マンション管理士

マンションのエレベーター停止対応計画とは? 管理組合が事前に決めておきたい7つの項目

大きな地震のあと、マンションのエレベーターが止まりました。管理員は不在で、保守会社がいつ来られるのかも分かりません。そのとき理事長や防災担当者には、閉じ込めの確認、住民への周知、高層階への支援など、平常時には考えなくて済んだ判断が一度に求められます。

エレベーター停止対応計画は、その場の勘で乗り切るためのものではありません。誰が確認し、誰へ連絡し、停止が続く間の暮らしをどう支えるのかを、管理組合が発災前に決めておくための計画です。

TABLE OF CONTENTS
目次

エレベーター停止対応計画とは

エレベーター停止対応計画とは、地震や停電などによってマンションのエレベーターが停止した場合に備え、管理組合が連絡方法、役割分担、居住者への情報伝達、生活支援、設備の利用判断、復旧後の周知までをあらかじめ整理しておく緊急時の運用計画です。

ここで最初に区別しておきたいのは、専門事業者が担う仕事と管理側が担う仕事です。エレベーターの専門的な点検、故障診断、修理、復旧操作などは、必要な知識と技術を持つ保守点検業者やメーカー等へ委ねます。一方、所有者や管理者側にも、不具合を把握した場合に必要な使用中止措置を取り、保守点検業者へ連絡し、専門知識がないまま独自に機器へ手を加えないという役割があります。

つまり、管理組合は「専門設備だから何もしなくてよい」のでも、「自分たちで何とか復旧させなければならない」のでもありません。設備に異常があれば専門事業者へつなぎ、その間に居住者へ何を伝え、誰を支援し、マンション内の生活をどう維持するかを管理する立場にあります。

この違いを平常時に理解しておくことには意味があります。大きな地震が起きた直後は、「自分たちで何かしなければ」と焦りやすく、その気持ちが強いほど、管理組合が行うべき生活上の対応と専門家へ任せるべき設備操作の境界が曖昧になりやすいからです。

国土交通省は、大規模地震時のエレベーター復旧について、閉じ込め救出を最優先とし、その後も病院など災害弱者が利用する施設や公共性の高い建物を考慮して復旧する方針を示しています。複数台のエレベーターがある建物では、一棟につき一台を先に復旧させ、地域全体の復旧を進める「1ビル1台復旧」も原則とされています。

そのため、大規模災害時には、保守会社へ連絡したとしても技術者が直ちに到着することを前提にはできません。同時に多数の停止や閉じ込めが発生し、道路や通信にも支障が生じる可能性がある以上、専門家が到着するまでの時間をマンション側でどう支えるかまで考えておく必要があります。

まず把握したい7つの項目

この記事で管理組合が事前に決めておきたい内容は、次の7項目です。後半に出てくるチェックリストや確認資料も、別の新しい課題ではなく、この7項目を実際に運用できる状態へ落とし込むためのものです。

7項目 管理組合が事前に決めること
①連絡ルール 停止や閉じ込めを誰が確認し誰がどこへ連絡するか
②役割分担 管理組合と管理会社と保守会社が何を担うか
③情報伝達 居住者へ何をどの手段でどの頻度で伝えるか
④要支援者対応 階段移動や生活継続が難しい人をどう支えるか
⑤物資搬送 水や食料をどう備蓄し必要時にどう階上へ届けるか
⑥利用判断 運転休止や異常がある場合にどう判断し再開へつなぐか
⑦訓練と見直し 計画をどう試し役員交代や設備変更へ対応するか

「エレベーター防災は専門的で難しそうだ」と感じていた理事会でも、まずこの7項目に分ければ議論を始めやすくなります。設備に詳しくないこと自体よりも、誰が何を確認するのか決まっていない状態のほうが、実際の災害時には大きな弱点になり得ます。

発災直後から復旧までの3段階

7項目を考えるときは、時間の流れも意識します。エレベーター停止を一つの出来事として扱うと、閉じ込め救助、在宅避難、設備復旧が混ざってしまうため、「発災直後」「停止継続中」「復旧時」の3段階に分けると整理しやすくなります。

災害段階 主な状況 管理組合と居住者の対応 保守会社などの対応 管理上の注意点
発災直後 地震や停電で停止した直後または運転状態が不明な段階 自身の安全確保後に閉じ込めや設備状態を確認し必要な連絡と周知を行う 緊急通報を受け付け閉じ込めなど緊急性の高い事案へ対応する 一般の居住者が乗場戸を開けたり設備を独自操作したりしない
停止継続中 運転休止が続き生活への影響が広がる段階 安否確認や要支援者対応を続け必要な物資搬送と情報更新を行う 被災状況や優先順位に応じ点検や故障確認を進める 階段事故や過労を防ぎ根拠のない復旧時刻を伝えない
復旧時 自動復帰または点検等によって運転状態が変化する段階 設備状態と保守会社等から得た情報を確認し住民へ利用可否を知らせる 設備仕様に応じた確認や点検や修理を行い必要な復旧操作を進める 地震後という理由だけで一律判断せず設備仕様と異常の有無に従う

発災直後だけを想定していると、「保守会社へ連絡する」で計画が終わってしまいます。しかし、本当に生活への影響が重くなるのは、その数時間後かもしれません。

翌朝になっても運転休止が続き、高層階から水を取りに階段を下りる人が増え、午後になると支援する側にも疲れが見え始める。その時間の経過まで想像すると、エレベーター停止は単なる機械の故障ではなく、マンション全体の生活継続に関わる問題だと分かります。

なぜマンション管理組合に事前計画が必要なのか

マンション管理組合に事前計画が必要な理由は、大規模災害時には外部支援の即応性に限界があること、高層マンションではエレベーター停止が在宅避難へ大きく影響すること、そして設備と居住者生活の間をつなぐ役割を管理組合が担っていることにあります。

24時間出動体制の具体的内容を契約で確認する

エレベーター保守会社と契約していれば、「事故が起きても専門会社が来てくれる」と考えるでしょう。実際、国土交通省の「エレベーター保守・点検業務標準契約書」に含まれる標準仕様では、受託者が24時間出動体制を整え、不時の故障や事故へ対応することが想定されています。

ただし、自分のマンションで具体的にどのような条件が契約されているかは、実際の契約書や仕様書で確認する必要があります。緊急受付の方法、閉じ込め時の連絡経路、遠隔監視の有無、技術者出動の条件、到着目標の定めなどは、契約内容によって確認すべき事項です。

さらに、大規模地震時には道路の通行状況が悪化し、多数のエレベーターで事故や停止が同時に発生する可能性があります。国土交通省も2026年6月11日に、事故発生時の迅速な現場到着に向けて緊急通行車両制度等の活用を保守事業者へ周知していますが、全国共通の到着時間を定めているわけではありません。

管理組合として重要なのは、「24時間対応だから大丈夫」と安心することでも、「どうせ来ない」と悲観することでもありません。自分たちの契約で何が約束されているのかを確認し、分からない部分を保守会社へ質問しておくことです。

そこまで確認できていれば、発災後に住民から「いつ直るのですか」と聞かれても、根拠のない復旧時間を答える必要はありません。「保守会社へ連絡済みですが現在の到着時刻は未定です」と、確認できている事実を落ち着いて伝えられます。

高層マンションでは在宅避難の条件が変わる

マンションでは、建物そのものに大きな損傷がなくても、停電、断水、エレベーター停止などによって生活を続けることが難しくなる場合があります。

特に高層階では、水や食料を階段で運ぶ負担を軽く考えられません。2リットルの水を一本持つだけなら難しくなくても、家族数日分になれば重量は大きくなります。そこへ乳幼児用品、介護用品、衛生用品などが加われば、生活を維持するだけでも相当な労力が必要でしょう。

エレベーター停止による影響は、住民全員へ同じように現れるわけではありません。ある人にとっては「階段を使えば済むこと」でも、別の人にとっては自宅で生活を続けられるかどうかを左右する問題になります。

平常時であれば「困ったときは助け合えばよい」と思えるでしょう。それでも災害時には、助ける側も被災者です。家族の安否が分からず、自宅の片付けも必要な人に、何度も20階まで水を運んでもらうような計画では続きません。

だから、善意を否定するのではなく、善意だけに頼らなくても一定程度は回る仕組みを事前に作っておきます。

管理組合は設備と居住者生活をつなぐ

保守会社は設備を確認し、管理会社は管理委託契約に基づいて建物管理を支援します。しかし、高層階の要支援者へ誰が声をかけるのか、防災倉庫の物資をどう使うのか、住民への情報を何時に更新するのかといったマンション内部の運用は、管理組合が関与しなければ決まりません。

すべてを理事会役員が自分で実行する必要はありません。むしろ、管理会社、自主防災組織、保守会社、居住者へ適切に役割を分けるために、管理組合が全体を整理する必要があります。

平常時には曖昧でも困らなかった役割分担が、災害時には「誰もやらない時間」へ変わることがあります。事前計画は、その空白を小さくするために作るのです。

①停止・閉じ込め発生時の連絡ルール

発災直後に最も緊張が高まるのが、かご内への閉じ込めです。「誰か中にいるのでは」と不安になり、複数の住民が一斉に保守会社へ電話する場合もあれば、全員が「誰かが連絡しただろう」と考えて必要な通報が遅れる可能性もあります。

必要なのは、ただ速く動くことではありません。誰が確認し、誰が通報し、何を伝えるのかを決め、焦っているときにも行動が重複したり抜けたりしない仕組みを作ることです。

閉じ込められた人は無理に脱出しない

日本エレベーター協会は、エレベーターに閉じ込められた場合には、インターホン等を利用して状況を通報し、無理に脱出せず救助を待つよう案内しています。

閉じ込められている人の声を聞けば、「何とか出してあげたい」と思うでしょう。管理組合役員であれば、自分が動かなければと強く感じるかもしれません。

それでも、専門知識のない人が乗場戸を開けたり昇降路へ立ち入ったりすることと、適切な救助へつなぐことは別です。かごが乗場床面とずれた位置で停止していれば、扉の先が安全とは限りません。

管理側がまず行うのは、閉じ込めの状態を把握し、保守会社等へ正確に伝え、必要な公的機関へつなぎ、可能な範囲で閉じ込め者へ状況を説明することです。

非常通報の接続先を平常時に確認する

かご内のインターホンや非常通報装置が、実際にどこへつながるのかを確認しておきます。管理員室へ接続される設備もあれば、警備会社や保守会社の監視センターへ接続される仕組みもあります。

ここを「非常ボタンを押せば保守会社につながるはず」と思い込んでいると、管理員不在時や通信障害時に戸惑う可能性があります。接続先だけでなく、停電時にも通話できる仕組みか、遠隔監視契約があるか、非常通報がつながらない場合に管理側がどこへ連絡するかまで確認しておくと、初動が具体的になります。

管理側の連絡担当者を複数決める

連絡担当者を一人だけにすると、その人が不在だった場合に計画が止まります。第一担当者と代行者を決め、役員交代時には緊急連絡体制も更新します。

保守会社へ通報するときには、マンション名と所在地、対象となる号機や設備番号、確認できる範囲での停止位置、閉じ込め人数、傷病者の有無、火災など別の危険が迫っているかを、一まとまりの確認事項として整理します。

こうした情報を短い単語の羅列として覚える必要はありません。「緊急通報時確認票」として一枚にまとめ、管理事務室や防災ファイルへ入れておけば十分です。

人は焦ると、普段ならすぐ思い出せることでも抜けます。そこで記憶力に頼るのではなく、様式に頼れるようにしておきます。

人身事故時は消防と警察への連絡も確認する

閉じ込めが発生していても、けが人がおらず火災などの切迫した危険もなければ、まずインターホンや保守会社の緊急窓口から救出へつなぐことになります。一方、傷病者の容体が悪化している場合や火災など生命への危険が迫っている場合には、119番による消防・救急への通報が必要でしょう。

さらに、昇降機で人身事故が発生した場合について、国土交通省の「昇降機の適切な維持管理に関する指針」は、必要な救助活動や応急手当等とともに、消防と警察へ連絡することを示しています。

したがって、管理組合の連絡票では、「生命への危険が切迫している場合の119番」と「昇降機で人身事故が発生した場合の消防と警察への連絡」を分けて整理しておくと分かりやすくなります。

災害当日に指針を読み直さなくても済むように、平常時の計画へ落とし込んでおくことが重要です。

緊急連絡先は複数の場所で確認できるようにする

保守会社の電話番号を担当役員のスマートフォンだけに保存している状態では、その人が不在になったときに困ります。端末の電池が切れている可能性もあるでしょう。

管理事務室、防災倉庫、災害対策本部として使用する場所など、複数の場所から紙でも確認できるようにしておきます。デジタルと紙を併用すれば、一方が使えなくても対応できます。

理事会で「今この場で保守会社の緊急番号を出せますか」と試してみるだけでも意味があります。すぐに出なかったとしても、それは誰かの失敗ではありません。発災前に改善できる弱点を一つ見つけたということです。

②管理会社・保守会社・理事会の役割分担

災害時の混乱は、設備が止まることだけから生まれるわけではありません。「これは誰の仕事なのか」という認識の違いからも起こります。

理事会は管理会社が対応すると思っていた一方、管理会社は保守会社の業務だと考えていた。あるいは、24時間緊急受付があるため、夜間でも管理員がすぐ現地へ来ると思っていた。

こうした認識のずれは、平常時にはなかなか表面化しません。だからこそ、災害が起きる前に契約と実際の勤務体制を確認します。

エレベーター停止時の役割分担表

主体 平常時の役割 発災直後の役割 停止継続中の役割 復旧時の役割
管理組合と理事会 対応計画策定 担当者決定 居住者周知 防災予算の検討 状況集約 必要な使用停止周知 連絡体制の統括 要支援者対応 情報発信 物資搬送体制の運営 設備状態や保守会社からの情報を把握し居住者へ利用可否を周知
管理会社 契約に基づく管理支援 管理員への指示 連絡先管理 契約と勤務体制に応じた現場確認や連絡支援 共用部分の状況把握 情報集約 理事会支援 点検立会いや掲示更新など契約範囲で支援
エレベーター保守会社 保守点検 遠隔監視などの契約業務 設備情報管理 緊急通報受付 閉じ込め対応 優先順位に応じた点検 異常や故障の診断 必要な点検 修理 復旧操作 運転状態確認
居住者と自主防災組織 家庭内備蓄 訓練参加 支援希望の申出 自身の安全確保 異常情報の提供 隣近所の安否確認 可能な範囲での生活支援 管理側が示す利用方法を守り異常を感じた場合は報告

この表は一般的な整理です。実際には自分のマンションの管理委託契約やエレベーター保守契約を確認し、「うちでは誰がここを担うのか」へ書き換えます。

管理委託契約で管理会社の対応範囲を確認する

管理員が24時間常駐しているマンションと、平日の昼間だけ勤務するマンションでは、発災時に期待できる対応が大きく違います。また、管理会社に24時間の緊急窓口があることと、管理員や担当者が直ちに現地へ派遣されることも同じではありません。

管理員不在時の現場確認、保守会社への連絡支援、居住者への掲示、共用部分の巡回、点検立会いなどについて、管理委託契約や業務仕様を確認します。

「管理会社なのだから当然やってくれるだろう」という期待を、契約確認へ置き換えることが重要です。発災後に初めて「そこは契約外です」と知るより、平常時に不足部分を管理組合側で補う方法を考えておくほうが現実的でしょう。

保守契約はFMかPOGかだけで判断しない

エレベーター保守契約では、フルメンテナンス契約とPOG契約という区分が使われます。国土交通省の標準契約書でも両者が定義され、遠隔監視や遠隔点検等について契約上明確にする構成になっています。

ただし、災害対応計画で重要なのは契約名称だけではありません。閉じ込め時の受付方法、24時間出動体制、遠隔監視の有無、大規模地震時の連絡方法、災害による故障や部品交換の扱いなどを具体的に確認します。

フルメンテナンスだから災害時のあらゆる修理が月額料金に含まれるとは限りませんし、POGだから緊急対応を受けられないとも限りません。名称だけで安心したり不安になったりするのではなく、自分のマンションが締結している契約書と仕様書を見ることが必要です。

分からない契約条項は質問に変える

専門用語が並ぶ契約書を見ると、「自分たちでは判断できない」と感じるかもしれません。しかし、分からないところはそのまま保守会社や管理会社への質問に変えられます。

地震で運転休止した場合に管理組合が最初に行うこと、閉じ込めの有無で連絡方法が変わるか、自マンションの24時間出動体制がどのように定められているか、到着目標があるか、自動復帰機能があるか、どの状態で技術者点検が必要になるかを確認します。

一般論だった防災マニュアルが、「このマンションではこうする」という計画へ変わるのは、この確認を始めてからです。

③居住者への情報伝達方法

エレベーターが止まったとき、住民の不安を強くするのは、停止そのものだけではありません。「今どうなっているのか分からない」という状態が続くことも大きな負担になります。

保守会社へ連絡したのか分からず、点検が必要なのかも分からない。掲示を見ても前の情報のままで、次にいつ更新されるかも分からない。その状態では、住民同士の推測がいつの間にか事実のように広がる可能性があります。

情報提供は単なる広報ではありません。誤った利用を防ぎ、不要な混乱を減らし、管理組合自身の対応負担を小さくするための災害対応です。

確定情報と未確定情報を分けて伝える

住民を安心させたい気持ちから、「夕方には直ると思います」「停電が戻れば動くでしょう」と伝えたくなることがあります。しかし、確認できていない復旧見込みを伝えると、そのとおりにならなかった場合に混乱が大きくなります。

現在停止または運転休止していること、保守会社へ連絡済みであること、点検の要否を確認していること、利用再開の時期は未定であることなど、確認済み情報と未確定情報を分けて伝えます。

「まだ分かりません」と説明することは、何もしていないという意味ではありません。分からない状態を正確に共有し、次にいつ情報を更新するのかを示すことも管理組合の仕事です。

紙とデジタルを組み合わせる

マンションアプリ、電子メール、館内放送などは、多くの居住者へ情報を届ける手段として役立ちます。一方、停電や通信障害が発生する可能性を考えると、紙の掲示も残す必要があります。

1階エントランス、管理事務室前、各階エレベーターホールなどへ、現在の運転状態と利用上の注意を掲示します。運転休止中なら、「運転休止中のため使用しないでください」「保守会社へ確認中です」など、その時点で確認できている状態に合った表現を使います。

次の情報更新時刻を伝える

保守会社から新しい連絡がなくても、「16時現在も確認中です。次回は18時に更新します」と知らせることはできます。

この一文があれば、居住者は何度も管理員室へ問い合わせずに済むかもしれません。理事長や管理員も、同じ説明を繰り返す負担を減らせます。

正式情報を誰が取りまとめるかも決めておきます。災害時には情報量の多さより、「どの情報が正式なのか」が分かることのほうが重要です。

④高齢者・要支援者・高層階居住者への対応

エレベーター停止による負担は、すべての居住者へ同じ形で現れるわけではありません。普段は階段を利用できる人でも、発災当日にけがをしているかもしれません。高齢者、妊産婦、乳幼児を抱える家庭、日常生活で配慮を必要とする人などは、階段移動や生活物資の確保が難しくなる可能性があります。

だから、「高齢者だから支援する」という単純な線引きではなく、「エレベーターが利用できない状態で生活継続が難しくなる人」をどのように把握するのかという視点が必要です。

要支援者情報は目的と法的条件を確認して集める

災害時の支援を希望する居住者から、連絡先や必要な支援内容を平常時に申告してもらう方法があります。しかし、防災のためであれば自由に健康状態などを集めてよいということではありません。

2026年8月時点の現行ルールでは、個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン 通則編」が、要配慮個人情報の範囲や取得時の本人同意について一般的なルールを示しています。病歴や法令で定める障害の事実などは要配慮個人情報に含まれ、法定の例外に該当する場合を除き、原則としてあらかじめ本人の同意を得ずに取得することはできません。

そのため、要支援者名簿を作る場合は、最初に災害時の安否確認や生活支援など利用目的を明らかにし、その目的に必要な範囲へ取得項目を絞ります。病歴や法令で定める障害の事実まで把握する必要がある場合には、原則として本人へ目的や取扱方法を説明したうえで同意を得て取得します。

「詳しく分かっていたほうが安心だから」と、将来使うか分からない情報まで集める必要はありません。必要な情報を絞ることは、居住者のプライバシーを守るだけでなく、管理組合自身が負う情報管理の負担を減らすことにもつながります。

なお、2026年7月17日には改正個人情報保護法が公布されていますが、大部分は公布日から起算して2年以内の政令で定める日から施行される予定です。本記事では2026年8月時点で適用されている現行ルールを前提としており、将来の施行後は最新の法令やガイドラインを改めて確認する必要があります。

名簿は作成後の管理まで設計する

要支援者情報を集めたら、誰が閲覧するのか、どこへ保管するのか、役員交代時にどう引き継ぐのか、転居や状況変化をどう更新するのかまで決めます。

名簿は作った日より、作ったあとの期間のほうが長く続きます。何年も更新されていなければ、災害時に確認した住戸の居住者がすでに転居している可能性もあります。

また、区分所有者名簿、居住者名簿、災害時の支援希望情報は、利用目的が同じとは限りません。所有者を確認するための情報と、実際の居住者を確認する情報と、災害時の支援に使う情報を無造作に一つへまとめず、目的に応じた取扱いを考えます。

安否確認を行動レベルまで具体化する

要支援者名簿が存在していても、発災後に誰も利用しなければ支援にはつながりません。各階の担当者が確認するのか、インターホンを利用するのか、応答がない場合は誰へ報告するのか、生活物資が不足している場合はどこへ情報を集約するのかまで具体化します。

一方で、支援担当者を一人に固定しすぎるのも危険です。その人自身が負傷しているかもしれず、家族の安否確認で動けない可能性もあります。

二人一組にする、隣接階で補完する、代行者を決めるなど、一人が動けなくても完全には止まらない仕組みにしておきます。

支援する側を疲弊させない

要支援者対策を考えると、「助ける人を増やせばよい」と考えがちです。しかし、支援する側も同じマンションで被災しています。

一人の住民が何度も20階まで水を運ぶ計画では、その人が先に疲弊する可能性があります。安否確認の分担、搬送担当の交代、住戸内備蓄を組み合わせ、善意だけに依存しない体制を作る必要があります。

「助けられるマンション」にするだけではなく、「助けがすぐ届かなくても一定期間暮らせるマンション」にする。その両方を考えることが、支援を続けるための条件です。

⑤水・食料・荷物を階上へ運ぶ方法

エレベーターの運転休止が長引くと、問題は「上下移動が不便」という段階から、「生活物資が届かない」という段階へ変わります。

特に水は重く、家族数日分を高層階まで階段で運ぶことは大きな負担です。食料、乳幼児用品、介護用品、衛生用品などまで加われば、単純な人海戦術では続きません。

だから物資搬送計画では、「どう大量に運ぶか」だけではなく、「発災後に運ばなければならない量をどう減らすか」を先に考えます。

各家庭の住戸内備蓄を基本にする

高層階では、発災後に1階から水や食料を運ぶことそのものが大きな負担になります。そのため、各家庭が平常時から一定量の生活物資を住戸内へ備えておくことが基本になります。

「管理組合の防災倉庫に備蓄があるから大丈夫」と思いたくなるかもしれません。しかし、その水が1階にあり、自宅が20階であれば、結局は誰かが運ばなければなりません。

管理組合の共用備蓄だけですべての世帯を支える計画ではなく、各家庭の備蓄を基本とし、共用備蓄はマンション全体の活動や不足時の補完などへ利用する考え方が現実的です。

防災倉庫は場所と開錠方法まで確認する

防災倉庫がどこにあるのか、誰が鍵を持っているのか、夜間や休日でも開けられるのかを確認します。停電時でも中を確認できる照明があるか、階段まで安全に搬出できるかも重要です。

備蓄品が十分にあっても、鍵を持った管理員が不在で開けられなければ使えません。「何を持っているか」という確認から、「災害時に使える状態か」という確認へ進めます。

中継方式で搬送負担を分散する

一人が1階から最上階まで何度も往復する方法は長く続きません。マンションの構造や居住者数によっては、数階ごとに担当区間を分け、物資を受け渡していく中継方式も考えられます。

ただし、階段幅、防火戸、避難経路はマンションによって異なります。踊り場へ大量の荷物を置いて避難経路を狭くするような運用は避けなければなりません。

図面だけで決めるのではなく、防災訓練で実際の経路を歩き、どこで受け渡せるか、何人であれば無理なく動けるかを確認します。

1階 数階ごとに担当区間を分け 物資を受け渡していく中継方式 最上階
マンションの構造や居住者数によっては、数階ごとに担当区間を分け、物資を受け渡していく中継方式も考えられます。

運搬資機材は実際に使ってみる

リュックサック、滑りにくい手袋、ヘッドライトなどは、階段搬送で役立つ可能性があります。しかし、防災倉庫へ新品のまま置いてあるだけでは、本番で使えるか分かりません。

一定量の水を入れたリュックを背負って階段を上ると、「思った以上に重い」「この踊り場では人とすれ違いにくい」といった具体的な問題が見えてきます。

計画どおりにできなくても、それは訓練の失敗ではありません。本番前に無理な計画を修正できたということです。

エレベーター内防災キャビネットも検討する

閉じ込めが長引いた場合には、飲料水だけでなく排泄の問題も生じます。そのため、エレベーター内へ飲料水や携帯トイレなどを備えた防災キャビネットを設置する方法があります。

ただし、設置しただけで安心することはできません。内容物の使用期限、交換担当者、点検時期、車いす利用者の搭乗スペースへの影響などを確認し、必要に応じて保守会社と設置条件を相談します。

防災用品は、購入した時点ではなく、必要なときに使える状態で維持されて初めて意味を持ちます。

⑥運転休止・異常時の利用判断ルール

地震のあと、エレベーターホールの表示が戻り、かごが動いているように見えると、「もう乗ってもよいのでは」と感じるでしょう。十数階まで階段を上ることを考えれば、少しでも早く使いたいと思うのは自然です。

しかし、ここで必要なのは「地震があったら全部止める」という一律の判断でも、「動いているから使える」という自己判断でもありません。自動復帰する設備もあれば、技術者による点検が必要な状態もあるため、自マンションの設備仕様と異常の有無を基準に利用判断を整理します。

地震時管制運転には自動復帰する場合がある

日本エレベーター協会は、地震時管制運転について、一定の揺れを検知すると自動的に最寄階へ停止して利用者の避難を促す仕組みを説明しています。

その後の動作は一律ではありません。エレベーターに損傷を与えるおそれのない軽微な揺れの場合には、一定時間経過後に通常運転へ自動復帰する場合があります。一方、強い揺れを検知して運転休止した場合には、損傷がない場合でも技術者による点検まで復帰しないとされています。

そのため、「地震後は必ず技術者が来るまで使えない」と一般化するのは適切ではありません。自マンションの機種がどの条件で運転を休止し、どの条件で自動復帰するのかを確認しておく必要があります。

運転休止や故障がある場合は独自に再開させない

運転休止している設備や、故障や明らかな異常が確認されている設備について、管理組合や居住者が独自に制御盤等を操作して再開させることは避けます。

国土交通省の維持管理指針では、不具合を把握した場合に必要な使用中止措置を取り、保守点検業者へ連絡することが示されています。また、事故や災害によって運行に影響する故障が生じた場合には使用を中止し、点検と必要な修理によって安全性が確認されるまで再開しないこととされています。

つまり、管理組合の役割は「地震が起きたら何が何でも止め続けること」ではありません。異常のある設備を安易に利用させず、自分たちで復旧操作を行わず、正規の設備機能や保守会社の対応へつなぐことです。

自動復帰と地震時の避難利用は分けて考える

自動的に通常運転へ戻る設備があるからといって、地震直後にエレベーターを避難手段として積極的に使うべきという意味ではありません。余震、停電、別の設備異常などによって再度停止する可能性があります。

「設備として自動復帰すること」と「地震時の避難にエレベーターを使うこと」は別の論点です。

管理組合の対応計画では、自動復帰の有無、運転休止や異常がある場合の対応、地震時の避難方法を分けて書いておくと、居住者にも誤解なく説明しやすくなります。

自マンションの復帰条件を確認する

平常時に保守会社へ確認したいのは、地震時管制運転装置の有無、軽微な揺れ後の自動復帰機能、強い揺れで運転休止した場合の点検手順、リスタート機能や自動診断機能の有無、管理側へどのような表示が出るのかという点です。

一般的な地震対策をそのまま写して「うちも同じだろう」と考えるのではなく、実際の機種について確認します。

その結果を設備情報として残しておけば、役員が交代したあとも毎年同じことをゼロから調べ直す必要がありません。担当者の記憶ではなく、管理組合の情報として蓄積することが大切です。

⑦防災訓練と定期的な計画見直し

対応計画を作り終えると、「これで一つ安心した」と感じるでしょう。しかし、役員は交代し、管理員も変わり、保守契約や設備そのものが更新されることがあります。

つまり、対応計画は完成した瞬間から少しずつ現実との差が生まれます。そのずれを修正するために、防災訓練と定期的な見直しが必要です。

理事会の机上訓練から始める

最初から大規模な訓練を企画する必要はありません。理事会で「日曜日の午後8時に大きな地震が発生し、管理員不在の状態でエレベーターが運転休止した」と仮定し、最初の30分を考えるだけでも十分意味があります。

保守会社へ誰が連絡するのか、緊急番号はどこにあるのか、閉じ込め情報を誰が確認するのか、住民へ何を知らせるのか、高層階の要支援者へどう対応するのかを順番に確認します。

答えられない項目が出れば、不安になるかもしれません。しかし、その空白を発災前に発見するために訓練を行うのです。

使用停止の掲示を実際に出してみる

運転休止時に各階へ掲示を出す計画なら、一度実際に試します。20階建てのマンションを一人で回るとどの程度時間がかかるのか、複数人ならどのように分担するのかを確認します。

実際に動けば、掲示物が管理事務室の鍵のかかった棚に入っていた、必要な枚数がなかったといった問題が見つかるかもしれません。

小さな不備に見えても、本番ではその一つが初動を遅らせます。平常時に見つかったのであれば、直せばよいだけです。

物資搬送は実際の重量で試す

空のリュックではなく、一定量の水を入れて階段を上ります。想像より息が上がり、途中で休憩が必要になるかもしれません。

「こんなに大変だとは思わなかった」という実感には意味があります。それが、住戸内備蓄を増やす理由や中継方式を考える理由になるからです。

紙の上では無理がなかった計画が、実際に動いてみると続けられないと分かることがあります。その気付きこそ、訓練で得たい情報です。

非常通報訓練は事前に調整する

かご内インターホンの通報確認を行う場合は、実際の接続先や保守会社と事前に調整します。緊急受付へ突然テスト通報を行えば、通常の緊急対応へ影響する可能性があります。

訓練可能な方法を確認して実施すれば、担当者は「非常ボタンを押すとどこへつながるのか」を実体験できます。

救出訓練は保守会社の条件を優先する

建物管理者等を対象とした閉じ込め救出研修が行われる場合がありますが、講習を受ければ誰でもどの設備でも救出できるという意味ではありません。

対象設備、停止状態、使用する器具、訓練内容などによって対応可能な条件は異なります。一般の居住者や必要な訓練を受けていない役員が独自に乗場戸を開けないという基本を守り、救出訓練を計画へ組み込む場合には保守会社等と具体的な条件を確認します。

訓練後に一つでも改善する

訓練をすれば、電話番号が古い、担当役員が退任している、防災倉庫の鍵の所在が分からない、搬送方法が現実的ではないといった問題が見つかります。

全部を一度に直そうとすると、防災担当者だけが疲れてしまいます。一回の訓練で一つでも改善し、次回は以前より迷う時間が短くなったかを確認するほうが続けやすいでしょう。

計画は書類として完成させるものではありません。少しずつ「実際に使える状態」へ近づけていくものです。

管理組合で作る「エレベーター停止対応計画」チェックリスト

ここからは、上記7項目を実際の管理組合で運用できる状態にするため、設備、契約、情報、生活支援のレベルまで詳細に確認します。

21項目あるからといって、7項目とは別に21個の新しい計画を作るわけではありません。たとえば「緊急連絡先」と「連絡担当者」は①の連絡ルールを具体化したもの、「個人情報管理」は④の要支援者対応を安全に実施するためのものです。

なお、下表の「見直しの目安」に示す半年ごとや年1回などの頻度は、国土交通省等が全国一律に定めている公的基準ではありません。本記事で管理組合が運用しやすいよう設定した実務上の目安です。契約変更、設備更新、役員交代、事故、訓練結果などがあった場合には、記載した時期を待たずに見直します。

7項目 詳細確認 確認する内容 見直しの目安 判定
①連絡 非常通報 かご内インターホンの接続先を確認している 年1回 □ 完了 □ 未着手
①連絡 緊急連絡先 管理会社と保守会社の連絡先を紙でも確認できる 半年ごと □ 完了 □ 未着手
①連絡 連絡担当者 第一担当者と代行者を決めている 役員交代時 □ 完了 □ 未着手
①連絡 閉じ込め対応 通報時に伝える情報と人身事故時の消防・警察への連絡を整理している 年1回 □ 完了 □ 未着手
②役割 保守契約 FMやPOGだけでなく地震時と緊急時の対応条件を確認している 年1回 □ 完了 □ 未着手
②役割 24時間出動体制 実際の契約書や仕様書で出動体制と到着目標の有無を確認している 年1回 □ 完了 □ 未着手
②役割 遠隔監視 遠隔監視や遠隔点検の有無と内容を確認している 年1回 □ 完了 □ 未着手
②役割 管理会社の役割 災害時に管理会社と管理員が担う業務を確認している 契約更新時 □ 完了 □ 未着手
③情報 運転休止時の掲示 各階へ出せる掲示物を準備している 半年ごと □ 完了 □ 未着手
③情報 情報伝達 紙とデジタルの両方で住民へ情報を伝えられる 年1回 □ 完了 □ 未着手
③情報 情報更新 正式情報を取りまとめる担当者を決めている 役員交代時 □ 完了 □ 未着手
④支援 要支援者対応 支援希望者の把握方法と安否確認方法を決めている 年1回 □ 完了 □ 未着手
④支援 個人情報管理 利用目的を明確にし要配慮個人情報取得時の本人同意等を整理している 年1回 □ 完了 □ 未着手
⑤搬送 住戸内備蓄 高層階を含む居住者へ家庭備蓄を周知している 年1回 □ 完了 □ 未着手
⑤搬送 共用備蓄 防災倉庫の場所と開錠方法を確認している 半年ごと □ 完了 □ 未着手
⑤搬送 物資搬送 高層階への搬送方法を実際の階段で検証している 年1回 □ 完了 □ 未着手
⑤搬送 防災キャビネット かご内備蓄の有無と点検方法を確認している 半年ごと □ 完了 □ 未着手
⑥利用 設備仕様 地震時管制運転装置の有無と基本動作を確認している 設備更新時 □ 完了 □ 未着手
⑥利用 復帰機能 自動復帰やリスタート機能等の有無を確認している 設備更新時 □ 完了 □ 未着手
⑥利用 利用判断 運転休止や異常時に独自操作で再開せず設備仕様と保守会社の手順に従う 年1回 □ 完了 □ 未着手
⑦見直し 計画更新 訓練結果や契約変更や設備更新を対応計画へ反映している 変更時 □ 完了 □ 未着手

21項目すべてが未着手だとしても、そこで立ち止まる必要はありません。

まず①の連絡ルールから一つ、⑥の利用判断から一つを選ぶ方法があります。保守会社の緊急連絡先を確認し、地震時管制運転の仕様を問い合わせるだけでも、災害時に迷う場面は減ります。

チェックリストは管理組合を評価するためではなく、次に決めることを見つけるために使います。

エレベーター停止対応計画を実行するために確認したい資料

ここからは7項目そのものではなく、7項目を自分のマンション用に具体化するための支援情報です。

一般的な防災情報だけでは、停止対応計画を完成させることはできません。設備仕様、保守契約、管理会社との契約、居住者構成がマンションごとに異なるからです。

まず確認したいのは、現在のエレベーター保守契約書と保守点検仕様書です。FMかPOGかという契約方式だけでなく、24時間出動体制、緊急受付、遠隔監視、地震時対応、点検や修理の範囲、到着目標の有無などを確認します。これは主に①の連絡ルール、②の役割分担、⑥の利用判断を具体化する資料です。

過去の保守点検報告書、故障履歴、部品交換履歴、修理記録も確認します。同じ停止や不具合が繰り返されていれば、自マンション固有の課題として対応計画へ反映できる可能性があります。

定期検査報告書も確認しておきます。通常の保守点検と建築基準法に基づく定期検査は同じものではないため、それぞれの記録を区別して把握します。

メーカーや保守会社の資料からは、製造年、機種、地震時管制運転装置、自動復帰、リスタート運転、自動診断、遠隔監視などの機能を確認します。資料が見つからなければ、それ自体が保守会社へ質問するきっかけになります。

管理事務委託契約書では、管理員不在時の対応、緊急連絡、共用部分の確認、居住者への掲示、点検立会いなどを確認します。これは②の役割分担と③の情報伝達を決める際に欠かせません。

防災マニュアルや防災細則についても、既存のエレベーター対応がどこまで決まっているのかを見直します。すでに「地震時はエレベーターを使用しない」といった記載があっても、閉じ込め時の連絡、停止継続中の生活支援、設備仕様に応じた復帰判断まで決まっているとは限りません。

要支援者情報を扱う場合には、名簿や個人情報に関する取扱規程も確認します。利用目的、取得項目、要配慮個人情報を取得する際の本人同意、閲覧できる人、保管方法、更新、廃棄まで整理します。

さらに、防災倉庫の備蓄一覧、過去の理事会議事録、防災訓練記録にも目を通します。以前の役員が保守会社から説明を受けていたり、過去の停止時に困った内容が議事録へ残っていたりする可能性があるためです。

役員が毎年変わるマンションだからこそ、過去の知識を毎年ゼロへ戻さないことも停止対応計画の一部です。

マンション管理士へ相談する場合に準備する資料

7項目を具体化していくと、設備の技術問題だけでは解決できない疑問も出てきます。

管理会社との役割をどこまで契約で整理するのか、要支援者情報をどの規程で管理するのか、防災細則へ何を記載するのか、理事会でどこまで決めてよいのかといった管理運営上の課題です。

このような場面では、マンション管理士などへ相談する方法があります。ただし、マンション管理士がエレベーターの専門点検や復旧操作を行うわけではありません。

設備の技術判断は保守会社やメーカーへ確認し、そこで得た情報を管理規約、契約、理事会運営、防災マニュアルへどのように落とし込むかを整理する場面で活用すると、役割分担が明確になります。

相談時には、管理規約と使用細則、防災マニュアル、防災細則、エレベーター保守契約書、保守点検仕様書、定期検査報告書、設備仕様書、管理事務委託契約書、個人情報や名簿に関する規程、理事会議事録、防災訓練記録、故障履歴などを可能な範囲でそろえます。

すべてが見つからなくても構いません。必要な資料が見つからないこと自体が、管理組合として改善すべき情報管理上の課題です。

また、「エレベーター停止対応について相談したい」と広く伝えるより、「②の役割分担を整理したい」「④の要支援者情報の取扱いを決めたい」「7項目を既存の防災マニュアルへ組み込みたい」と相談目的を絞るほうが、実務へ落とし込みやすくなります。

マンションのエレベーター停止対応計画FAQ

FAQでは、本文ですでに説明した内容の結論を短く確認します。詳しい理由や判断材料が必要な場合は、対応する①から⑦の本文を確認してください。

地震でエレベーターが止まったら管理組合はまず何をする?

まず自分と周囲の安全を確保し、可能な範囲で閉じ込めの有無と設備状態を確認します。閉じ込めは保守会社等へ連絡し、生命への危険が切迫している場合は119番へ通報します。昇降機で人身事故が発生した場合は、国土交通省の指針に沿って消防と警察への連絡も行います。

管理会社とエレベーター保守会社はどちらに連絡する?

一律には決められません。閉じ込めや設備異常では保守会社への連絡が重要であり、建物全体の管理や管理員対応では管理会社との連携も必要です。自マンションの契約に合わせて「閉じ込めあり」と「閉じ込めなし」の連絡フローを決めておきます。

停電が復旧すればエレベーターもすぐ使える?

停電復旧だけでは判断できません。自動復帰する設備もありますが、運転休止、故障、異常がある場合は管理側が独自操作で再開せず、設備仕様と保守会社の手順に従います。

高層階の高齢者への支援はどう決めておく?

年齢だけではなく、エレベーター停止時に階段移動や生活継続が難しくなる人を対象に考えます。本人の支援希望を確認し、安否確認方法と支援担当を決めます。要配慮個人情報を取得する場合は、2026年8月時点の現行ルールに基づき、法定例外を除いて原則として事前の本人同意が必要です。

防災マニュアルとエレベーター停止対応計画は別々に作るべき?

必ずしも別冊にする必要はありません。既存の防災マニュアルへ7項目を組み込み、緊急連絡先、初動確認票、掲示物など即時に使う資料だけを別紙にしておく方法でも実用的です。

マンション管理士にはどこまで相談できる?

役割分担、管理委託契約、保守契約の確認、防災マニュアルや細則への落とし込み、理事会での進め方などを相談できます。エレベーターの技術的な安全判断や復旧操作は、保守会社やメーカーなどの専門事業者へ確認します。

エレベーター停止対応計画を理事会で始める方法

ここまで読むと、「結局やることが多い」と感じるかもしれません。21項目のチェックリストや確認資料まで見れば、なおさらでしょう。

そこで最後に、記事の親構造である7項目へ戻ります。

最初から21項目すべてを完成させる必要はありません。まず①から⑦までを理事会で見て、「うちのマンションで決まっていないのはどれか」を確認します。

たとえば①の連絡ルールが曖昧であれば、最初の議題は緊急連絡先と担当者で構いません。⑥の利用判断が分からなければ、自マンションの地震時管制運転装置と自動復帰機能について保守会社へ質問します。

④の要支援者対応が必要だと感じても、いきなり健康情報を集め始めるのではありません。まず、どのような状況の人へ何の支援を行いたいのかを考え、必要な情報と管理方法を決めます。

それから、小さく試します。緊急通報時確認票を使ってみる、運転休止の掲示を実際に貼る、水を持って階段を上るなど、計画した行動が本当にできるか確認します。

ここでうまくいかなかったとしても、計画が失敗したわけではありません。災害前に弱点が見つかったのです。

その弱点を次の理事会で一つ直せば、前回よりも対応しやすいマンションになります。

それから、小さく試します。 緊急通報時確認票を使ってみる 運転休止の掲示を実際に貼る 水を持って階段を上る 災害前に弱点が見つかったのです。 計画が失敗したわけではありません。 次の理事会で一つ直せば 前回よりも対応しやすいマンションになります。
一つ決め、一度試し、見つかった問題を一つ直す。その積み重ねが、災害時に実際に動けるエレベーター停止対応計画を作っていきます。

エレベーター停止対応計画は、最初から完璧な冊子を完成させることが目的ではありません。発災したときに迷う時間を、一つずつ減らしていくことが目的です。

まとめ

マンションのエレベーター停止対応計画で、管理組合が事前に決めておきたい主軸は7つです。

停止や閉じ込めが起きたときの連絡ルールを決め、管理組合と管理会社と保守会社の役割を整理し、居住者へ情報を届ける方法を用意します。そのうえで、要支援者への対応、水や食料などの階上搬送、運転休止や異常時の利用判断、防災訓練と見直しまでをつなげます。

後半の21項目チェックリストは、新しい21個の課題ではありません。この7項目を、自分のマンションで実際に使える状態へ分解したものです。

保守会社の24時間出動体制についても、地震後の自動復帰についても、一般論だけでは自分のマンションの対応を決められません。最終的には、実際の契約書、仕様書、設備情報を確認する必要があります。

要支援者情報についても同様です。支援したいという気持ちは大切ですが、2026年8月時点では、病歴や法令で定める障害の事実などの要配慮個人情報を取得する場合、法定例外を除いて原則として本人の同意が必要です。必要な情報だけを適切に扱う仕組みまで考えて初めて、実務としての支援になります。

次の理事会で、7項目の表を一度開いてみてください。そこで「①の連絡担当者が決まっていない」と一つ具体的な不足が見つかれば、漠然とした「何も決まっていない」という不安は、すでに解決できる課題へ変わっています。

一つ決め、一度試し、見つかった問題を一つ直す。その積み重ねが、災害時に実際に動けるエレベーター停止対応計画を作っていきます。

参考資料

国土交通省「昇降機 エレベーター エスカレーター等について」

国土交通省「エレベーター保守・点検業務標準契約書」

国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」

一般社団法人日本エレベーター協会「エレベーターの安全対策」

東京都「東京都マンション防災ガイドブック」

個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン 通則編」

個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」

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