マンション管理士

マンションで賃借人が管理規約に違反したら? 管理組合が取るべき対応を5ステップで解説

マンションの賃借人による騒音やペット飼育、共用部分の不適切な利用が続くと、管理組合の理事長や役員は「どこまで注意してよいのか」「貸主である区分所有者にも連絡すべきなのか」と判断に迷います。重要なのは、苦情の強さだけで結論を急がず、確認できた事実と自マンションの管理規約を土台として、問題の程度に応じた対応を段階的に進めることです。

深夜になると天井付近から「ドン」と衝撃音が響き、眠れないという苦情が何度も入る。ペット禁止のはずなのに犬を連れて共用部分を歩く姿が繰り返し目撃され、廊下には私物まで置かれている。このような状態が続けば、被害を受けている住民が「管理組合は何もしてくれない」と感じるのも無理はありません。

一方で、対応する理事長や役員には別の不安があります。問題を起こしているのは区分所有者本人ではなく賃借人であるため、管理組合から直接どこまで是正を求められるのか分からず、強い言葉を使った結果として別の紛争を招くことも避けたいでしょう。

苦情が重なるほど、「もう厳しい警告を出したほうがよいのではないか」という思いは強くなります。とはいえ、事実確認が不十分なまま特定の賃借人を違反者と決め付けたり、氏名や部屋番号を掲示したりすれば、もともとの規約違反とは異なる問題へ発展する可能性があります。

管理組合が目指すべきなのは、相手を言い負かすことではありません。問題となっている行為を具体的に把握し、自マンションの管理規約や使用細則との関係を整理したうえで、必要な相手へ改善を求め、その後に生活環境が回復したかまで確認することが重要です。

この記事では、賃借人にも使用方法に関する管理規約上の義務が及ぶ理由を整理したうえで、管理組合が取るべき対応を5つのステップで解説します。その後、騒音やペットなど問題の種類ごとの注意点、避けたい対応、管理会社や専門家との役割分担、法的措置を検討する段階まで詳しく見ていきます。

なお、本稿は2026年8月時点の区分所有法と国土交通省の公表資料を前提とする一般的な解説です。実際の案件では、自マンションで現在有効な管理規約と使用細則を優先して確認し、個別の法律判断が必要な場合には適切な専門家へ相談してください。

TABLE OF CONTENTS
目次

賃借人にも使用方法に関する管理規約が及ぶ理由

賃貸住戸で問題が起きたとき、理事会では「賃借人は管理組合の組合員ではないのだから、管理規約を守らせることはできないのではないか」という疑問が出ることがあります。

確かに賃借人は区分所有者ではなく、通常は管理組合を構成する組合員でもありません。しかし、そこから「マンションの利用ルールとは無関係」という結論にはなりません。

賃借人への対応を考える際は、区分所有者と同じ義務を負う部分と、所有者固有の権利義務として区別すべき部分を整理する必要があります。この線引きを曖昧にすると、管理組合が必要以上に弱腰になったり、反対に賃借人へ本来負わない義務まで求めたりする原因になります。

区分所有法46条2項と占有者の義務

区分所有法第46条第2項では、占有者について、建物や敷地、附属施設の使用方法に関し、区分所有者が規約または集会の決議に基づいて負っている義務と同一の義務を負うと定めています。

一般的に、専有部分を借りて居住している賃借人は、この占有者に当たります。

したがって、深夜の騒音を防止するルール、ペット飼育に関する制限、共用廊下やバルコニーの使用方法、駐車場や駐輪場の利用方法など、建物や施設をどのように使用するかに関する規定については、賃借人だから無視してよいわけではありません。

賃借人から「管理組合とは契約していないため規約とは関係ありません」と言われると、役員側は戸惑うかもしれません。それでも、建物等の使用方法に関する義務は、管理組合との契約関係だけで決まるものではありません。

マンションは、一つの建物で多くの人が生活する場所です。所有者本人が住む住戸だけルールを守り、賃貸された住戸だけ自由な利用を認める状態では、平穏な共同生活を維持することが難しくなるでしょう。

管理規約のすべてが賃借人へ同じように及ぶわけではない

一方で、区分所有法第46条第2項を根拠として「賃借人は管理規約のすべてについて区分所有者と同一の義務を負う」と説明するのも適切ではありません。

同項が対象としているのは、建物や敷地、附属施設の使用方法に関する義務です。

たとえば、騒音防止、ペット飼育、共用部分への私物放置、ごみ出し、駐車場や駐輪場の利用などは、マンションの使い方に関係します。このような規定は、実際にマンションを使用する賃借人にも関係します。

これに対して、区分所有者として管理費や修繕積立金を負担すること、総会で議決権を行使すること、区分所有者という地位に基づいて管理組合運営へ参加することは性質が異なります。

管理組合から注意するときも、「管理規約に書いてあることは全部守ってください」と広く言い切る必要はありません。今回問題となっている行為がどの使用ルールに抵触しており、具体的に何を改善してほしいのかを示すほうが、相手にとって理解しやすくなります。

標準管理規約19条が示す区分所有者の役割

国土交通省の令和7年改正マンション標準管理規約第19条では、区分所有者が専有部分を第三者へ貸与する場合、規約と使用細則に定める事項をその第三者へ遵守させることが示されています。

さらに、貸与に係る契約へ規約等を遵守する旨の条項を設けることや、契約相手から管理組合へ誓約書を提出させること、専有部分を借用した旨を届け出る仕組みも設けられています。

ここで重要なのは、賃借人による規約違反を、賃借人本人だけの問題として処理する必要はないという点です。

専有部分を第三者へ貸している区分所有者にも、賃借人へ規約を守らせるために関与する役割があります。管理組合が賃借人本人への注意だけを何度も繰り返して行き詰まっている場合には、貸主との連携を見直すことが必要でしょう。

また、標準管理規約第67条では、専有部分の貸与を受けた者などが法令や規約、使用細則等へ違反した場合に、理事長が理事会の決議を経て必要な勧告や指示、警告を行えるモデル規定が置かれています。

加えて、区分所有者にも、自らの専有部分を借りている者などが問題行為をした場合には、是正のため必要な措置を講じることが示されています。

ただし、マンション標準管理規約は、各マンションへ直接適用される法律ではありません。国土交通省が管理規約を作成または改正する際のひな型として公表しているものです。

したがって、標準管理規約に規定があることを確認した後は、必ず自マンションの現行規約にも同様の定めがあるかを確認してください。

賃借人の規約違反で最初に確認する3点

苦情を受けた直後は、被害住民から早急な対応を求められることがあります。理事長も「何もしないと思われたくない」と焦りますが、初動で事実関係を取り違えると、その後の対応そのものが不安定になります。

正式な注意へ進む前には、問題行為が自マンションのルールに反しているのか、違反を裏付ける事実をどこまで確認できているのか、対象住戸の区分所有者が誰なのかを整理します。

これは問題を先送りするための作業ではありません。管理組合が根拠を持って動くための準備であり、後の通知や区分所有者への協力要請を具体的にするためにも重要です。

本当に管理規約や使用細則への違反なのか

最初に確認すべき資料は、自マンションで現在有効になっている管理規約と使用細則です。

「昔からペットは禁止だったはずだ」「廊下には何も置けないと聞いている」といった記憶だけでは十分ではありません。規約が改正されていたり、長年の慣習と現在の細則が食い違っていたりする場合があります。

ペットについても、全面禁止のマンションだけでなく、届出制や頭数制限を採用しているマンションがあります。駐車場や駐輪場についても、区画ごとの利用条件が細かく定められている場合があるでしょう。

そのため、管理規約本文に加え、ペット飼育細則、駐車場使用細則、駐輪場使用細則など、問題に関係する資料を確認します。過去の総会で関連する決議が行われている場合には、その内容も併せて確認すると判断しやすくなります。

規約上の根拠が明確でない場合には、無理に「規約違反」と断定しないことも重要です。単なるマナー上の問題なのか、別の法令や契約関係が問題になるのかによって、管理組合として求める内容は変わります。

違反行為の事実をどこまで確認できているのか

次に、住民から申告された内容と、管理組合として確認できた事実を分けて整理します。

「毎晩ひどい騒音で眠れない」という申出は、被害を把握する重要な情報です。しかし、その申出だけで発生日時や継続時間、音の発生源まで確定したことにはなりません。

マンションでは床や壁、配管などを通して音が伝わります。真上の住戸から聞こえているように感じても、実際には斜め上や別の住戸が発生源だった可能性があります。

ペット問題でも、一度犬を連れている姿を見たというだけでは、継続して飼育しているのか、一時的に預かっているのか判断できない場合があります。

そこで、発生日時、継続時間、頻度、確認した人、写真や録音等の有無を時系列で整理します。騒音計による測定値も参考資料になりますが、数値だけで結論を出さず、時間帯や音の性質、継続性なども合わせて判断します。

匿名の苦情も調査のきっかけとして扱えます。ただし、匿名申告が一件あったという理由だけで、特定の賃借人を違反者として強い措置へ進めるべきではありません。

被害を訴える住民からすると、「そこまで記録しなければ動いてくれないのか」と感じることもあるでしょう。そのため、証拠提出を迫るような伝え方ではなく、管理組合として正式な対応を行うために発生状況を整理したいと説明するほうが、協力を得やすくなります。

賃貸住戸の区分所有者と連絡先を確認する

賃借人への注意を検討する段階で、対象住戸の区分所有者と連絡先も確認しておきます。

組合員名簿や居住者名簿、専有部分を貸与した際の届出などを確認し、区分所有者本人の連絡先を整理してください。賃貸管理会社が関与している場合には、その会社名や連絡経路も把握しておくと後の対応が進めやすくなります。

ここを後回しにすると、賃借人へ何度も注意した後になって区分所有者へ連絡し、「そんな問題が起きているとは知りませんでした」と言われることがあります。

管理組合はそれまでの経緯を最初から説明し直すことになり、被害を受けている住民も対応する役員も疲弊します。

すべての軽微な問題について初回から所有者へ強い通知を出す必要はありません。それでも、必要になったときすぐ連絡できる状態は早い段階で整えておくほうがよいでしょう。

管理組合が取る規約違反対応5ステップ

管理組合が取る規約違反対応5ステップ 管理組合が取る規約違反対応5ステップ ステップ1 事実関係を客観的に記録する ステップ2 管理規約と使用細則の該当条項を確認する ステップ3 賃借人へ具体的な是正を求める ステップ4 区分所有者へ通知して協力を求める ステップ5 改善状況を確認して必要なら専門家へ相談する

賃借人による規約違反への対応では、確認できた事実に応じて手段を少しずつ強める方法が基本になります。

最初から法的措置を前提に相手を追い込めば、注意や話し合いだけで改善できた問題まで対立へ変わるかもしれません。反対に、何度も曖昧なお願いだけを繰り返していると、規約を守らなくても実質的な対応はないと受け取られるおそれがあります。

管理組合として必要なのは、各段階で何を確認し、誰へ何を求めたのかを説明できる状態を作ることです。

ステップ1 事実関係を客観的に記録する

最初に行うのは、後から読み返しても状況を把握できる記録を作ることです。

苦情を受けた日時、問題行為が発生した日時や場所、継続時間、頻度、被害状況、確認者などを一つのトラブル対応記録へまとめます。

騒音の場合、「夜中にかなりうるさかった」という記録では、数週間後に比較できません。「8月10日午後11時20分ごろから約30分間、床へ物を落とすような衝撃音が断続的に聞こえた」と残せば、その後の発生状況とも比較しやすくなります。

ペットや共用部分への私物放置では、必要な範囲で写真を残す方法もあります。ただし、防犯カメラ映像や録音を利用する場合には、管理組合の運用ルールや個人情報の取扱いにも注意が必要です。

記録には「非常識な住人」「悪質な入居者」といった評価語を書き込まず、確認した行為を中心に残します。

役員が怒りや疲れを感じることはあります。それでも、理事会の記録まで感情的な表現にすると、後から第三者が確認した際に、事実と評価の境界が分かりにくくなってしまいます。

ステップ2 管理規約と使用細則の該当条項を確認する

事実を整理したら、その行為が自マンションのどの規定に関係するのかを確認します。

管理規約だけではなく、ペット飼育細則、駐車場使用細則、駐輪場使用細則など、問題に直接関係する資料まで確認してください。

この作業をしないまま「迷惑なのでやめてください」と伝えると、相手から「何を根拠に違反と言っているのですか」と尋ねられたときに説明できません。

通知文では、必要に応じて該当条項を示し、確認された行為と結び付けます。

たとえば、「管理規約第○条では共用廊下への私物放置が禁止されています。○月○日に対象住戸前の共用廊下で○○が確認されているため、○日までに移動をお願いします」という形です。

規約番号を見せること自体が目的ではありません。相手に対して、なぜ注意を受けているのか、どの状態になれば改善したと判断されるのかを明確にすることが目的です。

ステップ3 賃借人へ具体的な是正を求める

規約違反の事実が確認できたら、問題の性質に応じて是正を求めます。

誰による違反か特定できておらず、複数住戸に関係している可能性があるごみ出しなどの問題なら、最初に全戸へルールを再周知する方法があります。

これに対して、特定の賃貸住戸による違反が繰り返されていると確認できているのに、全体向けの掲示だけを続けても改善しにくいでしょう。その段階では対象となる賃借人へ個別に連絡し、問題となっている事実と該当規約、改善してほしい内容を具体的に伝えます。

令和7年改正マンション標準管理規約第67条では、専有部分の貸与を受けた者などが法令や規約、使用細則等に違反した場合、理事長が理事会の決議を経て必要な勧告、指示、警告を行えるモデル規定が示されています。

実際のマンションでは、自マンションの規約にどのような手続が定められているかを確認してください。理事会決議が必要であれば、その手続を踏んで対応します。

初回通知は、必要以上に威圧的である必要はありません。ただし、丁寧な表現と曖昧な内容は別です。

「今後は気を付けてください」だけではなく、何をやめてほしいのか、どのルールに沿ってほしいのかを相手が理解できる形で伝えることが大切です。

ステップ4 区分所有者へ通知して協力を求める

賃借人本人へ注意しても改善しない場合には、貸主である区分所有者へ状況を伝えて協力を求めます。

違反の程度が大きく、初期段階から貸主の関与が必要と判断される場合には、賃借人への通知と並行して区分所有者へ連絡する方法も考えられます。

所有者へ連絡するときに、「あなたの賃借人が迷惑なので何とかしてください」とだけ伝えるのは十分ではありません。

発生している問題、確認した日時、該当する規約、賃借人へ行った通知、その後の改善状況を整理して示します。

標準管理規約第19条では、区分所有者が専有部分を第三者へ貸与する場合に規約等を遵守させる仕組みがあります。また、第67条では賃借人等が問題行為を行った場合に、区分所有者が必要な是正措置を講じるモデル規定も置かれています。

貸主と賃借人の間には賃貸借契約があるため、契約書に管理規約や使用細則を守る旨が定められていれば、貸主側から契約関係に基づいて改善を求めることも考えられます。

ただし、規約違反があれば賃貸借契約を必ず解除できるわけではありません。

解除できるかどうかは、違反内容や程度、継続性、これまでの是正要求に対する対応など、個別の事情によって異なります。

そのため、管理組合から区分所有者へ求める基本は、確認した事実を共有したうえで、貸主として適切な是正措置を検討してもらうことです。

ステップ5 改善状況を確認して必要なら専門家へ相談する

通知を送っただけで案件を終わらせないことも重要です。

管理組合の目的は、文書を何通出したかという実績を作ることではありません。問題となっていた行為が改善し、平穏な生活環境が戻ることにあります。

初回注意や区分所有者への連絡後には、同じ苦情が続いているか、発生頻度が減ったか、問題が解消したかを確認してください。

改善が確認できたなら、その結果も記録して案件を整理します。一度規約違反があったという理由だけで、その住戸をいつまでも問題住戸として扱い続ける必要はありません。

反対に、複数回の是正要求や区分所有者との連携を行っても重大な問題が続く場合には、専門家への相談を検討します。

管理規約の運用や理事会で必要となる手続、管理会社との役割分担などを整理したい場合には、マンション管理士への相談が考えられます。

一方、差止め、損害賠償、相手方との法律上の交渉、訴訟などが具体的な選択肢となる段階では、個別案件の法的評価を行える弁護士への相談が適切です。

5ステップを実務で使う時系列

5ステップを実際の理事会運営へ落とし込む際には、おおまかな時間軸を共有しておくと判断しやすくなります。

ただし、次の期間は法律で決められた期限ではありません。違反の重大性や継続性、自マンションの規約に応じて調整するための実務上の目安です。

対応段階 時期の目安 主な対応 残しておく記録
初動 発覚後1日から3日程度 苦情内容を聞き取り、事実確認と規約確認を始める 苦情受付記録と発生状況ログ
初回対応 1週間から2週間程度 必要に応じて全体周知または対象者への是正依頼を行う 掲示文と初回通知の控え
再確認 2週間から4週間程度 改善状況を確認し、問題が続いていれば再通知する 追加の発生記録と再通知書
所有者連携 必要性が生じた段階 区分所有者へ経過を知らせ、是正への協力を求める 所有者への通知と回答記録
専門家相談 通常対応で解決が難しくなった段階 マンション管理士や弁護士へ資料を示して相談する 相談資料と助言内容

初回注意後に問題が解消しているなら、予定していた再通知を機械的に行う必要はありません。

反対に、安全に関係する問題や周囲への影響が著しい行為が続いている場合には、数週間待つことに固執せず、区分所有者への通知や専門家相談を早める判断も考えられます。

時間が経過したから次へ進むのではなく、前回の対応後に何が変わったかを確認しながら次の措置を決めることが重要です。

理事会で残す規約違反対応チェックリスト

記録は、裁判になった場合だけ必要になるものではありません。

マンションでは役員が定期的に交代するため、半年後や1年後には現在の経緯を詳しく知る人がいなくなる可能性があります。

「前の理事長なら知っていると思います」という状態では、これまで積み重ねた対応を最初から確認し直さなければなりません。

理事会では、少なくとも次の情報を一つの案件記録として整理しておくと、引継ぎや専門家相談に使いやすくなります。

  • 最初に苦情を受けた日時と申出内容を記録している
  • 問題行為が発生した日付と時間帯と場所を記録している
  • 申告内容と管理組合が確認した事実を区別している
  • 必要に応じて写真や録音などの資料を適切に保存している
  • 自マンションの管理規約と使用細則を確認している
  • 問題となる条項番号と内容を確認している
  • 対象住戸の区分所有者と連絡先を確認している
  • 賃貸管理会社がある場合は連絡経路を確認している
  • 賃借人へ通知した日付と文書の控えを保存している
  • 区分所有者へ通知した内容と回答を保存している
  • 管理会社へ依頼した対応内容と結果を記録している
  • 理事会で協議した内容と決定事項を議事録へ残している
  • 改善状況を確認した日と結果を記録している
  • 専門家へ相談した場合は相談内容と回答を保存している

記録がそろうと、感情的には「何度言っても直さない住人」と見えていた問題が、「いつからどの行為が続き、管理組合がどのような対応を行い、現在どの程度改善しているのか」という具体的な案件へ変わります。

役員が腹立たしさを感じることまで否定する必要はありません。しかし、理事会として次の措置を決めるときは、その感情よりも確認した事実と規約を判断材料にすることが大切でしょう。

騒音トラブルで確認するポイント

騒音はマンションの規約違反の中でも、管理組合が特に判断へ迷いやすい問題です。

音は目に見えず、同じ音でも昼間に聞く場合と眠ろうとしている深夜に聞く場合では受け止め方が大きく変わります。

被害住民からすると、毎晩のように「ゴン」と響く音で睡眠を妨げられているのに、管理組合が慎重に確認している時間さえ長く感じるでしょう。だからこそ、被害への配慮と客観的な確認を同時に進める必要があります。

騒音については、発生日時、時間帯、継続時間、頻度、音の性質、発生源の特定状況を記録します。

必要に応じて騒音計による測定を行う方法もありますが、デシベル値だけですべてを判断できるわけではありません。深夜に断続的な衝撃音が続く場合と、昼間に短時間発生する通常の生活音では事情が異なります。

また、床や壁を通して音が伝わるマンションでは、苦情を受けた住戸が想定していた場所と実際の発生源が異なる場合があります。

発生源が十分に確認できていない段階で、特定住戸へ「あなたが騒音を出している」と断定するのは避けたほうがよいでしょう。

一方で、発生源が特定できるまで何もしないという対応も適切とは限りません。必要に応じて全体への生活騒音の注意喚起を行いながら記録を続けるなど、調査と被害軽減を並行させる方法が考えられます。

ペット飼育違反で確認するポイント

ペット問題では、最初に自マンションの規約や使用細則がどのような飼育条件を定めているのかを確認します。

全面的に犬猫の飼育を禁止しているマンションもあれば、頭数や大きさを制限しながら認めている場合もあります。事前申請や登録を条件としているマンションでは、飼育そのものではなく未申請であることが問題になる場合もあります。

そのため、「犬を見た」という事実だけで規約違反と断定することはできません。

禁止されている動物を継続して飼っている疑いがある場合には、共用部分での目撃日時や鳴き声の発生状況などを必要な範囲で記録します。

賃借人から「親族の犬を数日預かっているだけです」と説明されることもあるでしょう。この説明をその場で虚偽と決め付けるのではなく、その後も同様の状況が続いているかを確認したほうが、管理組合として客観的に判断できます。

また、ペット飼育そのものと、鳴き声や臭い、共用部分での排泄などの問題は分けて整理する必要があります。

飼育が認められているマンションでも、共用部分での移動方法や衛生管理など、別の規定に反する場合があります。

身体障害者補助犬などについては、一般的な愛玩動物と同じ扱いをしない配慮も必要です。

ペットが好きか嫌いかという感情ではなく、どの規約とどの行為が問題なのかを具体化することが重要です。

駐車場と駐輪場の無断利用で確認するポイント

駐車場と駐輪場の無断利用で確認するポイント 駐車場と駐輪場の無断利用で確認するポイント 現在有効な管理規約、使用細則、 駐車場使用契約などを確認します。 車両の位置や日時などを必要な範囲で記録し、 規約や契約に基づいて利用中止や移動を求めます。 管理組合が独断で車両をタイヤロックして 動かせなくしたり、別の場所へ移動したりする方法は 避けるべきでしょう。 撤去や処分について自マンションの細則に 手続が定められている場合には、 その規定に沿って進めます。

駐車場や駐輪場では、「空いていたので使ってよいと思った」「以前の入居者も同じ場所へ置いていた」という説明が出ることがあります。

このような問題では、慣習ではなく現在有効な管理規約、使用細則、駐車場使用契約などを確認します。

長年の運用と規定がずれている場合には、対象者への注意だけではなく、管理組合側のルール運用を見直す必要が出ることもあります。

無断駐車が確認された場合は、車両の位置や日時などを必要な範囲で記録し、規約や契約に基づいて利用中止や移動を求めます。

ただし、管理組合が独断で車両をタイヤロックして動かせなくしたり、別の場所へ移動したりする方法は避けるべきでしょう。

早く解決しようとして強制的な手段へ進むと、管理組合側の行為をめぐる新しい民事上の問題へ発展する可能性があります。

駐輪場についても同様で、長期間使われていないように見える自転車だからといって、確認なしに処分できるとは限りません。

撤去や処分について自マンションの細則に手続が定められている場合には、その規定に沿って進めます。

共用廊下への私物放置で確認するポイント

共用廊下に自転車、家具、段ボールなどが置かれ続けていると、周囲の住民は「なぜ管理組合は片付けさせないのか」と不満を抱きます。

通行や避難の妨げになっているように見えれば、役員としてもすぐ撤去したくなるでしょう。

しかし、管理組合が所有者を確認せずに物品を処分すれば、共用部分の規約違反だった問題が、所有物を勝手に処分されたという別の争いへ変わる可能性があります。

まず放置場所と確認日時を記録し、所有者が分かっている場合には規約の該当条項を示して移動を求めます。

移動期限やその後の扱いについて規約や使用細則に手続が設けられている場合は、その内容を確認してください。

避難経路や消防上の安全に関係すると考えられる場合には、管理会社や関係機関へ確認することも考えられます。

緊急性がある問題だからこそ、独断で処分するのではなく、安全確保と適切な手続の双方を意識する必要があります。

無断民泊など用途違反で確認するポイント

賃借人による規約違反は、騒音やペットだけではありません。

住宅として使われることを前提としている専有部分が、規約で認められていない宿泊用途などへ利用され、見知らぬ人が頻繁に出入りすることで、他の住民が不安を感じる場合があります。

現行のマンション標準管理規約には、住宅宿泊事業を認める場合と禁止する場合のモデル規定があります。

ただし、実際に自マンションでどの規定を採用しているのかが重要です。標準管理規約に禁止例があるという理由だけで、自マンションでも直ちに違反になるわけではありません。

短期間に複数の人が出入りしているという印象だけで無断民泊と断定せず、予約サイトへの掲載など確認できる事情があるかを調べます。

この種の用途違反では、区分所有者自身が賃借人による利用方法を知らない場合もあります。

事実関係がある程度確認できた段階で区分所有者へ連絡し、賃貸借契約上の使用目的を含めて確認してもらうことが解決につながる場合があります。

規約違反が改善しないときに避けたい対応

何度注意しても問題が続けば、理事会では「穏やかな方法では意味がないのではないか」という意見が出てきます。

被害住民から強く対応を求められれば、役員も早く結果を出したくなるでしょう。

それでも、相手が管理規約へ違反していることと、管理組合がどのような手段でも取れることは別の問題です。

匿名の苦情だけで重大な判断をしない

匿名の苦情を無視する必要はありません。

匿名でなければ伝えにくい事情もあるため、調査を始める情報として扱うことはできます。

ただし、匿名の申告だけで事実確認を終え、特定の賃借人を違反者として重大な措置へ進むのは避けたほうがよいでしょう。

申告された日時や内容について確認できる部分を調べ、裏付けが得られれば正式な是正へ進みます。まだ判断できない場合は記録を続けることで、苦情を放置せず客観性も確保できます。

氏名や部屋番号を見せしめとして公開しない

掲示板やエレベーターへ部屋番号や氏名を掲示すれば、周囲の視線によって相手が行動を改めるように感じるかもしれません。

しかし、必要以上の個人情報公開は、プライバシーや名誉をめぐる問題を生じさせる可能性があります。

全体への注意喚起が必要なら、特定個人を名指しせずルールそのものを周知します。

特定住戸へ改善を求める場合には、個別通知など必要な相手だけへ情報が届く方法を選ぶほうが適切です。

私物の無断処分や車両の強制固定をしない

共用廊下の私物をその場で捨てたり、無断駐車の車両を動かせない状態にしたりすれば、問題が早く解消するように見えます。

とはいえ、管理組合が自力で強制的な手段を取れば、その行為自体について損害賠償などを争われる可能性があります。

相手がルールを守らない状況ほど、「こちらも強く対応してよい」と考えたくなるものです。

しかし、管理組合が適切な手続を積み重ねていることは、後により強い措置を検討する場合にも重要になります。

規約違反なら退去させられると断定しない

賃借人による規約違反が確認されたからといって、管理組合が通常の賃貸借契約を自由に解除できるわけではありません。

貸主が賃貸借契約の解除を検討する場合にも、実際の契約内容や違反の重大性、継続性、是正要求への対応などを踏まえた個別判断になります。

一方、区分所有法第60条には、占有者による共同生活上の障害が著しく、他の方法ではその障害を除去して共同生活を維持することが困難な場合に、集会の決議に基づく訴えによって契約の解除と専有部分の引渡しを請求する制度があります。

これは、一度の規約違反があれば簡単に利用できる退去制度ではありません。

通常の注意や是正要求とは大きく異なる法的措置であるため、実際に検討する段階では、個別事情を踏まえた法律上の評価が必要になります。

賃借人へ所有者固有の義務まで求めない

賃借人にも管理規約上の義務が及ぶからといって、区分所有者固有の義務まで同じ形で負わせることは適切ではありません。

区分所有法第46条第2項が対象とする中心は、建物等の使用方法に関する義務です。

管理費負担や区分所有者としての議決権などまで賃借人へ求めると、本来是正すべき問題についての説明まで不明確になります。

通知するときは「規約のすべてを守ってください」と広げるのではなく、今回問題となっている使用方法を具体的に示します。

想定事例から見る5ステップの使い方

想定事例から見る5ステップの使い方 想定事例から見る5ステップの使い方 発生日時や共用部分での目撃状況を一定期間記録しました。 自マンションの管理規約とペット細則を照合します。 Cさんへ個別の是正依頼を行いました。 区分所有者Dさんへ連絡しました。 それでも改善しない場合には専門家へ相談するという 流れが考えられます。

ここでは、5ステップが実際にどのように機能するのかを確認するため、マンションで起こり得る典型的な事情を組み合わせた架空のケースを紹介します。

以下は、実在するマンションや実際の相談案件をそのまま掲載したものではありません。

ペット禁止マンションで大型犬の飼育が疑われたケース

築12年で全80戸の分譲マンションにおいて、賃貸住戸へ住むCさんが大型犬を飼っているのではないかという申出が、複数の住民から寄せられたとします。

周辺住民は深夜の鳴き声にも悩まされ、理事会では「早く退去してもらえないか」という意見まで出始めました。

長期間眠れない状態が続いている住民からすれば、すぐ強い対応を求めたくなるのも理解できます。

それでも理事会は、最初から退去という結論を決めず、発生日時や共用部分での目撃状況を一定期間記録しました。

複数の日に大型犬を連れて共用部分を利用している状況と、継続する鳴き声の申出が確認できたため、自マンションの管理規約とペット細則を照合します。

規約上問題となる飼育であることを確認した後、Cさんへ個別の是正依頼を行いました。

Cさんは「親族の犬を一時的に預かっているだけです」と説明しましたが、その後も同じ犬の目撃と鳴き声の記録が続きます。

そこで理事会は通知を感情的に強くするだけではなく、発生状況、該当規約、初回の是正依頼、その後も改善していない状況を整理して区分所有者Dさんへ連絡しました。

Dさんがマンション内の状況を知らなかった場合でも、具体的な記録を見ることで問題を把握しやすくなります。

その後、Dさんが賃貸管理会社と相談して契約関係に基づく是正を求め、それでも改善しない場合には専門家へ相談するという流れが考えられます。

この事例で重要なのは、最初から最も強い手段を選ばなかったことです。

事実と規約を確認して賃借人へ改善を求め、その結果を踏まえて区分所有者との連携へ進んだからこそ、管理組合と賃借人だけが感情的に対立する状態を避けやすくなります。

記録は、相手を追い詰めるためだけの証拠ではありません。遠方に住む所有者や、新たに相談を受ける専門家へ状況を正確に伝え、関係者の認識をそろえるためにも役立ちます。

管理会社が対応できる範囲

管理会社が対応できる範囲 管理会社が対応できる範囲 管理会社が対応できる範囲 実際に管理会社がどこまで対応するかは、 自マンションで締結している管理委託契約によって決まります。 マンション管理士へ相談できること 管理規約や使用細則の運用、理事会での対応手順、 管理会社との役割分担などを整理したい場合 法的措置を考える段階では弁護士への相談が適切 差止めや損害賠償、相手方との法律上の交渉、 訴訟などが具体的な選択肢になる場合

管理会社へ管理業務を委託しているマンションでは、「規約違反への注意も管理会社が最後まで対応してくれるのではないか」と考えることがあります。

実際に管理会社がどこまで対応するかは、自マンションで締結している管理委託契約によって決まります。

国土交通省は、管理組合と管理業者が契約する際のひな型としてマンション標準管理委託契約書を示しており、2025年12月12日にも改正を公表しています。

管理会社が住民からの申出を受け付けたり、掲示や一定の注意を行ったりする場合はあります。

一方、個別の住民間紛争や訴訟まで、管理会社が当然に最後まで担当するとは限りません。

理事会では実際の管理委託契約を確認し、初回注意を誰が行うのか、個別通知を管理会社へ依頼できるのか、区分所有者との連絡を誰が担当するのかを整理しておくとよいでしょう。

この役割分担が曖昧だと、理事会は「管理会社が何もしてくれない」と感じ、管理会社は「そこまでは契約業務ではない」と考えることがあります。

管理会社を有効に活用するためにも、管理組合が対応方針を決めたうえで、委託できる実務を整理することが重要です。

マンション管理士へ相談できること

規約違反が発生したからといって、すべての案件が訴訟へ進むわけではありません。

実務ではむしろ、「この規約をどう解釈すればよいのか」「理事会としてどの手順を踏むべきか」「所有者へいつ連絡すればよいのか」と迷う場面のほうが多いでしょう。

このような段階では、マンション管理士への相談が選択肢になります。

国土交通省はマンション管理士について、専門的知識をもって管理組合の運営その他マンション管理に関する相談に応じ、助言や指導その他の援助を行う専門家と説明しています。

自マンションの管理規約や使用細則の運用、理事会での対応手順、管理会社との役割分担などを整理したい場合には、マンション管理士の専門性を活用できます。

また、一つのトラブルをきっかけとして、管理組合の仕組みそのものに課題が見つかることがあります。

賃貸住戸の届出が更新されていない、区分所有者の連絡先が古い、ペット細則の内容が曖昧、違反者への対応手順が明確でないといった問題があれば、今回の案件だけではなく、次のトラブルに備えた見直しも必要でしょう。

個別の紛争を一件処理するだけでなく、同じ問題が起きたときに理事会が迷わない仕組みを整えることにも意味があります。

法的措置を考える段階では弁護士への相談が適切

賃借人への是正要求や区分所有者との連携を続けても重大な問題が改善せず、差止めや損害賠償、相手方との法律上の交渉、訴訟などが具体的な選択肢になる場合には、弁護士への相談が適切です。

ここで、法律に関係する話になったらマンション管理士へは相談できないと考える必要はありません。

管理規約の運用や理事会手続についてマンション管理士から助言を受けながら、相手方との具体的な法律上の交渉や訴訟に関する判断を弁護士へ相談するという役割分担もできます。

弁護士へ相談する時期も、裁判をすると決めた後に限られません。

理事会で「区分所有法第57条に基づく対応を検討できないか」「区分所有者へより強い通知をしてよいのか」という議論が出始めた段階で、現在の証拠やこれまでの対応を確認してもらう方法があります。

法的措置を取れるかどうかだけでなく、その手段を使うことが本当に問題解決へつながるのかを検討するためにも、個別案件に応じた法的評価には意味があります。

マンション管理士と弁護士の役割

どちらへ相談すべきか迷う場合には、現在の問題が管理組合運営を整理する段階なのか、個別の法律紛争が具体化している段階なのかを確認すると判断しやすくなります。

専門家 主な相談内容 相談を考える段階
マンション管理士 管理規約や使用細則の運用、理事会での対応手順、管理会社との役割分担、管理組合運営の整理 初期から中期の対応を整理したい段階
弁護士 個別案件の法的評価、相手方との法律上の交渉、差止めや損害賠償などの請求、訴訟対応 法律紛争や裁判手続が具体化した段階

両者は、どちらか一方しか選べない関係ではありません。

マンション管理士とともに管理組合内部の資料や対応手順を整理し、具体的な法律判断や交渉が必要になった部分について弁護士へ相談する方法もあります。

役員だけで抱え込むほど、問題そのものより「次に何を決めるべきか」という判断に疲れてしまう場合があります。

問題の段階に応じて専門性を使い分けることは、理事会の負担を減らすうえでも有効でしょう。

区分所有法57条以下を検討する段階

規約違反が長期化すると、理事会では「法律を使って止めることはできないのか」という話が出ることがあります。

区分所有法第57条には、共同の利益に反する行為について、その行為の停止や結果の除去、予防に必要な措置を求める制度があります。

占有者についても、一定の場合にこの仕組みが及びます。

一方、第60条は占有者に対するさらに強い制度です。

共同生活上の障害が著しく、ほかの方法ではその障害を除去して共同生活を維持することが困難な場合について、集会の決議に基づく訴えにより、契約の解除と専有部分の引渡しを請求する仕組みが設けられています。

そのため、通常の騒音苦情や一度のペット違反があれば、直ちに第60条を利用できるという理解は適切ではありません。

これまでにどのような是正を求めたのか、その後も違反が続いているのか、共同生活へどの程度の障害が生じているのか、ほかの方法による解決が困難なのかなどを整理する必要があります。

また、改正された区分所有法は2026年4月1日に施行されています。

令和7年10月17日に公表されたマンション標準管理規約の改正も、改正区分所有法等を踏まえたものです。

そのため、過去の解説記事だけを見て総会手続や決議要件を判断することは避け、重大な案件では現在の法令と自マンションの現行規約を確認してください。

「もう退去してもらいたい」と考えるほど問題が深刻なときこそ、役員の感情と法律上の要件を分けて考える必要があります。

今日から始める規約違反対応

ここまで読むと、「理事会だけでこれほど対応しなければならないのか」と負担を感じる方もいるでしょう。

理事長や役員には本業や家庭があり、マンション管理だけへ時間を使えるわけではありません。

その場合は、現在起きている案件を一枚の記録へ整理するところから始めてください。

対象住戸、最初に苦情を受けた日、確認できている事実、関連すると思われる規約、これまで行った連絡、区分所有者の連絡先、現在の状況を一つの資料へまとめます。

実際に書き出してみると、「規約をまだ確認していない」「所有者の連絡先が古い」「苦情は多いのに日時が残っていない」といった不足が見えてきます。

その不足を一つ補うだけでも、次に行うべき対応が具体的になります。

大きなトラブルであっても、管理組合が最初にできる実務は、現在分かっていることを整理し、次に確認する一点を見つけるところから始まります。

賃借人の管理規約違反に関するFAQ

賃借人にもマンション管理規約は適用されますか

区分所有法第46条第2項により、建物や敷地、附属施設の使用方法について区分所有者が規約や集会決議に基づいて負う義務は、占有者にも及びます。

一般的な賃借人は占有者に当たるため、マンションの使用方法に関する規約を無視できるわけではありません。

ただし、管理規約のすべてについて区分所有者と同じ立場になるという意味ではなく、管理費の負担や議決権など所有者固有の事項とは区別する必要があります。

管理組合から賃借人へ直接注意できますか

建物等の使用に関する規約違反については、自マンションの規約上の根拠と手続を確認したうえで、賃借人本人へ是正を求めることが考えられます。

現行の標準管理規約第67条でも、専有部分の貸与を受けた者などに対して、勧告や指示、警告を行えるモデル規定が示されています。

実際には、確認した事実と該当規約、改善してほしい内容を具体的に伝えることが重要です。

貸主である区分所有者にも連絡すべきですか

継続する規約違反や重大な問題では、区分所有者への連絡が重要です。

標準管理規約第19条には、区分所有者が専有部分を第三者へ貸与する場合に規約等を遵守させる仕組みがあり、第67条にも賃借人等が問題行為をした場合の区分所有者による是正措置が示されています。

ただし、すべての軽微な問題で初回から所有者へ強い警告を出す必要があるとは限りません。問題の程度と、賃借人本人への注意後の状況を見ながら判断します。

注意しても規約違反が改善されない場合はどうしますか

これまでの通知履歴と、その後も確認された問題行為を整理します。

そのうえで区分所有者との連携を進め、管理規約の運用や理事会対応を整理したい場合には、マンション管理士への相談が考えられます。

差止めなどの法的請求や訴訟が具体的な選択肢になる段階では、弁護士への相談が適切です。

管理会社はどこまで対応してくれますか

管理会社の業務範囲は、自マンションで実際に締結している管理委託契約によって異なります。

住民からの申出受付、掲示、一定の注意などを行う場合がありますが、個別の紛争交渉や訴訟まで当然に通常業務へ含まれるわけではありません。

管理委託契約を確認し、管理会社へ任せる実務と、管理組合が判断する事項を整理することが重要です。

マンション管理士と弁護士のどちらへ相談すべきですか

管理規約や使用細則の運用、理事会での対応手順、管理会社との役割分担などを整理したい段階では、マンション管理士への相談が考えられます。

一方、相手方との法律上の交渉、差止めや損害賠償などの請求、訴訟への対応が具体化した段階では、弁護士への相談が適切です。

二つの専門職を競合する相談先として考えるのではなく、問題の段階と相談内容に応じて役割を使い分けると整理しやすくなります。

マンションの賃借人による規約違反対応まとめ

マンションの賃借人による規約違反対応まとめ マンションの賃借人による規約違反対応まとめ 問題行為を客観的に記録し 自マンションの管理規約と使用細則から 根拠を確認したうえで 賃借人へ具体的な是正を求めます。 区分所有者とも情報を共有し マンション管理士や弁護士への相談を検討します。

賃借人による管理規約違反が続けば、被害を受けている住民にも、対応する理事長や役員にも焦りが生まれます。

それでも、確認が不十分なまま強い警告へ進んだり、管理組合が自力で強制的な措置を取ったりすれば、もともとの規約違反とは別の紛争を招く可能性があります。

管理組合としては、問題行為を客観的に記録し、自マンションの管理規約と使用細則から根拠を確認したうえで、賃借人へ具体的な是正を求めます。そこで改善しない場合には区分所有者とも情報を共有し、それでも解決が難しければ、問題の段階に応じてマンション管理士や弁護士への相談を検討します。

対応後に実際の生活環境が改善したかまで確認することで、必要以上に問題を大きくすることも、深刻な違反を放置することも避けやすくなります。事実と規約に基づく対応を積み重ね、必要な段階で次の手段へ進むことが、管理組合自身を不要な紛争から守りながらマンションの平穏な共同生活を回復する現実的な方法です。

参考資料

記事の主軸である賃借人への管理規約上の義務、区分所有者との連携、管理組合による是正対応、専門家の役割を確認する際には、次の公的資料が参考になります。

e-Gov法令検索 建物の区分所有等に関する法律

国土交通省 マンション標準管理規約

マンション管理・再生ポータルサイト 令和7年改正マンション標準管理規約 単棟型

国土交通省 マンション管理士について

国土交通省 マンション標準管理委託契約書等の策定・改正

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