マンション管理士

マンションの自主防災組織の作り方 管理組合が進める7つの手順と役割分担

理事になって管理組合の資料を確認したところ、自主防災組織が見当たらない。あるいは、以前に作られた防災委員会の名前だけは残っているものの、現在の担当者や活動内容を説明できる人がいない。そのような状況に気付くと、「もし今夜大きな地震が起きたら、このマンションでは誰が最初に動くのだろう」と不安になるのではないでしょうか。

マンションの自主防災組織づくりで重要なのは、最初から大規模で完成された組織を作ることではありません。現在の管理規約や防災体制を確認し、自分たちのマンションに不足しているものを具体化したうえで、必要な役割を決め、小さく実践しながら改善を積み重ねることです。

都市部では中高層マンションが主要な居住形態の一つとなり、建物の高経年化と居住者の高齢化という「2つの老い」も進んでいます。国土交通省は2024年6月7日のマンション標準管理規約改正に際しても、この「2つの老い」の進行をマンション管理上の課題として明示しました。

さらに2025年10月17日には、改正区分所有法などを踏まえてマンション標準管理規約が改正されています。マンション標準管理規約は、各マンションが管理規約を作成または改正するときに使用するひな型であり、2026年8月現在は令和7年10月17日改正版が掲載されています。

2025年改正で特に確認しておきたいのが、防災に関する説明の具体化です。第32条本文には管理組合の業務として「防災」が位置付けられていますが、防災マニュアルの作成と周知、防災訓練、防災情報の収集と周知、防災用名簿、防災物資等の備蓄といった内容は、第32条関係コメントに具体例として追加されています。管理組合とは別に防災活動へ取り組む組織を設け、その組織が主導する方法も示されました。

したがって、これらが第32条本文へ新たな法的義務として一つずつ追加され、「自主防災組織を作らなければ違法になる」という意味ではありません。

それでも、2026年現在のマンション管理では、防災を年1回の行事として扱うだけではなく、管理組合が平時から継続して考える管理課題として位置付ける必要性が、以前より分かりやすくなったと考えられます。

この記事では、新しく自主防災組織を作ろうとしている管理組合役員と、以前作った組織が形骸化して困っている理事に向けて、必要性、既存組織との違い、7つの作成手順、組織図、役割分担、規約、予算、備蓄、訓練、年間スケジュールまで整理します。

読み終えたとき、次の理事会で何を議題として出せばよいのか判断できる状態になることが、この記事の目的です。

TABLE OF CONTENTS
目次

マンション自主防災組織の作り方を7つの手順で先に確認

詳しい説明へ入る前に、まず自主防災組織を作る流れの全体像を確認しておきます。

何から調べ、どこまで進めればよいのか分からない状態では、防災組織づくりそのものが非常に大きな仕事に見えてしまうからです。先に地図を持っておけば、その後に出てくる規約や役割分担の意味も理解しやすくなります。

手順 管理組合が行うこと この段階のゴール
1 現在の管理規約と防災体制を確認する 何があり何が不足しているか把握する
2 理事会で設置方針を検討する 防災組織の目的と方向性を共有する
3 防災委員会や準備チームを作る 継続して検討する担当者を決める
4 組織図と役割分担を決める 災害時に誰が何をするか明確にする
5 規約と防災計画を整える 組織運営と災害時行動を文書化する
6 予算と備蓄と資機材を決める 必要な活動に合う物と費用を整理する
7 防災訓練を行い毎年見直す 実際に動かして弱点を改善する

この流れを見ると、自主防災組織を作ることが、いきなり規約変更や大量の防災用品購入から始まるものではないことが分かります。

最初に行うのは現在地を確認することです。その結果を理事会で共有し、必要な人を集め、役割を決めた後にルールや予算を整えます。そして最後に訓練で実際に動かし、想定と違った部分を修正します。

この順番を頭に置きながら、まずマンションに共助の仕組みが必要とされる背景から確認していきます。

マンションに自主防災組織が必要とされる理由

大規模地震や集中豪雨などによって地域全体が被災すると、消防、警察、自治体などの公的機関が個々のマンションへ直ちに到着できるとは限りません。

広い地域で火災、建物被害、道路閉塞などが同時に発生すれば、人命危険の大きい現場へ救援資源が優先的に投入されます。そのため、マンション内部で起きている問題については、一定時間、居住者自身で対応せざるを得ない可能性があります。

普段の生活では、設備に異常があれば管理会社へ連絡し、必要に応じて保守会社に対応してもらえます。その経験が積み重なっているほど、「災害のときも管理会社が来てくれるだろう」と考えやすいでしょう。

ところが、大規模災害では道路や公共交通機関が止まり、管理会社の担当者自身も被災する可能性があります。通信障害が起きれば、連絡そのものが取れなくなる場合もあるでしょう。

平常時には見えていなかった「支援が到着するまでの空白」が、災害時には突然現れます。

自主防災組織が必要とされる大きな理由は、この空白を共助によってつなぐことにあります。公助が十分に届くまでの間、自分の安全を自分で守る自助と、マンション内で住民同士が支え合う共助を機能させる仕組みが必要です。

マンションは倒壊しなくても生活機能を失う

マンション防災で見落としやすいのは、建物そのものに重大な損傷がなくても、普段どおりの生活を続けられなくなる可能性があることです。

停電が起きればエレベーターが停止し、高層階との移動が難しくなります。建物によっては給水設備も電力に依存しているため、停電によって断水が発生する可能性もあります。

さらに、排水管が損傷している状態で上階から排水すると、下階で汚水があふれるおそれがあります。そのため、設備の安全が確認されるまで、トイレや生活排水の使用を制限しなければならない場合もあるでしょう。

高層階に住む高齢者にとって、エレベーターの停止は単なる不便ではありません。飲料水を持って長い階段を上ることが難しければ、室内に大きな被害がなくても在宅生活を続けることが難しくなる可能性があります。

ここにマンション特有の防災課題があります。

各家庭が水や食料を備えていても、給排水設備の状況確認、共用部分の安全確認、居住者への情報提供、支援が必要な世帯の把握などは、一世帯だけでは完結しません。

在宅避難を支えるためにも共助が必要になる

建物の安全性が確認でき、火災や重大な損傷などの危険がない場合には、避難所へ移動せず住戸内で生活を続ける在宅避難が選択肢になります。

一方で、マンションだから必ず在宅避難を続ければよいわけではありません。

火災、建物被害、浸水、土砂災害などによってマンション内にとどまることが危険な場合には、建物外への避難が必要になります。その判断を適切に行うためにも、平時からハザードマップや建物の特性を確認しておくことが大切です。

在宅避難が可能な場合でも、生活を続けるには建物全体の情報が欠かせません。

エレベーターの使用可否、給排水設備の状態、共用部分の危険箇所、行政からの情報などを住民へ伝える必要があります。さらに、高齢者、障害のある人、負傷者など、支援を必要とする居住者への対応も考えなければなりません。

自分の住戸に大きな被害がなく、少し安心した後で廊下へ出ると、マンション全体の問題が見えてくることがあります。

そのとき、各世帯がばらばらに判断するより、情報を集めて必要な対応を整理する仕組みがある方が、混乱を抑えやすくなります。

自主防災組織は、居住者だけですべての問題を解決するための組織ではありません。

自分たちでできる初動を行い、自分たちだけでは対応できない問題を消防、自治体、管理会社、保守会社などへ正確につなぐことも重要な役割です。

自主防災組織と管理組合 自治会 防火管理者の違い

自主防災組織の検討を始めると、「管理組合があるのに別の組織が必要なのか」「自治会が防災を担当すればよいのではないか」「防火管理者へ任せれば十分ではないか」という疑問が出ることがあります。

いずれも自然な疑問です。

それぞれの活動内容には重なる部分があるため、違いを整理しないまま話を進めると、設立後に誰が何を担当するのか分からなくなります。

組織や役職 主な位置付け 主な構成 主な役割
管理組合 区分所有者で構成するマンション管理の主体 区分所有者 建物や敷地や附属施設の管理
自治会 原則として任意加入の地域団体 加入した住民 地域交流や生活環境や地域防災
防火管理者 一定の防火対象物で選任義務が生じる法定役職 資格等の要件を満たす者 消防計画や防火管理や消防訓練
自主防災組織 住民が自主的に作る共助組織 居住者など 安否確認や情報共有や救護や生活支援

管理組合は区分所有者によって構成されます。

一方、実際にマンションで災害に遭うのは区分所有者だけではありません。賃借人やその家族も生活しているため、防災活動では管理組合を意思決定や予算管理の軸としながら、居住者が協力できる仕組みを考える必要があります。

ただし、賃借人が管理組合員になるわけではありません。

管理組合の法的な意思決定と、居住者が参加する自主的な防災活動は、区別したうえで連携させる必要があります。

防火管理者と自主防災組織は役割が異なる

防火管理者については、人数基準を正確に理解しておくことが必要です。

消防庁では、防火管理が必要になる防火対象物について、ホテルや飲食店などの特定防火対象物は原則として収容人員30人以上、マンションなどの非特定防火対象物は収容人員50人以上と整理しています。収容人員10人以上という基準は、主として一定の入所型社会福祉施設などに設けられているものです。

したがって、共同住宅のみで構成されるマンションでは、非特定防火対象物として収容人員50人以上が防火管理者選任の一つの基準となります。

一方、店舗や飲食店などが入る複合用途建物では、用途構成、管理権原、収容人員などによって判断が変わり、30人以上の基準が関係する場合があります。ただし、10人以上という基準まで一般的な店舗併設マンションへ一律に適用されるわけではありません。

複合用途建物の判定は分かりにくい場合があるため、自分たちのマンションについて防火管理者の選任義務を判断するときは、所轄消防署へ建物用途や収容人員を伝えて確認する方が確実でしょう。

2025年改正マンション標準管理規約では、第32条の2として防火管理者に関する規定例も設けられました。防火管理者は消防計画を作成し、消火、通報、避難の訓練など、防火管理上必要な業務を担います。

しかし、防火管理者が選任されているからといって、地震発生後のマンション防災まで一人で担えるわけではありません。

大規模地震では、消防計画に基づく防火活動に加えて、住戸の安否確認、設備状況の把握、居住者への情報提供、備蓄品の管理など、多くの活動が同時に必要になる可能性があります。

防火管理者が消防法上の役割を担い、自主防災組織や防災委員会がマンション全体の共助を支えるように役割をつなぐ方が、現実的な防災体制になりやすいでしょう。

自治会がなくても自主防災組織は検討できる

自主防災組織は、自治会や町内会がなければ作れないものではありません。

自治体によっては、マンション管理組合を単位として結成された自主防災組織を、一定の条件のもとで補助制度の対象にしている例があります。

例えば船橋市では、2026年度も、町会や自治会に加入していないマンション管理組合など、所定の条件に該当する管理組合を単位として結成された自主防災組織を補助対象としています。

ただし、この条件は全国共通ではありません。

自治会との関係、必要書類、補助対象品目、補助率などは自治体によって異なるため、所在地の市区町村へ確認する必要があります。

マンションで自主防災組織を作る7つの手順

ここから、冒頭で示した7つの手順を詳しく見ていきます。

自主防災組織を作ろうとすると、規約を作ったり防災用品を購入したりすることが、最初の仕事のように感じられるかもしれません。

しかし、現在の状態を確認しないまま完成形だけを作ると、他のマンションでは使えても、自分たちの建物では機能しない仕組みになる可能性があります。

状況を確認し、自分たちの現在地を振り返り、問題の背景を分析したうえで、必要な行動を決めます。その後に小さく実践し、結果を見て修正するという順番で進めることが重要です。

1 現在の管理規約と防災体制を確認する

最初の仕事は、新しい組織を作ることではありません。

現在のマンションに何があり、何が不足しているのかを把握します。

管理規約、使用細則、直近数年間の総会議事録、理事会議事録、防火管理者の選任状況、消防計画、防災マニュアル、備蓄品一覧、過去の防災訓練記録などを確認してください。

防災倉庫がある場合は、書類だけでなく現物も見ます。

資料には非常用電源が記載されているものの、何年間も動作確認をしていないかもしれません。備蓄一覧と実際の数量が一致していなかったり、組織図に退去した人の名前が残っていたりすることもあります。

以前の理事から「防災組織はある」と聞いていたのに、確認してみると数年間活動記録がない場合もあるでしょう。

その事実を見て、不安になる必要はありません。

問題の存在が見えたことで、「防災対策が何となく不十分」という状態から、「安否確認方法がない」「備蓄一覧が更新されていない」という具体的な課題へ変わります。

設立前チェックリスト

次のチェックリストは、すべてに印を付けるためのものではありません。不足している項目を把握し、理事会で優先順位を付けるために使用します。

  • 管理規約に防災に関する管理組合業務が定められている
  • 防災委員会など専門委員会の設置方法を確認できる
  • 防火管理者の選任状況と届出状況を確認できる
  • 現在有効な消防計画を確認できる
  • 現在の建物設備に対応した防災マニュアルがある
  • 組合員名簿と居住者名簿の整備状況を確認できる
  • 名簿の更新方法と確認時期が決まっている
  • 災害時の安否確認方法が定められている
  • 支援が必要な居住者への対応方針を検討している
  • 個人情報の利用目的と閲覧範囲が決められている
  • 防災倉庫の場所と鍵の管理方法が明確になっている
  • 備蓄品と共用資機材の一覧が作成されている
  • 資機材の点検記録が残っている
  • 過去の防災訓練内容と課題を確認できる
  • 管理会社の災害時対応範囲を確認している
  • 自治体のハザードマップを確認している
  • 指定避難所や地域の防災拠点を把握している
  • 所轄消防署への訓練相談方法を確認している
  • 自治体の自主防災組織制度を確認している
  • 自治体の補助制度や資機材支援制度を確認している

現行標準管理規約では、組合員名簿と居住者名簿についても規定が整備され、名簿を継続的に確認するモデルが示されています。個人情報の中には、災害時の支援に役立つ一方で、取扱いに注意を要する情報もあります。

名簿は存在するだけでは十分ではありません。

情報が現在の居住状況と一致しているか、誰が閲覧できるのか、災害時に何の目的で使用するのかまで整理しておくことで、初めて実務で使える資料になります。

2 理事会で設置方針を検討する

現状を把握したら、理事会の正式な議題として防災体制を取り上げます。

この段階では、いきなり自主防災組織の正式設立まで決めなくても構いません。

ある理事は年1回の防災訓練を思い浮かべ、別の理事は災害時に全住戸を支援する大規模な組織を想像しているかもしれません。

同じ「自主防災組織」という言葉を使っていても、頭の中にある規模や負担が違えば、後になって意見が割れやすくなります。

まず共有したいのは組織名ではなく、自分たちが何を解決したいのかという目的です。

理事会で最初に検討する5項目

検討項目 理事会で確認する内容
防災の基本方針 建物が安全な場合の在宅避難をどこまで想定するか
組織の位置付け 理事会直轄か防災委員会か別組織か
個人情報管理 名簿を誰が何の目的で扱うか
予算方針 初年度の訓練費や資機材費をどう考えるか
総会までの工程 細則や規約や予算をいつ議題化するか

防災の基本方針については、「在宅避難を基本とする」という一言だけで終わらせない方がよいでしょう。

停電した場合に高層階へどう情報を届けるのか、排水管の安全が確認できない段階で誰が排水制限を周知するのかといった実際の場面まで考えると、必要な役割が見えてきます。

組織の位置付けについても、最初から独立した自主防災組織を作ることだけが正解ではありません。

現行標準管理規約第55条では、理事会がその責任と権限の範囲内で専門委員会を設け、特定の課題を調査または検討させることができるモデルになっています。

したがって、まず防災準備委員会を設けて現状調査を行い、その結果を踏まえて正式な体制を検討する方法も考えられます。

最初の理事会で完成形まで決める必要はありません。

今年度は現在の防災体制を確認し、改善案を作るところまで進めると合意できれば、十分に具体的な一歩になります。

3 防災委員会や準備チームを作る

管理組合の理事は、防災だけを担当しているわけではありません。

修繕、管理会社との調整、駐車場、滞納、騒音、設備故障など、通常の管理業務だけでも多くの課題があります。その中で自主防災組織を一から設計しようとすると、防災が重要だと分かっていても後回しになる時期が出てきます。

さらに理事の任期が1年や2年の場合には、ようやく防災の内容を理解したころに交代することもあります。

前年度の担当者だけが消防署との連絡方法を知り、新年度になるとまた最初から調べ直す状態が続けば、活動が形骸化する原因は個人の意識だけではありません。

知識を残す仕組みが不足しています。

そこで、理事会の下に防災委員会や準備チームを設け、継続して防災を扱える体制を作ります。

最初から大人数を集める必要はありません。

理事、防火管理者、過去の理事経験者、防災に関心のある居住者など数名から始め、必要に応じて参加者を増やします。

医療、介護、建築、設備などの経験を持つ人がいれば、その知識は有効に生かせるでしょう。

一方で、資格のある人だけを集める必要はありません。

住民への声掛けが得意な人、資料整理が得意な人、平日日中に在宅することが多い人などにも、それぞれ役割があります。

「専門知識がない自分には関係ない」と感じる人を減らすことが、組織を継続しやすくする一つの条件です。

委員の任期も工夫できます。

理事と同じ時期に全員が交代するのではなく、複数年任期として毎年一部を入れ替えれば、経験者が残った状態で引継ぎを行えます。

4 組織図と役割分担を決める

準備チームができたら、災害時に必要になる仕事を整理し、組織図へ落とし込みます。

ここでは、役職名を先に増やさないことが大切です。

他のマンションの組織図をそのまま持ってくると、自分たちには不要な班が増えたり、本当に必要な役割が抜けたりする可能性があります。

100戸と500戸では必要な体制が違いますし、一棟型と複数棟型でも安否確認や情報収集の方法は変わります。

災害時に必要となる仕事から逆算して役割を決めます。

自主防災組織の組織図例

組織や班 主な役割
災害対策本部 被害情報の集約と全体調整
情報連絡班 行政情報や建物情報の収集と周知
安否確認班 各住戸の安否確認と集計
救出資機材班 共用資機材の搬出と安全な範囲での支援
避難支援救護班 負傷者や支援が必要な人への初期対応
設備確認担当 給排水や電気やエレベーター等の情報確認
物資担当 共用備蓄や支援物資の管理

小規模マンションなら、一人が複数の担当を兼ねても構いません。

反対に大規模マンションでは、棟別責任者や階別担当者を設けなければ、本部だけで短時間に全住戸の状態を把握することが難しくなります。

組織図が完成したら、主要な担当者が不在の場合についても確認します。

災害は理事長や防災委員長がマンション内にいる時間に発生するとは限りません。

本部長が不在なら誰が代行するのか、正式な担当者が集まらない場合にどこまで活動を開始できるのかを決めておけば、初動が特定の人物の到着だけに左右されにくくなります。

5 規約と防災計画を整える

役割分担が見えた段階で、組織を継続して運営するためのルールを文章にします。

ここでは、組織運営を定める防災細則や防災委員会細則と、実際の災害対応を定める防災計画や防災マニュアルを分けて考えると整理しやすくなります。

防災細則では、組織の目的、委員の選任方法、任期、会議、予算、活動範囲などを定めます。

防災マニュアルでは、発災直後の安全確保、本部設置、安否確認、設備情報の確認、情報共有、救護など、実際の行動を整理します。

二つを一つの長い文書へ詰め込むと、災害時に必要な情報を探しにくくなる場合があります。

詳細版マニュアルとは別に、各担当者が最初に確認する内容をA4判一枚程度へまとめたアクションカードを作る方法も考えられます。

安否確認担当であれば、担当区域、確認方法、本部への報告方法までを一枚で確認できるようにします。

防災マニュアルは厚ければよいのではなく、緊張している状況でも次に取るべき行動が分かることが重要です。

防災細則の制定は現在の管理規約を確認する

防災細則の制定について、「全国のマンションで必ず同じ決議方法になる」と考えないことが重要です。

マンション標準管理規約と同様の規定を採用しているマンションでは、規約や使用細則等の制定、変更、廃止は総会で扱う事項になります。

そのため、標準管理規約と同様の定めがあるマンションで防災細則を制定する場合には、理事会で原案を検討した後、総会へ上程する流れが基本となるでしょう。

ただし、実際の手続は、そのマンションで現在有効な管理規約を確認して判断します。

一方、単に防災に関する調査や検討を行う専門委員会を設ける場合には、理事会の責任と権限の範囲内で始められる可能性があります。

重要なのは、「防災委員会なら理事会だけですべて決められる」「自主防災組織なら必ず総会決議が必要」と名称だけで判断しないことです。

組織へ与える権限、予算、細則制定の有無などを確認して手続を決めます。

2026年の規約変更は改正区分所有法を確認する

管理規約本体を変更する場合には、2026年4月1日に施行された改正区分所有法への対応が必要です。

ここでは用語の混同を避けるため、区分所有法上の説明では「区分所有者」、マンション標準管理規約の条文を説明する場面では「組合員」と記載します。

国土交通省は、2026年4月1日以降に規約改正に係る総会の招集手続を開始する場合、改正区分所有法と抵触する従来の規約規定については、施行後に効力を失い、改正法に従って議事を行う必要があると案内しています。

この場合、規約変更については、区分所有者総数と議決権総数の各過半数の出席を定足数とし、集会に出席した区分所有者とその議決権の各4分の3以上で決する仕組みになっています。

そのため、古い管理規約に従来の定足数や決議要件が記載されているからといって、その内容をそのまま使えるとは限りません。

現在の管理規約を確認しつつ、改正区分所有法と抵触する部分については改正法に従う必要があります。

自主防災組織づくりに合わせて管理規約本体も見直す場合には、特に注意したい点です。

6 必要な予算と備蓄と資機材を決める

自主防災組織の検討が具体化すると、何を購入するかという話へ進みやすくなります。

目に見える資機材が増えると対策が進んだ実感を持ちやすいため、カタログから必要そうな物を選びたくなる気持ちも理解できます。

しかし、先に購入品を決めると、数年後に防災倉庫の奥で使われない資機材が増える可能性があります。

非常用電源を導入する場合には、本体を購入するだけでなく、どの機器へ使用するのか、操作方法を誰が把握するのか、どの周期で充電や動作確認を行うのかまで運用を決めておきます。

救出工具についても同じです。

バールやジャッキなどを持っていることと、安全な救出活動ができることは同じではありません。

訓練で使用方法を確認しつつ、火災、倒壊、ガス漏れなどの危険がある現場では、住民だけで無理に活動しないという限界も共有する必要があります。

簡易トイレについても、各家庭で携帯トイレを使用するのか、管理組合として共用分を備えるのかによって、必要数量や保管方法が変わります。

このように考えると、備蓄や資機材の選定は単なる買い物ではありません。

災害時の行動計画を、物の面から実行可能にする作業です。

管理組合で検討しやすい共用防災資機材

分野 主な資機材 導入時に確認する内容
救出支援 バールやジャッキや工具 使用者と安全管理と保管場所
停電対策 LED照明や蓄電池やヘッドライト 充電方法と動作点検
衛生対策 簡易トイレ用品や消毒用品 数量と使用場所と廃棄方法
情報伝達 トランシーバーやメガホン 通信範囲と保管場所
本部運営 ホワイトボードや掲示用品 本部候補場所と搬出方法
安否確認 安否確認カードやマグネット 全戸への周知と集計方法

水や食料については、各家庭が担う自助備蓄と、管理組合が担う共用備蓄を分けて考えます。

全住戸に必要な水や食料を管理組合だけで長期間分確保しようとすると、大きな保管場所と継続的な更新費用が必要になります。

そこで、家庭備蓄を基本として居住者へ周知しながら、管理組合では照明、通信、救出、衛生など、各家庭だけでは備えにくい共用資機材を補完する考え方があります。

もちろん、管理組合が食料や保存水を備蓄してはいけないという意味ではありません。

戸数、倉庫の広さ、予算、居住者構成などに応じて、自助と共助の範囲を決めることが重要です。

管理費と修繕積立金を分けて考える

通常の防災訓練費や防災用品の購入について、修繕積立金があるからそこから支出すればよいと判断するのは慎重であるべきでしょう。

現行標準管理規約では、管理費と修繕積立金について使途が分けられています。

通常の防災活動や備品購入については、管理組合の通常業務として管理費会計で予算化する方が整理しやすい場合があります。

一方、防災に関係する支出なら修繕積立金を一切使用できないと断定することも適切ではありません。

共用部分の改良や修繕など、工事や支出の内容によって修繕積立金の使途に該当する可能性があります。

平時の訓練用品購入と、災害後の共用部分の緊急修繕を同じものとして考えないことが重要です。

実際の支出では、現在の管理規約、予算、支出目的を確認したうえで判断します。

自治体の補助制度は購入前に確認する

自主防災組織への助成制度は、自治体によって大きく異なります。

例えば船橋市では、2026年度も一定の条件を満たすマンション管理組合を単位として結成された自主防災組織を補助対象としています。

活動補助金については、防災資機材購入費の3分の2と、世帯数に応じて定められた上限額を比較し、低い方を補助する制度が案内されています。

ただし、船橋市の条件を他の自治体へそのまま当てはめることはできません。

組織認定の要件、対象となる資機材、補助率、申請時期などは地域によって異なります。

特に、購入前の申請や自主防災組織としての認定が必要な制度では、資機材を購入した後で制度を知っても対象にならない可能性があります。

そのため、予算案や購入候補を固める前に、市区町村の防災担当部署へ確認します。

7 防災訓練を行い毎年見直す

組織図を作り、規約を整え、必要な資機材までそろえると、ひとまず防災体制が完成したように感じます。

しかし、紙の上で成立している仕組みと、災害時に実際に動く仕組みは同じではありません。

その違いを確認するために、防災訓練を行います。

安否確認訓練を行うと、住民がカードの掲示方法を十分に理解していなかったり、階別担当者から本部への報告方法が統一されていなかったりすることがあります。

購入したトランシーバーも、実際に使うことで、地下と高層階では通信しにくいと分かる場合があります。

その結果を単なる失敗として捉える必要はありません。

本番ではなく訓練で問題を発見できたのであれば、その弱点は改善できます。

最初から全住戸参加の大規模訓練を実施する必要もないでしょう。

例えば最初の年度は、指定した時刻に安否確認カードを玄関前へ掲示してもらい、全体状況を把握するまでに何分かかったかを確認するだけでも実践的です。

翌年度に確認時間が短縮したのであれば、防災体制が改善したことを具体的に確認できます。

訓練の目的はイベントを無事に終えることではありません。

実際に動かし、想定と現実のずれを見つけ、次回までに直すことです。

自主防災組織の年間スケジュール

自主防災活動を継続するためには、担当者個人の熱意だけへ依存しない仕組みが必要です。

設立した年は熱心に活動していても、翌年の担当者が「今年は何をすればよいのだろう」と感じれば、活動は止まりやすくなります。

そこで、通常の管理組合運営と同じように、一年間の基本的なサイクルを決めておきます。

時期 主な活動 運用上のポイント
4月 新年度体制と引継ぎ 委員名簿や鍵や資料の所在を確認
5月 防災倉庫点検 備蓄数量と資機材の動作を確認
6月 名簿確認 居住情報や連絡方法を確認
7月から8月 防災訓練の企画 自治体や消防署へ相談
9月から10月 防災訓練 安否確認や初期対応を実践
11月 訓練の振り返り 課題と改善策を整理
1月 次年度計画 訓練内容や購入品を検討
2月から3月 予算と総会準備 事業計画や予算案へ反映

年度初めの引継ぎでは、資料を渡すだけで終わらせないことが大切です。

新しい担当者が実際に防災倉庫を開け、防災マニュアルや消防計画の保管場所まで確認すれば、「書類上は引き継いだが誰も場所を知らない」という状態を防ぎやすくなります。

秋の訓練後には、そこで判明した問題を翌年度の予算や活動計画へ反映します。

この流れができれば、訓練後の反省が議事録の中に埋もれません。

翌年に改善結果を確認するところまでが、一つの防災活動になります。

自主防災組織の役割分担例

災害時には、普段なら簡単にできる判断でも難しくなります。

余震が続き、停電している状況で複数の住民から相談を受ければ、理事長や防災委員長一人だけで情報を処理することは困難です。

そこで役割を分けます。

目的は役職名を増やすことではなく、一人のところへ情報と作業が集中しない仕組みを作ることです。

災害対策本部

災害対策本部は、マンション内の被害情報を集約し、全体を調整します。

平時には防災計画、予算、訓練などを調整し、災害時には各班から集まる情報を整理して、消防、自治体、管理会社など外部機関との連絡を行います。

本部長が不在の場合でも活動を開始できるよう、代行順位を決めておくことが必要です。

情報連絡班

情報連絡班は、マンション内部の被害情報と外部から得た情報を整理し、居住者へ伝えます。

災害直後は情報が少ないため、確認されていない話が広がりやすくなります。

情報源と確認時刻を記録し、確定している内容と未確認の内容を分ける仕組みを作ります。

オンラインの連絡手段だけでは停電や通信障害に弱いため、紙の掲示、館内放送、メガホンなども組み合わせます。

安否確認班

安否確認班は、各住戸の状況を確認して本部へ集約します。

安否確認カードやマグネットを使用する場合は、無事な住戸を確認するだけではなく、未確認住戸と救助要請がある住戸を分けて把握します。

その情報があれば、限られた人員を対応の必要性が高い場所へ振り分けやすくなります。

救出資機材班

救出資機材班は、共用資機材を管理し、必要な場所へ搬出します。

平時には工具、照明、蓄電池などを点検し、実際に使用できる状態を維持します。

ただし、危険な現場へ住民だけで立ち入り、本格的な救出活動を行うことまで役割にする必要はありません。

火災、建物倒壊、ガス漏れなどの危険が疑われる場合には、自分たちだけで解決しようとせず消防等へつなぎます。

避難支援救護班

避難支援救護班は、負傷者への初期対応や、移動に支援が必要な居住者への対応を担います。

平時には救急用品の場所を確認し、可能であれば応急手当やAEDに関する講習へ参加しておくとよいでしょう。

支援を必要とする人に関する情報を扱う場合は、誰が閲覧できるのか、災害時にどのような目的で利用するのかを明確にしておきます。

設備確認担当

設備確認担当は、電気、給排水設備、エレベーターなどについて、管理会社や保守会社から情報を確認します。

住民自身が専門的な修理や点検を行う役割ではありません。

専門家から得た設備情報を本部へ伝え、必要な注意事項を住民へ周知する橋渡し役になります。

物資担当

物資担当は、管理組合の備蓄品や外部から届いた支援物資を管理します。

平時には数量や使用期限を確認し、災害時には必要性を考えながら配分します。

物資が不足する状況では、単純な先着順が適切ではない場合もあります。

救護や衛生など緊急性の高い用途があることを想定し、基本的な配分方針を平時に考えておくと混乱を抑えやすくなります。

よくある失敗と自主防災組織を形骸化させないポイント

自主防災組織で難しいのは、組織を作ることよりも、数年後まで活動を続けることかもしれません。

設立年度は住民の関心も高く、担当者も熱心に活動していたのに、数年後には委員名簿が古くなり、防災倉庫の中身も分からなくなることがあります。

そのような形骸化を、単純に「住民の防災意識が低いから」と考えてしまうと、原因を見失います。

続けにくい仕組みそのものに問題がないかを振り返る必要があります。

理事の交代で知識が途切れる

輪番制の理事だけで防災を担当すると、役員交代のたびに知識が失われやすくなります。

防災倉庫の鍵、消防署への連絡方法、資機材の点検時期などを前年度担当者しか知らなければ、新年度の理事は毎年同じところから確認しなければなりません。

防災委員の任期を理事会とずらしたり、毎年一部だけを交代させたりする方法を検討すると、知識を残しやすくなります。

資料についても担当者個人のパソコンだけに保存せず、管理組合として保管場所を決めます。

ただし、居住者名簿など個人情報を含む資料については、一般の防災資料とはアクセス権限を分けて管理する必要があります。

分厚いマニュアルが現場で使われない

防災マニュアルを丁寧に作ろうとすると、内容は増えていきます。

地震、火災、風水害、安否確認、備蓄、設備、救護まで入れれば、数十ページになることも珍しくありません。

詳しい資料を残すことには意味がありますが、発災直後に最初からすべて読むことは現実的ではないでしょう。

詳細版とは別に担当者向けのアクションカードを作り、訓練で実際に使います。

読みにくかった場所や判断に迷った部分を修正していけば、マニュアルは毎年少しずつ現場に合ったものになります。

毎年同じ訓練だけを繰り返す

毎年同じ場所へ集合し、同じ説明を聞くだけの訓練では、住民に「今年も同じ内容だろう」という感覚が生まれやすくなります。

参加率が低い場合には、住民の関心だけを問題にするのではなく、参加する意味を感じられる訓練かどうかを確認します。

ある年は安否確認を中心にし、翌年は携帯トイレ、その次は停電時の情報共有を扱うなど、テーマを変える方法があります。

規模の大きさだけで訓練の価値は決まりません。

前年に発見した問題を一つ改善できたのであれば、その訓練には十分な意味があります。

防災に詳しい人だけへ負担を集中させる

防災士、元消防関係者、医療従事者、設備に詳しい人などが居住していると、知識を頼りたくなるのは自然なことです。

ただし、その人しか資機材を扱えない、あるいはその人しかマニュアルを理解していない状態では、本人が不在の災害に弱くなります。

詳しい人には、活動をすべて任せるのではなく、知識を他の委員へ伝えてもらう方が組織全体の対応力を高めやすくなります。

例えば非常用電源を扱える人が一人から複数人へ増えれば、担当者の負担も軽くなり、災害時の選択肢も増えます。

備蓄品を一度に大量購入する

保存水や非常食を同じ年度に大量購入すると、数年後に更新時期が一斉に訪れる可能性があります。

その年度だけ大きな予算が必要になり、期限切れ品の処分にも手間がかかります。

管理組合で食品を備蓄する場合には、購入時期を分散したり、期限が近い物を訓練時に配布したりする方法があります。

家庭備蓄を基本とし、管理組合では照明、通信、衛生、救出資機材など共用性が高いものを重点的に準備する考え方もあります。

どちらか一方に統一する必要はありません。

各家庭が担う自助と、管理組合が補完する共助の境界を決めることが重要です。

活動の成果を記録していない

防災活動は、災害が起こらなければ成果を実感しにくい分野です。

そのため、数年間続けるうちに「毎年同じことをしているだけではないか」と感じる人も出てきます。

安否確認が終わるまでの時間、訓練参加住戸数、確認できなかった住戸数、資機材を操作できる人の人数などを記録すれば、前年との変化が見えるようになります。

前年は全体確認まで40分かかったものが今年は30分になったのであれば、それは具体的な改善です。

前年は全体確認まで 40分 今年は 30分
前年は全体確認まで40分かかったものが今年は30分になったのであれば、それは具体的な改善です。

活動をいくつ増やしたかではなく、前年の問題をどこまで改善できたかを見ることが、継続する動機になります。

マンション管理士に相談できること

自主防災組織づくりを進めると、防災そのものより管理組合としての手続で迷う場面が出てきます。

防災委員会を理事会で設置できるのか、防災細則を総会へ出す必要があるのか、管理規約本体を変える必要があるのか、予算をどのように扱うのかといった問題です。

こうした内容は、防災だけではなくマンション管理の問題でもあります。

マンション管理士には、現在の管理規約と防災体制の関係、防災委員会の位置付け、防災細則案、総会上程事項、会計上の論点などについて相談できます。

特に2026年現在は改正区分所有法が施行済みであるため、管理規約を変更する場合には新しい総会手続との整合性も確認する必要があります。

一方、消防法上の個別判断については所轄消防署、建物や設備の専門的な安全判断については建築士や設備会社など、内容に応じた相談先があります。

マンション管理士だけですべてを解決するのではなく、管理組合側の論点を整理し、必要な専門家や行政機関へつなぐ役割として活用する方が実務的でしょう。

相談前には、管理規約、使用細則、直近の総会議事録、防災マニュアル、消防計画、備蓄一覧などを準備しておくと話が進みやすくなります。

すべての資料がそろっていない場合でも、「何が足りないのか分からない」という状態そのものを相談の出発点にできます。

マンション自主防災組織のよくある質問

自主防災組織と管理組合は別組織にする必要がありますか

必ず別組織にする必要はありません。

2025年改正マンション標準管理規約の第32条関係コメントでは、防災マニュアル、防災訓練、防災情報、防災用名簿、防災物資等の備蓄などについて、管理組合が取り組む方法だけでなく、別の防災組織を設け、その組織が主導する方法も示されています。

小規模マンションでは理事会の下に防災委員会を置く方法が運営しやすい場合があります。

一方、大規模マンションや賃貸住戸が多いマンションでは、居住者参加を広げるため別組織とする方が活動しやすい可能性もあります。

名称よりも、実際に継続して活動できる仕組みかどうかで判断します。

防災委員会だけでは不十分ですか

防災委員会という名称だから不十分になるわけではありません。

平時の訓練、備蓄、情報整理、防災計画の見直しなどを継続し、発災時に一般居住者がどのように協力するのかまで決めているのであれば、防災委員会を中心とした体制も考えられます。

一方、数人の委員しか内容を知らず、他の居住者が災害時に何をすればよいか分からない状態では、実動面に課題が残るでしょう。

自主防災組織の設置に総会決議は必要ですか

一律に必要とはいえません。

現行標準管理規約第55条では、理事会が責任と権限の範囲内で専門委員会を設置できるモデルになっています。

したがって、既存規約や予算の範囲内で調査や検討を行う防災準備委員会であれば、理事会決議から始められる可能性があります。

一方、防災細則の制定などについては、標準管理規約と同様の定めがあるマンションでは総会決議事項となります。

組織の名称だけで決めず、現在の管理規約、予算、委員会へ与える権限を確認してください。

自治会がないマンションでも作れますか

自治会がないマンションでも、自主防災組織を検討できます。

実際にマンション管理組合を単位として結成された自主防災組織を、一定条件のもとで補助対象としている自治体もあります。

ただし、認定要件や補助制度は自治体によって異なるため、所在地の市区町村へ確認する必要があります。

防火管理者と自主防災組織は何が違いますか

防火管理者は消防法に基づく役職であり、一定規模の防火対象物で選任が必要になります。

共同住宅などの非特定防火対象物では原則として収容人員50人以上が一つの基準となり、店舗等を含む特定防火対象物では30人以上の基準が関係する場合があります。10人以上の基準は主として一定の入所型福祉施設等に関するものです。

自主防災組織は、地震などを含む災害時に、安否確認、情報共有、救護、生活支援などを行う住民主体の共助の仕組みです。

両者を競合させるのではなく、防火管理者の法定業務と自主防災活動を連携させることが重要です。

マンション管理士にはどこまで相談できますか

管理規約、防災細則、理事会と総会の役割、予算、組織の位置付けなど、管理組合運営に関係する内容を相談できます。

一方、消防法上の具体的な判断は消防署、設備の技術的な安全性は建築や設備の専門家など、それぞれ適切な相談先へ確認する必要があります。

次の理事会で最初にやること

この記事を読み終えたときに、「では次の理事会で何を提案すればよいのか」が曖昧なままでは、実際の防災体制づくりにはつながりません。

最初から「自主防災組織の設立承認」を議題にする必要はないでしょう。

準備がない状態で正式設立まで求めると、他の理事から予算、役割、総会決議、居住者参加について質問されたときに答えられず、話が止まる可能性があります。

最初の議題としては、「当マンションの防災体制の現状確認について」とする方法があります。

そこで、管理規約、防火管理者、消防計画、防災マニュアル、居住者名簿、備蓄品、過去の訓練記録を確認します。

一度の理事会ですべてを調べる必要はありません。

不足している資料について担当者を決め、次回までに確認します。

防災倉庫の中身が分からないのであれば一覧を作り、安否確認方法が決まっていないのであれば次の訓練テーマとして検討します。

消防計画と現在の組織が一致していないことが分かったなら、その修正方法を確認します。

こうして一つずつ問題を具体化すれば、「自主防災組織を作る」という大きな課題が、理事会で処理できる仕事へ変わります。

最初の理事会で必要なのは、完成した組織図ではありません。

自分たちの現在地を共有し、次に確認することを決めることです。

まとめ

マンションの自主防災組織づくりでは、最初から大規模な組織を立ち上げたり、大量の防災用品を購入したりする必要はありません。

まず現在の管理規約、防火管理者、消防計画、防災マニュアル、名簿、備蓄、訓練実績を確認し、自分たちのマンションに不足しているものを具体化します。

その結果を理事会で共有し、防災委員会や準備チームを作り、役割、ルール、予算、資機材を整えます。その後に実際の訓練で仕組みを動かし、見つかった問題を翌年度へ反映していくことが重要です。

2026年8月現在、現行マンション標準管理規約では、第32条関係コメントに、防災マニュアル、防災訓練、防災情報、防災用名簿、防災物資等の備蓄などが、防災関係業務の具体例として示されています。これらは第32条本文へ新たな法的義務として一つずつ追加されたものではありません。

また、管理規約本体を変更する場合には、2026年4月1日に施行された改正区分所有法を踏まえる必要があります。2026年4月1日以降に規約変更総会の招集手続を開始する場合、改正法と抵触する従来規約の定足数や決議要件については、改正法に従って手続を行わなければなりません。

自主防災組織を作る本当の目的は、組織名や役職表を完成させることではありません。

災害が起きたときに、居住者が「誰が何をすればよいのか分からない」という時間を減らすことです。

まず状況を確認し、問題の背景を整理し、できることを一つ実践します。そして、その結果を確かめて次の改善へつなげる。

まず状況を確認し 問題の背景を整理し できることを一つ実践します その結果を確かめて次の改善へつなげる
まず状況を確認し、問題の背景を整理し、できることを一つ実践します。そして、その結果を確かめて次の改善へつなげる。

この積み重ねが、形だけではないマンションの自主防災組織を育てていきます。

参考資料

国土交通省の現行マンション標準管理規約と改正情報
国土交通省 マンション標準管理規約

2024年6月改正とマンションを巡る2つの老い
国土交通省 2024年6月マンション標準管理規約改正

2025年10月改正の概要
国土交通省 2025年10月マンション標準管理規約改正

防災関係業務や総会決議要件などの改正内容
国土交通省 令和7年マンション標準管理規約改正説明資料

2026年4月1日以降の管理規約変更手続
国土交通省 管理規約改正を行う場合の手続の留意点

防火管理者の30人基準 50人基準 10人基準
総務省消防庁 防火管理制度の概要

2026年度の自主防災組織補助制度例
船橋市 自主防災組織補助金交付制度

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