マンション管理士

マンションの災害時の安否確認はどうする? 管理組合が平常時に決めておきたい仕組みと手順

大きな地震が起きたあと、管理組合の役員が最初に迷いやすいのは、「どの住戸から確認すればよいのか」「集めた情報を誰へ渡せばよいのか」という初動の部分です。普段なら理事会で落ち着いて話し合えることでも、余震が続き、停電や通信障害が起きている状況では、簡単な判断さえ難しくなることがあります。

隣の住戸から物音がしないと、「無事なのだろうか」と気になるでしょう。高齢の居住者がいる階を思い出し、「確認へ行ったほうがよいのではないか」と焦る人もいるかもしれません。しかし、誰が何を確認するのか決まっていなければ、複数の人が同じ住戸を確認する一方で、誰にも確認されない住戸が残る可能性があります。

マンションの災害時の安否確認で重要なのは、発災してから善意だけで動くことではありません。平常時に安否確認を開始する条件、居住者が自分の状態を知らせる方法、確認を担当する人、情報を集める場所、未確認住戸や支援を必要とする住戸への対応までを一つの仕組みとして決めておくことです。

この記事では、まだ安否確認体制を整備していない管理組合の理事長、理事、防災担当者を想定し、最初に決めたい事項から具体的な安否確認フローまで整理します。そのうえで、安否確認カード、フロア担当者、災害対策本部、居住者名簿や要配慮者情報、防災訓練について確認し、読了後に自分たちのマンションで実際の検討を始められる状態を目指します。

TABLE OF CONTENTS
目次

マンションの災害時安否確認で最初に決める5項目

安否確認について調べている管理組合が最初に知りたいのは、制度の理念よりも「結局何を決めればよいのか」ではないでしょうか。

安否確認カードを購入したり、立派な防災マニュアルを作ったりしても、発災後に誰が動き、情報がどこへ集まるのか分からなければ制度は機能しません。そこで、これから安否確認体制を整える場合は、まず次の5項目を管理組合で整理します。

決める項目 管理組合で検討する内容 実務上のポイント
発動条件 どのような地震や被害で安否確認を開始するか 特定の役員が不在でも判断できる基準を考える
安否表示 居住者が自分の無事や支援の必要性をどう知らせるか カードやマグネットなど簡単に使える方法を選ぶ
確認担当 各住戸の安否表示を誰が確認するか 担当者不在時の代理方法まで決める
情報集約 確認結果を誰がどこへ集めるか 階別シートから本部の総括表まで情報を一本につなぐ
次の対応 未確認住戸や支援必要住戸をどう扱うか 未確認を不在と断定せず再確認や救護へつなぐ

この5項目を決めると、安否確認制度の骨格が見えてきます。

基本となる流れは、発災と身の安全確保 → 各住戸で安否表示 → 担当者による各戸確認 → 階別安否確認シートへ記録 → 災害対策本部へ提出 → 安否確認総括表へ集約 → 未確認住戸の再確認と支援必要住戸への対応です。

発災と身の安全確保 各住戸で安否表示 担当者による各戸確認 階別安否確認シートへ記録 災害対策本部へ提出 安否確認総括表へ集約 未確認住戸の再確認と支援必要住戸への対応
基本となる流れは、発災と身の安全確保 → 各住戸で安否表示 → 担当者による各戸確認 → 階別安否確認シートへ記録 → 災害対策本部へ提出 → 安否確認総括表へ集約 → 未確認住戸の再確認と支援必要住戸への対応です。

荒川区のマンション防災に関する資料でも、安否確認シートや安否確認総括表などを防災マニュアルの構成項目として位置付けています。住戸ごとに得た情報を担当者の手元だけに残さず、対策本部へ集約する考え方が実務上の重要なポイントになります。

ここまでを見ると、「想像していたより決めることが多い」と感じる人もいるでしょう。しかし、一度の理事会ですべてを完成させる必要はありません。まず5項目の骨格を決め、その後の訓練で不足している部分を見つけて補っていくほうが、現実のマンションで動かしやすい制度になります。

マンションで災害時の安否確認制度が必要になる理由

建物が倒壊を免れてもマンションの生活機能は止まり得る

マンション防災を考えるとき、建物そのものが倒壊するかどうかだけに目を向けると、発災後に起こる問題を十分に捉えられません。

東京都のマンション防災ガイドブックでは、建物自体が損傷を免れた場合であっても、停電や断水、エレベーター停止などのライフライン途絶によって、自宅での生活が困難になる場合があると説明されています。

外から見ると建物に大きな変化がなくても、内部では生活環境が一変している可能性があります。停電によって照明や設備が使えなくなり、断水すれば飲料水だけでなくトイレの利用にも影響するでしょう。高層階では、エレベーターが停止しただけでも地上との往復が大きな負担になります。

専有部分では家具や家電が転倒し、居住者がけがをしているかもしれません。玄関までの動線が塞がれて室内から出られない場合もあります。

それでも共用廊下から住戸内の状態は見えません。

「建物は立っているから、おそらく住民も大丈夫だろう」と考えたくなる気持ちは自然です。しかし、外観だけでは判断できないからこそ、各住戸から安否情報を外へ出す仕組みが必要になります。

玄関扉の向こうにいる居住者の状態は分かりにくい

マンションでは、住戸ごとに生活空間が独立しています。普段はプライバシーを守る構造ですが、災害時には室内で起きた異変を周囲が察知しにくいという側面があります。

家具が倒れて居住者が動けなくなっていても、共用廊下から見えるとは限りません。玄関付近が塞がれていれば、本人に意識があっても外へ出ることが難しくなるでしょう。

東京消防庁もマンションの地震対策として、居住者間で安否確認できる仕組みを作ることの重要性を示しています。

廊下が静かだからといって、その階の居住者全員が無事とは判断できません。一方、無事な居住者が自分から状態を表示すれば、担当者は表示のない住戸へ注意を向けられます。

安否確認制度には、「外から分からない」というマンションの特性を、居住者自身の情報発信によって補う意味があります。

全住戸を訪問する方法だけでは担当者の負担が大きい

安否確認制度がなければ、理事や防災担当者が一戸ずつ玄関を回り、インターホンを押し、返答がなければ声をかけることになるでしょう。

小規模なマンションでは対応できる場合もあります。しかし、住戸数が100戸や200戸になれば、確認する人の負担は急激に大きくなります。

エレベーターが停止していれば、階段を何度も上り下りしなければなりません。余震への不安も残っています。

そのような状態で「早く全部の部屋を見なければ」と焦れば、確認した住戸を記録し忘れたり、別の担当者と同じ住戸を重複して確認したりすることもあるでしょう。反対に、お互いが「誰かが見ただろう」と思い込み、確認されない住戸が残る可能性もあります。

そこで、無事な居住者には自分から安否表示を出してもらい、担当者は表示がない住戸や支援が必要な住戸へ時間を使います。

制度を作る目的は、居住者同士の助け合いを形式化することではありません。限られた人員と時間の中で、助けが必要な場所を見つけやすくすることにあります。

管理会社がすぐ来ることだけを前提にしない

防災について理事会で話すと、「管理会社や管理員が対応してくれるのではないか」という意見が出ることがあります。

日常のマンション管理を委託している以上、そう考えたくなるのは当然でしょう。

しかし、管理会社が災害時に行う業務は、それぞれのマンションで締結している管理委託契約や仕様書によって異なります。

国土交通省が示すマンション標準管理委託契約書には、地震などによって緊急に必要となる業務に関する規定があります。ただし、この標準的な規定から全住戸への安否確認まで当然に管理会社へ委託されていると判断することはできません。

さらに、大規模災害では管理員や管理会社の担当者自身も被災します。交通網が停止すれば、担当者がマンションへ到着できない状況も考えられるでしょう。

管理会社を頼らないという意味ではありません。

平常時に自分たちの管理委託契約を確認し、管理会社が来るまで居住者側で行う初動と、その後に管理会社へ引き継ぐ業務を分けておくことが大切です。

「管理会社が来てくれると思っていたので、誰も確認を始めなかった」という空白を作らないことが重要になります。

安否情報は救助や支援へつなぐために集める

安否確認の目的は、無事な住戸の数を数えて一覧表を完成させることではありません。

現在の状態が分からない住戸と、支援を必要としている住戸を見つけ、次の対応へ情報を渡すことが本来の目的です。

例えば「上の階に困っている人がいるようです」という情報だけでは、何を優先すればよいのか判断しにくいでしょう。

一方で、住戸番号、確認時刻、本人から聞き取れた状況などが整理されていれば、災害対策本部や消防などへより具体的に伝えることができます。

安否確認は点呼ではありません。

居住者の状態を見えるようにして、必要な共助や公助へ橋渡しする情報活動と考えると、その役割が分かりやすくなります。

マンション災害時の安否確認基本フロー

発災後は自分と家族の安全を確保してから動く

フロア担当者などの役割を引き受けている人ほど、大きな地震が起きると「担当階を確認しなければ」と焦ることがあります。

責任感が強い人ほど、自分のことを後回しにしてしまうかもしれません。

しかし、安否確認より先に必要なのは、自分自身と家族の安全確保です。

共用廊下にはガラス片や落下物が散乱している場合があります。余震によって物が落ちてくる可能性も残っているでしょう。

確認担当者が無理をして負傷すれば、助けを必要とする人が一人増えてしまいます。

そのため、防災マニュアルには確認方法だけでなく、担当者自身の安全を優先することも明記します。安否確認は危険を冒してでも遂行する任務ではなく、安全に行動できる範囲で実施する活動です。

居住者が玄関へ安否を表示する

自分と家族の状態を確認できた居住者は、管理組合が定めた安否確認カードやマグネットを玄関へ掲示します。

この仕組みの大きな利点は、確認担当者が無事な住戸を一戸ずつ訪問する必要を減らせることです。

例えば100戸のマンションで多数の世帯が自ら安否を表示できれば、担当者は残る未確認住戸へ時間を使えます。

ただし、カードが出ていないことだけで、その住戸が危険な状態だと判断することはできません。

外出中かもしれませんし、カードの掲示を忘れているだけかもしれません。室内で動けなくなっている可能性もあります。

安否表示は最終判定ではなく、次にどの住戸を確認する必要があるのかを整理する手段です。

フロア担当者が各住戸の状態を確認する

フロア担当者は、自分の安全を確認したうえで担当階を巡回します。

玄関の安否表示を見ながら、確認できた住戸、現時点では確認できない住戸、支援が必要だと分かった住戸を記録します。

ここでは、分からないことを無理に推測しないことが重要です。

表示がなく、呼びかけても返答がない住戸を「たぶん外出している」と判断してしまえば、室内で動けない人を見落とす可能性があります。

そのため、一次確認では「未確認」という状態を設けます。

「留守」「不明」「応答なし」「外出らしい」など、人によって異なる表現を使うより、現時点で確認できないものは未確認と統一したほうが、本部でも状況を整理しやすくなるでしょう。

階別安否確認シートへその場で記録する

災害直後は緊張しているため、普段なら覚えていられる情報でも抜け落ちることがあります。

「504号室は表示があっただろうか」と記憶を頼りに戻ることになれば、時間も体力も消耗します。

そこで、確認した結果はその場で階別安否確認シートへ記録します。

住戸 安否状態 確認時刻 確認者 状況と引継ぎ
501号室 無事確認 10時20分 担当A 玄関表示を確認
502号室 未確認 10時22分 担当A 二次確認へ引継ぎ
503号室 支援必要 10時24分 担当A 本部へ報告して救護担当へ引継ぎ

初動用のシートは、詳しければ詳しいほどよいわけではありません。

住戸番号、状態、確認時刻、確認者、次の対応に必要な簡単な備考など、判断につながる情報へ絞ったほうが、混乱時にも記録しやすくなります。

各階の安否情報を災害対策本部へ集める

フロア担当者が確認を終えたら、階別安否確認シートを災害対策本部へ提出します。

この工程によって、各階でばらばらだった情報がマンション全体の情報へ変わります。

例えば5階は全戸確認済みである一方、7階には未確認住戸が三戸残り、8階では支援を必要とする住戸が一戸あると分かれば、本部は人員をどこへ向けるか考えられます。

確認した情報が担当者の手元で止まってしまえば、マンション全体としての判断には使えません。

安否確認制度を設計するときは、「誰が見に行くか」だけではなく、「確認したあと情報をどこへ持っていくか」まで一続きで決める必要があります。

未確認住戸と支援必要住戸を次の対応へつなぐ

一次巡回で未確認になった住戸については、時間を置いた再訪、インターホン、ドア越しの声かけなど、管理組合で決めておいた方法で二次確認を行います。

一方、支援を必要とする居住者を見つけた場合は、安否確認担当者だけで対応を抱え込まない仕組みにします。

一つの住戸で救助活動へ付ききりになれば、その階の残りの住戸が確認できなくなる可能性があるからです。

確認担当者は可能な範囲で状況を把握し、本部や救護担当へ引き継ぎます。専門的な救助が必要な場合は、状況に応じて消防などへつなぐことになるでしょう。

役割を分けることには、もう一つ意味があります。

フロア担当者が「助けを求められたら自分が全部対応しなければならない」と感じると、役割そのものを引き受けにくくなります。

確認と救護の境界を明確にしておくことは、制度への参加を促すうえでも重要です。

安否確認カードと安否確認シートの使い方

安否確認カードは重点確認する住戸を見つけるために使う

安否確認カードやマグネットの役割は、人を直接救助することではありません。

無事を表明できる住戸を早く把握し、確認担当者が時間を使うべき住戸を絞り込むことです。

表示方法には、無事な場合だけ掲示する片面方式と、無事や支援必要など複数の状態を表示できる方式があります。

表示方式 主な運用方法 メリット 注意したい点
片面表示 無事な場合だけ玄関へ掲示する 操作が単純で迷いにくい 表示がない理由は別途確認する必要がある
複数状態表示 無事や支援必要などを選択して掲示する 支援が必要な住戸を把握しやすい 表示間違いや外部から見える情報量に配慮する

どちらが必ず優れているというものではありません。

高齢の居住者が多いマンションでは、できるだけ単純な方式のほうが使いやすい場合があります。一方、住戸数が多いマンションでは、支援必要という状態を早く見つけられることに利点を感じる場合もあるでしょう。

紙の上で判断するより、一度訓練で使ってみると違いが分かります。

安否確認マグネットは実際の玄関扉で試す

マグネット型を採用する場合は、購入前に実際の玄関扉へ付くか確認します。

「マンションの玄関だから磁石が付くだろう」と思っていても、扉の材質や表面仕上げによっては想定どおりに使用できない場合があります。

全戸配布したあとに一部の住戸だけ使えないと分かれば、担当者も居住者も迷います。

必要であれば、ドアノブへ掛けるカードなど代替方式も準備します。

こうした確認は小さな作業に見えますが、発災時の「使えない」を平常時に一つ減らすことにつながります。

安否確認カードの保管場所まで決める

カードを配布しただけでは、数年後にどこへしまったか分からなくなることがあります。

実際の地震が起きたとき、「カードはどこだっただろう」と室内を探す状態では、すぐに表示できません。

そこで、玄関ドアの室内側など、すぐに取り出せる場所を標準的な保管位置として決めます。

訓練でも毎回同じ場所から取り出すようにすると、居住者の行動として定着しやすくなるでしょう。

防災制度は、大きな仕組みだけでできるものではありません。

発災後に迷う小さな判断を平常時に一つずつ減らすことが、実際に使える制度につながります。

安否確認カードへ詳しい個人情報を書きすぎない

玄関の外へ掲示するカードは、居住者以外の人にも見える可能性があります。

そのため、氏名、電話番号、病歴、障害の具体的な内容、緊急連絡先などを外側へ詳しく表示する方法は慎重に検討します。

玄関表示では「無事」「支援が必要」など、初動判断に必要な情報へ絞る方法があります。

詳しい状態が必要であれば、担当者が確認した内容を階別シートなどへ記録し、本部で管理します。

「安否確認に必要な情報」と「誰からでも見える場所へ出す情報」を分けることが重要です。

フロア担当者の役割と不在時の代行方法

フロア担当者は救助責任者ではなく安否情報の確認担当とする

住戸数が多いマンションでは、少数の理事だけで全戸を確認するより、階やブロックごとに担当範囲を分けたほうが情報を早く集められる場合があります。

そこでフロア担当者を設ける方法があります。

ただし、役割の説明には注意が必要です。

「あなたがこの階の住民を助ける責任者です」と受け取られれば、「何かあったら自分が救助しなければならないのか」「判断を間違えたら責任を問われるのではないか」と不安になるでしょう。

その不安は、担当者が集まらない理由にもなります。

フロア担当者の基本的な役割は、自分と家族の安全を確認し、可能な範囲で安否表示を見て、確認結果を本部へ届けることです。

救護や危険を伴う救出作業とは役割を分けます。

担当者が何をする人なのかと同時に、「何まで一人で背負わなくてよいのか」を明確にすることも必要です。

フロア担当者が不在になる前提で体制を作る

発災時に担当者がマンション内にいる保証はありません。

平日の日中であれば仕事や学校へ出ている人が多く、休日でも外出している場合があります。

そこで、一つの階に正副の担当者を置く方法や、担当者不在時には隣接階が補完する方法などを検討します。

十分な人数が集まらない場合は、災害対策本部へ参集した在宅居住者の中から協力できる人へ巡回を依頼する方法もあるでしょう。

最も避けたいのは、特定の一人がいなければその階の確認そのものが始まらない状態です。

人員が少ないマンションほど、固定担当者の人数を増やすことより、担当者がいないときにどう補うかを決めておくことが重要になります。

災害対策本部側から未着手の階を確認する

フロア担当者を決めただけでは、制度として十分ではありません。

例えば7階担当者が不在でも、そのことを誰も把握していなければ、7階が丸ごと未確認で残る可能性があります。

そこで災害対策本部では、どの階から安否確認シートが届いたかを確認します。

一定時間たっても提出されない階については、担当者が活動できていない可能性を考え、代行担当者を割り当てます。

つまりフロア担当制では、担当する人を決める仕組みと、担当されていない範囲を発見する仕組みの両方が必要です。

災害対策本部への安否情報集約方法

安否確認制度と災害対策本部体制は役割を分けて接続する

安否確認制度と災害対策本部は密接に関係していますが、同じ仕組みではありません。

安否確認制度は、各住戸の状態を確認し、その情報を集める仕組みです。

災害対策本部では安否情報だけでなく、建物や設備の被害、救護、物資、備蓄、外部から得た情報などを整理し、マンション全体として何を優先するのか判断します。

荒川区の分譲マンション防災対策に関する資料でも、防災マニュアルの内容として対策本部の体制と安否確認シート、安否確認総括表などがそれぞれ位置付けられています。

そのため、安否確認制度と災害対策本部体制は別々に設計し、情報の流れでつなげると理解しやすくなります。

Webサイトの記事構成でも、「マンションの安否確認制度」と「マンションの災害対策本部体制」を別記事として詳しく扱い、相互リンクさせる方法と相性があります。

この記事では本部へ安否情報を届けるところまでを中心にし、災害対策本部の記事では集まった情報をどのように判断し、情報班や救護班、物資班などの活動へつなげるかを詳しく扱うと整理しやすいでしょう。

安否確認総括表を正式な情報集約先にする

災害時にはさまざまな人から情報が入ります。

「805号室は無事だと聞いた」という情報と、「先ほど訪ねたが応答がなかった」という情報が同時に入ることもあるでしょう。

口頭情報だけで処理していると、どちらが新しい情報なのか分からなくなります。

そこで、安否確認について正式に参照する情報を一つの安否確認総括表へまとめます。

総戸数 無事確認 未確認 支援必要 現在の状況
1階 10戸 9戸 1戸 0戸 101号室を二次確認中
2階 10戸 8戸 1戸 1戸 205号室を救護担当へ引継ぎ
3階 10戸 10戸 0戸 0戸 現時点で全戸確認済み

本部ではこの表を見ながら、未確認住戸が多い階へ人員を回すのか、支援必要住戸への対応を優先するのか判断できます。

安否確認総括表の目的は統計を作ることではありません。

限られた人員を、まだ確認できていない場所や支援を必要としている場所へ向けるために使います。

安否情報は確認時刻を付けて更新する

安否確認の結果は固定された情報ではありません。

午前10時に未確認だった居住者が午前11時に帰宅することもあります。最初は無事だった人が余震や体調変化で支援を必要とすることもあるでしょう。

そこで、確認結果には時刻を残します。

新しい情報が入れば現在の状態を更新し、何が最新なのか分かるようにします。

情報を大量に集めることより、現在有効な情報がどれなのか分かる状態を保つことのほうが重要です。

居住者名簿と要配慮者情報を扱う際の注意点

区分所有者情報と現在の居住者情報は分けて考える

マンションでは、部屋を所有する人と実際に生活している人が一致しない場合があります。

賃貸されている住戸では、区分所有者は別の場所で暮らし、賃借人がマンション内で生活しています。

安否確認という目的では、誰が所有しているかだけでなく、現在その住戸に誰が暮らしているのかを把握できる情報が重要になるでしょう。

一方で、防災を理由に居住者の詳しい情報を無制限に集めてよいわけではありません。

居住者情報を扱う場合は、利用目的、必要な情報の範囲、保管方法、閲覧できる人、更新方法まで考える必要があります。

個人情報の利用目的はできる限り具体的に特定する

個人情報保護法上、個人情報取扱事業者は個人情報の利用目的を「できる限り特定」する必要があります。

個人情報保護委員会は、この「できる限り特定する」という考え方について、個人情報を取り扱う側が利用目的を明確に認識でき、本人も自分の情報がどのような事業に使われ、何の目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予測・想定できる程度まで特定することだと説明しています。また、具体的で本人にとって分かりやすい利用目的であることが望ましいとしています。

マンション防災であれば、「災害時の安否確認及び緊急連絡のために利用する」「災害発生時に支援を希望する居住者への連絡や支援調整のために利用する」といった形で、何に使う情報なのかが居住者にも分かる表現を検討します。

居住者の立場では、詳しい個人情報を提出することに不安を感じる場合があります。

「防災のためです」とだけ説明されても、その情報が誰に見られ、どこまで利用されるのか分からなければ、提出をためらう人がいても不思議ではありません。

利用目的を分かりやすく示すことは、法律上の整理だけでなく、管理組合と居住者の信頼関係を維持する意味でも大切です。

防災目的でも必要以上の個人情報を集めない

防災担当者としては、「何かあったとき困らないように、できるだけ詳しい情報を持っていたほうが安心だ」と感じることもあるでしょう。

しかし、情報を多く持つほど管理責任も大きくなります。

氏名、電話番号、家族構成、勤務先、緊急連絡先、病歴などを、すべて一つの名簿に集めなければ安否確認ができないわけではありません。

まず発災後にどのような行動をするのかを考え、その行動に必要な情報を逆算します。

「何かに使えるかもしれないから保有する」という考え方ではなく、「この情報はこの支援に使う」と説明できる範囲へ絞るほうが、管理する側にも居住者にも分かりやすくなります。

要配慮個人情報は取得時から慎重に扱う

病歴や障害に関する事実などは、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当する場合があります。

個人情報保護委員会の現行ガイドラインでは、要配慮個人情報の取得には原則として本人の同意が必要とされています。ただし、人の生命や身体、財産を保護するため必要で、本人の同意を得ることが困難な場合など、法令上の例外も定められています。

そのため、防災目的だからという理由だけで、管理組合が居住者の病歴や障害の内容を一律に詳しく収集するという考え方は適切ではありません。

実際の支援に必要なのが「階段移動に手助けを希望する」「館内放送だけでは情報を受け取りにくい」「避難時に声かけを希望する」といった内容なら、病名や詳しい診療情報まで取得しなくても支援方法を検討できる場合があります。

何の病気なのかを知ることと、災害時に何を手伝えばよいのかを知ることは同じではありません。

本人の希望を確認しながら、具体的な支援行動に必要な情報へ絞る視点が重要です。

平常時に備えて共有する情報と発災後に共有する情報を分ける

個人情報について理解しにくいのが、「災害時なら共有できることがある」というルールと、「災害に備えて平常時から共有しておく」という話が同じではない点です。

平常時に居住者や支援希望者の情報を集め、管理組合内や関係者間で共有する場合は、利用目的や本人同意などを含めて通常時のルールを整理しておく必要があります。

一方、大規模災害が実際に発生した緊急時には、人命を守るために平常時とは異なる例外が適用される場合があります。

この違いを理解せず、「災害に使う情報だから平常時から自由に共有できる」と考えてしまうと、必要以上に個人情報が広がる可能性があります。

反対に、「本人同意がなければ災害時にも絶対に情報を渡せない」と思い込むと、人命保護のために必要な情報共有をためらうことにもなりかねません。

平常時と緊急時では判断の前提が異なることを、防災担当者間で共有しておくことが重要でしょう。

大規模災害の緊急時は本人同意なしで共有できる場合がある

個人データを第三者へ提供する場合は、原則として本人の同意が必要です。

ただし個人情報保護法では、人の生命、身体または財産の保護のために必要であり、本人の同意を得ることが困難な場合には、本人同意を必要としない例外が設けられています。

個人情報保護委員会は、大規模災害などの緊急時について、こうした要件を満たす場合には「自治会等の個人情報取扱事業者」が保有する個人データを、本人の同意なく関係者などへ提供することが可能と解されると明示しています。

これはマンション管理組合を名指ししたQ&Aではありません。

しかし、従来の保養所に関する具体例よりも、地域の居住者情報を扱う組織について直接示した公的な説明であり、マンション管理組合が災害時の個人情報取扱いを検討する際にも重要な参考になります。

もっとも、「災害が発生すれば名簿を自由に共有してよい」という意味ではありません。

人の生命や身体などを守るために情報提供が必要なのか、本人同意を得ることが困難な状況なのか、誰へ何の情報を提供する必要があるのかを、実際の状況に応じて判断します。

例えば、救助が必要と考えられる居住者について消防などへ必要な情報を伝える場面と、緊急性のない状態で多数の居住者情報を広く配布する場面では、必要性が異なります。

大切なのは「個人情報だから何も共有できない」と萎縮することでも、「災害だから何でも共有できる」と考えることでもありません。

平常時には情報を慎重に管理しながら、緊急時には人命保護の必要性と法の例外要件を踏まえて必要な情報を活用できるようにしておくことです。

名簿は厳重な保管と災害時の利用を両立させる

紙で保管する場合は施錠できる場所へ収納し、電子データであればアクセス権限やパスワードなどを設定することが考えられます。

しかし、厳重にしまうことだけを優先すると、別の問題が起きます。

理事長だけが鍵を持っており、その理事長が発災時に不在なら、せっかく用意した防災用の情報を誰も利用できません。

平常時には不必要な閲覧を防ぎながら、緊急時には決められた担当者が必要な範囲で利用できる仕組みを作る必要があります。

保管場所だけではなく、閲覧できる人、鍵やパスワードの管理方法、災害時の利用条件、利用後の返却方法、役員交代時の引継ぎまで決めておくと実務で迷いにくくなるでしょう。

防災訓練で安否確認制度を検証する

防災マニュアルは作成して終わりではない

防災マニュアルが完成すると、「これで一つ安心できた」と感じる人も多いでしょう。

それまで何も決まっていなかった状態から見れば、確かに大きな前進です。

しかし、紙の上ではきれいにつながっている手順でも、実際に人が動くと予想しなかった問題が出てきます。

安否確認カードをどこへしまったのか忘れている人がいるかもしれません。担当者が不在の階を、誰も確認していないことに本部が気付かない可能性もあります。

「本部に提出してください」とマニュアルに書いてあっても、実際には本部のどこで誰が受け取るのか分からないこともあるでしょう。

こうした問題が見つかったからといって、訓練が失敗したわけではありません。

本番で初めて気付くはずだった問題を、平常時に発見できたことが訓練の価値です。

国土交通省が現在公表しているマンション標準管理規約は令和7年10月17日に改正されており、防災マニュアルや防災訓練などもマンション防災を考える際の重要な要素となっています。

最初は一つの階で安否確認を試す

制度がまだないマンションで、最初から全戸参加の大規模訓練を行おうとすると、準備する側の負担が大きくなります。

参加者の日程調整や資料作成に追われ、肝心の安否確認制度そのものがなかなか決まらなくなることもあるでしょう。

そこで、まず一つの階だけで試してみます。

居住者に安否確認カードを掲示してもらい、担当者が巡回し、階別シートへ記録したあと、本部役へ情報を渡します。

十戸ほどの小さな訓練でも、「カードが遠くから見えない」「未確認欄の書き方が分からない」「シートを誰へ渡すのか迷った」といった具体的な問題が出てくる可能性があります。

会議室で長く考えても見つからなかった問題が、実際に廊下を一度歩くだけで分かることもあります。

小さく試し、問題を一つ直してから対象を広げる方法なら、制度を作る人も参加する居住者も無理なく経験を積めます。

発災する時間帯を変えて体制を検証する

休日の午前中に行った訓練ではうまく動いても、実際の地震が平日の午後に発生すれば状況は異なります。

理事長もフロア担当者も勤務先にいて、マンション内にほとんど役員がいない可能性があります。

そこで実地訓練だけでなく、机上訓練でも発災時刻を変えて考えます。

例えば「平日午後2時に地震が発生し、理事長と半数のフロア担当者が不在だった」という条件で考えれば、代理担当の仕組みが本当に機能するのか確認できます。

夜間なら照明の問題があり、雨天なら屋外に決めた災害対策本部の代替場所が使いにくくなる場合もあるでしょう。

一つの条件で動いたことに安心せず、少し前提を変えても情報の流れが止まらないか確かめます。

訓練後は時間と参加者の気持ちを両方確認する

訓練では、発災想定から安否確認が完了するまでの時間や、未確認住戸が何戸残ったのかを記録します。

しかし、数字だけを見て終わると、制度を動かす人が抱えた問題を見落とします。

「救助まで自分がやらなければならないと思って怖かった」「未確認の意味が分からず不在と記録してしまった」「カードを出すだけなら自分にも協力できそうだった」といった感想には、制度改善の手掛かりがあります。

安否確認を行うのは機械ではなく居住者です。

確認時間が短くなっても、担当者が強い恐怖や負担を感じて次回から役割を引き受けたくない状態になれば、制度を継続することは難しくなります。

客観的な数字と参加者が感じた迷いや負担の両方を確認し、次の訓練へ反映することが大切です。

マンションの安否確認で起こりやすい失敗例

安否確認制度では、大きな計画不足だけが問題になるわけではありません。

カードの保管場所を決めていない、担当者が休みだった場合を想定していないといった小さな準備不足が、発災時には制度全体を止めることがあります。

起こりやすい失敗 背景 見直したい対策
安否確認マグネットが使用できない 玄関扉で実物確認をしていない 導入前に確認して代替方式も用意する
平日昼間に担当者が不在になる 一人だけを担当者にしている 複数担当や隣接階カバーなどを決める
未確認住戸を不在と判断する 表示がない理由を推測している 未確認として記録して二次確認へ回す
居住者がカードを見つけられない 配布後の保管場所が決まっていない 玄関付近など標準保管場所を周知する
同じ住戸の情報が重複する 正式な集約先が決まっていない 本部の総括表へ情報を一本化する
居住者名簿の情報が古い 入退去後の更新方法がない 定期的な情報確認の機会を設ける
担当者が一住戸の救助に付ききりになる 安否確認と救護の役割が曖昧 本部や救護担当への引継ぎ方法を決める
個人情報を厳重に保管しすぎて使えない 緊急時の利用方法が決まっていない 災害時の閲覧者と取出方法を定める
マニュアルがあるのに誰も動けない 作成後に訓練をしていない 小規模な訓練から実際の手順を確認する

失敗例を見ると、「ここまで考えなければならないのか」と気が重くなるかもしれません。

しかし、すべてを一度に解決する必要はありません。

担当者不在時のルールを一つ追加する、未確認という区分を統一する、カードを玄関へ置くことを周知するといった小さな改善でも、制度は確実に前へ進みます。

管理組合で安否確認制度を導入する進め方

最初の理事会では安否確認制度の骨格を決める

最初の会議で個人情報の細則から全戸訓練の実施方法まで決めようとすると、話が広がり過ぎて結論が出なくなることがあります。

議論が長引けば、「もう少し調べてからにしよう」と先送りしたくなるでしょう。

そこで、最初の理事会では発動条件、安否表示、担当者、情報集約、未確認や支援必要住戸への基本対応を中心に決めます。

例えば「管理組合で定めた発動条件を満たした場合、居住者は安否確認カードを玄関へ掲示し、各階の担当者が確認結果を階別シートへ記録して災害対策本部へ提出する」というところまで決まれば、制度の骨格ができます。

その後、訓練によって見つかった問題をもとに、不在時の代行、本部の代替場所、名簿の利用方法などを具体化します。

完璧な仕組みを議論し続けるより、実際に試せる仕組みを先に作るほうが改善点も見えやすくなるでしょう。

管理組合で決める安否確認事項一覧

確認 管理組合で決める事項
安否確認制度を開始する地震や被害の条件を定めている
居住者が使用する安否確認カードなどの方式を決めている
安否確認用品の普段の保管場所を居住者へ周知している
各階やブロックの確認担当者を決めている
担当者が不在だった場合の代行方法を定めている
確認できない住戸を未確認として扱う基準を統一している
階別安否確認シートの様式と状態区分を定めている
災害対策本部の設置場所と代替場所を定めている
安否情報を総括表へ集約する担当者を決めている
支援必要住戸を本部や救護担当へ引き継ぐ方法を決めている
居住者情報の利用目的と必要な項目を整理している
個人情報を閲覧できる担当者と保管方法を決めている
要配慮個人情報を取得する場合の方法を確認している
災害時に必要な個人情報共有の考え方を整理している
管理会社の災害時業務を管理委託契約で確認している
防災マニュアルへ安否確認制度を反映している
防災訓練で各戸確認から本部集約まで試している
訓練後に見つかった問題を記録して制度を更新している

空欄が残っていても、それ自体が失敗ではありません。

決まっていないことが分かれば、次の理事会で話す内容が具体的になります。

「マンション防災を考えなければ」という大きな課題を、「次回は担当者不在時の代行方法を決める」という小さな議題へ変えることが、制度整備を止めないためには有効です。

災害発生時に使う安否確認チェックリスト

平常時に検討する事項とは別に、発災後に担当者が使用する行動チェックリストを用意しておくと、長い防災マニュアルを読み返さなくても現在の進捗を確認できます。

確認 発災後の行動
自分と家族の安全を確保してから担当活動を始める
共用廊下や階段を移動できる状態か可能な範囲で確認する
安否確認制度の発動条件に該当するか確認する
災害対策本部を予定場所または代替場所へ設置する
フロア担当者の在否を確認して未担当階をなくす
担当者へ階別安否確認シートなどを渡す
各住戸の安否表示を確認して結果を記録する
確認できない住戸は未確認として二次確認へ引き継ぐ
階別シートを本部へ集約して安否確認総括表を更新する
支援必要住戸を救護担当などの次の対応へつなぐ
必要な場合は消防などの公的機関へ状況を伝える
新しい情報が入れば確認時刻とともに状態を更新する

このチェックリストも、作成した時点で完成とは考えません。

防災訓練で実際に使用し、順番が分かりにくければ直し、不要な項目があれば整理します。

使った人が感じた「ここで迷った」という経験を反映することで、自分たちのマンションで本当に使える手順書へ変わっていきます。

管理組合だけで決めにくい場合にマンション管理士へ相談できること

安否確認制度は防災用品の選定だけでは終わらない

安否確認体制の検討を進めると、カードやマグネットを選ぶ話だけでは終わらないことに気付きます。

居住者名簿をどう扱うのか、管理会社と管理組合の役割をどこで分けるのか、防災組織をどのように位置付けるのかといった管理運営の問題へ広がるからです。

居住者から「なぜこの情報を提出しなければならないのか」と質問されることもあるでしょう。

管理組合としては「防災のために必要だから協力してほしい」と思っていても、情報を預ける居住者には別の不安があります。

仕組みとして正しいだけでなく、なぜ必要なのかを説明し、納得して参加してもらえる形にすることが重要です。

マンション管理士には管理運営上の論点を相談できる

管理組合だけで論点を整理しにくい場合には、マンション管理士へ相談する方法があります。

例えば、現在の管理規約や細則との関係、管理会社との役割分担、防災マニュアルの位置付け、理事会や総会でどのように合意形成するかなどについて助言を受けることが考えられます。

ただし、マンション管理士によって得意分野や実務経験は異なります。

防災体制について相談する場合は、マンション防災や防災マニュアル作成、管理組合支援などの実績を確認するとよいでしょう。

また、個別具体的な法律判断や紛争対応については、内容に応じて弁護士などほかの専門家へ相談する必要がある場合もあります。

自治体のマンション防災支援も確認する

自治体によっては、マンションの防災体制づくりに対する支援を実施しています。

防災マニュアルの作成支援、専門家の派遣、防災用品の購入助成など、内容は自治体によって異なります。

荒川区のように、防災マニュアルの項目として災害対策本部の体制、安否確認シート、安否確認総括表などを示している自治体もあります。

管理組合の予算や人員だけで制度を整えようとすると、「やりたいけれど今年度は難しい」という話になりやすいでしょう。

利用できる公的支援を調べることも、安否確認制度を具体的に前へ進める方法の一つです。

マンション災害時の安否確認FAQ

管理会社が安否確認をしてくれるのでしょうか

災害時に管理会社が行う業務は、マンションごとの管理委託契約や仕様書によって異なります。

国土交通省のマンション標準管理委託契約書には緊急時の業務に関する規定がありますが、全居住者への安否確認まで一律に通常業務として定めるものではありません。

管理会社へ何を期待できるのかは、自分たちの管理委託契約を確認する必要があります。そのうえで、管理会社の担当者が現地へ到着できない場合にも、管理組合や居住者側で初動の安否確認を始められるようにしておくとよいでしょう。

安否確認カードには何を書けばよいですか

玄関の外から確認できるカードには、初動判断に必要な情報へ絞る方法があります。

例えば「無事」「支援が必要」といった状態であれば、巡回担当者が次に確認すべき住戸を判断しやすくなります。

家族全員の氏名や電話番号、病歴、障害の詳しい内容などを玄関外へ表示する必要性は慎重に考えてください。

詳細な状況が必要な場合は、外から見えない階別シートや本部の記録へ分けるほうが扱いやすくなります。

不在世帯はどう扱えばよいですか

安否表示がなく、声をかけても応答が確認できない住戸を、一次巡回ですぐ不在と確定しないことが重要です。

実際に外出している場合もあれば、カードを出し忘れている場合や室内で動けない場合もあります。

まず「未確認」として記録し、その後に再訪や声かけなど、管理組合で決めた二次確認へつなげます。

明らかな異常や緊急性が疑われる場合には災害対策本部へ報告し、必要に応じて消防などへ状況を伝えることを検討します。

居住者名簿を安否確認に使ってもよいですか

まず、現在その名簿について定めている利用目的や管理組合の個人情報取扱ルールを確認します。

個人情報保護法上、利用目的は「できる限り特定」する必要があります。個人情報保護委員会は、本人が自らの個人情報について、どのような目的で利用されるのかを一般的かつ合理的に予測・想定できる程度まで特定するという考え方を示しており、具体的で本人に分かりやすい利用目的であることが望ましいとしています。

すでに保有している居住者名簿を安否確認へ利用する場合も、現在特定している利用目的や取得時の説明と整合しているか確認するとよいでしょう。

災害時は本人の同意がなくても居住者情報を共有できますか

原則として、個人データを第三者へ提供する場合には本人同意が必要です。

ただし、人の生命、身体または財産を守るために必要で、本人の同意を得ることが困難な場合には例外があります。

個人情報保護委員会は、大規模災害等の緊急時について、こうした条件を満たせば自治会等の個人情報取扱事業者が保有する個人データを本人同意なく関係者などへ提供することが可能と説明しています。

マンション管理組合を直接名指しした回答ではないため、実際の提供については人命保護の必要性、本人同意を得ることの困難性、提供先、提供する情報の範囲などを具体的な状況に応じて判断することが重要です。

防災委員が足りない場合はどうすればよいですか

役員や防災委員だけで全住戸を確認する制度にする必要はありません。

一つの階に複数の担当者を置く方法、隣接階で補完する方法、発災時に在宅している居住者の中から協力できる人へ本部が依頼する方法などがあります。

人員が足りないことを理由に制度整備そのものを諦めるより、まず一つの階で試してみると必要な人数を把握しやすくなります。

実際に何戸を何人で確認し、どの程度の時間がかかったのかを測れば、自分たちのマンションに必要な体制を具体的に考えられるでしょう。

災害対策本部はいつ立ち上げればよいですか

全国のマンションに共通する一律の発動震度が法律上定められているわけではありません。

一定以上の地震や重大な建物被害などについて、マンション所在地の自治体が公開している防災資料や建物の特性を参考にしながら、管理組合で発動条件を定めておきます。

さらに、理事長が不在の場合でも本部を立ち上げられるよう、代理順位や客観的な発動条件を決めておくとよいでしょう。

すべての役員がそろうまで待つ制度ではなく、決めた条件を満たしたときにその場にいる人で初動を始められる仕組みを目指します。

まとめ

マンションの災害時の安否確認では、安否確認カードを配ることだけでなく、発動条件、居住者による安否表示、確認担当者、情報集約、未確認住戸や支援必要住戸への対応までを一つの情報経路として整えておくことが重要です。

発動条件 居住者による安否表示 確認担当者 情報集約 未確認住戸や支援必要住戸 への対応
マンションの災害時の安否確認では、安否確認カードを配ることだけでなく、発動条件、居住者による安否表示、確認担当者、情報集約、未確認住戸や支援必要住戸への対応までを一つの情報経路として整えておくことが重要です。

居住者名簿などの個人情報については、平常時には利用目的を具体化して必要な範囲で適切に管理しながら、大規模災害の緊急時には人命保護のため本人同意なしの情報共有が認められる場合もあるという違いを理解しておく必要があります。

最初から完璧な制度を目指す必要はありません。一つの階から安否確認を試し、そこで感じた迷いや負担を次のルールへ反映しながら、災害時に実際に動ける仕組みへ育てていくことが大切です。

参考資料

マンションで建物自体が損傷を免れた場合でも、停電や断水、エレベーター停止などによって生活が困難になる問題については、東京都のガイドブックで確認できます。

東京都マンション防災ガイドブック

マンションの地震対策や居住者同士の安否確認については、東京消防庁の資料が参考になります。

東京消防庁 マンションの地震対策

マンション標準管理規約は令和7年10月17日に改正されています。管理組合の運営や防災体制を検討する際の基本資料として確認できます。

国土交通省 マンション標準管理規約

管理会社との災害時の役割分担を検討する場合は、自マンションの契約書と併せて標準的な管理委託契約を確認できます。

国土交通省 マンション標準管理委託契約書

個人情報の利用目的について「できる限り特定する」という考え方と、本人が一般的かつ合理的に予測できる程度まで特定するという説明は、個人情報保護委員会のQ&Aで確認できます。

個人情報保護委員会 利用目的の特定に関するQ&A

要配慮個人情報の定義や取得時の本人同意については、個人情報保護委員会の現行ガイドラインを確認してください。

個人情報保護委員会 個人情報保護法ガイドライン通則編

大規模災害の緊急時に自治会等が保有する個人データを本人同意なしで関係者へ提供できる場合について、個人情報保護委員会が直接説明しています。

個人情報保護委員会 大規模災害時の個人情報共有に関するQ&A

災害時に備えた避難行動要支援者情報の共有については、市町村が作成する法定名簿や個別避難計画に関する制度が別途定められています。管理組合が独自に作成する居住者名簿と混同しないためにも確認しておくとよいでしょう。

個人情報保護委員会 避難行動要支援者情報の共有に関するQ&A

安否確認シートや安否確認総括表を含む具体的なマンション防災マニュアルについては、荒川区の資料が実務上の参考になります。

荒川区 マンション防災マニュアル作成の手引き

人気記事

  • 本日
  • 週間
  • 月間

-マンション管理士