして、別の属性を持つ利用者の使いやすさまで推測しているからです。ただし、十分な利用者調査を別に持っている場合などは、同じ発言でも解釈が変わります。
第2問 人気サービスへの加入
ある人は動画配信サービスへ特に興味を持っていませんでしたが、「利用者数トップ」という情報を見て、「これほど多くの人が利用しているなら、自分も試してみよう」と加入しました。
これは、バンドワゴン効果に近い場面です。
他者による利用の多さが、その人自身のサービス選択における判断材料になっています。
第3問 地域活動への参加予測
ある地域活動のリーダーが、「自分はこの活動に大きな価値を感じているのだから、地域の人にも参加したい人が多いはずだ」と考えました。
これは、フォールスコンセンサス効果に近い場面でしょう。
活動に対する自分自身の価値判断を参照し、ほかの住民の価値判断や参加意向を推測しているからです。
第4問 話題の映画
ある人は予告編を見ても映画に興味を持ちませんでしたが、「連日満席」「大ヒット」という情報を何度も目にし、「そこまで人気なら見てみたい」と映画館へ向かいました。
これは、バンドワゴン効果に近い場面と考えられます。
大勢から支持されているという情報が、本人が映画を見るかどうかを決める際の材料になっています。
第5問 会社と世間の感覚
ある会社で問題が起きた際、担当者が「社内ではこの程度なら重大ではない。世間でも同じくらいの受け止め方だろう」と考え、外部の反応を確認しないまま対応を決めました。
これは、フォールスコンセンサス効果に近い場面でしょう。
自分たちの組織で共有されている感覚を参照して、社外の人々の受け止め方を推測しています。
五つの例を比べると、商品開発だからフォールスコンセンサス効果、買い物だからバンドワゴン効果と決まっているわけではないことが分かります。
同じ場面でも、何を参照し、誰について判断したのかによって説明は変わります。
フォールスコンセンサス効果とバンドワゴン効果のよくある質問
- フォールスコンセンサス効果とバンドワゴン効果は同じですか
-
同じではありません。
フォールスコンセンサス効果では、自分自身の反応を参照して、他者にも同じ反応が比較的多いと推測します。
一方、バンドワゴン効果では、ほかの人の選択や人気に関する情報が、本人自身の評価や選択の判断材料になります。
迷ったときは、「自分→他者についての推測」と「他者や人気情報→自分の判断」に分けると理解しやすいでしょう。
- フォールスコンセンサス効果と同調は何が違いますか
-
フォールスコンセンサス効果では、自分の意見そのものが周囲に合わせて変化する必要はありません。
自分がある考えを持っていることを手掛かりに、「ほかの人にも同じ考えが多いだろう」と推測することが中心です。
同調では、他者の意見や集団規範などを受け、本人自身の行動や表明する意見が周囲へ近づきます。
たとえば、リーダーが「全員がこの方針に賛成しているはずだ」と自分の考えを基準に合意を推測する場面には、フォールスコンセンサス効果が関係する可能性があります。
その空気を感じた部下が、本当は反対なのに「自分だけ反対しにくい」と賛成へ合わせるなら、その後には同調の問題が生じます。
同じ会議の中で続けて起こることはあっても、同じ心理現象ではありません。
- フォールスコンセンサス効果は誰にでも起こりますか
-
すべての人に、どのような状況でも必ず起こるとは言えません。
一方、フォールスコンセンサス効果自体は多くの研究で確認されています。2019年の文化間比較研究でも、韓国人と欧州系アメリカ人の双方で効果が観察されましたが、効果の強さには文化や選択領域による違いも示されています。
したがって、「誰でも必ず同じ程度に思い込む」と考えるより、他者を推測するときに生じ得る認知傾向として理解するほうが適切でしょう。
- SNSではフォールスコンセンサス効果が起こりやすいですか
-
SNSを利用すれば必ずフォールスコンセンサス効果が強くなるとは言えません。
ただし、自分自身の意見と一致する情報へ偏って接触する環境では、自分の意見に対する社会的支持を高く見積もりやすくなるという可能性があります。
ニュースフィードを利用した研究では、自分の態度に有利な方向へ偏った情報に接触した場合、自分の意見への公的支持をより高く認識する結果が報告されています。
だからこそ、「自分のタイムラインでよく見る意見」と「社会全体で一般的な意見」を同じものとして扱っていないか、一度確かめることが重要です。
- フォールスコンセンサス効果を防ぐ方法はありますか
-
完全に防ぐ万能な方法が確立しているわけではありませんが、自分について分かっていることと、他者について推測していることを分ける方法は実践しやすいでしょう。
「私はこの商品が欲しい」は、自分について分かっている情報です。
一方、「顧客にもこの商品を欲しい人が多い」は、まだ確認されていない仮説かもしれません。
マーケティングなら顧客調査やユーザーテスト、職場ならアンケート、家庭や友人関係なら直接尋ねることで、自分の推測を当事者の情報と照らし合わせられます。
ただし、自分の好みを単純に無視すれば解決するとは限りません。マーケターを対象とした研究では、個人的な選好を抑えようとする方法の効果が、本人の選好に対する確信度によって異なることが報告されています。
自分の感覚を否定するより、「自分はこう感じている。でも、相手についてはまだ確認していない」と分けて考えることが大切でしょう。
まとめ
フォールスコンセンサス効果とバンドワゴン効果は、どちらにも他者や多数派が登場しますが、認知の構造は異なります。
フォールスコンセンサス効果では、自分自身の意見や選択を参照し、自分と同じ反応が他者にも比較的多いと推測します。
ここで重要なのは、自分を必ず過半数側だと思う必要はないことです。自分と同じ反応の一般性を、異なる反応を選んだ人より相対的に高く見積もることが中心になります。
一方、バンドワゴン効果では、多くの人が支持していることや人気に関する情報が、自分自身の需要や評価、選択を考える際の手掛かりになります。
迷ったときは、自分自身を手掛かりとして他者を推測しているのか、それとも他者や人気情報を手掛かりとして自分が判断しているのかを確認してみてください。
それでも、人間の行動を一つの心理効果だけで決めつける必要はありません。
人気商品を選んだ背景には価格や性能があるかもしれず、周囲と同じ行動をした背景には、不利益への不安や組織の規範があるという可能性もあります。
心理学用語を相手へ貼るラベルとして使うのではなく、「何を見て、なぜその判断に至ったのだろう」と過程をたどることが大切です。
自分自身についても、「私はそう思うけれど、相手も本当にそうだろうか」「人気だから良く見えているのか、それとも自分に必要だから選ぶのか」と問い直せれば、思い込みや周囲への追従から少し距離を取れます。
二つの違いを理解する意味は、心理学の用語を正しく答えられることだけではありません。自分の感覚と他者についての推測を切り分け、必要な場面では確かめる習慣につなげることにあるのではないでしょうか。
参考資料
Cross-Cultural Examination of the False Consensus Effect
フォールスコンセンサス効果の定義、伝統的な測定方法、相対的一般性、文化差を確認できるオープンアクセス研究です。
Ross, L., Greene, D., & House, P. (1977). The “False Consensus Effect”: An Egocentric Bias in Social Perception and Attribution Processes. Journal of Experimental Social Psychology, 13(3), 279–301. DOI: 10.1016/0022-1031(77)90049-X
フォールスコンセンサス効果を体系的に提示した原研究です。出版社側の本文閲覧にはアクセス条件があるため、ここでは書誌情報のみを掲載しています。
Bandwagon Snob and Veblen Effects in the Theory of Consumers' Demand
Leibensteinによる1950年の論文で、他者の消費と個人需要との関係からバンドワゴン効果を論じています。
Aggregate bandwagon effect on online videos' viewership
FuとSimによる2011年の研究です。実際の動画共有サイトから得られた縦断データを用い、蓄積された閲覧数とその後の閲覧との関係を分析しています。
Selecting Online Videos from Graphics Text and View Counts
Fuによる2012年のオープンアクセス研究です。動画の人気指標、サムネイル、説明文などと後続の動画選択との関係を実サイトのデータから分析しています。
Marketers Project Their Personal Preferences onto Consumers
マーケターの個人的な製品選好が消費者選好の予測へ入り込むフォールスコンセンサス効果と、その対策を扱った研究の研究機関公開ページです。
アイデアスクリーニングにおけるマーケターの消費者選好の予測
マーケティングにおけるフォールスコンセンサス効果と個人選好の抑制について、日本語で先行研究を整理したオープンアクセスのレビュー論文です。
False consensus in the echo chamber
自分の意見と一致する方向へ偏ったオンライン情報への接触と、自分の意見に対する社会的支持の推定との関係を実験的に検討した公開論文です。