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高経年マンションの管理チェックポイント 築40年を超えたら確認したい7項目

築30年、40年、50年と年月を重ねたマンションで理事や理事長を任されると、「建物が古くなってきたことは分かるけれど、結局どこから確認すればよいのだろう」と戸惑うことがあります。外壁のひび割れや設備の古さは目に入りやすい一方、長期修繕計画や修繕積立金、過去の工事、管理規約、役員体制まで一度に把握するのは簡単ではありません。

高経年マンションの管理で大切なのは、築年数そのものを恐れることではなく、現在の管理状態を一つずつ確認することです。この記事では、①長期修繕計画、②修繕積立金、③大規模修繕と修繕履歴、④給排水管と設備、⑤管理規約と組合運営、⑥高齢化と役員体制、⑦管理計画認定基準という7項目を順番に確認し、最後に自分たちのマンションで最初に取り組むべき問題を整理します。

TABLE OF CONTENTS
目次

高経年マンションは建物の老朽化だけ見ても分からない

築40年が近づくころになると、以前は気にならなかった外壁の細かなひび割れや廊下の傷みが目につき、「そろそろ建物そのものが危ないのではないか」と不安になることがあります。エレベーターや給排水設備についても、「あと何年使えるのだろう」と心配になるでしょう。

しかし、築40年という数字だけからマンションの安全性や管理状態を判断することはできません。

国土交通省の統計では、築40年以上のマンションを高経年化の状況を見る代表的な区分として扱っています。2024年末時点で築40年以上のマンションは約148万戸あり、2034年末には約293万戸、2044年末には約483万戸へ増えると見込まれています。

この数字が示しているのは、「築40年以上だから危険」ということではありません。これまで一部のマンションが向き合ってきた高経年化の問題を、今後はより多くの管理組合が考えなければならないということです。

鉄筋コンクリート造の寿命についても、数字だけを切り取らないよう注意が必要でしょう。国土交通省が整理した過去の既往研究には、1979年の研究でRC造建物の物理的寿命を117年と推定した例や、1951年の資料で一般建物のRC部材について120年という効用持続年数を算定した例があります。

ただし、これらは現在の国土交通省がマンションの標準寿命を117年や120年と定めているという意味ではありません。過去の特定の研究や算定方法による数値であり、個々のマンションが何年間使用できるかは、施工状態、コンクリートの劣化、耐震性能、修繕履歴、設備更新などを踏まえて判断する必要があります。

むしろ高経年マンションで難しくなるのは、建物だけが年を重ねるわけではないことです。

国土交通省は2025年10月のマンション標準管理規約改正資料で、「建物の高経年化と居住者の高齢化」の「2つの老い」が進行していると説明しています。建物側では修繕や設備更新の必要性が高まり、その一方で居住者側でも高齢化などによって管理組合運営の負担が重くなる場合があります。

もちろん、高齢者が多いこと自体を管理上の問題と捉えるべきではありません。

長く暮らしてきた居住者だからこそ、過去の漏水事故や大規模修繕の経緯をよく知っている場合もあります。一方で、身体的な事情から役員を引き受けにくくなったり、相続や賃貸化によって区分所有者がマンション外に居住するケースが増えたりすると、これまでと同じ方法で管理組合を動かすことが難しくなる可能性があります。

高経年マンションで確認したいのは、建物が古いかどうかだけではありません。必要な修繕を行える資金があるのか、その資金計画が現在の建物や設備の状態と合っているのか、さらに必要な判断を総会や理事会で行える状態なのかまで確認する必要があります。

築40年以上の管理組合で最初に確認したい5つの書類

理事になったばかりのときは、「まず建物を詳しく調査しなければ」と考えるかもしれません。しかし、管理状態の全体像をつかむなら、先に書類を確認したほうが整理しやすい場合があります。

マンション管理士などの専門家が管理組合の状態を確認するときも、書類は重要な入口です。そこには、これまで何を修繕し、どのようにお金を使い、何を決め、何が決まらないまま残っているのかが記録されています。

確認書類 主な確認事項 見えてくる管理上のリスク
管理規約と使用細則 役員権限、緊急時の専有部分への立入り、修繕積立金の使途、情報提供に関する規定 規約の形骸化、緊急時対応の遅れ、責任範囲の曖昧化
長期修繕計画と資金計画 計画期間、見直し時期、予定工事、将来の修繕積立金残高 将来の資金不足、一時的な負担増、必要工事の先送り
総会資料と議事録および理事会議事録 開催状況、過去の決議、決議後の実施状況、継続課題 合意形成の停滞、決議事項の未実施、問題の長期放置
管理委託契約書と業務仕様書 管理会社への委託範囲、管理員業務、自主管理部分、委託費 業務の抜け漏れ、責任分担の不明確化、コストの不整合
財務諸表と未収金資料 管理費と修繕積立金の区分、積立金残高、滞納、借入状況 資金繰り悪化、滞納長期化、将来工事への対応力低下

たとえば長期修繕計画には数年後の給排水管更新が予定されているのに、資金計画を見ると工事後の残高がほとんど残らないかもしれません。さらに総会議事録を確認すると、数年前から修繕積立金の見直しが議題になっていたものの、「もう少し様子を見よう」という雰囲気のまま先送りされていたことが分かる場合もあります。

そのとき初めて、問題は単に「修繕積立金が少ない」ということではなく、計画の見直しや区分所有者への説明、合意形成まで含んでいると気づくでしょう。

書類を集める目的は、ファイルをそろえることではありません。これから確認する7項目について、どこまで事実を把握できていて、どこに不明点が残っているのかを知るためです。

チェック1 長期修繕計画は現在の状態に合っているか

「長期修繕計画ならあります」と管理会社から冊子を渡されると、理事としては少し安心するでしょう。しかし、表紙を見ると最後の見直しから長い年月が経過していることがあります。

2026年9月時点の管理計画認定制度では、長期修繕計画の作成または見直しが7年以内に行われていること、計画期間が30年以上であること、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていることなどが国の認定基準に含まれています。また、計画内容と修繕積立金額について総会で決議されていることも必要です。

もっとも、「7年以内に見直されているから問題ない」と判断するのは早いでしょう。

計画を作った後に予定外の設備工事を行っていれば、現在の建物状態と計画内容がずれている可能性があります。さらに工事価格が変化すれば、以前の計画で想定した金額では実際の工事費を賄えなくなることもあります。

理事会として苦しいのは、工事直前になって資金不足が分かる場面です。「計画では足りるはずだったのに、見積書を取ったら不足していた」となれば、修繕積立金の増額、一時的な資金確保、借入れ、工事時期の変更など、短期間で重い判断を迫られます。

そのため確認したいのは、認定基準上の形式だけではありません。

最終見直し年月を確認したうえで、直近の大規模修繕や設備工事が現在の計画へ反映されているか、今後予定される外壁、防水、給排水設備、エレベーターなどの工事内容が実態と合っているかを見ます。

理事会で最初に行うなら、長期修繕計画の最終見直し年月と直近に実施した大きな工事を一つ照合する程度から始めても構いません。そこで計画と実績の食い違いが見つかれば、何を見直す必要があるのかを具体的に検討できます。

チェック2 修繕積立金は将来の工事まで続くか

修繕積立金を確認するとき、「今いくらあるのか」が気になるのは自然です。口座に数千万円あれば少し安心しますし、周辺マンションより月額が低いと聞けば、「足りないのではないか」と心配になるでしょう。

しかし、現在残高や一戸当たりの月額だけで、修繕積立金が十分か不足しているかを一律に判断することはできません。

必要額は、マンションの規模、設備、機械式駐車場の有無、これまでの工事、今後の設備更新などによって異なります。ここで確認すべきなのは現在の金額だけではなく、予定している工事を実施した後も資金が続くかという将来収支です。

積立方法には、計画期間を通して負担をおおむね均等にする均等積立方式と、当初額を低くして段階的に引き上げる段階増額積立方式があります。

国土交通省は、将来にわたり安定的に修繕積立金を確保する観点から均等積立方式が望ましいとしています。段階増額積立方式では、将来予定した増額について区分所有者の合意を得られず、必要な資金を確保できなくなるおそれがあるためです。

2024年6月に示された考え方では、段階増額積立方式を採用する場合、均等積立方式とした場合の月額を基準額として、計画初期の徴収額を0.6倍以上、計画最終額を1.1倍以内としています。単純な比率では約1.83倍になりますが、「約1.8倍」という数字だけが独立した認定基準として定められているわけではありません。

現在の管理計画認定基準では、将来の一時的な修繕積立金徴収を予定していないことや、計画期間最終年度に借入金残高が残らないことなども確認されます。

理事会が増額をためらう気持ちは理解できます。「自分たちの任期で値上げを提案したら反発されるのではないか」と思えば、できれば次の役員へ任せたいと感じることもあるでしょう。

それでも、数年間先送りした結果、後の理事会がさらに大きな増額を提案しなければならなくなる可能性があります。

最初から値上げ額を決める必要はありません。まず資金計画表を確認し、修繕積立金残高が最も少なくなる年度と、その前後に予定されている大きな工事を把握します。

「何となく足りない気がする」という不安が、「2033年度の工事後に残高が大きく減る」という具体的な課題へ変われば、増額、計画変更、工事時期の調整などを比較して話し合いやすくなるでしょう。

チェック3 大規模修繕と修繕履歴は追える状態か

高経年マンションの将来を考えるときには、これからの工事だけではなく、これまで何を修繕してきたのかを確認する必要があります。

ところが理事会で資料を探すと、「前回の大規模修繕は何年だったのか」「給水管は交換したと聞いているけれど、どこまで工事したのか分からない」ということがあります。何十年もの間に役員や管理会社の担当者が入れ替わるため、人の記憶だけでは過去を追えなくなっていくからです。

確認したい資料には、大規模修繕工事報告書、工事請負契約書、保証書、給排水管工事報告書、設計図書、竣工図書などがあります。

たとえば「給水管改修済み」という記録が残っていても、それだけでは十分ではありません。共用立て管だけを交換したのか、各住戸側まで施工したのか、配管を交換したのか、それとも更生工法を採用したのかによって次の対応は変わります。

修繕履歴を追えない状態では、まだ使用できる場所を再び工事して余分な費用を使う可能性があります。その反対に、「前回工事しているはずだ」という思い込みによって、本当に更新すべき部分が抜け落ちることもあるでしょう。

管理計画認定制度でも、修繕等の履歴情報を保管するための定めが管理規約にあることが確認されます。

資料が散在している場合でも、最初から完璧な修繕台帳を作る必要はありません。工事年月、工事名称、施工会社、工事金額、保証期限などを一覧にし、分からないところには推測を書かず「不明」と記録します。

すると、「昔のことがよく分からない」という漠然とした状態が、「2010年以前の給排水管工事資料が確認できない」という具体的な確認事項へ変わります。

チェック4 給排水管と設備の更新計画があるか

外壁のひび割れであれば目で確認できますが、床下や壁内にある給排水管は普段ほとんど見えません。そのため設備の問題は、漏水や故障が起きて初めて意識されることがあります。

国土交通省が平成30年度マンション総合調査を基に整理した資料では、築40年以上のマンションについて、漏水や雨漏りが40%、給排水管の老朽化による漏水が35%とされています。築40年未満ではそれぞれ15%、11%であり、当該調査では高経年マンションほど水に関する不具合が多く確認されています。

調査で確認された回答割合 築40年以上 築40年未満
漏水や雨漏り 40% 15%
給排水管の老朽化による漏水 35% 11%

ただし、この数字を「築40年以上なら4割の確率で漏水する」という意味で捉えるのは適切ではありません。調査で確認された回答割合であり、個々のマンションの将来の事故確率を示すものではないからです。

また、漏水が一件起きただけでマンション全体の配管が寿命だと判断することもできません。管材そのものが劣化している可能性もあれば、継手、防水、住戸内設備など別の原因も考えられます。

そこで重要になるのが、一件ごとの事故ではなく数年間の履歴をまとめて見ることです。

同じ系統や同じ場所の周辺で漏水が繰り返されているなら、個別修理だけを続けるのではなく、設備全体の調査や更新時期を検討する段階へ移っている可能性があります。

専有部分の給排水管についても、高経年マンションでは判断が難しくなることがあります。

共用給排水管と合わせて専有部分の配管を更新する場合には、工事範囲、費用負担、管理規約、すでに個人で更新した住戸との公平性などを整理しなければなりません。「専有部分だから管理組合は一切関係しない」と一律に切り離すことも、「すべて修繕積立金で交換すればよい」と考えることも適切ではないでしょう。

エレベーターや機械式駐車場についても、故障したときだけ考えるのではなく、更新時期と必要資金を長期修繕計画へ反映しておく必要があります。

とくに機械式駐車場では、利用台数が減って使用料収入が落ちている一方、保守費や将来の更新費は必要になる場合があります。そのようなときは現状維持だけを前提とせず、台数削減、撤去、平面化なども含めて比較することになるでしょう。

理事会では、直近数年間の漏水事故、設備故障、保険事故、修理費を一覧にし、同じ設備が繰り返し登場していないか確認する方法があります。もし同じ設備の不具合が重なっているなら、「壊れるたびに直す管理」から「設備全体の更新時期を考える管理」へ切り替えるきっかけになります。

チェック5 管理規約と総会理事会は実際に機能しているか

建物の修繕が必要だと分かり、資金不足まで把握できたとしても、管理組合として意思決定できなければ工事は進みません。

そこで確認したいのが、管理規約と総会、理事会の実際の運営状態です。

長年同じ規約を使っていると、「これまで問題なく運営できてきたのだから、このままでよいのではないか」と感じることがあります。しかし、マンションを取り巻く法律や社会環境は変化しています。

国土交通省は2025年10月にマンション標準管理規約を改正し、改正区分所有法などを踏まえて、総会決議、所在等不明区分所有者への対応、専有部分の保存行為、修繕積立金の使途などに関する見直しを行いました。

標準管理規約は法律そのものではなく、自分たちの管理規約を一字一句同じにする必要もありません。それでも、現在の管理規約が法制度や管理実態と合っているかを確認するときの重要な参考になります。

管理計画認定制度では、管理者等と監事が定められていること、総会が年1回以上開催されていること、管理費と修繕積立金が区分経理されていることなどが基準です。また、修繕積立金会計から他会計への充当がないことや、3か月以上の修繕積立金滞納額が全体の1割以内であることも確認されます。

ただし、総会を毎年開催しているという事実だけで、管理組合が十分に機能しているとは言い切れません。

過去3年ほどの総会議事録を並べると、修繕積立金、漏水、駐車場、規約改正といった同じ問題が毎年「継続検討」になっていることがあります。その場合、会議そのものは開催されていても、重要な問題について意思決定する力が弱くなっている可能性があります。

理事として「こんな大きな問題を自分の任期で決めてよいのだろうか」と不安になることもあるでしょう。任期が一年程度であれば、負担増や大きな制度変更を自分たちだけで決めることにためらいが生まれるのは自然です。

そこで、任期中に必ず最終結論まで出すのではなく、次の役員が判断できる材料まで整えるという考え方があります。

たとえば修繕積立金の増額決議まで進められなくても、長期修繕計画を更新し、複数の資金案を比較し、区分所有者へ現在の問題を説明できる状態まで進めれば、問題は確実に前へ動いています。

チェック6 高齢化と役員不足に対応できる体制か

高経年マンションの相談では、建物より先に「人」の問題が出てくることがあります。

「輪番制なのに辞退する人が増えた」「理事長をお願いできる人が見つからない」「結局いつも同じ人が役員になっている」といった状況が見え始めたなら、現在の運営方法を将来も維持できるか確認する時期に入っている可能性があります。

ここでも、高齢者が多いこと自体を問題にするべきではありません。

確認したいのは、現在の仕組みに無理が生じていないかです。役員名簿上は十分な人数がいても、実際には一部の人だけが理事会へ出席し、ほとんどの業務を抱えているなら、制度上の体制と実態がずれ始めています。

同じ人が何度も理事長を担当している場合も、「熱心な人がいるから安心だ」と考えるだけでは十分ではありません。その人が体調や転居などを理由に突然離れた場合、過去の判断経緯や管理ノウハウまで失われる可能性があります。

そこで、現在選任されている役員数と実際に活動している人数を照らし合わせながら、直近数年間で役員辞退がどの程度発生しているのか、さらに特定の人へ理事長や理事の役割が集中していないかを確認します。

「最近役員のなり手がいない気がする」という感覚が、「直近3年間で辞退者が増えている」「一部の人が複数回役員を担当している」という事実へ変われば、役員定数や役割分担を見直す根拠になります。

同時に確認したいのが、組合員名簿と居住者名簿です。

管理計画認定基準では、組合員名簿と居住者名簿を備え、年1回以上内容を確認していることが求められています。名簿は災害時だけに使うものではなく、相続、賃貸化、滞納対応、総会招集など日常の管理を続けるうえでも重要です。

役員不足が進んでいる場合には、役員数や役割分担の見直し、役員報酬、専門家への一部業務委託、外部管理者方式など複数の方法があります。

外部へ任せれば自動的に問題が解決するわけではありません。それでも、役員を選任できなくなってから慌てて考えるより、まだ理事会が動いている段階で選択肢を比較したほうが、管理組合として余裕を持って判断できます。

チェック7 管理計画認定基準と比べて不足を確認する

ここまで確認しても、「自分たちのマンションの管理が良いのか悪いのか、何を基準に判断すればよいのだろう」と迷うことがあります。

そこで一つの物差しとして利用できるのが、マンション管理計画認定制度です。

管理計画認定制度はマンション管理適正化法に基づき、一定の基準を満たすマンションの管理計画を地方公共団体が認定する制度です。2026年9月時点の国の認定基準は、管理組合の運営、管理規約、経理、長期修繕計画、名簿管理など16項目で構成されています。

ただし、全国のすべてのマンションが当然に申請できるわけではありません。

認定主体となるのは、マンション管理適正化推進計画を作成している地方公共団体です。実際に認定申請を検討する場合には、自分たちのマンションが所在する地域で制度を利用できるか確認する必要があり、地方公共団体によって独自基準が追加されている場合もあります。

認定を取得する予定がない管理組合でも、この基準を自分たちの状態と比較する意味はあります。

たとえば「総会は毎年開催しているけれど、名簿を長期間更新していない」「長期修繕計画は30年以上あるものの、最近の設備工事が反映されていない」といった不足を具体的に見つけられるからです。

ここで大切なのは、認定基準を満たすことと、管理実態に何の問題もないことを同じにしないことです。

長期修繕計画が30年以上あり、7年以内に見直されていても、実際の修繕履歴や現在の設備状態、工事価格が十分に反映されていなければ、管理組合として追加確認が必要でしょう。制度上の認定基準は有効な物差しですが、建物や管理の実態すべてを判定するものではありません。

なお、2027年4月1日には管理計画認定制度の拡充と認定基準の見直しが施行されます。関連する省令と告示は2026年7月31日に公布済みで、地方公共団体への申請日が2027年4月1日以降になる場合には、見直し後の認定基準が適用されます。

これから認定申請を考える場合には、この記事だけで判断せず、実際の申請時点で国土交通省や所在地の地方公共団体が公表する最新情報を確認してください。

高経年マンション管理の3段階チェックリスト

7項目を確認した後は、「どこから優先して確認するか」を整理します。

ここで必要なのは、マンションに点数を付けることではありません。理事会の中にある「何となく不安だ」という感覚を、次に調べられる課題へ変えることです。

次の「問題あり」「要確認」「問題なし」は、本記事独自の整理であり、管理計画認定制度の正式な評価方法ではありません。

チェック領域 問題あり 要確認 問題なしの目安
長期修繕計画 計画がない、または現在の工事履歴や設備状態と大きくずれている 計画はあるが見直し年月や工事項目に未確認部分がある 認定基準上の主要要件を満たし、直近の修繕履歴や設備状態も反映されている
修繕積立金 将来収支で明確な資金不足が見込まれる 段階増額や将来負担について十分な検討や共有ができていない 長期修繕計画と資金計画が整合し、将来の負担について区分所有者へ説明できる
修繕履歴 工事報告書や保証書など重要資料が大きく欠けている 資料はあるが施工範囲や保証期限を追えない 工事履歴と主要資料が整理され、次回工事の判断に利用できる
給排水管と設備 漏水や故障が繰り返されているのに調査や更新方針がない 設備状態や工事範囲など未確認事項が残っている 不具合履歴や調査結果を踏まえた更新方針があり、資金計画へ反映されている
管理規約と組合運営 総会や役員選任など実際の運営に支障がある 規約と現在の運営実態が合っているか確認できていない 規約と実態がおおむね整合し、必要な意思決定を継続して行える
高齢化と役員不足 役員選任が難しく、組合運営へ実際の支障が出ている 辞退者増加や一部役員への負担集中が見られる 将来の役員確保や外部支援を含めた体制を検討できている
管理計画認定基準 複数の基準で不足があり改善方法も決まっていない 一部基準や必要書類を確認できていない 国の基準と管理実態の両方を確認し、自治体独自基準や申請条件も把握できている

ここで「問題あり」が付いても、直ちにそのマンションが危険だという意味ではありません。

反対に「問題なし」が多くても、それだけで建物の安全性が保証されるわけではないでしょう。このチェックリストの役割は、7項目のうちどこから追加確認するべきかを理事会で共有することです。

高経年マンションで最初に行う小さな実践

7項目を一通り見た後に、「確認することが多すぎて、自分の任期ではとても終わらない」と感じる人もいるでしょう。

築40年以上のマンションには、それだけの年月の記録があります。新しく理事になった人が、数か月ですべての工事、会計、規約、設備、過去の議論を理解するのは現実的ではありません。

そこで最初の目標を、すべての問題を解決することではなく、優先して確認する問題を一つ決めることに置きます。

まず管理規約、長期修繕計画、総会資料、管理委託契約書、財務資料をそろえ、7項目について3段階チェックを付けます。そのうえで「問題あり」や「要確認」になった項目から一つ選び、次の理事会までに必要な資料や事実を確認すると、作業が現実的な大きさになります。

管理規約、長期修繕計画、総会資料、 管理委託契約書、財務資料をそろえ 7項目について3段階チェックを付けます 「問題あり」や「要確認」になった項目から一つ選び 次の理事会までに必要な資料や事実を確認すると、 作業が現実的な大きさになります

たとえば長期修繕計画が要確認なら、最終見直し年月と最近の工事が反映されているかを調べます。修繕履歴が要確認なら、前回大規模修繕の工事報告書や保証書が残っているかを確認すればよいでしょう。

一か月後に資料が見つかれば、要確認だった項目を一つ減らせます。

反対に資料が見つからなかったとしても、「過去の工事資料が十分に保管されていない」という課題が具体的になります。それまで何が分からないのかすら分からなかった状態と比べれば、確実に前へ進んでいます。

高経年マンションの管理で最初に必要なのは、大きな改革ではありません。次に何を確認するのかが、理事会の中で明確になっている状態です。

自分たちだけで判断しにくいときはマンション管理士へ相談する

資料を調べていくと、分からないことが減るどころか、新しい疑問が出てくることがあります。

「長期修繕計画はあるけれど、この工事内容で本当によいのか」「修繕積立金を増やす必要がありそうだが、どの程度が妥当なのか」「管理規約を変えたほうがよさそうだが、総会へどう説明すればよいのか」と迷うのは不自然ではありません。

むしろ、自分たちの現状をきちんと確認したからこそ、管理組合だけでは判断しにくい部分が分かってきたと考えられます。

マンション管理の問題は、建築、設備、財務、法務、管理会社との契約、区分所有者間の合意形成など複数の分野にまたがります。本業を持ちながら一定期間だけ役員を務める人が、すべてを短期間で専門家と同じ水準まで理解することは難しいでしょう。

そのような場合には、マンション管理士へ相談する方法があります。

管理規約、総会や理事会運営、長期修繕計画、修繕積立金、管理会社との関係、役員不足、管理計画認定などについて、第三者の視点から論点を整理できます。

ただし、建物の詳細な劣化診断や設備調査、設計、訴訟などについては、建築士、設備技術者、弁護士など別の専門家が必要になる場合があります。

マンション管理士へ相談する目的は、管理組合に代わってすべてを決めてもらうことではありません。「何が問題で、次に誰へ何を確認すればよいのか」を整理し、管理組合自身が判断しやすい状態を作ることです。

マンション管理適正化診断サービスで確認できること

7項目を確認したものの複数の問題が重なり、「どこから手を付ければよいのか自分たちだけでは整理しにくい」と感じた場合には、日本マンション管理士会連合会のマンション管理適正化診断サービスも選択肢になります。

このサービスでは、所定の研修を修了した診断マンション管理士が、管理運営状況、修繕計画、法定点検、修繕工事、防犯、防火、保険事故履歴などを対象として、目視、書類確認、ヒアリングを行い、診断結果をレポートとしてまとめます。

所定の診断内容について診断費用は無料と案内されています。また、一定の条件を満たす場合には、管理計画認定制度の手続支援と連携して申請を進める仕組みも用意されています。

ただし、ここでは診断と認定を混同しないことが重要です。

日本マンション管理士会連合会の「マンション管理適正化診断サービス」は同連合会が提供する固有のサービスであり、マンション管理士事務所やコンサルティング会社が独自に提供する「管理診断」とは、実施主体、調査内容、料金などが異なる場合があります。

また、マンション管理適正化診断サービスを受けたこと自体が、管理計画認定を取得したことを意味するわけでもありません。

管理計画認定は地方公共団体が行う法制度上の認定です。認定まで検討する場合には、自分たちのマンション所在地で制度が利用できるか、認定申請について必要な総会承認を得ているかなど、別途確認する必要があります。

適正化診断サービスは、7項目を自分たちで確認した結果、問題が複数分野へまたがり優先順位を付けにくい場合に、管理状態を客観的に整理する選択肢の一つとして考えると分かりやすいでしょう。

高経年マンション管理のよくある質問

高経年マンションとは築何年以上を指すのか

国土交通省の政策資料や統計では、築40年以上のマンションが高経年化を把握する代表的な区分として用いられています。

2024年末時点で築40年以上のマンションは約148万戸あり、2034年末には約293万戸、2044年末には約483万戸へ増える見込みです。

ただし、築40年を安全と危険の境界線として考えるべきではありません。築40年前後になった段階で、建物の劣化、長期修繕計画、資金、設備、組合運営などを改めて確認する節目と考えるほうが実務的です。

築40年以上になったら最初に何を確認すべきか

最初に確認したいのは、管理規約、長期修繕計画、総会と理事会の資料、管理委託契約書、財務資料です。

これらを照らし合わせることで、修繕計画と実際の工事が合っているか、将来の工事費へ対応できるか、重要な問題が何年間も先送りされていないかを把握しやすくなります。

その後、この記事で紹介した7項目について3段階チェックを行い、優先して確認する問題を一つ決めると動きやすくなるでしょう。

高経年マンションでは修繕積立金が不足しやすいのか

高経年化すると、給排水管やエレベーターなど費用の大きな設備更新が必要になる場合があります。

さらに、長期修繕計画を長期間見直していなかったり、段階増額積立方式で予定した増額を実施できなかったりすると、資金不足が表面化する可能性があります。

ただし、高経年マンションだから必ず修繕積立金が不足するわけではありません。現在残高だけを見るのではなく、今後予定されている工事と資金計画を合わせて判断する必要があります。

マンション管理士には何を相談できるのか

管理規約、総会や理事会運営、長期修繕計画、修繕積立金、管理会社との関係、役員不足、管理計画認定など、管理組合運営に関する幅広い問題を相談できます。

ただし、建物や設備について高度な技術判断が必要な場合や、専門的な法律問題がある場合には、建築士、設備技術者、弁護士などとの連携が必要になることもあります。

何を誰へ相談すればよいか分からない段階から、問題を整理する入口としてマンション管理士を利用する方法もあります。

マンション管理適正化診断サービスでは何を診断するのか

日本マンション管理士会連合会のマンション管理適正化診断サービスでは、管理運営、修繕計画、法定点検、修繕工事、防犯、防火、保険事故履歴など、マンション管理の幅広い項目を確認します。

目視だけではなく、書類確認やヒアリングを組み合わせて管理状態を整理し、診断結果をレポートとして確認できる仕組みです。

管理計画認定制度と管理診断は同じものか

同じものではありません。

管理計画認定制度は、マンション管理適正化法に基づき、一定の認定基準を満たす管理計画を地方公共団体が認定する制度です。

一方、管理診断はマンションの現在の管理状態を調べ、課題や改善点を整理するための診断やコンサルティングを指します。

日本マンション管理士会連合会のマンション管理適正化診断サービスは管理計画認定の手続支援と連携できる仕組みがありますが、診断を受けることと認定を取得することは別です。

まとめ 高経年マンションは7項目から現状を確認する

高経年マンションで最初に確認したいのは、築年数そのものではありません。

長期修繕計画、修繕積立金、修繕履歴、給排水管と設備、管理規約と組合運営、高齢化と役員体制、管理計画認定基準という7項目を順番に確認することで、自分たちのマンションで何を優先するべきかが分かりやすくなります。

①長期修繕計画 ②修繕積立金 ③大規模修繕と修繕履歴 ④給排水管と設備 ⑤管理規約と組合運営 ⑥高齢化と役員体制 ⑦管理計画認定基準

すべてを一度に解決する必要はありません。

まず3段階チェックで現在地を整理し、次の理事会までに一つだけ確認を進める方法でも十分です。その過程で自分たちだけでは判断しにくい問題が見つかったなら、マンション管理士やマンション管理適正化診断サービスなどの外部支援を検討できます。

高経年化そのものを止めることはできませんが、問題が小さいうちに見つけ、必要な修繕や管理運営の改善へつなげることはできます。

漠然とした不安を具体的な確認事項へ変え、自分たちのマンションで次に何をするべきかを見えるようにすることが、高経年マンション管理の出発点です。

参考資料

マンション管理計画認定制度 国土交通省

築40年以上のマンションストック数の推移 国土交通省

マンション標準管理規約の改正 国土交通省

長期修繕計画と修繕積立金に関するガイドライン改定 国土交通省

管理計画認定手続支援サービス マンション管理センター

マンション管理適正化診断サービス 日本マンション管理士会連合会

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