行動経済学

属性フレーミングとは? 具体例からわかる3類型の違いと見分け方

「満足度97%」と聞くと、多くの人が選んでいるのだから安心できそうだと感じる一方、「不満足度3%」と聞けば、わずかな数字であっても、その3%では何が起きたのだろうと気になることがあります。数字としては互いに対応しているにもかかわらず印象が変わるのは、私たちが情報を単なる数値として処理するだけではなく、そこに添えられた言葉から品質や危険性、自分が経験するかもしれない未来まで想像しているからです。

このように、同じ対象が持つ同じ属性を肯定的な側面から表現するか、否定的な側面から表現するかによって、その対象への評価が変化する現象を「属性フレーミング」と呼びます。

ただし、言い方によって印象が変わる現象のすべてが属性フレーミングに当てはまるわけではありません。フレーミング効果には、属性フレーミングのほかにゴールフレーミングとリスク選択フレーミングがあり、「2000mgと2g」のように単位を変えることで数値の印象が変わる現象は、unit effectやnumerosity effectと呼ばれる別の研究領域に近い問題です。

一見すると、どれも「同じ内容を別の言い方で示して印象が変わる現象」に見えるため、区別しにくいかもしれません。しかし、表面の言葉ではなく、読み手が何を評価し、何を選び、どのような行動を求められているのかを見ると、三つのフレーミングはかなり明確に分けられます。

この記事では、典型的な研究例から属性フレーミングの意味を理解したうえで、日常にある具体例、似ている現象との境界、ゴールフレーミングやリスク選択フレーミングとの違いへ進みます。読み終えたときには、「これは属性フレーミングなのか、それとも別の現象なのか」を言葉の雰囲気だけで判断せず、情報の構造から判別できる状態を目指します。

TABLE OF CONTENTS
目次

属性フレーミングとは

属性フレーミングとは、製品、サービス、人物、出来事などが持つ一つの属性について、論理的に対応する情報をポジティブな側面から示すか、ネガティブな側面から示すかによって、その対象への評価が変化する現象です。

たとえば、あるサービスの利用者100人のうち97人が満足し、3人が不満を感じていたとします。この同じ調査結果は、次の二通りで表現できます。

「利用者の97%が満足しています」

「利用者の3%が不満を感じています」

二つの数字が同じ調査結果から算出されているなら、サービスの状態そのものは変わっていません。それでも前者を見た人は、「ほとんどの人が満足しているなら、自分も大きく失敗することはなさそうだ」と安心するかもしれません。

一方、後者を見れば、「その3%は何に不満だったのだろう」「自分の使い方だと、その3%に入るのではないか」と問題点へ注意が向くことがあります。数字は同じでも、読み手の頭の中で最初に開く扉が違うため、そこから続く想像まで変わるのです。

変わっているのは客観的な比率ではありません。同じ属性のどちら側を前面に出すかによって、その対象を見る心理的な入口が変化しています。

Irwin P. Levin、Sandra L. Schneider、Gary J. Gaethは1998年のレビュー論文で、肯定的・否定的な表現によって生じるフレーミング効果を、リスク選択フレーミング、属性フレーミング、ゴールフレーミングという三つの類型に整理しました。そこで属性フレーミングは対象や出来事の特徴に対する評価、ゴールフレーミングはコミュニケーションの説得力、リスク選択フレーミングはリスクを取る意思決定への影響として区別されています。

したがって、属性フレーミングを見分ける際に、「ポジティブな表現が使われているから属性フレーミングだ」と考えるだけでは不十分でしょう。

同じ対象の同じ属性を、肯定側と否定側から言い換えているか。

まず確認したいのは、この構造です。

同じ対象の同じ属性 肯定側 否定側 その対象への評価
同じ対象の同じ属性を、肯定側と否定側から言い換えているか。

属性フレーミングが起こる心理的な背景

言葉は数字だけでなく連想も運んでいる

属性フレーミングを「人は数字に弱いため、言葉を変えるだけで簡単に騙される現象」と理解すると、本質を取り逃がしてしまいます。私たちは文章を読むとき、数字や単語をそれぞれ独立した記号として処理しているわけではなく、それまでの経験や知識と結び付けながら意味を受け取っているからです。

「満足」という言葉を見れば、安心、高品質、良い経験、期待に応えてもらえた利用者などが思い浮かぶ人もいるでしょう。反対に「不満」という言葉を見ると、失望、欠点、トラブル、後悔といった方向へ意識が向き、「自分にも同じことが起きるのではないか」と考える人がいるかもしれません。

「成功」と「失敗」、「赤身」と「脂肪」、「良品」と「不良」でも似たことが起こります。数学的には対応する数字であっても、そこに付けられた言葉が違えば、その情報に触れた瞬間に呼び起こされるイメージまで完全に同じになるとは限りません。

Levinらは三類型に異なる心理過程が関係すると論じており、属性フレーミングについては、肯定的なフレームによってより好意的な評価へ、否定的なフレームによってより否定的な評価へ動く「価数と一致したシフト」が多くの研究で整理されています。ただし、どの対象でも同じ強さの効果が生じるわけではなく、条件によって効果が小さくなったり、明確な差が確認されなかったりすることもあります。

ある人がスーパーで牛ひき肉を選んでいる場面を考えると、この感覚はつかみやすいでしょう。「赤身75%」と書かれていれば、最初に目へ入るのは赤身の多さであり、比較的健康的な商品や脂肪の少ない肉を連想するかもしれません。

ところが、同じ商品に「脂肪25%」と表示されていた場合、今度は脂肪の存在が意識へ上がり、「4分の1は脂肪なのか」「思っていたより多いかもしれない」と感じる人がいるでしょう。計算すれば両者が対応していることは分かりますが、買い物のたびに表示を数式へ置き換え、そこから最初に生じた印象まで完全に消しているわけではありません。

言葉は情報を伝えるだけではなく、その情報をどこから眺めるかという枠まで同時に与えています。

代表研究と医療分野の関連研究

属性フレーミングを正確に理解するためには、典型的な属性フレーミング研究と、似た表現を使いながら実験全体の構造がより複雑な研究を分けて見ることが役立ちます。

ここでは、典型例として知られる「赤身75%/脂肪25%」と、医療分野で研究されてきた「生存/死亡」のフレームを取り上げます。この二つを同じように扱わず、何を提示し、参加者に何を判断させたのかまで見ることが、後で三類型を区別するときにも重要になります。

赤身75%と脂肪25%

属性フレーミング研究で特に知られているのが、LevinとGaethが1988年に行った牛ひき肉の研究です。

同じ牛ひき肉について、一方の条件では「75% lean」、もう一方では「25% fat」と表示し、消費者による品質などの評価を比較しました。

結果として、「75% lean」と表示された条件のほうが、牛肉は複数の項目でより好意的に評価されています。さらに興味深いのは、参加者が実際に牛肉を味わった後には、表示によって生じていたフレーミング効果の大きさが試食前より小さくなったことです。

ここで重要なのは、75という数字が25より大きかったために評価が高くなった、という単純な話ではありません。赤身75%なら脂肪25%であり、商品そのものの構成は変わっていないからです。

それでも「lean」という肯定的に受け取られやすい側面を前へ出すと、商品の一部分だけではなく、商品全体の品質評価まで好意的な方向へ動きました。ところが実際に食べると、味、香り、食感など、表示とは別の情報を自分の感覚から得られるようになります。

購入前の段階では、パッケージに書かれた情報が品質を判断するための大きな手掛かりになりますが、直接経験が加われば、表示だけに頼って評価する必要は小さくなります。そのため、属性フレーミングを「言葉だけで人の判断を自由自在に操作する仕組み」と考えるのは適切ではありません。

手元にある判断材料が少ない場面では言葉の枠組みが強く働いても、直接経験や追加情報が増えれば、その相対的な影響は変化します。

生存率と死亡率

医療情報では、「生存」と「死亡」のどちら側から確率を伝えるかについて、多くの研究が行われています。健康情報のフレーミングを扱ったAklらの系統的レビューでは、「がんで生存する確率が3分の2」と「死亡する確率が3分の1」のように、一つの状態や属性を肯定側と否定側から表現する方法がattribute framingの例として明示されています。

したがって、生存率と死亡率という情報表現そのものは、属性フレーミングとして研究される対象です。

一方、McNeilらが1982年に行った有名な研究を、そのまま典型的な属性フレーミング実験と断定する場合には注意が必要でしょう。

McNeilらの研究では、肺がんの治療について手術と放射線療法という二つの治療方法を提示し、その成績を「生存する確率」として示す条件と「死亡する確率」として示す条件で、どちらの治療を選ぶかを比較しました。対象は慢性疾患を持つ外来患者238人、大学院生491人、医師424人であり、単一の対象について好ましさを評価するだけではなく、異なる治療方法から一つを選ぶ意思決定が含まれています。

ここには、「生存/死亡」という属性フレーミングとして扱われる表現が使われています。しかし、研究全体で測定しているのは治療方法の選好であり、提示された選択肢には治療ごとのリスクや時間経過も関わります。

さらに、このMcNeilパラダイムについては後年、リスクを含む医療選択との関係だけでなく、累積頻度による提示方法そのものが理解へ与える影響についても検討されています。MacchiとZulatoは、負のフレームで用いられる累積頻度表現に方法論的な問題がある可能性を論じ、提示形式を変更した場合に効果が消える条件を報告しました。

そのため、本記事ではMcNeilら1982年を「典型的な属性フレーミング研究」とは位置づけず、生存・死亡フレームが医療上の選好へ影響し得ることを示した関連研究として扱います。

この区別は一見すると細かく感じられるかもしれません。しかし、「生存と死亡という言葉が使われているから属性フレーミング」と決めるのではなく、実験全体で参加者が何を評価し、何を選択しているのかを見る姿勢こそ、フレーミングの三類型を構造から判別するために欠かせません。

属性フレーミングの具体例10選

ここからは、属性フレーミングの構造を日常的な場面へ当てはめて確認します。

以下の各数値や場面について、それぞれ個別の実験で同じフレーミング効果が確認されたという意味ではありません。研究で知られている属性フレーミングの構造を理解するための例であり、実際の影響は対象、受け手の知識、関心、利用状況などによって弱まったり、明確には現れなかったりする可能性があります。

No. 場面 ポジティブフレーム ネガティブフレーム 考えられる受け止め方
1 顧客満足度 満足度97% 不満足度3% 前者では多数の満足へ意識が向き、後者では不満を感じた理由や自分も該当する可能性が気になりやすくなることがあります
2 食肉 赤身75% 脂肪25% 前者では赤身の多さを意識し、後者では脂肪の存在を意識しやすくなると考えられています
3 成功実績 成功率90% 失敗率10% 実績の評価として示す場合、成功した側と失敗した側のどちらへ注意が向くかが変わる可能性があります
4 衛生用品 除去率99.9% 残存率0.1% 前者では除去できた割合へ、後者では残ったものへ注意が向く可能性があります
5 製品品質 良品率99% 不良率1% 前者では品質の安定性を、後者では不良品に当たる可能性を意識しやすくなることがあります
6 学習サービス 修了率90% 途中離脱率10% 前者では最後まで続けられた人へ、後者では途中で継続できなかった人へ意識が向く可能性があります
7 交通サービス 定時到着率95% 遅延率5% 前者では安定運行へ、後者では予定が崩れるリスクへ注意が向きやすくなることがあります
8 顧客維持 継続率90% 解約率10% 前者では継続利用の多さが目立ち、後者では解約した理由が気になりやすくなる可能性があります
9 試験結果 合格率80% 不合格率20% 成績の評価として示す場合、目標達成側と失敗側のどちらを強く意識するかが変わることがあります
10 システム品質 稼働率99.99% 停止率0.01% 前者では安定稼働へ、後者では停止した場合の影響へ注意が向く可能性があります

この表で重要なのは、「ポジティブな数字を使えば必ず高く評価される」と覚えることではありません。

たとえば、ある会社で重要な業務システムを選定している担当者が「稼働率99.99%」という表示を見れば、最初はかなり安定したシステムだと感じるでしょう。導入後のトラブルを避けたい担当者にとって、高い稼働率という数字は安心材料になり、社内へ説明するときにも使いやすい情報です。

しかし、自社では1時間の停止でも大きな損失が生じると分かっていれば、次第に「停止率0.01%は年間で何時間になるのか」「その時間帯に障害が起きた場合、どこまで保証されるのか」と考え始めるはずです。最初の好印象が消えるわけではありませんが、自分にとって重要な条件が見えてくると、同じ数字の反対側が急に重みを持ちます。

交通機関でも似たことが起こるでしょう。普段の通勤であれば「定時到着率95%」を十分に高い数字だと受け止める人でも、重要な試験や契約交渉へ向かう日なら、「5%は遅れる可能性がある」という側面のほうが気になるかもしれません。

属性フレーミングは表現だけで完結する現象ではなく、受け手がその場面で何を守りたいのか、何を失いたくないのかによって、同じ情報の重みも変化する可能性があります。

商品説明をポジティブに書き換えるBefore After

商品やサービスの説明では、ネガティブ側から書かれた属性をポジティブ側へ書き換えることで、読み手が最初に注目する部分が変わる可能性があります。

次の例も、それぞれのコピーについて個別に効果が実証されたという意味ではありません。属性フレーミングの構造を確認するために、同じ事実を反対側から表現したものです。

商品やサービス Before After 考えられる認知の違い
クラウドサービス 年間停止率は0.01%です 年間稼働率99.99%です Beforeでは障害へ、Afterでは安定稼働へ注意が向きやすくなる可能性があります
学習サービス 受講者の10%が途中離脱しています 受講者の90%が最後まで修了しています Beforeでは途中離脱へ、Afterでは修了する側へ意識が向くことがあります
品質管理 不良品率は1%です 良品率は99%です Beforeでは欠陥へ、Afterでは品質の安定性へ注意が向く可能性があります
顧客サービス 利用者の5%が不満を感じています 利用者の95%が満足しています Beforeでは不満の理由へ、Afterでは多数の肯定的評価へ意識が向くことがあります
試験対策講座 受講者の20%は不合格です 受講者の80%が合格しています Beforeでは不合格側へ、Afterでは目標達成側へ注意が向く可能性があります

Afterの表現に魅力を感じる人はいるでしょう。ただし、言葉を書き換えたからといって、現実まで変化したわけではありません。

「年間稼働率99.99%」と表示しても停止する可能性は残っており、「修了率90%」と表現しても10%が途中で離脱しているなら、その理由には確認する価値があります。

ある人がオンライン講座を探していて、「受講者の90%が修了」という数字を見たとします。仕事をしながら学習を続けられるか不安を感じていたなら、「多くの人が最後まで続けているなら、自分にもできるかもしれない」と安心するでしょう。

ところが、途中で離脱した10%の多くが仕事の忙しさを理由にしており、自分も似た勤務環境にいると分かれば、見え方は変わります。最初の安心感だけで契約するのではなく、週に必要な学習時間、欠席した場合のフォロー、質問できる時間帯などを確かめたくなるはずです。

広告を作る側にとっては、事実を正確に保ちながら、商品の価値を分かりやすく伝えることが必要です。一方、情報を受け取る側にとっては、提示された表現の反対側まで確かめることで、自分にとって本当に重要な条件を見つけやすくなります。

魅力的に伝えることと、判断に必要な情報を見えにくくすることは同じではありません。

属性フレーミングではない似た例

属性フレーミングを本当に理解できたかどうかは、典型例を覚えたときより、似ている別現象を区別できたときに分かります。

情報の見せ方によって感じ方が変わるという共通点だけを見ると、多くの現象が属性フレーミングのように思えるでしょう。しかし、何を基準に印象が変わっているのかを確認すると、異なる仕組みが関わっている場合があります。

現金値引きとカード手数料

現金なら9800円、カードなら1万円になる商品があるとします。同じ価格差について、次のように説明することができます。

「通常1万円ですが現金払いなら200円割引です」

「通常9800円ですがカード払いなら200円追加です」

最終的な支払額の関係は同じですが、前者では200円を得した感覚になり、後者では200円を余分に失ったように感じる人がいるでしょう。家電など高額な買い物をしている人なら、金額そのものより「割引を受けられたか」「追加料金を取られたか」という受け止め方が、支払い方法への印象に残ることもあります。

この例も、情報の枠組みが評価へ影響する現象として重要です。ただし、Levinらが整理した典型的な属性フレーミングとは構造が異なります。

属性フレーミングでは、一つの対象が持つ同じ属性を肯定側と否定側から記述します。一方、値引きと手数料では、どの金額を通常価格として受け止めるかという参照点や、価格差を利得と見るか損失と見るかが関係します。

したがって、これを「満足97%/不満3%」と同じ種類の典型的属性フレーミングとして扱うより、価格フレーミングとして分けて考えるほうが構造を理解しやすいでしょう。

2000mgと2g

「2000mg配合」と「2g配合」は、数量としては同じです。それでも2000という数字を見ると、「かなり多く入っている」と感じる人がいるかもしれません。

これは属性フレーミングの典型例ではありません。2000mgと2gの間には、「満足/不満」「赤身/脂肪」のような肯定属性と否定属性の対応関係がなく、変化しているのは数量を表す単位と、それに伴う数値の大きさだからです。

Pandelaere、Briers、Lembregtsは2011年、同じ数量情報でも単位を変えると属性差の大きさが異なって知覚されるunit effectを検証しました。たとえば7年と84か月のように、実質的に対応する期間でも数の大きい尺度へ置き換えると、差が大きく感じられることがあり、その背景には単位そのものより数の大きさへ注意が向くnumerosity effectが関係すると説明されています。

したがって、

「赤身75%/脂肪25%」は属性フレーミング

「2000mg/2g」はunit effectやnumerosity effectに近い問題

と分けると、両者の境界が明確になります。

数字の見た目によって印象が変わる現象が、すべて属性フレーミングになるわけではありません。

ゴールフレーミングとの違い

属性フレーミングとゴールフレーミングは、どちらも肯定的・否定的な表現を使うため混同されやすい概念です。

両者を分けるときには、「対象そのものを評価させているのか」「何らかの行動を取るよう促しているのか」を見ます。

たとえば、

「このサービスの利用者は95%が満足しています」

という表現なら、読み手が判断しているのはサービスそのものの好ましさです。そのため、同じ属性を「満足95%/不満5%」のように示すのであれば、属性フレーミングの構造になります。

これに対して、

「定期的に運動すると健康維持につながります」

「運動をしない状態が続くと健康を損なう可能性があります」

という表現では、運動そのものの品質を評価しているわけではありません。運動するという行動を選んでもらうために、行動した場合に得られる利益と、行動しなかった場合に生じ得る不利益を示しています。

こちらがゴールフレーミングです。

Levinらも、属性フレーミングは対象や出来事の特徴の評価、ゴールフレーミングはメッセージの説得力へ影響するものとして区別しています。

ただし、「ゴールフレーミングならネガティブに言えば必ず人が動く」と覚えるのも適切ではありません。健康メッセージを扱う研究では、行動の種類や測定する結果によって、ゲインフレームとロスフレームの効果が異なります。

GallagherとUpdegraffのメタ分析では、94研究189効果量を分析した結果、予防行動についてはゲインフレームに小さいながら有意な効果が確認されました。一方、態度や意図については明確な効果が確認されず、検出行動についても一律にどちらかのフレームが優れているとは言えませんでした。

なお、O'KeefeとJensenによる別のメタ分析では、疾病予防メッセージ全体におけるゲインフレームの優位性は統計的には確認されたものの、その効果は非常に小さく、歯科衛生以外の領域では明確な差が確認されないという結果が報告されています。

つまり、「予防なら必ずゲインフレームが効く」という単純な法則が確立しているわけではありません。研究によって対象となる行動、測定指標、分析範囲が異なるため、どのメタ分析を根拠としているのかまで確認することが重要です。

日本で特定保健用食品を対象に行われた原広司、佐藤圭、小林哲の研究でも、ゲインフレーム群ではロスフレーム群より支払意思額が高くなりましたが、購買意図や将来の購買行動など、ほかの購買意思決定指標には明確な差が確認されませんでした。

ある商品を見て「少し高くても価値がありそうだ」と感じることと、実際に財布を開いて購入することの間には距離があります。価格、必要性、味への好み、競合商品、家計の状況など、現実の購買にはメッセージ以外の判断材料も入ってくるからです。

したがって、「属性ならポジティブ」「ゴールならネガティブ」と効果の方向だけを暗記するのではなく、何を判断させようとしているメッセージなのかを見る必要があります。

リスク選択フレーミングとの違い

リスク選択フレーミングでは、対象そのものの好ましさや単純な行動喚起ではなく、結果が不確実な選択肢の間でどちらを選ぶかが中心になります。

代表的なのが、TverskyとKahnemanが1981年に報告したフレーミング研究です。同じ意思決定問題であっても、結果を利得側から示すか損失側から示すかによって、選好が系統的に変化することが示されました。

研究では金銭的な選択だけではなく、人命の損失に関する問題でも選好の変化が確認されています。よく知られている構造では、600人が危機に直面している状況について、次のような選択肢が提示されます。

「確実に200人が助かる方法」

「3分の1の確率で600人全員が助かるが、3分の2の確率で誰も助からない方法」

同じ結果を損失側から記述すると、次のようになります。

「確実に400人が亡くなる方法」

「3分の1の確率で誰も亡くならないが、3分の2の確率で600人全員が亡くなる方法」

数学的な構造は対応していますが、利得側の表現では確実な選択へ、損失側の表現ではリスクを伴う選択へ傾く傾向が示されました。

600人が危機に直面している状況 利得側の表現 確実に200人が 助かる方法 3分の1の確率で 600人全員が助かるが、 3分の2の確率で 誰も助からない方法 損失側の表現 確実に400人が 亡くなる方法 3分の1の確率で 誰も亡くならないが、 3分の2の確率で 600人全員が亡くなる方法
数学的な構造は対応していますが、利得側の表現では確実な選択へ、損失側の表現ではリスクを伴う選択へ傾く傾向が示されました。

ある人が「確実に200人を救える」と考えれば、すでに救える200人を失う危険まで冒したくないと感じるでしょう。しかし、「400人が確実に亡くなる」と聞けば、その損失をそのまま受け入れることが耐えがたく感じられ、「全員が助かる可能性があるなら、賭けてみたい」と思うかもしれません。

ここで判断しているのは、対象そのものが好ましいかどうかではありません。確実な結果と、結果が変動するリスクのある選択肢のどちらを選ぶかが中心です。

これが属性フレーミングとの大きな違いになります。

属性フレーミングとプロスペクト理論の違い

フレーミング効果と聞くと、すべてをプロスペクト理論で説明できるように感じるかもしれません。しかし、属性フレーミングとプロスペクト理論は同じものではありません。

KahnemanとTverskyが1979年に提示したプロスペクト理論は、リスクを伴う意思決定について、期待効用理論では十分に説明できない人間の選択を記述するために提案された理論です。

原論文では、確実な結果と確率的な結果への反応、利得と損失を基準とした価値評価、客観的確率とは異なる意思決定上の重みなどが示されています。そのため、確実な結果とリスクを伴う結果の間で選好が変化するリスク選択フレーミングとは、特に深い関係があります。

一方、属性フレーミングでは、異なる確率を持つ二つの賭けから一つを選ぶ必要はありません。

「赤身75%」と表示された肉と「脂肪25%」と表示された肉は、別の商品を比較しているわけではなく、同じ対象を異なる属性表現から評価しています。そこで中心になる問いも、「どちらのリスクを取るか」ではなく、「この対象をどの程度好ましく感じるか」です。

Levinらが三つのフレーミング効果を分けた意義の一つは、表面上はどれも「肯定か否定か」という似た操作に見えても、何を判断させるかが違えば、背後にある心理過程まで同じとは限らないことを整理した点にあります。

したがって、「属性フレーミングは損失回避によって起こる」と一言で片づけるのは不十分でしょう。

プロスペクト理論はリスクを伴う選択を理解する重要な理論であり、属性フレーミングでは属性表現に伴う対象評価の変化を別途考える必要があります。

属性 ゴール リスク選択を見分ける方法

ここまでの違いを、実際の判別に必要な部分へ絞って整理します。

判別基準 属性フレーミング ゴールフレーミング リスク選択フレーミング
何を変えて提示するか 一つの対象が持つ属性 行動した場合または行動しない場合の結果 選択肢の結果を利得側または損失側から提示
主な問い この対象をどう評価するか この行動をするか 確実な結果とリスクのある結果のどちらを選ぶか
典型例 赤身75%/脂肪25% 行動すれば利益/しなければ不利益 確実に200人救う/確率で600人救う
主に見る反応 好ましさや品質評価 説得力や行動意図 リスク選好
見分ける軸 対象の特徴 行動の結果 確率を伴う選択

判別するときには、最初に「確実な結果と確率的な結果を比べているか」を確認すると整理しやすくなります。もし、確実に得られる結果と、一定の確率で大きな結果が得られる選択肢を比べているのであれば、リスク選択フレーミングの可能性が高いでしょう。

次に、「何らかの行動を取るよう説得しているか」を見ます。行動すれば利益が得られる、行動しなければ不利益が生じるという構造なら、ゴールフレーミングを考えます。

どちらにも当てはまらず、一つの商品やサービスの同じ特徴を肯定側と否定側から示し、その対象自体を評価させているのであれば、属性フレーミングと考えやすくなります。

覚えるときには、次の一文へ戻ると整理しやすいでしょう。

属性は対象を見る。ゴールは行動を見る。リスク選択は不確実な選択を見る。

文章の中に「成功」「失敗」「利益」「損失」といった言葉があるかどうかではなく、読み手が最終的に何を判断するよう求められているのかを見ることがポイントです。

広告や数字を見るときの注意点

数字を反対側から読み直す

属性フレーミングの影響に気づくための簡単な方法は、提示された数字を反対側から一度言い換えてみることです。

「満足度95%」を見たら「不満足度5%」、「成功率90%」なら「失敗率10%」、「良品率99%」なら「不良率1%」と読み替えます。

あるサービスについて「95%もの人が満足しているなら安心だ」と感じていた人でも、「20人に1人は不満を感じている」と考えると、急に気になる部分が出てくるかもしれません。

そのときに起きた印象の変化は、「最初の判断が間違っていた」という意味ではありません。自分が最初にどの情報へ注意を向けていたのかを知る手掛かりです。

反対側へ言い換えた数字だけを正しい見方と考える必要もありません。肯定側と否定側の両方を確認したうえで、自分の状況にとって重要な条件を判断すればよいでしょう。

母数と調査条件を確認する

割合を反転できても、それだけで情報の質まで判断できるわけではありません。

「満足度97%」という表示を見た場合には、何人に質問したのか、誰を対象にしたのか、いつ実施した調査なのか、どの回答を「満足」と判定したのかまで確認する必要があります。

30人程度の調査と1万人規模の調査では、同じ97%でも背景は異なります。さらに、現在も利用している顧客だけを対象にしたのか、途中で解約した人まで含めているのかによっても、数字の意味は変わるでしょう。

ある人が広告を見て「97%なら間違いなさそうだ」と安心したとしても、自分と同じ利用条件の人が調査対象にほとんど含まれていなければ、その数字をそのまま自分の判断材料にすることはできません。

これは数字を疑ってかかるという意味ではなく、数字が何を表しているのかを、表現から受ける第一印象と切り分ける作業です。

ポジティブ表現が必ず購買につながるわけではない

属性フレーミング研究から、ポジティブな属性表示が対象への好意的な評価につながる場合があるとは言えます。しかし、その結果を「ポジティブに書けば必ず商品が売れる」という結論まで広げることはできません。

属性フレーミング研究で中心的に測定されるのは、対象の好ましさや品質評価です。商品を良さそうだと感じることと、実際に購入することは同じアウトカムではありません。

ある人が商品を見て「品質は良さそうだ」と感じても、価格が予算を超えていれば購入を見送るでしょう。すでに似た商品を持っているなら必要性を感じないかもしれませんし、競合商品への信頼、自分の過去の経験、家計の状況なども最終判断へ入り込みます。

したがって、属性フレーミングについて分かっている対象評価の変化を、そのまま購買行動へ読み替えることはできません。

なお、別類型であるゴールフレーミング研究でも、支払意思額のような一部の指標に差が生じても、購買意図や将来の購買行動に関する指標では明確な差が確認されない例があります。これは属性フレーミングそのものの証拠ではありませんが、「フレーミングによって一つの評価指標が動いたからといって、最終行動まで同じ方向へ動くとは限らない」という一般的な注意を考えるうえでは参考になります。

人の行動は、一つの表現だけで決まるものではありません。

必要な情報を隠さない

企業や専門家がフレーミングを使う場合には、倫理的な境界も重要です。

同じ事実を分かりやすく伝えるために好ましい側面を前へ出すことと、相手の判断に不可欠な情報を見えにくくすることは異なります。

「成功率90%」という表示が事実として正しくても、残り10%で起こり得る結果が重大であり、そのリスクが意思決定に欠かせないのであれば、成功率だけを強調した説明では十分ではないでしょう。

特に医療、金融、防災、安全などでは、ポジティブなフレームだけではなく、反対側にある情報も重要です。

ある人が「90%なら大丈夫だろう」と安心していたとしても、残り10%に何が起こるのかを知ったことで、「確率としては低くても、その結果を自分は受け入れられるだろうか」と考え直すことがあります。その迷いは数字を理解できていないからではなく、自分にとって重要な結果まで含めて判断しようとしているからです。

フレーミングを理解する目的は、より巧妙に人を動かすことではなく、情報の見せ方そのものが判断へ入り込む可能性を自覚することにあります。

属性フレーミングで迷いやすい質問

成功率90%と失敗率10%は属性フレーミングですか?

対象の実績という同じ属性を評価するために「成功率90%」と「失敗率10%」を対応させて提示するのであれば、属性フレーミングの構造として理解できます。

ただし、その数字を使って「成功率90%なのだから、この治療を選びましょう」「このサービスに申し込みましょう」と行動を説得している場合には、メッセージ全体としてゴールフレーミング的な性格を持つ可能性があります。

同じ言葉でも、どの文脈で使われているかによって分類は変わり得ます。そのため、「成功率」という単語だけを切り取るのではなく、読み手へ最終的に何を判断させようとしているのかを確認することが大切です。

生存率と死亡率は属性フレーミングですか?

単一の状態について「生存確率」と「死亡確率」を肯定側・否定側から表現する方法は、健康情報研究では属性フレーミングとして扱われています。

ただし、McNeilら1982年のように、その情報を基に手術と放射線療法など複数の治療方法から一つを選ばせる実験では、治療選択やリスクの構造まで含まれます。

したがって、「生存/死亡という表現は属性フレーミングとして研究される」という説明と、「McNeilらの実験全体が典型的な属性フレーミング実験である」という説明は分けて考えたほうが正確です。

2000mgと2gは属性フレーミングですか?

典型的な属性フレーミングではありません。

2000mgと2gは同量を異なる単位で表したものであり、肯定属性と否定属性を入れ替えているわけではないからです。こうした現象は、数値と単位の組み合わせが判断へ与えるunit effectやnumerosity effectに近い問題として考えるほうが適切でしょう。

数字が大きく見えるために「量が多そう」と感じることと、同じ属性の肯定側と否定側を見せられて対象評価が変わることは、似ているようで構造が異なります。

現金値引きとカード手数料も属性フレーミングですか?

「現金なら200円引き」と「カードなら200円追加」は、実質的な価格差が同じでも、受け止め方が変わり得る重要なフレーミング例です。

ただし、典型的な属性フレーミングよりも、どの価格を基準として受け止めるかという参照点や、価格差を利得と見るか損失と見るかが関係する価格フレーミングとして分けて考えるほうが明確でしょう。

「表現が違えば感じ方が変わる」という共通点だけで、すべてを属性フレーミングへ含めないことが重要です。

マーケティングではどう使えばよいですか?

商品パッケージや実績表示などで、同じ事実のうち顧客に理解してほしい肯定的な属性を分かりやすく示す方法があります。

たとえば「解約率1%」という事実を「継続率99%」と表現すれば、離れた顧客よりも継続している顧客へ意識が向きやすくなる可能性があります。

ただし、それによって必ず購買が増えるわけではありません。また、重要な条件や不利益を見えにくくすれば、短期的には魅力的に見えても、後から「聞いていた印象と違う」と感じさせ、長期的な信頼を損なう可能性があります。

フレーミングは事実そのものを置き換える技法ではなく、事実のどこに焦点を当てて伝えるかを設計する方法として扱うのが適切でしょう。

まとめ

属性フレーミングとは、同じ対象の同じ属性をポジティブ側から示すか、ネガティブ側から示すかによって、その対象への評価が変化する現象です。

代表的な研究では、同じ牛ひき肉でも「赤身75%」と表示された場合のほうが「脂肪25%」と表示された場合より好意的に評価され、実際に試食した後には、そのフレーミング効果が弱まりました。この結果は、言葉の枠組みが判断へ影響する一方で、直接経験や追加情報が増えると、その影響力が相対的に変化することを考える手掛かりになります。

一方、行動した場合や行動しなかった場合の結果を示して説得するものはゴールフレーミング、確実な結果とリスクを伴う結果の間で選好が変化するものはリスク選択フレーミングです。

また、「2000mgと2g」のように単位の変更によって数値の印象が変わる現象は、属性フレーミングではなく、unit effectやnumerosity effectに近い問題として区別できます。

迷ったときに、「ポジティブな表現かどうか」だけで判断してはいけません。対象の特徴を評価しているなら属性、行動を促しているならゴール、確実な結果と確率的な結果を選ばせているならリスク選択というように、読み手が最終的に何を判断しているのかを見ると整理しやすくなります。

読み手が最終的に何を判断しているのか 属性 対象の特徴を 評価している ゴール 行動を 促している リスク選択 確実な結果と 確率的な結果を 選ばせている
対象の特徴を評価しているなら属性、行動を促しているならゴール、確実な結果と確率的な結果を選ばせているならリスク選択というように、読み手が最終的に何を判断しているのかを見ると整理しやすくなります。

そして広告や説明に接したときには、提示された数字を一度だけ反対側から言い換えてみるとよいでしょう。「満足度95%」なら「不満足度5%」、「成功率90%」なら「失敗率10%」と考えてみます。

そこで印象がふっと変わったなら、自分が数字だけではなく、その数字を見るための枠組みにも反応していたことが分かります。

属性フレーミングを知る価値は、あらゆる広告や説明を疑うことではありません。同じ事実を別の方向からも眺め、そのうえで、自分にとって本当に必要な判断を選べるようになることにあります。

参考資料

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