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団地総会と棟総会の違いとは? 団地型マンションで「どちらで決めるか」をマンション管理士が整理

団地型マンションの理事長や役員になると、「A棟だけの工事なのだから、A棟の棟総会で決めればよいのではないか」と考えた直後に、管理会社から「これは団地総会で扱います」と説明され、戸惑うことがあります。自分の感覚では筋が通っているように思えるのに、管理規約を開けば団地共用部分、棟の共用部分、団地修繕積立金、各棟修繕積立金といった言葉が次々に現れ、「いったい何を基準に判断すればよいのか」と不安になることもあるでしょう。

実のところ、団地総会と棟総会の違いは、「全棟に関係する問題か、一棟だけに関係する問題か」という物理的な範囲だけでは決まりません。議案の法的な性質を確認したうえで、対象となる土地や建物や設備が誰の共有なのか、自分たちの管理規約では管理権限をどこに置いているのか、さらに誰が費用を負担するのかまで順番に整理する必要があります。

この記事では、現行の区分所有法と国土交通省「マンション標準管理規約 団地型」を基礎として、代表的な議案の答えだけではなく、自分の案件を切り分けるための判断手順まで整理します。すべての条文を暗記するのではなく、「この順番で確認すればよい」と分かる状態まで持ち帰ることが、この記事の目的です。

TABLE OF CONTENTS
目次

団地総会と棟総会の違いを一覧表で整理

団地総会と棟総会は、いずれも団地型マンションにおける重要な意思決定の場ですが、構成する主体と扱う権限は異なります。団地総会を構成する主体は、厳密には団地建物所有者である組合員であり、棟総会を構成するのは当該棟の区分所有者です。

区分所有法第65条は、一定の団地関係において、土地または附属施設を共有する建物の所有者を団地建物所有者として管理のための団体を構成することを定めています。専有部分のある建物では区分所有者が団地建物所有者となるため、すべての住棟が区分所有建物である一般的な団地型マンションでは、各棟の区分所有者が団地全体の管理にも関わることになります。

比較項目 団地総会 棟総会
基本的な構成主体 団地建物所有者である組合員 当該棟の区分所有者
主な法的背景 区分所有法第65条以降の団地関係 各棟について成立する区分所有法第3条の団体
主な役割 団地管理組合の運営や財政や管理対象の維持管理 法律上その棟の区分所有者が決めるべき事項
標準規約上の通常総会 理事長が毎年招集 同様の定期開催制度は置かれていない
標準規約上の棟総会招集 該当しない 一定の同意を得た当該棟の区分所有者
標準規約上の議長 原則として理事長 当該棟の区分所有者の中から選任
通常の計画修繕 特定棟だけの工事でも団地総会事項となる場合がある 一棟だけの工事という理由だけでは棟総会にならない
一部滅失後の復旧 通常の計画修繕とは別に判断する 標準規約では棟総会事項
建替え 団地側の承認等が別途関係する場合がある 当該棟自身の建替え決議を行う
建物更新 団地側の手続が関係する場合がある 区分所有法上の建物更新決議を行う
一定の義務違反者への法的措置 棟総会事項を団地総会事項へ置き換えることはできない 一定の訴えの提起などを決議する
費用負担との関係 決議主体と実際の費用負担者が一致しない場合がある 棟の費用だから棟総会とは限らない
最終判断で重要なもの 自団地の管理規約と共有関係と法令と会計 同左

この表で最初に押さえておきたいのは、「誰が利用するのか」「どこに設備があるのか」「誰が費用を負担するのか」という事情だけでは、必要な総会を確定できないことです。たとえばA棟だけが使用するエレベーターをA棟の各棟修繕積立金で更新する場合でも、それが通常の計画修繕であり、自団地が標準管理規約と同様の管理構造を採用しているなら、団地総会で決議する方向になります。

ただし、ここで示しているのは国土交通省「マンション標準管理規約 団地型」を基礎とした標準規約型のモデルです。国土交通省自身が標準管理規約を管理規約の作成や改正に用いる「ひな型」と位置付けているため、自分のマンションの最終的な結論は、自団地の現行管理規約を確認して確定しなければなりません。

この記事では、この二つの層を混ぜずに説明します。まず標準規約型でどのように整理されるのかを理解し、その後で自分のマンションの規約と権利関係へ当てはめるという順番です。

なぜ団地型マンションには2種類の総会があるのか

団地全体と各棟の権利関係が重なっている

団地型マンションが単棟型より複雑に感じられる理由は、一つの敷地の中に異なる権利関係が重なって存在していることにあります。

たとえばA棟、B棟、C棟があり、土地や集会所を三棟の所有者が共有しているとします。このような一定の要件を満たす団地では、区分所有法第65条に基づく団地建物所有者の団体が構成され、団地全体として土地や附属施設などを管理する関係が生まれます。

一方で、A棟そのものも独立した一棟の区分所有建物ですから、A棟にはA棟区分所有者による団体があり、B棟とC棟についてもそれぞれ同じ関係が成立します。

つまり、A棟の区分所有者は、団地全体との関係では団地建物所有者として管理に関わり、自分の棟との関係ではA棟の区分所有者として意思決定に関わるという二つの立場を持っています。

初めてこの構造を知ると、「一つのマンション群なのに、なぜそこまで分ける必要があるのか」と感じるかもしれません。しかし、二種類の総会が存在するのは会議を複雑にするためではなく、異なる財産関係について適切な人が意思決定できるようにするためです。

一元管理の効率性と各棟の権利を両立させる

もし団地内のすべての維持管理を各棟が完全に独立して行えば、管理実務はかなり複雑になります。

A棟が外壁工事を独自に発注し、B棟が別の会社へ設備保守を依頼し、団地内道路や集会所だけは団地側が別途管理するとなれば、契約や会計だけでなく、工事時期や仕様、仮設計画の調整まで増えていくでしょう。複数棟をまとめて管理した方が効率的な業務も少なくありません。

そこで標準管理規約 団地型では、各棟で日常的な管理を個別に行うのではなく、団地管理組合による一元的な管理を基本とする仕組みが採られています。

とはいえ、管理を一元化したからといって、A棟そのものを建て替えるかどうかや、A棟の区分所有者に対して競売を求めるかという重大な事項まで、B棟やC棟を含めた団地全体の多数だけで決めてよいわけではありません。

各棟の区分所有者の財産権や居住に深く関わる問題については、その棟自身が意思決定する必要があります。

このため、通常の管理を団地側へ集約しながら、各棟の権利の根幹に関係する事項は棟総会へ残すという二層の構造になっています。

団地総会と棟総会を「大きな総会と小さな総会」と捉えると判断を誤りやすいでしょう。両者には上下関係があるのではなく、それぞれ異なる法的役割があると理解することが重要です。

団地総会か棟総会かを判断する手順

この記事で最も持ち帰ってほしいのは、「A棟外壁なら団地総会」といった個別の答えではありません。

新しい議案が出てきても応用できるよう、判断を一定の順番に分けて考えます。

議案を具体化する → 対象となる土地や建物や設備を特定する → 誰の共有物か確認する → 区分所有法上各棟で決めるべき事項か確認する → 自団地の棟総会議決事項と管理権限を確認する → 費用負担者と支出会計を確認する → 必要な総会と決議方法を確定する

議案を具体化する 対象となる土地や建物や設備を特定する 誰の共有物か確認する 区分所有法上各棟で決めるべき事項か確認する 自団地の棟総会議決事項と管理権限を確認する 費用負担者と支出会計を確認する 必要な総会と決議方法を確定する

この順番で特に重要なのは、費用負担を最初の判断基準にしないことです。「A棟のお金を使うからA棟棟総会だろう」と先に結論を置くのではなく、議案の法的な性質と自団地の規約上の権限を先に確認し、その後で費用と会計を照合します。

議案の内容を具体化する

理事会へ「A棟修繕」という議案が上がってきても、その名称だけでは判断できません。

A棟外壁の計画修繕なのか、エレベーター設備の更新なのか、地震によって一部滅失した共用部分の復旧なのかによって、確認すべき規定が変わるからです。

そこで最初に、「何を」「どの部分について」「どのような理由で実施するのか」を具体化します。

この作業を飛ばしてしまうと、工事場所だけを見て「一棟の話だから棟総会」と結論付けやすくなります。ふと立ち止まって議案の性質を書き出すだけでも、判断の入口はかなり整理されるでしょう。

区分所有法上各棟で決めるべき事項を確認する

次に、区分所有法上その棟の区分所有者が決定すべき事項なのかを確認し、自団地の棟総会議決事項と照合します。

ここは表現に注意が必要です。区分所有法に「棟総会事項一覧」という一つの条文があるわけではなく、区分所有法上各棟で決める必要がある事項を踏まえ、標準管理規約第72条が棟総会の議決事項として具体的に整理しています。

現行の第72条では、一定の義務違反者に対する訴え、一部滅失後の復旧、建替え、建物更新、取壊し、マンション再生等に向けた一定の調査などが棟総会事項とされています。

ここに該当する事項について、「団地総会の方が人数も多いので、その方が安全だろう」と決議主体を置き換えることはできません。

一方で、他棟や団地全体へ影響する事項について、理事会や団地総会へ報告し、周囲の理解を得ることとは別の問題です。棟が決議することと、団地へ説明することは両立します。

管理規約上の管理権限を確認する

区分所有法上各棟で決めるべき事項ではないと分かったら、次に自分のマンションの管理規約を確認します。

標準規約型では、各棟修繕積立金を各棟共用部分の計画修繕などへ使用しながら、その通常の特別の管理の実施と積立金の取崩しについて、一定の例外を除いて団地総会で決議する構造が採られています。

ここで初めて、「A棟だけの工事なのに団地総会」という、感覚だけでは理解しにくかった結論の理由が見えてくるでしょう。

最後に費用負担と会計を確認する

決議主体の方向が見えた後で、どの会計から支出し、誰が実質的に費用を負担するのかを確認します。

費用負担は非常に重要ですが、それ単独で総会の種類を決定する基準ではありません。

この順番を覚えておけば、「A棟外壁は団地総会」といった答えを丸暗記しなくても、次に別の設備や別の棟で問題が起きたときに同じ判断方法を使えます。

団地総会で決める主な事項

団地運営と通常の管理を広く扱う

標準管理規約第50条では、団地総会の議決事項として、規約や使用細則等の制定や変更、役員の選任や解任、収支決算、事業報告、収支予算、事業計画、長期修繕計画の作成や変更などが定められています。

さらに、管理費等や使用料の額と賦課徴収方法、団地修繕積立金と各棟修繕積立金の保管や運用、一定の特別な管理の実施についても団地総会で決定する構造です。

このため、団地総会は「全棟で同じように使うものだけを決める総会」ではありません。

標準規約型では、特定棟の共用部分について行う通常の計画修繕も、団地管理組合の管理業務として団地総会で扱う場合があります。

団地共用部分と附属施設の管理

団地建物所有者全員が共有する土地、団地共用部分、附属施設についての管理は、団地総会で扱う典型的な領域です。

たとえば団地全体で共有する集会所、団地内道路、全体共用設備などが管理規約上の団地管理対象であれば、その計画修繕や改良について団地総会で決定する方向になります。

もっとも、「全員が使う集会所だから全員の共有だろう」と利用実態だけで判断することは避けた方がよいでしょう。

長年の使用実態と登記上の所有関係が一致しているとは限らないため、管理規約の別表や登記事項まで確認して、初めて自分のマンションでの結論を確定できます。

各棟の通常修繕も団地総会になる場合がある

標準管理規約第29条では、各棟の共用部分について行う計画的な修繕などに各棟修繕積立金を充てる構造が示されています。

一方、第50条では、第29条第1項の特別の管理について、一定の棟総会事項を除いてその実施や積立金の取崩しを団地総会で決議する仕組みです。

したがって、A棟外壁の計画修繕だからといって、直ちにA棟棟総会になるわけではありません。

この点を理解するときは、「A棟のためのお金を使う」という会計上の問題と、「団地管理組合として工事実施を決定する」という管理上の問題を分けて考えると整理しやすいでしょう。

各棟修繕積立金の額も団地総会で決める

各棟修繕積立金は棟ごとに区分経理されるため、「その棟の積立金額なら棟総会で決めるのでは」と感じる人もいるでしょう。

しかし、標準管理規約では管理費、団地修繕積立金、各棟修繕積立金を「管理費等」として整理し、その額と賦課徴収方法を団地総会の議決事項としています。

そのため、標準規約と同じ構造であれば、特定棟の各棟修繕積立金を増額する場合でも団地総会での決議を確認することになります。

ここでも、「誰のための資金なのか」と「誰がその金額を決議するのか」は分けて考える必要があります。

棟総会で決める主な事項

棟総会は各棟固有の法定事項を扱う

棟総会を「A棟のことなら何でもA棟だけで決める総会」と理解すると、通常修繕で判断を誤りやすくなります。

標準管理規約第72条では、区分所有法上各棟で決める必要がある事項を踏まえ、棟総会の議決事項を具体的に列挙しています。そこには一定の義務違反者への法的措置、一部滅失後の復旧、建替え、建物更新、取壊し、マンション再生等に向けた一定の調査などが含まれます。

つまり棟総会かどうかを左右する中心は、「A棟にだけ関係しているか」ではなく「何を決めようとしているのか」です。

一定の義務違反者への法的措置

たとえばA棟の区分所有者が共同生活上の重大な問題行為を続け、通常の注意や警告だけでは解決できなくなったとします。

標準管理規約第72条では、区分所有法第57条第2項、第58条第1項、第59条第1項、第60条第1項に係る訴えの提起などを棟総会事項としています。使用禁止や競売など、区分所有者の権利へ重大な影響を与え得るためです。

団地全体にも迷惑が及んでいるからといって、団地総会へ決議主体を置き換えることはできません。

ただし、他棟にも影響しているなら団地側へ状況を説明する意味はあり、決定権を尊重することと、団地全体への情報共有を行うことは矛盾しません。

一部滅失後の復旧

地震や火災によってB棟の一部が滅失し、その共用部分を復旧する場合には、通常の計画修繕とは異なる判断が必要になります。

標準管理規約第72条第三号は、建物の一部が滅失した場合における当該棟共用部分の復旧を、棟総会の議決事項として定めています。

外から見れば、どちらも「壊れた建物を直す工事」に見えるかもしれません。

それでも、経年劣化に対応する通常の計画修繕と、法律上の一部滅失後の復旧では法的性質が異なるため、「修繕工事」という名称だけで総会を決めてはいけないことが分かります。

建替えと建物更新と取壊し

標準管理規約第72条第四号では、建替え、区分所有法上の建物更新、取壊しを棟総会事項としています。

ここで注意したいのが「建物更新」という言葉です。

区分所有法第64条の5に定める建物更新は、エレベーターや給水ポンプを新しい機器に取り替える通常の設備更新とは異なります。現行法では、建物の構造上主要な部分の効用を維持または回復するために共用部分の形状を変更し、それに伴ってすべての専有部分の形状、面積または位置関係を変更する制度として建物更新が定義されています。

そのため、「A棟エレベーター設備更新工事」と「区分所有法上の建物更新」は、総会資料でも明確に書き分ける必要があります。

同じ「更新」という言葉が使われているため、制度を知らない区分所有者が混同する可能性がありますが、両者は全く別のものです。

マンション再生等に向けた調査

建替えや建物更新などを検討するとしても、いきなり最終的な決議へ進むことは通常できません。

建物の劣化状況や耐震性、再生方法、必要費用などを調査し、「現在の建物を修繕して維持するのか、それとも別の再生方法を検討するのか」という入口から合意形成を進めます。

標準管理規約第72条第六号では、マンション再生等の合意形成に必要な調査の実施と、その費用へ充てる場合の各棟修繕積立金の取崩しを棟総会事項としています。

これは、通常の計画修繕とは違い、その棟自身の将来を検討するための意思決定だからです。

団地総会と棟総会を10の具体例で確認

ここからは、先ほどの判断手順を実際の議案へ当てはめます。

以下の表は、現行の標準管理規約 団地型と同様の管理構造を採用している団地を想定したモデルであり、自分のマンションでは管理規約と共有関係を照合して最終判断してください。

事例 議案 対象となる部分 主な費用区分 標準規約型での確認方向
1 A棟外壁塗装 A棟共用部分 A棟各棟修繕積立金 通常の計画修繕なら団地総会
2 A棟屋上防水 A棟共用部分 A棟各棟修繕積立金 通常の計画修繕なら団地総会
3 A棟エレベーター設備更新 A棟共用部分 A棟各棟修繕積立金 通常の計画修繕なら団地総会
4 全棟共用集会所の耐震改修 団地共用部分または附属施設 団地修繕積立金 団地総会が基本
5 団地内共用道路の舗装 土地や附属施設 団地側の会計 団地総会が基本
6 B棟一部滅失後の復旧 B棟共用部分 B棟関係 B棟棟総会事項を確認
7 C棟建替え検討の基礎調査 C棟 C棟各棟修繕積立金 標準規約ではC棟棟総会
8 A棟の建替え A棟建物 再生計画による A棟棟総会と団地側手続の双方を確認
9 A棟区分所有者への競売請求 A棟の区分所有関係 案件による A棟棟総会
10 各棟修繕積立金の額の改定 管理費等 各棟の区分所有者 標準規約型では団地総会

A棟外壁修繕の判断

A棟の外壁を一定年数の経過に伴って計画的に補修する場合、最初に第72条で整理されている一部滅失後の復旧などの棟総会事項ではないことを確認します。

そのうえで各棟共用部分の計画修繕として管理規約を確認し、自団地が標準規約型と同様に団地管理組合へ管理権限を集約しているなら、団地総会へ上程する方向が見えてきます。

このとき、A棟の各棟修繕積立金を使うことは重要な費用条件ですが、最初から総会の種類を決める材料にはしません。

つまり、「A棟だから団地総会」と覚えるのではなく、「棟総会事項か確認した後で、規約上の管理権限を見る」という当てはめを覚える方が実務では役立ちます。

全棟共用集会所の判断

全棟の居住者が利用する集会所を改修する場合には、まずその施設の共有関係を確認します。

管理規約や登記事項から、団地建物所有者全員の共有する附属施設または団地共用部分であると確認でき、団地修繕積立金の対象でもあるなら、団地側の管理事項として団地総会で扱う方向が基本となるでしょう。

ただし、「全員が利用している」という事実だけから所有関係まで推測しないことが大切です。

利用状況と法的な共有関係が一致しているとは限らないため、規約の別表や登記事項を確認してから結論を出します。

A棟エレベーター設備更新の判断

A棟だけにエレベーターが設置され、制御盤や巻上機などの設備を更新する場合は、感覚と制度上の結論がずれやすい典型例です。

利用するのがA棟の居住者だけであり、設備もA棟に設置され、工事費もA棟各棟修繕積立金から支出するのであれば、「ここまでA棟だけに限定されているのだから棟総会だろう」と感じるでしょう。

それでも判断手順は変わりません。

区分所有法上の建物更新ではなく通常の設備更新であり、棟総会の議決事項に当たらないことを確認したうえで、自団地の規約が各棟共用部分の通常修繕を団地管理組合へ一元化していれば、標準規約型では団地総会で扱う方向になります。

このケースが示しているのは、利用者、設備の所在、費用負担者がすべて一つの棟にそろっていても、それだけで棟総会とは決まらないということです。

B棟一部滅失後の復旧の判断

地震などによってB棟の一部が滅失し、その共用部分を復旧する場合には、A棟外壁の計画修繕とは判断経路が異なります。

標準管理規約第72条第三号が一部滅失後の復旧を棟総会事項としているため、ここでB棟側の意思決定が必要になることが分かります。

どちらも建物を「直す」という点では似ていますが、通常の維持修繕と法律上の一部滅失後の復旧は同じではありません。

この違いがあるからこそ、工事名称ではなく議案の法的性質を先に確認する必要があります。

A棟建替えの判断

A棟そのものを建て替える場合には、A棟区分所有者による棟側の意思決定が中心になります。

ただし、A棟が建っている土地をB棟やC棟の団地建物所有者と共有している場合には、A棟だけの意思決定ですべてが完結するとは限りません。

区分所有法には団地内建物の建替え承認に関する制度が設けられているため、A棟自身の建替え決議と、団地側との関係を調整する承認手続などが別々に必要になる可能性があります。

したがって、建替えのような重大案件では「棟総会か団地総会か」という二択で考えず、それぞれ何を決議する必要があるのかを分解することが重要です。

費用負担と修繕積立金から総会を決めない理由

費用負担者と決議主体は別の軸になる

団地型マンションで住民間の不満につながりやすいのは、法律上の用語そのものより、「誰のお金が使われるのか」という問題かもしれません。

A棟外壁の工事を団地総会に上程すれば、B棟やC棟の団地建物所有者から「なぜ自分たちまでA棟の工事について採決するのか」「こちらの積立金までA棟へ回されるのではないか」と疑問が出ることがあります。

その不安が生まれる大きな理由は、費用を負担する人と工事実施を決議する主体が同じであると考えやすいからでしょう。

標準規約型では、管理費、団地修繕積立金、各棟修繕積立金を区分して経理し、各棟修繕積立金はさらに棟ごとに区分して管理する構造です。

そのため、A棟の通常修繕を団地総会で決めることが、直ちにB棟やC棟の各棟修繕積立金をA棟の工事へ使うことを意味するわけではありません。

A棟のために積み立てられた資金から費用を出しながら、団地管理組合の管理事業として工事を実施するかどうかについては団地総会で決めるという、二つの仕組みが並行しているのです。

団地修繕積立金と各棟修繕積立金を分けて考える

団地修繕積立金は、団地全体で共有する土地、附属施設、団地共用部分などの計画修繕等に充てる資金です。

これに対して各棟修繕積立金は、それぞれの棟の共用部分について行う計画修繕等へ充てる資金として整理されます。

どちらの積立金を使うのかは、工事対象と共有関係に深く関係します。

そのため、「団地総会で決めるなら団地修繕積立金を使う」「各棟修繕積立金を使うなら棟総会」という一対一の対応関係ではありません。

ここを混同しなければ、団地総会と修繕積立金の関係がかなり理解しやすくなります。

総会議案では費用の行き先を見えるようにする

制度上正しい総会を選んでいても、議案の説明が不足していれば区分所有者には不公平に見えることがあります。

A棟外壁修繕であれば、対象がA棟共用部分であること、支出財源がA棟各棟修繕積立金であること、B棟やC棟の各棟修繕積立金を工事費へ充てるものではないことなどを議案書に分けて記載すると、負担関係が理解しやすくなるでしょう。

「規約上団地総会だから」という説明だけでは、住民が抱いている疑問に十分答えられていません。

区分所有者が気にしているのは、自分の財産や将来負担へどう影響するのかだからです。

法律や規約上の権限と、実際のお金の流れを分けて説明することが、団地型マンションの合意形成では重要になります。

判断に迷ったときに確認する3つの資料

自分のマンションの現行管理規約

最初に確認するべき資料は、自分たちのマンションで現在効力を持っている管理規約です。

国土交通省の標準管理規約は重要な参考資料ですが、すべてのマンションへそのまま適用される規約ではなく、管理規約を作成または改正するときのひな型として示されています。

そこで、自団地の団地総会議決事項、棟総会議決事項、管理組合の業務、各棟共用部分の管理、管理費等、団地修繕積立金、各棟修繕積立金、区分経理に関する規定を確認します。

築年数の長い団地では、分譲当初の規約から何度も改正を重ねており、現行の標準管理規約と条番号や構成が違っていることもあります。

「標準規約の第50条を探す」のではなく、「自分たちの規約で団地総会の議決事項を定めている条文はどこか」という視点で探す方が実務的でしょう。

管理規約の別表と共有関係を示す資料

二つ目は、対象となる土地や施設や設備が誰の財産なのかを確認できる資料です。

規約本文だけを読んでも、集会所、受水槽、電気室、給水設備、通路などが団地全体の共有なのか、特定棟の共用部分なのか判別できないことがあります。

そこで、管理規約の対象物件や共用部分を記載した別表、不動産登記事項証明書、分譲時資料などを確認します。

設備については、竣工図や給排水系統図まで確認しなければ、特定棟専用の設備なのか、複数棟へつながっている共通設備なのか分からない場合もあるでしょう。

「昔からA棟設備と呼んでいる」といった呼称より、規約上や登記上どのように整理されているかを優先する必要があります。

現行の区分所有法と最新の標準管理規約

三つ目は、現行の区分所有法と国土交通省が現在公表している最新のマンション標準管理規約 団地型です。

改正区分所有法は令和8年4月1日に施行されており、区分所有法上の建物更新なども現在の制度として確認する必要があります。e-Gov法令検索でも、令和8年4月1日施行の法令内容が現在施行として掲載されています。

国土交通省の標準管理規約については、令和7年10月17日改正版が公式ページに掲載され、団地型については令和7年12月10日に一部の規定が修正されています。

修正されたのは、第45条第2項と第69条第2項において第33条の3第1項を参照していた部分を第2項へ改める内容であり、本記事の中心となる第29条、第50条、第68条、第72条の基本的な説明を変更するものではありません。

それでも「現行の標準管理規約を基礎にする」と説明する以上、過去に保存したPDFではなく、現在の国土交通省公式ページから最新版を確認する方が確実です。

自分のマンションの現行管理規約 管理規約の別表と共有関係を示す資料 現行の区分所有法と最新の標準管理規約

団地総会と棟総会のよくある質問

団地総会と棟総会は同じ日に開催できますか?

区分所有法や標準管理規約には、団地総会と棟総会を同じ日に開催すること自体を禁止する規定は見当たりません。

そのため、それぞれに必要な招集や議決の手続を満たすことを前提として、たとえば午後1時からA棟棟総会を行い、その後に団地総会を開催する方法は考えられます。

ただし、同日開催が考えられることと、一つの総会としてまとめて処理できることは別です。

団地総会と棟総会では構成員が異なり、標準管理規約上の招集者や議長にも違いがあります。そのため、招集通知、議案、出席資格、議決権、議長選任、議事録などについて、それぞれ独立した総会として手続を整える必要があります。

棟総会は毎年開催する必要がありますか?

標準管理規約では、団地総会について通常総会を毎年開催する仕組みが設けられています。

一方、棟総会について同じような毎年の定期開催制度は設けられておらず、各棟固有の議決事項が生じたときに開催する構造です。

したがって、標準規約型であれば、棟総会を各棟の日常管理のために毎年開く必要があるとは通常考えません。

もっとも、自分のマンションの管理規約に独自の定期開催規定が置かれていれば、その規約に従う必要があります。

棟総会は誰が招集しますか?

標準管理規約第68条では、棟総会は当該棟の区分所有者全員で組織され、一定数の区分所有者数と議決権の同意を得た当該棟の区分所有者が招集する構造になっています。

そのため、団地管理組合の理事長だからという理由だけで、職務上当然に棟総会を招集する仕組みではありません。

実際に棟総会が必要になってから、「誰が最初に同意を集めるのか」と困る管理組合もあるでしょう。

建替えなど将来的に棟総会が必要になる可能性がある団地では、平時のうちに自団地の規約を確認し、招集までの流れを整理しておくことが望まれます。

A棟だけの修繕工事はどちらの総会で決めますか?

A棟だけの工事という事実だけでは、団地総会か棟総会かを判断できません。

通常の計画修繕であり、自団地が標準管理規約と同様に各棟共用部分の管理を団地管理組合へ集約しているなら、団地総会事項として整理する方向になります。

一方、一部滅失後の復旧など、各棟で決めるべき事項として棟総会議決事項に定められている案件であれば結論は変わります。

したがって、覚えておくべきなのは「A棟修繕なら団地総会」という答えではなく、「A棟で何をしようとしているのかを先に確認する」という判断方法です。

エレベーター設備更新と建物更新は同じですか?

同じではありません。

一般にいうエレベーター設備更新は、既存のエレベーター機器を交換したり改修したりする設備工事です。

これに対し、区分所有法第64条の5の建物更新は、構造上主要な部分の効用を維持または回復するために共用部分を変更し、それに伴ってすべての専有部分の形状、面積または位置関係を変更する法律上の制度です。

同じ「更新」という言葉が含まれていても意味は大きく異なるため、総会議案でも「エレベーター設備更新」と「区分所有法上の建物更新」を混同しない表現にした方がよいでしょう。

各棟修繕積立金の額は誰が決めますか?

標準規約型では、各棟修繕積立金を含む管理費等の額と賦課徴収方法について、団地総会で決議する構造になっています。

各棟修繕積立金自体は棟ごとに区分して管理しますが、「どの棟のための資金か」という帰属と、「その額をどの機関が決めるか」という意思決定は別の問題です。

したがって、自団地が標準管理規約と同様の規定を持っている場合には、特定棟だけの各棟修繕積立金を改定するときにも、団地総会議決事項を確認することになります。

棟総会事項を団地総会で決めることはできますか?

標準管理規約第72条で棟総会の議決事項として整理されているものについて、単に「団地総会の方が人数が多いから」「団地全体にも影響するから」という理由で団地総会事項へ置き換えることはできません。

一方で、他棟や団地全体への影響が考えられる場合には、理事会や団地側へ事前に説明し、理解を得ることまで禁止されるわけではありません。

この違いを言い換えるなら、「決議する権限を移すことはできないが、説明や調整を行うことはできる」ということです。

棟の意思決定を尊重しながら団地全体の合意形成にも配慮することが、実務では重要になるでしょう。

管理会社とマンション管理士のどちらに相談すべきですか?

過去の総会議事録、工事履歴、現在の会計処理、過去の規約改正など、管理実務上の事実を確認する場合には、まず管理会社から資料を集める方法が現実的です。

ただし、「これまでも団地総会でやっています」という説明だけで結論を出さず、どの規約条項や過去の決議を根拠としているのかまで確認するとよいでしょう。

一方、自団地の管理規約と区分所有法の関係、団地総会と棟総会の権限分担、複数棟間の費用負担などを第三者的な立場から整理したい場合には、マンション管理士への相談が考えられます。

管理会社とマンション管理士のどちらか一方だけを選ぶ必要はありません。

管理会社が保管している資料や運用実態を確認し、それをマンション管理士が法令や規約と照合するという使い分けもできます。

団地型マンションでマンション管理士が支援できること

標準規約と自団地の規約を切り分ける

団地型マンションでは、国土交通省の標準管理規約を丁寧に読んでも、自分の団地における結論がそのまま決まるとは限りません。

何十年も前に制定された管理規約へ複数回の改正が加えられ、現在の標準管理規約とは条文構成が違っていたり、歴代理事会が続けてきた運用と現行規約が完全には一致していなかったりする場合があるためです。

新しく理事長になった人が「昔からこの方法でやっています」と説明されても、根拠が示されなければ「本当にこのままで大丈夫なのだろうか」という気持ちは残るでしょう。

マンション管理士へ相談する場合には、自団地の現行規約、規約改正履歴、過去の総会議事録、対象物件の別表、共有関係、会計資料などを照合し、標準規約モデルと実際の団地の違いを整理できます。

判断経路を管理組合の中に残す

専門家へ相談する意味は、「今回は団地総会です」と一回限りの答えを得ることだけではありません。

何を対象とした議案なのか、区分所有法上各棟で決めるべき事項なのか、自団地ではどの総会の議決事項として定めているのか、規約上の管理権限がどこにあるのか、どの会計から支出するのかという判断経路を残しておけば、翌年度の役員も同じ考え方で別の案件を検討できます。

引継書に「A棟外壁は団地総会」とだけ残すより、「議案の法的性質 → 棟総会議決事項 → 共有関係 → 管理規約上の権限 → 会計」という確認手順を残した方が、長期的な管理組合運営には役立つでしょう。

議案の法的性質 棟総会議決事項 共有関係 管理規約上の権限 会計

総会議案の説明不足を減らす

団地型マンションでは、法的に適切な総会を選んだだけでは、区分所有者の納得まで得られるとは限りません。

特定棟の修繕を団地総会へ上程する場合には、他棟の団地建物所有者へ「なぜ自分たちも議決に参加するのか」「自分たちの積立金まで使われるのか」といった疑問に答える必要があります。

そのため議案書では、対象棟、対象部分、管理規約上の管理主体、支出会計、費用負担の範囲を分けて説明することが重要です。

理事会側では当然と思っていることでも、初めて議案を読む区分所有者には伝わっていないことがあります。

どこで疑問が生まれるのかを先回りして説明することが、不要な対立や不信感を減らすことにつながります。

法的紛争になった場合は相談先を切り替える

マンション管理士は、管理組合運営や管理規約、総会運営などについて専門的な支援を行うことができますが、具体的な訴訟代理など法律事務が必要な場面は弁護士の領域になります。

総会決議の有効性が具体的に争われている場合や、義務違反者に対する訴訟手続きを実際に進める場合などには、状況に応じて弁護士へ相談する必要があるでしょう。

理事長や役員が、すべての法律問題を一人で解決する必要はありません。

むしろ「ここまでは規約と資料から整理できたが、この先は専門家による法律判断が必要」と線を引けることが、無理のない管理組合運営につながります。

団地総会と棟総会の違いを判断するためのまとめ

団地総会と棟総会の違いは、「団地全体の問題なら団地総会」「一棟だけの問題なら棟総会」という単純な線引きでは判断できません。

団地総会は団地建物所有者である組合員によって組織され、団地管理組合の運営や通常の管理を広く扱います。一方、棟総会は当該棟の区分所有者によって組織され、一部滅失後の復旧、建替え、区分所有法上の建物更新など、その棟側で決めるべき事項を扱います。

標準規約型では、A棟だけの外壁やエレベーター設備の通常修繕であっても、団地総会事項となる場合があります。しかし、その標準モデルの結論を自分のマンションへそのまま当てはめるのではなく、最終的には自団地の現行管理規約と共有関係を確認しなければなりません。

迷ったときは、「議案の具体化 → 対象部分 → 共有関係 → 区分所有法上各棟で決めるべき事項 → 自団地の棟総会議決事項と管理権限 → 費用と会計 → 必要な総会」という順番で確認してください。

最初は複雑に見える案件でも、一つずつ切り分ければ「何を確認すればよいのか分からない」という状態から、「この条項とこの共有関係を調べれば結論へ近づける」という状態へ変わります。

理事長や役員に必要なのは、区分所有法や管理規約をすべて暗記することではありません。自分だけで断定しないための判断手順を持ち、必要な場所で管理会社、マンション管理士、弁護士などへつなぐことが、団地型マンションの安定した管理運営につながるでしょう。

参考資料

e-Gov法令検索「建物の区分所有等に関する法律」
建物の区分所有等に関する法律 現行法令

国土交通省「マンション標準管理規約」
マンション標準管理規約 公式ページ

国土交通省「令和7年改正マンション標準管理規約 団地型」
令和7年改正マンション標準管理規約 団地型 修正版

国土交通省「令和7年改正版マンション標準管理規約の修正について」
令和7年12月10日の修正内容

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