「この仕事なら今日中に終わる」「この企画はかなり成功するはず」「部下との関係も悪くない」と判断したのに、後から振り返ると予定は崩れ、想定外の問題が起こり、「なぜあれほど大丈夫だと思えたのだろう」と感じることがあります。
こうしたズレは、単なる注意不足や傲慢さだけでは説明できません。自分の能力や知識、予測の正確さを実際以上に高く見積もる「自信過剰バイアス」が関係しているという可能性があります。
しかも、自信過剰は、いつも強気で自信満々な人だけに起こるものではありません。経験を積んだ会社員や管理職、専門職、経営者であっても、「この分野はよく知っている」「以前もうまくいった」という安心感によって、確認すべき情報を見落とす場合があります。
大切なのは、自信をなくすことではありません。仕事を前へ進めるための自信は残したまま、「その確信は実績や数字と釣り合っているか」を確認できる状態をつくることが重要です。
自信過剰バイアスとは
自信過剰バイアスとは、自分の能力、知識、成果、予測の正確さなどについて、実際以上の確信を持ってしまう認知的傾向です。
ただし、「自分は優秀だと思い込むこと」だけを意味するわけではありません。
MooreとHealyは、自信過剰を大きく三つの形に整理しています。
一つ目は、自分の実際の能力や成果を高く評価しすぎる「過大評価」です。たとえば、過去の実績では三日かかる仕事について、「自分なら一日で終えられる」と考える場面が当てはまります。
二つ目は、周囲との比較で自分を高い位置へ置きすぎる「過大配置」です。「同じ役職の人より、自分のマネジメント能力は高い」と考えるような場面でしょう。
三つ目は、自分の予測や知識がどの程度正しいかについて、実際より強く確信する「過度の確信」です。「売上は15〜18%増の範囲にほぼ収まる」と狭い予測幅を設定し、大きな下振れをほとんど考えない状態などが該当します。
この三つは似ているように見えても、同じ条件で同じように起こるとは限りません。
だからこそ、自信過剰について考えるときに見るべきなのは、話し方が強気かどうかではないのです。
重要なのは、その人の確信の強さと、実際に確認できる根拠が釣り合っているかです。
経験豊富な人でも自信過剰は起こる
「自信過剰になるのは、知識の少ない人ではないか」と感じる人もいるでしょう。
しかし、経験や専門知識があれば、自動的に過信が消えるわけではありません。
Ben-David、Graham、Harveyは、CFOを中心とする財務担当幹部を対象に、株式市場についての予測を約10年間にわたって調査しました。
この研究には、CFOやfinancial vice presidentなどのsenior finance executivesが含まれており、一般の経営幹部すべてを対象にしたものではありません。
それでも興味深いのは、1万3300件を超える予測について、回答者が「80%の確率でこの範囲に入る」と設定した区間へ、実際の市場リターンが入った割合が36%だった点です。
つまり、高度な財務知識を持ち、日常的に数字を扱う人であっても、自分の予測が実際より正確だと考えてしまう場合があります。
経験を積むほど、「自分には十分な判断材料がある」という感覚は強くなるでしょう。その感覚自体は仕事を進めるうえで役立ちますが、同時に「まだ分からない部分」を小さく見積もるという可能性もあります。
経験が増えたときこそ、自分の感覚だけではなく、過去の予測と実績がどれほど一致していたかを確かめる必要があるのです。
仕事で自信過剰バイアスが起こる具体例7選
ここから紹介する七つの場面には、自信過剰そのものとして捉えやすいものと、別の認知バイアスや心理現象が自信過剰と重なることで判断をゆがめるものが含まれます。
たとえば、所要時間を短く予測する計画錯誤は、自分の予測精度への過信と比較的結び付けて考えやすい現象です。
一方、慣れた仕事で確認を省く場面ではコントロールの錯覚、部下との関係を高く評価する場面では権力と視点取得、成功と失敗の分析では自己奉仕的な帰属など、別の心理的要因も関係します。
したがって、以下の七つすべてを「自信過剰バイアスと完全に同じ現象」と捉える必要はありません。
ここでは、自信過剰そのもの、または自信過剰と重なることで「自分なら大丈夫」という確信を強め、仕事の判断をゆがめ得る場面として見ていきます。
①仕事の所要時間を短く見積もる
月曜日の朝、上司から企画書の修正を頼まれ、「一時間くらいあれば終わります」と答えたとします。
本人には、無理な予定を立てている感覚がありません。資料の構成は決まっており、必要な数字もある程度そろっているため、頭の中では順調に仕事が進む姿が見えているからです。
しかし、実際に始めると追加データが必要になり、関係部署への確認が発生します。途中でチャットへの返信や電話対応が入り、完成後には上司から修正依頼も届きました。
結局、一時間で終えるつもりだった仕事に三時間かかります。
それでも次に似た仕事を任されると、「前回はたまたま確認が多かっただけだから、今回は一時間半くらいだろう」と考えるかもしれません。
ここには、「今回こそ予定どおり進む」という気持ちがあります。
前回の遅れをそのまま次回へ持ち込むと、自分の成長や工夫を否定するように感じる人もいるでしょう。「前より慣れているのだから、今度は速くできるはずだ」と考えたくなるのは自然です。
ところが、その気持ちが過去の実績より強くなると、同じ見積もりミスを繰り返すという可能性があります。
Buehler、Griffin、Rossの研究では、人は課題の完了時期を予測するとき、過去の似た経験よりも、「これからこう進む」という将来のシナリオへ注意を向けやすいことが示されています。
ここで確認したいのは、自分が仕事を速くできるかどうかではありません。
過去の同種業務が平均三時間だったのに、今回だけ一時間で終わると考えるのであれば、その差を説明できる具体的な理由があるかという点です。
たとえば、自動化によって一工程がなくなった、必要な資料がすでに完成している、確認先が減ったという条件があるなら、短い見積もりにも根拠があります。
反対に「今回はうまくいきそう」という感覚しかないなら、少し立ち止まったほうがよいでしょう。
工数を見積もるときには「今回は何時間でできそうか」だけでなく「過去の同種業務は実際に何時間かかったか」を先に確認することが重要です。
経験は「慣れている」という感覚だけで使うより、実績データとして使ったほうが判断を助けてくれます。
②経験のある仕事ほど確認を省く
新人だったころは、取引先へメールを送る前に宛先、本文、日付、金額、添付ファイルまで何度も確認していたのに、数年たつと、ほとんど無意識に送信していることがあります。
もちろん、熟練によって処理速度が上がり、本当に不要な確認を省ける場合もあります。
そのため、「確認回数が減った=自信過剰」と考える必要はありません。
注意したいのは、「何度もやっているから今回は間違えない」という確信によって、本来必要な確認までなくなってしまう場面です。
ある担当者が、毎月同じ形式で売上データを集計しているとします。
一年以上担当してきたため、計算式も操作手順も頭に入っています。ある月、基幹システムの更新によって出力データの列が一つ追加されましたが、「いつもの集計だから」と差分を詳しく確認せず処理しました。
結果として参照範囲がずれ、一部の売上が集計から漏れてしまいます。
初めて扱うデータなら、慎重に確認したでしょう。
しかし、これまで問題なく処理できた経験が積み重なっていたため、「今回だけ違うところはないか」より「今回もいつもどおりできる」という安心感が勝ったのです。
ここを考える参考になる研究の一つが、Langerによる「コントロールの錯覚」です。
Langerの研究は、主にくじなど偶然に左右される状況で、選択や慣れといった要素が加わると、自分が結果を制御できるという期待が高まる現象を扱っています。
ただし、この研究は「熟練した業務では経験が確認省略を引き起こす」と直接示したものではありません。
そのため、定型業務の確認省略をそのままコントロールの錯覚で説明するのではなく、慣れや成功経験が主観的な安心感を強める可能性を考える際の参考として扱うほうが適切です。
仕事では、熟練による効率化、手順設計、注意の配分など、ほかの要因も関係します。
だからこそ、熟練した人に必要なのは、毎回すべてを新人時代のように確認することではありません。
「前回と今回で変わった条件は何か」を短時間でも確認することが、経験を生かしながら過信を抑えるポイントです。
慣れによって省ける作業と、事故を防ぐために残す確認を分けておけば、経験は危険ではなく強みになります。
③会議で自分の案の成功確率を高く見る
何週間も調査し、顧客の声を集め、何度も数字を見直して作った企画には、自然と愛着が生まれます。
「この案なら会社を変えられるかもしれない」と感じながら資料を仕上げた人にとって、会議で厳しい質問を受けることは、単なる数字の検証以上の意味を持つことがあります。
「その市場規模は本当に伸びますか」
「競合が値下げした場合はどうしますか」
そう問われたとき、頭では必要な議論だと分かっていても、「そこはもう考えている」「この人には企画の本質が伝わっていない」と感じるかもしれません。
自分が時間をかけた案ほど、反対意見を「情報」ではなく「否定」と受け取りやすくなるからです。
もちろん、提案者が自分の企画を信じること自体は問題ではありません。
むしろ、自分でも成功すると思えない企画を強く推進することは難しいでしょう。
問題になるのは、思い入れが成功確率の評価へ入り込み、自社に都合のよい情報だけを大きく見て、競合の反応や顧客側の障壁を小さく扱ってしまう場合です。
経営者の自信過剰と企業行動については、MalmendierとTateの研究があります。
2008年の研究では、CEOのオプション保有行動などから作成した過信の代理指標に該当するCEOは、そうでないCEOより買収を行うオッズが65%高いと報告されています。
ただし、研究上の「過信」は、日常会話でいう「自信の強い人」と同じ意味ではありません。
ここから「自信のある経営者ほど買収する」と単純に結論づけることはできませんが、自分の経営能力を高く評価することと、大きな意思決定との関係を考える材料にはなります。
会議で実践したいのは、「この案は良いか悪いか」という対立ではありません。
提案者本人が、「この案が失敗するとしたら、原因は何か」を先に言葉にしてみます。
市場成長率が想定を下回るのか、顧客獲得単価が高騰するのか、人材が集まらないのか。三つでも挙げると、自分の案を外側から見るきっかけになります。
自分が提案した案ほど「成功する理由」だけではなく「失敗するとしたら何が起きるか」を考える必要があります。
反対意見は企画を止めるためではなく、計画を現実に近づける材料として使えるのです。
④部下からの評価を実際より高く考える
管理職になると、自分のマネジメントについて率直な評価を受ける機会が減る場合があります。
上司から売上や目標達成について評価されることはあっても、「部下が質問しやすいと感じているか」「反対意見を言えるか」「説明が分かりやすいか」までは、日常的に伝えてもらえるとは限りません。
ある管理職は、「うちのチームは風通しがいい」と考えていました。
自分から声をかけていますし、怒鳴った記憶もありません。会議では「何か意見ある?」と聞いているため、「少なくとも話しにくい上司ではない」と感じています。
しかし部下側では、「意見を言うとすぐ反論される」「相談すると途中で結論を言われる」「結局は上司の案になる」と感じているかもしれません。
上司自身には、自分が与えている心理的な圧力が見えにくいのです。
さらに、立場が上がれば、「それは違うと思います」と正面から言われる機会が減る場合があります。
誰も不満を言わない状態を「皆が満足している」と解釈すると、自分の評価を修正する機会はますます少なくなるでしょう。
Galinskyらの研究では、権力を持つことと他者の視点取得との関係が検討され、高い権力を意識した条件では、他者の視点や情報状態を十分に考慮しにくくなる結果が報告されています。
ただし、この研究は自信過剰そのものを測定したものではありません。
ここで重要なのは、「管理職は自信過剰になる」と決めつけることではなく、部下の視点が見えにくくなる環境では、自分のマネジメント評価も修正されにくくなるという点です。
部下から何も言われないことと、部下から高く評価されていることは同じではありません。
「自分は良い上司か」と自分の中だけで問い続けるより、匿名サーベイ、離職率、1on1で部下から出てくる相談件数、会議で発言する人の割合など、外側から見える情報を加えたほうが判断しやすくなります。
厳しい評価を見るのは気持ちのよいものではありません。
それでも、その情報があるからこそ、「自分ではできているつもりだった部分」を具体的に変えられます。
⑤成功を実力 失敗を環境のせいと考える
大型案件を受注できたとき、「提案が良かった」「顧客との関係を築けた」と感じるのは自然です。
ところが翌月に似た案件を失注すると、「予算が削られた」「競合が値下げした」「担当者が変わった」と外部環境へ目が向くことがあります。
成功したときには自分の力が目立ち、失敗したときには周囲の事情が目立つわけです。
こうした原因帰属の偏りは、自信過剰バイアスそのものではありません。社会心理学では、自己奉仕的な帰属という別の文脈で研究されてきました。
しかも、失敗を外部要因へ帰属する傾向が常に強く確認されるわけでもありません。
MillerとRossによる古典的なレビューでは、成功を自分側の要因へ結び付ける傾向には一定の支持が見られた一方、失敗を外部のせいにするという一般的な説明については、当時の証拠は限定的だと評価されています。
つまり、「人は成功を全部自分の手柄にし、失敗は必ず他人のせいにする」と断定するべきではありません。
それでも仕事では、成功と失敗を異なる基準で分析していないかを確認する意味があります。
ある営業担当者が年間目標を120%達成し、「自分の営業方法が改善したからだ」と考えたとします。
しかし、市場全体が大きく伸び、担当エリアの需要が会社平均以上に増えていたなら、その成果のすべてを個人の実力として扱うことはできません。
反対に翌年の売上が落ちたとき、「市場が悪かった」で終えてしまえば、提案内容や反応速度など、自分で改善できた部分を見落とすでしょう。
成功したときは「自分以外の追い風は何だったか」、失敗したときは「自分が変えられた部分は何だったか」を確認することが重要です。
成功にも環境が影響し、失敗にも自分の判断が含まれる場合があります。
両方を同じ物差しで振り返ることで、自己評価は現実に近づいていきます。
⑥専門外でも「自分なら分かる」と判断する
一つの分野で長く成果を上げていると、「物事の本質を見る力が身についた」と感じることがあります。
実際、経験を積むことで判断が速くなり、別の分野にも応用できる考え方が身につく場合はあるでしょう。
しかし、営業で優秀だったことが、そのまま法律、税務、情報セキュリティ、医療、技術設計などの専門的判断を保証するわけではありません。
ある会社で、新しいITシステムの導入について経営会議が開かれているとします。
専門部署はセキュリティ上の懸念から追加対策を求めていますが、経営者は「技術の細かいところはともかく、大枠ではそこまで複雑ではない」と考えました。
その人は過去に何度も難しい経営判断を成功させています。
だからこそ、「専門家は慎重すぎるのではないか」「経営としてはもっと速く決めるべきではないか」と感じるのです。
ここには、責任ある立場ならではの葛藤もあります。
「分かりません」と言えば、頼りなく見えるのではないか。判断を保留すれば、決断力がないと思われるのではないか。
その不安から、十分な専門知識がない領域でも答えを出したくなることがあります。
しかし、優れた意思決定者が、すべての分野で最も詳しい必要はありません。
むしろ、自分で判断すべき範囲と、専門家の判断を重く扱う範囲を分けられることのほうが重要でしょう。
意思決定者に必要なのは、何でも知っていることではなく「ここから先は自分だけでは判断できない」と境界線を引けることです。
「自分にも分かるか」ではなく、「この判断に必要な知識のうち、自分では説明できない部分はどこか」と問い直すと、専門外での確信を調整しやすくなります。
⑦過去の成功体験を次の案件へ当てはめる
成功体験は、仕事を続けるうえで重要な財産です。
苦しい状況で新商品を成功させた人なら、次の案件でも「前回できたのだから、今回もできる」と思うでしょう。
その感覚があるからこそ、過去には怖かった挑戦にも踏み出せるようになります。
しかし、成功体験には、そのとき固有の条件が含まれています。
顧客、価格、競合、市場規模、景気、技術、人員、予算、タイミングが変われば、同じ方法を使っても同じ成果になるとは限りません。
たとえば、国内市場で成功した製品を海外へ展開しようとしている会社があるとします。
経営陣には、「国内でこれだけ評価されたのだから、品質が伝われば海外でも売れる」という期待があります。
さらに、以前も社内で反対されながら成功した経験があると、今回の慎重論を聞いたときにも、「前回も同じように反対された」と感じるでしょう。
しかし、現地ではブランド認知、所得水準、販売チャネル、競合商品、購入理由が国内とは異なるかもしれません。
過去の成功が強く記憶に残っているほど、条件の違いより「似ている部分」を見たくなるという可能性があります。
ここで大切なのは、「前に成功した」という事実を否定することではありません。
むしろ、成功を再現したいからこそ、前回の結果を生んだ条件を細かく分ける必要があります。
販売方法が良かったのか、市場全体が伸びていたのか、競合が弱かったのか、偶然大口顧客を獲得できたのか。その違いを確認せずに「前回のやり方」を再利用すると、表面だけをまねることになるでしょう。
なお、ここから紹介する日本企業の研究は、「過去の成功体験を次の案件へ当てはめる」という心理過程そのものを直接検証した研究ではありません。
位置づけとしては、「成功体験が過信を生むこと」の直接的な根拠ではなく、経営者の過信を示す代理指標と、実際の投資や資金調達といった企業意思決定がどのように関連するかを示した補足的な研究です。
この区別をしたうえで見ると、経営者レベルの過信が、実際の企業行動とどのように結び付く可能性があるのかを理解しやすくなります。
寧東来による2001年から2019年の東証上場企業を対象とした分析では、経営者予想を用いて自信過剰の尺度を作成し、自信過剰と分類された経営者では、配当を低く抑える傾向や過大投資との関連が報告されています。また、研究開発やM&Aなど、相対的にリスクの高い投資への志向も示されています。
IshikawaとTakahashiは、日本の上場企業における経営者の業績予想から自信過剰の代理指標を作り、外部資金調達との関係を分析しました。
同研究では、実績より高い利益を予測する上方予測バイアスが強いほど、公募による株式発行を選択する確率が低下する結果が報告されています。
これらは、「過去に成功した経営者ほど次の案件でも同じ方法を選ぶ」と証明した研究ではありません。
それでも、自分の予測や能力への強い確信が、投資や資金調達のような企業レベルの意思決定とも関連し得ることを示す研究として参考になります。
成功体験を次へ生かすなら「前回何をしたか」だけでなく「前回はなぜ成功したのか」を分解する必要があります。
過去の成功要因のうち、今回も残っている条件と、すでに変わっている条件を分ける。それだけでも、「前回成功したから今回も大丈夫」という飛躍を減らせるでしょう。
よくある発言から仕事の過信を確認する
自信過剰や、それと重なって判断をゆがめる心理的要因は、性格だけを見ても判断できません。
「絶対に大丈夫」と言う人に十分な根拠がある場合もあれば、控えめに話す人が不確実性を小さく見積もっている場合もあります。
そこで、自分が仕事中に口にする言葉を、裏にある可能性と確認すべき数字へ分けてみます。
| よくある発言 | 隠れている可能性のある過信 | 確認すべき数字 |
|---|---|---|
| 「集中すれば明日中には終わる」 | 割り込みや差し戻しを除き理想的な進行だけを想定している可能性 | 過去の同種業務の平均実績時間と割り込み時間 |
| 「何度もやっているから確認しなくて大丈夫」 | 経験を今回の正確性と同一視している可能性 | 過去のミス率と前回から変わった条件数 |
| 「今回のコンペはかなり勝てる」 | 自社の強みを重く見て競合要因を小さく評価している可能性 | 類似案件の実際の勝率と失注理由 |
| 「部下との関係は良いから問題があれば言ってくる」 | 自己評価と部下側の評価の差を見落としている可能性 | 匿名サーベイと部下発信の相談件数 |
| 「今回は市場環境が悪かっただけ」 | 自分側で修正できる要因を十分に検討していない可能性 | 市場平均と自社実績の差や中間KPI |
| 「専門外でも大枠なら分かる」 | 他領域での成功経験を専門外へ広げている可能性 | 専門部署のリスク評価と未確認事項数 |
| 「前回成功したから今回も同じ方法でいける」 | 前回と今回の条件差を小さく見ている可能性 | 市場成長率や顧客構成や獲得コストなどの差 |
この表は、「この発言をした人は自信過剰だ」と判定するためのものではありません。
たとえば、「明日中に終わる」という予測が過去十回の実績でもほぼ一日以内に収まり、今回の条件にも大きな違いがないなら、十分に根拠のある判断です。
反対に、過去十回の平均が三日なのに「今回は一日で終わる」と考えているなら、なぜ今回だけ短縮できるのかを確認する必要があります。
仕事で見るべきなのは、言葉の強さではなく、その言葉を支える根拠と実績の距離です。
「自分なら大丈夫」と思うことをやめる必要はありません。
その代わり、「それを裏付ける数字は何だろう」と一度問い直せれば、感覚だけで結論を決める状態から離れやすくなります。
自信と自信過剰を見分ける方法
仕事を前へ進めるには、自信が必要です。
情報が完全にそろうまで何も決めない管理職では組織は動きにくくなりますし、営業や交渉でも、成功が保証されるまで動かないのであれば機会を逃してしまいます。
Banduraが提唱した自己効力感は、自分が必要な行動を遂行できるという期待が、行動、努力、持続性などと関係することを説明する概念です。
したがって、自信そのものを悪いものとして扱うべきではありません。
では、健全な自信と危険な過信を、どのように見分ければよいのでしょうか。
根拠を具体的に説明できるか
最初に確認したいのは、「なぜそう判断したのか」を具体的に説明できるかです。
「経験上いける」「何となく大丈夫」という言葉だけでなく、どの経験や数字が根拠になっているのかまで掘り下げます。
新規事業なら、市場規模、顧客数、成約率、単価、継続率、必要コストなどへ分けられるでしょう。
工数予測なら、過去の類似案件で実際にかかった時間と、今回増減する工程を確認します。
数字へ落としてみると、確信を支える材料があるのか、それとも「できそうな感じ」が先行していたのかが見えてきます。
不確実性を残せているか
健全な自信を持っている人でも、未来を完全には予測できません。
「絶対に成功する」ではなく、「現時点では成功確率を60〜70%程度と考えている」と言えるなら、不確実性が残されています。
一方、未知の要素が多い案件なのに、「ほぼ間違いなくこの範囲に収まる」と極端に狭い予測をするなら、過度の確信が入り込んでいないか確認する意味があります。
CFOを中心とする財務担当幹部の研究で、80%予測区間に実績が36%しか入らなかった結果は、主観的な確信と実際の予測精度が大きくずれることがある例です。
間違っていたと認める条件を決められるか
「この戦略で進む」と決めるなら、何が起きたときに見直すのかも決めておきます。
新規事業なら、「六か月後の継続率が○%を下回れば商品設計を見直す」と設定できるでしょう。
営業施策なら、「三か月連続で獲得単価が○円を超えた場合は停止する」と決められます。
反対に、結果が悪くなるたびに「市場が特殊だった」「時期が悪かった」「あと半年あれば伸びた」と説明を変え続ければ、自分の判断が間違っていたかどうかを確認できません。
健全な自信には、自分の判断を修正する出口があります。
強い意見を持つことと、何があっても考えを変えないことは別です。
反対の証拠で確信度を変えられるか
自分の考えと反対のデータが出たとき、確信を修正できるかも重要です。
たとえば、新施策の成功確率を80%と考えていたところ、過去の類似施策では成功率が35%だったと分かったとします。
それでも80%を維持するなら、今回だけ成功率が高くなる理由を説明する必要があります。
一方、「そのデータを考えると60%程度まで下げたほうがよさそうだ」と変えられるなら、新しい情報を判断へ取り込めています。
考えを変えることは弱さではありません。
証拠に合わせて確信度を調整できることは、意思決定能力の一部です。
仕事で過信を減らす4つの仕組み
自信過剰バイアスを知ったあと、「もっと謙虚になろう」「慎重に考えよう」と決意する人もいるでしょう。
しかし、人は過信している瞬間ほど、自分では合理的に考えていると感じています。
だからこそ、性格や気合いだけに頼るのではなく、判断の中へ確認作業を組み込むほうが実践的です。
1 事前検屍法で失敗した未来から考える
重要なプロジェクトを始める前に、「この計画は一年後に大失敗していた」と仮定し、その原因を考える方法があります。
これはプレモーテム、あるいは事前検屍法と呼ばれる考え方です。
通常の会議で「何か懸念はありますか」と聞かれると、すでに推進ムードができているほど、反対意見は言いにくくなります。
「ここで水を差したくない」「自分だけ後ろ向きだと思われたくない」という気持ちが働くからです。
そこで、未来の失敗をすでに起きた出来事として扱います。
「一年後、この事業は撤退している。何が起きたのか」と問えば、市場縮小、採用難、システム障害、競合の値下げ、顧客離脱など、失敗理由を挙げること自体が会議への貢献になります。
背景には、Mitchell、Russo、Penningtonによるprospective hindsightの研究があります。
Gary Kleinは、この考え方をプロジェクト実務のプレモーテムへ応用する方法を紹介し、背景研究に関連して「将来の結果について理由を見つける能力が30%高まる」という値を紹介しています。
ただし、この30%を「プレモーテムを行えばリスク発見能力が30%向上する」と直接解釈するのは適切ではありません。
元研究は、プレモーテムという手法そのものの効果を測定した試験ではないからです。
プレモーテムの価値は、数字そのものより、「失敗はもう起きた」と考えることで、普段なら言いにくい懸念を口にしやすくする点にあります。
2 過去の類似案件を基準にする
二つ目は、今回の案件だけを見るのではなく、似た案件の実績を基準にする方法です。
新しいシステムを半年で導入できると考えたなら、まず過去の類似案件が実際には何か月かかったのかを見ます。
類似案件十件の平均が十か月なら、「今回は半年で終わる」という予測には、四か月短縮できる理由が必要です。
人員が倍になっている、工程が少ない、既存システムを流用できるなど、具体的な条件が確認できれば、平均との差にも根拠があります。
反対に「今回はうまくいきそう」という感覚しかないのであれば、過去実績のほうを重く見る価値があります。
Buehlerらの研究でも、関連する過去経験を現在の予測へ結び付けるよう促すことで、課題完了時期に関する楽観的な偏りが抑えられました。
経験を「前にもやったから大丈夫」という自信の材料だけではなく、「実際には何が起きたか」というデータとして利用するのです。
3 反対意見を意図的に取り入れる
重要な会議では、提案の弱点をあえて探す役割を置く方法があります。
一般に「悪魔の代弁者」と呼ばれるアプローチで、推進ムードが強い会議に別の視点を入れる選択肢の一つです。
全員が期待している新規事業について、「その前提は甘いのではないですか」と一人だけ言うのは簡単ではありません。
会社のために懸念を示したつもりでも、「あの人はいつも否定的だ」と受け取られることがあるからです。
そこで、「今回はAさんがリスクを探す担当」と正式に役割を決めれば、批判を個人の性格ではなく仕事として扱いやすくなります。
ただし、反対役を置けば自動的に認知バイアスが減るわけではありません。
Nemethらの研究では、割り当てられた悪魔の代弁者よりも、本当に多数派と異なる意見を持つ少数派のほうが、発散的な思考を促した結果が報告されています。
一方、条件によっては悪魔の代弁者が判断の偏りを弱める結果も報告されているため、効果は一方向ではないと考えられています。
そのため、重要なのは「誰か一人に反対させること」ではありません。
会議前に各自が独立して懸念を書く、役職の低い人から先に意見を聞く、別部署の人を参加させるなど、本当に異なる情報が消えない仕組みをつくる必要があります。
判断の質を高めるには、形式的に反対意見を作ることより、本当に違う見方を安全に出せることが重要です。
悪魔の代弁者は、そのための選択肢の一つとして使うのがよいでしょう。
4 自己評価と外部評価を定期的に比べる
管理職やリーダーでは、自分の感覚だけでマネジメント能力を測らない仕組みも必要です。
たとえば、自分では「部下へ十分に権限移譲できている」と5段階で4点をつけているのに、部下の平均評価が2点だったとします。
そこで「部下が自分の意図を理解していない」と考えれば、自己評価は変わりません。
一方、「なぜ自分には4点に見え、部下には2点に見えるのだろう」と考えれば、行動の違いを探せます。
仕事を任せているつもりでも、途中で細かく修正しているのかもしれません。意見を求めていても、自分と違う案が出た瞬間に説得へ切り替えているという可能性もあります。
360度評価や匿名サーベイは万能ではありません。
回答者の感情や質問の作り方、組織風土の影響を受けるため、数値だけで人を評価すべきでもないでしょう。
それでも、自分とは違う視点を定期的に受け取ることには意味があります。
過信を減らす仕組みとは、自信をなくす仕組みではなく、自信が現実から離れ始めたときに気づける仕組みです。
実践ミニワーク 仕事時間の予測と実績を1週間比べる
自分の判断がどの程度ずれているかを知るには、頭の中で考えるより、実際に測ってみるほうが分かりやすいでしょう。
そこで、一週間だけ「予測時間」と「実績時間」を記録してみます。
対象は、30分以上かかる仕事を中心に、一日二〜三件程度で構いません。
仕事を始める前に、完了まで何分かかると思うかを書きます。作業後に実際の時間を記録し、差が出た理由も一言だけ残します。
| 対象タスク | 予測時間 | 実績時間 | 乖離時間 | 主な理由 |
|---|---|---|---|---|
| 企画書のドラフト作成 | 60分 | 95分 | +35分 | 関連データの探索に時間がかかった |
| 定例会議の議事録 | 30分 | 45分 | +15分 | 緊急チャットへの対応が入った |
| 提案書の修正 | 45分 | 40分 | -5分 | 過去資料を流用できた |
| 概算見積書の作成 | 20分 | 35分 | +15分 | 他部署への確認が発生した |
| 月次営業データ分析 | 90分 | 130分 | +40分 | データ抽出エラーが発生した |
乖離率を確認するなら、次の式で計算できます。
乖離率=(実績時間-予測時間)÷予測時間×100
たとえば60分と予測した仕事に90分かかった場合、乖離率は50%です。
一週間が終わったら、「何件外れたか」だけでなく、どの方向へ外れているかを見ます。
毎回20〜30%ほど実績時間が長いなら、工数を短めに見積もる傾向があるという可能性があります。
ただし、一週間の平均が30%だったからといって、「自分は必ず30%短く見積もる」と決めつける必要はありません。
その週にトラブルが集中していたのかもしれませんし、仕事の種類によって違いがあるでしょう。
数週間続けた結果、「一人で完結する資料作成はほぼ正確だが、他部署との調整を含む仕事では毎回長引く」と分かれば、より実用的な補正ができます。
すべての仕事を一律1.3倍にするのではなく、調整業務のある予定だけ余裕を持たせればよいのです。
このミニワークの目的は、自分がどれほど間違えるかを責めることではなく、自分の感覚をどこまで信用してよいかを知ることです。
自分の癖が見えれば、「何となく慎重になる」のではなく、必要な場所だけ具体的に修正できます。
自信過剰バイアスとダニング クルーガー効果の違いは?
自信過剰バイアスとダニング・クルーガー効果は、自己評価が現実からずれるという点では関係がありますが、同じ概念ではありません。
KrugerとDunningの1999年の研究では、ユーモア、文法、論理の課題で成績が下位四分位だった参加者が、自分の成績や能力を大きく高く見積もる傾向が報告されました。
研究では、実際の成績が平均で12パーセンタイル程度だった下位群が、自分の成績を62パーセンタイル程度と推定した結果などが示されています。
研究者らは、課題を正しく遂行するために必要な技能と、自分の正誤を評価するためのメタ認知的技能が重なることを一つの説明として論じました。
一方、自信過剰はより広い概念として扱われます。
能力や成果を高く見積もる過大評価だけではなく、他者より自分を高く置く過大配置や、自分の予測を必要以上に正確だと考える過度の確信も含まれます。
| 自信過剰バイアス | ダニング・クルーガー効果 |
|---|---|
| 一方、自信過剰はより広い概念として扱われます。 能力や成果を高く見積もる過大評価だけではなく、他者より自分を高く置く過大配置や、自分の予測を必要以上に正確だと考える過度の確信も含まれます。 |
KrugerとDunningの1999年の研究では、ユーモア、文法、論理の課題で成績が下位四分位だった参加者が、自分の成績や能力を大きく高く見積もる傾向が報告されました。 研究では、実際の成績が平均で12パーセンタイル程度だった下位群が、自分の成績を62パーセンタイル程度と推定した結果などが示されています。 |
そのため、「知識の少ない初心者だけが自信過剰になる」と考えるのは適切ではありません。
経験豊富な専門家や経営者であっても、予測の不確実性を狭く見積もるという可能性があります。
また、ダニング・クルーガー効果についても、「能力の低い人は必ず自信満々になる」という単純な法則として使うべきではありません。
他人を揶揄する言葉として使うより、「自分は何を知らないのかを正しく認識できているか」と考える材料にしたほうが、仕事では役立つでしょう。
自信があること自体は悪い?
自信そのものは悪いものではありません。
仕事では、すべての情報がそろわないまま判断し、動かなければならない場面が多くあります。
新規事業に成功保証はありませんし、管理職になった初日から、すべての部下に最適な接し方が分かる人もいないでしょう。
それでも前へ進むには、「自分なら対応できる」という感覚が必要になることがあります。
Banduraが論じた自己効力感は、そうした行動、努力、持続性と関係する概念です。
問題なのは、自信が強いことではありません。
自信の強さと、客観的な根拠の強さが大きくずれていることです。
リスクを確認し、反対意見も聞き、結果が外れれば修正できる人が「この案で進めよう」と強く主張しても、それだけで自信過剰とは言えません。
必要なのは、自信を弱くすることではなく、現実に合わせて調整できる状態を保つことでしょう。
自分が自信過剰か確認する方法は?
自分が自信過剰かどうかを、一度の性格診断のように決める必要はありません。
分かりやすい方法の一つは、自分の予測を結果が出る前に記録し、後から実績と比べることです。
「二時間で終わる」と予測した仕事が、十回平均で四時間かかっているなら、所要時間を楽観的に見積もる傾向があるという可能性があります。
営業で「80%くらい受注できる」と判断した案件を記録し、実際には40%しか受注できていないなら、受注確率への確信が強すぎるのかもしれません。
逆に、80%と判断した案件が長期的におよそ80%成立しているなら、その領域の確信度は比較的よく較正されていると考えられます。
一回の失敗だけで、自分を「自信過剰な人」と分類する必要はありません。
同じ種類の判断を何度も行ったとき、確信度と実績がどの程度一致しているかを見ることが重要です。
さらに、当たった予測も振り返ってみてください。
結果が正しかったからといって、判断過程まで正しかったとは限りません。偶然当たった場合もあれば、判断過程は妥当でも予測不能な出来事によって外れる場合もあります。
見るべきなのは、一回の正解や失敗ではなく、自分の予測が長期的にどの程度現実と合っているかです。
管理職やリーダーほど自信過剰になりやすい?
「管理職になれば自信過剰になる」と一律に断定することはできません。
役職の高さと、自信過剰であることは同じではないからです。
一方で、管理職には、自分の判断を修正する情報が届きにくくなる条件がそろう場合があります。
昇進までに成功経験を積み、判断を求められる回数が増え、そのうえ部下が批判的な意見を直接言いにくくなれば、「自分の判断は正しい」という感覚を修正する機会が減るという可能性があります。
Galinskyらの研究は、権力と視点取得の関係を示していますが、自信過剰そのものを測定した研究ではありません。
一方、CEOやCFOを中心とする財務担当幹部を対象にした別の研究では、過度の確信や経営者の自信過剰の代理指標と、投資、負債利用、企業買収、資金調達などとの関連が報告されています。
日本企業を対象とした研究も存在します。
ここから言えるのは、「管理職は危険だ」ということではありません。
判断権限が大きくなるほど、一つの判断ミスが周囲へ与える影響も大きくなるため、自分に異論が届く仕組みや、予測と実績を比較する仕組みがより重要になるということです。
「私は謙虚だから大丈夫」と性格で判断するより、「自分が間違っていた場合、それを知らせる情報はどこから届くのか」と考えるほうが実践的でしょう。
まとめ
自信過剰バイアスとは、単に自信満々な人が陥る問題ではありません。
自分の能力や成果を実際以上に高く見る過大評価、周囲との比較で自分を高い位置へ置く過大配置、自分の予測を必要以上に正確だと考える過度の確信など、複数の形があります。
さらに、仕事で起こる判断ミスのすべてが自信過剰そのものというわけでもありません。
仕事時間を短く見積もる計画錯誤のように過信と重なりやすい現象もあれば、コントロールの錯覚、権力と視点取得、自己奉仕的な帰属など、異なる心理的要因が「自分なら大丈夫」という確信を補強する場面もあります。
だからこそ、「あの人は自信過剰だ」と人物へラベルを貼ることより、どの判断のどの部分が現実からずれているのかを見ることが重要です。
仕事時間なら過去の所要時間を確認します。企画なら類似案件の成功率や失敗条件を見て、管理職なら自分の評価だけでなく部下側から見える情報を確かめます。
過去の成功体験を使う場合も、「前回成功した」という事実だけでなく、前回と今回で条件がどう違うのかを整理したほうがよいでしょう。
そのうえで、予測を事前に残す、過去の実績と比べる、失敗した未来から考える、異論が消えない仕組みをつくるといった方法を、仕事の中へ少しずつ組み込みます。
まずは一週間、仕事の所要時間について予測と実績を比べるだけでも構いません。
そこで「他部署との調整がある仕事だけは毎回長くなる」と分かったなら、それは自分の判断力に失望する材料ではなく、次から予定を正確に組むための具体的な情報になります。
「自分なら大丈夫」と感じること自体を否定する必要はありません。
その直後に、「そう判断できる数字は何だろう」「自分が間違っているとしたら、どこだろう」と一度だけ問い直す。その習慣があれば、自信を失わずに、過信だけを少しずつ減らしていけるのではないでしょうか。
参考資料
自信過剰の過大評価・過大配置・過度の確信という分類
Moore and Healy 2008 The Trouble with Overconfidence
CFOを中心とする財務担当幹部の予測の較正と企業行動
Ben-David Graham and Harvey 2013 Managerial Miscalibration
仕事や課題の完了時間を楽観的に見積もる計画錯誤
Buehler Griffin and Ross 1994 Exploring the Planning Fallacy
偶然事象におけるコントロールの錯覚
Langer 1975 The Illusion of Control
CEOの自信過剰と企業投資
Malmendier and Tate 2005 CEO Overconfidence and Corporate Investment
CEOの自信過剰と企業買収
Malmendier and Tate 2008 Who Makes Acquisitions
権力と他者視点の取得
Galinsky Magee Inesi and Gruenfeld 2006 Power and Perspectives Not Taken
成功と失敗に関する自己奉仕的な原因帰属の古典的レビュー
Miller and Ross 1975 Self-serving Biases in the Attribution of Causality
ダニング クルーガー効果として知られる自己評価研究
Kruger and Dunning 1999 Unskilled and Unaware of It
自己効力感の理論
Bandura 1977 Self-efficacy Toward a Unifying Theory of Behavioral Change
未来の結果をすでに起きたものとして考えるprospective hindsight研究
Mitchell Russo and Pennington 1989 Back to the Future
プレモーテムをプロジェクト実務へ応用する方法
Gary Klein 2007 Performing a Project Premortem
悪魔の代弁者と実際の少数意見による異論の比較
Nemeth Brown and Rogers 2001 Devil's Advocate versus Authentic Dissent
悪魔の代弁者とエスカレーション オブ コミットメント
Schwenk 1988 Effects of Devil's Advocacy on Escalating Commitment
日本企業における経営者の自信過剰と配当・投資
寧東来 2022 経営者の自信過剰 企業の配当と投資についての実証研究
日本企業における経営者の自信過剰と外部資金調達
Ishikawa and Takahashi 2010 Overconfident Managers and External Financing Choice