マンションで停電が起きたとき、電気が戻るまで待てばよいと考えていたのに、ほどなくして水が出なくなり、エレベーターも停止し、居住者から「トイレは使えますか」「受水槽の水は利用できますか」と問い合わせが重なることがあります。建物そのものに大きな損傷が見えなければ、なぜこれほど生活が不便になるのか理解しにくく、理事長や防災担当者も戸惑うでしょう。
さらに難しいのは、普段は管理会社や設備会社へ任せている設備について、災害時には管理組合が住民へ説明を求められることです。間違ったことを伝えて被害を広げたくないと思えば慎重になりますが、何も知らせない状態が長く続けば、居住者がそれぞれの判断で水を使ったり、トイレを流したりする可能性があります。
しかも、理事長や役員自身も被災者です。家族や自宅の安全を確認しながらマンション全体へ対応しなければならない状況で、給水設備や排水設備、エレベーターについて一から調べ始めるのは現実的ではありません。
そこで重要になるのが、発災後に設備の専門家になろうとすることではなく、平時のうちに自分のマンションの設備条件を確認し、誰が何を担い、専門家から得た情報を住民の行動へどうつなげるかを決めておくことです。
この記事の中心となる考え方は明確です。
管理組合の役割は設備の専門家になることではなく、専門家から得た技術情報を、住民が実際に行動できる運用へつなげることです。
そのために、まず設備を知り、平時に対応計画を決め、発災時には時間軸に沿って行動します。その後、給水、トイレ、エレベーター、非常用電源などを個別に判断し、復旧後には記録、訓練、引継ぎへ戻して計画を更新していきます。
この記事を読み終えたあと、最初に実行してほしいことも一つに絞れます。次の理事会で、自分のマンションの給水方式と、停電したときに実際に使える設備を確認してください。そこから停電・断水への備えが具体的に始まります。
まず自分のマンションの設備を知る
停電や断水への備えを考えると、非常用発電機や蓄電池、防災用品の購入を最初に検討したくなることがあります。目に見える設備を増やせば安心感を得やすいためですが、自分のマンションがどのように水を供給し、停電時に何が止まるのか分からなければ、購入した設備が本当に弱点を補っているのか判断できません。
マンション防災で最初に確認したいのは「何を買うか」ではなく、「現在どのような設備があり、災害時にどの機能まで使えるのか」です。
停電すると必ず断水するとは限らない
マンションで停電したとき、水道管そのものが壊れていないなら水は出るのではないかと考える人は少なくありません。しかし、中高層マンションでは、水道本管から入った水を住戸まで届けるために増圧ポンプや給水ポンプを使用している場合があり、停電によって給水まで影響を受ける可能性があります。
一方で、「マンションでは停電すれば必ず断水する」と考えるのも正確ではありません。東京都水道局が示しているように、給水方式には直結給水方式と貯水槽水道方式があり、直結給水にも配水管の水圧を利用する方式と増圧ポンプを利用する方式があります。設備構成によって停電時の挙動が変わるため、自分の建物について確認する必要があります。
たとえば直圧直結方式では、水道事業者側の供給が続き、建物へ必要な水圧が確保されていれば、建物側の停電だけで給水が止まるとは限りません。
増圧直結方式では、増圧ポンプによって中高層階へ水を送っているため、停電によってポンプが停止すれば給水停止や水圧低下が起こる可能性があります。
受水槽があるマンションも同様で、「受水槽に水が残っているから停電しても大丈夫」とは限りません。受水槽から各住戸への送水に電動ポンプを使用している建物では、水槽内に水が残っていても通常どおり住戸へ給水できない場合があります。
高置水槽方式では、屋上などに設けた高置水槽から重力を利用して水を送るため、水槽内の残水を一定範囲で利用できる可能性があります。ただし、揚水ポンプが停電で停止していれば新しい水を高置水槽へ補給できず、残っている水を使い切れば給水は続きません。
東京都水道局も、貯水槽水道方式の長所として、事故や災害時などに貯水槽内へ残っている水を利用できることを挙げています。ただし、それは各住戸の蛇口から普段と同じように水が出ることまで保証するものではありません。
この違いを知らないままでは、停電後に「受水槽があるのだからまだ大丈夫だろう」と水を使い続けたり、反対に本来利用できる非常用給水方法があるのに「断水したから水は一切ない」と考えたりする可能性があります。
だからこそ、管理組合では設備名称を知るだけでなく、停電した場合に実際にどうなるのかまで確認しておく必要があります。
給水と排水を同じ問題として考えない
給水と同じくらい重要でありながら忘れられやすいのが排水です。
マンションによっては、地下の排水槽から公共下水道へ水を送るために排水ポンプを使用しています。このような建物では、停電が排水設備にも影響を与える可能性があります。
つまり、蛇口から水が出る状態と、トイレや台所から安全に排水できる状態は同じではありません。
普段は給水管も排水管も壁や床の内部に隠れているため、居住者が両者を意識的に区別する機会はほとんどありません。そのため、停電後に水が出れば「トイレも普通に使えるのではないか」と感じるのは自然でしょう。
しかし、災害時には給水と排水を別々に確認することが、漏水や汚水逆流といった二次被害を防ぐために重要になります。
マンションの給水方式確認シート
自分のマンションの設備を確認するときには、竣工図、給排水設備図、設備仕様書、点検報告書、設備改修の履歴などを確認します。竣工当初から設備が変更されている可能性もあるため、古い図面だけで判断せず、必要に応じて管理会社や給排水設備会社と現在の設備を照合するとよいでしょう。
| 確認項目 | 確認する内容 | 自マンションの状況 |
|---|---|---|
| 給水方式 | 直圧直結方式や増圧直結方式や貯水槽方式など | |
| 受水槽 | 有無と容量と設置場所 | |
| 高置水槽 | 有無と容量と設置場所 | |
| 給水ポンプ | 有無と台数と設置場所 | |
| 増圧ポンプ | 有無と停電時の影響 | |
| 停電時の給水 | どの階までどの条件で給水できるか | |
| 非常用給水栓 | 有無と場所と操作方法 | |
| 非常用電源 | 接続されている設備と運転条件 | |
| 非常時取水 | 鍵やホースや給水容器の保管場所 | |
| 排水ポンプ | 有無と停止した場合の影響 | |
| 給排水設備会社 | 通常連絡先と緊急連絡先 | |
| 水道事業者 | 断水情報の確認方法 | |
| 下水道事業者 | 使用制限情報の確認方法 | |
| 設備資料 | 図面や仕様書や改修履歴の保管場所 | |
| 最終確認日 | 管理会社や設備会社と確認した年月日 |
実際に確認してみると、受水槽があることは知っていても容量を把握していなかったり、非常用給水栓が設けられているのに鍵の保管場所を誰も知らなかったりすることがあります。
その状態を知ると、「うちのマンションは大丈夫だと思っていたのに」と不安になるかもしれません。しかし、災害当日ではなく平時に分かったのであれば、対策する時間があります。
最初からすべての空欄を埋める必要もありません。給水方式を確認したら次は非常用給水栓、その次は非常用電源というように進めれば、役員の負担を抑えながら少しずつ不明点を減らせます。
ここで覚えておきたいのは、設備が存在することと、災害時に使えることは別だという点です。
平時に停電断水対応の7項目を決める
設備の状況が分かったら、次に人の動きを決めます。
災害時に役割分担が決まっていないと、理事長へ電話や問い合わせが集中し、情報を集める人も専門会社へ連絡する人も曖昧になります。さらに理事長が外出していたり、自宅や家族への対応で動けなかったりすれば、管理組合の初動そのものが止まる可能性があります。
国土交通省が示しているマンション標準管理規約は、各マンションの管理規約を作成・改正する際のひな型です。現在の標準管理規約は2025年10月17日に改正されており、防災を含むマンション管理上のルールを考える際には、自分のマンションの現行規約と区別して確認する必要があります。
理事会で決めておきたい7項目
| 項目 | 理事会で決める内容 |
|---|---|
| 設備確認体制 | 発災直後に誰が何を確認し専門会社へどう伝えるか |
| 非常用給水 | どこから取水し誰が給水場所を運用するか |
| 排水対応 | 使用制限情報と建物側排水設備をどう確認するか |
| 情報伝達 | 掲示や各戸配布や電子連絡をどう組み合わせるか |
| 高層階と要配慮者支援 | 状況把握と物資搬送をどの範囲で行うか |
| 共用備蓄 | 管理組合と各家庭の備蓄をどう分けるか |
| 緊急発注と支出 | 応急措置を誰がどの範囲で判断できるか |
この表は、担当者名を書けば完成するものではありません。
たとえば非常用給水について「防災担当理事が給水場所を開ける」と決めても、その人がマンションにいなければ運用できないため、副担当者や代替方法も考えておく必要があります。
さらに、非常用給水栓が安全に使用できるかを誰へ確認し、給水開始をどの方法で住民へ知らせ、高層階まで水を運べない人をどう支援するかまでつながって、初めて実際の計画になります。
一方で、これらすべてを理事会だけで判断する必要はありません。
給水設備が技術的に利用可能かどうかは給排水設備会社へ確認できますし、エレベーターの設備状態は保守会社へ確認できます。管理組合が担うのは、その回答を受けて住民がどう行動するのかを決める部分です。
この境界が分かると、「防災担当になった以上、自分が設備について全部理解しなければならない」という重圧も小さくなります。必要なのは専門家の代わりになることではなく、専門家へ適切な質問をし、その回答を住民生活へつなぐことです。
発災時は時間軸に沿って動く
平時に7項目を決めたら、実際の災害時には時間軸に沿って使います。
ここで「7項目」と「3段階」を別々の計画と考える必要はありません。7項目は何を決めておくかを示し、時間軸はそれをいつ使うかを示します。
この関係を理解しておくと、マニュアルを読んだ役員が「どちらの表から始めればよいのか」と迷いにくくなります。
平時 発災直後 復旧確認後の3段階チェック表
| 段階 | 管理組合が確認すること | 主な目的 |
|---|---|---|
| 平時 | 給水方式と設備図面を確認する | 停電時の影響を把握する |
| 平時 | 非常用給水栓と非常用電源を確認する | 使える設備を把握する |
| 平時 | 排水設備を確認する | 地震後のトイレ判断へ備える |
| 平時 | 緊急連絡先を更新する | 発災時の連絡を早める |
| 平時 | 正担当と副担当を決める | 特定の人への集中を防ぐ |
| 平時 | 共用備蓄を確認する | 不足と役割分担を把握する |
| 平時 | 周知文を準備する | 情報発信を早める |
| 発災直後 | 人命と火災などの危険を確認する | 人の安全を最優先する |
| 発災直後 | エレベーター閉じ込めを確認する | 必要な救出連絡を行う |
| 発災直後 | 漏水や設備異常を確認する | 二次被害を把握する |
| 発災直後 | 水道事業者の情報を確認する | 地域側と建物側を切り分ける |
| 発災直後 | 下水道使用制限を確認する | 排水可否の第一段階を判断する |
| 発災直後 | 建物側排水設備を確認する | 建物固有の異常を把握する |
| 発災直後 | 高層階や要配慮者の状況を確認する | 生活支援を検討する |
| 発災直後 | 現在分かっている情報を周知する | 独自判断と不安を減らす |
| 復旧確認後 | 給水設備を確認する | 漏水などを防ぐ |
| 復旧確認後 | 排水設備を確認する | トイレなどの再開を判断する |
| 復旧確認後 | エレベーターの状態を確認する | 安全な利用再開へつなげる |
| 復旧確認後 | 再開条件を住民へ知らせる | 通常生活への戻り方を統一する |
| 復旧確認後 | 対応と支出を記録する | 報告と引継ぎに利用する |
| 復旧確認後 | 計画を見直す | 次の災害へ改善を残す |
発災直後には、すべてをその日のうちに解決しようとしないことも重要です。人命や火災、閉じ込め、漏水など緊急性の高い問題を優先して確認し、設備の状況を記録したうえで専門家へつなぎます。
本格的な修理方法や高額な工事については、被害状況や見積りなどの判断材料がそろってから検討できる場合があります。
災害の最中には、「役員なのだから早く結論を出さなければ」と焦ることがあります。しかし、今すぐ決めることと、確認材料がそろってから決めることを分けるだけでも、誤った即断を避けやすくなります。
発災直後に設備と連絡先を確認する
大きな地震や停電が発生すると、役員になっている人ほど「建物を確認しなければ」と考えやすくなります。しかし、役員であることは危険な設備室へ立ち入ってよいという意味ではありません。
まず自分自身と家族の安全を確認し、その後に火災、負傷者、落下物、エレベーター閉じ込めなど、人命へ影響する状況を安全な範囲で確認します。
管理室や集会室を安全に利用できる場合には、そこを情報集約場所として使い、集まった情報を「確認済み」「未確認」「連絡済み」「回答待ち」に分けて整理する方法があります。
災害時には、誰かが確認したと思っていた事項が実際には未確認だったり、複数の役員が同じ専門会社へ何度も連絡したりすることがあります。情報を目に見える状態へ整理することで、こうした小さな混乱を減らせます。
受水槽や高置水槽では、安全な場所から目立った漏水や外観上の損傷を確認し、ポンプ設備では異常表示、煙、焦げ臭などがないかを確認します。
電気設備が冠水している場合など、危険が疑われるときには役員が自ら操作せず、専門会社へ状況を伝えます。
緊急連絡先は電話番号だけでは足りない
緊急連絡先には、管理会社、給排水設備会社、電気設備会社、エレベーター保守会社、水道事業者、下水道事業者、自治体などを整理します。
代表電話だけでは夜間や休日に使えない場合があるため、24時間受付や物件専用の連絡先があるなら併記します。また、問い合わせの際に物件番号や契約番号を求められるのであれば、その情報も一緒に記録しておくとよいでしょう。
大規模災害では、管理会社や設備会社の担当者も被災します。道路や鉄道、通信に障害が起これば、電話がつながっても技術者が短時間でマンションへ到着できるとは限りません。
その待ち時間に管理組合が担うのは、専門設備を自分たちで修理することではありません。確認できた事実を整理し、危険区域への立入りを防ぎ、住民へ現在の状況を知らせ、専門家が到着した際に必要な情報を引き継ぐことです。
給水場所は設備だけでなく運用まで決める
受水槽や非常用給水栓が設けられていても、それだけで非常時の給水体制が完成しているわけではありません。
非常用給水栓を安全に利用できると確認したあとには、誰が給水場所を開設し、どの時間帯に運用し、どの方法で住民へ知らせるのかという人の動きが必要になります。
たとえば、非常用給水栓が設備室内にあり、その鍵を管理員しか持っていない状態で管理員が不在だった場合、水槽に水が残っていても利用開始まで時間がかかるかもしれません。
住民から見れば「水があるのに、なぜ使わせてもらえないのか」と感じるでしょう。一方、役員側は安全性も操作方法も分からない状態で勝手に開けることはできず、双方の焦りが強くなります。
こうした状況を減らすため、平時に非常用給水栓まで実際に行き、鍵の管理、操作方法、必要なホースや給水容器、周辺の照明、住民が安全に並べる場所などを確認しておきます。
受水槽内に水が残っている場合でも、水量だけを見て被災後の飲用可否を断定することは避けます。水槽や配管の状態、水質、水道事業者などからの情報を確認したうえで用途を判断することが必要です。
また、給水所を設ければすべての住民が利用できるとも限りません。高層階に住む高齢者や歩行が難しい人の場合、1階まで水を受け取りに来られても、重い容器を持って自宅まで戻れないことがあります。
設備を利用可能にするだけではなく、その水を実際に必要な人へどう届けるかまで考えることで、非常用給水は生活を支える仕組みになります。
トイレは地域情報と建物設備の二段階で判断する
断水が発生すると、浴槽に残っている水をトイレへ流せば使えるのではないかと考える人がいます。目の前に水が残っているなら、それを使いたいと思うのは自然です。
ただし、地震後のトイレ対応を「大地震が起きたら全国一律に使用禁止」と単純化するのも正確ではありません。
まず確認するのは、地域の下水道について使用制限が実施されているかです。
東京都下水道局は、大震災後に下水道の使用制限が実施されている地域では使用を控えるよう案内しています。使用制限が必要になった場合には、下水道局のホームページや自治体の広報手段などを利用して周知するとしています。
地域に使用制限が出ている場合には、その案内に従います。
一方、地域として使用制限が出ていないからといって、マンション内で無条件に排水できるとは限りません。東京都下水道局は、使用制限がない場合でも排水設備が破損していないかを確認する必要があるとしており、集合住宅では配管の破損によって下階へ汚水が逆流する場合があると案内しています。
したがって、トイレ対応は「地域の下水道使用制限を確認する → 使用制限がなくても建物側の排水設備を確認する」という二段階で考えます。
自宅の便器にひび割れなどが見当たらなくても、壁や床の内部にある共用排水管の状態は住戸内から判断できません。建物側の異常が疑われる場合や、地震後で排水設備の状況をまだ確認できていない場合には、自己判断で大量の水を流さず慎重に扱う必要があります。
このとき管理組合が「トイレを使用しないでください」とだけ知らせると、自宅の便器に異常がない居住者には理由が分からず、過剰な制限だと感じられるかもしれません。
そこで、「地域の下水道情報と建物内の排水設備を確認しており、配管が損傷している場合には下階への逆流などにつながるため、確認まで大量の排水を控えてください」と背景まで説明します。
行動だけではなく理由を共有することで、住民が協力しやすくなります。
バケツ洗浄は便器ごとの方法を確認する
地域側と建物側について排水できる状態が確認されたとしても、断水時のトイレ洗浄方法は便器によって異なります。
必要な水量や注ぎ方、電子制御部分の操作方法などはメーカーや機種によって違うため、管理組合がマンション全体へ一律の水量や手順を示すことは避けた方がよいでしょう。
各世帯には、自宅で使用している便器メーカーの断水時・停電時の取扱方法を平時に確認するよう案内しておくと、災害発生後の混乱を減らせます。
エレベーター停止後は生活支援まで考える
エレベーターの地震対策について考えると、最初に心配になるのは閉じ込めです。しかし、閉じ込めへの対応が終わっても、エレベーター停止が続けば高層階での生活は次第に難しくなります。
国土交通省は、大規模地震時のエレベーター復旧について、閉じ込め救出を最優先としながら、病院など災害弱者が利用する施設や公共性の高い建物などを考慮して復旧する方針を示しています。また、複数台のエレベーターがある建物については、一棟につき一台を復旧したあと別の建物へ復旧作業を移す「1ビル1台復旧」を原則としています。
広い地域で多数のエレベーターが同時に停止すれば、保守会社へ連絡できても技術者が短時間で到着できるとは限りません。
その間、高層階の居住者は水や食料を階段で運び、通院や買い物にも階段を利用することになります。高齢者、妊婦、歩行に不安がある人、乳幼児がいる家庭などでは、エレベーター停止が単なる不便ではなく、在宅避難を続けられるかどうかに関係する場合もあります。
高層階支援は実際に階段を使って考える
管理組合がすべての住戸へ水や食料を届けるような計画を作る必要はありません。
自力で給水場所へ行き、水を自宅まで運べる世帯と、階段移動や重量物の運搬が難しい世帯を分けたうえで、どこまで支援するかを考える方法があります。
大規模マンションでは、階やブロック単位で状況を取りまとめる仕組みを検討することもできます。ただし、要配慮者に関する情報を扱うのであれば、誰が閲覧し、何の目的に利用し、どこへ保管するのかまで平時に決める必要があります。
また、会議室で「水は階段で運べばよい」と決めただけでは、本当の負担は分かりません。
数リットルの水を持って実際に階段を歩けば、途中で休憩したくなる場所や夜間には暗くなる場所、手すりを使いながら荷物を持つ難しさなどに気づきます。
そこで「計画どおりにはできない」と分かったとしても、それは失敗ではありません。災害が起きる前に現実とのずれを発見できたという意味があります。
エレベーターを管理組合だけで復旧させない
停電後に電気が戻り、エレベーターが一見動いていたとしても、地震後の設備状態がすべて確認されたとは限りません。
管理組合や居住者が乗場扉や制御設備を独自に操作して復旧させようとするのではなく、設備仕様や異常の有無、保守会社などから得た情報を確認して利用再開へつなげます。
設備を直す役割を専門家へ任せながら、その専門家が到着するまでの生活支援と情報提供を管理組合が担うという分担が重要です。
非常用電源は何を動かせるのか確認する
マンションに非常用発電機や蓄電池があると、それだけで停電対策ができているように感じることがあります。
しかし、非常用電源が設置されていることと、給水ポンプやエレベーターを動かせることは同じではありません。消防設備や一部の共用設備だけを給電対象としている場合もあります。
そのため、理事会で確認したい質問は、「非常用発電機がありますか」ではなく「停電時に何へ電力を供給できますか」です。
給水ポンプのようなモーター機器については、通常運転時の電力だけを見て判断できない場合があります。必要容量、起動条件、切替設備、燃料や蓄電容量などは設備ごとに異なるため、電気設備会社や給排水設備会社へ確認します。
非常用電源の導入を検討するときにも、最初から「発電機を購入するか」を決めるより、停電時に何を維持したいのかを整理した方が判断しやすくなります。
給水を優先するのか、エレベーター1基も動かす必要があるのか、共用照明や通信設備まで維持したいのかによって、必要な設備構成は変わります。
東京とどまるマンション制度から考える設備と運用
東京都内のマンションでは、東京とどまるマンション情報登録・閲覧制度も参考になります。
全国共通の制度ではないため、東京都外のマンションでは自治体独自の制度や支援策を確認する必要がありますが、「防災設備を持っているかだけでなく、運用面も含めて防災対応力を考える」という点では参考になる制度です。
2026年度の現行制度では、ソフト対策について、防災マニュアルを策定したうえで、防災訓練の実施または安否確認方法の構築に取り組むことが基本とされています。一方、非常用電源というハード対策のみでも登録することが可能です。
表示上の1つ星はソフト対策の登録、または非常用電源のみの登録でも可能です。2つ星以上ではソフト対策の登録に加えて、非常用電源、エレベーター閉じ込め防止対策、エレベーター早期復旧対策、防災備蓄資器材の確保といったハード対策の登録数に応じて星が加算されます。
ここで記事の主題と特に関係するのが、非常用電源の考え方です。
制度では、単に共用部へ少量の電力を供給できる設備という意味ではなく、建物の給水方式などに応じて、停電時の水の供給や1基以上のエレベーター運転に必要な電力を確保できる設備として非常用電源を扱っています。関連する導入支援でも、水の供給と1基以上のエレベーター運転を生活継続上の重要な機能として扱っています。
制度へ登録する予定がないマンションであっても、この考え方は参考になります。
「非常用電源がある」という設備名を確認して安心するのではなく、自分のマンションで停電した場合に実際に何を動かせるのかを確認することが重要です。
各家庭の備蓄と管理組合の備蓄を分ける
停電や断水の対策を理事会で検討すると、「管理組合では何日分の水を備蓄すればよいのか」という議論になることがあります。
各家庭については、内閣府が最低3日分、できれば1週間程度の食料や飲料水などを備えることを案内しており、飲料水については一人1日3リットルが一つの目安とされています。
ただし、これは各家庭の備蓄についての目安であり、管理組合がマンション全居住者について同じ量の飲料水を共同備蓄しなければならないという意味ではありません。
戸数の多いマンションで全世帯分の飲料水を共用倉庫へ保管しようとすれば、大きな保管スペースが必要になり、賞味期限に応じた更新費用も発生します。
そのため、飲料水、食料、常用薬、乳幼児用品、介護用品など、世帯ごとに必要量や種類が変わるものは各家庭で準備し、管理組合では携帯トイレ、給水容器、照明、トランシーバー、担架、搬送資器材など、共同利用することで意味を持つものを中心に検討する方法があります。
管理組合による共助は、各家庭の自助を代わりに行うものではありません。
「管理組合が備蓄しているから、自宅では準備しなくてもよい」という誤解が生まれないよう、それぞれの役割を平時から説明する必要があります。
居住者への周知は理由まで伝える
管理組合が設備について詳しく把握していても、居住者が何も知らなければ災害時の混乱を十分には防げません。
マンションでは、一住戸の行動が共用配管などを通じて別の住戸へ影響することがあるため、建物全体で共有する必要がある情報があります。
トイレについて「使用を控えてください」とだけ伝えた場合、自宅の便器に異常が見えず、地域にも下水道使用制限が出ていない居住者は、「なぜ使ってはいけないのか」と疑問に思うでしょう。
そこで、現在は建物内の排水設備を確認しており、配管が損傷している場合には下階への汚水逆流などが起こる可能性があるため確認まで慎重に扱ってほしい、という理由まで知らせます。
エレベーターでも同じです。単に「使用禁止」と掲示するより、保守会社へ設備状態を確認しており、安全な利用可否が確認できるまで使用を控えるよう説明した方が、住民は状況を理解しやすくなります。
分からないときは確認中であることを伝える
災害時には、すべての情報をすぐに把握できるとは限りません。
その状態で住民から質問されると、管理組合として何か答えなければならないと焦ることがあります。しかし、根拠のない復旧時刻や安全情報を伝えるより、確認中であることを明確にした方が適切です。
「現在、給排水設備会社へ確認しています」「次の情報更新は○時を予定しています」という情報だけでも、居住者は管理組合が何をしているのか把握できます。
住民の不安は、悪い情報だけで大きくなるわけではありません。何が起きているのか分からず、誰も確認している様子が見えない時間が続くことによっても強くなります。
確認済みのことと未確認のことを区別し、その違いを正直に伝える姿勢が、災害時の信頼につながります。
発災時の周知文を平時に準備する
発災時には、理事や防災担当者自身も家族や住戸の安全を確認しながら住民へ情報を伝えます。その状態で掲示文を毎回一から考えるのは負担になるため、平時のうちに状況別のひな形を作っておくとよいでしょう。
排水設備の確認中、非常用給水場所の開設、エレベーターの保守会社確認中、給水再開、トイレ使用再開など、想定される場面について基本文を用意しておけば、発災時には現在の状況へ合わせて必要な部分だけを変更できます。
復旧するときにも事故を想定する
停電・断水対策では、設備が止まっている時間に意識が集中しやすくなります。
しかし、設備が再び動き始めるときにも別の問題が生じる可能性があります。
たとえば断水している間、居住者が「まだ水は出ない」と確認するため蛇口を開け、そのまま閉め忘れて外出した状態を考えてみます。その後、不在中に給水設備が復旧すれば、水が流れ続けて住戸内や下階へ被害が広がる可能性があります。
これは特定の実在事故を紹介しているのではなく、復旧時に起こり得る状況を考えるための想定ケースです。
このケースを考えると、管理組合が給水再開を知らせる際には、「給水が復旧しました」という情報だけではなく、「各住戸ですべての蛇口が閉まっていることを確認してから利用してください」という案内を加える意味が見えてきます。
災害対応を設備停止までで終わらせず、復旧時の住民行動まで含めて考えることが重要です。
想定ケースで計画が使えるか確かめる
実際の相談記録や事故記録であることを確認できない事例を、実在した相談として扱うことは適切ではありません。
一方、公的資料で示されている設備特性や災害時のリスクから、起こり得る状況を想定し、自分たちの計画が機能するか考えることには意味があります。
排水確認前にトイレを使いたくなった場合
大きな地震のあとに断水し、浴槽には水が残っている状況を考えます。
まず地域の下水道使用制限を確認し、制限が出ている場合にはその案内に従います。使用制限がなくても、マンション内の排水設備を確認できていなければ慎重に扱います。
ここで理事会として確認したいのは、住民がトイレを流してよいか迷った場合に、誰が下水道情報を確認し、誰が建物内の情報を集め、どのような文章で住民へ知らせるのかという運用です。
受水槽には水があるが取水方法が分からない場合
受水槽には水が残っているものの給水ポンプが停止し、各住戸では水が出ない状況を想定します。
非常用給水栓が設けられていたとしても、鍵の保管場所や操作方法を誰も知らなければすぐには利用できません。
この場合に弱点となるのは、受水槽の容量ではなく、非常用設備を利用するための運用が準備されていなかったことです。
平時の確認で一度給水栓まで行き、鍵を開けられるか確かめるだけでも、災害前に大きな問題を発見できることがあります。
給水が復旧した場合
給水が復旧した場合には、蛇口の閉め忘れや漏水の有無に注意するとともに、排水設備についても必要な確認が済んでいるかを確認します。
こうした想定を行うと、書類上は完成していた計画でも、実際には担当者、連絡方法、住民周知のいずれかが不足していると分かる場合があります。
想定ケースは不安をあおるためではなく、自分たちの計画に残っている空白を平時に見つけるために利用します。
年1回程度を目安に小さく訓練する
防災マニュアルが完成すると、大きな仕事が終わったように感じるかもしれません。
しかし、役員は交代し、マンション設備は更新され、管理会社や設備会社の担当者や連絡先も変わります。そのため、数年前に作成したマニュアルを保管しているだけでは、現在も使える状態を維持できません。
管理組合独自の停電・断水への確認については、年1回程度を一つの目安として、設備や役割分担を定期的に確認する方法があります。なお、消防法などに基づいて必要となる訓練については、建物の用途や規模によって条件が異なるため、管理組合独自の防災確認とは分けて扱います。
大きな訓練から始める必要はない
「防災訓練」と聞くと、多くの住民を集め、消防署などと調整した大規模な行事を想像する人がいます。
その負担が大きすぎて何年も実施できないのであれば、最初はもっと小さく始めた方が実用的です。
理事数人で非常用給水栓まで歩き、鍵の場所を確認するだけでも構いません。別の機会にはエレベーターを使わず階段を歩いてみたり、携帯トイレを一つ組み立ててみたりすることもできます。
実際に動けば、書類を読んでいただけでは気づかなかった問題が見つかります。
非常用給水栓までの通路が夜には暗い、鍵の保管者が一人しかいない、緊急連絡先が古くなっている、水を持って高層階まで歩くことが想像以上に難しいなど、問題が具体的になります。
そこで予定どおり動けなかったとしても、訓練を失敗と考える必要はありません。災害が起きる前に問題を発見できたのであれば、その結果を改善へ利用できます。
訓練後はできなかった理由まで確認する
訓練後には参加人数だけを記録するのではなく、予定どおりできなかった理由を確認します。
給水栓を開けられなかったのであれば、鍵が見つからなかったのか、操作方法を誰も知らなかったのかによって改善方法が違います。
高層階まで水を運べなかったのであれば、人手の不足なのか、そもそも計画した搬送方法に無理があるのかを考えます。
原因が分かれば、大規模な設備投資をしなくても改善できる場合があります。鍵の保管方法を変える、副担当者を決める、案内文を一枚追加するという小さな変更でも、翌年には対応しやすくなるでしょう。
防災計画は一度完成させて保管するものではありません。実際に試し、問題を確認し、小さく直すことを繰り返すことで、そのマンションで本当に使える計画へ近づいていきます。
役員交代でも知識が消えない仕組みをつくる
マンションでは、防災に詳しい理事や熱心な担当者がいることで対策が急速に進む場合があります。
その人が設備会社とのやり取りを担当し、マニュアルを作り、備蓄品まで選んでくれれば、他の役員は安心するでしょう。
しかし、その知識が本人の頭の中や個人メールにしか残っていなければ、任期が終わった翌年に「なぜこの設備を導入したのか」「非常用電源は何につながっているのか」が分からなくなる可能性があります。
そこで、設備確認シート、防災マニュアル、理事会議事録、訓練記録などには、結論だけでなく判断理由も残します。
給水設備会社へ何を確認し、どのような回答を受け、なぜ現在のルールを決めたのかまで分かれば、後任の理事は一から調べ直さずに続きを確認できます。
確認済み事項と未確認事項を区別して残すことも重要です。
「資料があるから確認済み」と思い込むのではなく、資料はあるが現状と照合していない、設備会社への確認が必要など、現在地を明確にします。
詳しい人がいるから動く防災ではなく、誰が役員になっても確認の続きを始められる仕組みにすることが、長期的な管理組合の防災力につながります。
管理組合と専門家の役割を分ける
停電・断水対策について調べるほど、「どこまで管理組合が判断し、どこから専門家へ任せればよいのか」が分からなくなることがあります。
この場合には、技術的な安全判断と、マンション内の管理運営を分けて考えると整理しやすくなります。
| 主体 | 主な役割 | 平時の確認 | 発災時の主な役割 |
|---|---|---|---|
| 管理組合 | 意思決定と住民周知 | 対応計画と予算と役割分担 | 状況整理と生活運用と情報発信 |
| マンション管理士 | 管理運営と合意形成の助言 | 規約や細則や計画の整理 | 管理運営上の助言 |
| 管理会社 | 委託契約に基づく管理実務 | 緊急体制と契約範囲 | 契約内容に応じた一次対応や業者手配 |
| 給排水設備会社 | 給排水設備の技術判断 | 給水方式やポンプや水槽の確認 | 原因調査と点検と応急対応 |
| 電気設備会社 | 電源設備の技術判断 | 非常用電源の容量と接続先 | 電気設備の安全確認と復旧 |
| エレベーター保守会社 | 昇降機の安全管理 | 地震時動作と緊急連絡 | 閉じ込め対応と点検と復旧 |
設備会社が非常用給水栓を安全に利用できると確認しても、その給水場所を何時から開け、住民へどの手段で知らせ、自力で水を運べない世帯をどう支援するかまでは設備会社だけでは決められません。
一方で、給水ポンプやエレベーターの技術的な安全性を管理組合だけで判断する必要もありません。
技術判断は専門家へ任せ、その結果を受けて住民生活の運用を管理組合が決めるという分担を明確にすることで、理事長がすべての判断を一人で抱える必要はなくなります。
マンション管理士には、管理規約や細則、防災マニュアル、役割分担、住民説明、専門会社へ確認する論点、理事会や総会での合意形成などを相談できます。
設備を直接点検・修理する専門家ではありませんが、複数の専門家から得た情報を管理組合の意思決定へつなげる場面では活用できます。
マンション停電断水対応のFAQ
- 停電するとマンションは必ず断水しますか?
-
停電しても必ず断水するとは限りません。
直圧直結方式、増圧直結方式、貯水槽水道方式などによって停電時の影響は異なり、ポンプや非常用電源の構成によっても結果は変わります。一般論だけで判断せず、自分のマンションの設備図面と現在の設備を確認してください。
- 受水槽に水があれば使えますか?
-
受水槽内に水が残っていても、給水ポンプが停止していれば各住戸へ通常どおり給水できない場合があります。
非常用給水栓などから取水できる建物もあるため、平時に受水槽の有無だけでなく、停電時の具体的な取水方法まで確認しておくことが重要です。
- 大きな地震の後はトイレを使ってはいけませんか?
-
「大きな地震が起きたら全国一律にすべてのトイレが使用禁止になる」という考え方ではありません。
まず地域で下水道の使用制限が実施されているかを確認し、使用制限が出ている場合にはその案内に従います。使用制限がない場合でも、マンション内の排水設備に破損がないか確認する必要があります。
- 使用制限がなければバケツでトイレを流してよいですか?
-
地域に下水道使用制限がないことだけでは十分ではありません。
建物側の排水管などに異常がないかを確認し、排水できる状態であることを確かめる必要があります。その後の便器の洗浄方法については、メーカーや機種ごとの取扱説明書に従ってください。
- 管理組合は飲料水を何日分備蓄すべきですか?
-
家庭では最低3日分、できれば1週間程度の備蓄が推奨されていますが、それをそのまま管理組合が全住民分について共同備蓄しなければならないという意味ではありません。
管理組合では、戸数、倉庫面積、受水槽、地域の給水体制、要配慮者への支援などを考慮しながら、各家庭の備蓄をどの範囲まで補完するかを検討します。
- 非常用発電機で給水ポンプを動かせますか?
-
設備条件が適合していれば可能ですが、非常用発電機が設置されていることだけでは判断できません。
給水ポンプへの接続、必要容量、起動条件、切替設備、燃料や蓄電容量などを電気設備会社と給排水設備会社へ確認する必要があります。
- 東京とどまるマンションは非常用電源だけでも登録できますか?
-
2026年度の現行制度では、一定の基準を満たす非常用電源のみでも1つ星として登録できます。
2つ星以上については、ソフト対策を登録したうえで、非常用電源、エレベーター閉じ込め防止対策、早期復旧対策、防災備蓄資器材といったハード対策の登録数に応じて星が加算されます。
- エレベーター保守会社へ連絡すれば管理組合は待つだけでよいですか?
-
設備の点検や修理、復旧操作については専門会社へ任せる必要があります。
一方で、停止が長引いている間の住民への情報提供、高層階で生活が難しくなっている人への支援、物資搬送などはマンション側で検討する必要があります。
- マンション管理士にはどこまで相談できますか?
-
管理規約や細則、防災マニュアル、役割分担、住民への説明、専門会社へ確認する事項、合意形成などについて相談できます。
一方、給水ポンプや非常用電源、エレベーターなどの技術的な安全性については、それぞれの設備を担当する専門会社へ確認し、その回答を管理組合の計画へ反映させます。
まとめ 次の理事会では給水方式から確認する
マンションの停電・断水対策で重要なのは、非常用設備をいくつ備えているかだけではありません。
自分たちのマンションで、災害時に何が本当に使えるのかを把握し、設備だけでなく人の動きまで決めておくことが重要です。
まず給水方式、排水設備、非常用給水栓、非常用電源、エレベーターの条件を確認します。その情報をもとに、管理組合では非常用給水、排水対応、住民周知、高層階支援、共同備蓄、緊急連絡などの役割を決めます。
発災したら人命と安全を優先し、水道や下水道など地域側の情報とマンション内の設備状況を切り分けて確認します。設備の専門的な安全判断は専門会社へ任せ、その結果を住民が実際に行動できる情報へ変えることが管理組合の役割です。
復旧後も、設備が戻ったから終わりとは考えません。どの場面で判断に迷い、何が使えず、どの情報が足りなかったのかを記録し、定期的な訓練や次年度の役員への引継ぎに反映させます。
こうして「確認する → 決める → 実際に動く → 振り返る → 改善する」という流れを繰り返すことで、防災計画は書類の中だけにあるものではなく、実際の停電や断水で住民の生活を支える仕組みへ変わっていきます。
最初から完璧な計画を完成させようとすると、調べることの多さに圧倒され、理事会で何から着手すればよいか分からなくなるかもしれません。
だからこそ、最初の行動は小さくて構いません。次の理事会で「このマンションの給水方式は何か」「停電した場合にどの設備まで使えるのか」を確認してください。その一つの確認が、役割分担、住民周知、訓練へとつながり、実際に災害が起きたときの迷いを減らしていきます。
参考資料
東京都住宅政策本部「東京とどまるマンション情報登録・閲覧制度」