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【2027年4月改正】マンション管理計画認定制度で長期修繕計画はどう変わる? 5年ルールと管理組合の対応を解説

「管理計画認定はすでに取得しているから、当面は大きな対応をしなくてもよいだろう」と考えていた管理組合にとって、2027年4月から認定基準が変わるという話は気になるものです。

特に注目したいのが、長期修繕計画の作成または見直しに関する基準です。既存マンションで管理組合の管理者等が新規申請する場合、現行の7年以内から申請日前5年以内へ変更されます。

すると、「今使っている長期修繕計画はそのまま使えるのか」「すでに認定を受けていても、すぐ見直さなければならないのか」「修繕積立金まで引き上げる必要があるのか」と、不安になる方もいるでしょう。

ただし、今回の改正を「5年経過したら認定が取り消される」と理解するのは適切ではありません。また、段階増額積立方式を採用しているだけで認定できなくなる制度でもありません。

大切なのは、改正内容を暗記することではなく、自分たちのマンションに当てはめて判断できる状態にすることです。

この記事では、2027年4月改正によって長期修繕計画がどう変わるのかを整理したうえで、認定済みマンションへの影響、5年ルールの数え方、大規模修繕と修繕積立金の確認方法、管理組合が今から確認したい書類まで順を追って解説します。

TABLE OF CONTENTS
目次

2027年4月改正で管理組合が最初に確認したい4つのポイント

制度の細かな説明へ入る前に、既存マンションの管理組合では、まず4つの点を確認すると自分たちへの影響を判断しやすくなります。

一つ目は、次の新規申請または認定更新をいつ予定しているのかです。地方公共団体への申請日が2027年4月1日以降になる場合には、原則として改正後の認定基準が関係します。

二つ目は、現在の長期修繕計画を最後にいつ作成または見直したのかです。管理組合の管理者等が新規申請する場合、改正後は申請日前5年以内であることが求められます。

三つ目は、申請日から長期修繕計画の終了日までに大規模修繕工事が2回以上予定されているかという点です。

そして四つ目は、計画期間全体で集める修繕積立金によって、予定している修繕工事費を賄える内容になっているかです。

この4点を確認するだけでも、「制度が変わるらしい」という漠然とした不安から、自分たちが調べるべきことへ視点を移せます。

すぐに計画を全面的に作り直す必要があるとは限りません。まず現在地を確認し、その結果を見て必要な対応を考えることが重要です。

2027年4月1日にマンション管理計画認定制度が変わる

マンション管理計画認定制度は、マンション管理適正化法に基づき、一定の基準を満たしたマンションの管理計画を地方公共団体が認定する制度です。

2022年度から始まり、管理組合の運営、管理規約、会計、長期修繕計画、修繕積立金などが確認対象となっています。

制度が必要とされる背景には、分譲マンション特有の管理の難しさがあります。

マンションでは、外壁、屋上、廊下、給排水設備、エレベーターなどを多くの区分所有者が共同で維持していかなければなりません。

必要な修繕が見えていても、修繕積立金の増額や大規模修繕工事を実施するには、多くの場合、管理組合内での合意形成が必要です。

理事会としても、「値上げの話を出せば反対されるのではないか」「できれば自分たちの任期中には触れたくない」と感じることがあるでしょう。

それでも建物の劣化は、理事会の事情に合わせて止まってくれません。

資金不足が大規模修繕の直前になって判明すれば、工事範囲の再検討、修繕積立金の急激な増額、借入れなど、限られた選択肢の中から判断しなければならなくなる可能性があります。

管理計画認定制度には、認定を取得することだけではなく、こうした問題が深刻になる前に管理状況を点検する意味もあるでしょう。

2027年4月から申請の仕組みも広がる

2027年4月1日からは制度が拡充され、既存マンションの管理組合の管理者等による申請に加え、新築マンションの分譲時に分譲事業者が申請する仕組みが新設されます。

今回の改正は、令和8年国土交通省令第70号と令和8年国土交通省告示第1017号などに基づいて実施されます。

ここで注意したいのは、2027年4月以降の管理計画認定制度では、既存マンションの管理組合が申請する場合と、分譲事業者が申請する場合とで、一部の認定基準が異なることです。

この記事では、主としてすでに管理組合が存在する既存マンションについて説明します。

2026年度までと2027年4月以降の認定基準比較

既存マンションで管理組合の管理者等が申請する場合について、長期修繕計画に関係する主な違いを整理すると次のようになります。

確認項目 2026年度まで 2027年4月以降
長期修繕計画の作成または見直し 7年以内 新規申請では申請日前5年以内
認定更新時の見直し 現行基準による 従前の認定日から更新申請日までの間に実施
長期修繕計画の計画期間 30年以上 30年以上
大規模修繕工事 残存期間内に2回以上 申請日から計画終了日までに2回以上
修繕積立金総額と修繕工事費総額 改正後と同じ形の独立基準なし 修繕積立金総額が修繕工事費総額を下回らないこと
将来の一時的な修繕積立金徴収 予定しない 予定しない
計画最終年度の借入金 残高がないこと 残高がないよう設定
修繕積立金の平均額 著しく低額でないこと 著しく低額でないこと
0.6倍と1.1倍 管理組合向け直接要件ではない 管理組合向け直接要件ではない
防災方針 現行国基準には独立項目なし 防災方針に関する書類の作成と周知
自治体独自基準 確認が必要 引き続き確認が必要

改正の中心は「7年から5年」という期間変更だけではありません。

長期修繕計画が新しいかどうかだけでなく、その計画が実際に実行できるだけの資金を確保できる内容になっているかという点も、これまで以上に重要になります。

2027年4月以降は誰にどの認定基準が適用されるのか

2027年4月改正を理解するうえで、最初に区別したいのが申請者です。

一つは、すでに管理組合が存在する既存マンションで、管理組合の管理者等が申請する場合です。

もう一つは、2027年4月から新しく始まる、分譲時に分譲事業者が申請する場合です。

同じ管理計画認定制度でも、すべての基準が同じではありません。

特に修繕積立金に関する「0.6倍」「1.1倍」を調べていると、「認定基準になっている」という情報と「直接の認定要件ではない」という情報の両方が見つかることがあります。

これは、どちらかが必ず誤りというわけではありません。

誰が申請するのかによって扱いが異なるからです。

記事を読む際には、まず自分たちが既存マンションの管理組合なのか、新築分譲時の事業者申請について調べているのかを区別すると理解しやすくなります。

2027年4月以降の申請には新しい認定基準が適用される

国土交通省は、地方公共団体への申請日が2027年4月1日以降となる場合、見直し後の認定基準を適用すると案内しています。

ここでいう申請日は、理事会で検討を始めた日ではありません。

事前確認を利用する場合には、事前確認を経たあと地方公共団体へ認定申請する流れになるため、準備開始日と地方公共団体への申請日が異なる場合があります。

たとえば2027年3月に手続きを始めても、地方公共団体への申請が4月1日以降になれば、改正後の基準が関係します。

長期修繕計画の見直しでは、計画内容や工事費の確認だけでなく、資金計画の検討、理事会での協議、必要に応じた総会手続などが発生します。

「まだ時間がある」と思っていたものの、総会開催まで含めると間に合わないということも考えられます。

申請予定日を先に確認し、そこから必要な作業を逆算することが大切です。

2027年4月前後の経過措置を確認する

2027年4月1日になった瞬間に、すべての申請が一律に改正後基準へ切り替わるわけではありません。

経過措置があります。

施行日前に行われた認定申請、認定更新申請、変更認定申請について、施行日時点でまだ処分が行われていないものには、見直し前の認定基準が適用されます。

また、旧基準で認定された管理計画について、施行後に変更認定申請を行う場合にも従前基準が適用される経過措置があります。

一方、2027年4月1日以降に行う認定更新申請には、改正後の認定基準が適用されます。

すでに管理計画認定を受けているマンションであれば、「認定済みだから今回の改正とは無関係」と考えず、次の更新申請がいつになるのかを確認しておく必要があります。

2027年4月以降は誰にどの認定基準が適用されるのか 既存マンション 管理組合の管理者等が申請する場合 分譲時 分譲事業者が申請する場合 同じ管理計画認定制度でも、すべての基準が同じではありません。
誰が申請するのかによって扱いが異なるからです。

長期修繕計画の7年以内は5年以内へ変わる

2026年度までの現行基準では、長期修繕計画について7年以内に作成または見直しが行われていることが求められています。

2027年4月1日以降、既存マンションの管理組合の管理者等が新規申請する場合には、この基準が申請日前5年以内へ変わります。

数字だけを見れば、7年から5年へ2年間短くなる変更です。

しかし、管理組合にとっては小さな違いではありません。

2022年に長期修繕計画を見直したマンションであれば、2027年の何月に申請するかによって、申請日前5年以内に入る場合と入らない場合が出てきます。

これまで利用できた長期修繕計画でも、改正後は作成や見直しの時期によって認定基準に適合しない可能性があるわけです。

長期修繕計画を定期的に見直す理由

長期修繕計画は、一度作成すれば30年間そのまま使える未来予測ではありません。

建設資材の価格、人件費、設備価格は変わります。

建物の劣化状況についても、計画作成時の想定どおりになるとは限りません。

以前は1億円程度で実施できると想定していた大規模修繕工事が、数年後に見積りを取ると大きく上昇している可能性もあります。

そこで不足が見つかったとき、「知らない方がよかった」と感じる理事の方もいるかもしれません。

しかし、不足している事実は、確認を先送りしても消えません。

むしろ早い段階で把握できれば、修繕内容、積立方式、増額時期などを検討する時間が残ります。

長期修繕計画の見直しは、認定を取るために日付を更新する作業ではなく、計画と現実のずれを確かめるために行うものです。

申請日前5年以内はどのように考えるのか

管理組合の管理者等が新規申請する場合、改正後は長期修繕計画の作成または見直しが申請日前5年以内であることが求められます。

実務では、地方公共団体への申請予定日から暦上5年前の日付を確認するとわかりやすいでしょう。

なお、「5年=1,825日」と固定して計算するのは避ける必要があります。

その間にうるう年が含まれる場合があるため、日数へ機械的に置き換えるより、暦で5年前の日付を確認する方が適切です。

申請日から5年を逆算する具体例

2027年10月1日に新規認定申請を予定しているケースを考えます。

その5年前は2022年10月1日です。

したがって、長期修繕計画の作成または見直し時期について、2022年10月1日以降かどうかを確認することになります。

もし現在利用している計画の見直しが2022年5月であれば、「2022年に見直したから最近だ」と感じるかもしれません。

しかし、2027年10月1日の申請予定日から見ると5年より前です。

一方、2023年6月に見直している場合には、時期だけを見れば申請日前5年以内に入ります。

認定申請予定日 暦上の5年前 最初に確認する期間
2027年4月1日 2022年4月1日 2022年4月1日以降
2027年10月1日 2022年10月1日 2022年10月1日以降
2028年4月1日 2023年4月1日 2023年4月1日以降
2028年12月1日 2023年12月1日 2023年12月1日以降

ただし、2027年4月以降の具体的な添付書類や確認方法については、2026年8月31日時点で国土交通省が事務ガイドラインを今後見直す予定としています。

そのため、現段階では申請予定日から5年前の日付を確認して余裕を把握し、実際の申請では改訂後の事務ガイドラインと申請先自治体の最新手引きを確認する必要があります。

認定更新では5年の考え方が異なる

すでに管理計画認定を取得しているマンションでは、新規申請と更新申請を同じように考えないことが重要です。

2027年4月以降の更新申請では、単純に「更新申請日の5年前までに見直していればよい」という基準ではありません。

改正後は、従前の認定を受けた日から認定更新申請日までの間に、長期修繕計画の作成または見直しが行われていることが求められます。

たとえば2022年5月10日に認定を受けたマンションが、2027年4月15日に更新申請するとします。

この場合に確認する期間は、単純な2022年4月15日以降ではありません。

従前の認定日である2022年5月10日から、更新申請日の2027年4月15日までです。

初回認定に使用した長期修繕計画が2022年3月に作成または見直されたもので、その後一度も見直していなければ、従前の認定日より前の計画になります。

「前回の認定で使った書類だから今回も使えるだろう」と考えていると、更新準備の段階で対応が必要になる可能性があります。

認定取得をゴールとして見るのではなく、次回更新までの新しい管理期間が始まったと捉えると理解しやすいでしょう。

30年以上と大規模修繕2回以上の基準を確認する

長期修繕計画では、5年ルールだけを満たせばよいわけではありません。

計画期間30年以上という基準は、2027年4月以降も維持されます。

一方、大規模修繕工事については、申請日から長期修繕計画の終了日までの間に2回以上含まれるよう設定することが求められます。

計画書全体ではなく申請日から先を見る

たとえば2022年度から2051年度までの長期修繕計画があり、大規模修繕工事を2023年度、2035年度、2047年度に予定しているとします。

2027年度に申請する場合、2023年度の工事はすでに過去です。

申請日以降には、2035年度と2047年度の2回が残っています。

反対に、長期修繕計画全体には2回の大規模修繕が書かれていても、そのうち1回がすでに終了していれば、申請日から先には1回しか残っていない可能性があります。

したがって、「30年計画だから大丈夫」「大規模修繕が2回書いてあるから大丈夫」と判断するのではなく、申請日を基準として確認する必要があります。

高経年マンションでは計画後半の工事も重くなる

築30年や40年を超えるマンションでは、外壁や屋上防水だけを想定していれば足りるとは限りません。

給排水設備、エレベーター、受変電設備、機械式駐車場など、大型設備の更新が長期修繕計画の後半で重なる可能性があります。

30年先の工事費を正確に予測することはできません。

しかし、わからないから考えないのではなく、現時点で合理的な予測を置き、定期的に実績とのずれを修正していくことが大切です。

長期修繕計画は、未来を当てるための書類ではありません。

変化する未来へ対応するための土台です。

計画書全体ではなく申請日から先を見る 2023年度 大規模修繕工事 2027年度 申請 2035年度 大規模修繕工事 2047年度 大規模修繕工事 申請日以降には、2035年度と2047年度の2回が残っています。
申請日を基準として確認する必要があります。

修繕積立金総額と修繕工事費総額を確認する

2027年4月改正では、既存マンションで管理組合の管理者等が申請する場合、計画期間全体における修繕積立金総額が、計画期間内に見込まれる修繕工事費総額を下回らないよう設定されていることが認定基準へ加わります。

この変更は、長期修繕計画の実効性を考えるうえで重要です。

工事予定を30年間並べても、その工事を実行するための資金を準備できなければ、計画として十分とはいえません。

現在残高だけでは判断できない

たとえば修繕積立金会計に現在1億円あるとします。

金額だけを見れば、「かなり積み立てているから大丈夫だろう」と感じるかもしれません。

しかし、3年後に1億5千万円の大規模修繕を予定し、その後に給排水設備やエレベーターなどの更新工事も予定しているのであれば、現在残高だけでは判断できません。

今後どれくらい積み立てるのか、どの年度で大きな支出が発生するのか、工事後の残高がどう推移するのかを確認する必要があります。

見るべきなのは、「今いくらあるか」だけではありません。

「必要になる時点で必要な金額が確保されているか」です。

修繕積立金の不足を早く確認する意味

資金計画を確認して不足が見つかれば、理事会としては気が重くなるでしょう。

「また修繕積立金の値上げを議論することになるのか」と考えれば、詳しく調べることそのものを先送りしたくなるかもしれません。

しかし、早めに不足を確認する目的は、すぐに値上げを決めることではありません。

選択肢を残すことです。

たとえば10年後に4千万円不足する可能性が今わかれば、工事項目の精査、増額時期、積立方式などを時間をかけて比較できます。

同じ4千万円の不足が、大規模修繕の2年前になって初めて判明すれば、管理組合が取れる方法は限られてきます。

早く見つかった問題は、悪い知らせであると同時に、考える時間が残っているという知らせでもあります。

修繕積立金を値上げしない場合も比較する

修繕積立金の見直しでは、値上げ案だけを提示するのではなく、現在額を維持した場合の将来も比較する必要があります。

区分所有者にとって、修繕積立金は毎月の生活費に直結します。

「将来必要だから上げます」と言われても、それだけでは納得できない人がいて当然でしょう。

現在額を維持した場合には何年度に不足するのか、増額を数年先送りすると将来どの程度の値上げが必要になるのか、早めに小幅な増額を始めれば負担をどの程度平準化できるのかを比較します。

すると、議論が単純な「値上げへの賛成か反対か」ではなくなります。

何もしないという選択にも将来の結果があることを、同じ数字の上で話せるようになるからです。

修繕積立金の増額幅を抑えるために考えること

資金不足が確認されたからといって、直ちに大幅な増額だけが答えになるとは限りません。

まず長期修繕計画に記載された工事項目、工事時期、概算費用、修繕周期が、現在の建物状態に合っているかを確認します。

そのうえで必要な修繕費を整理し、積立方式や増額時期を検討します。

建物調査の結果によっては、適切な範囲で工事時期を調整できる可能性もあるでしょう。

ただし、認定を取得するためだけに必要な工事を削ったり、合理的な根拠なく先送りしたりすることは避けるべきです。

早い段階で検討を始めれば、複数の案を比較できます。

一度に大幅な増額を求めるより、必要性を共有しながら早めに負担を調整する方が、結果として将来の増額幅を抑えられる場合もあります。

均等積立方式と段階増額積立方式の違い

修繕積立金の資金計画を考える際には、均等積立方式と段階増額積立方式の違いも理解しておきたいところです。

均等積立方式は、長期修繕計画で必要となる修繕費を、計画期間を通じてできるだけ均等に積み立てる考え方です。

一方、段階増額積立方式では、当初の修繕積立金を低めに設定し、その後段階的に引き上げます。

段階増額積立方式には、新築購入時などの初期負担を抑えやすい面があります。

しかし、その分だけ将来の値上げを確実に実行できるかという課題が残ります。

計画書に「5年後に増額」と記載されていても、5年後の総会で予定どおり承認される保証はありません。

そのため国土交通省は、将来にわたり安定的に修繕積立金を確保する観点から、均等積立方式を望ましい考え方として示しています。

均等積立方式と段階増額積立方式の違い 均等積立方式 長期修繕計画で必要となる修繕費を、 計画期間を通じてできるだけ均等に 積み立てる考え方です。 段階増額積立方式 当初の修繕積立金を低めに設定し、 その後段階的に引き上げます。 将来の値上げを確実に実行できるか という課題が残ります。
修繕積立金の資金計画を考える際には、均等積立方式と段階増額積立方式の違いも理解しておきたいところです。

段階増額積立方式の0.6倍と1.1倍は申請者を分けて理解する

2024年6月に改定された国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインでは、段階増額積立方式における適切な引上げの考え方が示されています。

均等積立方式とした場合の月額を基準額とし、初期額を基準額の0.6倍以上、最終額を基準額の1.1倍以内とするものです。

たとえば均等積立方式による基準額が月2万円なら、初期額の目安となる0.6倍は1万2千円、最終額の上限側となる1.1倍は2万2千円です。

この考え方は、初期額を極端に低く設定した結果、将来になって急激な値上げが必要になる計画を避ける方向を示しています。

なお、0.6倍から1.1倍までを単純に比較すると約1.83倍ですが、「1.8倍以内」という独立した認定基準が別に存在するわけではありません。

既存マンションの管理組合申請では直接要件ではない

この記事の主な対象である既存マンションで、管理組合の管理者等が2027年4月以降に申請する場合、0.6倍以上と1.1倍以内という数値は、全国共通の直接的な認定要件として置かれていません。

管理組合向けの改正後基準では、修繕積立金総額が修繕工事費総額を下回らないこと、将来の一時的な修繕積立金徴収を予定しないこと、計画最終年度に借入金残高がないこと、修繕積立金の平均額が著しく低額でないことなどが確認されます。

したがって、「既存マンションでも0.6倍と1.1倍を満たさなければ認定されない」と理解するのは適切ではありません。

一方、直接の認定要件ではないからといって、ガイドラインを無視してよいわけでもありません。

段階増額積立方式の現在額が低すぎないか、将来予定している増額を現実に実行できるのかを検討する際には、重要な参考になります。

分譲事業者の申請では正式な認定基準になる

2027年4月1日から新設される分譲事業者による申請では、扱いが異なります。

分譲事業者向けの認定基準では、計画期間全体における1月当たりの修繕積立金徴収金額について、最低額が基準額の0.6倍以上、最高額が基準額の1.1倍以内であることが正式な認定基準になります。

つまり、2027年以降の管理計画認定制度全体について「0.6倍と1.1倍は認定基準ではない」と一般化することも正確ではありません。

既存マンションの管理組合申請では直接要件ではなく、分譲時の分譲事業者申請では正式な認定要件になる。

この区別を押さえることが大切です。

将来の一時金と借入金も確認する

修繕積立金が不足する場合、「不足したときに一時金を徴収すればよい」と考えることがあります。

しかし、管理計画認定の国の基準では、長期修繕計画に将来の一時的な修繕積立金徴収を予定しないことが求められています。

突然、一戸当たり数十万円の負担を求めることになれば、区分所有者によって支払えるかどうかに大きな差が出るでしょう。

「工事が必要なのはわかる。でも急にその金額を用意するのは難しい」という人が出ても不思議ではありません。

将来の誰かに大きな負担を預けるのではなく、できる限り計画的に修繕資金を準備することが重要です。

借入金についても、計画期間の最終年度に残高を残さないよう設定する必要があります。

借入れそのものが一律に禁止されているわけではありません。

利用する場合には返済計画を長期修繕計画の時間軸に重ね、計画終了時までに返済できる内容になっているかを確認します。

2027年4月までに管理組合が確認したい書類

ここまで制度を確認したら、自分たちのマンションの書類へ戻ります。

最初からすべてを作り直す必要はありません。

まず現在保管している資料を並べ、どこに不足やずれがあるのかを確認します。

確認する書類 主な確認内容 2027年4月改正を踏まえた確認事項
長期修繕計画書 計画期間と修繕工事 30年以上の計画になっているか
長期修繕計画に関する総会議事録 作成や見直しに関する決議 最終見直し時期を確認できるか
長期修繕計画の資金計画 将来の収入と支出 修繕積立金総額で工事費総額を賄えるか
修繕積立金会計決算書 現在残高と年間収支 計画上の数字と実態に差がないか
修繕積立金改定資料 現在額と将来額 将来の段階増額が現実的か
大規模修繕履歴 過去の工事実施時期 次回以降の修繕周期を確認
今後の修繕予定表 工事時期と概算費 申請日以降に大規模修繕が2回以上残るか
借入金返済予定表 借入残高と完済時期 計画最終年度に残高が残らないか
管理計画認定通知書 認定日と有効期間 次回更新時期を確認
前回認定申請書類 前回申請時の内容 改正後基準との違いを整理
管理規約 管理者や監事などの規定 改正後基準との適合を確認
区分所有者名簿と居住者名簿 作成と更新状況 必要な更新が行われているか
修繕積立金滞納資料 滞納額と期間 認定基準への適合を確認
防災方針関係資料 防災に関する方針 2027年4月以降の新基準を確認
自治体の認定手引き 自治体独自の条件 国基準以外の追加要件がないか

実際に書類を集めてみると、「長期修繕計画上の積立額と現在の徴収額が違っている」「認定日はわかるが、計画を最後に見直した日がすぐ確認できない」といったことが見つかるかもしれません。

そこで慌てる必要はありません。

何がわからないのかが見えた時点で、次に確認するべきことも見えてきます。

管理組合では小さく対応を始める

制度改正への対応を一度に進めようとすると、理事会の負担は大きくなります。

最初の理事会では、認定通知書と現在の長期修繕計画を確認するだけでもよいでしょう。

認定日と更新予定時期を確認し、長期修繕計画を最後に作成または見直した時期を調べます。

次の段階では、修繕積立金の現在残高と将来収支を確認します。

そこで不足が見つかった場合には、どの年度に、どの程度不足するのかを確認しましょう。

そのあとで、現在額を維持する案、早めに増額する案、積立方式を見直す案などを比較します。

この順番には意味があります。

最初から「修繕積立金を値上げします」と説明すれば、区分所有者には負担増だけが強く残るかもしれません。

一方、「2033年度の大規模修繕時点で現在の計画では資金不足が予測されるため、今から複数の方法を比較したい」と説明すれば、なぜ検討するのかが伝わります。

不安を完全になくすことはできなくても、不安の中身を金額と時期に変えることはできます。

それが合意形成の出発点になります。

管理組合では小さく対応を始める 最初の理事会では、認定通知書と現在の長期修繕計画を 確認するだけでもよいでしょう。 次の段階では、修繕積立金の現在残高と 将来収支を確認します。 そのあとで、現在額を維持する案、早めに増額する案、 積立方式を見直す案などを比較します。
この順番には意味があります。

長期修繕計画を見直す際にマンション管理士へ相談できること

管理計画認定には、法律、管理規約、会計、総会運営、長期修繕計画など複数の分野が関係します。

理事になったばかりの方が資料を見て、「これを全部自分たちで判断するのは難しい」と感じるのは不自然ではありません。

そのような場合には、マンション管理士などの専門家へ相談する方法があります。

認定基準への適合状況を整理する

現在の管理規約、総会議事録、長期修繕計画、修繕積立金関係資料などを確認し、認定申請や更新に向けてどの部分を整理する必要があるのか相談できます。

問題があるかどうかさえ判断できない状態では、理事会も動きにくいものです。

第三者に論点を整理してもらうことで、すぐ対応する事項と今後検討する事項を切り分けやすくなります。

長期修繕計画と資金計画を整理する

現在の長期修繕計画について、認定制度の観点から何を確認すべきか、修繕積立金の検討をどのような順番で進めるかについて相談することもできます。

一方、建物の詳細な劣化診断、建築設計、数量積算、工事仕様などについては、建築士や設計事務所など別の専門家が必要になる場合があります。

マンション管理士だけですべてを完結させると考えるのではなく、管理運営と建築技術で専門家を使い分けることが重要です。

修繕積立金の合意形成を支援する

修繕積立金の見直しは、数字が合っていれば自動的に決まるものではありません。

管理組合として必要だと考える金額でも、区分所有者にとっては毎月の負担増です。

現在額を維持した場合、早めに増額した場合、増額を先送りした場合などを比較し、それぞれ将来の資金残高がどう変わるのかを示す必要があります。

マンション管理士には、こうした理事会での論点整理や住民説明会、総会に向けた合意形成について相談できる場合があります。

具体的な業務範囲や料金は専門家によって異なるため、依頼前に確認しておくとよいでしょう。

申請先自治体の独自基準も確認する

管理計画認定制度では、国が定める認定基準だけを満たせば必ず認定されるとは限りません。

地方公共団体によっては、地域事情に応じた独自基準を設定している場合があります。

そのため、全国共通の記事や国の資料だけで「自分たちのマンションは問題ない」と判断するのは避けた方がよいでしょう。

特に2027年4月の制度改正前後では、自治体の手引きや申請様式が更新される可能性があります。

国の基準を確認したあと、実際の申請前には申請先自治体の最新情報まで確認してください。

管理計画認定制度2027年改正のよくある質問

長期修繕計画の7年以内はいつ5年以内になりますか

2027年4月1日から改正後の認定基準が施行されます。

既存マンションで管理組合の管理者等が新規申請する場合、2027年4月1日以降の申請では、長期修繕計画の作成または見直しについて申請日前5年以内という基準が適用されます。

ただし、施行日前の申請には経過措置があるため、2027年4月前後に申請する場合には適用関係を個別に確認する必要があります。

2027年4月以前に認定を受けているマンションはどうなりますか

2027年4月1日になっただけで、それ以前に受けた認定が一律に取り消されるわけではありません。

一方、2027年4月1日以降に認定更新申請を行う場合には、改正後の認定基準が適用されます。

認定済みの管理組合では、現在の認定日と次回更新時期を早めに確認しておくことが重要です。

長期修繕計画は必ず5年ごとに作り直す必要がありますか

5年ごとに長期修繕計画をゼロから新規作成しなければならないという意味ではありません。

改正後基準は「作成又は見直し」としています。

現在の建物状態、工事費、修繕時期、資金計画などを確認し、必要に応じて計画を見直すことになります。

計画期間30年以上という基準は変わりますか

計画期間30年以上という基準は2027年4月以降も維持されます。

ただし、大規模修繕については、申請日から計画終了日までの間に2回以上含まれるよう設定する必要があります。

計画書全体の工事回数だけではなく、申請後に何回残っているのかを確認してください。

段階増額積立方式でも管理計画認定を取得できますか

既存マンションで管理組合の管理者等が申請する場合、段階増額積立方式を採用していることだけを理由として一律に不認定となる全国共通基準は、公表されている改正後の管理組合向け基準にはありません。

0.6倍以上と1.1倍以内についても、既存マンションの管理組合申請では直接の認定要件ではありません。

一方、2027年4月から新設される分譲事業者による申請では、最低額0.6倍以上、最高額1.1倍以内が正式な認定基準となります。

申請主体を分けて理解することが重要です。

修繕積立金が不足していたら必ず値上げが必要ですか

不足が確認された場合でも、まず工事項目、工事時期、工事費、現在残高などを確認し、長期修繕計画自体が現在の建物状態に合っているかを検証します。

その結果として修繕積立金の増額が必要になる場合があります。

重要なのは、認定取得だけを目的に金額を機械的に決めるのではなく、現在額を維持した場合を含め、複数の資金計画を比較することです。

マンション管理士にはどこまで相談できますか

管理計画認定基準の整理、管理規約や総会資料の確認、長期修繕計画と修繕積立金の検討、認定申請準備、管理組合内での合意形成などについて相談できます。

ただし、建物の詳細な劣化診断や設計などについては、建築士など他の専門家との連携が必要になる場合があります。

2027年4月改正に向けて今からできること

2027年4月改正について調べていると、5年、30年以上、大規模修繕2回、修繕積立金、0.6倍、1.1倍と、多くの数字が出てきます。

すべてを覚えようとすると、かえって「自分たちは何をすればよいのか」が見えにくくなるでしょう。

既存マンションの管理組合であれば、まず管理計画認定通知書を確認し、次回の申請または更新時期を把握します。

次に長期修繕計画を開き、最後に作成または見直した時期、計画期間、今後の大規模修繕予定を確認します。

さらに資金計画を見て、予定している工事を現在の修繕積立金計画で実行できるのかを調べます。

そこで問題が見つかっても、一度にすべてを変える必要はありません。

見直し時期の問題なのか、大規模修繕の設定なのか、資金計画なのかを切り分ければ、対応の順番が見えてきます。

「何となく心配」という状態では、理事会も動きにくいものです。

しかし、「次回更新までに長期修繕計画の見直しが必要」「2033年度ごろに資金不足が予測される」と具体的になれば、検討できます。

制度を理解するだけで終わらず、自分たちのマンションで次に何を確認するのかを決めることが、2027年4月改正への実際の対応です。

2027年4月改正に向けて今からできること まず管理計画認定通知書を確認し、 次回の申請または更新時期を把握します。 次に長期修繕計画を開き、最後に作成または見直した時期、 計画期間、今後の大規模修繕予定を確認します。 さらに資金計画を見て、予定している工事を現在の 修繕積立金計画で実行できるのかを調べます。
見直し時期の問題なのか、大規模修繕の設定なのか、資金計画なのかを切り分ければ、対応の順番が見えてきます。

まとめ

2027年4月1日以降、既存マンションで管理組合の管理者等が新規に管理計画認定を申請する場合、長期修繕計画の作成または見直しについて、現行の7年以内から申請日前5年以内へ基準が変わります。

認定更新では、単純に更新申請日の5年前を見るのではなく、従前の認定日から更新申請日までの間に長期修繕計画の作成または見直しが行われていることが必要です。

さらに、計画期間30年以上という基準に加え、申請日から計画終了日までに大規模修繕を2回以上含めることや、計画期間全体の修繕積立金総額で修繕工事費総額を賄えるようにすることも重要になります。

0.6倍と1.1倍については、既存マンションの管理組合申請では直接の認定要件ではありませんが、2027年4月から始まる分譲事業者申請では正式な認定基準です。

管理組合として最初に確認したいのは、次回申請や更新の時期、長期修繕計画の最終見直し時期、申請後の大規模修繕回数、修繕積立金の資金計画です。

現在地がわかれば、必要な対応も見えてきます。

改正直前になって慌てるのではなく、一つずつ確認を始めることが、管理組合にとって最も現実的な準備となるでしょう。

なお、2027年4月以降の詳細な申請書類、添付書類、確認実務については、2026年8月31日時点で国土交通省が事務ガイドラインを今後見直す予定としています。実際の申請時には、最新の国土交通省資料と申請先自治体の手引きを必ず確認してください。

参考資料

制度全体と2027年4月改正については、国土交通省 マンション管理計画認定制度で確認できます。

2027年4月以降に既存マンションの管理組合の管理者等へ適用される基準は、国土交通省 管理組合の管理者等が申請者となる場合の認定基準を参照してください。

2027年4月から新設される分譲事業者申請と0.6倍以上および1.1倍以内の扱いについては、国土交通省 分譲事業者が申請者となる場合の認定基準で確認できます。

2027年4月改正の根拠となる告示については、国土交通省 令和8年国土交通省告示第1017号を参照してください。

長期修繕計画と修繕積立金の基本的な考え方については、国土交通省 マンション管理に関する各種ガイドラインから最新版を確認できます。

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