マンション管理士

2025年改正マンション標準管理規約と2026年施行区分所有法に対応する管理規約・使用細則の見直し25業務

マンション管理規約の見直しを考え始めたとき、多くの理事会が本当に知りたいのは、法律の改正内容を一から覚えることではなく、「結局、うちのマンションでは何を直せばよいのか」という答えではないでしょうか。標準管理規約を開けば多くの条文が並び、区分所有法まで確認すると、全面改正が必要なのか、一部だけ直せばよいのか、それとも現在の規約を残せるのか、かえって判断しづらくなることがあります。

2025年5月23日にマンション関係法の改正法が成立し、同月30日に公布されました。その後、国土交通省は改正区分所有法などを踏まえ、2025年10月17日にマンション標準管理規約を改正し、単棟型、団地型、複合用途型を公表しています。改正法全体には制度によって施行時期が異なる部分がありますが、区分所有法の改正部分は2026年4月1日に施行されており、現在はすでに現行制度として適用されています。

ここは、施行前に行う準備とは意味が異なります。現在は「法改正に備えておいたほうがよい」という段階ではなく、新たに管理規約や総会手続を見直すのであれば、改正後の区分所有法を前提として現在の規約との整合性を確認する段階です。

とはいえ、「古い管理規約はすべて使えないので、標準管理規約へ丸ごと入れ替えなければならない」という意味でもありません。国土交通省はマンション標準管理規約を、各マンションが管理規約を作成・改正するときに使用するひな型として位置付けています。したがって、法改正との整合を優先して確認する事項、制度を利用する場合に整える事項、マンションごとの事情で選択する生活ルールを分けて考えることが必要です。

本稿では、マンション管理士が扱う管理規約・使用細則の25業務を、読者が「自分のマンションは今どこから確認すればよいのか」を判断できる順序で整理します。25業務は確認すべき論点の一覧であり、後半で示す6段階は、それらを実際の改正へ結び付ける進め方です。また、国内管理人や専有部分の保存行為などは複数の業務に関係するため、横断的な改正事項として別に整理します。

TABLE OF CONTENTS
目次

マンション管理規約改正で最初に分ける3つの優先領域

管理規約を見直すとき、25項目をすべて同じ優先度で考えると、「結局全部やらなければならない」と感じてしまいます。しかし、総会決議のように法改正との整合を優先して確認すべき問題と、ペットや駐車場のようにマンションごとの暮らし方から決める問題では、検討する理由も緊急性も異なります。

優先領域 確認する内容 主な論点
改正法との整合を優先して確認 改正区分所有法と現在の規約や手続が整合しているか 総会手続、決議要件、規約変更、損害賠償請求権等
制度利用や建物事情に応じて整備 制度を利用する場合や建物固有の事情に必要な規定があるか 所在等不明区分所有者、国内管理人、外部管理者、共用部分・専有部分
生活実態に応じて選択 住民生活や施設利用に合わせたルールが必要か ペット、駐車場、リフォーム、防犯カメラ、喫煙、民泊、置き配

理事会としては、法改正への対応もペット問題も駐車場問題も同じ規約冊子に載っているため、つい一つの巨大な改正作業に見えてしまいます。しかし性質を分ければ、まず法令との整合を確認し、その後に建物固有の問題、さらに生活上の使用細則という順序を付けられます。

「全部を今年の理事会で終わらせなければならない」と考える必要はありません。最初に優先順位を付けること自体が、管理規約改正の重要な仕事です。

2026年施行区分所有法と2025年改正標準管理規約の現在地

改正区分所有法はすでに現行制度

区分所有法の改正部分は2026年4月1日に施行されています。国土交通省が同日付で発出した技術的助言でも、区分所有者の相互協力義務、専有部分等の保存に関する制度、国内管理人、共用部分の変更、規約や集会、所在等不明区分所有者への対応など、同日施行となる改正内容が整理されています。

そのため、これから管理規約を改正する管理組合では、「施行されたらどうしよう」と考えるのではなく、現在適用されている法律を前提として規約を確認します。

長年使ってきた規約に書かれていると、理事会では「これまでこの方法で問題なく運営してきたから大丈夫だろう」と感じることがあります。しかし、法律が変わった後には、過去の運用実績だけで現在の手続が適切だと判断することはできません。

一方で、昔から存在する独自規定のすべてを削除する必要もありません。法律との整合を確認したうえで、そのマンション固有の権利関係や管理上の必要性が現在も残っているのであれば、合理的な独自規定として維持することも考えられます。

標準管理規約は参考となるモデル

2025年10月17日に改正されたマンション標準管理規約は、単棟型、団地型、複合用途型の三類型で公表されています。また、団地型については2025年12月10日に規定の一部が修正されているため、団地型マンションでは現在公表されている資料を確認する必要があります。

標準管理規約との比較で重要なのは、「違う箇所をすべて修正する」ことではありません。

たとえば、分譲時から特殊な共用施設があるマンションでは、標準管理規約にはない独自規定が必要かもしれません。過去の漏水事故を受けて細かな工事手続を追加したマンションであれば、その規定には今も残す理由がある可能性があります。

確認したいのは、「標準と違うか」より「なぜ違うのか」です。理由を説明できない差を見つけることで、本当に見直すべき規定が見えてきます。

単棟型団地型複合用途型の管理規約確認

単棟型マンション

単棟型では、一棟の建物とその敷地や附属施設を中心として管理規約を確認します。一般的な住居専用マンションでは単棟型標準管理規約が参考になりますが、外観が一棟だからといって権利関係まで単純とは限りません。

駐車場、附属建物、通路、設備などに特殊な権利設定があれば、管理対象や費用負担の規定へ影響します。そのため、原始規約、登記、図面、規約別表などを確認し、管理組合が何を管理する組織なのかを先に確定します。

団地型マンション

団地型では、団地全体で決める事項と各棟で決める事項を整理する必要があります。

ある棟だけの修繕について別棟の区分所有者から「なぜ私たちまで費用を負担するのですか」と聞かれたとき、単に「同じ団地だから」と説明しても納得は得にくいでしょう。

団地総会と棟総会、団地共用部分と各棟に属する部分、団地全体の費用と各棟の費用などを確認し、意思決定と費用負担の範囲を対応させます。

複合用途型マンション

住宅と店舗や事務所が同じ建物にある複合用途型では、利用する設備や管理上の利益が一致しないことがあります。

住宅側では店舗営業による設備負担が気になり、店舗側では住宅だけが利用する施設について「なぜ自分たちまで負担するのか」と感じるかもしれません。

費用を巡る感情は、計算式だけでは解消しません。建物全体、住宅部分、店舗部分の管理対象を整理し、「何のための費用なのか」「誰がその管理から利益を受けるのか」を説明できる状態へ整えることが重要です。

管理規約診断と改正支援8業務

1 現行管理規約の全文診断

管理規約改正では、最初に新しい標準管理規約へ合わせるのではなく、現在有効な規約を確定することが出発点になります。

何度も部分改正を繰り返したマンションでは、総会で変更した内容が規約冊子へ反映されていなかったり、すでに廃止した条文を別の条文が参照していたりすることがあります。

理事会では必要な条文だけを見ることが多いため、こうした不整合は問題が発生するまで気付かれないこともあります。

現行規約、過去の総会議事録、改正履歴、別表、使用細則、届出書式まで照合し、現在何が有効なのかを確定します。これは過去の役員の間違いを探す仕事ではなく、これから改正するための出発地点を一つにする作業です。

2 管理規約と区分所有法等との整合性確認

現在の規約診断では、改正区分所有法との整合確認を優先する必要があります。

ただし、「古い規約だから全部変える」という考え方ではありません。法改正との関係から優先的に確認すべき規定、標準管理規約を参考として改善したほうがよい規定、建物固有の事情から維持することが考えられる規定に分けます。

この三つが見えるだけでも、理事会の受け止め方は変わります。

「数十ページ全部を作り直す」という漠然とした不安から、「法改正に関係するこの部分を先に確認しよう」という具体的な作業へ変えられるためです。

管理規約と区分所有法等との整合性確認 管理規約と区分所有法等との整合性確認 法改正との関係から優先的に確認すべき規定 標準管理規約を参考として改善したほうがよい規定 建物固有の事情から維持することが考えられる規定

3 標準管理規約との比較

現行規約と2025年改正標準管理規約を比較し、違いを確認します。

もっとも、相違点の数を数えることが目的ではありません。標準管理規約はひな型であり、それぞれのマンションの建物構造や過去の経緯まで反映した文書ではないからです。

比較して確認したいのは、「この違いには現在も理由があるのか」という点です。

合理的な独自規定と、理由がわからないまま残っている古い規定を分けることで、改正すべき箇所を絞り込めます。

4 管理規約全面改正支援

部分改正を繰り返した結果、条番号や用語、別表との関係が複雑になっている場合には、全面改正を検討します。

全面改正という言葉を聞くと、「今までの規約を全部捨てるのですか」と不安になる人もいるでしょう。しかし実際には、既存規約に残すべき内容がないかを確認しながら全体を再構成する仕事です。

分譲当初の権利関係、過去のトラブルを受けて作られた規定、独自施設に関する条文などを残しつつ、現行法や現在の管理実務と整合する形へ整理します。

むしろ全面改正だからこそ、古い規約を丁寧に読む必要があります。

5 管理規約部分改正支援

法改正対応の規定だけを先に整えたい場合や、民泊など特定の問題へ早急に対応したい場合には、部分改正が現実的です。

ただし、一つの条文を書き換えれば終わるとは限りません。

同じ言葉が関連条文、別表、使用細則、申請書にも使われていれば、それらまで確認しなければ新しい矛盾が生まれます。

部分改正とは確認を省略する方法ではなく、改正する目的を絞りながら関連部分まで確認する方法です。

6 規約改正新旧対照表作成

総会で改正後の規約全文だけを示されても、一般の区分所有者が変更箇所を見つけることは簡単ではありません。

「どこが変わるのかわからないのに賛成してよいのだろうか」という不安が生じるのは自然です。

そこで現行条文と改正後の条文を並べ、新旧対照表として変更部分を可視化します。改正理由も合わせて確認できれば、総会前の質問にも対応しやすくなります。

新旧対照表は専門家の作業表ではなく、区分所有者が自分で変更内容を確認するための資料です。

7 規約改正理由書作成

規約改正への反対は、変更内容そのものより「なぜ今変えるのかがわからない」という不安から生まれることがあります。

法改正との整合を図るためなのか、過去のトラブルを防ぐためなのか、日常運営をわかりやすくするためなのかを整理します。

理由書は反対する人を言い負かすための文書ではありません。

賛成する人も反対する人も、同じ理由と同じ変更内容を見たうえで判断できる状態をつくる資料です。

8 規約改正総会議案作成

総会議案では、何を変更するかだけでなく、区分所有者が事前に判断できる情報を示す必要があります。

2025年改正標準管理規約では、総会招集通知における議案の要領など、改正区分所有法を踏まえた総会手続のモデル規定が見直されています。

理事会では何か月も検討してきたため、「これくらい書けばわかるだろう」と感じることがあります。しかし一般の区分所有者にとっては、招集通知を受け取ったときに初めて議案の詳しい内容を知る場合があります。

その情報差を意識し、改正理由、変更内容、影響、施行時期などを整理します。

総会資料は賛成票を得ることだけを目的とするのではなく、一人ひとりが自分の意思で賛否を判断するための材料にすることが重要です。

共用部分専有部分と費用負担の整理5業務

9 共用部分範囲の規約整理

漏水や設備故障が発生すると、それまで意識していなかった共用部分と専有部分の境界が突然問題になります。

玄関扉、窓、サッシ、配管などは、「自分の部屋に付いているから自分のもの」という感覚だけでは判断できない場合があります。

管理規約、図面、設備系統などを照合し、所有関係だけではなく、誰が修繕し、どの会計から費用を出すのかまで整理します。

境界整理の目的は専門用語を増やすことではなく、事故が起きたときに理事会と区分所有者が同じ根拠から判断できる状態をつくることです。

10 専有部分範囲の規約整理

専有部分の室内にあるからといって、すべて自由に工事できるとは限りません。

床や配管などは他住戸や共用部分とつながっているため、リフォームや漏水事故で「ここは誰が直すのですか」という問題が生じたとき、境界が曖昧であれば費用負担まで曖昧になります。

規約上の専有部分と実際の建築設備を照合し、所有範囲だけでなく修繕責任まで一貫した判断ができるようにします。

11 専用使用部分の規約整理

バルコニー、ルーフバルコニー、専用庭などでは、自分しか利用しないため「自分の場所」という意識が強くなります。

一方で、規約上は共用部分として専用使用権だけが認められている場合があります。そのため、日常清掃を誰が行うのか、大規模修繕時の防水工事を誰が行い、どのように費用を負担するのかを分けて整理します。

「使う人」「所有関係」「修繕する主体」が同じとは限らないことを先に共有しておけば、工事の時期になって突然負担を巡って対立する可能性を減らせます。

12 敷地附属施設関係規定の整理

マンションでは駐車場、駐輪場、ゴミ置場、集会室、植栽、外構、機械設備なども管理対象になります。

長年の間に後付けした設備が規約別表へ反映されないままになっていると、更新や撤去が必要になったとき、「これは誰の設備なのか」「どの会計から支払うのか」という疑問が生じます。

現況と規約上の記載を照合し、管理主体、使用権、使用料などを現在の建物に合わせます。

13 管理費修繕積立金負担規定の見直し

費用負担では、数字だけでなく納得感が問題になります。

「自分はその設備を使っていないのに、なぜ負担するのか」と疑問を持つ人に対して、長年この割合だったという説明だけでは十分ではないでしょう。

まず、現在の管理費や修繕積立金の負担割合が、共有持分、専有面積、一部共用部分など何を根拠にしているのかを確認します。

2025年改正標準管理規約では、修繕積立金の使途について、マンション再生等に関係する調査や建物・設備の改良などを含めた規定や解説が整理されています。実際の支出では各マンションの規約と必要な手続を確認します。

修繕積立金を「壊れたものを元へ戻すためだけのお金」と捉えると、将来の改良や再生という選択肢が見えにくくなります。

何のために積み立て、どのような場合に利用できるのかを管理組合自身が説明できる状態にすることが重要です。

総会理事会と外部専門家の整理2業務

14 役員総会理事会規定の改正

現在の法改正対応で優先的に確認したいのが、総会の意思決定に関する規定です。

所在等不明区分所有者がいるマンションでは、「一人連絡がつかないだけで、いつまでも何も決められないのか」という焦りが生まれることがあります。しかし、その焦りを理由として管理組合が独断で所有者を決議から外すことはできません。

改正区分所有法では、裁判所が関与する法定手続により、一定の場合に所在等不明区分所有者を決議の母数から除外する制度が設けられています。国土交通省の技術的助言でも、裁判所が所在等不明区分所有者以外の区分所有者等の請求を受けて除外裁判を行う制度として整理されています。

「連絡が取れない人を簡単に外せる制度」ではなく、法律上の要件と裁判所の判断を経て利用する制度と理解する必要があります。

総会の決議要件についても、「改正後は出席者だけで何でも決められる」と一般化することはできません。国土交通省の技術的助言では、規約の設定等について、区分所有者と議決権の各過半数を定足数とし、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上で決する仕組みなどが示されていますが、議案によって適用される法律上の要件は異なります。

役員が毎年交代するほど、「去年はこの人数で決めたから」という記憶に頼りたくなるものです。しかし重要な議案ほど、前回の記憶ではなく、その議案に適用される法令と管理規約へ戻る運営が必要です。

15 外部専門家活用規定の整備

役員のなり手不足が深刻になると、「専門家に任せたほうがよいのではないか」という考えが現実味を帯びます。

その一方で、管理者が工事、契約、資金管理などへ関与するのであれば、「専門家だから安心」という理由だけで権限を広げることにも注意が必要です。

外部へ任せる範囲が大きいほど、誰がその仕事を監督し、どこで区分所有者が判断するのかという仕組みが重要になります。

選任方法、権限、報酬、監査、利益相反、資金管理、業務報告などを一体として検討し、「役員がいないから全部外部へ任せる」という発想ではなく、専門性を活用しながら管理組合自身の判断を残す制度として考えます。

25業務を検討するときの横断的な2025年改正重要事項

ここからの三つは、現行規約の法適合性確認、共用部分・専有部分の整理、総会規定など、複数の業務を進める際に合わせて確認したい改正事項です。

国内管理人制度

海外に居住する区分所有者がいるとき、問題になるのは海外居住そのものではなく、必要な連絡が必要な時期に届かないことです。

管理費の請求、総会通知、設備点検、工事対応などで連絡が取れなければ、管理組合の業務へ影響する可能性があります。

改正区分所有法では、国内に住所等を有しない場合などについて、区分所有者が自らの専有部分等の管理に関する事務を行わせる国内管理人を選任できる制度が設けられています。

海外に居住していることを理由に一律の対応を決めるのではなく、「何の連絡が取れず困っているのか」を確認し、自分たちのマンションに必要な連絡体制を検討することが重要です。

共用部分の管理に伴う専有部分保存行為

給排水設備などでは、共用部分を修繕しようとしても、専有部分に関係する作業を避けられない場合があります。

管理組合から見れば、「同時に直したほうが早いし、費用も抑えられる」と考えたくなるでしょう。しかし、専有部分はそれぞれの区分所有者の権利に関係するため、工事の合理性だけを理由に管理組合が自由に立ち入ったり修繕したりできるわけではありません。

ここでは、似て見えても根拠や主体、要件が異なる仕組みを分けて理解する必要があります。

まず、改正区分所有法第6条第2項では、区分所有者が自らの専有部分等を保存するために必要となる場合に、他の区分所有者の専有部分等について、自ら保存することを請求できる仕組みが設けられています。国土交通省の2026年4月1日付技術的助言でも、「自らの専有部分等を保存するため」という目的が明示されています。したがって、他人の専有部分に問題があるという理由だけで広く利用できる一般的な保存権限ではありません。

次に、2025年改正の単棟型標準管理規約第23条では、第21条または第22条により管理を行う者について、その管理に必要な範囲で、他の者が管理する専有部分や専用使用部分への立入り、または自ら保存行為を実施することを請求できるモデル規定が置かれています。さらに、災害や事故等が発生し、緊急に立入りや保存行為をしなければ共用部分等または他の専有部分へ重大な影響を及ぼすおそれがある場合には、理事長が自ら立入りや保存行為を行う規定も別に設けられています。

さらに、単棟型標準管理規約第21条第2項では、専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分について、共用部分の管理と一体として保存行為等を行う必要がある場合に、総会決議を経て管理組合がこれを行うという別のモデル規定が置かれています。これは改正区分所有法第17条第3項等を踏まえた仕組みであり、第6条第2項や第23条の請求制度とは分けて理解する必要があります。

つまり、第6条第2項、第23条、第21条第2項は、「専有部分に関係する」という点では似ていても同じ制度ではありません。

理事会としては、漏水や配管工事を前にすると「どの制度でもよいから早く工事したい」と感じることがあるでしょう。しかし、急いでいるときほど、誰が何の目的で、どの範囲について、どの手続に基づいて行うのかを確認する必要があります。

対象工事、権限の根拠、必要な決議、費用負担を整理し、すでに自己負担で同種の工事を終えている住戸があれば公平性も検討します。効率だけでなく、工事後に区分所有者へ「なぜこの方法で実施したのか」を説明できる状態へ整えることが重要です。

共用部分等に係る損害賠償請求権等の代理行使

普段の理事会では意識しにくいものの、法改正対応で見落としたくないのが、共用部分等に関する損害賠償請求権等です。

2025年改正の単棟型標準管理規約第24条の2では、理事長が区分所有者および旧区分所有者を代理して保険金や損害賠償金等の請求・受領を行うこと、一定の請求等を理事長による行使へ一元化することなどが定められています。

事故が起きていないときには、「今すぐ困っていない条文」に見えるかもしれません。

しかし、大きな瑕疵や損害が生じた後で規約の不足に気付けば、現在の区分所有者だけではなく過去の所有者まで関係し、対応が複雑になる可能性があります。

日常的には目立たない規定だからこそ、法改正対応の診断段階で確認しておく意味があります。

使用細則と生活ルールの整理10業務

16 使用細則体系の整理

使用細則の見直しでは、細則を増やすことではなく、管理規約との役割分担を明確にすることが重要です。

管理規約で基本的な権利義務を定め、使用細則で申請方法、利用時間、寸法などの具体的な手続を定めます。

管理規約では制限しているように読める一方、使用細則では条件付きで認める運用になっていれば、住民だけでなく理事会も迷います。

「前の理事会では認められた」という話が繰り返される場合には、担当者ではなく文書体系に問題がある可能性を考えます。

17 ペット飼育細則策定改正

ペットに関する問題は、規則だけで感情を切り分けることが難しいテーマです。

飼育者にとっては家族でも、動物が苦手な人やアレルギーのある人には、鳴き声や臭い、エレベーターでの接触が毎日の負担になる場合があります。

飼育を認めるのであれば、対象となる動物、頭数、登録、共用部分での移動、排泄物、鳴き声、違反時の対応などを整理します。

「飼いたい人」と「嫌な人」のどちらが正しいのかを決めるのではなく、共同生活として双方が守る条件を具体化することが細則の目的です。

18 駐車場使用細則策定改正

駐車場では、以前は空き待ちが続いていたマンションでも、所有者構成の変化によって空き区画が増える場合があります。

使用資格、抽選、更新、車両寸法、解約、滞納時の扱いなどを現在の利用状況へ合わせます。

EV充電設備を導入する場合には、設備だけでなく、利用資格、電気料金、利用料、充電後の車両移動まで一緒に検討します。

「設備を付ければ便利になる」という期待だけで進め、費用負担を後回しにすると、利用しない区分所有者から不満が出る可能性があります。

19 駐輪場バイク置場細則策定改正

放置自転車は一台なら小さな問題に見えるため、対応が後回しになりがちです。

しかし数が増えれば、本当に利用したい住民が置けなくなります。

登録、区画、利用料、更新、バイクとの区別、電動アシスト自転車などの扱いを整理し、放置車両については警告や所有者確認など段階的な対応を検討します。

問題が大きくなってから一斉に処理するより、小さい段階から同じ基準で対応できる仕組みを残すことが重要です。

20 専有部分リフォーム細則策定改正

リフォームを行う区分所有者にとっては、「自分のお金で自分の部屋を直すのに、なぜ管理組合へ申請するのか」と感じることがあります。

しかし床材や配管の工事は、下階や共用設備へ影響する可能性があります。

工事申請、図面、仕様書、施工時間、搬入、養生などを整理し、近隣への通知と工事承認の権限も分けて考えます。

住民間の人間関係によって工事の可否が変わるのではなく、同じ基準で審査できる仕組みをつくることが重要です。

21 防犯カメラ運用細則策定改正

防犯カメラは、ある住民には安心を与える一方、別の住民には「自分の行動まで見られているのでは」という不安を与えます。

設置目的、撮影範囲、管理責任者、映像を閲覧できる条件、保存期間、外部提供、消去方法などを細則で定めます。

事件や事故が起きたときには必要な確認ができる一方、普段は誰でも自由に映像を見られるわけではないという二つの安心を両立させることが重要です。

22 共用施設使用細則策定改正

ゲストルーム、集会室、ラウンジなどは、利用されるほど公平性が問題になります。

同じ住民が繰り返し予約していれば、形式上は規則違反でなくても「自分たちの施設なのに使えない」と感じる人が出るでしょう。

利用資格、予約、連続利用、キャンセル、利用料、時間、鍵、破損時の責任などを整理し、多くの住民が利用できる条件をつくります。

細則は施設を使わせないためではなく、公平に使い続けるための仕組みとして考えます。

23 喫煙ルール策定支援

喫煙問題では、煙や臭いが住戸の境界で止まらないため、喫煙する側と影響を受ける側の認識がずれやすくなります。

喫煙者本人は「自分の場所で吸っている」と考えていても、隣の住戸では窓を開けられないほど困っている場合があります。

全国一律の結論を当てはめるのではなく、共用部分や専用使用部分をどのように扱うのか、違反があった場合にどの手順で対応するのかを管理組合として整理します。

掲示板へ何度注意文を貼っても同じ問題が続くのであれば、個人のマナーだけでなく、共通の判断基準が不足している可能性があります。

24 民泊関係規定の整備

民泊では、自分の住戸を活用したい区分所有者と、知らない人が頻繁に出入りすることへ不安を感じる住民の利益がぶつかります。

管理組合として民泊を認めるのか、禁止するのかを明確にし、禁止する場合には対象となる利用形態が判断できる規定へ整えます。

トラブルが起きた後で「禁止していたつもりだった」と説明しても、規約が曖昧なら対応に迷います。

生活実態が変わる前に、専有部分の用途として何を認めるのかを決めておく意味があります。

25 置き配等共用部分利用ルール整備

置き配は、在宅時間を気にせず荷物を受け取れる便利な仕組みです。

一方、マンションの廊下や階段は日常の通行空間であるだけでなく、避難や防火にも関係します。

置ける場所、荷物を置いてよい時間、長期放置時の対応などを検討し、利便性だけでなく通行や避難の安全を確保できる仕組みにします。

すべて禁止すれば管理は簡単に見えますが、現在の生活実態から離れる可能性があります。反対に無条件で認めれば安全上の問題が残るため、そのマンションで両立できる条件を具体化することが重要です。

管理規約改正を進める6段階の実務フロー

ここで示す6段階は、25の論点を実際にどのような順序で検討し、改正へつなげるのかを示す進め方です。

管理規約改正を進める6段階の実務フロー 管理規約改正を進める6段階の実務フロー 第1段階 現在の状況を把握する 第2段階 過去の運用を振り返る 第3段階 問題の原因を分析する 第4段階 改正方法と優先順位を決める 第5段階 実際に使える形へ落とし込む 第6段階 改正後の変化を確認する

第1段階 現在の状況を把握する

管理規約、使用細則、過去の改正履歴、総会議事録、別表、届出書などを集め、現在有効なルールを確認します。

同時に、最近の理事会で繰り返し迷っている問題を書き出します。

毎年同じ駐車場問題が議題になるなら、毎年の役員が悪いのではなく、判断基準が不足している可能性があります。

「何条直すか」を考える前に、「何に困っているのか」を明確にする段階です。

第2段階 過去の運用を振り返る

同じ問題について、過去の理事会がどのように判断してきたのかを確認します。

「前の理事長は認めてくれた」という言葉が何度も出るのであれば、ルールではなく個人へ判断が依存しているのかもしれません。

過去を振り返るのは以前の役員を責めるためではなく、次の役員が同じ場所で迷わなくて済むようにするためです。

第3段階 問題の原因を分析する

問題が起きているからといって、必ず規約改正が必要とは限りません。

規約自体は十分でも住民へ周知されていない場合、申請書が使いにくい場合、管理会社と理事会の役割が曖昧な場合もあります。

条文を増やす前に「どうしてこの問題が起きているのか」を考えます。

原因を間違えると、規約冊子だけが厚くなり、問題はそのまま残ってしまいます。

第4段階 改正方法と優先順位を決める

原因がわかったら、全面改正、部分改正、使用細則改正、書式変更、運用改善から方法を選びます。

現在は改正区分所有法の施行後ですから、まず法律との整合確認を行い、その後に建物固有の問題、生活上のルールという順で整理する方法が考えられます。

一回の総会ですべてを変える必要はありません。

法改正への対応を先に行い、ペットや駐車場などの生活細則を次年度に分けて検討する方法もあります。

第5段階 実際に使える形へ落とし込む

規約や使用細則は、文章を作成しただけでは機能しません。

リフォーム申請書を変更したところ、「どこへ提出すればよいのかわからない」という問い合わせが増えることもあります。

その場合、規約が間違っているのではなく、運用の入口が不足しているのかもしれません。

住民が利用し、管理会社や理事会が処理できるところまで考えて初めて、実務で使えるルールになります。

第6段階 改正後の変化を確認する

改正後は一定期間を置き、理事会の判断時間が短くなったか、同じ苦情が減ったか、住民への説明がしやすくなったかを確認します。

期待したほど改善していなければ、もう一度原因を見直します。

それは改正の失敗を意味するのではありません。

建物も所有者構成も暮らし方も変化する以上、一度作った規約が永久に最適であり続けるとは限りません。必要になったときに根拠を持って見直せる状態を残すことのほうが、長期的なマンション管理には重要です。

マンション管理規約改正を専門家へ相談する目安

すべての管理組合が、最初から管理規約の全面改正を専門家へ依頼する必要はありません。

一方で、過去の改正履歴から現行規約を確定できない場合、改正区分所有法との整合を判断できない場合、団地型や複合用途型で費用負担が複雑な場合、所在等不明区分所有者への対応が必要な場合、外部管理者方式を検討する場合、共用部分と専有部分を巡るトラブルが続いている場合には、早い段階で専門的な確認を入れることが考えられます。

理事会では、「何を頼めばよいのかもわからないのに相談してよいのだろうか」と感じるかもしれません。

しかし、その段階だからこそ、いきなり全面改正を依頼するのではなく、現行規約の診断と改正優先順位の整理から始める方法があります。

マンション管理士による25業務の役割

25業務は、25個の独立した問題を一つずつ処理するためだけのものではありません。

現行規約を診断すれば法令との不整合が見つかり、総会規定を確認すれば所在等不明区分所有者への対応が関係し、リフォーム細則を確認すれば専有部分と共用部分の境界まで戻ることがあります。

外部管理者方式を考えれば、選任規定だけではなく監査、利益相反、資金管理までつながります。置き配を考えれば、共用部分の利用、防火、避難安全まで確認する必要が出てきます。

つまり、25業務は項目数を見せるためだけの一覧ではありません。

「自分たちが困っている問題は、どの規約とどの手続につながっているのか」を見失わないための確認項目です。

マンション管理士の役割も、難しい法律用語を規約へ増やすことではないでしょう。役員が交代しても、「この問題なら、まず何を確認すればよいか」がわかる仕組みとして管理規約と使用細則を残していくことに意味があります。

まとめ 2026年の管理規約改正は法改正との整合確認から始める

改正区分所有法はすでに施行されているため、現在の管理規約見直しは「いつか法改正へ備えるための準備」ではありません。

現在適用されている法律と自分たちの規約が整合しているかを確認し、必要な部分を実際に改正する段階です。

もっとも、すべてのマンションが標準管理規約と完全に同じ文章へ変更しなければならないわけではありません。

まず改正法との整合を確認し、次に国内管理人や所在等不明区分所有者への対応など必要に応じて利用する制度、さらに共用部分や費用負担といった建物固有の問題、最後にペット、駐車場、喫煙、民泊、置き配などの生活ルールを整理していけば、改正範囲を現実的に考えられます。

まとめ 2026年の管理規約改正は法改正との整合確認から始める まとめ 2026年の管理規約改正は法改正との整合確認から始める 改正法との整合を確認 国内管理人や所在等不明区分所有者への対応など 必要に応じて利用する制度 共用部分や費用負担といった建物固有の問題 ペット、駐車場、喫煙、民泊、置き配などの 生活ルール

そして、専有部分に関係する工事についても、「管理組合が必要だと思えば工事できる」と単純化しないことが重要です。改正区分所有法第6条第2項、標準管理規約第23条、第21条第2項には、それぞれ異なる目的、主体、要件があります。どの制度を利用する場面なのかを確認して初めて、適切な手続を選ぶことができます。

大切なのは、何条変更したかではありません。

次の理事会へ役員が交代したときにも、同じ問題について同じ根拠から判断できるようになったかどうかです。

管理規約は住民を縛るだけの文書ではなく、「どうすればよいかわからない」と迷ったときに管理組合が戻ることのできる共通の判断基準です。法改正への対応も、最終的にはその判断基準を現在のマンションへ合った形に整える仕事だと考えると、何から始めればよいのかが見えやすくなるのではないでしょうか。

参考資料

国土交通省「マンション標準管理規約」

国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約 単棟型」

国土交通省 2026年4月1日付技術的助言「マンション関係法の改正概要」

国土交通省「令和7年 マンション標準管理規約の見直し」

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