マンション管理士

マンションを長年修繕していない場合はどうする? 管理組合が確認したい改善手順をマンション管理士が解説

理事になって初めて管理組合の資料を開き、「前回の大規模修繕はいつだったのだろう」と手が止まることがあります。長期修繕計画は何年も前のままで、修繕積立金が足りるのかも分からない。過去の議事録には「次年度に再検討」と書かれているものの、その後どうなったのか追えない。その状態を初めて知れば、「このマンションは大丈夫なのか」と不安になるでしょう。

さらに資料を読み進めると、「どうして今まで誰も進めなかったのだろう」と感じるかもしれません。一方で、自分自身が数千万円、場合によっては億単位になる修繕について判断する立場になったと気づけば、「これを自分の任期中に決めなければならないのか」という怖さも出てきます。

実のところ、長年修繕が進んでいないマンションでは、誰か一人が意図的に放置していたとは限りません。長期修繕計画が古くなり、資金不足が見えても対策を決め切れず、住民への説明にも自信を持てないまま役員が交代する。そのような小さな先送りが何年も積み重なり、気づいたときには「なぜ修繕していないのかを誰も説明できない状態」になっていることがあります。

だからこそ、新しく問題に気づいた理事が、いきなりすべてを背負う必要はありません。マンションを長年修繕していないと分かったときに最初に行うべきなのは、施工会社を探して見積りを集めることではなく、何が分かっていて何が分からないのかを整理することです。そのうえで、現状把握 → 計画確認 → 資金確認 → 専門家相談 → 合意形成という順番で、止まっていた判断を一つずつ動かしていきます。

この記事では、大規模修繕を長期間実施できていない管理組合や、新しく理事になって初めて問題に気づいた役員に向けて、最初に何を確認し、その結果をどのように改善へつなげればよいのかを詳しく解説します。

TABLE OF CONTENTS
目次

マンションを長年修繕していない場合にまず確認すること

長期間大規模修繕をしていないことに気づくと、多くの人が最初に知りたくなるのは「何年していなければ危険なのか」という数字です。明確な年数が分かれば、自分たちのマンションが安全なのか、すぐ対応しなければならないのかを判断できるように感じるからでしょう。

しかし、大規模修繕の必要性は経過年数だけで一律に決まるものではありません。建物の立地、外壁や防水の仕様、設備構成、日常的な維持管理、これまで行ってきた部分補修などによって、劣化の進み方はマンションごとに異なります。

そのため、「○年以上大規模修繕をしていないから直ちに危険」と判断するのではなく、経過年数は現在の状態を確認するきっかけとして使う方が適切です。最初の段階で確認したいのは工事時期そのものではなく、過去に何をしたのか、現在どのような状態なのか、将来の計画と資金がどうなっているのか、そして管理組合の判断がどこで止まっているのかという全体像です。

前回の大規模修繕だけでなく修繕履歴を確認する

まず確認したいのは、前回の大規模修繕工事を実施した年月です。ただし、その一つの記録だけでは現在までの維持管理状況を十分に把握できません。

たとえば「2018年に大規模修繕を実施」と記録されていても、その工事が外壁、防水、鉄部を中心としたもので、給排水設備までは更新していないことがあります。反対に、大規模修繕という名称の工事を長期間行っていなくても、屋上防水や鉄部塗装、給水ポンプ交換などを個別に実施しているマンションもあります。

そこで、前回の大規模修繕だけを見るのではなく、建物や設備について実際に行った修繕を履歴として整理します。外壁、防水、鉄部、給排水設備、エレベーター、消防設備、機械式駐車場、インターホンなどについて、いつ、どこを、どの程度修繕したのかを確認すると、現在までの維持管理が見えやすくなります。

修繕履歴には、工事名だけでなく実施年月、対象部位、施工内容、最終工事金額、施工会社、関連資料などを結び付けておくと、その後の判断に使いやすくなります。「2018年 大規模修繕」だけでは次の理事が工事範囲を判断できませんが、「外壁補修、屋上防水、鉄部塗装を実施」と分かれば、その後何を確認するべきか考えられるでしょう。

とはいえ、過去何十年分もの資料を最初から完璧に整理しようとすると、それだけで理事会の作業が止まりかねません。まず直近の工事一件を最後まで整理し、その形式を二件目以降へ広げる方法なら、資料が散逸しているマンションでも取り組みやすくなります。

資料が見つからない場合には、記憶や推測で埋めないことも大切です。「工事内容未確認」「契約書未発見」と記録しておけば、後から資料が見つかったときに更新できます。分からない情報を無理に確定させるより、「何が分かっていないか」が見えている方が、次の判断には役立ちます。

長期修繕計画と修繕履歴のずれを確認する

修繕履歴が過去から現在までの実績を示す資料であるのに対し、長期修繕計画は現在から将来へ向けてどのような修繕を予定するかを整理する資料です。この二つを照らし合わせると、計画と現実のずれが見えてきます。

たとえば、長期修繕計画上では数年前に実施済みとなっている防水工事が、実際には延期されたままということがあります。一方で、漏水事故や設備故障によって、計画にはなかった修繕へ積立金を使用している場合もあるでしょう。

長期修繕計画だけを見ていると、「この工事は終わっているはず」「この程度の積立金が残っているはず」と考えてしまいます。しかし、実際の修繕履歴や資金の動きが違えば、その前提で作られた将来収支も現実から離れていきます。

長期修繕計画は、過去に決めた予定へ管理組合を縛り付ける工程表ではありません。建物の現在地と修繕実績を確認しながら、これから何を修繕し、どのように資金を準備するのかを考え直すための資料です。

建物と設備に現在どのような変化が起きているか確認する

資料を確認しても、現在の建物状態までは分かりません。外壁のひび割れやタイルの浮き、鉄部の腐食、防水層の膨れや破れ、雨漏り、給排水設備の漏水や異音など、これまでとは違う変化が起きていないかを確認します。

ここで注意したいのは、理事会の目視だけで安全性まで結論づけないことです。修繕積立金が不足していれば、「まだ見た目は大丈夫そうだから数年待てるのでは」と考えたくなることがあります。区分所有者の負担を増やしたくないという思いが強ければ、延期できる理由を探したくなることもあるでしょう。

しかし、資金上の希望と建物の状態は別の問題です。必要に応じて建築士などの技術専門家へ相談し、現在の状態を踏まえて、早めの対応を検討すべき部分、今後の計画修繕へ組み込める部分、一定期間状態を確認しながら判断できる部分を整理します。

ここで大切なのは、いきなり「全部直すか、全部延期するか」という二択にしないことです。「古いマンションだから何もかも危険なのでは」という漠然とした不安を、「この部分は早めに確認し、この部分は今後の計画へ入れる」という具体的な課題へ変えることが現状把握の目的です。

修繕積立金の現在残高と計画残高を比べる

修繕積立金については、現在いくら残っているかだけでは判断できません。仮に5,000万円の残高があればかなり資金があるように見えますが、数年以内に予定される工事費が8,000万円なら、そのままでは不足が見込まれます。

反対に現在残高がそれほど多くなくても、次回工事まで期間があり、その間の修繕積立金収入を含めれば必要額を確保できる場合があります。そのため、現在の預金残高だけではなく、今後いつ、どれだけの収入があり、いつ、いくらの支出を予定しているのかを見る必要があります。

さらに確認したいのが、長期修繕計画上では現在いくら残っている予定だったのかという計画残高と、実際の残高との差です。差が生じている場合には、過去の大規模修繕工事費が当初計画より高くなった、漏水などの計画外工事で積立金を取り崩した、計画では積立額を増額する予定だったものの実施しなかったといった理由が考えられます。

この確認をすると、「昔の理事会は何をしていたのか」と責任を追及したくなるかもしれません。しかし、当時必要な修繕を優先した可能性もあり、区分所有者の生活負担を考えて値上げを見送った事情もあったでしょう。

現在の理事会が知りたいのは、過去の善悪ではありません。計画と現実がどこで離れたのかを把握し、そのずれを今後繰り返さないための材料を得ることです。

管理費会計と修繕積立金の滞納状況も確認する

修繕積立金不足を調べる際には、修繕積立金会計だけを見るのではなく、管理費会計の状態にも目を向けます。管理費会計が慢性的に厳しい場合には、日常的な小修繕や保守が十分に行われていなかったり、特定の収入へ強く依存していたりする可能性があるためです。

また、長期修繕計画では毎月の修繕積立金が予定どおり入る前提で計算されていても、実際には滞納や未収金が生じている場合があります。将来収支を考えるときには徴収予定額だけを見るのではなく、実際にどれだけ入金されているのかを確認してください。

将来的に管理組合として融資を利用する場合にも、財務状態や滞納状況が確認対象になることがあります。工事直前になって初めて資金調達の条件を調べるより、資金不足が見え始めた段階から会計全体を確認しておく方が、取れる選択肢を残しやすくなります。

理事会の意思決定がどこで止まっているか確認する

建物や資金だけでなく、管理組合が判断を続けられているかも重要な確認事項です。理事会を毎月開催しているからといって、必ずしも意思決定が機能しているとは限りません。

見積書が何か月も保留され、修繕積立金不足について毎回「次回検討」となり、役員交代のたびに同じ説明から始めているのであれば、情報確認から実行までの流れが途中で切れている可能性があります。

マンションの役員は、多くの場合、本業や家庭を抱えながら管理組合活動をしています。建築や財務の専門知識がない状態で高額な工事の判断を求められれば、「間違えたら責任を問われるのではないか」と怖くなるのも無理はありません。

その心理が「今回は決めず、次年度へ送ろう」という判断につながり、それが何年も積み重なることがあります。だからこそ、誰か一人を責めるのではなく、情報確認、審議、決定、実行、進捗確認、役員への引継ぎという流れのどこで止まっているのかを確認する方が、改善につながりやすくなります。

修繕未実施度チェックリスト

次のチェックリストは、「何項目なら危険」と判定するためのものではありません。何が分かっていて、何をこれから確認する必要があるのかを理事会で共有するために使用します。

  • 前回の大規模修繕工事の年月が分からない
  • 修繕履歴が一覧化されていない
  • 工事契約書や竣工図書の保存場所が分からない
  • 長期修繕計画と実際の修繕履歴を照合していない
  • 長期修繕計画を長期間確認していない
  • 現在の工事価格や建物状態を計画へ反映していない
  • 修繕積立金の現在残高しか把握していない
  • 計画上の残高と実際残高を比べていない
  • 将来いつ資金不足が発生する可能性があるか分からない
  • 管理費会計を含めた財務状態を理事会が説明できない
  • 修繕積立金の滞納状況を把握していない
  • 建物の不具合について必要な専門的確認をしていない
  • 雨漏りや設備故障など同じ問題が繰り返されている
  • 工事見積りや提案書が長期間未処理になっている
  • 修繕問題が何年も理事会で持ち越されている
  • 修繕委員会の役割や期限が明確になっていない
  • 前任役員から継続案件の引継ぎが十分ではない
  • 区分所有者へ検討途中の状況を共有していない
  • 誰が何をいつまでに確認するか決まっていない
  • 工事を延期した後の再確認時期が決まっていない

複数該当しても、直ちに手遅れという意味ではありません。一方で一項目しか該当しなくても、安全性に関係する不具合が確認されている場合には早めの対応が必要になる可能性があります。

ここまでの章で行うのは、あくまで診断です。すぐ工事をするかどうかを決めるのではなく、「自分たちのマンションでは何が確認できていて、何がまだ分からないのか」を見える状態にします。

マンション修繕が実施できなくなる主な原因

確認を進めていくと、修繕が長年止まっている理由は一つではないことが見えてくるでしょう。長期修繕計画が古くなり、必要額を正確に把握できないまま積立金不足が進み、資金不足に気づいても負担増を提案する自信が持てず、理事会の議論が止まる。その状態で区分所有者へ説明すれば反対が強まり、再び翌年度へ先送りされるという連鎖が起こることがあります。

この状態では、施工会社を探して見積りを取るだけでは根本的な改善になりません。工事ができないという結果ではなく、なぜそこまで判断が進まなかったのかを確認する必要があります。

長期修繕計画が更新されていない

長期修繕計画は、将来必要になる修繕内容、おおよその実施時期、推定工事費、修繕積立金との収支を整理するための資料です。しかし、マンションの建物状態も工事価格も変化し、新しい材料や工法が使われるようになることもあれば、予定外の不具合によって工事計画が変わることもあります。

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、このような不確定要素があることから、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて長期修繕計画を見直すことが必要とされています。また、計画の見直しにはおおむね1年から2年程度を要することがあるため、計画的に取り組む考え方も示されています。

ここで注意したいのは、「5年経過したら長期修繕計画が無効になる」という意味ではないことです。5年という数字だけで機械的に判断するのではなく、5年程度を一つの区切りとして建物や設備を調査・診断し、その結果と工事価格、修繕実績、資金状況を踏まえて計画を見直します。

また、大規模修繕が完了した後、工事価格が大きく変動したとき、設備の利用状況が変わったときなどには、次の定期的な確認を待たずに計画とのずれを確認する意味があります。

長期修繕計画は、何年かに一度作って棚へ戻す資料ではありません。建物の現実と管理組合の資金を、定期的につなぎ直すための道具です。

修繕積立金が不足している

長期修繕計画を見直して初めて、「次回の大規模修繕までに数千万円足りない」と分かることがあります。その数字を目の前にすれば、理事会で誰も発言しなくなり、「この金額を住民に説明したら反対される」「自分たちの任期中には決めたくない」と感じることもあるでしょう。

しかし、資金不足が分かったことは問題解決の終点ではなく、対策を考えるための出発点です。まず、なぜ不足したのかを確認します。

過去の工事費が計画額より増えたのか、予定外修繕が重なったのか、計画していた積立金増額を実施しなかったのか、滞納によって実際の収入が減っているのかによって、取るべき対策は変わります。

不足原因を確認しないまま毎月の積立額だけを増やすと、数年後に再び不足する可能性があります。そのため、修繕積立金の見直し、一時金、借入れ、工事項目や実施時期の調整を比較し、管理組合が「なぜこの方法を選ぶのか」を説明できる状態へ進めます。

理事会や修繕委員会が機能していない

大規模修繕は、数か月で完結する問題ではありません。建物調査、長期修繕計画の確認、資金検討、住民説明、工事会社選定まで考えれば、複数年度にまたがることもあります。

一方で、理事会役員が短期間で交代するマンションでは、「自分の任期では結論まで行かない」と分かると、どうしても優先順位を下げたくなります。修繕委員会を設けても、その役割が曖昧なら同じで、理事会と修繕委員会のどちらが何を決めるのか分からず、結果として判断が止まることがあります。

ここで必要なのは、役員全員が建築や財務の専門家になることではありません。管理組合自身で決める事項、管理会社へ確認する事項、建築士へ技術判断を求める事項、マンション管理士などへ運営や合意形成について相談する事項を分けることです。

「何でも自分たちだけで決めなければならない」という重さを下ろすことで、理事会が再び動き出す場合もあります。

区分所有者の合意形成が進まない

修繕積立金を増額すると説明すれば、「これ以上毎月の負担を増やせない」という意見が出ることがあります。年金生活の世帯にとって数千円の増額でも軽い話ではありませんし、投資目的で所有している人なら「自分は住んでいないのに、なぜ今この費用を負担するのか」と考えることもあるでしょう。

それぞれの反対には理由があります。それにもかかわらず、総会直前になって「大規模修繕が必要なので月額を上げます」と結論だけを伝えれば、「理事会が勝手に決めた」と受け止められる可能性があります。

そこで、合意形成では反対者を説得することより、判断材料を共有することを優先します。現在の建物状態、今後必要と考えられる工事、現在の修繕積立金、将来の不足時期、何もしなかった場合の収支、値上げや借入れを行った場合の変化を示します。

全員の考え方を同じにすることは難しくても、同じ情報を見ながら「なぜこの選択肢を検討しているのか」を議論できる状態には近づけます。

マンションを長年修繕していない状態を改善する5つの手順

ここからは、前章までに確認した問題を実際の行動へどうつなげるのかを整理します。確認段階では「何が分からないのか」を洗い出しましたが、改善段階では、その確認結果を使って次の判断を一つずつ進めます。

手順1 現状整理表を作って担当と期限を決める

最初に、これまで確認した事項を一枚の表へまとめます。前回大規模修繕の年月は確認済みだが屋上防水の詳細が分からない、長期修繕計画はあるものの作成から長期間経過している、修繕積立金の現在残高は分かるが計画残高との比較をしていないというように、現在地を一覧化します。

次に、誰がいつまでに確認するのかを決めます。「管理会社へ確認する」というだけでは、次回理事会でも未確認のままになりやすいでしょう。「理事長が管理会社へ前回工事資料を依頼し、次回理事会までに共有する」と具体化すれば、実行へつながります。

大規模修繕を動かす最初の一歩は、大きな総会決議ではありません。次回までに誰が何を確認するのかを決め、その結果が次の理事会へ戻ってくる仕組みを作ることです。

手順2 調査結果を踏まえて長期修繕計画を確認する

建物状態と修繕履歴がある程度分かったら、長期修繕計画へ戻ります。工事項目に抜けがないか、計画上の工事を本当に実施したのか、予定外工事を反映しているか、推定工事費が現在とかけ離れていないかを確認します。

また、国土交通省が示す5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すという考え方も踏まえ、長期間確認されていない計画であれば、現在の建物状態や工事価格、過去の修繕実績とのずれを検証します。

この段階では、「長期修繕計画に書かれている年だから工事する」と考えるのではありません。計画と現実を照合し、今後どの工事をどの時期に検討するのかを改めて組み立てます。

手順3 資金不足の時期と対策を数字で比較する

次に、現在の計画を基に将来収支を確認します。現在の修繕積立金額を維持した場合にどの時点で残高が不足するのか、積立額を変更するとどう変わるのか、一時金を組み合わせる場合には各戸の負担がどうなるのか、借入れを利用する場合には返済期間中の資金がどう推移するのかを比較します。

ここまで進めば、理事会が見ている問題は「何となくお金が足りない」という状態ではありません。「数年後に不足が見込まれる」「次回工事までには不足する」「この案なら不足時期を避けられる」という形で具体的に議論できます。

数字が見えることで不安が強くなる人もいるでしょう。それでも、何も分からないまま工事時期を迎えるより、金額と時期が分かっている方が取れる対策は増えます。

手順4 判断できない部分を専門家へ切り分けて相談する

現状と資金が整理できたら、理事会だけでは判断しにくい部分を専門家へ相談します。ここで大切なのは、「誰に全部任せればよいか」を考えるのではなく、「何を判断するために誰へ相談するのか」を整理することです。

建物の詳細な劣化状態を確認したいのであれば、建築士などの技術専門家が中心になります。一方、管理組合の運営、長期修繕計画、修繕積立金、総会や合意形成の論点を整理したい場合には、マンション管理士が相談先の一つになるでしょう。

管理会社が保有している過去資料や日常管理情報も重要です。管理会社、マンション管理士、建築士を対立させるのではなく、それぞれが持つ情報や専門性を使い分ける方が合理的な場合があります。

手順5 結論ではなく判断材料から区分所有者へ共有する

最後に合意形成へ進みます。ただし、最終案が完成するまで何も知らせないのではなく、「いま何を確認しているのか」という途中経過から共有していきます。

たとえば建物調査を実施した理由、長期修繕計画を見直している背景、現在の積立額のままでは将来不足する可能性があることなどを段階的に伝えます。その後、現在の積立額を維持した場合、増額した場合、借入れを利用した場合などを比較して示せば、区分所有者も「理事会が値上げしたいから提案している」のではなく、「問題に対する複数の選択肢を比較している」と理解しやすくなります。

合意形成では、結論を急ぐことより、結論へ至る道筋が見えることが重要です。

改善までのフロー図

改善の基本的な流れは、修繕履歴と不具合を確認 → 必要に応じて建物を調査・診断 → 長期修繕計画と実績を照合 → 修繕積立金と将来収支を確認 → 資金不足の原因と対策を比較 → 必要な専門家へ相談 → 区分所有者へ判断材料を共有 → 必要な総会決議 → 工事または暫定対応 → 修繕履歴と長期修繕計画へ反映となります。

改善までのフロー図 修繕履歴と不具合を確認 必要に応じて建物を調査・診断 長期修繕計画と実績を照合 修繕積立金と将来収支を確認 資金不足の原因と対策を比較 必要な専門家へ相談 区分所有者へ判断材料を共有 必要な総会決議 工事または暫定対応 修繕履歴と長期修繕計画へ反映
改善の基本的な流れは、修繕履歴と不具合を確認 → 必要に応じて建物を調査・診断 → 長期修繕計画と実績を照合 → 修繕積立金と将来収支を確認 → 資金不足の原因と対策を比較 → 必要な専門家へ相談 → 区分所有者へ判断材料を共有 → 必要な総会決議 → 工事または暫定対応 → 修繕履歴と長期修繕計画へ反映となります。

一度の理事会ですべてを進める必要はありません。今月は資料整理、翌月は計画確認、その次は資金シミュレーションというように、理事会が継続できる単位へ分けて進めます。

長年止まっていたマンションでは、一気に解決することより、次の行動が途切れない仕組みを作ることの方が重要です。

修繕積立金が足りない場合の考え方

長期修繕計画を見直した結果、将来の修繕積立金不足が明確になることがあります。「工事費が高すぎる」「こんな増額は総会で通らない」と感じれば、計画を見なかったことにしたくなるかもしれません。

しかし、資金不足が見えたことは状況が悪化したのではなく、問題を具体的に扱える段階へ進んだということでもあります。ここでは、目の前の不足額だけでなく、なぜ不足したのか、どの時期に不足するのか、その後の収支をどう立て直すのかまで考えます。

不足金額より不足原因を先に確認する

最初に、計画上の残高と実際残高を比較します。そこに差がある場合には、過去の工事費増加、予定外工事、積立金増額の未実施、滞納など、差が生じた理由を調べます。

不足原因を確認せずに値上げ額だけを決めると、増額後も別の原因によって再び資金不足になる可能性があります。そのため、「いくら足りないのか」と同じくらい、「なぜ足りなくなったのか」を確認することが重要です。

修繕積立金の増額は自分たちの長期修繕計画から考える

国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインでは、マンションの規模などに応じた修繕積立金額の目安が示されています。ただし、一つの㎡単価をすべてのマンションへ当てはめて判断するものではありません。

建物規模、設備、機械式駐車場の有無、今後予定している修繕などによって必要額は変わります。そのため、「国の平均額へ合わせる」と考えるのではなく、自分たちの長期修繕計画から必要な収入を確認することが基本です。

現状の積立額を続けた場合と増額した場合の将来残高を比較すれば、「なぜこの金額まで増やす必要があるのか」を区分所有者へ説明しやすくなります。

一時金は今回の工事後まで考える

直近の大規模修繕まで時間がなく、現在残高だけでは足りない場合には、一時金を検討することがあります。一度にまとまった資金を確保できますが、高額になれば家計への影響が大きく、支払いが難しい区分所有者が出る可能性もあります。

また、一時金で今回の工事を乗り切れても、毎月の積立金が不足したままなら次の修繕で再び同じ問題が起こります。そのため、一時金を検討する場合には、今回の不足額だけでなく、その後の積立額と将来収支も一緒に考えます。

借入れは将来の返済まで含めて判断する

現在の積立金では必要な工事を実施できない場合、管理組合として借入れを検討する方法があります。住宅金融支援機構には、マンション共用部分のリフォームを対象とした管理組合向けの融資制度があります。

ただし、借入れをすれば資金不足そのものが消えるわけではありません。将来徴収する修繕積立金などから返済していくため、返済期間中にも次の修繕へ向けた資金を確保できるか確認する必要があります。

借入れは、足りないお金を新たに生み出すというより、支払い時期を将来へ分散する方法でもあります。だからこそ、借入額だけではなく、その後の返済と次の修繕を含めた収支まで見る必要があります。

工事項目は高い順に削らない

修繕積立金が不足すると、工事見積りを見ながら「この項目を削れば安くなる」と考えやすくなります。しかし、価格が高いという理由だけで工事を外すと、本来優先して対応すべき部分まで延期する可能性があります。

工事範囲を見直す場合には、建物状態を踏まえて、今対応すべき工事、時期を調整できる工事、ほかの工事とまとめた方が合理的な工事を整理します。資金不足のときに必要なのは単純な削減ではなく、限られた資金をどの順番で使うのかという優先順位です。

大規模修繕を先送りするときの注意点

大規模修繕は、計画に記載された年になったという理由だけで機械的に実施するものではありません。実際の建物状態を確認した結果として、当初予定していた工事時期を調整できる可能性があります。

一方で、「資金がないから調査せず延期すること」と「建物の状態を確認した結果として延期できると判断すること」は異なります。延期そのものが問題なのではなく、根拠のない先送りが繰り返されることに注意が必要です。

延期年数を先に決めない

「あと3年延ばせれば、その間に積立金を増やせる」と考えることがあります。資金面だけを見れば合理的に感じるでしょう。

しかし、その3年間を建物が問題なく待てるかどうかは別の判断です。必要に応じて建物状態を確認し、大規模修繕全体の時期を調整できるのか、部分的な補修を先に行う必要があるのかを判断します。

資金計画から希望する延期期間を決めるのではなく、建物状態を踏まえて工事時期を考える順番が重要です。

大規模修繕と緊急補修を分ける

大規模修繕全体を延期する場合でも、現在発生している漏水や安全面に関係する問題まで延期する必要はありません。必要な部分だけ補修を先行することで、全体工事の時期を調整できる場合があります。

反対に、数年後にまとめて直すことを理由に必要な補修まで止めれば、劣化が広がり、結果として工事費が増える可能性もあります。大規模修繕を延期する場合ほど、「全体を延期すること」と「現在必要な補修を行わないこと」を混同しないようにします。

延期理由と再確認時期を議事録へ残す

「来年再検討」という記録だけでは、翌年度の理事会はなぜ延期したのか分かりません。延期時には、建物状態、調査結果、資金状況、当面行う補修、再調査の予定、次回の判断時期を記録します。

たとえば「翌年6月までに再調査を行い、7月理事会で大規模修繕の実施時期を再検討する」と決めておけば、役員が交代しても次の行動を引き継げます。

延期理由と再確認時期を議事録へ残す 翌年6月までに再調査を行い 7月理事会で大規模修繕の 実施時期を再検討する
たとえば「翌年6月までに再調査を行い、7月理事会で大規模修繕の実施時期を再検討する」と決めておけば、役員が交代しても次の行動を引き継げます。

延期は何もしない期間ではありません。次の判断時期まで建物を確認しながら管理する期間として位置付けることが重要です。

マンション管理士に相談できること

長年修繕が止まっているマンションでは、建物の問題だけでなく、長期修繕計画、修繕積立金、管理規約、理事会運営、区分所有者との合意形成などが複雑に重なります。管理組合内部だけでは、何から手を付ければよいのか分からなくなることもあるでしょう。

このようなとき、管理組合側の課題整理や意思決定について相談できる専門家の一つがマンション管理士です。ただし、マンション管理士へ相談すれば積立金の値上げを避けられるわけでも、建物診断から施工まで何でも任せられるわけでもありません。

専門家を利用する目的は、管理組合の代わりに答えを決めてもらうことではなく、管理組合自身が選択肢を比較し、理由を持って答えを選べる状態を作ることです。

修繕積立金不足の原因整理を相談する

長期修繕計画、決算資料、修繕履歴などを基に、なぜ資金不足が生じているのか整理する相談が考えられます。

管理会社から大幅な積立金増額案を提示されたものの根拠が分からない場合や、一時金、借入れ、増額のどれを検討すればよいのか整理できない場合にも、第三者へ相談する意味があります。

第三者が確認した結果、管理会社の提案が合理的だと分かることもあるでしょう。専門家へ相談する目的は既存提案を否定することではなく、管理組合自身がその根拠を理解し、納得して判断できるようにすることです。

長期修繕計画の判断材料を整理する

長期修繕計画について、修繕項目に抜けがないか、修繕周期をどのように考えるか、推定工事費の根拠が確認できるか、何年後に資金不足が発生するのかといった論点を整理する支援も考えられます。

ただし、外壁の詳細な打診調査、配管調査、改修設計などは建築技術に関する業務です。マンション管理士資格だけで、すべての建築技術業務に対応できるわけではありません。

相談するときには「マンション管理士だから何でもできる」と考えるのではなく、実際にどの業務を依頼するのか、そのために必要な資格や経験があるのかを確認します。

住民説明や合意形成の進め方を相談する

修繕積立金の増額や大規模修繕では、技術的な検討以上に住民説明へ時間がかかる場合があります。専門用語ばかりの資料を配布すれば、区分所有者から見えるのは「結局いくら負担が増えるのか」という部分だけになりかねません。

そこで、なぜ修繕を検討しているのか、建物が現在どうなっているのか、資金は今後どのように変化するのかを、住民が判断できる形へ整理します。

マンション管理士には、管理組合運営、総会手続き、理事会での論点整理、住民説明資料の整理などについて相談できる場合があります。技術的な説明については建築士などと役割を分ければ、管理組合運営と建物技術の両面から説明しやすくなるでしょう。

管理会社と建築士と施工会社との役割の違い

大規模修繕を考え始めると、管理会社、マンション管理士、建築士、施工会社など複数の関係者が登場します。「結局、誰へ頼めばいいのか」と迷う人も多いでしょう。

それぞれには異なる役割があるため、一社または一人だけですべてを担うと考えない方が整理しやすくなります。

関係者 主な役割 修繕時に確認したいこと
管理会社日常管理や管理組合運営の支援過去の管理情報や修繕履歴、管理委託契約に含まれる業務範囲
マンション管理士管理組合運営や意思決定の支援長期修繕計画、資金問題、合意形成、総会手続きなどの論点
建築士・設計事務所建物の技術調査や改修設計など劣化状態、工事仕様、設計、必要に応じた工事監理
施工会社実際の工事施工見積条件、施工範囲、使用材料、施工体制、保証内容

管理会社とマンション管理士を必ず対立関係として考える必要はありません。管理会社が保有している日常管理や過去工事の情報を活用しながら、必要な部分について別の専門家から計画や技術面の確認を受ける方法もあります。

一方で、誰に依頼する場合でも契約内容、報酬体系、施工会社などとの関係を確認してください。「専門家」という肩書だけで中立性を判断するのではなく、どの立場から、誰のために、何を行う契約なのかを見ることが重要です。

管理組合が相談前にそろえておきたい資料

専門家へ相談する前に、すべての資料を完璧にそろえる必要はありません。むしろ、何が保管されていて、何が見つからないのかを把握すること自体が現状確認になります。

ただし、手元にある資料をまとめておけば、初回相談から「何が問題なのか」という具体的な話へ入りやすくなります。

初回相談時に確認する書類一覧

資料 主に確認する内容
管理規約・使用細則修繕積立金の使途や管理組合の意思決定手続き
総会議案書・総会議事録過去に決議した事項や未処理案件
理事会議事録修繕検討が止まった経緯や継続案件
現在の長期修繕計画今後予定される工事や推定工事費、収支
過去の長期修繕計画計画変更の経緯
修繕履歴一覧実際に実施した修繕や改修
工事請負契約書工事内容や契約金額
竣工図書・完了報告書実際に施工した内容
保証書保証対象や保証期間
建物調査・点検報告書過去に指摘された劣化や設備状態
直近の決算書・予算書管理組合全体の財務状態
修繕積立金残高資料現在の実際残高
滞納・未収金資料徴収予定額と実際の入金状況
管理委託契約書管理会社へ依頼している業務の範囲
竣工図・設計図書建物や設備の基本情報
取得済みの工事見積書現在提案されている工事範囲や費用
不具合記録・写真現在発生している問題

資料が見つからない場合でも相談はできます。まず直近の工事一件から履歴を作り、「何が確認できていて、何が未確認なのか」を整理します。

長期的には、修繕履歴一覧から工事契約書や竣工図書へたどれるように資料番号などで関連付けておくと、役員が交代しても確認しやすくなります。「前の理事長しか知らない」という状態から、「資料を見れば経緯が分かる」という状態へ変えることも、修繕体制を正常化するための重要な作業です。

マンション修繕が止まったときに詰まりやすい想定事例

ここでは、改善手順そのものをもう一度繰り返すのではなく、実際に理事会が途中で止まりやすい場面を想定して考えます。特定の実在マンションを示す事例ではなく、複数の典型的な状況を組み合わせた想定例です。

建物調査後に想定以上の工事費が見えて理事会が止まる

あるマンションでは、長期間大規模修繕を実施できていなかったため建物状態を調べたところ、複数の修繕項目を今後検討する必要があると分かりました。長期修繕計画を現在の状況に合わせて確認すると、現在の修繕積立金だけでは必要な工事費を賄えない可能性も見えてきます。

この瞬間、理事会では「これでは何もできない」「住民へ説明したら反対される」という空気が広がりました。修繕問題では、このように問題が具体化したときに、かえって判断が止まりやすくなります。

しかし、「足りない」という事実だけではまだ結論は出ていません。不足する時期を確認し、積立額を増額した場合、一時金を利用した場合、借入れを組み合わせた場合、工事時期を調整した場合の違いを比較すれば、議論は続けられます。

最初に見えた不足額を「工事ができない証拠」と捉えるのではなく、「比較すべき選択肢が分かった状態」と捉えることが重要です。

値上げ反対の声を聞いて提案そのものを止めたくなる

別の場面では、修繕積立金の見直しを検討していると区分所有者へ伝えたところ、「絶対に値上げには反対だ」という声が出ました。理事会としては、「これでは総会を開いても否決される」と感じ、議案提出そのものを先送りしたくなるかもしれません。

しかし、「反対」という言葉だけでは本当の理由は分かりません。工事の必要性を理解していないのか、値上げ額の根拠が分からないのか、家計上の負担が難しいのかによって必要な対応は違います。

この段階では、賛成してもらうことを急ぐのではなく、質問や不安の内容を分けます。理事会が答えられない技術的な質問は建築士へ確認し、資金や管理組合運営については必要な専門家へ相談します。

住民から質問が出ることは、合意形成の失敗ではありません。どこがまだ伝わっておらず、何を追加で確認する必要があるのかが見えたという意味でもあります。

工事後に安心して記録を残さず次の世代へ問題を送る

無事に大規模修繕が終われば、理事会もようやく肩の荷が下りるでしょう。しかし、その安心感から工事契約書、最終精算、保証書、設計変更、追加工事の理由などが十分整理されないまま役員が交代すると、次回の修繕時に同じ問題が起こります。

「前回工事でどこまで直したのか」が分からなくなり、新しい理事が再び過去資料を探すところから始めなければなりません。

そのため、工事完了後には結果を修繕履歴へ追加し、長期修繕計画へ反映し、なぜその工事範囲や資金方法を選んだのかを議事録へ残します。次の役員が「前の人に聞かないと分からない」と困らない状態を残すことも、現在の理事会ができる重要な修繕の一つです。

マンション修繕未実施でよくある質問

大規模修繕を何年していないと問題ですか

一律に「○年以上なら危険」と判断することはできません。大規模修繕の必要性は、建物の仕様、立地、使用材料、過去の補修、現在の劣化状況などによって異なります。

前回工事から長期間経過している場合には、その年数を工事決定の基準とするのではなく、修繕履歴や建物状態を確認するきっかけとして使い、必要に応じて専門家へ確認します。

修繕積立金が足りない場合はどうすればよいですか

まず不足額だけではなく、不足する時期と原因を確認します。そのうえで、修繕積立金の見直し、一時金、借入れ、工事項目や実施時期の調整などを比較します。

資金不足が分かったからといって、直ちに全面的な工事延期しか選べないという意味ではありません。現在の建物状態と将来収支を踏まえ、複数の対応方法を比較することが重要です。

長期修繕計画は何年ごとに見直す必要がありますか

国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインでは、建物や設備の劣化、物価、工事費などが変化するため、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて長期修繕計画を見直すことが必要とされています。

したがって、「5年経過したら自動的に計画書を全面改訂しなければならない」と機械的に捉えるのではなく、5年程度を一つの目安として建物や設備の状態を確認し、その結果を計画へ反映するという理解が適切です。

長期修繕計画が古いままでも工事できますか

長期修繕計画が古いという理由だけで、工事そのものができなくなるわけではありません。しかし、現在の建物状態、修繕履歴、工事価格と大きくずれている計画では、工事内容や資金計画を判断する資料として不十分になる可能性があります。

大きな工事へ進む前には、現在の状態と計画のずれを確認し、必要に応じて見直す方がよいでしょう。

管理会社だけに相談すればよいですか

管理会社は、日常管理や過去の経緯を把握している重要な相談先です。一方で、詳細な建物調査には建築士などの技術専門家、管理組合運営や合意形成の整理にはマンション管理士など、別の専門性が必要になる場合があります。

管理会社か外部専門家かという二択ではなく、判断したい内容に応じて役割を組み合わせて考えます。

マンション管理士は建物診断もできますか

マンション管理士は、マンション管理や管理組合運営について助言や支援を行う専門資格です。資格を持っていることだけで、詳細な外壁調査、配管調査、改修設計などすべての建築技術業務を行えるという意味ではありません。

建築士資格などを併有している場合もあるため、依頼時には実際に行う業務、保有資格、経験を確認してください。

大規模修繕を延期してもよいケースはありますか

建物状態を確認した結果、当初予定より工事時期を調整できる可能性はあります。ただし、「○年までなら延期して大丈夫」という一律の判断はできません。

延期する場合には、必要な部分補修、次回の調査時期、再検討する時期、将来の資金計画まで決め、延期後も状態を確認し続けることが重要です。

管理計画認定制度からマンションの修繕状況を振り返る

管理組合が「自分たちの管理はどの程度整っているのか」と客観的に確認したい場合には、管理計画認定制度の基準も参考になります。

2026年8月時点の認定基準では、管理組合の運営、管理規約、管理費と修繕積立金等の区分経理などに加え、長期修繕計画についても複数の基準が設けられています。

具体的には、長期修繕計画の作成または見直しが7年以内であること、計画期間が30年以上であること、残存期間内に大規模修繕工事が2回以上含まれていることなどが確認事項となっています。

ここで混同しないようにしたいのが、「5年程度」と「7年以内」の違いです。国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインで示される5年程度は、建物や設備を調査・診断し、その結果を踏まえて計画を見直していくための考え方です。一方、7年以内は、2026年8月時点の管理計画認定制度における認定基準であり、同じ意味ではありません。

5年程度 7年以内
国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインで示される5年程度は、建物や設備を調査・診断し、その結果を踏まえて計画を見直していくための考え方です。 一方、7年以内は、2026年8月時点の管理計画認定制度における認定基準であり、同じ意味ではありません。

また、管理計画認定制度については、2026年7月31日に改正省令・告示が公布されており、2027年4月1日以降の申請には見直し後の認定基準が適用されます。認定取得を検討している場合には、この記事の記載だけで判断せず、申請時点の国土交通省および申請先地方公共団体の最新基準を確認してください。

認定を申請しないマンションであっても、基準を確認する意味はあります。長期修繕計画はあるものの長期間確認していない、修繕積立金残高は知っているものの将来収支を把握していないといった管理上の弱点を見つける参考になるからです。

マンションを長年修繕していない管理組合が今からできること

ここまで読んで、「確認することが多すぎて、結局どこから始めればよいのか」と感じた人もいるかもしれません。その場合には、今月中に施工会社や工事内容まで決めようとする必要はありません。

最初に確認する対象を、前回の大規模修繕時期、現在の長期修繕計画、修繕積立金の実際残高の三つまで絞ってみます。前回工事が分からなければ資料を探し、長期修繕計画が古ければ現在とのずれを確認し、修繕積立金については現在残高だけでなく計画上の残高や今後の工事との関係を見るところまで進めます。

そして、次回理事会までに誰が何を確認するかを決めてください。数か月後に最初の確認表を見返したとき、「未確認」だった項目が「確認済み」「専門家へ確認中」「次回総会で説明予定」へ変わっていれば、管理組合は前へ進んでいます。

その変化は、小さく見えるかもしれません。しかし、何年も「次年度検討」で止まっていたマンションにとって、次の行動が決まり、その結果が理事会へ戻ってくる仕組みができたことは大きな変化です。

問題を一度に解決する必要はありません。必要なのは、止まらずに確認と判断を続けられる管理組合へ戻すことです。

まとめ 工事の前に現状と計画と資金を整理する

マンションを長年修繕していないことに気づけば、「早く施工会社を探して工事を始めなければ」と焦るかもしれません。しかし、建物状態、修繕履歴、長期修繕計画、修繕積立金の将来収支が整理されていない状態で見積りだけを集めても、管理組合は何を基準に工事内容や金額を判断すればよいのか分かりません。

まず、現在の建物と過去の修繕履歴を確認します。その結果を長期修繕計画と照らし合わせ、国土交通省が示す5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果を踏まえて計画を見直すという考え方も参考にしながら、現在の計画が現実に合っているのかを確認します。

次に、修繕積立金の現在残高だけではなく、将来の収入と工事費を比較し、いつ、なぜ不足する可能性があるのかを整理します。そのうえで、管理組合だけでは判断しにくい部分をマンション管理士や建築士など必要な専門家へ相談し、区分所有者には結論だけではなく判断材料から共有して合意形成へ進みます。

この記事で最も持ち帰ってほしいのは、工事会社の選び方ではありません。長年修繕が止まっていても、まず現状を確認し、計画と資金を整理すれば、管理組合は再び判断できる状態へ戻せるということです。

大規模修繕を一度終えるだけではなく、「今どうなっていて、なぜこの対応を選ぶのか」を理事会が説明でき、その判断を次の役員へ引き継げる状態を作ることが、長期的なマンション管理の立て直しにつながります。

まとめ 工事の前に現状と計画と資金を整理する 現在の建物と過去の修繕履歴を確認します 将来の収入と工事費を比較し 必要な専門家へ相談し 区分所有者には結論だけではなく判断材料から共有して 合意形成へ進みます
大規模修繕を一度終えるだけではなく、「今どうなっていて、なぜこの対応を選ぶのか」を理事会が説明でき、その判断を次の役員へ引き継げる状態を作ることが、長期的なマンション管理の立て直しにつながります。

参考資料

本文の中心となる長期修繕計画の考え方については、国土交通省の資料で、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直す考え方などを確認できます。

国土交通省 長期修繕計画作成ガイドライン

修繕積立金の考え方や金額の目安、積立方式については、次のガイドラインで確認できます。

国土交通省 マンションの修繕積立金に関するガイドライン

管理計画認定制度の現在の基準や2027年4月1日以降の変更については、国土交通省の案内で最新情報を確認してください。

国土交通省 マンション管理計画認定制度

マンション管理や再生に関する制度を横断的に確認する場合には、次のポータルサイトが参考になります。

国土交通省 マンション管理・再生ポータルサイト

管理組合として修繕工事の借入れを検討する場合には、利用時点の条件や必要書類を住宅金融支援機構の公式情報で確認してください。

住宅金融支援機構 マンションすまい・る融資

人気記事

  • 本日
  • 週間
  • 月間

-マンション管理士