マンション管理士

マンション管理士による総会運営支援と改正区分所有法施行後の実務

総会が近づくにつれて、理事長や役員の手元には決算書、予算案、工事資料、議案書、委任状などが増えていきます。例年と同じ内容であれば何とか進められそうでも、大規模修繕や管理規約の改正が重なると、「去年と同じやり方で本当に大丈夫なのだろうか」と迷い始めることもあるでしょう。

その迷いは、法律が難しいからだけではありません。総会で決めたことは、管理費や修繕積立金、工事期間中の暮らし、建物の将来といった区分所有者の日常へつながります。理事会としても、「必要な票数さえ数えればよい」と簡単に割り切れるものではないのです。

しかも総会では、法令や管理規約に沿って手続を進めることと、区分所有者が議案の背景を理解して判断できるよう説明することの両方が求められます。手続だけを優先すれば資料は形式的になりやすく、反対に分かりやすさだけを重視すれば、決議要件や議決権の取扱いといった大切な確認が薄くなる可能性があります。

マンション管理士による総会運営支援は、この二つをつなぎながら、管理組合自身が判断できる状態を整えるためのものです。総会当日だけを見るのではなく、年間計画、招集手続、議案作成、議決権確認、当日の進行、議事録、決議後の実行までを一つの管理サイクルとして捉えていきます。

2025年5月に成立・公布されたマンション関係法の改正には複数の法律が含まれています。その改正法のうち区分所有法の改正に関する部分は2026年4月1日に施行されています。マンション関係法全体では制度によって施行時期が異なるため、法改正全体を一つの日付で捉えるのではなく、確認しようとしている制度ごとに現在の適用関係を見ることが重要です。

また、以前から使用している管理規約に数字や手続が書かれているからといって、その記載だけで判断することも適切ではありません。法改正後は、現在の管理規約と現行法との整合性を確認し、必要に応じて規約の見直しを検討します。

国土交通省のマンション標準管理規約も法改正を踏まえて改正されていますが、標準管理規約は全国のマンションへ自動的に適用される規約ではありません。各管理組合が、自分たちの建物や所有者構成、これまでの運営を踏まえて管理規約を作成・見直しするときに参考とするひな型です。

TABLE OF CONTENTS
目次

改正区分所有法施行後に総会実務で確認したいポイント

法改正と聞くと、理事会では「結局、今年の総会では何が変わったのか」という疑問が先に浮かぶかもしれません。条文を一つずつ読み始める前に、総会運営へ直接関係する変更点を押さえておけば、その後の準備でどこを確認すべきなのかが見えやすくなります。

招集通知は1週間の法定期間と経過措置を確認する

改正後の区分所有法でも、集会の招集通知を会日の少なくとも1週間前に発するという法定期間そのものは維持されています。今回の改正では、会議の目的となる事項に加えて議案の要領を示すことが明記されるとともに、従来は規約で通知期間を「伸縮」できた規定が「伸長」へ変更されました。したがって、法定の1週間を規約によって短縮することはできず、より長い期間を定める方向での調整となります。

ここは、「法改正によって1週間という数字自体が変わった」と理解しないことが大切です。変わったのは、議案の要領を通知内容として示すことや、法定期間を規約で短くすることができなくなった点です。

もっとも、実際の総会でいつ招集通知を発すればよいのかを判断するときは、法定の1週間だけを見ればよいわけではありません。各マンションの管理規約で2週間前など、より長い通知期間を定めている場合には、その規約も確認します。

さらに、改正前後にまたがる手続では経過措置にも注意が必要です。国土交通省は、改正法施行日前に招集手続を開始した総会については従前の例による一方、2026年4月1日以降に招集手続を開始する場合には改正後の手続を前提として整理しています。判断の基準を単純な総会開催日だけで考えないことが重要です。

理事会にとっては何か月も話し合ってきた案件でも、区分所有者にとっては招集通知を受け取ったときが最初の説明になる場合があります。この情報量の差を忘れると、理事会では十分に説明したつもりでも、区分所有者には突然結論を求められたように感じられるかもしれません。

だからこそ招集通知は、期限までに発送するだけの書類ではありません。法令と管理規約に沿った期間を確保しながら、区分所有者が「何について判断するのか」を理解する入口として整える必要があります。

普通決議は区分所有法と管理規約を分けて確認する

普通決議については、区分所有法上の原則と、実際に適用する管理規約上のルールを混ぜないことが重要です。

現行の区分所有法39条1項では、法律または規約に別段の定めがない場合、集会の議事は出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決することとされています。また39条2項では、書面または代理人によって議決権を行使した区分所有者について、その人数を出席した区分所有者数へ、その議決権数を出席した区分所有者の議決権数へ、それぞれ算入することが明記されています。

一方、マンション標準管理規約の規定例では、通常の総会について定足数を定めたうえで、普通決議を出席組合員の議決権の過半数で決する構造が採用されています。これはあくまで標準管理規約というモデル上のルールであり、それぞれのマンションでは自分たちの管理規約を確認する必要があります。

つまり、「法律にはこう書いてあるから、そのまま数えればよい」とも、「標準管理規約ではこうだから自分たちも同じだ」とも言えません。

まず法定ルールを確認し、自分たちの管理規約に別段の定めがあるかを確認します。そのうえで、本人出席、書面、代理人などをどのように集計するのかを総会前に整理しておくことが必要です。

総会当日になって「人数も数えるのか」「議決権だけで判定するのか」と迷い始めれば、議長も集計担当者も落ち着かなくなります。数字を数える前に、どのルールで数字を数えるのかを明らかにしておくことが重要です。

規約改正は出席要件と決議要件を分ける

管理規約の設定、変更、廃止では、「4分の3」という数字だけを覚えていると、その前提となる出席要件を見落としやすくなります。

改正後の区分所有法31条では、規約の設定・変更・廃止について、原則として、議決権を有する区分所有者の過半数の者であって、議決権の過半数を有する者が出席し、そのうえで出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上によって決する構造となっています。出席割合については、法定割合を上回る割合を規約で定める余地もあります。

ここでは、まず必要な区分所有者と議決権が出席しているのかを確認し、その後に賛成数が決議要件を満たしたかを確認します。

もっとも、この考え方をすべての重要議案へ同じように当てはめることはできません。建替え、建物更新、建物敷地売却、取壊しなどには、それぞれ異なる決議要件が定められています。

「重要そうな議案だから4分の3」と感覚で判断するのではなく、何を決めようとしているのかを先に確認することが大切です。

共用部分変更は対象となる変更類型を確認する

共用部分の変更についても、工事名や金額だけで決議要件を決めることはできません。

区分所有法17条1項が対象としているのは、共用部分の変更のうち、形状または効用の著しい変更を伴わないものを除いた変更です。この17条1項の対象となる共用部分変更については、原則として一定の出席要件を満たしたうえで、出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上によって決します。

また、17条1項が適用される共用部分変更については、出席要件を法定割合より高く規約で定めることができるほか、決議割合についても、法定の4分の3を下回る割合であって2分の1を超える割合を規約で定めることが条文上認められています。これは、共用部分に関するすべての工事や管理行為について自由に決議割合を変更できるという意味ではありません。まず17条1項の対象となる変更なのかを判断したうえで、規約による調整の有無を確認します。

さらに、共用部分の設置・保存の瑕疵によって他人の権利や法律上保護される利益が侵害される、またはそのおそれがある場合に、その瑕疵を除去するために必要な共用部分変更や、一定のバリアフリー化に必要となる変更については、17条5項により「4分の3」を「3分の2」とする特例があります。

一方、形状または効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については、17条1項の特別多数決議とは異なる取扱いになります。標準管理規約コメントでも、具体的な工事内容によって普通決議となるものと特別多数決議となるものが区別されています。

だからこそ、「修繕工事だから普通決議」「大規模工事だから特別多数決議」「特別多数決議なら必ず4分の3」という覚え方では足りません。

実際に何を変更するのか、その工事が建物の形状や効用へどの程度影響するのか、区分所有法上どの規定が適用されるのか、さらに自分たちの管理規約にどのような定めがあるのかを順番に確認します。

理事会に必要なのは数字を暗記することより、「なぜ今回はこの決議要件になるのか」を説明できる状態をつくることです。

所在等不明区分所有者の決議除外制度を区別する

長期間連絡が取れない区分所有者がいるマンションでは、「この人の意思を確認できないまま、いつまで重要な判断を先送りすればよいのだろう」と感じることがあります。郵便を送っても戻り、連絡先も分からない状態が何年も続けば、理事会が行き詰まりを覚えるのも自然でしょう。

改正区分所有法には所有者不明問題へ対応する複数の制度がありますが、総会運営との関係でここで扱うのは、所在等不明区分所有者を集会決議から除外するための制度です。

区分所有法38条の2では、区分所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない場合に、一定の要件のもと、一般区分所有者または管理者の請求を受けた裁判所が、所在等不明区分所有者を除いた区分所有者による集会決議を可能とする裁判をする仕組みが設けられています。

これは、管理組合が内部判断だけで「今年からこの人を母数へ入れない」と決められる制度ではありません。また、所有者不明専有部分管理制度などとは目的や対象が異なるため、どの制度を検討しているのかを区別する必要があります。

マンション管理士が関与する場合には、契約や依頼の範囲に応じて、届出住所、郵便物の返送状況、これまでに行った連絡や調査などを整理します。裁判所への申立てや具体的な法的判断が必要になる場合には、弁護士など適切な専門家との連携を検討します。

何度連絡しても返事がないと、「もうできることはない」と感じてしまうかもしれません。それでも、何を確認済みで、何がまだ分からないのかを整理することで、止まっていた問題を次の段階へ進めやすくなります。

共有住戸では議決権行使者を確認する

相続などによって、一つの専有部分が複数人の共有になる場合があります。

改正区分所有法40条では、共有者間で議決権行使者一人を定める仕組みについて、各共有者の持分の価格に従い、その過半数によって定めることが明記されています。

実務では、この法律上の仕組みを確認したうえで、自分たちの管理規約で議決権行使者の届出などが定められていないかを確認します。

「前年と同じ住戸だから大丈夫だろう」と考えていても、その間に相続や持分変更が起きているかもしれません。総会当日の受付で初めて共有関係へ気づくより、区分所有者情報と議決権一覧を早めに確認しておくほうが、所有者側にとっても受付側にとっても負担は小さくなります。

こうした改正点を見ると、法改正への対応とは、新しい数字を覚えることだけではないと分かります。現在使っている管理規約、招集通知、議案書、議決権一覧、集計方法を見直し、現在の法令と実際の総会運営がつながっているかを確かめることが大切です。

総会前の設計

総会当日に問題が表面化すると、その場で修正できる範囲は限られます。だからこそ総会運営では、当日の進行技術より前に、いつ何を確認し、どの段階で区分所有者へ説明するのかを設計しておくことが重要です。

通常総会年間計画で準備を前倒しする

総会準備が苦しくなる管理組合では、開催日だけが決まり、その後から必要な仕事を詰め込んでいることがあります。会計監査を待ちながら予算案を作り、同時に大規模修繕の見積りを確認し、管理規約改正案まで仕上げようとすれば、内容を考えることより「発送日に間に合わせること」が優先されてしまいます。

前年の総会を振り返ったとき、直前の数週間だけ役員の負担が極端に大きかったのであれば、誰かの努力が足りなかったというより、準備工程そのものに改善の余地があったのかもしれません。

マンション管理士による通常総会年間計画の支援では、契約や依頼の範囲に応じて、総会予定日から逆算し、会計監査、理事会での議案検討、議案原案作成、説明資料、招集通知、議決権関係書類の回収、当日の進行、議事録までを一つの時間軸として整理します。

特に大規模修繕や管理規約改正では、区分所有者にも考える時間が必要です。総会直前に初めて知らせるのではなく、必要に応じて早い段階から情報を共有すれば、「すでに決められた案について突然賛否を求められた」という感覚も弱まりやすくなります。

最初から精密な年間工程表を作る必要はありません。総会の数か月前に議案候補を確認する時期を決め、前年より少し早く理事会で話し始めるだけでも、準備の流れは変わっていきます。

臨時総会開催支援で焦りを工程へ変える

設備の重大な不具合や予定外の工事、管理会社変更などでは、通常総会まで待つことが難しい場合があります。突然の問題に直面すれば、理事会に「とにかく早く総会を開かなければ」という気持ちが生まれるでしょう。

とはいえ、急ぐ場面ほど、まず総会で決める必要がある事項なのかを確認します。理事会の権限で対応できるのか、総会決議が必要なのかによって、その後の工程も変わるからです。

例えば管理会社を変更する場合、新しい会社を選べば終わるわけではありません。現在の契約がいつ、どのような条件で終了するのかを確認し、新しい契約の開始時期や引継ぎまでつなげなければ、総会では可決されたのに実務が動かないという状況も起こり得ます。

また、理事会が急ぐ事情を区分所有者が知らなければ、「なぜ今なのか」「すでに結論が決められているのではないか」という不信につながる可能性があります。

マンション管理士による臨時総会開催支援では、契約や依頼の範囲に応じて、開催の必要性、必要な手続、議案化する事項、決議後の工程などを整理します。焦りそのものを消せなくても、何をどの順番で確認すればよいかが分かれば、理事会は判断しやすくなります。

総会招集手続で現在の適用関係を確認する

議案の内容を十分に検討していても、招集手続に疑問が残れば、決議そのものへの信頼にも影響します。

改正法の施行前後にまたがるケースでは、経過措置を確認する必要があります。国土交通省の案内では、施行日前に招集手続を開始した総会は従前の例による一方、2026年4月1日以降に招集手続を開始する総会については、改正後の手続に基づいて進めるものとして整理されています。

さらに管理規約も確認します。ただし、規約に書かれた数字だけを見るのではなく、現在の法令との整合性まで点検します。

理事会では「昨年と同じ書類だから大丈夫だろう」という安心感が生まれやすいものです。しかし、所有者が変わっていることもあれば、法改正によって前年とは確認すべき前提が変わっていることもあります。

マンション管理士による招集手続の支援では、契約や依頼の範囲に応じて、現在適用される法令と管理規約を照らし合わせ、招集権者、通知時期、通知事項、通知先などを整理します。

総会招集通知案で判断材料を届ける

理事会にとっては何か月も話し合ってきた議案でも、区分所有者にとっては招集通知を受け取ったときが最初の接点になる場合があります。

この違いを忘れると、理事会では当然になっている事情が資料から抜け落ちます。その結果、区分所有者には突然費用負担を求められたり、突然工事を決めるよう迫られたりしているように見えることがあります。

総会招集通知案の作成支援では、契約や依頼の範囲に応じて、開催日時などの基本情報だけでなく議案書とのつながりも確認します。

修繕工事であれば、現在の建物の状態から工事を検討する理由を示し、そのうえで実施内容、費用、資金の出所、生活への影響、今回判断する理由までが自然につながるよう整理します。

改正後の区分所有法では、招集通知に議案の要領を示すことも明記されています。通知を「総会があることを知らせる書類」で終わらせず、区分所有者が判断を始めるための資料として考えることが重要です。

総会議案書作成で結論までの理由を残す

議案書で問題になりやすいのは、理事会の結論は書かれているのに、なぜその結論へ至ったのかが分からないことです。

大規模修繕であれば、工事名と金額だけでは区分所有者は判断しにくいでしょう。どこが劣化しているのか、先送りした場合にどのような影響が考えられるのか、工事範囲をなぜその内容にしたのか、資金をどう準備するのかという背景が必要です。

理事会では半年かけて話し合っていたとしても、その過程を知らない区分所有者が目にするのは数ページの議案書です。「これだけ検討したのだから分かってもらえるはず」という理事会の感覚と、「初めて聞いた」という区分所有者の感覚には大きな差があります。

マンション管理士による議案書作成支援では、契約や依頼の範囲に応じて、議案の目的、提案理由、内容、費用、実施時期、管理上の影響などを整理し、実際に決議しようとする内容と説明が食い違わないよう確認します。

管理規約改正で標準管理規約を参考にする場合も、標準例をそのまま移すのではなく、自分たちのマンションの所有者構成や運営状況に合うかを考える必要があります。「標準だから採用する」ではなく、「なぜ自分たちのマンションにこの規定が必要なのか」を説明できる状態にすることが大切です。

決議成立の確認

総会では、一票の数え方の前提を誤れば結論へ影響する可能性があります。ここでは「何票集まったか」を数える前に、「この議案をどの法令と管理規約によって決めるのか」を明らかにします。

普通決議と特別多数決議を議案ごとに判定する

決議区分は、総会当日になってから考えるものではありません。議案書を作成する段階で、現在適用される区分所有法と管理規約の双方から確認します。

普通決議については、区分所有法39条の法定原則を確認したうえで、自分たちの管理規約に別段の定めがあるかを確認します。標準管理規約の規定例では通常の議事を出席組合員の議決権の過半数によって決する形になっているため、区分所有法の法定原則と標準管理規約を同じものとして扱わないことが重要です。

規約変更や共用部分変更では、それぞれ該当条文が定める出席要件と決議要件を確認します。また、建替え、建物更新、建物敷地売却、取壊しなどについても別の規定が設けられています。

したがって、「大きな工事だから特別多数決議」と感覚だけで分類するのではなく、具体的な変更内容、建物や権利への影響、法令上の類型、有効な管理規約の定めを確認します。

この段階で根拠を整理しておけば、総会当日に「結局、何票あれば可決なのか」と資料を探し直す混乱を防ぎやすくなるでしょう。

議決権数は最新の所有関係から確認する

議決権は必ずしも一住戸につき一票とは限らないため、まず各マンションの管理規約を確認します。そのうえで、区分所有者名簿、所有者変更、共有関係などを照合し、総議決権数を整理します。

「戸数は昨年と同じだから議決権も変わらないだろう」と感じるかもしれません。しかし、売買や相続によって所有関係が変化している場合があります。

共有住戸についても、共有者間で議決権行使者を定め、自分たちの管理規約に必要な届出手続があればそれを確認します。

総会当日の受付で初めて共有関係へ気づくのではなく、準備の早い段階で整理しておけば、その後の出席要件や採決結果の確認も安定します。

定足数と決議要件を議案ごとに確認する

定足数や出席要件と決議要件は、似た数字が登場するため混同しやすいところです。

定足数や出席要件は、その議案を決議するための前提となる出席状況を確認するものです。一方、決議要件は、その前提を満たしたうえで議案を成立させるために必要となる賛成条件です。

定足数や出席要件 決議要件
その議案を決議するための前提となる出席状況を確認するものです。 その前提を満たしたうえで議案を成立させるために必要となる賛成条件です。

ただし、すべての議案について同じ定足数と決議要件を使うわけではありません。

標準管理規約のコメントでも、通常の総会成立に関する定足数と、特別多数決議を行う場合に追加して確認する組合員数の要件が整理されています。また、普通決議については出席組合員の議決権の過半数で決する規定例が示されています。

本人出席、書面、代理人などが混在すると集計はさらに複雑になります。総会当日に集計ルールを考え始めるのではなく、議案ごとに適用条文と管理規約を確認し、どの数字へ何を反映するのかを事前に整理しておくことが重要です。

所在等不明区分所有者は調査経過から整理する

長期間連絡が取れない区分所有者について、「毎年郵便が戻ってくるから今年も仕方がない」と処理を先送りしているマンションもあるかもしれません。

改正区分所有法では、一定の要件を満たす場合に、所在等不明区分所有者を集会決議から除外するための裁判所関与の制度が設けられています。

ただし、管理組合の内部判断だけで決議の母数から除外できるわけではありません。

マンション管理士が関与する場合には、契約や依頼の範囲に応じて、届出住所、郵便物の返送状況、これまでの連絡記録などを整理します。裁判所への申立てや具体的な法律判断が必要になる場合には、弁護士など適切な専門家との連携を検討します。

大切なのは、「分からない所有者がいる」という状態で止まるのではなく、何を確認済みで、何がまだ分からないのかを見える状態にすることです。

委任状は白紙委任状を生じにくくする

総会が近づくと、「委任状をもっと集めなければ」という話が理事会で出ることがあります。定足数を心配すれば自然な反応ですが、委任状を単なる人数確保のための書類として扱うと、本来の意思表示が見えにくくなります。

委任状は、本人が代理人へ議決権の行使を委ねるためのものです。一方、議決権行使書では本人自身が各議案について賛否を判断します。標準管理規約コメントでも、議決権行使書と委任状では、誰が賛否を判断するのかという点で性格が異なることが説明されています。

委任状 議決権行使書
本人が代理人へ議決権の行使を委ねるためのものです。 本人自身が各議案について賛否を判断します。

実務上とりわけ注意したいのが、誰を代理人とするのかが記載されていない、いわゆる白紙委任状です。

標準管理規約コメントでは、白紙委任状は効力や議決権行使上の取扱いを巡るトラブルの原因になり得るため、提出された後にどう処理するかだけを考えるのではなく、そもそも白紙委任状が生じにくい案内をしておくことが示されています。具体的には、委任状を利用するときは本人が代理人を主体的に決めることや、適当な代理人がいない場合には代理人欄を空欄にせず、議決権行使書によって本人自身が各議案への賛否を示す方法を案内することが考えられています。

総会の直前になって白紙の委任状を前にし、「これは誰への委任として扱えばよいのだろう」と理事会が悩むより、書類を配布する段階で選択肢を分かりやすく伝えるほうが負担は小さくなります。

例えば委任状の案内では、代理人欄を何のために記入するのかを説明し、代理を頼める人がいなければ議決権行使書という方法があることを知らせます。「どちらでもよいのでとにかく提出してください」という案内よりも、区分所有者自身が意思表示の方法を選びやすくなるでしょう。

もちろん、実際に提出された書類の取扱いについては、自分たちの管理規約や事前に示した運用を確認する必要があります。しかし、トラブルを総会当日の処理だけで解決しようとするのではなく、書類を作成・配布する段階から予防することが重要です。

議決権行使書は本人の意思を受け取る仕組みとして整える

仕事や介護、遠方居住などの事情から総会へ出席できなくても、自分で議案を判断したい区分所有者はいます。

議決権行使書は、そのような本人の意思を受け取る方法です。そのため、書式だけが整っていても、判断材料となる議案書が分かりにくければ十分には機能しません。

マンション管理士による運用支援では、契約や依頼の範囲に応じて、議案との対応、提出方法、提出期限などを確認します。同じ区分所有者から異なる意思表示が提出された場合や、記載が明確ではない場合についても、総会当日に初めて処理方法を考えるのではなく、事前に取扱いを整理しておくことが重要です。

回収枚数だけを追うのではなく、一票一票について、なぜそのように扱ったのかを後から説明できる状態をつくる必要があります。

代理人制度は受付前に管理規約と照合する

区分所有者からすれば、「自分が出られないから家族に代わりに行ってもらう」という考え方は自然です。しかし、代理人として認められる人の範囲について管理規約で条件を設けている場合があります。

標準管理規約コメントでも、代理人による議決権行使について、組合員の意思が適切に総会へ反映されるよう代理人の範囲を考えることが示されています。

総会当日の受付で初めて資格上の問題が分かれば、受付担当者だけでなく、頼まれて会場へ来た人も困ります。

そのため、契約や依頼の範囲に応じて、委任状を受け取った段階から代理人に関する記載や必要な条件を確認し、不明点があれば本人へ照会できるようにします。

一見すると地味な確認ですが、総会の入口で議決権の取扱いを巡って混乱することを防ぐ意味があります。

参加と説明の環境を整える

総会の成立条件を満たしていても、区分所有者が内容を理解できなければ、採決だけが進む総会になりかねません。この段階では、参加しやすさと判断しやすさの両方を整えます。

オンライン総会は管理規約と運用方式を確認する

遠方に住む区分所有者や、会場まで移動することが難しい人にとって、WEB会議システム等の利用は総会へ関わる選択肢を広げます。

一方で、「オンラインでつながっているから全員同じ出席者として扱えばよい」と単純に考えることはできません。

国土交通省の標準管理規約コメントでは、議決権を行使できる組合員がWEB会議システム等を用いて参加する場合は定足数上の出席組合員に含まれると考えられる一方、議決権を行使できず傍聴するだけの場合は出席組合員に含まれないという整理が示されています。これは標準管理規約上の考え方であり、全国のマンションへ一律にそのまま適用されるルールではありません。

議決権を行使できる組合員がWEB会議システム等を用いて参加する場合 議決権を行使できず傍聴するだけの場合
定足数上の出席組合員に含まれると考えられる 出席組合員に含まれない

したがって、実際のオンライン参加を総会上どのように位置付けるのか、どの方法で議決権を行使するのか、質問や発言をどう扱うのかについては、各マンションの管理規約と採用する運用方式に応じて確認します。

「オンラインなら参加しやすくなる」という期待がある一方、参加者には「途中で接続が切れたらどうなるのか」「自分の票は適切に扱われるのか」という不安もあります。便利さだけを見て導入すると、参加方法を広げたはずなのに、新しい不信が生まれる場合もあります。

標準管理規約コメントでも、WEB会議システムを用いて出席する場合の議決権行使や、通信手段の不具合などへの留意が示されています。

最初から複雑な仕組みを目指す必要はありません。利用方法を事前に案内し、必要に応じて接続確認を行うなど、自分たちのマンションで無理なく運用できるところから始めます。

総会想定質問で説明不足を先に見つける

総会が近づくと、理事長は「どのような質問が出るのだろう」と考えるようになります。修繕積立金を見直す理由や工事会社を選んだ経緯など、答えにくそうなテーマほど、できれば触れられたくないという気持ちが生まれるかもしれません。

しかし、質問が出ること自体を総会の失敗と考える必要はありません。資料を読んでも理解できなかったことや、暮らしへの影響を確かめたいという気持ちが、質問として表れている可能性があるからです。

マンション管理士による想定質問・回答作成支援では、契約や依頼の範囲に応じて、費用、工事内容、選定理由、別の選択肢、生活への影響などから質問を想定し、理事会が説明しにくい部分を総会前に探します。

そこで答えにくい質問が見つかれば、当日に困る前に議案書や説明資料を補えます。想定質問は反対意見へ対抗するための反論集ではなく、説明の弱い部分を見つけるための点検資料として使うほうが、総会の質を高めやすいでしょう。

区分所有者向け説明資料で専門情報を読み解きやすくする

長期修繕計画には多くの数字が並び、管理規約改正では新旧条文が続きます。作成に関わった人には見慣れた資料でも、初めて読む区分所有者には、どこから見ればよいのか分からない場合があります。

そこで原資料の情報を不用意に削るのではなく、理解を補助する資料を用意します。

修繕工事であれば対象箇所を図などで示し、資金計画では現在の積立状況と将来支出の関係を分かりやすく整理します。規約改正なら、条文の変更点だけではなく、その変更によって日常の管理や総会手続がどのように変わるのかを説明します。

説明資料の目的は、賛成票を増やすことではありません。内容を理解したうえで反対することも、管理組合の意思決定の一部です。

区分所有者自身が「自分は何について判断しているのか」を理解できる状態をつくることに意味があります。

総会当日の運営

何か月準備しても、総会当日には予定していなかった質問や意見が出ます。だからこそ必要なのは、台本から一歩も外れないことではなく、決められた手続を守りながら必要な議論を成立させることです。

総会議事進行支援で議長の負担を整理する

総会開始前の理事長が、「質問に答えられなかったらどうしよう」と緊張することは珍しくありません。年に一度程度しか経験しない議長役で、法令や管理規約まで意識しながら進行するのですから、負担が大きくなるのは自然です。

マンション管理士が総会へ関与する場合には、契約内容や管理組合から依頼された範囲に応じて、議事進行について助言・支援することが考えられます。

総会前には、開会、成立確認、議案説明、質疑、採決、結果確認までを整理し、どの場面で何を確認するのかを共有します。

開会、成立確認、議案説明、質疑、採決、結果確認 開会 成立確認 議案説明 質疑 採決 結果確認
総会前には、開会、成立確認、議案説明、質疑、採決、結果確認までを整理し、どの場面で何を確認するのかを共有します。

ただし、良い進行とは予定時間より早く総会を終えることではありません。必要な質問には説明の時間を確保し、同じ論点が繰り返された場合には、それまでの説明を整理しながら議事を進めます。

反対意見を止めるのではなく、賛否にかかわらず必要な話をできる状態を保つことが、議事進行支援の役割です。

総会当日の専門家説明で判断材料を補う

規約改正、大規模修繕、長期修繕計画などには、理事長だけで説明するには専門的な内容が含まれる場合があります。

「理事長なのだから全部答えなければならない」と考えると、分からないことを認めにくくなります。しかし、役員が法律、建築、会計のすべてについて専門家になる必要はありません。

マンション管理士が総会へ関与する場合には、契約内容や依頼範囲に応じて、管理規約、管理組合運営、総会手続などについて説明や助言を行うことが考えられます。

専門家の役割は、「専門家が言っているから賛成すべきだ」と結論を押し付けることではありません。制度や事実関係を整理し、区分所有者が判断するときに不足している情報を補います。

理事会と専門家の役割が事前に整理されていれば、理事長も無理に知ったふりをする必要がなくなり、区分所有者も専門的な疑問を確認しやすくなるでしょう。

総会後の実行

閉会すると、数か月準備してきた役員には大きな安堵が訪れます。しかし、総会で決めたことがマンションの現実を変えるのは、その後の実行があってこそです。

総会議事録で意思決定の経過を残す

総会議事録は、録音内容を最初から最後まで文字にするためだけのものではありません。一方で、決議結果だけを極端に短く記載すれば十分とも限りません。

後から読んだ人が、何を審議し、どのような経過を経て、どのような結果になったのかを理解できる状態にしておくことが重要です。

マンション管理士による議事録作成・レビュー支援では、契約や依頼の範囲に応じて、議案書と決議内容が一致しているか、採決結果と記載内容に食い違いがないかなどを確認します。

数年後には役員も区分所有者も変わります。そのとき、「なぜこの規約になったのか」「なぜこの工事を実施したのか」を議事録からたどることができれば、議事録は単なる保存書類ではなく、管理組合の記憶として役立ちます。

総会決議後の実施事項を担当者と期限へ落とし込む

工事を承認しただけでは工事は始まらず、修繕積立金の改定を決めただけでは徴収額も変わりません。総会決議を現実の管理へ移すためには、閉会後の作業が必要です。

ところが総会を終えた直後は、「ひとまず終わった」という安心感が強くなります。その結果、「管理会社が進めると思っていた」「次回の理事会で誰か確認するつもりだった」と担当が曖昧になることがあります。

マンション管理士による決議後の支援では、契約や依頼の範囲に応じて、可決された事項ごとに次に必要となる作業、担当者、実施時期などを整理します。

大きな進捗管理システムから始める必要はありません。決議事項を一覧にして次回理事会で確認するだけでも、総会で決めたことが宙に浮く状態を防ぎやすくなります。

総会を振り返り次年度の一つの改善へつなげる

総会後に振り返るのは、議案が可決したか否決したかだけではありません。

同じ質問が繰り返されたのであれば、「区分所有者が理解してくれなかった」と考える前に、説明資料のどこが伝わりにくかったのかを考えます。受付や集計に時間がかかったのであれば、担当者個人ではなく、事前の資料や役割分担に改善できる部分がなかったかを見るほうが次へつながります。

オンライン参加で接続上の問題があれば、次年度は事前確認を取り入れられます。議長が進行に迷ったのであれば、議事進行資料の構成や確認方法を変えることができるでしょう。

すべてを一度に改善する必要はありません。一つの総会で一つ課題を見つけ、次年度に一つ変えてみます。その結果、翌年には同じ場面で困らなくなっていたなら、小さくても確かな改善です。

誰が失敗したのかではなく、なぜそこで困ったのかを考える。その姿勢が積み重なると、総会は毎年繰り返すだけの行事ではなく、管理組合自身が運営を学ぶ機会へ変わっていきます。

マンション管理士による総会運営支援を一つの管理サイクルとして考える

マンション管理士による総会運営支援は、総会当日に専門家が同席することだけを意味しません。

総会前には通常総会の年間計画を整理し、必要に応じて臨時総会の開催を検討します。その後、招集手続を確認し、招集通知案と総会議案書を整え、議案ごとに普通決議、規約改正、共用部分変更などに必要となる要件を確認します。

このとき大切なのは、法律上の原則、管理規約による別段の定め、議案ごとに異なる決議要件を一つに混ぜないことです。

普通決議では区分所有法39条と管理規約を確認し、規約変更では31条、共用部分変更では17条というように、まず議案の法的な位置付けを確認します。そのうえで出席要件、定足数、決議要件、管理規約による調整の有無を整理します。

さらに議決権数を確認し、共有住戸では議決権行使者を整理します。所在等不明区分所有者への対応、委任状、議決権行使書、代理人制度についても総会前に確認します。

委任状についても、提出された白紙委任状を後からどう扱うかという問題だけに目を向けるのではなく、本人が代理人を明確に選べる書式や案内を用意し、適当な代理人がいない場合には議決権行使書を利用できることを知らせるなど、提出前の段階からトラブルを防ぐ視点が重要です。

オンライン参加を取り入れる場合には、標準管理規約を参考にしながら、実際に採用する利用形態と自分たちの管理規約に応じて運用方法を設計します。

総会が近づけば、想定質問と回答、区分所有者向け説明資料を準備します。当日は契約や依頼の範囲に応じて議事進行や専門事項の説明を支援し、閉会後には議事録や決議後の実施事項へつなげます。

この流れを見ると、総会は一日だけの行事ではないことが分かります。数か月前から始まる準備、総会当日の意思決定、その後の実行と振り返りまでが一続きになって、初めて総会運営が完結します。

年間計画、招集手続、議案作成、議決権確認、当日の進行、議事録、決議後の実行 年間計画 招集手続 議案作成 議決権確認 当日の進行 議事録 決議後の実行
総会当日だけを見るのではなく、年間計画、招集手続、議案作成、議決権確認、当日の進行、議事録、決議後の実行までを一つの管理サイクルとして捉えていきます。

最初は「法律や手続を間違えないだろうか」ということで頭がいっぱいだった理事会でも、準備の仕組みが整ってくると、「なぜこの議案を提案するのか」「どうすれば区分所有者へ背景まで伝わるのか」を考える時間が生まれます。

それは、単に役員の事務負担が軽くなるという話だけではありません。手続を守ることで精一杯だった総会から、自分たちのマンションの将来について考え、必要な情報を共有しながら判断する総会へ変わっていくということです。

マンション管理士による総会運営支援の意味は、管理組合に代わって答えを出すことではなく、契約や依頼の範囲で、そのような意思決定ができる状態を支えるところにあるのではないでしょうか。

まとめ

2025年に成立・公布されたマンション関係法の改正には複数の法律が含まれていますが、改正法のうち区分所有法の改正に関する部分は2026年4月1日に施行されています。マンション関係法全体には異なる施行時期の制度もあるため、対象となる制度ごとに適用関係を確認することが大切です。

招集通知については、法定の「会日の少なくとも1週間前」という期間自体が変更されたわけではありません。改正によって議案の要領を示すことが明記され、法定期間を規約によって短縮する仕組みがなくなり、より長く設定する方向での調整となりました。実際の手続では経過措置と各マンションの管理規約も確認します。

総会の決議についても、一つの数字を覚えれば対応できるものではありません。普通決議、規約変更、共用部分変更、建替え等では適用される条文や管理規約上のルールが異なるため、議案の内容から必要な要件を判定することが重要です。

委任状についても同じです。白紙委任状が提出された後に処理方法で悩むより、本人が代理人を明確に選ぶこと、適当な代理人がいないときには議決権行使書を利用できることを事前に知らせ、迷いの生じにくい書式と案内を用意するほうが実務的です。

しかし、法律の数字や書類の形式を正確に整えることだけで総会が良くなるわけでもありません。年間計画から招集、議案作成、議決権確認、参加方法、当日の説明、議事録、決議後の実行までを一つにつなげることで、初めて総会全体が安定します。

マンション管理士は、契約や依頼の範囲に応じて専門知識を用い、管理組合が自ら判断するために必要な情報や手続を整理する役割を担います。

そして、総会を最初から完璧にする必要もありません。今回の総会で見つかった課題を一つ次回までに改善し、その変化を確かめるという積み重ねが、役員だけが不安を抱える総会から、区分所有者が理由を理解しながら自分の意思を示せる総会へつながっていくでしょう。

参考資料

法務省「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律について」

衆議院「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」

国土交通省「マンション標準管理規約」

国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約 単棟型」

国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約を踏まえた管理規約の改正を行う場合の手続の留意点について」

人気記事

  • 本日
  • 週間
  • 月間

-マンション管理士