マンション管理士

マンションで民泊問題が起きたら 管理組合が確認すべきことと対応手順をマンション管理士の視点で解説

マンション内でスーツケースを引いた見知らぬ人の出入りが増え、深夜の騒音やゴミ出しの乱れまで目立ち始めると、「この住戸で民泊が行われているのではないか」と不安になるでしょう。

理事長や理事であれば、自分自身が気になるだけではありません。居住者から「最近知らない人の出入りが多くて不安です」「夜中まで騒がしいので管理組合で対応してほしい」と相談されれば、何もしないままではいけないという責任も感じるはずです。

だからこそ、焦りから相手を追及したくなることがあります。しかし、マンションの民泊問題で最初に必要なのは、疑わしい住戸の所有者へ強く抗議することではありません。管理規約の内容、行政上必要な手続の状況、実際に発生しているトラブルを切り分け、管理組合として確認できる事実を整理することが初動の中心になります。

スーツケースを持った人が出入りしているからといって、直ちに民泊とは限りません。また、一般に「民泊」と呼ばれていても、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業法に基づく宿泊営業など制度が分かれています。

一方で、行政上必要な手続がされている宿泊営業だからといって、深夜騒音やゴミ出しの問題まで住民が我慢しなければならないわけでもありません。

つまり、管理組合が避けたいのは「民泊らしいから違法だろう」という一足飛びの判断です。

この記事では、民泊制度を網羅的に学ぶことよりも、今まさにマンション内の民泊らしい状況に困っている理事長や理事が、初動を誤らずに進められることを優先します。

制度の違いは必要になった段階で確認すれば構いません。まず何を見るのかを押さえ、そこから事実を積み重ねていくことが、結果として一番迷いの少ない進め方になります。

TABLE OF CONTENTS
目次

結論 管理組合の初動は3点確認と5ステップ

マンション内で民泊が疑われたとき、最初に確認するのは三つです。

一つ目 確認
管理規約 管理規約で対象となる宿泊営業が認められているのか
行政上必要な手続 住宅宿泊事業の届出など必要な行政上の手続がされているのか
実際に発生しているトラブル 騒音やゴミ問題など現実に何が起きているのか

一つ目は、管理規約で対象となる宿泊営業が認められているのかという点です。二つ目は、住宅宿泊事業の届出など必要な行政上の手続がされているのかという点になります。そして三つ目が、騒音やゴミ問題など現実に何が起きているのかという確認です。

この三つを整理したうえで、管理組合の対応は次の順番で進めます。

発見から相談までの流れ 発見 規約確認 事実確認 理事会共有 相談
発見 → 規約確認 → 事実確認 → 理事会共有 → 相談

発見 → 規約確認 → 事実確認 → 理事会共有 → 相談

この流れを最初に覚えておけば、住宅宿泊事業と特区民泊、旅館業法上の営業の違いをすべて理解していない段階でも動き始めることができます。

たとえば、居住者から「毎週末になると違う人が同じ部屋へ入っていく」と相談されたとしても、その場で何の制度による宿泊営業なのかまで特定する必要はありません。

まず現行の管理規約を確認し、どのような出入りがいつから続いているのかを記録します。その内容を理事会で共有した後に、必要であれば自治体へ確認方法を相談すればよいのです。

ここで最も避けたいのは、制度が分からないから何もできないと考えることと、反対に制度を確認しないまま違法だと断定することです。

管理組合が行うのは、行政上の違法性を独自に確定することではありません。まず確認できる事実を整理し、管理規約上の問題については管理組合として方針や必要な対応を検討しながら、行政上の手続に関する問題や具体的な法的紛争については、それぞれ適切な行政機関や専門家と連携して進めていきます。

つまり、管理組合は単に外部へ相談を回すだけの存在ではありません。

規約を確認し、理事会で方針を決め、区分所有者へ説明を求めたり、必要に応じて使用細則や管理規約を見直したりする主体です。その一方で、行政上の違法性や個別の法的権利関係まで自分たちだけで断定しないという線引きが重要になります。

マンションで起こりやすい民泊トラブル

分譲マンションは、専有部分だけで生活が完結する建物ではありません。

エントランス、共用廊下、階段、エレベーター、ゴミ置き場などを多くの人が共有しているため、一つの住戸の使われ方が他の居住者の暮らしへ影響することがあります。

民泊が問題になりやすい理由もここにあります。

短期間で利用者が入れ替わるようになると、そのマンション固有のゴミ出し方法や共用部分の使い方、夜間の静穏、防犯上のルールなどを十分に知らない人が建物を利用する機会が増える可能性があります。

居住者が感じる不安は、単に「知らない人がいるから怖い」という感情だけではありません。

昨日まで顔見知りの住民が行き交っていた廊下で、誰なのか分からない人を頻繁に見かけるようになれば、「オートロックがあるのに誰が建物へ入っているのだろう」「子どもを一人でエレベーターへ乗せても大丈夫だろうか」という心配につながることがあります。

自宅は、本来であれば外から帰って緊張を解ける場所でしょう。そこで人の出入りに神経を使い続ける状態になれば、住み心地そのものが変わったと感じる人が出てくるのも不思議ではありません。

ただし、外国人であることやスーツケースを持っていることは、民泊や違法性を判断する根拠にはなりません。

管理組合が見るべきなのは人物の国籍や外見ではなく、住戸の利用実態と、そこから実際にどのような問題が生じているのかという事実です。

深夜騒音と生活時間のずれ

民泊をめぐる相談で起こりやすいものの一つが、深夜や早朝の騒音です。

午後11時を過ぎてから複数人の大きな話し声が聞こえたり、早朝に大型のキャリーバッグを引く音が共用廊下へ響いたりすれば、周辺住戸の睡眠や日常生活に影響します。

旅行者にとってはチェックインやチェックアウトの一場面でも、隣で生活している居住者にとっては毎日の静けさに関わる問題です。特に同じ状況が何度も続けば、「今夜もまた騒がしくなるのではないか」と帰宅前から身構えるようになることもあるでしょう。

国土交通省の「分譲マンションにおける民泊トラブル対応に関するガイドブック」でも、深夜の大声や大音量の音楽、スーツケースの移動音などが、マンションで起こりやすい民泊トラブルとして挙げられています。

騒音は、その瞬間だけの問題ではありません。

「また始まるかもしれない」という感覚が続けば、自宅で十分に休めないという心理的負担へ変わっていきます。

ゴミ出しルールと衛生環境

マンションでは、ゴミを出せる曜日や時間、分別方法、粗大ゴミの処理方法などについて独自のルールが設けられている場合があります。

短期滞在者へ十分な説明がされていなければ、指定日ではない日に生ゴミが置かれたり、資源ゴミと可燃ゴミが混在したり、処理方法の分からない物が集積所へ残されたりする可能性があります。

ゴミ問題は単なるマナーの問題ではありません。

悪臭や害虫につながれば衛生環境へ影響し、管理員が毎回分別し直すようになれば、日常の管理業務にも余計な負担が生じます。

普段からルールを守って生活している居住者にとっては、「なぜ自分たちが後始末までしなければならないのか」という不公平感も生まれるでしょう。

住宅宿泊事業者には、宿泊者に対してゴミの処理など周辺地域の生活環境への悪影響を防ぐために必要な事項を説明することが求められています。

そのため、住宅宿泊事業として適法に運営されている場合でも、ゴミ問題を放置してよいわけではありません。

オートロックと防犯上の不安

民泊問題で管理組合が特に敏感になりやすいのが、オートロックや鍵の管理です。

暗証番号が多くの利用者へ伝えられているように見えたり、共用部分へ鍵保管用のキーボックスが設置されていたりすると、「防犯のためのオートロックが形だけになってしまうのではないか」と感じる居住者もいます。

短期間に異なる人が同じ住戸へ繰り返し出入りしていれば、管理員や周辺住民が違和感を持つこともあるでしょう。

もっとも、不特定の人が出入りしている状況だけで、その住戸が民泊として使われていると断定することはできません。

親族や友人が訪問している可能性もあれば、通常の賃借人や工事関係者、介護関係者など別の事情も考えられます。

そのため、「怪しい人がいる」という感覚を結論にするのではなく、「どのような利用がどの程度継続しているのか」という確認可能な事実へ置き換える必要があります。

共用部分の汚損と不適切な使用

大型のスーツケースが頻繁に運ばれることで、エレベーターの壁や共用廊下の床が傷ついたり、エントランスへ荷物が長時間置かれたりする場合があります。

また、共用部分の手すりや配管周辺などへキーボックスが設置されていれば、管理規約や使用細則との関係も確認しなければなりません。

ここで注意したいのは、「規約違反に見えるから管理組合で切断してしまおう」と考えることです。

設置場所、所有者、規約、撤去手続などを確認せず処分すれば、所有権や損害をめぐる別の問題につながる可能性があります。

住環境を守るという目的が正しくても、そのために用いる方法まで自動的に正当化されるわけではありません。

火災と避難時の不安

マンションで長く暮らしている居住者であれば、非常階段や避難経路の位置を日常生活の中で自然に覚えていきます。

一方、初めてその建物へ宿泊する人は、火災や地震が発生したときにどちらへ避難すればよいのか分からない場合があります。

住宅宿泊事業法では、宿泊者の安全確保に関する義務と、周辺地域の生活環境への悪影響を防止するための義務が分けて整理されています。

住宅宿泊事業者には、建物の形態や規模などに応じて、非常用照明器具の設置、避難経路の表示その他の安全確保措置が求められます。

ここで「住宅宿泊事業であれば、すべての住宅で同じ設備が必要」と理解しないことが大切です。

国の「民泊の安全措置の手引き」では、家主が同居しているか、宿泊室の面積がどの程度かといった条件によって、非常用照明器具が不要となる場合も整理されています。

これとは別に、周辺生活環境への悪影響を防ぐ観点から、火災の防止に配慮すべき事項を宿泊者へ説明することも求められています。

つまり、「火災防止事項を説明すること」と「避難経路を表示すること」は、同じ義務ではありません。

さらに、市町村の火災予防条例による規制がある地域では、その条例内容についても確認する必要があります。

すべての自治体で同じ追加規制が設けられているわけではないため、所在地に応じた確認が必要です。

こうした防災上の問題も含めると、居住者が民泊へ不安を感じる背景には、静けさ、防犯、衛生、防災という生活の基盤が変わるかもしれないという感覚があります。

管理組合はその気持ちを軽視すべきではありません。

一方で、不安が大きいからこそ、感情そのものを違法性の根拠にせず、確認できる事実へ変えていく必要があります。

初動で確認する3点の詳細

ここからは、冒頭で示した三つの確認事項について、理事会で実際に何を確認するのかを掘り下げます。

制度を完全に理解してから動くのではなく、管理組合が手元で確認できる資料と現場の状況から始めることが基本です。

管理規約で対象となる宿泊営業が認められているか

最初に開くべき資料は、現在効力を持っている管理規約です。

国土交通省が公表しているマンション標準管理規約は令和7年10月17日に改正されており、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業を可能とする場合と禁止する場合の規定例があります。現行版であることは国土交通省の掲載ページでも確認できます。

ここで注意したいのが、従来から多くのマンションで使われている「専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」といった用途規定です。

「専ら住宅として使うと書いてあるのだから、民泊は禁止されているはずです」と考えたくなるかもしれません。

しかし、住宅宿泊事業を認めるのか禁止するのかについては、管理規約上で可否を明確にしておくことが重要です。

そのため、「専ら住宅」という一文だけから一般論として結論を出すのではなく、規約全体や過去の決議を確認する必要があります。

さらに、一般に民泊と呼ばれる宿泊営業は一種類ではありません。

現行の標準管理規約に示されている民泊規定例が明示的に対象としているのは、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業です。

特区民泊が実施可能な地域では、住宅宿泊事業とは別に、特区民泊についても規約上の可否を確認しておいたほうがよいでしょう。

旅館業法の許可を受けて行われる宿泊営業についても、住宅宿泊事業とは別制度です。

したがって、「規約に民泊禁止と書いてあるか」だけを見るのではなく、現在疑われている宿泊営業が規約上の禁止対象に含まれているのかを確認する視点が欠かせません。

現行規約だけでは分からない場合には、過去の総会議事録や理事会議事録も確認します。

以前に住宅宿泊事業や特区民泊について議論したことがあるのか、禁止する方針を決めたことがあるのか、その決議がいつ行われたのかという時系列も整理しておきましょう。

民泊の届出等がされているか

次に確認するのが行政上の手続です。

一般に民泊と呼ばれる宿泊サービスには、住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業、国家戦略特区における特区民泊、旅館業法の許可を受けて行う宿泊営業などがあります。

それぞれ制度が違うため、「民泊なら全部同じ届出をする」と考えるべきではありません。

住宅宿泊事業法に基づく住宅宿泊事業では、都道府県知事等への届出が必要であり、一つの届出住宅について宿泊を提供できる日数には年間180日の上限があります。

ただし、年間180日以内であれば全国どこでも同じ条件で事業を実施できるわけではありません。

自治体によっては条例により住宅宿泊事業を実施できる区域や期間が制限されているため、国の制度とマンション所在地の条例を合わせて確認する必要があります。

「180日を超えていないから適法だろう」と考えてしまうと、自治体独自の制限を見落とす可能性があります。

住宅宿泊事業を営んでいる場合には、届出住宅ごとに標識を掲示する必要があります。共同住宅では個別住戸に加え、共用エントランスや集合ポストなど、公衆が認識しやすい場所への簡素な標識の掲示についても案内されています。

したがって、標識は管理組合が状況を確認するときの有力な材料になります。

もっとも、標識が見つからないという事実だけで無届営業と断定することはできません。

見落としている可能性もあれば、住宅宿泊事業とは別制度による宿泊営業という可能性もあるからです。

観光庁は、住宅宿泊事業については届出番号の記載された標識を確認材料として案内する一方、認定を受けた特区民泊については、各自治体への問い合わせや自治体ホームページで確認する方法を案内しています。

民泊仲介サイトへの掲載を確認できた場合には、その画面も記録しておきます。

確認日時、掲載番号、届出番号等の表示、室内写真の特徴などを残しておけば、後から行政や専門家へ相談するときにも状況を説明しやすくなります。

それでも分からない場合には、所在地を管轄する自治体へ相談します。

ここで「自治体へ聞けば、個別の届出や許可の有無を必ず回答してもらえる」と考えないことも大切です。

観光庁も、特定の行政庁に判断が委ねられる個別事案については、内容によって回答できない場合があると案内しています。

情報公開や問い合わせ対応は自治体によって異なるため、「この所在地ではどのような確認方法があるのか」「無届等が疑われる場合には何を整理してどこへ相談すればよいのか」という形で尋ねるほうが実務的でしょう。

実際にどんなトラブルが起きているか

三つ目は、現実に起きていることの記録です。

「最近うるさい」「旅行者らしい人が多い」という印象のままでは、行政や専門家へ相談したときに状況を具体的に説明できません。

騒音であれば、「8月15日午後11時30分ごろから約25分間、対象住戸付近と共用廊下で複数人の大きな話し声が続いた」というように、日時、場所、内容、継続時間を記録します。

ゴミ問題であれば、いつ、どこに、どのような状態でゴミが置かれていたのかを残します。

必要な範囲で写真を撮影する場合も、管理規約や個人情報の取扱いを確認したうえで行うことが大切です。

人の出入りについても、一度スーツケースを持つ人物を見たという情報と、同じ住戸へ数日おきに異なる人物が繰り返し出入りしているという情報では意味が異なります。

管理組合が集めるのは「怪しい人物の情報」ではなく、「どのような利用がどの程度続いているのか」という事実です。

ただし、証拠を集めようとして宿泊者と思われる人物を尾行したり、専有部分をのぞき込んだりする必要はありません。

管理組合が行うのは捜査ではなく、管理規約の運用や共用部分の管理に必要な範囲での事実確認です。

管理組合の民泊対応5ステップ

三つの確認事項を把握したら、実際の行動を五つの段階へ分けます。

ここでは制度の説明を繰り返すのではなく、「それぞれの段階で何を終わらせれば次へ進めるのか」という実務の流れに絞って整理します。

管理組合の民泊対応5ステップ 発見段階では結論を出さない 規約確認では対象となる制度を意識する 事実確認では未確認事項も残す 理事会共有では事実と評価を分ける 相談段階では目的ごとに相談先を分ける
三つの確認事項を把握したら、実際の行動を五つの段階へ分けます。

発見段階では結論を出さない

居住者からの苦情、管理員からの報告、共用部分の状況などから「民泊かもしれない」という情報を把握した段階では、まだ結論を出しません。

必要なのは、誰が、いつ、どのような状況を確認したのかを残すことです。

最初の記録が曖昧なままだと、その後も「たしか何度も見た」「以前からそうだったと思う」という記憶だけで議論することになります。

初動の時点から事実を記録する習慣が、その後の対応を支えます。

規約確認では対象となる制度を意識する

現行の管理規約と使用細則を確認し、住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業法上の宿泊営業などについて、どこまで明確な規定があるのかを整理します。

この段階で実際の営業制度まで完全に特定できなくても構いません。

少なくとも「住宅宿泊事業は禁止されているが、特区民泊については明記されていない」といった形で、現時点で分かっていることを示せれば次へ進めます。

事実確認では未確認事項も残す

標識、仲介サイト、出入りの状況、騒音、ゴミ問題などを確認します。

ここで大切なのは、確認できたことだけを記録するのではなく、分からなかったこともそのまま残すことです。

「住宅宿泊事業の標識は確認できない」「仲介サイトの掲載物件と対象住戸が同一かは確定していない」という状態であれば、そのまま記載します。

分からない部分を想像で埋めないことが、誤った判断を避けることにつながります。

理事会共有では事実と評価を分ける

情報がある程度まとまったら、理事長一人で抱え込まず理事会へ共有します。

その際、「○号室は違法民泊をしています」と評価から入るのではなく、「○月○日からこのような出入りと騒音が確認され、住宅宿泊事業を禁止する規約はある一方、実際の営業形態と行政上の手続については確認できていない」という形で説明します。

事実と評価を分けることで、理事会内でも感情的な議論になりにくくなります。

相談段階では目的ごとに相談先を分ける

理事会で状況を整理した後は、管理会社、自治体、マンション管理士、弁護士、必要に応じて警察へ相談します。

相談先を決める基準は、「民泊だから誰に相談するか」ではありません。

現場の情報を整理したいのか、届出等の制度を確認したいのか、規約を見直したいのか、法的な差止めを検討したいのかという目的で分けます。

この五段階を意識すれば、最初から所有者へ強く迫って話をこじらせる可能性を減らせます。

管理組合の民泊対応をケース別に整理

ここからは、三点の確認を行った結果に応じて対応を分けます。

同じように旅行者らしい人が出入りしている状況でも、規約上の扱い、行政上の手続、実際の迷惑行為によって次に行うことは変わります。

ここでも「民泊」という総称だけで判断せず、規約が何を対象にしているのか、必要な行政手続が何なのかを分けて考えることが大切です。

規約上禁止され必要な行政手続も確認できないケース

このケースで最初に確認したいのは、現在疑われている宿泊営業が管理規約上の禁止対象になっていることです。

住宅宿泊事業が疑われているのであれば、住宅宿泊事業が規約上禁止されているかを確認します。

特区民泊が疑われる地域であれば、住宅宿泊事業の禁止規定だけを見て「特区民泊も当然禁止」と判断せず、特区民泊について規約上どのように扱われているのかを別途確認します。

旅館業法上の営業についても、住宅宿泊事業とは別制度です。

対象となる宿泊営業が管理規約上禁止されており、さらに必要な届出、認定、許可等も管理組合では確認できない場合には、規約違反と行政上の無届や無許可等の双方が疑われる状況になります。

ただし、管理組合で確認できないことと、行政上の違法営業が確定したことは同じではありません。

この段階では、対象住戸、出入りの日時、実際のトラブル、標識、仲介サイトなどの情報を整理したうえで、所在地を管轄する行政窓口へ確認方法や無届等が疑われる場合の対応を相談します。

法的な手続を経ず宿泊サービスを提供している事象を見つけた場合について、観光庁は保健所への連絡を案内しています。

管理組合から区分所有者へ事情の説明や是正を求める場合にも、確認できていない段階から「違法民泊を直ちに停止してください」と断定するより、管理規約の内容と現在確認している事実を示して説明を求めるほうが適切な場合があります。

正式な警告、差止請求、損害賠償、訴訟などへ進む場合には個別の法的判断が必要になるため、弁護士への相談が必要でしょう。

また、所有者自身が宿泊営業を行っているとは限りません。

所有者は通常の賃貸借をしているだけで、その賃借人が所有者に知らせず短期転貸をしている可能性もあります。

そのため、所有者から「私は民泊をしていません」と説明された場合も、その回答だけを理由に確認を終了せず、他の事実と整合するかを見る必要があります。

規約上認められているが必要な行政手続を確認できないケース

管理規約で住宅宿泊事業が認められている場合でも、必要な行政上の手続まで不要になるわけではありません。

このケースでは、規約違反の問題よりも、対象となる宿泊営業に必要な届出、認定、許可等がされているかという確認が中心になります。

住宅宿泊事業の標識や届出番号等が確認できず、短期滞在者と思われる人の出入りが繰り返されているのであれば、管理組合で確認した事実を整理して自治体へ相談します。

ここでも、管理組合が「無届営業だ」と独自に認定するのではなく、「必要な手続を確認できていないため、確認方法や対応について相談したい」という形でつなぐことが適切です。

行政への相談などを通じて住宅宿泊事業法上の届出住宅であることが確認できた場合には、次に騒音やゴミなど実際の利用上の問題が残っているかを見ていきます。

一方、管理組合として今後は住宅宿泊事業を禁止する方針へ変更したい場合には、管理規約の改正を検討します。

住宅宿泊事業法上の届出民泊については、観光庁のFAQで、届出後に管理規約が改正されて住宅宿泊事業の実施が禁止された場合には、事業を実施できなくなり、管理組合と調整しながら自治体へ事業廃止の届出を行う必要があると明示されています。

したがって、「規約改正前から住宅宿泊事業をしていたのだから、その後も当然に継続できる」と考えるのは適切ではありません。

ただし、この取扱いを特区民泊や旅館業法上の営業へそのまま当てはめることはできません。

特区民泊は認定制度、旅館業法上の営業は許可制度であり、住宅宿泊事業法とは異なる制度です。

管理規約改正後の扱いを検討するときには、それぞれの制度と規約の内容を切り分けて確認する必要があります。

規約と行政手続に問題はないが騒音などが発生しているケース

管理規約上も対象となる宿泊営業が認められ、必要な行政上の手続も行われている場合であっても、騒音やゴミ問題が発生することがあります。

このケースで管理組合が考えるべきなのは、「民泊そのものを止めさせること」ではなく、現実に発生している迷惑行為を改善することです。

行政上適切な手続を経た宿泊営業だからといって、居住者が深夜騒音やゴミ問題をすべて我慢しなければならないわけではありません。

住宅宿泊事業者には、周辺地域の住民から寄せられた苦情や問い合わせへ適切かつ迅速に対応することが求められています。

また、一つの届出住宅の居室数が5を超える場合や、宿泊者がいる間に一定の不在となる場合などには、住宅宿泊管理業者への管理業務の委託が必要となります。

管理組合から事業者や管理業者へ連絡するときには、「最近いつもうるさい」という抽象的な伝え方より、「8月15日午後11時30分から約25分間、対象住戸付近で複数人の大きな話し声が続いた」と具体化したほうが、改善を求める内容も明確になります。

その後も同じ問題が続くのであれば、発生日、事業者へ連絡した日時、どのような回答があり、その後改善したのかという経過を記録します。

改善が見られない状態が続く場合には、整理した記録を持って自治体へ相談します。

なお、暴力、恐喝、窃盗、器物損壊、不法侵入など犯罪の疑いがある場合には扱いが異なります。

緊急性がある場合には、通常の理事会手続を待たず警察への連絡を検討してください。

管理組合がやってはいけない民泊対応

民泊問題では、慎重に確認している間にも住民から苦情が寄せられることがあります。

理事長としては「これだけ困っている人がいるのに、調査ばかりしていてよいのだろうか」と迷うこともあるでしょう。

しかし、迅速に動くことと、確認を飛ばして強引に動くことは同じではありません。

初動で相手との関係をこじらせれば、その後の説明や是正を求める場面まで難しくなる可能性があります。

違法民泊と断定して公表しない

十分な事実確認ができていない段階で、「○○号室では違法民泊が行われています」と館内掲示や回覧文書で公表することは避けるべきです。

事実と異なっていた場合には、名誉やプライバシーをめぐる別の紛争へ発展する可能性があります。

住民への周知が必要な場合でも、「現在、管理規約と利用状況について確認を進めている」というように、確認済みの事実を超えて断定しない表現を検討します。

宿泊者と思われる人へ直接退去を迫らない

エントランスで旅行者らしい人を見つけ、その場で強く退去を迫ることにも注意が必要です。

その人物が有料宿泊者なのか、区分所有者の家族や知人なのか、その場では分からない場合があります。

言葉が十分に通じない状況で強い態度を取れば、意図しない対立へ発展する可能性もあるでしょう。

緊急の危険が生じていないのであれば、区分所有者や事業者を通じて事実確認や改善を進めることが基本です。

キーボックスなどを独断で処分しない

共用部分へ無断で設置されたと思われるキーボックスがあれば、「すぐに切断して撤去したい」と考える人もいるでしょう。

しかし、所有者や設置場所、管理規約、使用細則、撤去手続を確認せず処分すれば、別の権利問題につながる可能性があります。

同様に、対象住戸の鍵穴を塞いだり、電気や水道を意図的に停止したりするような強硬な対応についても慎重でなければなりません。

管理組合が住環境を守るという目的を持っていても、手続を無視した方法まで当然に認められるわけではありません。

理事長一人で抱え込まない

責任感の強い理事長ほど、所有者への確認、管理会社への依頼、自治体への相談まで一人で進めてしまうことがあります。

しかし、その状態では他の理事が経過を把握できず、相手方からも「管理組合との問題」ではなく「理事長個人との問題」と受け取られる可能性があります。

確認した事実や今後の方針は理事会で共有し、必要な決議と記録を残しながら組織として進めてください。

組織として対応することは相手へ圧力をかけるためではなく、理事長や理事自身を守ることにもつながります。

実務で起こりやすい民泊対応の失敗

民泊対応では、大きな判断ミスよりも、小さな確認を省略したことが後になって問題を複雑にする場合があります。

特に「一応確認したから大丈夫」と思った場面ほど、別の情報と照らし合わせる視点が必要です。

所有者の説明だけで確認を終える

居住者から「特定の住戸へ毎日のように違う旅行者らしい人が出入りしている」という相談があったため、理事会が所有者へ事情を確認したとします。

所有者から「普通に賃貸しているだけで、自分は民泊をしていません」と説明されれば、理事会としては少し安心するでしょう。

その説明が正しい可能性も十分にあります。

しかし、所有者の回答だけを理由に確認を終了すると、賃借人が所有者に知らせず短期転貸を行っているようなケースを見落とす可能性があります。

ここで必要なのは、所有者を最初から疑うことではありません。

所有者の回答も一つの情報として記録し、標識、仲介サイトへの掲載、実際の出入り、管理組合が保有する入居関係書類などと照合します。

登記事項証明書を取得すれば登記上の所有者等を確認できますが、通常の賃借人が必ず記載されているわけではありません。

資料ごとに何を確認できるのかを理解して使うことが大切です。

民泊の適法性と騒音問題を混同する

「民泊だからうるさい」という一言で議論を進めると、対応すべき論点がぼやけます。

管理規約上認められているか、行政上必要な手続がされているか、現実に騒音やゴミ問題が生じているかは、それぞれ別の問題です。

これらを分けることで、「住宅宿泊事業は規約上可能だが行政上の手続について確認が必要」「行政上の手続に問題はないが騒音への改善対応が必要」といった形で次の行動が明確になります。

管理会社へ問題全体を丸投げする

管理会社へ「民泊のようなので全部対応してください」と伝えても、期待したように進まない場合があります。

これは必ずしも管理会社が消極的だからではありません。

管理委託契約で定められている業務範囲と、管理組合が期待している対応が一致していないことがあるためです。

過去の総会議事録の確認、管理員からの情報整理、共用部分の現状確認、理事会で決定した文書の掲示など、管理会社へ依頼したい内容を具体化したほうが進みやすくなります。

相談や交渉の記録を残さない

民泊問題が長引けば、管理組合は自治体、管理会社、区分所有者、専門家など複数の相手と連絡することになります。

その内容を記録していなければ、数か月後に「自治体へ何を相談したのか」「区分所有者へどこまで確認したのか」が分からなくなることがあります。

理事が交代すれば、同じ調査を最初からやり直すことにもなりかねません。

相談日、相談先、伝えた内容、回答、次に確認する事項を残しておけば、対応経験をそのときの理事長の記憶で終わらせず、管理組合の知識として引き継ぐことができます。

管理会社と行政とマンション管理士への相談の使い分け

民泊問題では、一つの相談先ですべてを解決しようとしないことが大切です。

管理会社、行政、警察、マンション管理士、弁護士には、それぞれ異なる役割があります。

相談先 役割
管理会社 現場管理と管理実務
行政 制度上の確認方法と無届等の相談
警察 犯罪の疑いと緊急性
マンション管理士 規約と管理組合運営
弁護士 具体的な法的紛争

管理会社は現場管理と管理実務

管理会社は、日常のマンション管理に最も近い立場です。

管理員が把握している状況、居住者から寄せられた苦情、共用部分の状態、過去の議事録などを整理するときには重要な相談先になります。

ただし、どこまで対応する義務があるかは管理委託契約によって異なります。

問題全体を任せるのではなく、確認してほしい資料や依頼したい業務を具体化したほうがよいでしょう。

行政は制度上の確認方法と無届等の相談

住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業法上の営業について、必要な届出、認定、許可等に疑問がある場合には、所在地を管轄する行政窓口へ相談します。

管理組合から伝えるべきなのは、「違法民泊だから取り締まってほしい」という結論だけではありません。

対象住戸、確認日時、住宅宿泊事業の標識の有無、仲介サイトへの掲載状況、騒音やゴミ問題など、管理組合で確認できた事実を整理して伝えます。

個別情報についてどこまで回答してもらえるかは自治体や制度によって異なるため、「どのような確認方法があるのか」「無届等が疑われる場合に何を伝えればよいのか」と相談する形が現実的です。

警察は犯罪の疑いと緊急性

警察は、管理規約上民泊が禁止されているかどうかを判断してもらうための窓口ではありません。

一方、暴力、恐喝、窃盗、器物損壊、不法侵入など犯罪の疑いがある場合には警察への相談が必要です。

現在進行形で危険が生じている場合にまで、通常の理事会手続を優先する必要はありません。

マンション管理士は規約と管理組合運営

マンション管理士へ相談する場面は、現行規約の整理、使用細則の見直し、理事会の対応手順、総会での合意形成などを検討するときです。

民泊問題では、理事の中でも「全面禁止にしたい」「適法なら認めてもよい」「現在の規約ですでに禁止されているはずだ」と意見が分かれる場合があります。

同じ民泊について話しているようで、規約の解釈、将来の方針、現在の迷惑行為という異なる問題が混ざっている状態です。

マンション管理士には、こうした論点を分け、管理組合として何を確認し何を決める必要があるのかを整理する役割があります。

弁護士は具体的な法的紛争

相手方との代理交渉、差止請求、損害賠償請求、仮処分、訴訟などへ進む場合には弁護士へ相談します。

個別の法的判断では、管理規約の内容だけでなく、宿泊営業の種類、利用実態、事業開始時期、これまでの通知、被害状況などが関係します。

したがって、「この条文なら必ず止められる」「このケースなら確実に退去させられる」といった一般化は避けなければなりません。

マンション管理士と弁護士は競合する存在ではなく、管理組合運営の整理と具体的な法的紛争で役割を分けて連携することもできます。

マンション管理士に依頼できる民泊対策

マンション管理士へ依頼できることは、管理規約の一条文を確認するだけではありません。

現在の管理規約と使用細則を確認し、住宅宿泊事業の可否がどのように定められているのかを整理します。

特区民泊が可能な地域であれば、その扱いも確認します。

旅館業法上の宿泊営業まで規制したいのであれば、現在の用途規定との関係も検討する必要があります。

さらに、過去の総会や理事会でどのような決議をしてきたのかを確認し、現在のトラブルが規約上の問題なのか、行政上の手続の問題なのか、生活上の迷惑行為なのかを分けることも大切です。

管理規約を改正するときには、条文案だけでなく、区分所有者へなぜ改正が必要なのかを説明し、総会で合意を形成する過程もあります。

国土交通省が現在公表しているマンション標準管理規約は令和7年10月17日改正版であり、改正区分所有法の施行を踏まえた内容になっています。

過去に作成されたインターネット記事や古い資料だけを参考にせず、実際に規約改正へ進むときは現在の法令と自マンションの規約を照合する必要があります。

また、民泊を認めるマンションでは、禁止することだけが対策ではありません。

ゴミ出し、夜間の騒音、共用部分の利用、鍵の取扱い、緊急連絡先などについて使用細則を具体化し、事業者や宿泊者へ周知できる状態を作ることも重要な民泊対策になります。

専門機関への相談時に用意する資料チェックリスト

行政、マンション管理士、弁護士などへ相談するときは、証拠がすべて揃うまで待つ必要はありません。

むしろ、分かっていることと分かっていないことを整理した状態で相談するほうが、次に何を確認すればよいのか判断しやすくなります。

可能な範囲で次の資料や情報を準備しておくとよいでしょう。

確認 資料や情報
1現行の管理規約全文
2現行の使用細則と関連規程
3民泊に関係する過去の総会議事録
4民泊に関係する過去の理事会議事録
5対象となっている住戸番号
6必要に応じて取得した登記事項証明書
7管理組合が保有する区分所有者や占有者の届出情報
8騒音やゴミ問題が発生した日時と具体的内容
9居住者から寄せられた苦情や相談の記録
10規程に従って確認した防犯カメラ等の記録
11キーボックスや共用部分の状況を確認できる写真
12民泊仲介サイトの掲載画面と確認日時
13届出番号や標識を確認できた場合の記録
14区分所有者や事業者へ連絡した場合の内容と日時
15管理会社へ依頼した内容と回答
16自治体へ相談した場合の相談日時と回答内容
  • 現行の管理規約全文
  • 現行の使用細則と関連規程
  • 民泊に関係する過去の総会議事録
  • 民泊に関係する過去の理事会議事録
  • 対象となっている住戸番号
  • 必要に応じて取得した登記事項証明書
  • 管理組合が保有する区分所有者や占有者の届出情報
  • 騒音やゴミ問題が発生した日時と具体的内容
  • 居住者から寄せられた苦情や相談の記録
  • 規程に従って確認した防犯カメラ等の記録
  • キーボックスや共用部分の状況を確認できる写真
  • 民泊仲介サイトの掲載画面と確認日時
  • 届出番号や標識を確認できた場合の記録
  • 区分所有者や事業者へ連絡した場合の内容と日時
  • 管理会社へ依頼した内容と回答
  • 自治体へ相談した場合の相談日時と回答内容

すべて揃わなくても構いません。

「住宅宿泊事業の標識は未確認」「住宅宿泊事業なのか特区民泊なのか分からない」「登記上の所有者は確認できたが実際の占有者は分からない」という状態も、そのまま記録してください。

分からない部分を推測で補わないことも、正確な事実整理の一部です。

再発防止として管理規約と使用細則を確認する

目の前のトラブルが収まると、「ようやく終わった」と感じる理事もいるでしょう。

住民からの苦情が減り、旅行者らしい人の出入りも見えなくなれば、もうこの問題について考えたくないという気持ちが出てくることもあります。

しかし、半年後に別の住戸で同じ問題が起きたとき、再び「そもそも民泊は禁止されているのか」というところから議論を始めるのであれば、今回の経験が管理組合の仕組みとして残っていません。

再発防止では、今回分かった問題を管理規約と使用細則へ反映し、同じ状況が起きたときでも一定の手順で対応できる状態を作ることが大切です。

再発防止で確認する内容 住宅宿泊事業と特区民泊の 可否を明確にする 規約改正は現在の法令に沿って 進める 使用細則で生活ルールを 具体化する キーボックス規制は 撤去手続まで考える 調査費用や弁護士費用の扱いは 慎重にする
再発防止では、今回分かった問題を管理規約と使用細則へ反映し、同じ状況が起きたときでも一定の手順で対応できる状態を作ることが大切です。

住宅宿泊事業と特区民泊の可否を明確にする

現在の管理規約が「専ら住宅として使用する」という一般的な用途規定だけであれば、住宅宿泊事業を認めるのか禁止するのかを改めて検討する価値があります。

特区民泊が可能な地域では、住宅宿泊事業とは別に特区民泊についても可否を明らかにしておくことが望ましいでしょう。

旅館業法に基づく宿泊営業まで規制したいのであれば、その対象範囲についても別途検討します。

「民泊禁止」とだけ書けば十分だろうと考えるのではなく、何を禁止対象にするのかを明確にすることが実務上は重要です。

規約改正は現在の法令に沿って進める

規約を改正するときは、禁止条項の内容だけでなく、総会の招集や決議に現在どのルールが適用されるのかも確認します。

国土交通省の現行ページでは、令和7年10月17日改正版のマンション標準管理規約が掲載され、改正区分所有法が令和8年4月1日から施行されることを踏まえた改正であると説明されています。

以前の資料に記載された決議要件や規約例をそのまま使用せず、現在の法令と自マンションの管理規約を照合することが必要です。

さらに、規約改正は強い禁止文言を書くことだけが目的ではありません。

なぜ見直しが必要なのかを区分所有者へ説明し、どのような住環境を維持したいのかについて合意を形成するところまで含まれます。

使用細則で生活ルールを具体化する

住宅宿泊事業を認めるマンションでは、使用細則による具体的なルール整備が特に重要です。

「他の居住者へ迷惑をかけないこと」という抽象的な規定だけでは、事業者も宿泊者も何を守ればよいのか分かりません。

夜間の騒音、ゴミの処理方法、共用部分での行為、鍵やオートロックの扱い、緊急時の連絡方法などを具体化します。

外国人宿泊者が想定される場合には、多言語や図を使って案内する方法も考えられるでしょう。

事業者側が宿泊者へ説明すべき事項と、マンション固有のルールが明確になれば、問題が発生した後に注意するだけでなく、そもそもトラブルを起こしにくくすることにもつながります。

キーボックス規制は撤去手続まで考える

キーボックスを共用部分へ設置させたくない場合には、その可否を使用細則で整理する方法があります。

しかし、禁止と書くだけでは実際に設置されたときの対応が分かりません。

誰へ通知するのか、いつまでに自主撤去を求めるのか、所有者が分からない場合にどうするのか、撤去後に一定期間保管するのかといった手続まで検討する必要があります。

発見次第破壊して処分できるという強い規定を安易に設けるより、実際に安全に運用できる手続を作るほうが大切です。

調査費用や弁護士費用の扱いは慎重にする

規約違反への対応で調査費用や弁護士費用が発生すれば、「違反した区分所有者へすべて負担させたい」と感じることもあるでしょう。

管理費を使って対応している以上、その感情は理解できます。

しかし、どの費用をどの条件で請求できるかは、管理規約と具体的な事案によって異なります。

「違反した場合は必ず全額請求できる」と断定するのではなく、実際の規約と事案に即して専門家へ確認することが必要です。

管理規約は相手を威圧するための文書ではありません。

問題が起きたときに、役員が感情だけで判断せず、共通の手順に従って対応できるようにするための基盤です。

マンション民泊問題のよくある質問

管理規約に専ら住宅として使用するとだけ書かれていれば民泊は禁止ですか

「専ら住宅として使用する」という文言だけから、住宅宿泊事業が禁止されていると一般論として断定することは避けたほうがよいでしょう。

住宅宿泊事業を認めるのか禁止するのかについては、管理規約上で可否を明確にしておくことが重要です。

現行規約だけではなく、使用細則や過去の総会議事録、理事会議事録も確認し、個別マンションの規約やこれまでの経緯を踏まえて検討する必要があります。

管理規約に民泊について何も書いていない場合はどうすればよいですか

まず、現行規約と過去の総会議事録や理事会議事録を確認してください。

住宅宿泊事業について管理規約に定めがない場合、観光庁FAQでは、管理組合に住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認できる書類が届出との関係で必要になると案内されています。

そのうえで、住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業法上の営業のうち、どの制度が問題になっているのかを整理していきます。

現時点で制度を特定できなくても、規約と実際の利用状況の確認は始められます。

管理組合として今後宿泊営業を認めるのか禁止するのかを明確にしたい場合には、必要な規約改正も検討します。

民泊の届出があるか管理組合で確認できますか

住宅宿泊事業の場合には、掲示される標識が重要な確認材料になります。

住宅宿泊事業者には届出住宅ごとに標識を掲示する義務があり、共同住宅については個別住戸だけでなく共用エントランス等への簡素な標識についても案内されています。

自治体によっては届出住宅等に関する情報を確認できる場合もありますが、その公開方法や範囲は一律ではありません。

したがって、「自治体へ問い合わせれば必ず個別の届出の有無を回答してもらえる」と考えず、所在地を管轄する自治体へ確認方法や相談手順を問い合わせることが適切です。

特区民泊や旅館業法上の営業については制度が異なるため、住宅宿泊事業の標識だけで判断しないようにしてください。

管理会社が動いてくれない場合はどうしますか

最初に管理委託契約を確認し、管理会社がどこまで対応する業務になっているのかを整理します。

「民泊を解決してください」と問題全体を任せるのではなく、過去の議事録の確認、共用部分の状況確認、管理員からの情報整理、理事会で決定した文書の掲示など、具体的な業務に分けて依頼すると進みやすくなります。

制度上の問題については自治体、規約や管理組合運営についてはマンション管理士、具体的な法的紛争については弁護士というように、相談先を使い分けることも必要です。

マンション管理士と弁護士のどちらに相談すべきですか

管理規約や使用細則の確認、初動手順、規約改正、総会での合意形成など、管理組合運営を中心に整理したい場合にはマンション管理士への相談が考えられます。

一方、差止請求、損害賠償請求、仮処分、訴訟、相手方との代理交渉などを検討する段階では弁護士への相談が必要です。

どちらか一方だけを選ばなければならないわけではありません。

マンション管理士と規約や事実関係を整理し、具体的な紛争処理が必要になった部分を弁護士へつなぐ方法もあります。

まとめ

マンションで民泊らしい状況が生じたとき、管理組合が最初から住宅宿泊事業、特区民泊、旅館業法の制度をすべて理解している必要はありません。

まず確認したいのは、管理規約、行政上の手続、実際のトラブルの三点です。

管理組合が確認する三点 管理規約 行政上の手続 実際のトラブル 発見 → 規約確認 → 事実確認 → 理事会共有 → 相談
まず確認したいのは、管理規約、行政上の手続、実際のトラブルの三点です。

そのうえで、発見 → 規約確認 → 事実確認 → 理事会共有 → 相談という順番で進めます。

居住者から強い不安を訴えられれば、理事長や理事が早く何とかしたいと感じるのは自然でしょう。

それでも、焦って相手を追及するより、確認できる事実を一つずつ揃えるほうが、その後の行政相談や是正対応を進めやすくなります。

管理組合は、単に問題を行政や専門家へ引き渡すだけではありません。

自分たちの管理規約を確認し、理事会で方針を決め、必要に応じて区分所有者へ説明や改善を求め、再発防止のために管理規約や使用細則を見直していく主体です。

一方で、行政上の違法性や個別の法的権利関係を管理組合だけで断定せず、必要な部分は行政や弁護士などへつなぐという線引きも必要になります。

まず小さく実践するなら、現行の管理規約を開き、住宅宿泊事業についてどのような定めがあるのかを確認してください。

同時に、現在起きている騒音やゴミ問題、出入りの状況を日時と内容に分けて記録します。

そこまで整理できれば、「民泊かもしれない」という漠然とした不安は、次に何を確認し、誰へ相談すればよいのか考えられる具体的な課題へ変わっていきます。

対応後には、苦情が減ったのか、同じ問題が繰り返されていないか、理事会の対応手順が機能したのかも振り返ってください。

民泊対策で本当に残したいのは、特定の住戸へ一度注意したという結果だけではありません。

問題を発見したときに規約と事実を整理し、理事会で共有し、管理組合自身で対応すべきことと、行政や専門家へ相談すべきことを切り分けられる仕組みを残すことが、マンションの住環境と居住者の安心を長く守ることにつながるのではないでしょうか。

参考資料

記事の主軸となる管理組合の初動対応については、国土交通省の「分譲マンションにおける民泊トラブル対応に関する情報」が基本資料になります。

国土交通省 分譲マンションにおける民泊トラブル対応に関する情報

管理規約における住宅宿泊事業の可否や現行の標準管理規約を確認する場合は、次の資料を参照してください。

国土交通省 マンション標準管理規約

住宅宿泊事業の届出、管理規約に定めがない場合の取扱い、規約改正後の事業廃止などについては、観光庁のFAQが参考になります。

観光庁 民泊制度ポータルサイト よくあるご質問

住宅宿泊事業者の標識掲示について確認する場合は、次の案内を参照してください。

観光庁 民泊制度ポータルサイト 標識の掲示

特区民泊や住宅宿泊事業の確認方法、違法な宿泊営業が疑われる場合の相談については、次の案内が参考になります。

観光庁 民泊制度ポータルサイト 安心できる民泊環境

観光庁 民泊制度ポータルサイト 近隣にお住まいの方

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