マンション管理士

マンションのエレベーター保守契約を見直すには? 管理組合が確認したい7つのポイント

管理費や修繕積立金の負担が増えてくると、毎月支払っているエレベーター保守費も気になり始めます。年間額へ置き換えれば決して小さな支出ではなく、「もう少し抑えられないだろうか」と考えるのは自然なことでしょう。

その一方で、エレベーターは住民の安全や日常生活に直結する設備です。安い保守会社を見つけても、「本当に替えて大丈夫なのか」「故障したときの対応まで悪くならないか」という不安が残れば、理事会として簡単には決められません。

だからこそ、エレベーター保守契約の見直しでは、最安値を探すことより先に、現在の契約で何を任せ、どの修理まで月額保守料に含まれ、緊急時にはどのような対応を受けられるのかを把握することが重要です。

この記事では、管理組合が確認したい内容を7つのポイントへ整理し、契約書や仕様書を実際に見ながら確認できる形で解説します。「保守費が高い気がする」という感覚を、何を比較すればよいのかが分かる状態へ変えていきましょう。

TABLE OF CONTENTS
目次

エレベーター保守契約を見直す前に確認する資料

理事会で年間収支を確認していると、エレベーター保守費は見直し候補として目に入りやすい支出です。毎月ほぼ同じ金額が並ぶため、年間の固定費として考えた瞬間に「ここを見直せば管理費の負担を少し軽くできるのでは」と期待することもあるでしょう。

ただし、その段階ですぐ他社へ見積もりを依頼すると、比較の基準が月額料金だけになりやすくなります。現在の契約内容を知らないままでは、新しい見積もりが本当に安いのか、それとも点検や修理の範囲を減らした結果なのか判断できません。

まず用意したいのは、現在のエレベーター保守契約書と保守点検仕様書です。さらに、過去の作業報告書、故障履歴、部品交換履歴、修理見積書、定期検査報告書まで並べると、契約上の条件と実際の設備状態を結びつけて確認しやすくなります。

管理会社がエレベーター管理に関与している場合には、管理委託契約書も確認してください。保守会社との連絡や点検日程の調整、報告書の受領などを現在誰が担っているのかによって、契約を変更した後の業務分担も変わるためです。

書類を集め始めると、保守費を見直したいだけなのに思った以上に手間がかかると感じるかもしれません。それでも、ここを飛ばさなければ、料金表だけでは見えなかった現在の契約価値や、見直すべき部分が少しずつ見えてきます。

管理組合が確認したい7つのポイント

エレベーター保守契約を見直す際に確認したい内容は、次の7項目です。

ポイント 確認する内容
1 契約方式POG契約かフルメンテナンス契約か
2 点検内容現地点検 遠隔監視 遠隔点検 法定検査等
3 修理範囲消耗品 劣化部品 修理 契約外費用
4 緊急対応24時間体制 閉じ込め 地震時対応
5 技術対応同型機種の実績 部品調達 メーカー系と独立系
6 契約経路管理会社経由 管理組合直接契約 業務分担
7 契約変更契約期間 解約 引継ぎ 管理の空白防止

この7項目が分かれば、保守会社を単純に「高い」「安い」で比べる必要がなくなります。

逆に、分からない項目が見つかった場合には、そこが管理会社や保守会社へ確認すべき質問になります。契約見直しは、最初から答えを持っている必要はありません。何が分からないのかを見える状態にするところから始まります。

ポイント1 POG契約とフルメンテナンス契約を確認する

最初に確認したいのが、現在どの契約方式を採用しているかです。

エレベーター保守契約では、POG契約とフルメンテナンス契約という言葉がよく使われます。名称だけを聞くと料金プランの違いのように見えますが、管理組合にとって重要なのは、劣化した部品の取替えや修理をどこまで月額保守料に含める契約なのかという点です。

国土交通省の「エレベーター保守・点検業務標準契約書」第2条では、フルメンテナンス契約について、定期的な保守点検に加え、点検結果に基づく合理的な判断のもとで、劣化した部品の取替えや修理などを行う契約方式としています。

一方のPOG契約は、定期的な保守点検を行う契約方式であり、別紙仕様書で定める消耗品を除いて、劣化した部品の取替えや修理等を含まないものと定義されています。

つまり、POG契約を選ぶ場合には、月額保守料だけでなく、契約外となる修理や部品交換を管理組合がどのように負担するのかまで考える必要があります。

POG契約とフルメンテナンス契約の違い

比較項目 POG契約 フルメンテナンス契約
定期的な保守点検含む含む
仕様書で定める消耗品契約範囲で対応契約範囲で対応
劣化部品の取替え原則として契約に含まない契約範囲に応じて実施
劣化に伴う修理原則として契約に含まない契約範囲に応じて実施
固定費抑えやすい可能性がある高くなる可能性がある
契約外費用発生する可能性がある除外項目では発生する可能性がある
特に確認したい内容契約外となる範囲フルメンテナンスでも除外される範囲

POG契約では、仕様書で定められた消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等は原則として契約外の費用として扱われます。

ただし、「POG契約なら修理のたびに必ず相見積もりを取る」という意味ではありません。POGという契約方式そのものが、個別修理時の見積取得方法や発注手続きまで定めているわけではないためです。

追加業務が必要になった場合に、誰が見積もりを確認し、どのような手続きで発注するのかについては、実際の契約書や管理組合の運用を確認してください。

フルメンテナンスでも全部込みとは限らない

POG契約の説明を聞くと、「それならフルメンテナンスを選んでおけば安心では」と感じることがあります。

しかし、フルメンテナンスという名称だけで、すべての部品交換や工事が月額保守料に含まれるとは判断できません。

具体的な取替えや修理の範囲は、契約書や仕様書で確認する必要があります。大型機器の一式交換や改修工事などが別途扱いになっている場合もあるため、「フルメンテナンスですか」という質問だけでは十分ではありません。

理事会として知りたいのは、「この部品が劣化した場合、現在の月額保守料で対応されるのか」という具体的な負担範囲です。

契約名称よりも中身を見ることが、最初のポイントになります。

ポイント2 点検内容と法定検査等を確認する

契約方式を把握したら、次に点検の内容を確認します。

毎月技術者が来ていると、それだけで安心感を持つ人もいるでしょう。一方、遠隔対応が増えて現地訪問の回数が少なくなると、「以前より点検が薄くなるのでは」と不安を感じることもあります。

こうした心配が生まれるのは、訪問回数は目に見える一方で、現場へ来ていない時間に何を確認しているのかが分かりにくいからです。

そこで、現地点検だけを見るのではなく、遠隔監視や遠隔点検を含めた全体の点検体系を確認します。

遠隔監視と遠隔点検を分けて確認する

国土交通省の標準契約書では、遠隔監視と遠隔点検は別のものとして定義されています。

遠隔監視は、通信回線を利用してエレベーターの異常や不具合を監視し、閉じ込めが発生した場合には、かご内から監視センター等と直接通話できる機能などを備える仕組みです。

一方の遠隔点検は、通信回線を利用して所定の項目を点検する仕組みになります。

そのため仕様書では、遠隔監視と遠隔点検のどちらを採用しているのかを確認し、それぞれが担う役割を理解したうえで、技術者による現地点検がどの程度の周期で行われるのかまで一続きで確認します。

訪問回数だけを見て安全性を判断するのではなく、現地と遠隔を組み合わせてどのように設備状態を確認しているのかを見ることが重要です。

法定検査と通常の保守点検を分ける

もう一つ混同しやすいのが、通常の保守点検と建築基準法に基づく定期検査報告です。

建築基準法第12条第3項の対象となる昇降機では、資格者に検査を行わせ、その結果を特定行政庁へ報告する制度があります。

一方、通常の保守点検では、設備状態の確認、清掃、注油、調整などを行い、エレベーターを適切な状態に維持します。

同じ保守会社へ両方を委託していると、一つの業務のように見えるかもしれません。それでも相見積もりでは、法定検査等を誰が担当し、その費用が保守料金に含まれるのかを分けて確認したほうが比較しやすくなります。

新しい会社の月額料金が安くても、現在含まれている業務が別料金になっていれば、年間負担は見積書の表面だけでは分かりません。

作業報告書から点検の実態を見る

仕様書には契約上の点検内容が書かれていますが、作業報告書を見ると実際の設備状態が分かります。

直近半年から1年程度の報告書を並べ、同じ摩耗や不具合について繰り返し記載されていないか、交換を勧められた部品がその後どうなったのかを確認してみてください。

たとえば「経過観察」という記載が何か月も続いていれば、「どの状態になったら交換を判断するのでしょうか」と尋ねられます。

こうした質問ができるようになると、保守費を単なる固定費ではなく、設備状態を維持するための費用として考えられるようになります。

ポイント3 部品交換と修理範囲を確認する

エレベーター保守契約で認識の違いが生じやすいのが、部品交換や修理費の扱いです。

「フルメンテナンスだから含まれていると思っていた」「毎月保守料を払っているから修理も料金内だと思っていた」という感覚と、実際の契約範囲が一致しているとは限りません。

だからこそ、月額料金が書かれたページだけでなく、その後ろにある仕様書や別表まで確認する必要があります。

保守契約書の匿名化チェック例

以下は、実際の契約内容を確認するときの考え方を整理したモデル例です。特定のマンションや保守会社の実契約書ではありません。

契約書や仕様書の記載 管理組合が確認する内容
契約方式 フルメンテナンスどの取替えや修理まで含むか
月額保守料 ○○円対象台数と税込税別
消耗品 仕様書記載対象となる消耗品
取替え及び修理 別表による別表に含まれる部品
一部機器 対象外別途費用となる条件
法令改正に伴う改修 別途通常保守と改修の境界
災害等による損傷 別途保険との関係
契約期間 ○年間契約満了日
解約 書面通知予告期間と手続き

専門用語をすべて理解しようとすると、契約書を読むこと自体が負担になります。

そこで、記載内容を「この部品が劣化したら誰が費用を負担するのか」という問いへ置き換えてみると、理事会でも確認しやすくなるでしょう。

POG契約の場合は、過去にどのような契約外費用が発生してきたのかを確認します。フルメンテナンス契約でも別途請求された修理があれば、なぜ契約対象外だったのかを調べておくと、現在の月額保守料を評価する材料になります。

ポイント4 緊急対応と地震時対応を確認する

日常的に問題なく動いているエレベーターでは、緊急対応の価値を意識する機会は多くありません。

しかし、自分や家族が夜間にエレベーター内へ閉じ込められた場面を想像すると、契約を見る視点は変わります。保守料金が多少安くなっても、緊急時に誰へつながり、誰が出動するのか分からない状態では、管理組合として不安が残るでしょう。

24時間対応の中身を確認する

相見積もりに「24時間対応」と書かれていても、それだけで各社が同じ条件だとは限りません。

24時間なのは通報受付だけなのか、夜間や休日にも技術者が出動できるのか、出動依頼から現場到着までの目標時間を設定しているのかまで確認すると、実際の体制を比較しやすくなります。

2026年6月11日、国土交通省はエレベーター事故発生時における保守点検業者の迅速な現場到着について事務連絡を出しています。

事故時に迅速な対応が重要であることは示されていますが、この通知によって全国一律の「○分以内」という現場到着基準が定められたわけではありません。

そのため、相見積もりでは国の一律基準を当てはめるのではなく、各保守会社が設定している現場到着の目標や、実際の出動体制を確認することが重要です。

閉じ込め時の連絡体制を確認する

契約を見直す際には、閉じ込め時に住民と保守会社がどのようにつながるのかも確認しておきます。

かご内の非常ボタンやインターホンからどこへ連絡されるのか、管理員が不在の時間帯には誰が応答するのか、保守会社へどのような経路で出動依頼が届くのかを整理しておくと、緊急時の役割分担が見えやすくなります。

管理組合として確認したいのは、閉じ込め時に住民が利用する連絡手段と、管理組合、管理会社、保守会社がどのようにつながって対応するのかという流れです。

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管理組合として確認したいのは、閉じ込め時に住民が利用する連絡手段と、管理組合、管理会社、保守会社がどのようにつながって対応するのかという流れです。

契約書に「24時間対応」と書かれているだけではなく、その仕組みが実際にどう動くのかまで確認しておくことで、住民へも説明しやすくなります。

地震時は平常時と同じ復旧速度とは限らない

大規模地震では、一つのマンションだけでなく地域内の多数のエレベーターが同時に停止する可能性があります。

国土交通省は大規模地震時の復旧について、閉じ込め救出を最優先とし、病院など公共性の高い建物を優先するとともに、複数台設置された建物では原則として一棟につき一台を復旧した後に次の建物へ移る「1ビル1台復旧」の考え方を示しています。

つまり、平常時に設定されている現場到着目標が、そのまま大規模災害時にも当てはまるとは限りません。

地震時管制運転の有無、停止後の復旧方法、保守会社への連絡方法などを平常時に確認しておけば、「止まったときに何が起きるのか分からない」という不安を減らしやすくなります。

ポイント5 技術力と部品調達体制を確認する

契約見直しを進めると、メーカー系と独立系のどちらがよいのかという話になりやすいでしょう。

「独立系へ変更すれば費用を下げられるのでは」と期待する理事がいる一方で、「メーカー以外に任せても本当に大丈夫なのか」と心配する住民もいます。

どちらかの印象だけで決めるのではなく、自分たちのエレベーターを適切に保守できる会社かどうかを見ることが大切です。

国土交通省も、保守点検業者を価格だけで選定せず、専門技術者の能力や同型または類似する昇降機の保守実績などを総合的に評価する考え方を示しています。

同型機種の保守実績を見る

候補会社には、自分たちのマンションに設置されている機種について、同型または類似機種の保守実績があるかを確認します。

「多くのメーカーに対応しています」という説明だけではなく、実際に同じような設備を扱った経験があるかを見ることが重要です。

技術者の体制や故障時の対応についても確認すれば、価格表だけでは分からなかった会社ごとの違いが見えてきます。

部品調達体制を見る

もう一つ確認したいのが、故障時の部品調達です。

平常時には意識しにくい項目ですが、故障してから必要な部品をすぐに確保できないと分かれば、エレベーターが使えない期間が長くなる可能性があります。

特に設置から年数が経った機種では、部品供給状況や代替部品への対応について確認しておく意味が大きくなります。

「独立系なら安全」「メーカー系は高すぎる」と一律に考えるのではなく、技術実績、部品調達、緊急対応などを同じ基準で比較することが必要です。

ポイント6 管理会社経由と直接契約の違いを確認する

エレベーター保守費を見直すときには、保守会社そのものだけでなく、現在どのような契約経路になっているかも確認します。

管理組合と保守会社が直接契約しているマンションもあれば、管理会社が設備管理業務の中で保守会社との調整を担っている場合もあります。

国土交通省は、管理組合と管理業者が管理委託契約を締結する際の参考となるマンション標準管理委託契約書を示しており、2025年12月12日にも改正を公表しています。

ただし、実際にどの業務を管理会社へ任せているかは、それぞれのマンションが現在締結している管理委託契約書で確認する必要があります。

契約経路を変えると仕事の担当も変わる

「直接契約にすれば管理会社を通さない分だけ安くなるのでは」と考えることがあります。

費用が下がる可能性はありますが、契約経路を変えることで、これまで管理会社が行っていた仕事の一部が理事会側へ戻ってくる場合もあります。

業務 管理会社経由の例 管理組合直接契約の例
保守会社との契約管理会社が関与管理組合が直接契約
点検日程調整管理会社が対応する場合あり保守会社と直接調整
作業報告書管理会社経由の場合あり管理組合が直接確認
修理見積管理会社が取り次ぐ場合あり理事会側で確認する場合あり
住民への周知管理会社や管理員業務分担を決める
支払事務管理会社が関与する場合あり出納業務との関係を確認
緊急連絡現行体制による新しい連絡体制を確認

この表を作ってみると、それまで見えていなかった管理会社の役割に気づくことがあります。

その業務に価値があるなら、管理会社経由を続ける理由になります。一方、管理組合と保守会社で対応できるのであれば、直接契約を検討する余地もあるでしょう。

重要なのは、管理会社が間にいること自体を問題にするのではなく、誰が何を担当し、その対価として何を支払っているのかを把握することです。

ポイント7 契約変更と引継ぎを確認する

相見積もりで有力な候補会社が見つかると、「早く切り替えたほうが費用を抑えられる」と感じるかもしれません。

しかし、エレベーター保守では、新旧契約の間に管理の空白をつくらないことが重要です。

まず現在の契約書から、契約期間、更新条件、自動更新の有無、解約方法、通知期限などを確認します。

国土交通省の標準契約書は契約内容を検討する参考になりますが、実際のマンションで適用される条件は、現在締結している個別契約で確認する必要があります。

過去の情報を新しい保守会社へつなぐ

契約変更時には、過去の点検記録、不具合履歴、事故や災害への対応記録、法定検査等の報告書などを整理し、新しい保守会社へ必要な情報を引き継げる状態にします。

保守会社が変わっても、エレベーターそのものが新しくなるわけではありません。

これまでの摩耗状況や不具合履歴が伝わらなければ、維持管理の連続性が弱くなる可能性があります。

さらに、新しい契約が始まった日から緊急連絡先がどこへ変わるのか、点検日程を誰が受け取るのか、作業報告書を誰が確認するのかまで決めておきます。

「会社は変わったものの、故障したらどこへ電話すればよいのか分からない」という状態にしないことが重要です。

7つの条件をそろえて相見積もりを取る

7つのポイントを確認したら、相見積もりへ進みます。

ここまで準備すると、最初から料金だけを比べなかった理由が分かってくるでしょう。

POG契約とフルメンテナンス契約では修理範囲が異なり、現地点検と遠隔対応の組み合わせ、法定検査等、緊急時の出動体制まで違えば、月額料金だけを横に並べても公平な比較にはなりません。

各社にはできるだけ同じ条件を提示し、異なる仕様を提案された場合には、何を変えるのか、その変更によって何が変わるのかを説明してもらいます。

エレベーター保守契約の相見積もり比較表

比較項目 現行契約 A社 B社 C社
契約方式
月額保守料
年間保守料
現地点検周期
遠隔監視
遠隔点検
法定検査等の扱い
消耗品の範囲
劣化部品の取替え範囲
修理範囲
契約対象外項目
24時間対応
現場到着目標
同型機種の実績
部品調達体制
地震時対応
契約期間
解約条件
更新条件
契約外費用の考え方

この表が埋まると、「A社が一番安い」という見方から、「A社は安いがPOG契約なので、劣化部品の取替えは原則として契約外になる」という見方へ変わります。

価格差の理由が分かったうえで選べるようになることが、相見積もりの目的です。

理事会や総会で説明するときは価格差の理由まで示す

候補会社が絞られてくると、理事会では年間の削減額が大きな判断材料になります。

それまで管理費の上昇に悩んできた理事にとって、まとまった削減額が見えれば「この機会に変えたい」と感じるのも自然です。

一方、区分所有者の立場では、「保守会社を変えて安全面は大丈夫なのか」「故障したときの対応まで悪くならないのか」という心配が先に出ることがあります。

なお、契約変更にどのような決議や手続きが必要になるかは、各マンションの現行管理規約、予算、既存の決議内容などによって確認が必要です。国土交通省のマンション標準管理規約も、各マンションが規約を作成または改正する際のひな形として位置付けられています。

そのうえで、理事会や総会などで契約見直しを説明する際には、年間削減額だけを示さず、7つの確認項目を使って現行契約と候補契約を比較すると分かりやすくなります。

点検方法、修理範囲、緊急対応、技術実績、部品調達などを同じ表で示せば、「安全を取るか価格を取るか」という二者択一ではなく、「必要な安全条件を確認したうえで、支出をどう適正化するか」という話へ変えられるでしょう。

保守契約見直しチェックリスト

相見積もり前や理事会での確認には、次のチェックリストを使えます。

最初からすべてにチェックが入る必要はありません。

分からない項目が残ったなら、それが次に確認する内容です。漠然とした不安が具体的な質問へ変われば、契約見直しはすでに一歩進んでいます。

契約変更後に見直し効果を確認する

保守会社や契約方式を変更すると、契約締結の時点で「ようやく終わった」と感じるかもしれません。

しかし、本当に確認したいのは変更後です。

3か月後や半年後に、月額保守料だけでなく、契約外の修理費、作業報告書の内容、質問への回答、故障時の対応、管理会社や理事会の事務負担まで振り返ります。

契約変更後に見直し効果を確認する 契約変更後に見直し効果を確認する 保守会社や契約方式を変更 3か月後や半年後 月額保守料 契約外の修理費 作業報告書の内容 質問への回答 故障時の対応 管理会社や理事会の 事務負担 安全性を維持しながら総費用と管理負担を 適正化できたのか
月額料金が下がっただけで成功と考えるのではなく、安全性を維持しながら総費用と管理負担を適正化できたのかを見ることが重要です。

POG契約へ変更した場合には、契約外となった部品交換や修理にどの程度の費用が発生したのかを記録しておくと、次回の契約見直しに役立つでしょう。

フルメンテナンス契約でも、別途費用になった工事があれば、なぜ契約対象外だったのかを残しておきます。

月額料金が下がっただけで成功と考えるのではなく、安全性を維持しながら総費用と管理負担を適正化できたのかを見ることが重要です。

こうした振り返りを続けることで、エレベーターは保守会社へ任せきりの設備ではなく、管理組合が状態と費用を把握できる共用設備へ変わっていきます。

エレベーター保守契約のよくある質問

エレベーター保守契約は途中で変更できますか

変更の可否や条件は、現在締結している契約によって異なります。

契約期間、中途解約、更新、自動更新、解約通知などの条項を確認し、新しい契約開始日から逆算して準備してください。

標準契約書は契約条件を検討する参考になりますが、実際の手続きについては、自分たちが締結している個別契約を確認する必要があります。

POG契約とフルメンテナンス契約はどちらがよいですか

一律にどちらが優れているとは言えません。

POG契約は、仕様書で定める消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等を含まない方式です。一方、フルメンテナンス契約は、点検結果に基づいて劣化した部品の取替えや修理等を行う方式になります。

設備状態、契約範囲、過去の修理履歴、管理組合が突発的な支出をどこまで許容できるかを合わせて考える必要があります。

POG契約では修理のたびに見積もりが必要ですか

POG契約という方式そのものが、修理のたびに必ず見積もりを取ることまで定義しているわけではありません。

仕様書で定める消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等は原則として契約外の費用として扱われますが、具体的な発注方法や費用決定の手続きは個別契約や管理組合の運用によって異なります。

独立系へ変更すると安全性に問題がありますか

独立系という分類だけで、安全または危険と判断することはできません。

国土交通省は、保守点検業者を価格だけで決めず、専門技術者の能力や同型または類似する昇降機の保守実績などを総合的に評価する考え方を示しています。

メーカー系と独立系のどちらを候補にする場合でも、技術実績、部品調達、緊急対応、契約範囲を同じ視点で比較することが大切です。

管理会社を通さず直接契約できますか

直接契約を検討する場合には、現在の管理委託契約と業務分担を確認する必要があります。

管理会社が現在担当している点検調整、報告書確認、修理見積もりの取り次ぎ、住民への周知などを誰が担うのかまで整理してから判断してください。

直接契約による費用差だけでなく、変更後の事務負担も含めて考えることが重要です。

相見積もりでは何を同じ条件にすればよいですか

この記事で紹介した7つのポイントをそろえるのが基本です。

特に契約方式、点検方法、修理範囲、緊急対応が異なる見積もりを、月額料金だけで比べないよう注意します。

完全に同じ仕様にできない場合には、その違いを比較表へ残し、なぜ価格が違うのかを説明できる状態にしてください。

法定検査と保守点検は同じものですか

同じものではありません。

建築基準法第12条第3項に基づく定期検査報告では、対象となる昇降機について資格者が検査し、その結果を特定行政庁へ報告します。

通常の保守点検は、機器の確認、清掃、注油、調整などを通じて設備を適切な状態に維持する業務です。

同じ会社へ両方を委託している場合でも、相見積もりでは業務内容と費用を分けて確認しておくと比較しやすくなります。

まとめ

マンションのエレベーター保守契約を見直すときは、月額料金だけを比較するのではなく、7つのポイントを同じ条件で確認することが重要です。

特にPOG契約とフルメンテナンス契約では、劣化した部品の取替えや修理を契約に含む範囲が異なります。さらに、点検内容、緊急対応、技術力、部品調達、契約経路、解約や引継ぎまで確認すれば、価格差の理由を理解したうえで判断できるでしょう。

まずは現在の契約書と仕様書を開き、7項目のうち分かるところから確認してみてください。

「保守費が高い気がする」という漠然とした不安を、「何が含まれ、何が含まれないからこの金額なのか」と説明できる状態へ変えることが、適切な保守契約見直しの第一歩です。

参考資料

国土交通省 エレベーター保守・点検業務標準契約書

POG契約とフルメンテナンス契約、遠隔監視、遠隔点検、法定検査等の定義を確認する際の中心資料です。

国土交通省 昇降機について

定期検査報告、地震対策、大規模地震時の復旧方針、2026年6月11日の事故発生時における迅速な現場到着に関する情報などを確認できます。

国土交通省 昇降機の適切な維持管理に関する指針等を公表

保守点検業者を価格だけで選定せず、技術力や同型または類似する昇降機の実績などを総合的に評価する考え方を確認できます。

国土交通省 マンション標準管理規約

管理組合の意思決定手続きや規約を確認する際に参照できる、国土交通省の標準的なひな形です。

国土交通省 マンション標準管理委託契約書等の策定改正

管理会社との業務分担や管理委託契約を確認する際の参考資料で、2025年12月12日の改正内容も確認できます。

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