家計を見直したいと思っても、住宅、教育、老後まで一度に考え始めると、何から整理すればよいのかわからなくなることがあります。
「そろそろ将来のお金を考えたほうがいい」と感じているのに、結婚する時期も、住宅を買うかどうかも、子どもの進路もまだ決まっていない。そんな状態で数字を書こうとすると、「間違った計画を作ってしまうのではないか」と手が止まることもあるでしょう。
そこで役立つのがライフイベント表です。
最初に答えを示すと、ライフイベント表に最低限書くのは次の4項目です。
| 記入項目 | 書く内容 |
|---|---|
| 年と年齢 | イベントが起こる年と本人の年齢 |
| 家族構成と家族年齢 | 配偶者や子どもなど家族の年齢 |
| ライフイベント | 結婚や進学や住宅購入や退職など |
| 想定費用 | そのイベントに必要になりそうな金額 |
まずは、この4項目だけで始められます。
ライフイベント表は、未来を正確に予測するための表ではありません。自分や家族がこれから経験しそうな出来事を時系列で並べ、お金が必要になる時期を具体的に考えるための道具です。
この記事では、ライフイベント表に何を書くのかという基本から、実際の書き方、記入例、費用がわからない場合の考え方、キャッシュフロー表へのつなげ方まで順番に解説します。
紙やExcelを用意しながら読み進めれば、最初の一枚を書き始められるでしょう。
ライフイベント表とは
ライフイベント表とは、自分や家族に将来起こる予定や実現したいことを時系列で整理し、それぞれに必要となりそうな費用を記入する表です。
結婚、出産、子どもの進学、住宅購入、車の買い替え、転職、旅行、退職など、暮らしや家計に影響する出来事を一つの時間軸に並べます。
日本FP協会でもライフイベント表のPDF版とExcel版が公開されており、今後10年、20年の予定や目標を書き込む方法が紹介されています。費用についても、現時点で正確な金額を決めるのではなく、おおまかな目安で構わないとされています。
ここで大切なのは、表をきれいに完成させることではありません。
たとえば「いつか家がほしい」と考えているだけなら、頭の中ではまだ輪郭の薄い予定でしょう。
そこで「2035年ごろに住宅購入を検討」と書いてみます。
すると、現在からあと何年あるのか、そのころ子どもは何歳なのか、教育費と住宅費が近い時期に重ならないかといった別の問いが生まれます。
将来のお金が不安になるのは、必要額が大きいからだけではありません。
住宅も教育も老後も、すべて一度に考えなければならないように感じてしまい、どこから手をつければよいのかわからないことも、不安を大きくする背景ではないでしょうか。
ライフイベント表は、そんな絡まった未来を一つずつほどくための表です。
「将来のお金が何となく不安」という状態から、「まず2035年までの住宅資金を考えてみよう」という状態へ変われば、次に取る行動も見つけやすくなります。
ライフイベント表に書く4つの基本項目
初めてライフイベント表を作るときは、細かな項目を増やしすぎないほうが進めやすくなります。
まず記入するのは、年と年齢、家族構成と家族年齢、ライフイベント、想定費用の4項目です。
準備開始時期などは、最初の予定を書き終えてから必要に応じて加えれば十分でしょう。
ライフイベントが起こる年と年齢
最初に、その出来事が起こりそうな年を書きます。
2027年、2030年、2035年というように西暦で統一しておくと、現在から何年後なのかがわかりやすくなります。
時期がはっきりしていない予定なら、「2035年ごろ」のような書き方でも構いません。
さらに、そのときの本人の年齢も記入します。
たとえば、子どもが18歳で大学へ進学するときに本人が51歳になるとわかれば、教育資金を使う時期が自分の退職準備にも近づいていることに気づきます。
西暦だけを見ていると離れて感じていた予定も、年齢を入れると自分や家族の時間としてつながって見えてくるものです。
家族構成と家族年齢
本人だけではなく、配偶者や子どもなど家計に関わる家族の年齢も書きます。
ライフイベントは一人だけに起こるものではありません。
本人には大きな予定がなくても、子どもの進学、配偶者の働き方の変更、親への支援などによって、家計の状態が変化する可能性があります。
とはいえ、家族の将来を今すぐ決める必要はありません。
子どもが大学へ進学するかわからなければ、「大学進学を想定」として記入する方法があります。
むしろ大切なのは、決まっていることと、まだ家族で話していないことが見分けられるようになることです。
表を書いている途中で、「本人はどんな進路を考えているのだろう」と気づくこともあるでしょう。
それは表が足りないのではなく、これから話し合いたいことが見つかったということです。
ライフイベント表は、家族の未来を一方的に決める表ではありません。これからどんなことを一緒に考えたいのかを見つけるためにも使えます。
将来予定しているライフイベント
ライフイベント欄には、将来起こる予定だけでなく、自分や家族が実現したいことも記入します。
結婚、出産、進学だけがライフイベントではありません。
転職、独立、資格取得、住宅購入、引っ越し、リフォーム、車の買い替え、海外旅行など、暮らしやお金に影響する出来事も対象です。
ここで支出ばかりを並べると、表を見ること自体が少し苦しくなる場合があります。
教育費、住宅ローン、老後資金と必要なお金ばかりが続けば、「これからずっと我慢しなければならないのだろうか」と感じてしまうかもしれません。
しかし、家計を整える目的は節約そのものではありません。
「50歳になったら夫婦で長期旅行へ行きたい」「退職後には趣味を楽しみたい」といった希望も書いてよいのです。
何のためにお金を準備するのかが残っているほうが、家計の計画は自分たちの暮らしに近づいていくでしょう。
ライフイベントに必要な想定費用
最後に、それぞれのイベントに必要になりそうな金額を書きます。
ここで手が止まる人は少なくありません。
「大学にはいくら必要なのだろう」と検索し始めると、いくつもの平均額が見つかり、かえってどの数字を書けばよいのかわからなくなることがあります。
最初の表では、現在わかっている範囲の金額で十分です。
たとえば「住宅関連資金500万円を仮置き」「大学進学費用は未定」といった記入でも始められます。
費用欄に最初から求めるのは、一円単位の正確さではありません。
どの時期に大きなお金が必要になりそうなのかを見つけることが、最初の目的です。
ライフイベント表の書き方
必要項目がわかったら、実際に未来の出来事を時間の順に並べます。
いきなり20年後や30年後まで考えようとすると、「そんな先のことまでわからない」と戸惑うでしょう。
そこで、まず現在に近い予定から書き、その後で少しずつ遠い将来へ広げていきます。
現在の状況を最初に書く
最初の行には、現在の年と本人や家族の年齢を書きます。
たとえば2026年時点で本人30歳、パートナー29歳なら、その数字がライフイベント表の出発点です。
未来について考えるときほど、つい遠くを見てしまいます。
しかし、現在地が曖昧なままでは「あと何年準備できるのか」もわかりません。
地図を開いたときに現在地を確認するのと同じように、まず今の家族やパートナーとの状況を置いてみましょう。
確定している予定を先に並べる
次に、比較的時期がわかっている予定から書きます。
来年に結婚する予定がある、3年後に車を買い替えたい、子どもが6年後に中学校へ進学するといった、書きやすいものから始めます。
その後で住宅購入や転職など、まだ確定していない希望を追加します。
この段階では、実現できるかどうかまで判断する必要はありません。
先に「したいこと」を置き、その後で家計とのバランスを考えます。
最初から「できるかどうか」だけを考えると、お金がかかりそうな希望ほど書けなくなってしまうからです。
家計管理が「できない理由を探す作業」にならないよう、まずは望んでいる暮らしを外へ出してみます。
イベントを時系列に並べる
予定を洗い出したら、起こりそうな年の順番に並べます。
たとえば2027年に結婚し、2029年に第一子が誕生し、2035年に住宅を購入するとします。
別々に考えていたときには気にならなくても、時系列にすると出来事同士の距離が見えてきます。
住宅を購入するころには子どもが小学校へ入っているかもしれません。
さらに、その先には中学校、高校、大学への進学があります。
そこで、「住宅だけを見て予算を決めてもよいのだろうか」と気づくことがあります。
この気づきが重要です。
ライフイベント表は予定を書き残すだけではなく、今まで別々に考えていた出来事のつながりを見つけるためにも役立ちます。
費用と準備開始時期を考える
イベントを並べたら、想定費用と準備を始める時期を考えます。
仮に2035年までに住宅関連資金として500万円を準備したいとしましょう。
2030年から5年間で用意するなら、単純計算では年間100万円です。
ここまで数字にすると、「家を買えるかわからない」という不安の形が少し変わります。
年間100万円を準備できるのかを確認すればよくなります。
難しい場合には、購入予算を変える、購入時期を後ろへ動かす、準備を早く始めるといった選択肢も考えられるでしょう。
不安が突然消えるわけではありません。
それでも、「何が怖いのかわからない」という状態から、「どこを確認すればよいのかわかる」という状態へ変わるだけで、気持ちは少し整理されます。
ライフイベント表の記入例
ここでは、2026年時点で本人30歳、パートナー29歳という架空の家庭を例にします。
2027年に結婚し、2029年に第一子が誕生します。その後2035年に住宅を購入し、2047年に子どもが大学へ進学、2055年に住宅ローンを完済し、2060年に本人が退職する想定です。
費用は記入方法を示すための仮定であり、一般的な必要額を示しているわけではありません。
| 年 | 本人年齢 | 家族年齢 | ライフイベント | 想定費用 | 準備開始時期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2027年 | 31歳 | 配偶者30歳 | 結婚 | 200万円を仮置き | 2026年 |
| 2029年 | 33歳 | 配偶者32歳 子0歳 | 第一子誕生 | 50万円を仮置き | 2027年 |
| 2035年 | 39歳 | 配偶者38歳 子6歳 | 住宅購入 | 頭金や諸費用500万円を仮置き | 2030年 |
| 2047年 | 51歳 | 配偶者50歳 子18歳 | 大学進学 | 初年度150万円を仮置き | 2035年 |
| 2055年 | 59歳 | 配偶者58歳 子26歳 | 住宅ローン完済 | 追加の一時費用なし | 2035年 |
| 2060年 | 64歳 | 配偶者63歳 子31歳 | 退職 | 未定 | 2050年 |
住宅ローン完済について「追加の一時費用なし」としているのは、通常返済とは別に、そのイベントのためのまとまった支出を新たに想定していないという意味です。
もちろん、完済する年にも通常の住宅ローン返済が残っている場合があります。その返済額は、後述するキャッシュフロー表では住居関連費として扱います。
退職についても、退職そのものに一時費用が発生するとは限りません。その後の生活費や年金収入などを別に確認する必要があるため、ここでは「未定」としています。
この表で注目したいのは、個々の金額よりも出来事のつながりです。
2035年に住宅を購入するとき、本人は39歳で子どもは6歳になります。
その12年後には大学進学があり、本人は51歳です。
住宅ローンが続いていれば、住宅費と教育費を同時に負担する可能性があります。
さらに住宅ローン完済予定の5年後には退職が控えています。
住宅購入だけを見れば「払えそう」と思えても、その先には別の大きな資金需要があるかもしれません。
ライフイベント表を見ることで、「今払えるか」という視点から「払ったあとも暮らしを続けられるか」という視点へ変わります。
それが単なる予定表との大きな違いでしょう。
思いつかないときに確認したいライフイベント
将来の予定を書こうとしても、「特に何も思いつかない」と感じることがあります。
普段は一つひとつの出来事をライフイベントとして分類していないため、急に聞かれても頭に浮かばないだけかもしれません。
そんなときは、生活の分野ごとに考えると整理しやすくなります。
結婚と家族のライフイベント
結婚、出産、育児、子どもの独立、子どもの結婚、親との同居などがあります。
独身の場合でも、ライフイベント表を作る意味はあります。
結婚を予定していなければ、現在の生活を続ける前提で作ればよいでしょう。
ライフイベント表は「一般的な人生の順番」を書くための表ではありません。
自分がこれからどのように暮らしたいのかを考えるための表です。
周囲の人が結婚したり住宅を購入したりすると、「自分も何か決めなければ」と焦ることがあります。
しかし、誰かの人生を表に写す必要はありません。
自分の今の考えから始めれば十分です。
教育に関するライフイベント
子どもがいる場合は、幼稚園や保育園、小学校、中学校、高校、大学への進学などを考えます。
さらに塾、習い事、受験、留学、一人暮らしなども家計に影響する可能性があります。
教育費を考える際には、子どもの年齢によって数字の細かさを変えると進めやすくなります。
幼いころから大学の学部や住まいまで細かく決めても、そのとおりになるとは限りません。
幼児期なら公立中心の場合と私立を含む場合など、大きな幅を見る程度でもよいでしょう。
一方、子どもが高校生になれば、志望校の受験料や初年度納付金、自宅外通学の可能性などを具体的に確認できます。
遠い予定は大まかに考え、近づいた予定は具体的にする。
この考え方なら、まだ進路が見えていない時期でも教育資金の準備を始められます。
住宅と暮らしのライフイベント
住宅購入、引っ越し、住宅ローン完済、リフォーム、車の購入や買い替えなどがあります。
住宅を購入しない場合も、住まいについて考える機会はあります。
賃貸を続けるなら、退職後も家賃を支払うのか、将来住み替えたいのかという予定が出てくるでしょう。
住宅購入を考えている場合は、「なぜ家がほしいのか」も少し振り返ってみます。
子どもが成長して部屋が足りなくなったのか、通勤を楽にしたいのか、親との同居を考えているのか。
一方で、周囲が住宅を購入し始め、「自分たちも急がなければ」と感じている可能性もあります。
同じ「住宅購入」というイベントでも、理由が違えば必要な住まいや予算は変わるでしょう。
金額を決める前に、その家でどのように暮らしたいのかを考えておくことが大切です。
仕事とキャリアのライフイベント
転職、独立、起業、資格取得、留学、育児休業、時短勤務などがあります。
仕事に関するイベントは、支出だけではなく収入にも影響するところが特徴です。
たとえば40歳で独立したい場合、開業資金だけを考えればよいとは限りません。
独立直後に収入が安定しない可能性を考えるなら、その期間の生活費も準備する必要があります。
頭の中にある「いつか独立したい」という気持ちは、年を入れることで見え方が変わります。
40歳という仮の時期を置けば、あと何年で何を準備すればよいかを考えられるからです。
夢が突然実現するわけではありません。
それでも、夢と現在の生活の間に一本の道が見え始めます。
退職と老後のライフイベント
退職、再雇用終了、老齢年金の受給開始、住宅ローン完済、住み替え、介護などがあります。
老後について考えると、「結局いくらあれば安心なのだろう」と不安になる人もいるでしょう。
問いが大きすぎて、考えること自体を避けたくなることもあります。
そんなときは、老後を一つの出来事として扱わず、退職時期、年金受給、住居費、生活費などに分けて考えます。
給与収入が終わる時期と、老齢年金の受給開始時期が同じとは限りません。
退職後も働く予定なら、その期間も一つのライフイベントとして扱えます。
老齢年金の受給見込額は、加入記録や今後の働き方、受給開始年齢などによって異なります。日本年金機構の「ねんきんネット」では、条件を設定して将来受け取る老齢年金の見込額を試算できます。老後の計画を見直す際に、自分自身の見込額を確認しておくとよいでしょう。
「老後」という大きな言葉のままでは怖くても、退職、年金、住まい、生活費というように一つずつ分ければ、次に何を確認すればよいのかが見えてきます。
ライフイベント費用は概算から始める
想定費用は、ライフイベント表の中でも特に迷いやすい項目です。
インターネットで検索すると、平均額やモデルケースがたくさん見つかります。
しかし数字が増えるほど、「どれが自分に当てはまるのだろう」と迷ってしまうことがあります。
平均は参考になりますが、自分の予算そのものではありません。
住宅、教育、結婚、旅行などは、選ぶ内容によって支出が大きく変わります。
そこで、費用は一度で決めるのではなく、情報が増えるにつれて精度を高めていきます。
確定と仮置きと未定を分ける
費用欄では、現在わかっている金額と、仮に置いた数字を区別すると管理しやすくなります。
来月の引っ越しについて見積書があるなら、かなり具体的な数字を書けます。
一方、10年後の住宅購入なら、現在の希望をもとに「500万円を仮置き」とする程度でも構いません。
まだ調べていないイベントは「未定」と記入します。
未定という文字が残っていると、「表を完成できていない」と感じるかもしれません。
しかし、その未定こそが、次に確認する場所です。
何がわからないのかまで見えるようになれば、家計整理は一歩進んでいます。
教育費は公的資料を物差しにする
教育費については、文部科学省の「子供の学習費調査」が参考になります。
令和5年度調査の訂正版では、年間の学習費総額は公立中学校で54万2,450円、私立中学校で156万359円です。
ここでいう学習費総額には、学校教育費だけでなく、学校給食費や学校外活動費も含まれています。
また、幼稚園3歳から高校3年までの15年間では、すべて公立の場合は約614万円、すべて私立の場合は約1,969万円となっています。
ただし、これらは統計上の数字です。
「公立中学校なら必ず54万円必要」と決まっているわけではありません。
塾や習い事、地域などによって実際の支出は変わります。
数字を見て「こんなにかかるのか」と不安になるかもしれませんが、統計は将来届く請求書ではありません。
自分の家庭の予算を考えるための物差しとして使うとよいでしょう。
一つのイベントだけで予算を決めない
子どもの教育について考えると、「できる限り希望をかなえてあげたい」と思うことがあります。
その気持ちは自然です。
ただし、教育費のために手元の資金をほとんど使ってしまえば、その後の生活や老後資金に影響する可能性があります。
住宅についても同じです。
購入できる最大金額だけを見て予算を決めれば、その後の教育費や収入の変化に対応する余裕が小さくなるかもしれません。
ライフイベント表では、一つの出来事だけを見ず、その前後の予定も確認します。
「この金額を払えるか」だけではなく、「払ったあとも自分たちらしく暮らし続けられるか」を考えることが重要です。
ライフイベント表からキャッシュフロー表へつなげる
ライフイベント表を作ると、「予定はわかったけれど、この家計で本当に実現できるのだろうか」という次の疑問が出てきます。
そこで使うのがキャッシュフロー表です。
ライフイベント表では、将来の予定と必要資金を整理します。
キャッシュフロー表では、毎年の収入や生活費、イベント費用などを加え、家計の収支や金融資産がどのように変化するのかを確認します。
日本FP協会では、家計の収支表やライフイベント表などをもとにキャッシュフロー表を作り、20~30年程度の将来を確認する方法が案内されています。
お金が重なる時期を確認する
ライフイベント表では、2035年の住宅購入と2047年の大学進学は離れた出来事に見えます。
しかし2047年にも住宅ローンを返済していれば、実際の家計では住宅費と教育費を同時に負担します。
そこへ車の買い替えが重なる可能性もあるでしょう。
キャッシュフロー表にすると、この重なりが数字として見えてきます。
すると対策も具体的になります。
住宅予算を少し抑えるのか、教育資金の準備開始を早めるのか、車の買い替え時期を変えるのか。
「何となく節約しなければ」と考えるより、どこを調整すればよいのかが見えやすくなります。
キャッシュフロー表は条件付きの試算として見る
キャッシュフロー表を見ると、20年後や30年後の資産残高まで数字で表示されます。
数字が出ると、それが未来の確定値のように感じることがあります。
しかし実際には、現在の収入、生活費、教育費、退職時期などに一定の条件を置いて計算した結果です。
「95歳まで資産が残るから絶対に安心」と判断するものではありません。
反対に、一つの試算で資産が不足したからといって、その未来が確定しているわけでもないでしょう。
収入が減った場合や教育費が増えた場合など、気になる条件を変えて確認すると、自分の家計が何に影響されやすいのかが見えてきます。
未来を当てるためではなく、予定どおりに進まなかったときに何を調整できるのかを知るために使うことが大切です。
FP相談の整理にも役立つ
FPへ相談するときにも、ライフイベント表は役立ちます。
「将来のお金が何となく不安です」と伝えても、自分でも何を聞きたいのかわからない場合があります。
しかし表を書いたあとなら、「2035年の住宅購入と2047年ごろの教育費が重なることが心配です」と具体的に話せます。
書いてみた結果、老後よりも住宅予算のほうが気になっていたと気づく人もいるでしょう。
数字を整理することで、自分の気持ちまで整理されることがあります。
ライフイベント表を定期的に見直す
ライフイベント表は、生活が変化したときに更新します。
結婚や出産、転職、住宅購入、子どもの進路変更など、大きな変化があったときは見直すタイミングです。
年に一度程度、家計を確認する機会に合わせて見返す方法もあります。
ここで確認したいのは数字だけではありません。
以前書いた予定を、今でも自分や家族が望んでいるのかも見てみます。
数年前には住宅を購入したいと思っていても、現在は賃貸生活の身軽さを大切にしたいと感じているかもしれません。
早く退職したいと思っていた人が、仕事を続けたいと考えるようになることもあります。
その変化は計画の失敗ではありません。
暮らしや価値観が変わった結果です。
見直しでは、現在の希望に合わせて予定年や費用を修正します。
表を一から作り直す必要はなく、大学費用を更新したり、住宅購入予定を2年後ろへ動かしたりするだけでも構いません。
その小さな修正をキャッシュフロー表にも反映し、家計への影響を確認します。
ライフプランは、一度決めた未来を守り抜くためのものではありません。
今の自分たちに合う暮らしへ調整し続けるためのものです。
ライフイベント表のよくある質問
- ライフイベント表は何年先まで作る
-
日本FP協会では、ライフイベント表について今後10年、20年の予定や目標を書き込む方法を案内しています。
初めて作るなら、まず10~20年程度を目安にすると取り組みやすいでしょう。
ただし、すべての年を埋める必要はありません。
5年先までしか具体的な予定が思いつかなければ、そこまでを書き、住宅ローン完済や退職など遠いイベントだけ追加する方法もあります。
- 独身でもライフイベント表を作る意味はある
-
独身でも作る意味はあります。
転職、独立、資格取得、旅行、住宅、車、親への支援、退職など、お金に関わる出来事は結婚や子育て以外にもあります。
結婚するかどうか決まっていない場合も、現在の暮らしを基本にして作れば問題ありません。
周囲と同じ人生を計画するのではなく、自分がこれからどのように暮らしたいのかを考えることが中心です。
- 費用がわからないイベントはどうする
-
概算や未定として記入します。
教育費のように公的な統計があるものは参考にし、住宅のように家庭差が大きいものは希望条件が具体化した段階で更新します。
わからない金額を無理に確定するより、費用が発生する時期を先に把握しておくことが重要です。
- Excelと手書きはどちらがよい
-
どちらでも構いません。
まず予定を考えることを優先するなら、紙に書くだけでも十分です。
一方、年齢や費用を何度も修正しながら長く使いたい場合は、Excelのほうが扱いやすいでしょう。
日本FP協会ではライフイベント表のPDF版とExcel版の両方が公開されています。
形式に迷って始められないなら、今すぐ使える方法を選びます。
道具よりも、最初の一行を書くことのほうが大切です。
- キャッシュフロー表とは何が違う
-
ライフイベント表は、将来の予定とその費用を整理するための表です。
キャッシュフロー表は、毎年の収入や生活費も加え、将来の家計を試算する表になります。
つまり、ライフイベント表で「どのように暮らしたいのか」を整理し、キャッシュフロー表で「その暮らしを家計として続けられそうか」を確認します。
先に暮らしを考え、その後に数字を見る。
この順番にすると、家計管理が単なる節約ではなく、自分たちが望む生活を実現するための準備として見えやすくなるでしょう。
まとめ ライフイベント表は最初の4項目から始める
ライフイベント表に最初に書くのは、年と年齢、家族構成と家族年齢、ライフイベント、想定費用の4項目です。
まず現在に近い予定から時系列に並べ、費用は現時点でわかる範囲から記入します。
その後、キャッシュフロー表へつなげて住宅費や教育費などが重なる時期を確認すれば、次に準備すべきことも見えやすくなるでしょう。
今日すべきことは、人生全体の計画を完成させることではありません。
紙やExcelを開き、現在の年齢を書き、その先に思い浮かぶ予定を一つ置いてみます。
「何となく不安だった未来」が、書くことで少しずつ確認できる未来に変わっていきます。
そこからライフイベント表は始まります。
参考資料
ライフイベント表の書式やキャッシュフロー表の作り方は日本FP協会 便利ツールで家計をチェックで確認できます。
教育費の公的統計は文部科学省 令和5年度子供の学習費調査を参照できます。
老齢基礎年金の受給要件や支給開始時期については日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件 支給開始時期 年金額で確認できます。
将来受け取る老齢年金の見込額を試算する方法は日本年金機構 「ねんきんネット」による年金見込額試算で確認できます。