理事会や防災委員会で「マンションの防災マニュアルを作ってください」と言われたものの、何から手を付ければよいのか分からない。自治体の資料を開いてみても情報量が多く、自分たちのマンションでは何を確認し、誰が何を決めればよいのか見えてこない。
このような状態から防災マニュアル作成を始める管理組合は、決して珍しくありません。
防災という言葉には、人の生命や生活に関わる重さがあります。そのため、担当になった理事ほど「間違った内容を決めてはいけない」「必要なことを見落としたらどうしよう」と慎重になり、資料を集めるほど動けなくなることもあるでしょう。
しかし、マンション防災マニュアルは、専門的な知識を大量に並べた解説書を作ることが目的ではありません。
まず、自分たちの建物、設備、地域、居住者、管理体制について現在分かっている事実を確認します。そのうえで、災害時に迷いやすい行動について「自分たちのマンションではどうするのか」を平時のうちに整理することが中心です。
作成前には5つの項目を確認し、その後は7つのステップに沿って具体化していけば、何から始めればよいのかが見えやすくなります。
2025年10月17日に改正された国土交通省のマンション標準管理規約でも、管理組合等が平時から取り組む防災関係業務の例として、防災マニュアルの作成と周知、防災訓練、防災情報の収集と周知、防災用名簿、防災物資等の備蓄、防災活動を行う組織などが具体的に整理されました。
ただし、マンション標準管理規約そのものが、全国のマンションへ直接適用される法律ではありません。国土交通省が、各マンションで管理規約を作成または改正するときのひな型として示しているものです。
この記事では、マンション防災マニュアルを自分たちで作れる範囲と、管理会社やマンション管理士などへ相談した方がよい範囲を分けながら、具体的な作成方法を順番に解説します。
マンション防災マニュアルとは
マンション防災マニュアルとは、地震や風水害などが発生したときに、管理組合や居住者がどのように行動するのかを具体化した実務上の手引きです。
発災直後の身の安全確保だけではなく、災害対策本部をいつ立ち上げるのか、安否確認をどのように行うのか、停電や断水が発生した場合にどう対応するのか、在宅避難を続けるために何を準備しておくのかまで整理します。
ここで混同しやすいのが、消防計画やBCP、LCPとの違いでしょう。
「消防計画がすでにあるのだから、新しく防災マニュアルを作る必要はないのではないか」と考える理事がいても不思議ではありません。
実際には、それぞれ扱う目的や範囲が異なります。
なお、BCPやLCP、防災計画などの名称について、全国で統一された一つの使い分けがあるわけではありません。以下は制度上の正式な分類ではなく、この記事で役割の違いを理解しやすくするための便宜的な整理です。
消防計画と防災マニュアルとBCPやLCPの違い
| 区分 | 主な位置付け | 主な内容 | 主に想定する範囲 |
|---|---|---|---|
| 消防計画 | 消防法上の防火管理制度等に基づく計画 | 火災予防 初期消火 通報 避難 訓練など | 平時の防火管理から火災等の初動対応 |
| 防災マニュアル | 管理組合等が定める実務上の行動手順 | 地震 風水害 安否確認 設備確認 在宅避難 共助など | 災害発生直後から被災生活の初期段階 |
| BCPやLCP | 生活や組織の継続と復旧を考える際に用いられる計画 | 意思決定 組織運営 建物復旧 資金 生活継続など | 発災後の生活継続や中長期の復旧 |
消防法上の防火管理については、防火対象物の用途や収容人員など一定の要件を満たす場合に、防火管理者の選任や消防計画の作成などが必要になります。
一方、管理組合が作るマンション防災マニュアルでは、消防計画だけでは扱いにくい生活上の問題まで具体化します。
たとえば大きな地震が発生し、建物そのものは倒壊していないものの、エレベーターが停止し、管理員ともすぐに連絡が取れなくなった状況を想像してみましょう。
そのとき居住者が知りたいのは、制度上どの計画を参照すればよいのかという話ではありません。
トイレを流してよいのか、隣の住戸の安否を誰が確認するのか、防災倉庫は誰が開けられるのかといった、その場で必要になる判断でしょう。
防災マニュアルは災害時のすべてを固定する資料ではありません。迷いやすい場面を平時に洗い出し、最初に何を確認してどのように動くのかを共有するための資料です。
なぜマンションごとの防災マニュアルが必要なのか
東京都をはじめ、多くの自治体がマンション向けの防災ガイドブックやマニュアル作成用のひな形を公開しています。
こうした資料は、防災マニュアルをゼロから考える負担を大きく減らしてくれます。
それでも、自分たちのマンションに合わせた修正は欠かせません。
同じ集合住宅であっても、建物構造、設備仕様、立地条件、戸数、居住者構成が違えば、災害時に起こる問題も変わるからです。
在宅避難を続けられる条件が違う
建物と住戸内の安全を確保できる場合、マンションでは指定避難所へ移動せず、自宅で生活を続ける在宅避難が有力な選択肢になります。
しかし、建物が倒壊していないことと、その建物で普段どおり生活できることは同じではありません。
停電によって給水ポンプが停止すれば、水道本管に問題がなくても住戸まで水が届かなくなる可能性があります。エレベーターが止まれば、高層階に住む高齢者や歩行に不安がある人にとって、給水や買い物のために階段を往復することが大きな負担になるでしょう。
建物には戻れるのに、そこで暮らし続けることが難しい。
マンション防災では、このような状況まで想定しておく必要があります。
設備構成によって初動対応が変わる
マンションの給水方式には、直結方式、増圧方式、受水槽方式、高置水槽方式などがあります。
非常用発電設備も、存在するかどうかだけではなく、どの設備へ電気を供給する設計になっているのかがマンションごとに異なります。
「非常用発電機があるから停電しても大丈夫」と思っていたところ、実際には共用部の限られた設備だけが対象だったということも考えられます。
エレベーター、給水ポンプ、排水ポンプ、オートロック、機械式駐車場などについても、設備の名称を確認するだけでは足りません。
その設備が停止したとき、居住者の生活へ何が起こるのかまで考える必要があります。
居住者構成によって共助の方法が変わる
40戸程度のマンションと400戸を超えるマンションでは、同じ安否確認方法が機能するとは限りません。
小規模であれば数人の担当者が各階を確認できるかもしれませんが、大規模マンションでは、階別担当、安否確認カード、情報集約の方法などを組み合わせなければ、本部へ情報を集めるだけでも時間がかかります。
高齢者が多いマンションでは移動支援が課題となり、外国人居住者が多ければ情報表示や伝達方法についても検討が必要になる可能性があります。
防災マニュアルは建物設備の説明書ではありません。
そこで暮らしている人の状況を踏まえ、無理のない範囲でどのように助け合うのかを整理するものです。
防災マニュアルを作る前に確認する5項目
防災マニュアルの作成担当になると、最初に文章を書き始めようとしてしまいがちです。
しかし、原稿から始めると「停電すると給水設備はどうなるのか」「管理会社は休日でも現地へ来られるのか」といった疑問が次々に出て、途中で手が止まります。
文章力の問題ではありません。
判断に必要な情報がまだそろっていないことが原因です。
まず現在の状態を確認しましょう。
作成前チェックリスト
| 確認項目 | 主な確認内容 | 主な確認先 |
|---|---|---|
| 建物と設備 | 建築年 給排水方式 非常用電源 エレベーター オートロック 消防設備など | 竣工図 設備資料 点検報告書 管理会社 |
| 地域の災害リスク | 洪水 内水氾濫 高潮 津波 土砂災害 液状化など | 自治体ハザードマップ 防災情報 |
| 居住者情報 | 居住者名簿 緊急連絡先 要支援者情報 更新方法 | 管理組合保管資料 管理会社 |
| 法定計画と防災体制 | 防火管理者 消防計画 防災管理 防災組織 訓練実績 | 消防関係書類 過去の議事録 |
| 規約と契約 | 防災業務 緊急時権限 予算 管理会社の対応範囲 | 管理規約 使用細則 管理委託契約書 |
確認を進めると、資料が見つからなかったり、現在の運用を誰も把握していなかったりすることがあります。
たとえば、防災倉庫はあるのに鍵を誰が管理しているのか分からないと判明すれば、担当理事としては心細く感じるでしょう。
それでも、災害が起きる前に分かったことには意味があります。
分からない部分を推測で埋めず、「管理会社へ確認する」「保守会社へ聞く」「理事会で決める」と仕分けすれば、防災マニュアル作成そのものが管理体制を点検する機会になります。
マンション防災マニュアルの作り方7ステップ
必要な資料を確認したら、実際のマニュアル作成へ進みます。
最初から完成版を目指す必要はありません。
建物と人の状況を確認しながら原案を作り、実際の防災訓練で使えるかどうかを確かめて修正する方が、現実的なマニュアルへ近づきます。
ステップ1 建物と地域の災害リスクを確認する
最初に、自分たちのマンションでどのような災害が問題になるのかを確認します。
所在地自治体が公表している最新のハザードマップを確認し、洪水、内水氾濫、高潮、津波、土砂災害、液状化など、地域に応じたリスクを整理してください。
マンション敷地だけではなく、周辺道路や避難経路にも目を向けます。
建物自体に大きな浸水リスクがなくても、周辺道路が冠水すれば物資搬入や外出が難しくなる可能性があります。
次に、竣工図、設備仕様書、点検報告書などを確認し、給排水設備、エレベーター、非常用電源、オートロック、機械式駐車場、消防設備などを整理します。
ここで重要なのは、設備の一覧表を完成させることではありません。
停電するとどの設備が停止するのか、断水がどのような条件で起こるのか、設備停止が居住者の生活へどのような影響を与えるのかまで具体化します。
この作業をすると、自分たちの防災マニュアルで重点的に扱うべき項目が見えてきます。
ステップ2 管理組合内の作成体制を決める
防災マニュアル作成を理事長一人に任せると、途中で作業が進みにくくなることがあります。
設備、規約、個人情報、備蓄、訓練、管理会社との調整まで検討範囲が広く、通常の理事会業務と並行して一人で抱えるには負担が大きいためです。
責任感のある理事長ほど「自分が全部調べなければ」と考えがちですが、防災体制そのものが一人へ依存してしまえば、災害時にも同じ問題が起こります。
理事会内に防災担当を置く方法、防災委員会を設置する方法、防災プロジェクトチームを作る方法などを検討するとよいでしょう。
2025年改正版のマンション標準管理規約コメントでも、防災活動について、管理組合とは別に防災活動を行う組織を設け、その組織が主導して取り組む方法が考えられると整理されています。
一般居住者から協力者を募ることもできます。
建築、設備、医療、福祉、行政などの経験を持つ居住者がいれば、その知識を生かしてもらえる可能性があります。
ただし、専門職だからという理由だけで、災害時の責任まで集中させないよう注意が必要です。
その人が発災時に在宅しているとは限らないため、誰かが不在でも代わりの人が動ける仕組みとして設計します。
ステップ3 居住者情報と要支援者対応を検討する
防災について話し合うと、「一人暮らしの高齢者や支援が必要な人を把握しておいた方がよいのではないか」という意見が出ることがあります。
困っている人を助けたいという思いから出る考えでしょう。
一方で、善意を理由に必要以上の個人情報を集めれば、居住者が不安を感じる可能性があります。
まず決めるべきなのは、何のために情報を集めるのかです。
安否確認のためなのか、災害時に支援を希望する人を把握するためなのか、緊急連絡先として使用するのかによって、必要な情報は異なります。
情報を取得するのであれば、利用目的、保管場所、閲覧できる人、更新方法、利用できる場面、退去した人の情報の処理方法まで整理します。
管理会社への情報提供についても、単純に「個人情報だから渡せない」と考えるものではありません。
利用目的の達成に必要な範囲で個人データの取扱いを管理会社へ委託する場合には、個人情報保護法上、第三者提供に当たらないことがあります。一方で、委託元である管理組合には委託先を適切に監督することが求められるため、実際の運用では利用目的、委託範囲、管理規約、管理委託契約などを確認しておくことが重要です。
つまり、防災用名簿は多くの情報を集めるほど優れたものになるわけではありません。
居住者が「この方法なら安心して情報を預けられる」と思える管理方法まで設計することが、長く続く防災体制につながります。
ステップ4 発災時の役割分担を決める
次に、発災時の組織体制を具体化します。
災害対策本部を設置する場合には、本部長、情報担当、安否確認担当、設備確認担当、救護担当などの役割を整理する方法があります。
ただし、きれいな組織図を作ること自体が目的ではありません。
平日の昼間に地震が発生した場合、理事長も副理事長も勤務先にいてマンションへ戻れない可能性があります。
「理事長が災害対策本部長になる」とだけ定めてしまえば、本人が到着するまで誰も判断できない状況になりかねません。
そのため、代理順位や暫定的な本部の立ち上げ方法まで検討します。
在館している理事、防災委員、あらかじめ登録した協力者などで初動対応を開始し、後から正式な責任者へ引き継ぐ方法であれば、特定の一人が不在で全体が止まる可能性を減らせます。
大規模マンションでは棟別や階別に担当者を設ける方法も考えられます。
一方、小規模マンションで役割を細かく分けすぎれば、災害時に人数がそろわず、組織表そのものが機能しない可能性があります。
役職の数から考えるのではなく、実際に活動できる人数から体制を設計することが重要です。
ステップ5 安否確認と避難と在宅避難を決める
安否確認は、管理組合が具体化しやすい防災活動の一つです。
一軒ずつインターホンを鳴らして確認する方法では時間がかかるため、玄関扉などへ「無事」を示す安否確認カードやマグネットを掲示してもらう方法があります。
この方法なら、確認担当者は表示がない住戸を優先して確認できます。
ただし、カードを購入しただけでは安否確認体制は完成しません。
掲示方法を居住者が理解しているのか、長期不在住戸をどう扱うのか、各階を誰が確認するのか、集めた情報を本部でどのように管理するのかまで決める必要があります。
避難についても、一律に「大きな地震が起きたら避難所へ行く」と定めるだけでは実情に合わない場合があります。
建物と住戸内の安全を確保でき、生活を継続できる条件が整っている場合には、在宅避難を続けることが選択肢になります。
一方で、火災、建物の重大な損傷、浸水などの危険がある場合には、安全な場所への移動を検討しなければなりません。
地震後のトイレ利用を具体的に決める
マンション防災で特に注意したいのが排水です。
地震後も蛇口から水が出れば、「水が使えるのだからトイレも流してよいだろう」と感じやすくなります。
しかし、給水できることと安全に排水できることは別です。
排水管などが損傷している状態で上階から水を流せば、下階の住戸などで汚水が逆流したり漏れたりする可能性があります。
東京都のマンション防災に関する資料でも、排水設備の安全が確認できない段階でトイレを流すことによる二次被害への注意が示されています。
そのため、防災マニュアルでは地震後に携帯トイレ等を使用する考え方や、どのような情報を得て排水利用を再開するのかを整理しておくとよいでしょう。
ただし、「この場所を見れば必ず安全」「管理組合が一度確認すれば使用再開できる」という全国共通の判断方法があるわけではありません。
建物の排水方式、被害状況、地域の下水道状況、専門業者による確認方法によって異なるため、自分たちのマンションでは誰からどの情報を得て判断するのかを平時のうちに確認します。
ステップ6 備蓄と設備と連絡方法を整理する
防災倉庫に資機材が多く入っていれば、それだけで安心したくなるものです。
ところが実際に確認してみると、発電機はあるのに誰も使い方を知らなかったり、簡易トイレの数量を把握していなかったりすることがあります。
備蓄品については、品名と数量だけではなく、保管場所、使用方法、使用期限、点検時期、点検担当まで整理しましょう。
同時に、各家庭で準備する自助の備蓄と、管理組合が準備する共助の資機材を分けます。
飲料水、食料、携帯トイレなどの基本的な生活用品は各家庭でも準備してもらい、管理組合では救出工具、投光器、担架、情報掲示用品など、共用で利用する資機材を中心に整備する方法があります。
どこまでを管理組合が備蓄するのかについて、全国共通の正解があるわけではありません。
戸数、保管場所、予算、周辺の防災拠点などを踏まえて決めます。
連絡方法についても、スマートフォンやインターネットだけに依存しない方が安全でしょう。
通信障害を想定し、エントランス掲示板、紙の連絡票、トランシーバーなどを組み合わせておけば、一つの通信手段が使えなくても情報共有を続けられる可能性が高まります。
ステップ7 防災訓練で検証して修正する
マニュアルの初稿ができたら、実際の防災訓練で記載した手順を確かめます。
紙面上では問題なく見えていても、人が動くと想定していなかった課題が見つかります。
安否確認カードが遠くから確認しにくかったのであれば表示方法を変える必要がありますし、防災倉庫を開けるまでに時間がかかったのであれば、鍵の管理方法を見直す余地があります。
訓練で問題が見つかったからといって、マニュアル作成に失敗したわけではありません。
むしろ、災害本番より前に手順と現実のずれを発見できたということです。
最初の訓練ですべてを検証しようとすれば、理事会にも居住者にも大きな負担がかかります。
初回は安否確認と情報集約を中心に実施し、別の機会には防災倉庫の開錠や資機材の操作を確認するなど、テーマを分けながら進めてもよいでしょう。
訓練後は「誰が間違えたのか」ではなく、「なぜその手順では動きにくかったのか」を振り返ります。
その原因をマニュアルへ反映し、次の訓練で修正後の方法を確かめることで、作成当初の文書が少しずつ自分たちのマンションで実際に使える仕組みへ変わっていきます。
防災マニュアルに入れておきたい項目
防災マニュアルは、情報を増やせば増やすほど優れたものになるわけではありません。
災害時には長い文章を落ち着いて読む余裕がない可能性があるため、「いつ」「誰が」「何をするのか」が見つけやすい構成にする必要があります。
時間軸で整理すると、必要な情報へたどり着きやすくなります。
マンション防災マニュアルの主要構成
| フェーズ | 主な項目 | 具体的な内容 |
|---|---|---|
| 平時 | 防災体制 自助 共助 備蓄 名簿 訓練 | 家具転倒防止 家庭備蓄 防災組織 情報更新 |
| 発災直後 | 身の安全 初期確認 本部立ち上げ | 身の安全確保 火災確認 本部設置条件 |
| 初動対応期 | 安否確認 被害確認 設備確認 | 安否情報集約 共用部確認 排水利用判断 |
| 被災生活期 | 在宅避難 トイレ 給水 物資 情報 | 携帯トイレ 共用資機材 情報掲示 |
| 復旧期 | 建物点検 修繕 保険 生活復旧 | 専門業者手配 被害記録 修繕検討 |
平時の備え
平時の章では、各家庭で行う自助と、マンション全体で行う共助を分けます。
家具の転倒防止、家庭内の飲料水や食料、携帯トイレ、常備薬などは各家庭で準備する内容です。
一方、共用の救出工具、投光器、災害対策本部用備品、情報掲示用品などについては、管理組合で準備する方が合理的な場合があります。
この境界が曖昧だと、「管理組合が備蓄しているから自宅では準備しなくてもよい」と誤解される可能性があります。
管理組合が準備するものと、各家庭に備蓄を求めるものを明確に分けて周知するとよいでしょう。
発災直後
発災直後は、自分自身と家族の安全確保を最優先にします。
防災担当だからといって、揺れている最中に共用廊下へ出たり設備室へ向かったりするような手順にはしません。
揺れが収まって安全を確保したあと、火災、負傷者、共用部分の重大な危険など、緊急性の高い内容から確認します。
管理組合の役割を細かく決めることは重要ですが、その担当者自身の安全を犠牲にする前提のマニュアルにはしないことが大切です。
初動対応期
安否確認の結果や建物の被害情報を災害対策本部などへ集約します。
「被害あり」という報告だけでは判断しにくいため、場所、被害内容、緊急性、支援の必要性など、最低限報告する項目を決めておく方法があります。
居住者へ情報をどのように伝えるのかも整理します。
災害時には情報が不足し、不確かな話が広がることがあります。
確認済み情報と未確認情報を分け、いつ確認した内容なのかを示すだけでも、混乱を抑えやすくなるでしょう。
被災生活期
発災から時間がたつと、命を守る初動だけではなく、マンション内で生活を維持する問題が大きくなります。
停電、断水、エレベーター停止、ごみ収集停止などが重なると、平時には意識しない生活上の問題が表面化します。
携帯トイレの使用済み袋をどこへ一時保管するのか、共用資機材を誰が管理するのか、行政から届いた情報や物資をどのように扱うのかまで考えておけば、在宅避難時の混乱を減らしやすくなります。
復旧期
復旧期になると、建物の詳細調査、修繕、保険、資金、総会など、管理組合として判断する事項が増えてきます。
これらをすべて初動用の防災マニュアルへ入れると情報量が多くなりすぎる場合には、発災直後から被災生活初期までを本編にまとめ、その後の生活継続や建物復旧について別冊で整理する方法も考えられます。
大切なのは資料の名称ではなく、必要なときに必要な手順へたどり着けることです。
自治体のひな形をそのまま使わない方がよい理由
自治体が公開しているマンション防災ガイドや災害時活動マニュアルの様式は、防災マニュアルを作るうえで非常に有用です。
東京都でも、マンション防災ガイドブックとともに災害時活動マニュアル作成用の様式が公開されています。
こうした一次情報を利用せず、最初からすべての項目を考える必要はありません。
ただし、ひな形は幅広いマンションで利用できるよう一般化されています。
自分たちのマンションで防災倉庫の鍵を誰が持っているのか、給水ポンプが停電時にどうなるのか、何人の担当者で安否確認できるのかまでは決めてくれません。
ひな形は完成品ではなく、検討項目の漏れを防ぎ、自分たちのマンションについて考えるための土台として利用します。
ひな形修正で迷いやすい想定事例
以下は、マンション防災で実際に検討課題となりやすい内容を理解しやすくするために一般化した想定事例です。
特定のマンションで実際に発生した事故として示すものではありません。
排水確認をしないままトイレを流す場合
100戸規模のマンションで、マニュアルに「断水時は浴槽の残り水を使ってトイレを流す」とだけ記載されていたとします。
大きな地震のあと、水道が止まったため、多くの居住者が浴槽に残っていた水を便器へ流しました。
もし建物内の排水管などが損傷していれば、上階から排水した汚水が下階で逆流したり漏れたりする可能性があります。
この場合に不足しているのは、水を確保する方法だけではありません。
排水を一時的に控える条件と、どのような確認を経て利用を再開するのかという手順です。
自治体のひな形にトイレ対策の項目があったとしても、自分たちのマンションの排水方式に合わせて内容を具体化する必要があります。
要支援者名簿を広く共有する場合
災害時に高齢者や支援が必要な人を早く助けたいという理由から、要支援者名簿を各階担当者へ広く配布する案が出たとします。
管理組合には善意があっても、対象となる居住者は「一人暮らしだと知られたくない」「健康状態を多くの人に知られたくない」と不安を感じるかもしれません。
その結果、名簿への登録を避ける人が増えれば、本来目指していた安否確認体制そのものが弱くなる可能性があります。
名簿を作る場合は情報量を増やすことより、誰が閲覧できるのか、どこに保管するのか、いつ使用するのかを先に整理した方がよいでしょう。
管理会社の到着を前提にする場合
防災倉庫には発電機や救出資機材が入っていますが、鍵は管理員室にあり、管理員以外が開けられない状態だったとします。
平時には安全な管理方法に見えますが、広域災害で交通網が止まり、管理員や管理会社の社員がマンションへ来られない状況では、必要な資機材を使用できません。
ここで考えるべきなのは、「管理会社が来てくれない」という不満ではありません。
管理会社が到着するまでの時間を、管理組合がどのように補うかという役割設計です。
防災倉庫など居住者自身が災害時に利用する場所については、非常時の鍵管理を事前に確認しておく必要があります。
一方、電気室や機械室など専門知識を必要とする場所について、居住者が自由に立ち入って設備を操作してよいという意味ではありません。
鍵を開けられる権限と、設備を安全に操作できる権限は分けて考える必要があります。
管理会社と管理組合とマンション管理士の役割
マンション防災マニュアルを作り始めると、「これは管理会社がやることではないのか」という疑問が出ることがあります。
普段から建物を管理し、設備の情報を持っているのは管理会社ですから、そのように感じるのは自然でしょう。
ただし、管理組合と管理会社では立場が異なります。
管理組合が決めること
管理組合は、自分たちのマンションでどのような防災体制を作るのかを決める当事者です。
安否確認をどうするのか、防災組織をどう作るのか、どこまでを共用備蓄とするのか、居住者へ何を求めるのかといった共同生活上のルールは、管理組合自身で検討します。
管理会社から案を示してもらうことはできますが、住民同士でどこまで助け合うのかという判断まで外部へ委ねることはできません。
管理会社に確認すること
管理会社は、管理委託契約に基づいて管理組合の業務を支援する立場です。
設備仕様、管理員勤務、保守会社、緊急連絡先など、防災マニュアル作成に必要な情報を多く持っています。
一方で、広域災害時に管理員や担当者が必ず短時間でマンションへ到着できるとは限りません。
そこで、マニュアル作成時には「管理会社が来るかどうか」ではなく、契約上どこまで対応することになっているのかを確認します。
管理会社に確認する事項
| 確認事項 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 管理員勤務 | 勤務時間 発災時の勤務継続条件 勤務時間外対応 |
| 緊急窓口 | 夜間休日の連絡先 対応可能な業務 |
| 現地対応 | 広域災害時の現地対応方針 |
| エレベーター | 停止時の連絡先 保守会社の対応方法 |
| 給水設備 | 停電時に停止する設備 断水が起こる条件 |
| 排水設備 | 地震後の確認方法 使用再開の考え方 |
| 非常用電源 | 給電する設備 想定稼働条件 |
| 防災倉庫 | 鍵の保管場所 非常時の解錠方法 |
| 居住者情報 | 保管方法 管理組合との共有範囲 |
| 緊急工事 | 管理会社が実施できる範囲 契約上の条件 |
確認を進めると、管理組合が期待していた対応と、契約上予定されている対応が違うと分かる場合があります。
そのとき「管理会社が何もしてくれない」と考えるだけでは、防災体制は改善しません。
管理会社が担当できる部分と、管理組合側で準備しておく部分を切り分けることが重要です。
災害が起きる前に役割の境界が分かったこと自体が、防災マニュアル作成の成果でもあります。
マンション管理士が支援できること
マンション管理士は、管理規約、理事会、総会、管理委託契約など、マンション管理の仕組みを踏まえて防災マニュアル作成時の論点を整理する場面で活用できます。
防災委員会をどのように位置付けるのか、防災用名簿の取扱いをどう整理するのか、管理会社との役割分担や費用負担をどう考えるのかといった問題は、防災知識だけではなく管理組合運営との整合性も確認する必要があります。
ただし、マンション管理士が建物構造、電気設備、排水設備、消防設備などの技術的安全性をすべて判断するわけではありません。
技術的な確認が必要であれば、建築士、設備関係者、保守会社、消防機関など適切な専門家と連携します。
マンション管理士に相談すべきケース
防災マニュアルは、すべてを専門家へ依頼しなければ作れないものではありません。
ハザードマップの確認、設備一覧の整理、備蓄品の棚卸し、安否確認方法の検討など、管理組合自身で進められる部分は多くあります。
一方、防災用名簿の利用目的や閲覧権限を整理したい場合、防災委員会の位置付けを規約や細則との関係から確認したい場合、災害時の理事会や理事長の権限を整理したい場合などは、マンション管理士への相談を検討するとよいでしょう。
店舗と住宅が混在する複合用途型マンションや、複数棟で構成される団地型マンションなど、組織や共用部分の関係が複雑な場合にも、第三者に論点を整理してもらう意味があります。
また、防災対策そのものには賛成でも、費用、個人情報、役員負担などを巡って理事会内の意見がまとまらないことがあります。
そのような場面で反対意見を「防災意識が低い」と扱ってしまえば、協力を得にくくなるでしょう。
費用への不安、情報管理への不安、役員負担への不安には、それぞれ理由があります。
第三者が事実と選択肢を整理することで、感情的になっていた話し合いが、具体的な検討へ戻ることもあります。
理事会で決める事項一覧
防災マニュアル作成では、何を決めるのかと同時に「その事項を誰が決められるのか」を確認する必要があります。
ここを曖昧なまま進めると、完成後に「理事会だけで決めてよかったのか」「総会に諮る必要があったのではないか」という問題が出る可能性があります。
以下は全国共通の決議区分を示すものではなく、自分たちの管理規約を確認するための整理表です。
| 検討事項 | 主な検討内容 | 決定前に確認する事項 |
|---|---|---|
| 防災マニュアル | 本文と運用手順 | 現行規約上の理事会権限 |
| 災害対策本部 | 設置条件 組織 代理順位 | 役員交代時の更新方法 |
| 安否確認 | カード 訪問 階別担当 | 個人情報 居住者負担 |
| 防災訓練 | 日程 内容 参加方法 | 消防計画との関係 予算 |
| 防災委員会 | 組織 権限 任期 | 管理規約 細則 |
| 防災用名簿 | 取得情報 保管 利用 | 個人情報の取扱い |
| 備蓄購入 | 品目 数量 費用 | 承認済み予算と規約 |
| 防災設備 | 新設 更新 | 共用部分変更 費用 |
| 緊急修繕 | 発災後の判断手順 | 管理規約上の緊急時権限 |
| 管理会社との連携 | 緊急連絡 現地対応 | 管理委託契約 |
災害等によって総会の開催が困難な場合に、応急的な修繕工事の実施などを理事会で決議できるという考え方は、2025年改正で初めて設けられたものではありません。
国土交通省が2016年3月14日に行ったマンション標準管理規約改正では、「災害時における意思決定ルールの明確化」が改正事項として示され、災害等により総会開催が困難な場合の応急的な修繕工事について、理事会で対応する規定が既に整備されていました。
2025年改正版でも、この仕組みは引き続き規定されています。
したがって、「2025年改正によって初めて災害時の理事会決議が可能になった」と理解するのは適切ではありません。
また、標準管理規約に規定があるからといって、自分たちのマンションへ同じ内容が自動的に適用されるわけでもありません。
実際に利用できる権限や決議方法は、現在の管理規約を確認して判断します。
防災委員会に関する細則、防災用名簿、共用部分への防災設備導入、大きな費用を伴う対策などについても、対象となる内容や現行規約によって必要な手続が変わる可能性があります。
「防災だから理事会だけで決めてよい」と一括りにせず、内容と決定方法を分けて確認することが大切です。
作成後は防災訓練と定期見直しを行う
防災マニュアルが完成すると、担当した理事や防災委員は大きな達成感を感じるでしょう。
資料を集め、何度も話し合い、ようやく居住者へ配布できる状態になれば、「これで一つ大きな仕事が終わった」と感じるのも自然です。
しかし、マニュアルは作成した時点の建物、設備、居住者、役員、管理会社などを前提にしています。
時間がたてば、現実との間に少しずつずれが生じます。
理事が交代すれば災害対策本部の担当者も変わり、居住者の入退去があれば名簿も変わります。設備更新や管理会社変更によって、以前の連絡先や手順が使えなくなる可能性もあるでしょう。
そのため、完成した段階で「誰が」「いつ」「何を確認するのか」という更新方法まで決めておくことが重要です。
防災訓練後に見直す
防災訓練は、マニュアルに書かれている方法が現実に機能するのかを確認する機会です。
安否確認の情報が本部へ届くまでに想定以上の時間がかかったのであれば、担当人数や報告方法に問題があるかもしれません。
防災倉庫を開けるまでに手間取ったのであれば、鍵管理や担当者への周知方法に改善の余地があります。
振り返りでは、誰が失敗したのかではなく、なぜその仕組みでは動きにくかったのかを確認します。
人が間違えやすい手順なら、「次は注意してください」と求めるだけではなく、間違えにくい仕組みへ変更した方が実効性は高まるでしょう。
訓練で明らかになった課題を理事会などで共有し、修正した内容と理由を改定履歴として残せば、翌年度の役員にも考え方を引き継ぎやすくなります。
毎年確認したい情報
役員、防災担当者、緊急連絡先、管理会社の窓口、名簿、備蓄品の期限など、変化しやすい情報については、年1回程度の確認時期を内部ルールとして設定しておくと管理しやすくなります。
これは、防災マニュアルを全国一律に毎年改定しなければならないという法的義務を意味するものではありません。
担当者が交代しても情報更新が途切れないよう、管理組合として確認時期を決めておくという考え方です。
全体を見直すタイミング
本文全体については、数年ごとにまとまった点検時期を設ける方法があります。
ただし、3年や5年という年数そのものに、全国共通の法定更新周期があるわけではありません。
設備の大規模更新、管理会社変更、大きな災害の発生、自治体ハザードマップの変更、管理規約や関係法令の変更などがあれば、予定している時期を待たず関連箇所を確認します。
防災マニュアルは、一度作った文章をそのまま守ることが目的ではありません。
マンションの現実に合わせて内容を更新し、必要なときに使える状態を維持することが目的です。
マンション防災マニュアルのよくある質問
- マンション防災マニュアルの作成は法律で義務付けられているのか
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管理組合が自主的に作成する、地震や在宅避難などを扱うマンション防災マニュアルについて、全国すべてのマンション管理組合へ一律に作成を義務付けるものとして、マンション標準管理規約が直接適用されるわけではありません。
マンション標準管理規約は法律ではなく、各マンションが管理規約を作成または改正する際のひな型です。
2025年改正版では、防災マニュアルの作成と周知、防災訓練、防災情報、防災用名簿、備蓄などが防災関係業務の例として具体的に整理されています。
これは管理組合が防災体制を考えるうえで重要な指針ですが、それ自体によって全国一律の防災マニュアル作成義務が生じるわけではありません。
一方、消防法上の消防計画は別に考える必要があります。
用途や収容人員など一定の要件を満たす防火対象物では、防火管理者を選任し、消防計画を作成するなどの対応が必要です。
共同住宅では原則として居住者数50人以上が一つの基準となりますが、複合用途の防火対象物などでは30人以上となる場合があり、一定の用途を含む場合には10人以上となることもあります。
実際の適用については建物用途や構成によって異なるため、自分たちのマンションが対象となるか分からない場合には、管理会社や所轄消防署へ確認するとよいでしょう。
- 防災マニュアルは誰が作るのか
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主体となるのは管理組合です。
実際の作業は、理事会、防災担当理事、防災委員会などが中心となり、管理会社から建物設備や契約に関する情報提供を受けながら進める方法が考えられます。
外部専門家へ原案作成を依頼することもできますが、安否確認を誰が行うのか、どこまでを管理組合の備蓄とするのかといった、居住者の協力に関わる部分は管理組合自身で決める必要があります。
- 自治体のひな形をそのまま使えるのか
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自治体のひな形は、何を検討すればよいのかを確認するための出発点として有効です。
ただし、給排水方式、非常用電源、世帯数、鍵管理、安否確認方法などはマンションごとに異なります。
ひな形を利用するときは、各項目について「自分たちのマンションでは誰が行うのか」「実際の設備はどうなっているのか」と確認し、物件の実情へ合わせて修正します。
- 管理会社に防災マニュアルを全部作ってもらえるのか
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管理会社によっては、ひな形の提供、原案作成、防災訓練の支援などを行っている場合があります。
ただし、現在の管理委託契約に防災マニュアル作成が含まれているとは限らないため、業務範囲を確認する必要があります。
また、管理会社が原案を作成した場合でも、居住者同士の安否確認、要支援者対応、備蓄の範囲など、管理組合として判断する部分は残ります。
資料作成を依頼することと、防災体制の意思決定まで任せることは分けて考えましょう。
- 防災計画と防災マニュアルの違いは何か
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「防災計画」という言葉は、資料や組織によって意味が異なります。
この記事でいう防災マニュアルは、災害が発生したときに管理組合や居住者が具体的に行動するための手順を中心とした資料です。
BCPやLCPという言葉についても対象範囲が完全に統一されているわけではありませんが、生活や組織の継続、建物復旧、中長期の意思決定などを含めて使われることがあります。
そのため、名称だけで区別するより、自分たちが持っている各資料に何が書かれ、何が不足しているのかを確認する方が実務的です。
- マンション管理士に相談すると何をしてもらえるのか
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マンション管理士には、管理規約、理事会運営、総会、管理委託契約などとの整合性を確認しながら、防災マニュアル作成の論点を整理する支援を依頼できます。
防災委員会の位置付け、防災用名簿、管理会社との役割分担、理事会や総会での意思決定など、管理組合運営との関係が深い部分で相談しやすいでしょう。
具体的な支援範囲はマンション管理士によって異なるため、依頼前に確認が必要です。
また、建築、設備、消防など専門技術上の判断が必要な場合には、それぞれの分野の専門家と連携します。
- 防災マニュアルは何年ごとに見直すのか
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全国のマンションに共通して「必ず何年ごとに全面改定する」と定められた防災マニュアルの法定更新周期があるわけではありません。
役員、緊急連絡先、名簿など変化しやすい情報は定期的に確認し、防災訓練で問題が見つかった手順については、その都度修正する運用が現実的です。
本文全体について数年ごとに点検する内部ルールを設けることも考えられますが、設備更新、管理会社変更、災害発生、ハザード情報更新、管理規約変更などがあれば、予定している時期を待たず確認した方がよいでしょう。
まとめ
マンション防災マニュアルを作るときに最も大切なのは、自治体のひな形をきれいに埋めることではありません。
まず、自分たちの建物と地域で何が起こり得るのかを確認し、設備、居住者情報、管理体制、管理会社との役割分担について、現在分かっていることと分かっていないことを整理します。
そのうえで、災害対策本部、安否確認、在宅避難、排水、備蓄、名簿、鍵、情報共有などを、自分たちのマンションの規模や居住者構成に合わせて具体化することが必要です。
防災には人命に関わる責任の重さがあるため、「間違った内容を決めてはいけない」と考えて作業が止まることがあります。
しかし、最初からすべてを完成させようとするより、確認できる事実から実行可能な手順を作り、防災訓練で現実とのずれを確かめながら改善していく方が、実際に使えるマニュアルへ近づくでしょう。
管理規約、個人情報、災害時の権限、設備の技術的判断など、自分たちだけでは判断しにくい部分について、無理に管理組合だけで結論を出す必要はありません。
管理会社、マンション管理士、建築士、設備関係者、消防機関などへ、必要な論点だけ相談する方法があります。
災害がいつ発生するのかを管理組合が決めることはできませんが、発災したときに「誰に聞けばよいのか分からない」「何をしてよいのか決められない」という時間を減らす準備はできます。
自分たちのマンションについて一つずつ事実を確認し、曖昧だった部分を平時のうちに行動できる仕組みへ変えておくことが、マンション防災マニュアルを作る本当の意味ではないでしょうか。
参考資料
本記事の主軸を確認する際には、以下の一次情報が参考になります。
国土交通省 マンション標準管理規約
2025年改正版を含むマンション標準管理規約とコメントを確認できます。標準管理規約が各マンションの管理規約作成や改正のひな型であることも確認できます。
国土交通省 マンション標準管理規約
国土交通省 2016年マンション標準管理規約改正
災害時における意思決定ルールの明確化など、2016年改正の内容を確認できます。
国土交通省 マンション標準管理規約2016年改正
国土交通省 2025年マンション標準管理規約の見直し
防災マニュアルの作成と周知、防災訓練、防災情報、防災用名簿、防災物資等の備蓄など、2025年改正で整理された内容を確認できます。
国土交通省 令和7年マンション標準管理規約の見直し
東京都マンション防災ガイドブック
マンションでの在宅避難、防災活動、備え、災害時活動マニュアルの作成方法や様式を確認できます。
東京都マンション防災ガイドブック
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総務省消防庁
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