理事長が退任することになったのに、次の候補者が決まらない。総会の時期も近づき、管理会社から確認事項も届いているのに、「結局誰が動くのだろう」と話が止まってしまう。そんな状態になると、このまま管理組合そのものが機能しなくなるのではないかと不安になるでしょう。
ただし、管理者が不在になったときに、最初から外部管理者へ切り替える必要があるとは限りません。反対に、これまで区分所有者だけで運営してきたという理由だけで、内部選任へ固執する必要もないでしょう。
重要なのは、方式を先に決めるのではなく、現在の状況と緊急性を確認し、なぜ後任が決まらないのかを整理してから手段を選ぶことです。
2026年4月1日には改正区分所有法が施行され、集会の議決方法や特別決議の仕組みなどが見直されました。国土交通省は2025年10月17日にマンション標準管理規約を改正し、2026年4月1日には「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」も改訂しています。現在の管理者不在へ対応するときは、改正前の情報だけを前提にせず、自分たちの管理規約と現行制度を並べて確認する必要があります。
この記事では、管理者が不在になった直後に確認したいことから、管理者が決まらない背景、放置した場合に生じる問題、4つの解決方法、マンション管理士に依頼できる支援、外部管理者方式を採用する際の監督方法まで順番に整理します。
管理者不在になったら最初に確認すること
今まさに理事長が辞めた、あるいは次の理事長が決まらないという状況なら、最初から将来の管理方式まで決めようとしなくても構いません。まずは、現在のマンションで誰が何をできるのか、そして何を急いで決めなければならないのかを確認します。
| 最初に確認する項目 | 確認する内容 | 確認する理由 |
|---|---|---|
| 管理規約 | 管理者が誰と定められているか、副理事長などの代行規定があるかを確認する | 理事長の退任が直ちに完全な管理者不在を意味するとは限らないため |
| 退任状況と任期 | 理事長の退任日、任期、辞任届、総会議事録などを確認する | 現在誰が役職にあり、いつから欠員となるのかを確定するため |
| 管理委託契約 | 管理会社が現在どこまで業務を行える契約になっているかを確認する | 管理者不在でも続く業務と新たな判断が必要な業務を分けるため |
| 直近の期限 | 保険更新、管理委託契約、工事、支払い、総会予定などを確認する | 今すぐ対応すべき案件と時間をかけられる課題を分けるため |
| 総会招集方法 | 管理者不在時の管理規約と区分所有法上の招集方法を確認する | 新しい管理者を選任するための手続きを把握するため |
この段階で大切なのは、「全部を今日決めなければならない」と思わないことです。副理事長が職務を行える規定があり、重要な契約期限にも余裕があるなら、現在の役員業務を見直す時間を確保できるかもしれません。
一方で、重要な総会や管理委託契約の更新、大規模修繕、保険手続きなどが目前に迫っている場合には、数か月かけて内部改善だけを試すことが適切とは限りません。すでに理事会が事実上機能していないケースも含め、マンション管理士などの専門家支援や外部管理者方式の検討を並行して進める必要があります。
つまり、「まず小さく改善してから次へ進む」という考え方は、すべてのマンションへ一律に当てはめる順番ではありません。
原因と緊急性に合わせて、必要な手段を選ぶことが基本です。
マンションの管理者不在とは
マンションで「管理者」と聞くと、エントランスの受付や清掃を担当している管理人を思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、区分所有法上の「管理者」と、日常的に「管理人」「管理員」と呼ばれている人は別の立場です。
区分所有法では、規約に別段の定めがない限り、区分所有者は集会の決議によって管理者を選任または解任できます。また管理者は、共用部分などの保存や集会決議の実行などを担い、その職務について区分所有者を代理する立場になります。
国土交通省の現行マンション標準管理規約では、理事長を区分所有法上の管理者とし、副理事長については、理事長に事故があるときに職務を代理し、理事長が欠けたときにはその職務を行う規定が置かれています。もっとも、標準管理規約は各マンションが規約を作成または変更するときのひな型であり、実際のマンションでは自分たちの規約を確認しなければなりません。
理事長が辞任や死亡などによって退任し、後任が選任されない場合には、「理事長がいない」という役員上の問題だけでなく、誰が区分所有法上の管理者として管理組合を代表するのかという問題が生じます。
ただし、理事長が退任した瞬間に、マンション管理のすべてが止まるとは限りません。既存の管理委託契約に基づく清掃や設備点検がそのまま続く場合もあり、設定済みの支払いが直ちに停止しないこともあります。
だからこそ、管理者不在は気付きにくい問題でもあります。
日常の景色は変わらないのに、新しい契約や総会、大規模修繕など重要な判断が必要になった場面で、初めて「誰が管理組合を代表するのか」が問題になることがあります。管理者不在の怖さは、必ずしもその日に全機能が停止することではなく、重要な判断を求められたときに権限の所在が曖昧になることにあります。
管理者と理事長と管理員の違い
それぞれの役割を整理すると、不在による影響も見えやすくなります。
| 区分 | 基本的な位置付け | 主な役割 | 不在時に考えられる影響 |
|---|---|---|---|
| 管理者 | 区分所有法上の管理を担う者 | 共用部分などの保存や集会決議の実行を行い、職務について区分所有者を代理する | 新規契約や代表者としての手続きなどが進みにくくなる可能性がある |
| 理事長 | 管理規約に基づく理事会の代表者 | 理事会運営や管理組合業務の統括などを担う | 理事会運営や総会準備などが停滞する可能性がある |
| 管理員 | 管理会社などが配置する現場担当者 | 受付、清掃、点検立会いなど契約に基づく現場業務を行う | 日常の現場業務には影響するものの、通常は管理組合の代表権とは別問題になる |
管理会社や管理員が存在していても、それだけで法律上の管理者が存在することにはなりません。一方で、管理者が不在になったからといって、管理会社との既存契約による業務がすべて同時に停止するとも限りません。
「大丈夫だろう」と「全部止まる」のどちらかへ振り切らず、現在の規約と契約を確認することが必要です。
管理者不在でも総会を開く方法
管理者がいなくなったとき、「新しい管理者を選ぶ総会を誰が開くのか」という疑問が出てきます。
区分所有法では、管理者がいない場合にも集会を招集するための手段が設けられています。原則として、区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者は集会を招集でき、この定数は規約で減らすことができます。
ただし、法律上の招集手段が存在することと、実際に管理者不在が解消されることは別です。
必要数の区分所有者が集まり、実際に行動しなければ、制度上は総会を招集できる状態でも、不在が長期化する可能性があります。「法律に方法があるから待っていれば何とかなる」という仕組みではありません。
誰かが区分所有者数と議決権を確認し、必要な賛同を得て、議案や招集通知を準備する必要があります。
ここで気持ちが止まってしまう人もいるでしょう。「自分はただの一所有者なのに、総会を動かしてよいのだろうか」と不安になるのは無理もありません。
そのような場合には、マンション管理士などへ手続きの整理を依頼することで、個人の責任感だけに頼らず進める方法があります。
管理者が決まらない主な原因
管理者が決まらないと、「最近はマンション管理に無関心な人が増えた」と説明したくなることがあります。しかし、「やりたくない」という言葉の背景を見ていくと、単純な無関心では説明できないケースも少なくありません。
仕事と両立できるだろうか。大規模修繕の金額を自分が判断してよいのだろうか。前の理事長のように住民から責められたらどうしよう。
こうした不安を抱えている人へ、「区分所有者なのだから責任を持ってください」と言うだけでは、後任不足は解消しにくいでしょう。
人がいないと考える前に、人が引き受けにくい仕組みになっていないかを見る必要があります。
高齢化による役員候補の減少
高経年マンションでは、建物の老朽化と居住者の高齢化が同時に進みます。国土交通省も、マンションを巡る課題の背景として建物の高経年化と居住者の高齢化という「2つの老い」を挙げています。
分譲当初は輪番制で問題なく役員を選べていても、20年や30年が経過すれば生活状況は変わります。長時間の理事会参加が身体的に負担になる人もいれば、自分や家族の介護を抱えている人もいるでしょう。
特に小規模マンションでは、数人が役員を担えなくなるだけでも候補者の割合が大きく減ります。同じ人に何度も役員が回るようになれば、「また自分がやるのか」という疲労や不公平感も蓄積していきます。
この状況を個人の協力意識だけの問題として扱うと、後任探しを毎年繰り返すことになります。
住民構成が変わったなら、運営方法も変える必要があるのではないかと考えることが重要です。
外部所有者や賃貸化による候補者の減少
相続や住み替えによって、区分所有者本人がマンションに居住していない住戸が増える場合もあります。
所有者は存在していても、実際に現地で理事会活動を担う人が減れば、居住している一部の区分所有者へ役員負担が集中しやすくなります。
「長く住んでいる自分ばかり何度も役員になっている」と感じれば、運営そのものに嫌気が差すこともあるでしょう。これは管理への無関心というより、負担の偏りに対する反応と考えることもできます。
管理規約によって役員資格を狭く定めている場合には、現在の所有者構成と規約が合っているかを確認することが必要です。
ただし、非居住区分所有者や親族などをどこまで役員候補へ含めるかはマンションごとに異なります。規約変更を伴う場合には、改正区分所有法と自分たちの規約に基づく適切な手続きが必要です。
理事長への業務集中
管理者の後任が見つからないマンションでは、前任理事長が何を担当していたのかを書き出すと原因が見えることがあります。
管理会社との日常的な連絡だけでなく、設備故障が起きた際の確認や業者との調整、工事見積書の検討、住民から寄せられる相談への対応、総会資料の確認、金融機関での手続き、大規模修繕に関する説明会への参加まで一人へ集中しているケースがあります。
これだけの業務をまとめて「理事長の仕事」と説明されたら、「自分には無理です」と感じる人が出ても不思議ではありません。
問題は候補者の責任感ではなく、業務設計にあるのかもしれません。
そこで、管理会社が担う業務、理事会で判断する業務、理事長に残す業務、専門家へ確認する業務を分けます。
前任者が疲れ切って辞めたのであれば、後任へ同じ仕事をそのまま渡してはいけません。人を替えるだけでは、同じ理由で次の人も辞める可能性があります。
専門的な判断への不安
マンション管理では、建築や設備だけでなく、法律、契約、会計、保険、長期修繕計画など幅広い知識が関係します。
大規模修繕の見積額が妥当なのか分からない。管理会社から修繕積立金の増額を提案されても、本当に必要な水準なのか判断できない。
そのような状態で、「理事長として決めてください」と求められれば、重荷に感じるのは自然でしょう。
役員就任への抵抗感は、管理への関心が低いから生じるとは限りません。むしろ共同財産を扱う責任を理解しているからこそ、「間違った判断をしたくない」と慎重になっている可能性があります。
その場合には、役員へ専門家並みの能力を求めるより、必要なときにマンション管理士などへ確認できる体制を作る方が現実的でしょう。
過去の対立による心理的負担
以前の総会で激しい対立があったマンションでは、その記憶が次の役員選びへ影響することがあります。
工事を巡って理事長が強く批判されたり、一部の住民から繰り返し連絡を受けたりする姿を見ていれば、「次は自分が矢面に立つのではないか」と考える人が出るでしょう。
このケースでは、役員報酬を増やすだけでは十分な解決にならない可能性があります。
相談や苦情の窓口を管理会社と分担し、理事長個人へ連絡が集中しないようにする。意見が分かれやすい案件では、第三者を交えて説明する。
こうした運営方法を整えることで、「役員になったら一人で住民全員を相手にしなければならない」という恐れを軽減できます。
管理者不足は、人探しだけの問題ではありません。
普通の区分所有者が安心して引き受けられる役割になっているかという組織設計の問題でもあります。
管理者不在のままにすると何が困るのか
管理者が不在になっても、翌日からマンションの日常生活が完全に止まるとは限りません。
そのため、「特に困っていないから、しばらくこのままでもよいのでは」と考えてしまうことがあります。
しかし、管理組合では日常業務だけでなく、新しい判断を求められる場面があります。時間が経つほど、代表者や意思決定体制が定まっていないことの影響が現れやすくなります。
契約と金銭手続きが進みにくくなる
管理者は、その職務について区分所有者を代理する立場です。新しい契約や代表者変更などを進める場合には、現在誰が管理組合を代表できるのかが問題になることがあります。
もっとも、管理者が退任した瞬間に管理費口座から一切の支払いができなくなると一律に断定することはできません。既存の口座振替や金融機関との手続き、管理委託契約などによって状況が異なるためです。
そこで、最初に確認したいのが期限です。
数日後に対応が必要な契約と、半年後でも間に合う制度見直しを同じ緊急度で考える必要はありません。期限を並べることで、「何から動けばよいのか」が見えやすくなります。
緊急修繕で判断が遅れる可能性
給水ポンプの故障や漏水事故は、管理者の選任を待ってくれません。
事故が起きたときに、「誰の判断で工事を頼めるのか」「どの金額まで進めてよいのか」が曖昧だと、必要な初動が遅れることがあります。
管理者不在で問題になるのは、「何もできない状態」だけではありません。
権限が曖昧なため、管理会社も役員も判断をためらい、結果として必要な対応が遅れるという状況も考えられます。
進行中の修繕や緊急連絡体制は、管理者不在が分かった段階で早めに確認しておきたい事項です。
総会と重要な意思決定が停滞する
マンションでは、予算や決算だけでなく、役員選任、管理規約変更、大規模修繕など重要な事項を総会で決めます。
管理者がいなくても一定数の区分所有者による集会招集は可能ですが、制度が存在するだけで総会が自動的に開かれるわけではありません。
必要数の区分所有者が動かなければ、事実上の管理者不在状態が続くことがあります。
「後任が見つかってから総会を開こう」と考えているうちに、その後任を選ぶための総会も開けないまま時間が経過することもあるでしょう。
建物や契約の期限は、その間も進みます。
管理費滞納への対応が遅れる
管理費や修繕積立金の滞納がある場合には、督促やその後の対応方針について判断が必要です。
管理者や理事会が十分に機能しなければ、その判断が後回しになる可能性があります。
一件の滞納でも、長期間積み重なれば管理組合の財務へ影響します。
法的手続きまで必要となる場合には、マンション管理士だけでなく弁護士へ相談するなど、問題に応じて適切な専門家を選ぶ必要があります。
修繕の先送りにつながる
大規模修繕や設備更新は、実際の工事より前に長い準備期間が必要です。
管理者が決まらないことを理由に建物調査や見積もり、資金計画、総会準備を何か月も止めれば、その後の工事時期まで遅れる可能性があります。
管理者不在だけを理由に直ちに資産価値が下がると断定することはできません。
それでも、必要な修繕や意思決定が長期間できない状態は、マンションを良好に維持するうえで望ましいとはいえないでしょう。
目的は管理者という席を形式的に埋めることではなく、管理組合が必要な判断を再び行える状態へ戻すことです。
管理者不在を解消する4つの方法
管理者不在への解決方法は一つではありません。
内部から新しい管理者を選べるマンションもあれば、業務負担を見直すことで候補者が見つかる場合もあります。専門家の支援を加えれば理事会方式を続けられるケースもあれば、すでに内部運営が難しく、外部管理者方式を早期に検討した方がよいマンションもあるでしょう。
判断軸は、「一般論としてどの方式が優れているか」ではありません。
現在の原因と緊急性に、どの方法が合うかです。
区分所有者から新しい管理者を選ぶ
内部に候補者がいる場合には、新しい管理者を選任する方法が最も直接的です。
区分所有法では、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって管理者を選任できます。管理規約で理事長を管理者としているマンションでは、自分たちの規約に従って新しい理事長を選ぶことになります。
管理者がいない場合には、前述した区分所有者側からの集会招集を利用することも検討します。
ここで注意したいのが、2026年4月施行の改正区分所有法における多数決の扱いです。
改正後の区分所有法第39条では、法律または規約に別段の定めがない集会の議事について、原則として出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決する仕組みになりました。書面または代理人による議決権行使を行った区分所有者についても、法律上の取扱いに従って出席者数や議決権へ算入されます。
ただし、「2026年4月から出席者の過半数だけで何でも決められるようになった」という意味ではありません。
規約変更などの特別決議については、区分所有者と議決権の各過半数の出席を要する定足数があり、そのうえで出席した区分所有者と議決権の各4分の3以上が原則的な決議要件となります。国土交通省の2025年改正マンション標準管理規約も、普通決議と特別決議を分けた規定に改められています。
そのため、新しい管理者を選ぶだけなのか、同じ総会で役員資格や管理規約まで変更するのかによって確認すべき決議要件は異なります。
「改正法で出席者多数決になった」という大きな理解だけで進めず、何を決める総会なのかを確認することが重要です。
役員と理事会の負担を見直す
内部に候補者がいるものの、「今の仕事を全部やるなら無理だ」と言われている場合には、管理者選びと同時に業務の見直しを行う価値があります。
まず、前任理事長が何に時間を使っていたのかを確認します。
理事長本人が判断すべき事項なのか、理事会で分担できるのか、管理会社へ委託できるのか、専門家の確認が必要なのかを切り分けます。
ここで重要なのが、意思決定、業務執行、監督を一人へ集中させないことです。
理事長が日常事務を処理し、その判断を本人だけが確認する仕組みでは、仕事も責任も集まりやすくなります。管理会社が行う日常業務、理事会で判断する事項、監事が確認する事項を整理することで、管理者の負担を減らす余地があります。
役員資格が現在の所有者構成と合っていない場合には、その見直しも検討対象です。
また、一定の役員報酬を設定する方法もあります。ただし、報酬を支払うことで過大な仕事量を維持するのではなく、先に仕事内容を適正化し、そのうえで責任や時間に応じた報酬を検討する方が合理的でしょう。
マンション管理士など外部専門家に支援を依頼する
マンション管理士へ相談することは、管理者そのものを直ちに外部へ任せることではありません。
現在の理事会方式を維持しながら、管理規約の確認、臨時総会の準備、役員制度の見直し、管理委託契約の確認など、必要な部分だけ支援を受ける方法があります。
「自分一人で判断するなら理事長はできない。でも専門的な問題を相談できるなら引き受けられる」
そのように感じる人がいるマンションでは、外部管理者方式へ全面的に移行する前に、顧問やスポット相談を組み合わせる方法も考えられるでしょう。
ただし、ここでも順番を固定する必要はありません。
重要な契約や総会、大規模修繕が目前に迫っている場合や、理事会自体がすでに停止している場合には、顧問支援と外部管理者方式の比較を同時に進める方が適切なケースもあります。
また、マンション管理士に相談すればすべての問題が解決するわけではありません。
訴訟などの法律事務を伴う問題では弁護士、税務上の専門判断が必要なら税理士など、課題に応じて別の専門家との連携が必要になることがあります。
外部管理者方式を検討する
内部から管理者を継続的に選ぶことが難しい場合には、外部管理者方式も現実的な選択肢です。
国土交通省は2026年4月1日に「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を改訂し、特にマンション管理業者自身が管理者となる管理業者管理者方式について、導入方法、利益相反取引、通帳や印鑑などの管理を含む留意事項を整理しています。
外部管理者方式には、毎年のように管理者候補を探す負担を軽減し、専門的な業務執行を外部へ任せやすくする利点があります。
一方で、外部管理者への報酬が必要になり、区分所有者が日常管理へ接する機会が少なくなる可能性もあります。
特に管理会社自身が管理者となる場合には、管理組合を代表する立場と、管理事務や工事などを受注する側の立場が近くなります。
長年役員探しに苦労してきた人ほど、「もう誰かに頼み続けなくてもよい」と聞けば安心するでしょう。
その安心感だけで決めるのではなく、誰へ任せるのかと同じくらい、誰が任せた相手を監督するのかまで考える必要があります。
管理者不在のケース別対応
同じ管理者不在でも、マンションの置かれた状況によって優先順位は変わります。
| ケース | 現在の問題 | 最初に確認すること | 主な対応方向 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| 管理者が辞めた直後 | 急に代表者の欠員が生じた | 退任時期、任期、代行規定、引継ぎ状況を確認する | 代行体制を確認しながら新管理者の選任準備を進める | すべての業務が停止したと決めつけず直近の期限から確認する |
| 次期役員が決まらない | 輪番制など従来の制度が機能しなくなった | 候補者が断る理由と実際の業務量を確認する | 業務削減、役割分担、資格要件、報酬を検討する | 人だけを替えて同じ負担を引き継がせない |
| 高齢化した小規模マンション | 今後も候補者確保が難しい | 数年先まで役員を担える人数と費用余力を確認する | 顧問支援から外部管理者方式まで比較する | 戸数に対して複雑過ぎる仕組みを作らない |
| 理事会が事実上機能していない | 誰も実務を進められない | 期限の迫った案件と現在の権限関係を確認する | 専門家支援と管理者選任を早期に進める | 数か月の内部改善を前提にしない |
| 外部所有者が多い | 居住者へ役員負担が集中している | 所有者への連絡方法と役員資格を確認する | 役員制度や非居住所有者の関与方法を見直す | 居住者だけへ負担を固定しない |
| 大規模修繕直前 | 高額な意思決定が迫っている | 既存決議、工事予定、契約権限を確認する | 管理体制の復旧と修繕検討を並行する | 半年間の内部改善を試してからと考えない |
| 管理会社から管理者就任を提案された | 外部管理者方式への移行判断が必要 | 管理者報酬、契約範囲、監査体制、利益相反対策を確認する | 内部方式や専門家支援と比較して総会で判断する | 理事会負担が減る利点だけで選ばない |
この表で大切なのは、「自分たちに最も近いケースはどれか」を見ることです。
辞任したばかりで副理事長が職務を行えるマンションと、数年間候補者が見つからず理事会も実質的に停止しているマンションでは、同じ対応順序を取る必要はありません。
高齢化した小規模マンションの想定事例
ここでは、実在する特定の管理組合の相談事例ではなく、管理者不在で起こりやすい事情を組み合わせた想定ケースを考えます。
築35年で総戸数30戸程度のマンションにおいて、理事長が体調を理由に任期途中で退任することになりました。
住民の高齢化が進み、後任候補へ声を掛けても、「仕事と両立できない」「大規模修繕の判断まで責任を負うのは怖い」と断られています。
理事会では次第に、「もう住民だけで管理すること自体が無理なのではないか」という空気が広がりました。
管理会社から管理業者管理者方式を提案されれば、長年後任探しに苦労してきた人ほど魅力を感じるでしょう。「来年からは誰かに頭を下げて理事長をお願いしなくてよい」と思えば、肩の荷が下りたように感じるのも自然です。
ただし、このマンションでは、副理事長が当面の職務を行うことができ、翌月に大きな契約期限もないとします。
そこで、すぐに運営方式を全面的に変えるのではなく、前任理事長の仕事内容を確認します。
調べてみると、管理会社との細かな連絡や住民からの相談まで理事長へ集中しており、理事会も重要な判断より日常的な報告に時間を使っていました。
この場合、「人がいない」という問題の一部は、「誰でも引き受けにくい仕事になっている」という問題だったと考えられます。
そこで、管理会社との連絡方法を整理し、理事会で扱う事項を絞り、専門性の高い案件だけマンション管理士へ相談する方法を検討します。役員資格や報酬についても、現在の所有者構成に合わせて見直す必要がないか確認します。
その結果、内部から管理者候補が出るのであれば、理事会方式を続けられる可能性があります。
それでも候補者を確保できないのであれば、外部管理者方式を比較する理由が明確になります。
一方、同じ30戸のマンションでも、副理事長も不在で、翌月には大規模修繕契約の判断が迫っているのであれば状況は異なります。
その状態で「まず半年間業務改善を試しましょう」とするのは、かえって危険かもしれません。
臨時総会の準備、マンション管理士などへの相談、外部管理者方式の比較を並行して進め、重要な意思決定をできる状態へ戻すことが先になります。
この違いから分かるのは、内部管理と外部管理のどちらを優先するかが本質ではないということです。
問題の原因と時間的な余裕によって、適切な進め方は変わります。
マンション管理士に依頼できる支援
マンション管理士へ相談すると聞くと、「管理者になってもらうこと」を想像する人もいるでしょう。
しかし、管理者不在に関する支援はそれだけではありません。
現在の権限関係を整理する段階から、総会準備、役員制度の見直し、管理会社との契約確認、顧問、監事、外部管理者まで、必要な支援の範囲を分けて考えることができます。
管理規約と現在の体制を確認する
まず、本当に管理者が不在なのかを整理します。
理事長の任期、辞任の状態、副理事長などの職務代行、役員の欠員補充、管理者の定め、集会の招集方法などを現行の管理規約から確認します。
国土交通省は2025年10月17日に、改正区分所有法などを踏まえてマンション標準管理規約を改正しました。今回の改正には、総会の開催手続きや決議要件など、管理組合の運営に大きく関係する事項が含まれています。
ただし、標準管理規約は各マンションの規約そのものではありません。
「標準規約と違うから全部変更する」のではなく、現在の独自規定に理由があるのか、現行法と抵触していないかを確認する必要があります。
臨時総会の準備を支援してもらう
管理者がいない状態から新しい管理者を選ぶには、適切な手続きで集会を開く必要があります。
区分所有者側から招集する場合には、必要な人数と議決権を確認し、議案や招集通知を準備します。
さらに、新しい管理者の選任だけを行うのか、役員資格や管理規約の変更まで同時に行うのかによって、必要な決議要件は変わります。
改正区分所有法では普通決議と特別決議の考え方が異なるため、「出席者多数決になった」という言葉だけを頼りに進めるのは危険です。
マンション管理士へは、こうした総会準備の論点を整理し、管理組合が判断しやすい資料へまとめる支援を相談できます。
役員業務を棚卸しする
後任候補が出ないときには、前任者の仕事を具体化することも有効です。
理事長へ集中している業務、他の理事へ分担できる業務、管理会社との契約に含まれる業務、専門家へ任せた方がよい業務を整理します。
「理事長は大変」という曖昧な認識が、「管理会社からの連絡が一人へ集中している」「工事資料の確認に毎月多くの時間を使っている」という具体的な問題へ変われば、改善方法を考えやすくなります。
この作業は、新しい管理者を見つけるためだけではありません。
次の人もその次の人も、無理なく役員を引き受けられる仕組みへ変えるための基礎になります。
管理委託契約を確認する
長年同じ管理会社へ業務を委託していると、理事長と管理会社の仕事の境界が、契約ではなく慣習によって決まっている場合があります。
契約書を改めて確認すると、実は管理会社の委託業務へ含まれている仕事を役員が抱えていたと分かることもあるでしょう。
反対に、「当然管理会社が対応する」と思っていた業務が契約外だったと判明する場合もあります。
新しい制度を作る前に、現在お金を支払って委託している業務を確認することも、役員負担を見直す重要な作業です。
顧問として継続的な助言を受ける
内部の理事会を維持しながら、専門的な判断だけ支援してもらう方法もあります。
管理会社から提出された提案や修繕計画について第三者へ確認できれば、役員が一人で結論を出す負担を減らせます。
特に、「専門的なことを自分で決めるのが怖い」という理由で役員候補が出ないマンションでは、相談先があること自体が意味を持つでしょう。
監事としてチェックを依頼する
管理者へ業務執行を任せる場合には、その業務を別の立場から確認する仕組みも重要です。
支払いを行う人が、承認から記録、確認まで一人で完結する状態では、故意の不正だけでなく単純なミスも発見しにくくなります。
小規模マンションで複雑な統制制度を作る必要はありませんが、執行する人と確認する人を分けるという基本的な考え方は残した方がよいでしょう。
外部管理者として依頼する
マンション管理士などの外部専門家を、区分所有法上の管理者として選任する方法もあります。
ただし、マンション管理士資格を持つ人がすべて外部管理者業務を受託しているわけではありません。
顧問として助言を依頼するのか、監事として監督を求めるのか、管理者として業務執行まで任せるのかによって、必要な契約内容と費用は変わります。
相談するときには、「マンション管理を何とかしてほしい」と漠然と伝えるより、自分たちがどの役割まで外部へ求めているのかを整理すると話が進みやすくなります。
外部管理者方式を選ぶ前に確認したいポイント
役員候補が長年見つからないマンションでは、外部管理者方式は大きな安心につながる可能性があります。
しかし、外部へ業務を任せることと、管理組合が管理そのものから離れることは同じではありません。
むしろ日常業務を外部へ委ねるほど、管理組合側には「適切に任せられているかを確認する」という別の役割が生まれます。
管理者事務と管理事務を区別する
管理会社自身が管理者となる管理業者管理者方式では、その会社は管理組合の管理者としての立場と、管理事務を受託する会社としての立場を持ちます。
国土交通省は2025年12月12日に「マンション標準管理者事務委託契約書」を策定し、管理業者管理者方式に対応した標準管理委託契約書や標準管理規約の書き換え表も整備しました。
契約を検討するときは、合計でいくらかかるかだけを見るのではなく、管理者として何を行うのか、管理会社として何を行うのか、それぞれの報酬がどうなっているのかを確認します。
説明を聞いても違いが分からない状態なら、そのまま契約を急がない方がよいでしょう。
任期と交代方法を確認する
外部管理者を選ぶときには、導入方法だけでなく交代方法も確認します。
将来管理者を変更したい場合に、どのような手続きが必要なのか。契約を終了するときの通知期間はどの程度なのか。管理規約、議事録、契約書、会計資料、電子データをどのように引き継ぐのか。
こうした出口を決めていなければ、「任せることはできたが変更が難しい」という状態になりかねません。
外部管理者方式では、始めるときだけでなく、終わるときまで考えておくことが重要です。
利益相反への対策を確認する
管理会社が管理者となり、その管理会社やグループ会社へ工事やサービスを発注する場合には、利益相反が生じる可能性があります。
これは管理会社を信用するかどうかだけの問題ではありません。
管理組合には適正な条件で契約したい立場があり、受注する会社には自社の利益を確保したい立場があります。
立場が重なる可能性があるからこそ、誰が確認しても説明できる仕組みを作る必要があります。
国土交通省の2026年改訂ガイドラインでも、利益相反取引への対応は管理業者管理者方式の重要な論点として整理されています。
通帳や印鑑などの管理を確認する
管理組合財産を誰がどのように管理するかも重要です。
外部管理者へ業務執行を任せても、一人または一社だけで資金移動の最初から最後まで完結する状態は、慎重に考える必要があります。
誰が支払いを実行し、誰が承認し、誰が記録や残高を確認するのか。
管理組合の規模に合った方法で役割を分けることが重要です。
国土交通省の2026年改訂ガイドラインでも、通帳や印鑑などの保管方法は主要な確認事項として扱われています。
監事を実際に機能させる
監事という肩書を置くだけでは、十分な監督とはいえません。
管理者からどの資料を受け取れるのか、どの程度の頻度で報告を受けるのか、高額な支出や利益相反のおそれがある取引をどう確認するのかまで決める必要があります。
国土交通省の現行標準管理規約でも、監事は管理組合の業務執行と財産の状況を監査する役割とされています。
小規模マンションでは、大規模マンションと同じ複雑な監督体制を作ることが新しい負担になる場合があります。
重要なのは制度を増やすことではなく、管理者とは別の立場から実際に確認できる状態を残すことです。
区分所有者の意思を反映する仕組みを残す
外部管理者方式を導入すると、区分所有者が日常の運営業務から離れやすくなります。
最初は会議や連絡が減り、「楽になった」と感じるでしょう。
しかし、数年後に管理費や修繕計画について内容を理解している区分所有者がほとんどいなくなれば、外部管理者の提案を十分に評価できなくなる可能性があります。
管理者を外部へ任せても、マンションを共同所有しているのは区分所有者です。
重要事項について報告を受け、必要な場面で意見を反映できる仕組みを残すことが、外部管理者方式を長く適切に運用するうえで重要になります。
大規模修繕で独立した確認を残す
大規模修繕では多額の資金が動きます。
管理会社が管理者を兼ね、その会社または関係会社が工事にも関与する場合には、誰が見積額や発注方法を確認するのかが特に重要です。
修繕委員会を設けたり、マンション管理士や設計コンサルタントなどの第三者を利用したりする方法が考えられます。
人数の少ないマンションで十分な委員を確保できない場合でも、すべてを管理者だけへ任せるのではなく、規模に応じたチェック方法を考える必要があります。
将来別の方式へ変更できる状態を残す
外部管理者方式を長く続けると、区分所有者自身が日常管理の経験を持たなくなる可能性があります。
だからといって、一度外部管理者方式を導入したら二度と理事会方式へ戻れないわけではありません。
必要な規約変更や役員選任などを行い、別の運営体制へ移行できる場合があります。
そのためには、管理規約、総会議事録、契約書、会計資料、工事履歴などが管理組合の資料として確実に残り、次の管理者や役員へ引き継げることが必要です。
「今の負担が減るか」と同時に、「将来も選び直せるか」を確認しておきましょう。
管理者不在になったときの確認チェックリスト
冒頭では、管理者が不在になった直後に必要な5項目へ絞りました。
実際に新しい管理体制まで考える段階では、もう少し広い視点で確認します。
| 段階 | 確認する内容 | 判断すること |
|---|---|---|
| 現在の体制確認 | 理事長の退任日、任期、代行規定、現役員を確認する | 本当に管理者不在なのかを整理する |
| 書類確認 | 管理規約、総会議事録、管理委託契約書を確認する | 選任手続きと管理会社の業務範囲を把握する |
| 財産と資料確認 | 通帳関係書類、印鑑、契約書、鍵、電子データの所在を確認する | 前任者だけが把握している情報を減らす |
| 緊急性確認 | 保険、工事、契約更新、総会予定などの期限を確認する | 内部改善を試す時間があるか判断する |
| 総会確認 | 区分所有者数、議決権、招集方法を確認する | 誰がどの方法で総会を招集するか整理する |
| 決議要件確認 | 普通決議か特別決議かを確認する | 必要な定足数と賛成割合を確定する |
| 原因確認 | 候補者が断る理由と役員業務量を確認する | 人数不足、業務負担、専門性、対立など原因を分ける |
| 内部改善 | 分担変更、契約見直し、役員資格、報酬を検討する | 内部選任を継続できる余地があるか判断する |
| 専門家支援 | 顧問、スポット相談、監事などを比較する | 管理者そのものを外部化せず解決できるか検討する |
| 外部管理者比較 | 費用、業務範囲、任期、監督方法、利益相反対策を確認する | 外部管理者方式が現在の問題に合うか判断する |
| 新体制移行 | 契約や代表者変更、資料の引継ぎを行う | 新しい体制が実際に動く状態か確認する |
| 運用確認 | 一定期間後に役員負担や監督状況を振り返る | 同じ問題が再発していないか確認する |
このチェックリストは、上から機械的に全部終わらせてから次へ進むためのものではありません。
緊急性が高ければ、総会準備と専門家相談を並行して行うこともあります。時間的余裕があるなら、役員負担の見直しを試してから外部管理者方式を比較することもできるでしょう。
順番よりも、現在何が止まりそうなのかを確認することが大切です。
マンションの管理者不在でよくある質問
- 管理者と管理人は同じですか
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同じではありません。
区分所有法上の管理者は、共用部分などの保存や集会決議の実行を担い、その職務について区分所有者を代理する立場です。一方、一般に管理人や管理員と呼ばれる人は、管理会社などとの契約に基づいて受付、清掃、点検立会いなどの現場業務を行います。
そのため、管理員が通常どおり勤務していても、区分所有法上の管理者が不在という状態はあり得ます。
- 理事長が決まらない場合はどうすればよいですか
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最初に自分たちの管理規約を確認します。
国土交通省の現行標準管理規約では、副理事長は理事長が欠けたときにその職務を行う規定となっていますが、実際のマンションで同じ規定になっているとは限りません。
管理者がいない場合には、原則として区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有する者が集会を招集する制度もあります。
ただし、この制度が存在するだけで後任が自動的に決まるわけではありません。
必要数の区分所有者が実際に行動しなければ、不在状態が続く可能性があります。また後任不足の原因が業務負担にあるなら、新しい人を選ぶだけでなく仕事の分担や支援体制まで見直した方がよいでしょう。
- マンション管理士は管理者になれますか
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マンション管理士などの外部専門家を管理者として選任する方式は検討できます。
ただし、すべてのマンション管理士が外部管理者業務を受託しているわけではありません。
顧問として助言を受ける場合、監事として監督を依頼する場合、管理者として業務執行まで任せる場合では役割が異なります。
相談する前に、自分たちがどこまで外部へ依頼したいのかを整理しておくとよいでしょう。
- 外部管理者方式と通常の管理委託は何が違いますか
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通常の管理委託では、管理組合側に管理者がおり、管理会社へ管理事務を委託します。
一方、外部管理者方式では区分所有者以外の者が区分所有法上の管理者になります。
特に管理会社自身が管理者となる方式が管理業者管理者方式です。
この場合には、管理者として行う事務と通常の管理会社として行う事務を区別し、それぞれの報酬、責任、利益相反対策、監督方法を確認する必要があります。
国土交通省は2025年12月12日に、この方式を想定したマンション標準管理者事務委託契約書などを整備しています。
- 管理者を外部へ任せると区分所有者は何もしなくてよいですか
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何もしなくてよいという意味ではありません。
外部管理者が日常的な業務執行を担ったとしても、重要な意思決定や管理者の監督まで不要になるわけではありません。
監事による確認、区分所有者への定期報告、利益相反取引の説明、管理組合財産の適切な管理、大規模修繕時のチェックなどを組み合わせる必要があります。
外部管理者方式は、マンション管理から離れる仕組みではなく、執行の担い手を変えながら管理組合としての判断と監督を残す仕組みと考えた方がよいでしょう。
まとめ
マンションの管理者が不在になったとき、最初にすることは将来の管理方式を決めることではありません。
まず管理規約を確認し、管理者の定め、副理事長などによる代行の可否、前任者の退任状況を整理します。そのうえで管理委託契約と直近の契約や支払いの期限を調べ、「今すぐ動く必要があること」と「時間をかけて見直せること」を分けます。
管理者がいない場合でも、区分所有法には一定数の区分所有者が集会を招集する手段が設けられています。
ただし、法律上の手段が存在することと、実際に管理者不在が解消されることは別です。誰かが動かなければ、不在状態が続く可能性があります。
また、2026年4月施行の改正区分所有法によって集会の多数決制度は変わりましたが、普通決議と特別決議では必要な条件が異なります。
「出席者多数決になったから簡単になった」と単純化せず、何を決める総会なのか、自分たちの管理規約ではどう定めているのかを確認する必要があります。
そのうえで、なぜ後任が決まらないのかを考えます。
理事長への仕事集中が原因なら業務分担を見直し、専門知識への不安が原因ならマンション管理士などへ相談する方法があります。内部で管理者を確保すること自体が難しくなっているのであれば、外部管理者方式も現実的な候補になります。
ただし、必ず内部改善から順番に試さなければならないわけではありません。
重要案件の期限が迫っている場合や、すでに理事会が機能していない場合には、専門家支援、臨時総会、外部管理者方式の比較を並行して進める必要があります。
この記事で中心となる考え方は、「内部管理を守ること」でも「外部管理者へ移行すること」でもありません。
現在の問題と緊急性に合った方法を選び、誰が担当しても管理を続けられる状態を作ることです。
管理者不在は不安を生む出来事です。しかし、長年一人に集まっていた負担や、現在の所有者構成に合わなくなった制度を見直す機会にもなります。
まずは管理規約と直近の総会議事録を手元に置き、現在誰が何をできるのかを確認するところから始めてください。