マンション管理士

マンションの総会が何年も開催されていない場合はどうする? 管理組合を正常化する手順をマンション管理士が解説

マンションの総会案内が何年も届いておらず、現在の理事長が誰なのかも分からないうえ、管理費や修繕積立金について最近の決算書を見た記憶もない。このような状態に気付いたとき、「自分のマンションは今、誰が管理しているのだろう」「毎月支払っているお金は大丈夫なのだろう」と不安になるのは自然な反応です。

それまでは共用部分の清掃が行われ、エレベーターも動き、廊下の照明も点灯していたため、総会が開かれていないこと自体を重大な問題として意識していなかったかもしれません。ところが雨漏りや設備故障が発生したり、住戸を売却しようとして管理状況を調べたりすると、総会だけでなく役員、会計、契約、区分所有者名簿、長期修繕計画まで現在の状態を説明できないことが分かり、そこで初めて管理組合の機能停止が表面化することがあります。

このようなマンションを正常化するときに大切なのは、過去数年間の空白を一度の総会ですべて清算しようとしないことです。最初に取り戻すべきなのは「すべての問題が解決した状態」ではなく、区分所有者が必要な情報を確認し、適切な手続で意思決定し、その結果を実行して次の年度へつなげられる状態でしょう。

この記事では、マンションの総会が何年も開催されていない場合について、事実確認→適法な招集→初回総会→継続正常化という一本の流れに沿って、最初に調べる資料、総会を招集できる人、区分所有者への連絡方法、初回総会で扱う議案、その後の会計や管理規約、長期修繕計画の整え方まで詳しく解説します。

なお、建物の安全に直結する不具合や、管理組合口座からの継続的な不審出金など緊急性の高い問題が存在する場合には、通常の正常化作業と並行し、場合によっては安全確保や資金保全を先行させる必要があります。正常化の順序は重要ですが、人身事故や財産流出を防ぐための対応まで総会再開後へ先送りするという意味ではありません。

TABLE OF CONTENTS
目次

最初に確認したい管理組合正常化の5STEP

何年も総会が開かれていないマンションでは、管理規約、役員、会計、管理会社、修繕など複数の問題が同時に見えるため、「結局どこから手を付ければよいのか」と迷いやすくなります。最初に全体の道筋を把握しておけば、個々の問題を調べるときにも現在どの段階にいるのかを見失いにくくなります。

STEP 主な作業 目標
STEP1 管理規約と最後の議事録などを確認する 現在の管理状態を把握する
STEP2 現在の管理者と総会招集権を確認する 誰が適法に総会を招集できるか判断する
STEP3 区分所有者と通知先を確認する 総会通知を届けられる状態へ戻す
STEP4 初回総会の議案を絞って開催する 意思決定機能を再開する
STEP5 会計と規約と修繕と引継ぎを整える 継続して管理できる状態へ移行する

この5STEPは、一つの段階が完全に終了するまで次の作業をしてはいけないという意味ではありません。名簿を調べながら会計資料を集めることもあれば、管理規約を確認している途中で緊急修繕が必要だと分かることもあるため、実際には複数の作業が並行するでしょう。

それでも順序の軸としては、現在の状態を確認しないまま総会の日程だけを決めるのではなく、まず管理状態と招集権を把握してから意思決定機能を再開する方が安全です。

マンションの総会が何年も開催されていない状態とは

総会が長期間開催されていないと、「管理組合そのものがなくなってしまったのではないか」と感じる方もいます。しかし、総会が開かれていないという事実だけで、区分所有者による管理の仕組みそのものが当然に消滅するわけではありません。

区分所有法では、区分所有者全員によって建物や敷地などを管理するための団体が構成されます。そのため、本当に問題となるのは管理組合の存在そのものより、区分所有者が情報を確認し、必要な事項を決定し、実行結果を確認して次年度へ引き継ぐという管理サイクルが機能しているかどうかです。

総会が一度開かれなかった程度では、日常生活に目立った変化が生じないこともあります。管理会社が清掃を続け、設備保守も行われ、管理費が毎月引き落とされていれば、「今年は何か事情があったのだろう」と考え、そのまま時間が過ぎるケースもあるでしょう。

ところが、その状態が二年、三年と続くにつれて、最後に誰が役員へ選任されたのか、どの年度まで決算が承認されたのか、現在の管理委託契約はどのような条件になっているのかといった情報が徐々に見えなくなっていきます。さらに売買、相続、転居、賃貸化が重なると、古い名簿に記載された所有者と現在の所有者が一致しなくなり、総会を再開しようと思ったときに通知先から調べ直さなければならないこともあります。

このような状態は、前理事長や管理会社など特定の誰か一人の怠慢だけで生じるとは限りません。役員の高齢化、なり手不足、引継ぎの失敗、外部居住所有者の増加、相続、住民間の対立などが少しずつ重なり、誰も意図していなかったのに管理だけが止まってしまう可能性があります。

正常化の入口で必要なのは責任追及よりも事実確認です。「誰が悪かったのか」を最初に決めるのではなく、「最後に正常な状態を確認できるのはいつか」「その後に何が分からなくなったのか」を整理した方が、問題を具体的な作業へ置き換えやすくなります。

区分所有法における総会の位置付け

マンションで一般に「総会」と呼ばれているものは、区分所有法上の「集会」に当たります。総会は単なる住民への説明会ではなく、管理組合における重要な意思決定を行う場です。

区分所有法第34条では、原則として管理者が集会を招集するとされ、管理者は少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないと定められています。また、管理者には毎年一定の時期に管理事務について報告する義務もあるため、管理者が存在するにもかかわらず何年も総会が開催されていない状態は、法律が予定する通常の管理運営から外れていると考える必要があります。

総会が重要なのは、役員を選んだり予算を決めたりするためだけではありません。「この一年間に何を行い、どのような収入があり、何へ支出したのか」を区分所有者が確認し、その後の管理方針を決める機会でもあります。

何年も総会が開かれていなければ、この説明と確認の機会も同時に失われます。区分所有者が毎月管理費を支払っているのに、お金や契約の状況を確認できない状態が続けば、管理組合そのものへの不信感が強くなるのも無理はありません。

標準管理規約と自分のマンションの規約は別物

国土交通省のマンション標準管理規約は、各マンションが管理規約を作成または見直すときのひな型です。全国のマンションへそのまま自動適用される規約ではないため、総会の招集権、役員任期、議決権、通知期間などを実際に判断するときには、自分のマンションで有効な管理規約を確認する必要があります。

特に、改正区分所有法の主要部分が2026年4月1日に施行され、国土交通省も2025年10月17日にマンション標準管理規約を改正しています。何年も総会を開いていないマンションでは、「最後の総会もこの書式だった」という理由だけで以前の運営方法を再利用せず、現在の法律と管理規約を照合することが重要です。

総会が長期間開かれないと起こりやすい5つの問題

役員と管理者の地位が曖昧になる

総会が開催されなければ、本来予定されていた役員改選も行われないことがあります。その結果、最後に選任された理事や理事長が現在も職務を行えるのか、誰が管理組合を代表して契約や金融機関の手続を行えるのかが分からなくなります。

区分所有者からすれば、数年前の理事長が現在も通帳や印鑑を保管していると聞けば、「そのままでよいのだろうか」と心配になるでしょう。とはいえ、役員の任期が過ぎたという理由だけで、前役員が行ったすべての行為を直ちに無権限と判断することもできません。

管理規約には、後任役員が就任するまで前任者が職務を継続する規定が置かれている場合があります。そのため、現在の役員や管理者の地位については、最後の総会議事録と管理規約を組み合わせて確認する必要があります。

ここで新しい理事長を急いで決めるより、現在の法的な状態を把握してから新体制へ移行した方が、後になって代表者の地位をめぐる争いを生みにくくなります。

会計の透明性が失われる

総会が数年間開催されていない場合、区分所有者の不安が特に強くなりやすいのが管理費と修繕積立金です。毎月の引き落としは続いているのに、現在の預金残高、管理費等の滞納状況、管理会社への委託費、設備保守費、保険料、共用部分の光熱費などを決算として確認する機会が失われているためです。

数字が見えなくなると、「修繕積立金は本当に残っているのだろうか」「以前より支出が増えているのではないか」と疑いたくなることもあります。それでも、決算書が見つからないという事実だけで不正流用があったと決め付けるべきではありません。

まず通帳、残高証明書、会計帳簿、請求書、領収書、管理委託契約書などを照合し、説明できる収支と説明できない収支を分けます。単なる資料不足なのか、追加調査が必要な取引が存在するのかを事実として切り分けることで、漠然とした疑念を具体的な調査へ変えられます。

滞納が見つかった場合も、一度督促しただけで正常化したとはいえません。未収金を定期的に把握し、どの段階で督促を強化し、いつ専門家へ相談するのかという運用まで次年度へ残すことが必要です。

なお、管理組合口座から説明のつかない大きな出金が続いている場合や、通帳や印鑑の所在が分からず資金流出のおそれがある場合には、通常の会計整理より資金保全を優先し、弁護士や金融機関などへの相談を含めて対応を検討する必要があります。

修繕判断が遅れる

管理組合の意思決定が止まっていても、建物の劣化は止まりません。屋上防水、外壁、給排水設備、消防設備、エレベーターなどは時間とともに状態が変化するため、必要な調査や補修を長期間先延ばしにすれば、後からより大きな工事が必要になる可能性があります。

もっとも、総会が開催されていないからといって、すべての修繕が一切できないわけではありません。工事の内容や管理規約によっては保存行為や通常の管理として対応できるものがある一方、多額の費用を伴う工事や共用部分の重大な変更などでは、適切な総会決議が必要になる場合があります。

この場面で本当に困るのは、劣化していることだけではなく、誰が工事の必要性を判断し、どの財源から支出し、その理由を区分所有者へ説明するのかという意思決定の仕組みが止まっていることです。

外壁の落下危険、重大な漏水、消防設備の安全問題など生命や財産へ直結する事情がある場合には、通常の正常化ロードマップを待つのではなく、必要な安全措置を並行または先行して検討してください。

過去の契約を説明しにくくなる

管理委託契約、設備保守契約、保険契約などが総会不開催中も続いている場合には、「誰がどの権限で更新したのか」という疑問が後から生じることがあります。

ただし、総会が開催されていなかったという理由だけで、その期間中に締結または更新された契約がすべて当然に無効となるわけではありません。管理者の権限、管理規約、過去の決議、契約内容、相手方との関係などによって法的評価が変わる可能性があります。

正常化の初期段階では、契約を一律に否定するより、現在続いている契約を一覧化します。契約先、金額、契約期間、更新方法、解約条件が分かれば、管理組合として今後も継続する契約と見直す契約を判断できるようになります。

契約の有効性や損害賠償についてすでに具体的な争いが生じている場合は、管理運営上の助言だけでは解決できない可能性があるため、弁護士へ相談することを検討してください。

売却時に管理状態を説明しにくくなる

マンションを売却するとき、購入希望者が確認するのは専有部分の広さや内装だけではありません。管理費、修繕積立金、総会議事録、管理規約、長期修繕計画、修繕履歴なども、マンション全体がどのように管理されているのかを判断する材料になります。

数年間総会が開催されず、最近の議事録や決算資料を示せない状態であれば、購入希望者にとって不安材料になる可能性があります。ただし、総会不開催という一点だけから「必ず住宅ローンが通らない」「必ず価格が下落する」と断定することはできません。

自分は当面売却しないから関係ない、と感じる方もいるでしょう。しかし、管理情報を説明できる状態を維持することはマンション全体の信用に関係します。誰かが売却するときに初めて慌てるのではなく、毎年の総会と決算を積み重ねること自体が将来の説明力につながります。

STEP1 現在の管理状態を把握する

正常化の最初の作業は、総会の日程を決めることではありません。まず管理組合が最後に正常に動いていた時点と、現在確認できる資料を把握します。

この作業を始めると、「これほど資料がないとは思わなかった」と焦る場合があります。しかし、最初から完全な資料一式をそろえる必要はありません。何があり、何がないのかを明確にするだけでも、現在の管理状態はかなり見えやすくなります。

初回確認で集めたい資料

確認資料 主に確認する内容 主な確認先
管理規約 招集権者 通知期間 役員任期 議決権 管理組合 役員 管理会社
使用細則 共用施設などの具体的運用 管理組合 管理会社
最後の総会議事録 最後の役員選任 決算 主要決議 役員 管理会社 区分所有者
過去の総会議事録 役員履歴 規約変更 契約変更 管理組合 管理会社
組合員名簿 区分所有者と通知先 管理組合
居住者名簿 現在の居住者と連絡先 管理組合 管理会社
登記事項証明書 登記上の所有者と権利関係 法務局
預金通帳 現在残高と入出金 管理組合
会計帳簿 管理費と修繕積立金の収支 管理組合 管理会社
決算書と予算書 最後に承認された会計年度 総会資料 管理会社
滞納一覧 管理費等の未収状況 管理組合 管理会社
管理委託契約書 委託範囲と契約条件 管理組合 管理会社
保険証券 保険期間と補償内容 管理組合 保険代理店
長期修繕計画 修繕時期と資金計画 管理組合 管理会社
修繕履歴 過去の工事内容と実施時期 管理組合 施工会社
設計図書 建物と設備の基本情報 管理組合 管理会社

最も優先したいのは管理規約と最後の総会議事録です。この二つが見つかれば、最後に誰が役員へ選任されたのか、その役員の任期や総会招集にどのような規定が置かれているのかを確認できます。

調査では、感情と事実を分けて記録することも重要になります。「前理事長が何もしていなかった」と書くより、「2023年度以降の通常総会議事録を現時点で確認できていない」と整理した方が、後から資料が見つかった場合にも事実関係を修正できます。

会計も同様です。「お金がおかしい」と断定するのではなく、「2024年度決算書を確認できず通帳残高との照合も未実施」と記録すれば、現在分かっていることと疑問点を切り分けられます。

資料が残っているケース

管理規約、最後の議事録、決算書などがある程度残っている場合には、「最後に正常な状態を確認できる地点」から現在までをたどります。

例えば2022年度までは総会議事録と決算書があり、その後だけ資料が欠けているのであれば、2022年度に誰が役員へ選任されたのか、規約上の任期はどうなっているのかを確認し、その後の契約や入出金を追っていきます。

管理会社が現在も業務を続けている場合には、管理組合側では見つからない資料が管理会社側に残っている可能性があります。ただし、区分所有者個人が管理会社や金融機関からすべての情報を自由に取得できるとは限らないため、誰に請求権限があるのかも含めて確認する必要があります。

資料がほとんど残っていないケース

一方で、管理規約も議事録も見つからない場合には、「何を根拠に動けばよいのか分からない」と感じるでしょう。それでも、現在手元に規約がないことと、過去に有効な規約が存在しなかったことは別問題です。

ほかの区分所有者、過去役員、管理会社、購入時の書類などを確認し、規約や議事録が残っていないか探します。そのうえで現在の区分所有者を登記事項証明書などから確認し、分かった事実を一つずつ積み上げていきます。

規約が見つからないからといって、直ちに「規約は存在しないものとして区分所有法だけで進めればよい」と判断するのは避けた方が安全です。規約の存在や内容そのものに疑義がある場合には、専門家へ相談しながら次の手続を検討する必要があります。

STEP2 総会を招集できる人と手続きを確認する

現在の管理状態が見えてきたら、次に「誰が総会を招集できるのか」を確認します。ここを飛ばして有志だけで日時を決めると、正常化のために開催した総会が、後から招集権をめぐる新しい争いの原因になる可能性があります。

区分所有法第34条では、原則として管理者が集会を招集します。また、区分所有者の5分の1以上で、かつ議決権の5分の1以上を有する者には、会議の目的となる事項を示して管理者へ集会の招集を請求できる制度があります。この5分の1という割合は、規約によって引き下げることが可能です。

理事長や管理者が動かない場合には、まずこの制度に基づいて正式に招集を請求することを検討します。その後、法律が定める期間内に適切な招集通知が出されない場合には、請求した区分所有者側が集会を招集できる仕組みがあります。

具体的には、請求を受けた管理者が請求の日から2週間以内に、請求の日から4週間以内の日を会日とする招集通知を発しない場合、請求した区分所有者が集会を招集できます。数字だけを見ると分かりにくいため、「請求後まず2週間待つ」「その間に、請求日から4週間以内に開催する総会の通知が出るかを確認する」と分けて理解すると整理しやすいでしょう。

また、法律上管理者が存在しない場合にも、一定割合の区分所有者が直接集会を招集できる制度があります。ただし、「現在の理事長の名前を住民が知らない」という状態と「法律上管理者が存在しない」という状態は同じではありません。

管理規約上、任期満了後も後任者が就任するまで前役員が職務を継続する仕組みが置かれている可能性があります。そのため、最後の総会議事録と規約を確認しても管理者の地位を判断できない場合や、前役員と有志の間で権限について意見が対立している場合には、招集通知を発送する前にマンション管理士や弁護士へ相談する方が安全です。

STEP3 区分所有者への連絡体制を復旧する

総会を開くためには、現在の区分所有者が誰なのかを把握し、必要な通知を届けられる状態へ戻す必要があります。総会が数年間止まっているマンションでは、その期間だけ組合員名簿の更新も止まっている可能性があります。

マンションでは売買、相続、転居、賃貸化、法人所有などが起こるため、数年前の名簿をそのまま現在の所有者一覧として扱うことはできません。特に賃貸住戸では、建物内で生活している人と議決権を持つ区分所有者が異なります。

そこで、既存の組合員名簿を確認し、必要に応じて登記情報などと照合しながら所有者と通知先を整理します。ただし、登記上の住所が現在の連絡先と一致しているとは限らないため、登記事項証明書を取得すればすべて解決するわけではありません。

ここで重要なのは、一度正確な名簿を作ることだけを目標にしないことです。売買や住所変更があったときに誰が更新し、定期的にどのように確認し、役員が退任するときに個人端末へデータを残さないためにどうするのかまで決めておかなければ、数年後には再び古い名簿へ戻ってしまいます。

また、組合員名簿と居住者情報は目的が異なります。総会や管理費に関する連絡では区分所有者を把握する必要がありますが、漏水、設備点検、防災などでは実際の居住者へ連絡する場面もあるため、何のための情報なのかを区別して管理することが大切です。

名簿正常化の目的は大量の個人情報を集めることではありません。必要な人へ必要な連絡が届き、その仕組みを翌年度の役員も無理なく維持できる状態を作ることです。

STEP4 初回総会の議案を絞って意思決定を再開する

何年も総会が開催されていないと、初回総会で過年度決算、役員選任、管理規約全面改正、大規模修繕、管理会社変更、修繕積立金の見直しまで一度に処理したくなることがあります。積み残された問題を早く片付けたいという気持ちは理解できますが、その進め方がかえって合意形成を難しくする場合があります。

有志や専門家が何か月も調べてきた案件でも、一般の区分所有者にとっては招集通知を受け取った時点が初めて詳しい説明を見る機会かもしれません。そこで大量の議案を提示されれば、「突然これだけのことを決めろと言われても判断できない」と感じるのは当然でしょう。

初回総会で優先したいのは、過去の問題をすべて精算することではなく、今後の管理組合が適切に意思決定できる体制を作ることです。実際の管理規約や状況によりますが、役員体制、管理者、会計調査の方針、資料保管、次回総会までの作業などへ議案を絞る方法があります。

特に過去数年間の会計資料が不足している場合には、不確かな数字を形式だけ整えて一括承認することに慎重であるべきです。銀行取引や残存帳票を追加確認し、確認できた範囲を改めて報告するという方針を決めることも考えられます。

初回総会の成功を、可決した議案数だけで測る必要はありません。総会終了後に誰が何を確認し、いつ報告し、次にどの事項を決めるのかが明確になれば、管理組合は再び意思決定できる状態へ動き始めています。

STEP5 再開後の会計と規約と修繕と引継ぎを整える

初回総会を開催できても、それだけで正常化が完了するわけではありません。総会で決めた内容を実行し、その結果を確認し、翌年度へ引き継げる状態へ移行して初めて、管理組合は継続して動けるようになります。

STEP3 区分所有者への連絡体制を復旧する STEP4 初回総会の議案を絞って 意思決定を再開する STEP5 再開後の会計と規約と修繕と 引継ぎを整える

役員体制と引継ぎを整える

まず自分たちの管理規約に従って役員体制を整え、理事長や管理者などの役割を明確にします。標準管理規約に近い仕組みであれば、理事と監事を総会で選任し、その後の理事会で理事長などを選ぶ構成がありますが、実際の手続は必ず自分のマンションの規約を確認してください。

さらに、役員を選任するだけでは再発防止になりません。資料の保管場所、年間予定、契約一覧、未処理事項、滞納案件、次回総会までの課題などを引継資料として残し、一人の詳しい役員が退任しただけで管理が止まらない仕組みを作る必要があります。

過去に総会が止まったマンションほど、「あの人しか分からない」という状態が再び生まれないようにすることが重要です。判断結果だけでなく、なぜその判断を行ったのかという経緯まで残しておけば、新しい役員も同じ問題を最初から調べ直さずに済みます。

会計と未収金管理を整える

役員体制が整ったら、管理費会計と修繕積立金を確認します。預金残高、帳簿、毎月の収入、契約上の支出、滞納状況を照合し、資料が不足している年度については可能な範囲で復元していきます。

ここでも、過去の数字を一度合わせれば終了という考え方では不十分です。滞納をどの時点で把握し、いつ督促を行い、どの段階から専門家へ相談するのかを運用として決めておけば、役員交代による対応漏れを防ぎやすくなります。

正常化とは一度きれいな決算書を作ることではなく、翌年度以降も会計状態を説明できる仕組みへ戻すことです。

管理規約を現行法と照合する

役員と会計がある程度整ったら、現在の管理規約を現行の区分所有法と照合します。国土交通省は2025年10月17日に改正区分所有法などに対応してマンション標準管理規約を改正し、2026年4月1日以降に規約改正のための総会招集手続を行う場合には、改正区分所有法に則った定足数や決議要件を満たす必要があると案内しています。

ただし、標準管理規約の改正によって自分のマンションの規約が自動的に書き換わるわけではありません。現在の規約を確認したうえで、現行法と抵触する部分や実際の管理運営に合わなくなっている部分から見直していくことになります。

正常化直後の初回総会ですべてを全面改正しなければならないとも限りません。まず運営体制を整え、区分所有者が内容を十分検討できる状態になってから規約改正を進める方が適切な場合もあります。

長期修繕計画と建物状態を確認する

最後に、建物の状態と長期修繕計画を確認します。総会が何年も止まっていたマンションでは、その間に修繕計画の見直しや工事履歴の整理も止まっている可能性があります。

既存の長期修繕計画と実際の工事履歴を照合し、予定していた工事が実施されているのか、現在の修繕積立金残高で将来計画が成り立つのかを確認します。必要に応じて建築士などの技術専門家による調査を行い、建物状態、必要な工事、費用、財源を区分所有者へ説明できる状態にしてから判断するとよいでしょう。

総会再開直後に大規模修繕を急いで決めるのではなく、建物の現況と資金状況を共有してから優先順位を決める方が、その後の合意形成も進めやすくなります。

正常化前と正常化後のチェック

正常化が進んだかどうかは、すべての問題が解消したかではなく、管理組合が継続して意思決定できるようになったかという観点から確認すると分かりやすくなります。

確認項目 正常化前に多い状態 正常化後の目標
総会 最後の開催時期が曖昧 毎年開催できる
管理者 現在誰なのか分からない 現在の管理者を説明できる
役員 任期や役割が曖昧 規約に沿って役割が明確
議事録 途中から見つからない 毎回作成保管される
名簿 古いまま更新されない 継続して確認更新できる
管理費会計 収支を説明できない 決算と残高を説明できる
修繕積立金 残高や使途が不明 残高と計画を確認できる
契約 契約先や条件が曖昧 一覧で把握できる
修繕 問題発生後に場当たり的に対応 計画と優先順位を確認できる
引継ぎ 一部役員の記憶に依存 資料と判断経緯を残せる

右側の状態が短期間ですべて完成するとは限りません。それでも、「何が分からないのかさえ分からない状態」から「未解決事項を把握し次の判断ができる状態」へ移っていれば、正常化は進んでいます。

初回総会までの正常化ロードマップ

正常化に必要な期間はマンションによって大きく異なります。資料が十分に残り、区分所有者とも連絡が取れる場合には比較的早く進められますが、相続未整理、所有者不明、管理者の地位をめぐる対立などがあると長期化する可能性があります。

以下は法定の標準期間ではなく、正常化に必要な作業の順番をイメージするための例です。

段階 期間の目安例 主な作業 到達点
状況確認 1〜2か月 規約 議事録 役員 会計資料の確認 現在地が分かる
所有者確認 2〜3か月 名簿と登記情報の確認 通知対象を把握できる
招集確認 3〜4か月 管理者と招集権の確認 招集方法を決められる
総会準備 4〜5か月 議案整理 説明 通知準備 区分所有者が判断できる資料ができる
初回総会 5か月前後 総会開催 議事録作成 意思決定を再開できる
継続正常化 6か月以降 会計 規約 修繕 引継ぎ 通常運営へ移行する

早く立て直したいと思うほど、数週間で総会を開きたくなるかもしれません。しかし、招集権や通知対象を誤った結果として総会をやり直すことになれば、時間だけでなく区分所有者同士の信頼まで損なう可能性があります。

正常化では単純な速さより、「なぜこの人が招集し、誰へ通知し、どの規定によって決めたのか」を後から説明できることが重要です。

2026年4月以降の総会で最初に確認したい3点

数年間総会を開いていないマンションでは、前回総会の書式や当時の記憶だけを頼りに現在の総会を準備することには注意が必要です。改正区分所有法の主要部分は2026年4月1日に施行されており、2026年4月1日以降に招集手続を開始する集会には改正後のルールが適用されます。

正常化実務で特に確認しておきたいのは、招集通知の内容と期間、普通決議や特別決議の判定方法、所在等不明区分所有者の扱いです。ここから先は法改正の詳細ですが、すべての制度を暗記する必要はなく、自分のマンションで実際に扱う議案に関係する部分を管理規約とあわせて確認することが基本になります。

2026年改正区分所有法と標準管理規約の注意点

全議案で議案の要領を示す

改正後は、総会の招集通知について、すべての決議事項で「議案の要領」を示す必要があります。法務省の経過措置資料でも、2026年4月1日以降に招集手続を開始する集会について、全ての決議の招集通知に議案の要領を記載する必要があると整理されています。

数年ぶりに総会を再開する場合には、特に重要な変更です。有志や役員にとっては何か月も検討してきた内容でも、一般の区分所有者には招集通知が最初の詳しい説明になる可能性があります。

そのため、「管理規約変更の件」「役員選任の件」と議題名だけを並べるのではなく、区分所有者が事前に何について判断するのか理解できる程度に内容を示す必要があります。招集通知は発送期限を守るだけの書類ではなく、区分所有者が賛否を考える入口でもあります。

招集通知期間は1週間未満へ短縮できない

改正後も法律上の招集通知期間は、原則として会日より少なくとも1週間前です。一方、改正によって規約でこの期間を1週間未満へ短縮することはできなくなっており、法務省も施行後は招集通知から集会日まで1週間以上の期間を確保する必要があると整理しています。

自分の管理規約で2週間前など法律より長い期間が定められている場合には、その規約上の期間も確認する必要があります。

何年も総会が止まっていたマンションでは、古い総会マニュアルや招集通知のひな型が残っていることがあります。「以前もこの日数で開催していた」という理由だけで流用せず、現在の法令と規約を確認してください。

普通決議は法律と管理規約を分けて確認する

改正区分所有法では、法律または規約に別段の定めがない場合、集会の議事は出席した区分所有者とその議決権の各過半数で決する仕組みとなっています。

ただし、これを「少人数の出席だけで何でも決められるようになった」と理解するのは適切ではありません。各マンションの管理規約で総会成立のための定足数が定められている場合には、その要件を満たす必要があります。

国土交通省の改正標準管理規約でも、通常の総会について一定の定足数を設け、その総会が成立した後に出席者の議決権を基準として普通決議を行うモデルになっています。法律上の多数決原則と、自分の管理規約に定められた総会成立要件は分けて確認してください。

管理規約変更では定足数と決議要件を分ける

管理規約の設定、変更、廃止では、「4分の3」という数字だけを覚えて進めると誤解しやすいため、総会を成立させるための定足数と、成立した総会で議案を可決するための多数決要件を二段階に分けて考えることが重要です。

改正後は、まず区分所有者側と議決権側の双方で過半数を満たす出席が必要になります。国土交通省も、規約変更などの定足数について「区分所有者の過半数の者であって議決権の過半数を有するものが出席」という構造で整理しています。改正後に規約変更の総会招集手続を行う場合には、この定足数を満たす必要があります。

そのうえで総会が成立した後、規約変更を可決するには、原則として出席した区分所有者の4分の3以上かつ出席者が有する議決権の4分の3以上の賛成が必要になります。改正標準管理規約も、定足数を満たした総会において出席組合員とその議決権の各4分の3以上で規約の制定や変更などを決する構造です。

例えば区分所有者が100人いるマンションを単純化して考えた場合、51人が出席していても、その51人が持つ議決権が全体の過半数に達していなければ定足数を満たさない可能性があります。反対に出席者が持つ議決権は過半数でも、出席している区分所有者の人数が過半数に届かなければ足りません。

したがって規約変更では、まず人数側と議決権側の双方について総会成立の条件を確認し、その後に出席者側と出席議決権側の双方について4分の3以上の賛成があるかを判定します。「規約変更だから4分の3」という一点だけで判断しないことが重要です。

共用部分変更の決議要件にも改正がある

共用部分の重大な変更についても、改正法によって決議構造が見直されています。また、共用部分の瑕疵を除去するために必要な変更や、一定のバリアフリー化など、法律上の条件を満たす場合には決議要件が緩和される仕組みがあります。

ただし、「大規模修繕だから自動的に3分の2で決められる」という意味ではありません。具体的な工事内容が法律上どの類型に当たるのかを確認したうえで、必要な決議要件を判断する必要があります。

大規模な工事を初回総会で急いで決めるのではなく、建物調査や工事内容を整理し、その議案に必要な決議要件まで確認してから総会へ提出する方が安全でしょう。

所在等不明区分所有者の除外制度

長期間総会が止まっているマンションでは、相続や転居などによって区分所有者の所在が分からなくなっていることがあります。改正区分所有法では、一定の場合に裁判所の決定を得ることで、所在等不明区分所有者を集会決議などから除外する制度が設けられています。

これは、総会通知が返送されたという理由だけで管理組合が自由にその区分所有者を母数から外せる制度ではありません。所在等について必要な調査を行い、裁判所の手続を経る必要があります。

所在不明者が多いために重要な決議を進められない場合には、正常化作業の一環として弁護士へ相談し、この制度を利用する必要があるか検討することになります。

マンション管理士に依頼できる正常化支援

何年も総会が止まっている場合、問題は総会手続だけに収まりません。管理規約、名簿、会計、管理会社との契約、修繕などが絡み合っているため、「自分たちで何から調べればよいか分からない」という段階でマンション管理士へ相談する方法があります。

マンション管理士が支援しやすいのは、残っている資料を整理し、管理組合の現在地を把握したうえで正常化の順番を組み立てる領域です。管理規約や最後の総会議事録を確認し、役員状態や招集手続を整理したうえで、総会までに必要な資料や議案を検討できます。

また、正常化支援を総会当日だけの仕事として考えないことも重要でしょう。招集通知、議案構成、議決権確認、当日の運営、議事録、決議事項の実行、翌年度への引継ぎまでつなげなければ、一度総会を開催しても翌年に再び止まる可能性があります。

一方、マンション管理士という資格そのものに総会招集権が付与されているわけではありません。マンション管理士が区分所有法上の管理者として適切に選任されている場合などを除けば、通常は法律や管理規約上の招集権を持つ人が手続を行えるよう支援する立場です。

マンション管理士と他の専門家を分ける目安

管理組合正常化では、一人の専門家だけですべての問題を処理しようとしないことも大切です。正常化を進めるうちに、管理運営上の問題だと思っていたものが法的紛争や専門的な会計問題であると分かる場合があります。

主な領域 マンション管理士を中心に検討しやすいもの 他の専門家との連携を検討するもの
総会 招集手順整理 議案構成 運営支援 招集権や決議効力をめぐる訴訟
管理規約 現行規約の整理 改正案検討支援 規約の効力をめぐる法的紛争
会計 資料整理 管理運営上の確認 不正疑義を含む高度な会計監査
管理費滞納 管理体制や対応フローの整理 訴訟などの法的債権回収
契約 契約内容と管理運営上の整理 契約の無効や損害賠償をめぐる争い
登記 管理上必要な情報整理 不動産登記や法人登記
修繕 意思決定や総会手続の支援 建物診断 設計 工事監理

例えば、過去の会計資料が整理されていない段階では、まず資料を集めて現在の状態を確認できます。しかし、前役員に対する金銭返還請求を検討する段階になれば、問題の中心は管理運営ではなく法的請求へ移ります。

前役員が通帳や印鑑を返還しない場合、総会決議の有効性が争われている場合、管理者の地位について対立している場合なども、弁護士との連携を検討すべき場面です。複雑な資金検証には公認会計士、登記には司法書士、建物診断や修繕設計には建築士など、問題の性質に応じて担当を分けます。

専門家を増やすこと自体が目的ではありません。現在起きている問題を誰が最も適切に扱えるのかを見極め、必要な段階でつなぐことが重要です。

外部管理者方式を検討する場合の注意点

役員のなり手不足そのものが総会停止の大きな原因となっている場合には、マンション管理士などの外部専門家や管理業者を管理者として活用する外部管理者方式を検討することがあります。

国土交通省は2026年4月1日に「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」を改訂しており、外部管理者方式について管理者の業務、利益相反への対応、監視やチェック体制、組合財産の保護などを整理しています。

外部管理者方式は、区分所有者が管理から完全に離れてよい仕組みではありません。むしろ外部の者へ大きな権限を与えるからこそ、誰が管理者を監督するのか、どのような報告を求めるのか、報酬をどうするのか、利益相反取引をどう確認するのかまで設計する必要があります。

特に管理会社自身が管理者となる方式では、管理業務を受託する立場と管理組合を代表する立場が近くなるため、利益相反管理や組合財産の保護について十分な仕組みを用意することが重要です。

「役員になる人がいないから」という焦りだけで外部管理者方式へ移行せず、正常化後にどのような管理体制を続けたいのかまで考えたうえで判断してください。

よくある質問

3年間総会を開催していません 最初に何をすればよいですか?

最初に行いたいのは総会の日程調整ではなく、管理規約、最後の総会議事録、最後に確認できる役員、組合員名簿、会計資料を探すことです。全部の資料がそろわなくても、現在確認できるものと確認できないものを分ければ、次に調べる事項が見えてきます。

ただし、外壁の落下危険や重大な漏水、継続している不審な資金流出など緊急性の高い問題がある場合には、通常の正常化作業と並行して安全確保や資金保全を検討してください。

理事長が総会を開いてくれません 区分所有者だけで開催できますか?

一定の条件を満たす区分所有者には、区分所有法第34条に基づいて管理者へ総会招集を請求し、法律上の要件を満たした場合に自ら集会を招集できる制度があります。

ただし、居住者が何人か集まれば総会になるわけではありません。区分所有者数と議決権の双方、管理者への招集請求、通知期間、通知内容などを確認して進める必要があります。

理事長も役員も誰か分かりません どう調べればよいですか?

まず最後の総会議事録と管理規約を探し、最後に誰が役員へ選任されたのか、その任期と任期満了後の扱いを確認します。

現在の住民が役員名を知らないというだけでは、法律上管理者が存在しないと直ちに判断できません。管理規約に後任就任までの職務継続規定がある場合などもあるため、資料を確認しても判断できない場合には専門家へ相談する方が安全です。

管理規約や議事録が見つからなくても正常化できますか?

資料が見つからないからといって、直ちに正常化が不可能になるわけではありません。ほかの区分所有者、過去役員、管理会社、購入時の資料などを確認し、残っている情報をつなぎ合わせていきます。

ただし、管理規約の写しが現在見つからないことと、有効な規約そのものが存在しないことは別問題です。規約の存在や内容に疑義がある場合には、自己判断だけで総会手続を進めないことが重要です。

マンション管理士は総会を招集できますか?

マンション管理士という資格を取得しているだけで、そのマンションの総会招集権が発生するわけではありません。誰が招集できるかは、区分所有法や管理規約上の地位によって決まります。

マンション管理士が適切に区分所有法上の管理者として選任されている場合には、その管理者として総会を招集することがありますが、通常の正常化支援では招集権者の確認や総会準備を支援する立場になります。

初回総会では何を優先して決めればよいですか?

実際の議案は管理規約と現在の状態によって変わりますが、初回総会では今後の管理組合が動ける体制を作ることを優先します。役員体制、管理者、会計調査の進め方、資料保管、次回総会までの作業などを中心に検討し、過年度会計や規約全面改正、大規模修繕まで無理に一度で処理しない方法もあります。

総会が終わった後に誰が何を確認し、いつ報告し、次に何を判断するのかが明確になっていれば、正常化は次の段階へ進めます。

古い管理規約は2026年改正法に合わせて変更する必要がありますか?

まず現在の規約と改正区分所有法を照合する必要があります。法務省は、2026年4月1日以降に改正区分所有法と抵触する規約部分は効力を失い、改正法に則った手続が必要になると整理しています。

ただし、正常化直後の初回総会で必ず規約全文を改正しなければならないという意味ではありません。まず総会と執行体制を再開し、現行法との整合が必要な部分や運営上問題となっている部分から順番に見直す方法もあります。

何年も会計報告がない場合 過去の決算はすべて承認すべきですか?

資料が十分に確認できていない状態で、形式だけを整えて数年分の決算を一括承認することには慎重であるべきでしょう。まず残っている帳簿、通帳、銀行取引、請求書、管理会社の資料などを確認し、どこまで再構成できるのかを整理します。

初回総会では、確認できていない年度について追加調査を行い、改めて報告する方針を決める方法もあります。過去を早く終わらせることより、区分所有者へ説明できる状態にすることが重要です。

総会再開より修繕を先に行う場合はありますか?

あります。外壁の落下危険、重大な漏水、消防設備の安全問題など緊急性が高い場合には、人や建物への被害を防ぐ対応を通常の正常化手順より先に検討する必要があります。

ただし、どこまでを緊急対応として実施できるかは工事内容、管理規約、管理者の権限などによって異なります。高額工事や大きな変更まで「緊急だから」と一括して進めるのではなく、必要な範囲を確認してください。

まとめ 総会再開をゴールにせず管理サイクルを取り戻す

マンションの総会が何年も開催されていないと、役員、会計、名簿、契約、管理規約、修繕という複数の問題が一度に見え、「どこから手を付けても終わらないのではないか」と感じるかもしれません。

しかし、正常化の道筋は整理できます。まず管理規約と最後の総会議事録などから現在地を把握し、次に管理者と招集権を確認したうえで、区分所有者への連絡体制を整え、初回総会によって意思決定を再開します。

その後、会計、管理規約、長期修繕計画、引継ぎを順番に整えていけば、管理組合は「何年ぶりかに一度総会を開けた状態」から「翌年度も継続して管理できる状態」へ移っていきます。

一方で、建物の安全や資金保全について緊急性がある場合には、その問題を通常のロードマップより先に処理する必要があります。総会再開を最優先するという考え方ではなく、緊急対応と組織正常化を別のレイヤーとして整理することが重要です。

管理組合の正常化で本当に取り戻したいのは、総会を開催したという実績ではありません。必要な情報を確認し、適切な手続で決め、その判断を実行し、記録を残して次の年度へ引き継ぐ管理サイクルです。

管理サイクル 必要な情報を確認し 適切な手続で決め その判断を実行し 記録を残して 次の年度へ引き継ぐ

数年間の空白があれば、すぐにすべてが整うとは限りません。それでも、分からない状態を一つずつ事実へ置き換え、適切な手順で意思決定を再開すれば、管理組合は再び自分たちで建物の将来を考えられる状態へ戻していけるでしょう。

参考資料

e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律

法務省 改正法の施行日と経過措置

国土交通省 マンション標準管理規約

国土交通省 マンション標準管理規約改正の公表資料

国土交通省 外部管理者方式等に関するガイドライン

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