人間関係・コミュニケーション

子どもに怒鳴ってしまった後どうする? 関係を修復する5つの対応とNGな謝り方

子どもに怒鳴ってしまった直後、さっきまで響いていた自分の大きな声が頭から離れず、「怖い思いをさせたかもしれない」「あんな言い方をしたかったわけではない」と後悔することがあります。子どもが泣いていたり、黙ったまま目を合わせなくなったりすると、謝りたい気持ちはあるのに何と声をかければよいのかわからず、気まずい時間だけが過ぎてしまうこともあるでしょう。

その一方で、「でも何度言っても聞かなかった」「危ないことをしたのは子どものほうだった」という思いが残ることもあります。自分の怒鳴り方を後悔している気持ちと、親として注意する必要はあったという思いが同時に存在するからこそ、怒鳴った後の対応は難しく感じられるのです。

大切なのは、子どもの問題行動と、親が怒鳴ったという伝え方を一つの問題にしないことです。注意する必要があった事実まで否定する必要はありませんが、大きな声で威圧するような伝え方になったのであれば、その部分については親自身の行動として振り返り、話をやり直すことができます。

こども家庭庁は、体罰等によらない子育ての工夫として、子どもの気持ちや考えに耳を傾けること、「言うことを聞かない」背景を一つに決めつけないこと、年齢や発達に応じて考えること、環境を整えること、してほしい行動を肯定的かつ具体的に伝えることなどを示しています。

この記事では、こうした公的資料の考え方を踏まえながら、子どもに怒鳴ってしまった後に実践しやすいよう、対応を次の5つに整理します。なお、この5つはこども家庭庁などが定めた公式の標準手順ではなく、本記事が実生活で使いやすい形に整理したものです。

5つの対応 まず考えること 目指す状態
対応1 親子ともに落ち着く 今すぐ決着をつけようとしていないか これ以上感情をぶつけず話せる状態へ戻る
対応2 怒鳴ったことを親の責任として謝る 子どもの行動と自分の怒鳴り方を混ぜていないか 言い訳を加えず自分の行動を認める
対応3 子どもの気持ちを決めつけずに聞く 親が答えを先回りしていないか 子ども自身が感じたことを話せる余地を作る
対応4 問題行動は怒鳴ったことと分けて話す 人格まで責めていないか 変えてほしい具体的な行動を伝える
対応5 次に怒鳴りにくい仕組みを作る 意志の強さだけで解決しようとしていないか 同じ衝突が起きにくい環境や対応を作る

五つを一度に完璧に実行する必要はありません。子どもの年齢やそのときの状態によって順番が前後することもあるため、まずは「今、何をすれば関係をこれ以上こじらせずに済むだろう」と考えるところから始めてください。

TABLE OF CONTENTS
目次

対応1 まず親子ともに落ち着く

子どもを怒鳴った直後には、「すぐ謝らなければ」と焦るかもしれません。しかし、自分の中にまだ強い怒りが残っているなら、謝罪を急ぐことで再び衝突してしまうことがあります。

「ごめんね」と言い始めたはずなのに、子どもの態度を見た瞬間、「でも何回言っても聞かなかったでしょう」と再び責めてしまえば、親自身もさらに後悔することになるでしょう。

子どもの側も、大きな声を向けられた直後には泣いていたり、強く反発していたり、逆に黙り込んでいたりすることがあります。その状態で理由を問い詰めても、自分の気持ちや出来事を落ち着いて説明することが難しい場合があります。

だからこそ、怒鳴った直後に優先したいのは、問題をその場で解決することではなく、これ以上感情のぶつかり合いを大きくしないことです。

こども家庭庁は、保護者がイライラしたとき、自分の気持ちに気づいたうえで、深呼吸をする、ゆっくり数を数える、窓を開けて風に当たるなど、自分なりに気持ちを落ち着ける方法を持つことを紹介しています。

子どもの安全が確保されているのであれば、「今はお互いに落ち着いて話せそうにないから、少ししてから話そう」と伝え、会話を一度止めても構いません。黙って長時間無視することとは異なり、後で話を再開する意思を伝えたうえで少し距離を取ることには意味があります。

怒鳴った理由を子どもだけの問題にしない

少し落ち着いてきたら、「なぜ自分はあそこまで怒ったのだろう」と、子どもの行動だけではなく自分の状態にも目を向けてみます。

もちろん、子どもの行動そのものに強く腹が立った場合もあるでしょう。何度注意しても約束を守らない、危険なことを繰り返す、忙しい時間にまったく支度をしないという場面では、「いい加減にして」と思うのも不思議ではありません。

ただし、同じ出来事でも、親に余裕がある日と疲れ切っている日では反応が変わることがあります。睡眠不足だったのか、仕事で嫌なことがあったのか、時間に追われていたのか、「何度言っても変わらない」という無力感が積み重なっていたのかを振り返ると、怒鳴る前から余裕がかなり減っていたことに気づくかもしれません。

これは、「疲れていたのだから怒鳴っても仕方がなかった」と正当化するための振り返りではありません。次に同じ状況が起きたとき、親側で変えられる条件を見つけるための確認です。

「私は朝の出発前に焦ると声が大きくなりやすい」「夕方は親子ともに疲れているため衝突しやすい」と具体的に見えてくれば、後ほど対応5で考える再発予防にもつながります。

対応2 怒鳴ったことを親の責任として謝る

落ち着いて話せる状態になったら、子どもの問題行動を改めて注意する前に、怒鳴ったことについて親自身の行動として伝えます。

ここで多くの親が引っかかるのが、「悪いことをしたのは子どものほうなのに、自分から謝ったら全部こちらが悪かったことになるのではないか」という不安でしょう。

この迷いを整理するために、「何について謝るのか」を明確にします。

たとえば、子どもが宿題をしていないのに「終わった」と嘘をつき、それを知った親が感情的に怒鳴ったとします。この場合、宿題について嘘をついたことまで「問題ではなかった」と言う必要はありません。

謝るのは、怒鳴るという伝え方を選んだことについてです。

「宿題についてはあとで話したいけれど、さっき大きな声で怒鳴ったことはよくなかった。あの言い方はごめん」と伝えれば、親の責任と子どもの責任を混同せずに話せます。

謝ると親の威厳がなくなるのか

子どもへ謝ることに抵抗を感じる背景には、「親は毅然としていなければならない」という思いがあるかもしれません。

しかし、家庭のルールを示すことと、自分の不適切だった伝え方について認めることは両立します。

東洋大学の鈴木崇之氏は、現在の公式プロフィールで「子ども家庭福祉論」「社会的養護」「家庭支援論」を専門分野とし、研究キーワードとして児童虐待問題、児童相談所、社会的養護を掲げています。2019年の東洋大学の記事でも、親が感情的になって大きな声を出してしまった場合には、そのことについて親も謝るという考え方が紹介されています。

親が自分の行動を振り返って謝ることは、「子どもに何をされても親が我慢する」という意味ではありません。間違えたと感じた部分について認め、そのうえで必要なことは改めて伝えるという姿勢です。

完璧な親であることを演じるより、「あの言い方はよくなかったから話し直したい」と言えることのほうが、家庭の中で現実的な関係を作りやすいのではないでしょうか。

NGな謝り方と言い換え

怒鳴った後に謝っているつもりでも、言葉の後半で子どもを責め直してしまうことがあります。謝罪と注意を一つの文章へ詰め込まず、一度謝罪を完結させることを意識してください。

NGな謝り方 避けたい理由 言い換え例
「怒鳴ってごめん。でもあなたが何回言っても聞かないからでしょう」 謝罪の直後に怒鳴った理由を子どもへ戻すため、何について謝っているのかが曖昧になります 「大きな声で怒鳴ったことはごめん。伝える必要があることも、怒鳴らずに話すべきだった」
「あなたがママを怒らせたんでしょう」 親が自分の怒りをどう表したかまで、子どもの責任として扱う形になりやすくなります 「私はとても腹が立っていたけれど、大きな声でぶつけたことはよくなかった」
「あなたのためを思って怒鳴ったの」 注意したかった内容と怒鳴るという手段が混ざってしまいます 「大切だから伝えたいことはある。でも、怒鳴ったこととは分けて話したい」
「ごめんって言ったんだからもういいでしょう」 子どもの感情まで親の都合で終わらせることになります 「すぐに気持ちを切り替えなくても大丈夫。話したくなったら聞くよ」
「今日は疲れていたんだから仕方ないでしょう」 親の疲労が怒鳴ったことの正当化として聞こえやすくなります 「今日は余裕がなかったことには気づいた。でも、怒鳴ったことについては別に考えたい」
「もう絶対に怒鳴らないから許して」 守れるとは限らない約束と、子どもに許しを求めることが同時に入ります 「次に声が大きくなりそうになったら、一度止まってから話すようにする」
お菓子や玩具だけを渡して終わらせる 気まずさは薄れても、怒鳴ったことについて言葉で確認する機会がありません 「まず言葉で謝り、その後は子どもの様子を見ながら普段の関わりへ戻る」

親の事情を一切話してはいけないという意味ではありません。「今日は仕事で余裕がなかった」「急いでいて焦っていた」と振り返ることは、次に怒鳴らない方法を考えるうえで役立ちます。

ただし、その事情は「だから怒鳴って当然だった」と説明するためではなく、「自分はどんな状態になると声を荒らげやすいのか」を理解するために使います。

対応3 子どもの気持ちを決めつけずに聞く

親が謝った後には、「子どもはどれほど傷ついたのだろう」と気になるでしょう。

後悔が強いほど、「怖かったよね」「悲しかったよね」と先回りしたくなるかもしれません。しかし、子どもの気持ちを想像することと、親がその気持ちを決めてしまうことは同じではありません。

大きな声が怖かった子もいれば、腹が立っている子もいるでしょう。「また怒られた」と嫌になったかもしれませんし、自分がしたことへの後悔のほうを強く感じている場合もあります。

そこで、「怖かったでしょう」と結論を決めるより、「さっき私が大きな声を出したとき、どんな気持ちだった?」と尋ねれば、子ども自身が感じたことを話す余地が残ります。

こども家庭庁も、子どもの気持ちや考えに耳を傾けることを体罰等によらない子育てのポイントとして示しています。また、「言うことを聞かない」ように見える背景には、保護者の気を引きたい、子どもなりの考えがある、言われた内容を十分に理解できていない、体調が悪いなど、さまざまな可能性があると説明しています。

ここで大切なのは、親が「本当の理由を聞き出す」ことを目的にしすぎないことです。まずは子ども側から見た出来事を知ろうとする姿勢を持つだけでも、会話の進め方は変わります。

幼児への声かけ

幼児では、自分の気持ちを細かく説明することがまだ難しい場合があります。そのため、長い説明を重ねるより、何について謝っているのかが伝わる言葉で話します。

たとえば、「さっき大きな声を出してびっくりさせたね。怒鳴ったことはごめんね。今は悲しい感じかな、それとも怒っている感じかな」と声をかければ、親が感情の言葉を補いながらも、子どもに選ぶ余地を残せます。

子どもが抱っこやスキンシップを求めているなら応じてもよいでしょう。ただし、親自身が安心したいからという理由だけで無理に抱きしめるのではなく、子どもの様子を見ながら距離を選ぶことが大切です。

小学生への声かけ

小学生になると、自分がどう感じたのかだけではなく、「何が嫌だったのか」「自分はどうしたかったのか」を話せる子も増えてきます。

そのため、「宿題についてはあとで話したいけれど、怒鳴ったことは私がよくなかった。あのとき何を思っていたのか、話せそうなら聞かせてほしい」と、親の謝罪と子どもの話を聞く時間を分ける方法があります。

ここで子どもが話し始めたら、すぐに「でも、それはあなたも悪いよね」と答えを返さず、まず話を終えるところまで聞きます。事実関係を確認したり注意したりする必要がある場合には、対応4で改めて扱えばよいからです。

思春期への声かけ

思春期では、親から細かく感情を聞かれること自体に抵抗を感じる場合があります。心配だからと「どう思ったの」「まだ怒っているの」「傷ついたの」と何度も尋ねれば、かえって距離を取りたくなることもあるでしょう。

そんなときは、「感情的になって怒鳴ったことは謝りたい。話す必要があることは残っているけれど、それとは分けたいと思っている。今は話したくなければ、あとでも大丈夫」と伝え、話すタイミングについて子ども側にも余地を残します。

年齢別の声かけは、あくまで考え方の例です。同じ小学生でも話したがる子と一人になりたい子がいるため、台詞をそのまま再現することより、「今この子はどの程度の距離なら話せそうだろう」と見ることを優先してください。

子どもが謝罪を無視したらどうする

勇気を出して謝ったのに、子どもが顔を背けたり、「あっちに行って」と言ったりすると、親も傷つきます。「せっかく謝ったのに」という苛立ちと、「それほど嫌われてしまったのだろうか」という不安が同時に出てくることもあるでしょう。

ただし、親が謝罪したことと、子どもがその場ですぐに受け入れられることは別です。

まだ話したくない場合には、「今すぐ返事をしなくても大丈夫。話したくなったら聞くよ」と伝え、答えを求めすぎないようにします。

謝罪を「許してもらうための交換」にしてしまうと、今度は子どもが親の罪悪感を解消する役割を担うことになります。「謝ったのだから笑って」「いつまで怒っているの」と急かすより、普段の生活を落ち着いて続けるほうがよいでしょう。

食事を用意したり、必要な声をかけたり、翌朝にはいつもの調子で挨拶したりしながら、子どもが再び話したくなる余地を残します。このように関われば必ず短期間で元どおりになると断定することはできませんが、少なくとも子どもの気持ちを急いで終わらせず、会話を再開できる余地を残すことはできます。

対応4 子どもの問題行動は怒鳴ったことと分けて話す

親が謝ることをためらう大きな理由の一つが、「謝ったら、子どもがしたことまで許されたと思うのではないか」という不安です。

しかし、ここまで整理してきたとおり、親の怒鳴り方と子どもの行動は別の問題として扱えます。

子どもが人を叩いたなら、その行動についてはきちんと話す必要があります。道路へ飛び出したのであれば、命に関わる危険な行動として止めなければなりませんし、約束を破ったのであれば、その理由や次にどうするかを考えることも必要でしょう。

親が怒鳴ったことについて謝罪した後で、「それとは別に、さっき友達を叩いたことについて話そう」と切り替えれば、注意そのものを曖昧にせずに済みます。

人格ではなく具体的な行動を扱う

子どもの問題を伝えるときには、「あなたはいつもだらしない」「本当に嘘つきだね」と人物全体の評価へ広げるより、今回起きた具体的な行動へ焦点を戻します。

たとえば、「あなたは嘘つきだ」と言う代わりに、「宿題をしていないのに、終わったと言ったことについて話したい」と伝えます。

人格に対する評価ではなく行動へ焦点を当てることで、親が何を問題としているのか、次にどの行動を変えてほしいのかを具体的に伝えやすくなります。

ここで大切なのは、子どもの存在そのものを評価することではなく、今回何が起き、次回はどの行動を選んでほしいのかを整理することです。

禁止だけでなく何をすればよいかを伝える

「走らない」「騒がない」「散らかさない」と禁止だけを伝えると、子どもによっては次に何をすればよいのかわかりにくいことがあります。

こども家庭庁は、「ここでは歩いてね」のように、肯定的で具体的な言葉で伝える工夫を紹介しています。

たとえば、部屋を散らかした子どもに対して「いい加減に片づけなさい」と怒るだけではなく、「使ったブロックをまずこの箱へ戻そう」と具体的に伝えることができます。

道路では「走るな」とだけ言うのではなく、「道路の前では一度止まって、手をつないで渡ろう」と示せます。

怒鳴らずに伝えることは、子どもの好きなようにさせることではありません。必要な境界線は残しながら、子どもが実際に取れる行動へ言葉を置き換えることです。

対応5 次に怒鳴りにくい仕組みを作る

怒鳴った後に謝ることができても、数日後にまた同じ場面で怒鳴ってしまえば、「あれだけ反省したのに何も変わっていない」と自分を責めたくなるでしょう。

夜には「もう絶対に怒鳴らない」と思ったのに、翌朝、着替えない子どもを前にして再び声が大きくなることもあります。

その繰り返しを減らすためには、反省の強さだけではなく、「どんな状況で怒鳴りやすくなるのか」を具体的に見る必要があります。

怒鳴りやすい時間と場面を探す

まず、怒鳴った場面そのものだけではなく、その前後を振り返ります。

朝の出発前に多いのであれば、親が時間に追われて焦っているのかもしれません。夕方に増えるのであれば、親子ともに疲れや空腹が重なっているという可能性もあります。

宿題を始める時間やゲームを終了する時間に毎回衝突しているなら、「この子は言うことを聞かない」と考えるだけではなく、「切り替えの場面で毎回ぶつかっている」と捉え直すことができます。

見方が具体的になるほど、対策も具体的になります。

子どもを叱らずに済む環境を増やす

こども家庭庁は、乳幼児への関わりについて、危険なものを触れない場所へ移すなど、叱らなくてもよい環境を作る工夫も紹介しています。また、困った行動が見られるときには、子ども自身も何かに困っていないかという視点を持つことが示されています。

この考え方は、年齢が上がってからも応用できます。

毎朝忘れ物を探すことで親子ともにイライラするのであれば、前日のうちに持ち物を置く場所を固定する方法があります。ゲーム終了のたびに大げんかになるなら、終了時刻になって突然「やめなさい」と言うだけでなく、その少し前に区切りを知らせておく方法も考えられるでしょう。

宿題を始める時刻で揉めているなら、「今すぐやりなさい」だけではなく、「五時と五時半なら、どちらから始める」と選択肢を作れる場合もあります。

家庭のルールをなくすのではなく、毎回怒鳴らなければ動かない仕組みを少しずつ減らしていくという考え方です。

怒鳴る直前の自分のサインを知る

怒りが頂点まで上がってから冷静になろうとしても、簡単には切り替えられません。そのため、怒鳴る少し前に自分に何が起きているのかを観察します。

声量が大きくなっている、肩や手に力が入る、「何回言えばわかるの」という言葉が頭の中に浮かぶなど、自分なりの前兆があるかもしれません。

そのサインに気づいたときの行動を一つだけ決めておく方法があります。

たとえば、水を飲んでから話す、数秒黙る、子どもの安全を確認していったん離れるなど、自分にとって実行しやすいものを選びます。

目標は「怒りを感じない親」になることではありません。腹が立ったという感情から、怒鳴るという行動まで一直線に進まないよう、途中へ小さな間を作ることです。

子どもの変化だけで成果を判断しない

親が接し方を変え始めても、子どもが次の日から急に素直になるとは限りません。

そこで、「こんなに頑張っているのに子どもは何も変わらない」と思うと、再び強い言葉へ戻りやすくなります。

最初に確認したいのは、子どもの従順さだけではありません。

以前ならすぐ怒鳴っていた場面で数秒止まれた、怒鳴った後に「あなたのせい」と言わず謝れた、子どもの話を途中で遮らなかったなど、親自身が違う行動を選べたかも見てください。

東洋大学の鈴木崇之氏による解説でも、怒る回数をいきなりゼロにするのではなく、10回だったものを9回に減らせた部分も評価するという趣旨が紹介されています。

「明日から完璧になる」という大きな目標より、次の一回で違う対応を一つ選ぶほうが、現実の子育てでは取り組みやすいでしょう。

怒鳴った直後から翌日までの対応例

ここまでの5つを、実際の時間の流れへ当てはめるとどうなるのでしょうか。

以下は、公的機関が定めた標準的な時間割ではありません。こども家庭庁の資料には、保護者が気持ちを落ち着けることや子どもの気持ちを聞くことなどは示されていますが、「何分後に謝る」「当日中にここまで行う」「翌朝にはこうする」という一律の基準が示されているわけではありません。

そのため、ここでは「怒鳴った後に頭が真っ白になり、次に何をすればよいかわからない」ときの一例として整理します。子どもの状態や出来事によって前後させ、時間よりも親子が話せる状態かどうかを優先してください。

タイミングの目安 確認したいこと 対応の一例 避けたいこと
怒鳴った直後 子どもの安全と自分の感情の強さを確認します 危険を止めたうえで会話を一度止め、水を飲む、深呼吸する、少し距離を取るなどして落ち着きます 興奮したまま説教を続ける、追いかけて返事を求める、物を叩くなど威圧を重ねる
親子が少し落ち着いた頃 子どもを責め直さずに話せそうかを見ます 「大きな声で怒鳴ったことはごめん」と、自分の行動について謝ります 「でもあなたが悪かったから」と謝罪の中で責任を戻す
子どもが話せそうな頃 子ども自身が話を受け取れる状態かを見ます 「あのときどんな気持ちだった?」と尋ね、話したくなければ待ちます 答えを強要する、親が感情を決めつける
問題を扱える頃 本来注意したかった内容を整理します 怒鳴ったこととは別に、具体的な問題行動と次にしてほしい行動を話します 「いつもそうだ」と過去まで広げ、人格全体を責める
日常へ戻る頃 無理に仲直りを完成させようとしていないか確認します 食事や日常会話などを普段の調子へ戻し、子どもが距離を求めれば尊重します 罪悪感から急に何でも許したり、物だけで埋め合わせたりする
翌日以降 前日の怒りを罰のように持ち越していないかを見ます 普段どおり挨拶をし、生活を続けながら必要に応じて再び話せる機会を作ります 「昨日あれだけ怒られたのに」と嫌味を繰り返す
数日以内を目安に 同じ場面を減らす方法がないか考えます 時間帯、親の疲れ、環境、指示の出し方を振り返り、変えることを一つ決めます 「二度と怒らない」という決意だけで終わらせる

時計どおりに進めることが目的ではありません。子どもがまだ話したくないなら待って構いませんし、親子ともに早く落ち着いて話せるのであれば、必要以上に時間を空ける理由もありません。

繰り返し怒鳴ってしまい苦しい場合の相談先

「怒鳴らないようにしよう」と何度決めても、ほとんど毎日のように繰り返してしまうことがあります。

そこまで来ると、子どもへの影響だけでなく、親自身もかなり苦しくなっているかもしれません。「またやってしまった」と後悔して眠れなくなったり、朝になると再び同じことが起きたりすれば、「自分には子育てができないのでは」と感じることもあるでしょう。

そんなときに、「もっと我慢しなければ」と自分一人の精神力だけで乗り切ろうとする必要はありません。

こども家庭庁では、親子関係や子育てについて相談できる「親子のための相談LINE」を案内しており、18歳未満の子どもとその保護者などが利用できます。匿名で相談することもでき、受付時間は地域によって異なります。

市区町村のこども家庭センターなどでも、子育て家庭や子どもからの相談を受けながら、地域の状況に応じた支援へつなげています。

また、出産や子育てについて悩んだときには、児童相談所相談専用ダイヤル「0120-189-783」も案内されています。

特に、怒鳴るだけでは収まらず、子どもを叩きそうになる、実際に手が出てしまう、物を投げたり壊したりするなど、自分でも行動を止めることが難しいと感じる場合には、一人で耐え続けないことが重要です。

相談することは、親としての適性を判定してもらうための行動ではありません。今の生活では親一人の余裕だけで支えきれないのであれば、人や制度を増やし、親子が安全に過ごせる状態へ戻していくための方法です。

子どもに怒鳴ってしまった後のよくある質問

怒鳴った後はすぐ謝ったほうがいい?

親自身がまだ強く怒っているなら、まず対応1で触れたように落ち着くことを優先します。謝罪を早く済ませることより、「ごめん」と言った直後に再び責めない状態で話せることのほうが大切です。

何日も何もなかったようにする必要はありませんが、時間だけを基準にせず、責任転嫁せずに話せる状態かを見てください。

子どもが謝罪を無視したらどうする?

対応3で触れたように、返事や許しを強要せず、「今は話したくなければ大丈夫」と会話の入口を残します。

その場ですぐ笑顔にならなくても、普段の生活を落ち着いて続けながら、子どもが再び話せる余地を保ちます。

謝ると親の威厳がなくならない?

謝る対象は、親が怒鳴ったという伝え方です。家庭のルールや子どもの問題行動まで撤回する必要はなく、必要な内容については対応4のように別に話せます。

そのため、謝罪と親として必要な注意は両立します。

子どもが悪いことをした場合でも親が謝るべき?

子どもの行動に改善すべき点があったとしても、親自身が怒鳴ったことについては別に謝ることができます。

「友達を叩いたことは話す必要がある。それとは別に、私が大声で怒鳴ったことについては謝りたい」というように、それぞれの行動を分けて扱います。

毎日のように怒鳴ってしまう場合はどうする?

対応5で確認したように、怒鳴りやすい時間帯、親自身の疲れや睡眠、仕事や家事の負担、繰り返し衝突している場面を具体的に見ます。

それでも自分一人では変えることが難しい場合には、こども家庭センター、親子のための相談LINE、児童相談所相談専用ダイヤルなど、公的な相談先を利用できます。「もっと深刻になってから」と待つのではなく、怒鳴ることを減らしたいのに難しいと感じた段階で相談して構いません。

子どもに怒鳴ってしまった後に今日すること

怒鳴った後には、「子どもを傷つけたかもしれない」という後悔だけでなく、「それでも、どうして何度言ってもわかってくれないのだろう」という苛立ちが残ることがあります。

相反するように見える二つの気持ちが同時に存在するからこそ、親自身もすぐには気持ちを切り替えられないのでしょう。そんな状態で「今日中に完璧に関係を修復しなければ」と考えると、かえって何も言えなくなることがあります。

だからこそ、その日のうちにすべてを解決しようとする必要はありません。

まず、自分が子どもを責め直さずに話せる程度まで落ち着いたら、「さっき大きな声で怒鳴ったことはごめん。あの言い方はよくなかった」と伝えてみてください。

子どもが話せそうなら、その後で気持ちを聞きます。まだ話したくないようなら、無理に答えを求めず、話せる入口を残しておきます。

本来注意する必要があったことについては、謝罪と混ぜずに改めて扱えばよいのです。

そして少し時間がたったら、「なぜ子どもはあんなことをしたのか」だけではなく、「なぜ自分はあそこまで余裕を失っていたのか」にも目を向けてみます。

朝の時間が足りなかった、疲れていた、毎回同じ場面で揉めているなど、何か一つ見つかったら、次の一回で変える方法も一つだけ決めます。

前日に持ち物を用意する、ゲーム終了を少し前に知らせる、声が大きくなりそうなら数秒黙るなど、小さくても実際にできることを選んでください。

自分が子どもを責め直さずに話せる程度まで 落ち着いたら 「さっき大きな声で怒鳴ったことはごめん。 あの言い方はよくなかった」 子どもが話せそうなら、その後で気持ちを聞きます。 本来注意する必要があったことについては、 謝罪と混ぜずに改めて扱えばよいのです。 「なぜ自分はあそこまで余裕を失っていたのか」にも 目を向けてみます。 次の一回で変える方法も一つだけ決めます。

怒鳴ってしまったという過去そのものを消すことはできません。しかし、自分の行動を認め、必要なら謝り、子どもの気持ちを聞き、本来伝えるべきことを落ち着いて話し直し、次の一回で少し違う対応を選ぶことはできます。

まとめ

子どもに怒鳴ってしまった後は、まず親子ともに落ち着き、怒鳴ったことについて親自身の行動として謝ります。そのうえで子どもの気持ちを決めつけずに聞き、本来注意する必要があった問題行動については謝罪とは分けて具体的に話し、最後に同じ衝突を繰り返しにくくする環境や対応を考えます。

まず親子ともに落ち着き、 怒鳴ったことについて親自身の行動として謝ります。 そのうえで子どもの気持ちを決めつけずに聞き、 本来注意する必要があった問題行動については 謝罪とは分けて具体的に話し、 最後に同じ衝突を繰り返しにくくする 環境や対応を考えます。

本記事では、この流れを「5つの対応」として整理していますが、これは公的機関が定めた公式の五段階ではありません。また、怒鳴った直後から翌日までの対応例も固定された時間基準ではないため、子どもの年齢や気持ち、そのときの状況に合わせて前後させてください。

今日からすべてを変える必要はありません。まずは落ち着いた状態で「大きな声で怒鳴ったことはごめん」と伝え、その次の一回でこれまでとは違う行動を一つ選ぶところから、親子の会話をもう一度始めることができます。

参考資料

本文の主軸である、子どもの気持ちや考えに耳を傾けること、「言うことを聞かない」背景を一つに決めつけないこと、発達に応じて考えること、環境を整えること、肯定的で具体的に伝えることについては、こども家庭庁の資料を主に参考にしています。

こども家庭庁 しつけ?体罰?これってどっち??

怒ってしまった後に親自身も大きな声を出したことについて謝る考え方や、怒る回数を少しずつ減らしていく考え方については、東洋大学の記事を参考にしています。

東洋大学 怒ると叱るで子どもは変わる!?健やかな成長を育む親子のコミュニケーション術とは?

鈴木崇之氏の現在の専門分野と研究キーワードについては、東洋大学の公式プロフィールを確認しています。

東洋大学 鈴木崇之教授プロフィール

親子関係や子育てについて外部へ相談したい場合には、こども家庭庁が案内する相談窓口を確認できます。

こども家庭庁 親子のための相談LINE

こども家庭庁 児童虐待防止推進特設サイト 相談窓口

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