大きな地震の揺れが収まった直後、理事長や役員も一人の被災者です。自宅では家具が倒れているかもしれませんし、家族や親族の安否も気になっているでしょう。それでも廊下へ出れば、「エレベーターが止まっています」「壁に亀裂があります」「水を流して大丈夫ですか」「管理会社には連絡したのですか」と、居住者から次々に声をかけられることがあります。
その瞬間、「理事長なのだから何とかしなければ」と焦るのは自然です。しかし、建物の安全性も設備を再稼働してよいかも、高額な復旧工事を発注してよいかも、その場で一人が即答できる問題ではありません。何もしなければ被害が広がる不安がある一方で、急いで判断した結果、安全面や費用負担、意思決定手続を巡る問題が後から残る可能性もあります。
地震後の管理組合実務で大切なのは、理事長がすべての答えを持つことではありません。人命を守り、確認できた事実を記録し、必要な専門家へつなぎ、そのうえで管理組合として誰が何を決められるのかを確認しながら復旧へ進むことです。
この記事では、発災後に対応方法を探している理事長や役員を主な読者として、最後まで次の5段階で整理します。
| 段階 | 管理組合が行うこと | この段階で急いで決めないこと |
|---|---|---|
| 1 安全確保 | 人命、火災、閉じ込め、落下危険を確認する | 本格工事の内容や施工会社 |
| 2 記録 | 共用部と設備の異常を写真と確認票へ残す | 構造安全性などの専門判断 |
| 3 専門家 | 管理会社、建築士、設備会社、保険会社等へつなぐ | 専門家に代わる技術判断 |
| 4 権限確認 | 保存行為、応急修繕、本格復旧を分けて規約等を確認する | 地震だから何でも理事長判断でよいという判断 |
| 5 復旧決定 | 調査、工事案、見積り、保険、資金を整理して必要な総会へ進む | 判断材料がない状態での恒久工事 |
この記事から一つだけ手順を覚えるなら、安全確保から記録へ進み、専門家へつないだ後で権限を確認し、本格的な復旧を決めるという順番です。
以下では新しいフローを増やさず、この5段階を順番に深掘りします。
地震後の時系列を最初に把握する
地震後には、人命、安全、設備、保険、工事、住民説明、総会という異なる問題が一気に押し寄せます。
すべてを同じ緊急度で考えてしまうと、本来は数週間後に決めればよい本格工事と、今止めなければ被害が広がる漏水が、同じ問題のように見えてしまいます。
そこで、最初に時間軸を持ちます。
| 対応段階 | 時間の目安 | 主な対応 |
|---|---|---|
| 発災直後 | 0〜3時間程度 | 人命、火災、閉じ込め、落下物、避難経路を確認する |
| 当日 | 3〜24時間程度 | 共用部と設備の一次確認、立入制限、管理会社や専門会社への連絡、住民への第1報を行う |
| 数日以内 | 24〜72時間程度 | 被害確認票と写真を整理し、必要な応急対応と専門調査を進める |
| 数日から1週間程度 | 専門家が動ける段階 | 建築、給排水、エレベーター等の調査結果を集約する |
| 1〜4週間程度 | 判断材料がそろう段階 | 復旧工事案、見積り、保険、資金計画を整理する |
| その後 | 合意形成が必要な段階 | 説明会や臨時総会を経て本格復旧へ進む |
| 復旧完了後 | 工事完了後 | 記録、保険処理、引継ぎ、次回への改善を行う |
これは全国共通の期限ではありません。被害の規模や交通状況、専門家の確保状況によって大きく前後します。
重要なのは、発災翌日に本格復旧まですべて決めようとしないことです。同時に、危険回避や被害拡大防止まで「総会を開くまで何もできない」と考えないことでもあります。
時間軸があるだけで、今日やることと、資料をそろえてから判断することを分けやすくなります。
第1段階 地震直後は人命と安全確保を優先する
地震直後の管理組合に求められるのは、マンションをいち早く修理することではありません。
まず、人を危険から遠ざけます。
建物に大きな亀裂が見えれば近づいて確認したくなるでしょうし、屋上設備が気になれば見に行きたくなるかもしれません。しかし、余震が続く状況で損傷した階段を上ったり、剥落のおそれがある外壁の下へ近づいたりすれば、確認する側が被災する可能性があります。
責任感が強い理事長ほど、「自分が確かめなければ」と考えます。それでも、役員であることは危険区域へ入る資格ではありません。
自分自身の安全から確認する
最初に自分自身と家族の安全を確認します。
「理事長なのに自宅を先に確認してよいのか」と感じる人もいるでしょう。しかし、理事長自身が負傷すれば、その後の管理組合対応にも影響します。
安全に活動できる状態になってから、ほかの役員や居住者と役割を分けます。
一人でマンション全体を巡回することが責任ではありません。
情報を一か所へ集める
管理室や集会室を安全に使える場合は、情報を集約する場所を決めます。
必要なのは立派な災害対策本部ではなく、「誰が何を確認したか」が分かる状態です。
同じ玄関を複数の人が確認しているのに、給水設備については誰も確認していないということは、混乱時には十分起こり得ます。
ホワイトボードや紙一枚でも構いません。確認済み、未確認、連絡済み、回答待ちを見えるようにすると、次に何をすればよいか分かりやすくなります。
火災と負傷者を最優先する
火災が発生している場合は消防への通報を優先し、負傷者がいる場合には必要に応じて救急へ連絡します。
煙や炎が広がっている状況で、管理組合が建物確認を続ける必要はありません。
建物の状態は後から調べられますが、人命について同じことはできません。
エレベーターの閉じ込めを確認する
地震では、エレベーターが地震時管制運転などによって停止する場合があります。
閉じ込めが疑われる場合は非常通話設備等で状況を確認し、エレベーター保守会社へ連絡します。救助が必要な場合は消防への連絡も検討します。
役員や居住者が扉をこじ開けたり、昇降路へ入ったりしてはいけません。
また、一度動いたからといって安全確認が完了したとは限りません。保守会社等から利用再開の案内が出るまでは、使用を控える考え方が基本になります。
落下危険がある場所を封鎖する
外壁材、ガラス、天井材、庇、手すりなどに異常があれば、人を近づけない措置を先に行います。
この段階で修理方法まで決める必要はありません。
カラーコーンやロープ、掲示などを使って危険区域を分け、専門家へつなげられれば初動として意味があります。
被害記録のために写真を撮りたい場合でも、危険区域へ近づく必要はありません。安全上撮影できない場合は、その事実を記録します。
安否確認では未確認者を区別する
高齢者、障害のある人、乳幼児がいる世帯などについて、平時に安否確認方法を定めている場合は活用します。
ただし、危険な建物内を役員が無理に全戸訪問することまで求めるものではありません。
重要なのは、確認できた世帯と確認できていない世帯を分けることです。
確認できていない状態を「問題なし」と扱わないことが、後の救助や情報管理にもつながります。
第2段階 被害を記録して管理する
人命に関する緊急対応が落ち着いたら、次は被害の記録です。
ここで管理組合が目指すのは、マンションの安全性を自分たちで判定することではありません。
専門家が判断できる材料を残すことです。
最初に確認する5項目
| 確認対象 | 主に見る内容 | 異常がある場合 |
|---|---|---|
| 人命 | 負傷者、閉じ込め、安否未確認者 | 消防や救急等へつなぐ |
| 火災と設備危険 | 煙、ガス臭、漏水、電気設備周辺 | 近づかず関係事業者へ連絡する |
| 建物と共用部 | 柱、梁、外壁、廊下、階段、エントランス | 位置と状態を記録して必要なら立入制限する |
| ライフライン | 給水、排水、電気、ガス、通信、エレベーター | 設備会社等へ確認する |
| 二次災害要因 | ガラス、外壁材、天井、外構等 | 危険区域を設定する |
役員の一次確認で「安全」「危険」という技術的結論まで出そうとすると、かえって誤解を生むことがあります。
管理組合では「異常を確認した」「確認できなかった」「専門確認が必要」といった記録にとどめます。
給水と排水を分けて考える
地震後に蛇口から水が出ると、少し安心するでしょう。
しかし、マンションでは水が来ていることと、水を流してよいことは別問題です。
給水設備が無事でも、排水立て管や横引き管が損傷している可能性があります。上階から流した排水が破損部分から漏れ、下階の住戸や共用部分へ被害を広げることも考えられます。
大きな地震後に排水設備の損傷が疑われる場合は、管理会社や設備会社等の確認が取れるまで、トイレ、台所、浴室などの水利用を控える対応を検討します。
ただし、地震後はすべてのマンションで一律に排水を停止しなければならない、という全国共通のルールではありません。
建物の被害状況、設備構造、管理側や自治体の案内を確認します。
電気やガスは自己判断で復旧しない
配電盤周辺の浸水、火花、焦げた臭い、設備の転倒などがある場合は、役員が自己判断で復旧操作を行わないことが重要です。
ガス設備についても同様です。
「止まっているから戻してみよう」という善意が、別の事故につながる可能性があります。
管理組合では異常の発見と使用制限の周知を行い、技術的な操作については関係事業者へつなぎます。
被害ごとに管理番号を付ける
被害写真を大量に撮影しても、どの調査や工事へ対応したものか分からなくなれば管理しにくくなります。
そこで、「EQ-001」のように被害ごとの番号を付けます。
たとえば「A棟5階南側廊下の外壁亀裂」をEQ-001とした場合、その後の写真、建築士の調査、見積り、工事、完了確認まで同じ番号で管理します。
そうすると、「写真はあるが専門家へ見せていなかった」「見積りには入っていたが工事後の確認がない」といった抜けを発見しやすくなります。
地震後の被害確認票
| 記録項目 | 記入内容 |
|---|---|
| 管理番号 | EQ-001など |
| 確認日時 | 年月日と時刻 |
| 確認者 | 氏名または担当 |
| 場所 | 棟、階、方角、設備名 |
| 確認した事実 | 亀裂、剥離、落下、漏水、変形、停止、異音等 |
| 人への危険 | あり、なし、判断できない |
| 通行への影響 | 通行可、注意、立入制限 |
| 設備への影響 | あり、なし、確認中 |
| 写真番号 | EQ-001-01など |
| 一次対応 | 立入制限、使用停止、養生等 |
| 連絡先 | 管理会社、建築士、設備会社等 |
| 連絡日時 | 連絡した日時 |
| 専門家回答 | 調査予定、使用停止継続等 |
| 次の行動 | 再確認、調査、見積り、修繕等 |
| 担当者 | 追跡担当 |
| 完了確認 | 完了日と確認者 |
この確認票で特に大切なのは、「判断できない」と「確認中」を認めることです。
災害時に分からないことが存在するのは当然です。
分からない状態を無理に「異常なし」へ変換しないことが、後の判断を守ります。
被害レベルより次の行動を記録する
役員が一次確認の段階で「軽微」「重大」といった技術的な言葉を使うと、その表現だけが独り歩きする可能性があります。
そこで、管理組合では次の行動で分類します。
| 一次分類 | 意味 |
|---|---|
| 異常確認なし | 目視した範囲で異常を確認していない |
| 要再確認 | 確認できない箇所や不明点がある |
| 専門確認必要 | 建築士や設備会社等へ確認を依頼する |
| 使用制限 | 設備や区域を一時的に使わない |
| 立入制限 | 人を近づけない |
| 緊急連絡 | 人命や火災等に関係し直ちに外部へ連絡する |
管理組合が決めるのは建築上の損傷等級ではなく、次に取るべき行動です。
写真は全景から近景へ残す
写真は損傷部分のアップだけでは不十分です。
亀裂が鮮明に写っていても、後から「どの階のどこなのか」が分からなければ専門家へ説明しにくくなります。
| 写真 | 残したい内容 |
|---|---|
| 建物全景 | 建物全体と周辺の状態 |
| 位置確認 | 階数表示、柱、扉など場所が分かるもの |
| 被害近景 | 亀裂、剥離、変形、漏水等 |
| 寸法 | 安全に可能ならスケールを添える |
| 設備 | 機器全体、警報表示、エラー番号等 |
| 応急対応 | 立入制限や養生の前後 |
写真は罹災証明や保険手続でも参考資料になる可能性がありますが、写真そのものが行政や保険会社の最終的な被害認定になるわけではありません。
修理や片付けによって状態が変わる前に、可能な範囲で残しておくことが重要です。
第3段階 管理会社と専門家へつなぐ
被害を記録したら、次は専門家へつなぎます。
この段階で理事長が感じやすいのは、「住民から答えを求められているのに、自分には答えられない」という苦しさです。
「この亀裂は大丈夫ですか」「水は今日から使えますか」「エレベーターはいつ動きますか」と聞かれると、何か言わなければならない気持ちになります。
しかし、「専門家へ確認しています」という回答は責任逃れではありません。
分からないことを分からないまま断定せず、適切な人へ確認することも管理組合の役割です。
危険度に応じて連絡先を選ぶ
| 状況 | 主な連絡先 |
|---|---|
| 火災や負傷者 | 消防や救急 |
| エレベーター閉じ込め | エレベーター保守会社と必要に応じ消防 |
| ガス臭やガス設備異常 | ガス事業者と必要に応じ消防 |
| 電気設備異常 | 電気設備会社や関係事業者 |
| 給排水異常 | 給排水設備会社 |
| 外壁や構造部の異常 | 建築士等 |
| 管理業務全体の調整 | 管理会社 |
| 保険事故 | 保険代理店や保険会社 |
| 規約と意思決定 | マンション管理士 |
| 法的紛争 | 弁護士 |
必ず管理会社へ最初に連絡しなければならないわけではありません。
閉じ込めがあればエレベーター保守会社が優先され、漏水が続いていれば給排水設備会社への連絡が急がれます。
「今、何が人や建物を危険にしているのか」を基準にします。
管理会社が来られなくても初動を止めない
広域災害では、管理会社も被災している可能性があります。
電話がつながらず、担当者がすぐ現地へ来られないこともあります。
そのとき、「管理会社が来るまで何もしない」と考えると、立入制限や住民への注意喚起まで遅れます。
一方で、管理会社が来ないからといって、理事長が構造判断や大規模な工事発注まで自由に行えるわけではありません。
管理組合で行える安全確保と記録を進めながら、必要な専門会社へつなぎ、発注権限については現在の規約を確認します。
管理委託契約も確認する
管理会社が緊急時にどこまで対応できるかは、実際の管理委託契約によって異なります。
標準的な契約書に緊急時の規定があっても、自分のマンションの契約に同じ内容があるとは限りません。
地震後に「管理会社がやると思っていた」「管理組合が決めると思っていた」という行き違いを減らすため、現在の契約内容を確認します。
専門家ごとの役割を混ぜない
| 分野 | 管理組合が行うこと | 専門家が主に判断すること |
|---|---|---|
| 建物 | 場所と異常を記録する | 構造安全性、損傷程度、補修方法 |
| 設備 | 停止状況や異常を把握する | 使用可否、修理、再稼働 |
| 保険 | 契約資料と被害資料をそろえる | 契約上の損害認定や保険金 |
| 管理運営 | 規約、理事会、総会を整理する | マンション管理士等による実務支援 |
| 法務 | 事実と資料を整理する | 弁護士による法的判断 |
誰に何を聞くのかを明確にすると、理事会の負担も軽くなります。
応急危険度判定と本格復旧の調査を混同しない
地震後には、似た名前の判定や認定が複数あります。
| 判定や認定 | 主な目的 |
|---|---|
| 被災建築物応急危険度判定 | 余震による倒壊や落下物等の二次災害防止 |
| 被災度区分判定 | 建物の損傷程度や復旧の要否を検討するための技術評価 |
| 住家被害認定 | 罹災証明や被災者支援制度等のための行政上の認定 |
| 地震保険の損害認定 | 保険契約に基づく保険金支払いのための認定 |
応急危険度判定は、恒久的な構造安全性を保証する制度ではありません。
反対に、被災度区分判定も、すべてのマンションで一律に必ず行わなければならないものではありません。
必要性を建築士等と相談しながら、本格復旧に必要な調査へ進みます。
第4段階 誰が決められるのかを確認する
専門調査と並行して、管理組合は意思決定権限を確認します。
ここが、地震後の理事長にとって特に迷いやすいところです。
目の前で水が漏れていれば、「今すぐ直さなければ」と思います。しかし、管理組合のお金を使う以上、「自分の判断だけで発注してよいのだろうか」という不安も生まれます。
この迷いを減らすには、工事の名称だけではなく、その目的で分けます。
危険回避と保存行為と応急修繕を分ける
| 対応 | 主な目的 | 意思決定で見る点 |
|---|---|---|
| 危険回避 | 人を危険から遠ざける | 立入制限や使用停止の必要性 |
| 保存行為 | 被害拡大を防ぎ現状を維持する | 現行規約上の理事長権限 |
| 応急修繕 | 二次被害防止や生活維持のため暫定復旧する | 現行規約上の理事会等の権限 |
| 本格復旧 | 恒久的に被害を直す | 工法、資金、総会決議等 |
| 性能変更 | 復旧を超えて仕様や性能を変える | 共用部分変更等の決議要件 |
破損した配管から大量に水が漏れているため一時的に止水することと、地震を機に配管方式全体を変更することは、同じ工事ではありません。
施工会社が「今日工事できます」と言ったことと、管理組合が今日その範囲まで発注できることも別です。
現行標準管理規約にある災害時の保存行為
現行のマンション標準管理規約では、災害等の緊急時に理事長が総会または理事会の決議によらず、敷地や共用部分等について必要な保存行為を行える規定例が置かれています。
ただし、この災害時の考え方が2025年の標準管理規約改正で初めて作られたわけではありません。
東日本大震災後には、避難や交通途絶などによって総会や理事会をすぐ開けず、応急工事や費用支出の意思決定が難しくなったことを踏まえ、災害時の意思決定方法について以前から整理が進められてきました。
現行規約では、それまで整備されてきた考え方が引き継がれていると理解するほうが適切です。
総会開催が困難な場合の応急修繕
現行のマンション標準管理規約では、災害によって総会開催が困難な場合に、一定の応急修繕について理事会で判断する規定例も置かれています。
給排水、電気、ガス、通信といった生活維持に関わる設備や、二次災害防止のための一定の応急対応が問題になることがあります。
この仕組みも2025年改正で突然新設されたものではなく、少なくとも2016年改正時点で標準管理規約に災害時の応急修繕に関する考え方が存在していました。
したがって、2026年施行の改正区分所有法に対応する記事だからといって、これらの緊急時権限まで2026年に新しく生まれた制度だと理解しないようにします。
法律と標準管理規約と自分の規約を分ける
ここでは、三つの層を明確に分けます。
一つ目は区分所有法などの法律です。
二つ目は、国土交通省が規約作成や見直しのひな型として示しているマンション標準管理規約です。
三つ目は、自分のマンションで実際に定めている現在の管理規約です。
標準管理規約はモデルであり、各マンションへ自動的に適用されるものではありません。国土交通省も管理規約を作成・改正する際のひな型として標準管理規約を示しています。
そのため、標準管理規約に災害時の理事長権限が書かれているからといって、自分のマンションにも当然に同じ規定があるとは判断できません。
まず現在の規約を確認します。
現行規約だけでなく改正法との整合も確認する
2026年4月1日以降は、ここでもう一段確認が必要です。
自分の管理規約に書かれていることが、そのまま現在も有効とは限りません。
法務省の経過措置資料では、2026年4月1日以降、改正区分所有法に抵触する規約の規定は効力を失い、抵触する部分については改正区分所有法に沿った手続を行う必要があると整理されています。
たとえば旧法を前提とした総会の決議方法や招集手続が規約に残っていても、「規約にそう書いてあるから」という理由だけでその方法を使えるとは限りません。
したがって、2026年4月1日以降の管理組合実務では、規約を見ることと、その規約が改正法に抵触していないか確認することをセットにする必要があります。
ここは細かな法律論ではなく、地震後に臨時総会を開く場合の実際の手続に関係する部分です。
理事会も開催できない場合を確認する
大規模地震では、役員が避難して集まれず、理事会そのものを開催できないことがあります。
その場合に理事長等がどこまで対応できるのか、理事長が対応できない場合の代行者は誰か、単独で支出できる範囲を規約や細則で定めているかが問題になります。
全国共通で「50万円まで」「100万円まで」という法定の金額基準があるわけではありません。
自分のマンションの規模、設備、資金状況を考えながら、平時に整理しておく必要があります。
2026年施行の改正区分所有法と総会実務
区分所有法等を含む改正法は2025年5月23日に成立し、同月30日に公布されました。区分所有法及び被災区分所有法に関する部分は2026年4月1日に施行されています。
したがって、「2026年に改正された区分所有法」という意味ではありません。
本記事では「2026年施行の改正区分所有法」と表現します。
総会実務では三つの層を確認する
この章でも、判断順序を変えません。
最初に改正区分所有法を確認し、次に改正内容を反映した標準管理規約を参考にし、最後に自分のマンションの規約を確認します。
ただし、自分の規約が古い場合は、それだけで完結しません。
前述したとおり、施行後に改正区分所有法へ抵触する部分は効力を失うため、現在の法律との整合まで確認する必要があります。
出席者基準はすべての決議に共通しない
改正後は、普通決議や、規約変更、一定の共用部分変更、復旧などについて、多数決の母数を原則として出席者ベースとする仕組みが導入されています。
しかし、「出席者ベースになった」という言葉だけでは不十分です。
誰を母数にするのかと、そのうち何割の賛成が必要なのかは別の問題だからです。
また、すべての決議が出席者基準へ変わったわけでもありません。
建替え等では、全区分所有者を基礎とする別の要件があります。
現行標準管理規約では決議類型ごとに異なる
国土交通省は2025年10月17日、改正区分所有法等を踏まえてマンション標準管理規約を改正しました。総会の開催手続や決議要件など、管理組合運営に直接関係する事項が改正対象になっています。
現行の単棟型標準管理規約では、通常議案、規約変更等、一定の共用部分変更、復旧、建替え等について、それぞれ異なる多数決の考え方が示されています。
そのため、「2026年から出席者の過半数で何でも決められる」と理解することはできません。
地震後に総会を開く場合は、まず議案の種類を確認し、その議案について母数、定足数、必要な賛成割合を確認します。
建替え等は通常の復旧とは別に考える
被害が大きく、通常の修繕や復旧ではなく、建替え、建物更新、取壊しなどを検討する場合は、通常議案とは異なる制度へ進みます。
ここでは「出席者基準」という言葉だけを当てはめてはいけません。
建替え等には全区分所有者を基礎とする決議要件などが関係するため、現行法と現在の管理規約を個別に確認する必要があります。
所在等不明区分所有者も独自判断で外さない
改正区分所有法では、所在等不明区分所有者が意思決定を長期間止める問題へ対応する制度も整備されています。
ただし、管理組合が「連絡できないから今回の母数から外します」と独自に処理できる制度ではありません。
所定の手続が必要です。
地震後に連絡の取れない所有者が多数いる場合や、それによって重大な復旧判断が進まない場合には、マンション管理士や弁護士などへ相談しながら進めます。
招集時期によって経過措置もある
法務省は、集会について、2026年3月31日までに招集手続を開始した場合と、2026年4月1日以降に招集手続を開始した場合とで適用される規律が異なる経過措置を示しています。
現在はすでに施行後ですが、過去の決議や施行日前から進んでいた手続を検証する場合には、この経過措置も関係します。
一方、今後新しく臨時総会を招集するのであれば、改正後の制度を前提として確認します。
第5段階 本格復旧の判断材料をそろえる
応急対応が一段落すると、管理組合の仕事は「危険を止めること」から「何をどこまで復旧するか決めること」へ変わります。
この段階になると、住民からも「いつ元に戻るのか」「いくらかかるのか」という質問が増えるでしょう。
理事会としても、早く結論を出したい気持ちが強くなります。
しかし、急いで施工会社だけを決めても、区分所有者が納得できる意思決定にはつながりません。
被害から工事まで一本につなげる
復旧工事の見積書だけを総会へ出しても、「なぜその工事が必要なのか」が分かりません。
次の資料をつなげます。
| 資料 | 意味 |
|---|---|
| 被害確認票 | 何が起きたのか |
| 写真台帳 | どこでどのような状態だったのか |
| 専門調査報告 | 技術的に何が分かったのか |
| 応急工事記録 | すでに何を行ったのか |
| 本復旧案 | これから何を直すのか |
| 見積書 | いくらかかるのか |
| 比較資料 | ほかの工法や会社とどう違うのか |
| 保険資料 | 契約上どのような確認が必要か |
| 資金計画 | 費用をどう賄うのか |
| 総会議案 | 今回何を決めてもらうのか |
この順番で説明できれば、区分所有者にも「突然高額な工事を提案された」という印象を与えにくくなります。
相見積りは金額より条件をそろえる
A社が3,000万円でB社が2,500万円なら、B社のほうが安いように見えます。
しかし、A社には足場や仮設工事が含まれ、B社には含まれていないかもしれません。
被災後は早く決めたい気持ちが強くなるからこそ、総額だけではなく工事範囲、仕様、数量、仮設、諸経費などをそろえて比較します。
地震保険は証券だけで判断しない
管理組合の保険確認では、保険証券だけを見るのではなく、現在の管理規約、建物設備、今回の被害記録、過去の事故記録などを組み合わせます。
| 確認資料 | 主な確認事項 |
|---|---|
| 保険証券と約款 | 保険対象、保険金額、特約、免責等 |
| 現行管理規約 | 共用部分や専有部分等の区分 |
| 建物設備資料 | 実際の設備と更新状況 |
| 被害記録 | 今回の被害箇所と状態 |
| 過去の事故記録 | 同じ箇所の過去修繕や保険処理 |
「地震保険へ入っているから工事費が全部出る」とも、「地震だから何も対象にならない」とも、契約確認前には断定しません。
臨時総会は日数より判断材料で考える
「地震から1か月以内に臨時総会を開かなければならない」という全国共通の期限はありません。
被害が小さく、工事内容と費用がすぐ整理できる場合もあれば、大規模な構造被害で複数の復旧案を比較しなければならない場合もあります。
総会日を先に決めるより、「今回の総会で何を決めてもらうのか」を明確にします。
応急対応の報告、本格復旧工事、資金計画などを整理し、理事長や理事会が緊急時に行った対応についても、内容、費用、必要だった理由を説明できる状態へします。
被害が大きい場合は通常の復旧を超えて考える
地震による損傷が非常に大きい場合、単純な補修だけではマンションの将来を決められないことがあります。
構造補強を伴う復旧を選ぶのか、建替えや建物更新などの再生方法を検討するのか、あるいは売却や取壊しを含めて将来方針を比較するのかによって、必要な調査、資金、合意形成は大きく変わります。
ここまで来ると、通常の修繕工事を少し大きくした話ではありません。
理事会としても、「自分たちの任期中にマンションの将来まで決めてよいのだろうか」と不安になるでしょう。
その不安があるからこそ、理事会だけで結論を抱えません。
建築士による技術評価、マンション管理士による管理運営と合意形成の整理、必要に応じて弁護士による法的確認などを組み合わせます。
国土交通省は、2026年4月1日施行の改正マンション関係法を踏まえ、2026年3月31日に「被災マンション再生等のための制度解説」を含む再生関係マニュアルを公表しています。
被害が大きい場合は、こうした一次資料も確認しながら方針を整理します。
区分所有者への情報共有は事実と判断を分ける
地震後、居住者の不安を強くするのは、被害そのものだけではありません。
「管理組合が何をしているのか分からない」という状態も、不安につながります。
だからといって、確認できていないことまで断定して安心させようとすると、後から状況が変わったときに信頼を失います。
確認済みと確認中を分ける
「エレベーターが停止しています」は事実です。
一方、保守会社の確認前であれば、「地震で機械が壊れたため停止しています」はまだ推測かもしれません。
「南側外壁に亀裂を確認しています」は事実ですが、「構造上危険な亀裂です」という評価には専門家の判断が必要です。
管理組合の情報発信では、この境界を守ります。
時間に応じて伝える内容を変える
| 時期 | 主に伝える内容 |
|---|---|
| 当日 | 立入禁止箇所、設備の使用制限、水利用の注意等 |
| 1〜2日目 | 被害確認状況、連絡済みの専門会社、次回更新予定 |
| 数日後 | 専門調査の日程、応急対応、設備復旧状況 |
| その後 | 調査結果、本復旧案、保険、資金、説明会や総会予定 |
「第1報」「第2報」と番号を付け、発信日時も残しておけば、古い情報と新しい情報が混ざりにくくなります。
答えがなくても進捗は伝えられる
復旧日がまだ分からない場合に、無理に「○日までに直ります」と予想する必要はありません。
「現在、保守会社へ現地確認を依頼しています」「明日、給排水設備会社が確認予定です」と説明することはできます。
住民が知りたいのは結論だけではありません。
問題が放置されていないことや、次に何が起きるのかが分かることにも意味があります。
連絡先一覧を実際に使える状態へ整える
災害後に契約書を探しながら会社名と電話番号を調べていると、それだけで初動が遅れます。
次の一覧を紙とデータの両方で保管します。
| 連絡先 | 会社名等 | 電話番号 | 契約番号 | 夜間休日 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 管理会社 | |||||
| 管理員 | |||||
| エレベーター会社 | |||||
| 給排水設備会社 | |||||
| 電気設備会社 | |||||
| ガス関係事業者 | |||||
| 消防設備会社 | |||||
| 建築士事務所 | |||||
| マンション管理士 | |||||
| 保険会社 | |||||
| 保険代理店 | |||||
| 自治体窓口 |
通信障害や停電が起きる可能性もあるため、オンライン上にしかない状態は避けます。
今回の地震対応を次の地震へつなげる
ここまでが「地震が起きた後」の本編です。
平時の備えは別のテーマですが、今回の対応で見つかった弱点をそのままにしないところまで行えば、今回の経験を次へつなげられます。
地震後には、「連絡先が見つからなかった」「誰が排水停止を周知するか決まっていなかった」「理事長がどこまで発注できるか誰にも分からなかった」といった問題が見えてきます。
復旧が終われば日常生活が戻り、そうした混乱の記憶は少しずつ薄れていきます。
忘れる前に一つずつ直します。
一枚の対応フローへ戻す
次の地震で最初に見る資料に、分厚い制度解説をすべて載せる必要はありません。
この記事で使った5段階を一枚に残します。
安全確保から記録へ進み、専門家へつないだ後で権限を確認し、本格復旧を決める。
その下に管理会社や専門会社の連絡先、被害確認票の保管場所、理事長不在時の代行者などを記載します。
管理規約は改正法との整合まで確認する
今回の対応で理事長権限や総会手続に迷った場合は、平時に管理規約を見直します。
ここでも「現行規約に何が書いてあるか」だけで終わらせません。
2026年4月1日以降は、改正区分所有法に抵触する規約の規定がそのまま有効とは限らないため、改正法との整合まで確認します。
国土交通省も2025年10月17日の標準管理規約改正に際し、各マンションの管理規約見直しが必要になると案内しています。
30分だけ地震後の動きを試す
大がかりな訓練だけが防災ではありません。
理事会で「今、震度6強の地震が起きた」と仮定し、30分だけ確認します。
管理会社の緊急番号を出せるか、エレベーター保守会社へ連絡できるか、被害確認票を取り出せるか、現行規約の災害条項を開けるか、区分所有者へ第1報を出す方法が分かるかを実際に試します。
そこで問題が見つかっても、それを失敗と考える必要はありません。
本当の災害で初めて分かるはずだった弱点を、平時に見つけたということです。
次の理事会で一つ直し、もう一度確認します。
防災は完璧なマニュアルを作って終わる作業ではなく、以前より迷わず動ける状態を少しずつ作ることではないでしょうか。
マンション地震後の管理組合実務FAQ
- 地震後に理事長が最初にすることは何ですか
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最優先は、自分自身を含めた人命の安全確保です。
安全に活動できる状態になってから、火災、負傷者、エレベーター閉じ込め、落下危険などを確認します。
理事長がマンション全体を一人で巡回する必要はありません。
危険と情報を集約し、必要な担当者や専門家へつなぐことが最初の役割です。
- 管理会社が来ない場合はどうすればよいですか
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広域地震では、管理会社の担当者も被災している可能性があります。
管理会社への連絡を続けながら、立入制限、被害記録、住民への注意喚起など、管理組合で行える初動を進めます。
専門判断が必要な建物や設備については、それぞれの専門会社へつなぎます。
ただし、管理会社が来ないことを理由に理事長の発注権限が自動的に広がるわけではありません。
- 地震後にトイレを流してよいですか
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水が出ることだけでは、排水設備の安全を確認できません。
大きな地震後に排水管の損傷が疑われる場合は、管理会社や設備会社等の確認まで水利用を控える対応を検討します。
一方、全国すべてのマンションで必ず排水停止となるわけではなく、建物ごとの状況を確認します。
- エレベーターが動けば利用できますか
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一時的に動いたことだけで安全とは判断できません。
保守会社や管理側から利用再開の案内があるまで使用を控えます。
閉じ込めがある場合も、役員や居住者が扉をこじ開けたり、昇降路へ入ったりしないようにします。
- 緊急修繕には必ず総会が必要ですか
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すべての対応で総会を待つ必要があるとは限りません。
現行の標準管理規約には、災害等の緊急時における理事長の保存行為や、総会開催が困難な場合の応急的な修繕について規定例があります。
ただし、標準管理規約はモデルです。
実際に自分のマンションで使える権限については、現在の管理規約を確認するとともに、2026年4月1日以降は改正区分所有法との整合も確認します。
- 古い管理規約に書いてあればそのまま使えますか
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必ずしもそうではありません。
法務省は、2026年4月1日以降、改正区分所有法に抵触する規約の規定は効力を失うと整理しています。
したがって、現在の規約を確認するだけでなく、その条文が改正後の区分所有法と整合しているかまで確認する必要があります。
特に総会の招集手続や決議方法について、改正前から規約を変更していないマンションでは注意が必要です。
- 2026年から総会は出席者だけで何でも決められますか
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いいえ。
2025年に成立・公布された改正法が2026年4月1日に施行され、普通決議や一定の特別決議について出席者を基礎とする仕組みが導入されましたが、すべての決議が出席者基準になったわけではありません。
また、規約変更や一定の共用部分変更などでは、議案ごとに特別な多数決要件があります。
建替え等は全区分所有者を基礎とする別の要件が関係します。
- 臨時総会はいつ開けばよいですか
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全国共通の「地震から何日以内」という期限はありません。
専門調査、工事案、見積り、保険、資金計画など、区分所有者が判断する材料をそろえた段階で開催します。
本格復旧を急ぐ場合は、調査と並行して招集準備を進めることもあります。
現在新たに招集する総会では、改正後の区分所有法と自分のマンションの管理規約を照合して進めます。
- 被害写真だけあれば十分ですか
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写真は重要ですが、それだけでは不十分です。
日時、場所、確認者、一次対応、専門家への連絡、調査結果、修繕状況まで同じ管理番号で追跡すると、復旧、保険、住民説明へ使いやすくなります。
写真を残すことが目的ではなく、その被害が最後まで適切に処理されたかを確認できる状態にすることが目的です。
- 応急危険度判定で調査済なら本格復旧は不要ですか
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そのようには判断できません。
応急危険度判定は、主に余震等による倒壊や落下物による二次災害を防ぐための一時的な危険度評価です。
本格的な復旧の必要性については、必要に応じて建築士等による別の調査を検討します。
- マンション管理士には何を相談できますか
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現行管理規約と改正法の関係、理事長と理事会と総会の権限整理、専門家から出た情報の整理、臨時総会の準備、議案整理、区分所有者への説明、復旧に向けた合意形成などを相談できます。
建物の構造安全性は建築士等へ、設備の使用可否は設備会社へ、法的紛争や高度な法解釈は弁護士へ相談します。
それぞれの専門家から得た情報を、管理組合の意思決定へつなぐ役割としてマンション管理士を活用すると整理しやすくなります。
マンション地震後の管理組合対応まとめ
マンションで地震が起きた後、理事長が一人ですべてを判断する必要はありません。
発災直後は人命と二次災害防止を優先し、その後に被害を記録します。記録した内容を建築士や設備会社などへ渡し、専門的な判断を受けたうえで、管理組合として誰が何を決められるのかを確認します。
この記事全体の流れは一つです。
安全確保から記録へ進み、専門家へつないだ後で権限を確認し、本格的な復旧を決めます。
2025年に成立・公布され、2026年4月1日に施行された改正区分所有法によって総会実務も変わりました。
そのため、法律、標準管理規約、自分のマンションの管理規約を分けて確認する必要があります。
さらに2026年4月1日以降は、現在の管理規約に書かれているという理由だけで、その条文をそのまま使えるとは限りません。改正区分所有法に抵触する規約の規定は効力を失うため、規約を確認すると同時に改正法との整合を確認するという二段階が必要です。
地震後に理事長が感じる「自分が全部決めなければならない」という不安は、役割と順番を分けることで小さくできます。
管理組合が求められているのは、何でも知っていることではありません。
確認できた事実を残し、必要な専門家へつなぎ、現在の法令と規約に沿って区分所有者が判断できる状態を作ることです。
すべての答えがすぐ分からなくても、次に確認する相手と次に行う作業が分かっていれば、管理組合は復旧へ進んでいけるでしょう。
参考資料
法改正の成立日、公布日、施行日と制度全体を確認する一次資料です。
2026年4月1日の施行と、改正法に抵触する既存規約の効力、集会に関する経過措置を確認する資料です。
現行のマンション標準管理規約と、各マンションの規約見直しに関する国土交通省の案内です。
2025年10月17日の標準管理規約改正について、改正の背景と主な変更事項を確認できます。
被害が大きいマンションについて、通常の復旧を超えた再生制度や2026年3月公表の各種マニュアルを確認できます。
管理組合が平時から確認しておきたい震災対策の項目について参考になる資料です。