マンション実態調査を検討すると、「アンケートの設計は誰に相談すればよいのか」「未回答マンションへの訪問まで外部へ依頼できるのか」「調査結果をどのように施策へつなげればよいのか」と、実施段階の疑問が次々に出てきます。
とりわけ担当職員が限られている自治体では、調査の必要性を感じていても、発送から問い合わせ対応、現地確認、結果整理まで職員だけで担えるのか不安になるでしょう。「調査を始めたものの、大量の作業とデータだけが残ったらどうしよう」という懸念が、計画を進めにくくすることもあります。
そこで検討したいのが、マンション管理の実務を理解するマンション管理士や地域のマンション管理士会との連携です。マンション管理士は実態調査のすべてを代行する存在ではありませんが、調査項目の検討から管理組合との対話、未回答マンションへのフォロー、現地確認、その後の支援への接続まで、自治体の仕様と役割分担に応じて専門性を生かせる工程があります。
この記事では、自治体のマンション実態調査でマンション管理士へ何を依頼できるのかを最初に整理したうえで、実際の自治体事例、編集モデル、外部委託時の注意点まで実務の流れに沿って解説します。
マンション実態調査でマンション管理士が支援できる7つの業務
自治体担当者が最初に知りたいのは、制度の詳しい説明よりも「結局どの仕事をマンション管理士へ相談できるのか」ではないでしょうか。
実際の業務範囲は、自治体の委託仕様書、契約条件、予算、調査目的、受託者の人員や経験によって異なります。それでも、マンション管理士の専門性を生かしやすい工程は大きく7つに整理できます。
| 調査工程 | マンション管理士が支援できる内容 | 自治体が担う主な役割 |
|---|---|---|
| 調査設計 | 設問案の作成 専門用語の整理 制度を踏まえた項目検討 | 調査目的と政策上の利用目的を決定 |
| アンケート | 問い合わせ対応 設問の補足 回答方法の案内 | 対象決定 発送方針 情報管理 |
| 未回答フォロー | 現地での回答依頼 再案内 管理組合との接点づくり | 訪問方法 回数 行動範囲を仕様化 |
| 現地外観調査 | 目視確認 写真撮影 状態の記録 | 調査範囲 記録基準 緊急報告方法を決定 |
| ヒアリング | 管理組合役員等から課題や背景を聞き取る | 行政支援の対象と範囲を検討 |
| 結果整理 | 回答と現地情報の照合 管理上の課題整理 | 政策判断 支援候補の検討 |
| 調査後支援 | 相談会 専門家派遣 管理改善支援への接続 | 制度運用 行政上の助言や指導等を判断 |
この整理から分かるのは、マンション管理士の役割が単なるアンケート回収に限られないことです。調査票に書かれた回答を管理組合運営の実態と結び付け、自治体がその後の施策を考えられる情報へ整理する部分にも、専門性を活用できる可能性があります。
一方、詳細な建築診断、高度な統計解析、行政上の助言や指導等の最終判断まで、マンション管理士という資格だけを理由に一括して委ねられるものではありません。自治体が担う部分と専門家へ依頼する部分を最初に分けて考えることが、実態調査を外部委託するときの重要な出発点です。
マンション実態調査とは
マンション実態調査とは、自治体が区域内に所在する分譲マンションについて、建築年や戸数などの基本情報に加えて、管理組合の運営、管理規約、総会、修繕積立金、長期修繕計画、大規模修繕、居住状況、防災などを把握し、今後のマンション政策を検討するために行う調査です。
担当者としては、「所在地や築年数なら既存台帳で確認できるため、新たな実態調査まで必要なのだろうか」と感じることもあるでしょう。しかし、自治体が把握したいのは建物が何年経過しているかだけではありません。
同じ築40年のマンションでも、毎年総会を開催し、長期修繕計画を見直しながら修繕を進めている管理組合があります。その一方で、外観には大きな問題が見えなくても、役員のなり手が減り、修繕や資金について話し合うこと自体が負担になっている管理組合もあると考えられます。
築年数だけを見ても、必要な行政支援は判断できません。建物というハードの状態と、それを維持する管理組合という組織の状態を重ねて把握することで、初めて地域のマンションが抱える課題が見えてきます。
マンションの高経年化と区分所有者の高齢化
マンション実態調査の必要性を考えるうえで無視できないのが、建物と区分所有者の双方が年齢を重ねる、いわゆる「2つの老い」です。
国土交通省の令和5年度マンション総合調査は、全国の管理組合と区分所有者を対象とした標本調査として実施されています。区分所有者向け調査では8,540件を対象として3,102件の有効回答があり、回収率は36.3%でした。
その回答結果では世帯主が70歳以上である割合が25.9%となり、昭和59年以前に完成したマンションでは55.9%に達しています。したがって、この割合は全国すべてのマンションの区分所有者を悉皆集計した数字ではなく、国土交通省が実施した標本調査への回答結果として理解する必要があります。
建物が古くなれば、修繕箇所や必要となる工事も増えていきます。それと同時に、総会へ参加し、役員を担い、修繕積立金や大規模修繕について合意形成する区分所有者も年齢を重ねるため、「工事費をどう確保するか」という課題と「誰が管理組合運営を担うのか」という課題が重なる可能性があります。
外壁の状態だけを見ていても、この変化までは分かりません。だからこそ自治体のマンション実態調査では、建物だけでなく管理組合の運営状態まで確認する必要があるのです。
自治体がマンション実態調査を行う目的
自治体が実態調査を行う目的は、報告書を完成させて事業を終えることではありません。区域内のマンションが現在どのような状態にあり、どこには情報提供が有効で、どこには個別相談や専門家による支援が必要なのかを検討できる状態をつくることが重要です。
マンション管理計画認定制度は令和4年度から始まっています。さらに令和7年のマンション関係法改正を受けて制度改正が進み、令和8年9月現在、管理計画認定制度の拡充や認定基準の見直しに関する規定は令和9年4月1日に施行される予定です。関係する省令と告示も令和8年7月31日に公布されています。
制度が整備されても、自治体が区域内のマンションの実態を把握していなければ、必要な相手へ制度や支援策を届けることは難しいでしょう。
管理不全の兆候を早期に把握する
実態調査では、総会が継続的に開催されているか、管理者が選任されているか、管理規約が整備されているか、修繕積立金を確保しているか、長期修繕計画を作成しているかといった情報を確認できます。
ただし、一つの項目だけを根拠に「管理不全」と断定するのは適切ではありません。
たとえば長期修繕計画が「あり」と回答されていても、長期間見直されていなければ、現在の工事費や建物の状態を十分に反映できていない可能性があります。逆に形式面だけを見ると十分ではないように見えても、小規模マンションで区分所有者同士の意思決定が継続し、必要な修繕が行われている場合もあるでしょう。
調査結果は最終的な判定ではなく、「もう少し状況を確認したほうがよいマンションはどこか」「どのような支援が考えられるか」を判断する材料として利用する必要があります。
マンション政策の基礎データを整える
実態調査を行うことで、区域内のマンションを担当者の印象ではなくデータで捉えられるようになります。
築40年以上のマンションがどの地区に集中しているのか、長期修繕計画を作成していない管理組合がどの程度あるのか、役員不足を課題として挙げるマンションがどの地域に多いのかが分かれば、マンション管理適正化推進計画や支援事業を検討する基礎になります。
調査前には「古いマンションが多い地域から支援すればよい」と考えていたものの、結果を見ると比較的新しいマンションでも管理組合運営に悩んでいるケースが多いかもしれません。反対に、高経年であっても適切な管理を続けているマンションが多数確認される可能性があります。
実態調査には、地域の状況を知るだけでなく、行政側が持っていた見立てが実態と合っているかを確認する意味もあるでしょう。
管理計画認定制度へつなげる
実態調査は、管理上の問題があるマンションだけを探すものではありません。管理規約、総会、会計、長期修繕計画などについて一定の管理状態が確認できれば、管理計画認定制度の情報を届ける候補として検討できます。
令和9年4月1日からは管理計画認定制度が拡充され、新築時に分譲事業者が管理計画の認定を申請できる仕組みや認定基準の見直しも施行される予定です。
これから実態調査を設計する自治体では、調査実施時期と制度改正の時期を確認しながら、どの項目を把握しておくと今後の制度周知に利用できるかを検討するとよいでしょう。
管理が不十分なマンションを探すことだけを調査目的にすると、管理組合には「行政から評価される」「問題を探されている」という警戒感が生じる可能性があります。適切な管理を続ける管理組合の取組も把握し、その先の認定制度や支援策へつなげる姿勢を示すことで、調査の目的も伝わりやすくなります。
行政と接点のない管理組合を把握する
行政窓口へ相談に来る管理組合だけを見ていると、行政と接点を持てていない管理組合の状況は把握できません。
役員の負担が大きい、管理者が決まらない、区分所有者との連絡が十分に取れないといった事情を抱えているマンションでは、問題を認識していても行政へ相談するきっかけを持てていない可能性があります。
そこで実態調査をアウトリーチの入口として利用し、アンケートや現地確認を通じて管理組合との接点をつくり、その後の相談会や専門家派遣などへつなげる方法が考えられます。
マンション管理士が実態調査を支援できる理由
マンション実態調査でマンション管理士を活用する理由は、単に「マンションについて詳しい資格者だから」ということだけではありません。
重要なのは、管理規約、総会、管理者、修繕積立金、長期修繕計画など、調査票に並ぶ項目が実際の管理組合運営でどのような意味を持つのかを理解しながら調査へ関われることです。
調査項目を管理組合の実務へ置き換えられる
自治体担当者には意味が明確に見える質問でも、回答する役員には分かりにくいことがあります。
「管理者とは管理会社のことですか」「昔作った長期修繕計画でも計画ありと答えてよいのでしょうか」「大規模修繕にはどの工事まで含まれますか」といった疑問が生じれば、回答者によって設問の解釈が変わるでしょう。
マンション管理士が調査票の作成や問い合わせ対応へ関与する場合には、行政が把握したい内容を維持しながら、管理組合側にも理解しやすい表現へ調整する支援が期待できます。
ただし、専門家が回答内容そのものを決めることは避けなければなりません。設問の意味を説明することと、「このマンションなら『はい』と回答してください」と誘導することは異なります。調査データの信頼性を保つためにも、この線引きは必要です。
数字の奥にある事情を整理できる
アンケートで「役員のなり手不足」と回答したマンションが複数あったとしても、その背景がすべて同じとは限りません。
区分所有者の高齢化によって役員候補が減っている場合もあれば、賃貸化が進み、所有者の多くがマンション外に居住している場合もあります。また、「理事長になれば大規模修繕の問題まで背負うことになる」という心理的負担から、役員就任を避けている可能性もあるでしょう。
集計表では、いずれも「役員不足」という同じ項目に入ります。しかし、行政が支援策を考えるのであれば、なぜ役員を選びにくくなっているのかまで把握したほうが、現実に合った支援を検討しやすくなります。
行政と管理組合の間をつなぐ役割が期待できる
自治体から突然調査票が届き、総会、修繕積立金、長期修繕計画について詳しく尋ねられれば、「何か問題があると判断されているのだろうか」と不安になる管理組合があっても不思議ではありません。
調査目的を十分に説明せず回答だけを求めれば、行政への警戒感を高める場合があります。
自治体調査や管理組合対応の経験を持つマンション管理士が関わる場合には、管理組合が普段どのようなことで悩んでいるのかを踏まえながら、今後の支援策を検討するための調査であることを説明し、行政との対話の入口をつくる役割も期待できます。
もっとも、マンション管理士であれば誰でも同じ水準で自治体調査へ対応できるわけではありません。現地調査経験、自治体業務への理解、問い合わせ対応、人員配置、個人情報管理、データ整理など、実際に依頼する業務に必要な体制が整っているかを確認する必要があります。
調査項目の検討をマンション管理士が支援する方法
実態調査は、現地へ出る前の設問設計によって結果の使いやすさが大きく変わります。
担当者としては「せっかく調査するなら、後から困らないように多くの項目を聞いておきたい」と考えるかもしれません。ところが、質問を増やすほど回答者の負担は重くなり、項目数が多すぎれば最後まで回答してもらえなかったり、本当に重要な設問が空欄になったりする可能性があります。
宮城県マンション管理士会が自治体と連携して行った公表事例では、管理規約、管理者、総会、理事会、管理費、修繕積立金、長期修繕計画、大規模修繕、区分所有者名簿、防災などを調査しています。
Webアンケート、写真台帳、マンション管理台帳、GISなども組み合わせており、単純な郵送アンケートだけに頼らない実態調査の例として参考になります。
編集モデル 自治体向けマンション実態調査票
以下は、公表されている自治体調査やマンション管理士会の事例を参考に、本記事で整理した編集モデルです。
国や自治体が定めた標準調査票ではないため、そのまま仕様書へ転記するのではなく、自治体の調査目的や既存制度に合わせて調整することを前提としています。
| 調査分野 | 調査項目例 | 回答方法例 | 行政で確認する目的 |
|---|---|---|---|
| 基本情報 | 建築年と総戸数 | 年月と戸数 | 高経年化の把握 |
| 管理組合 | 管理組合の有無 | あり なし 不明 | 管理主体の確認 |
| 管理者 | 理事長等の選任 | 選任 未選任 不明 | 意思決定体制の確認 |
| 総会 | 年1回以上の開催 | はい いいえ | 組合活動の継続性 |
| 理事会 | 開催状況 | 定期 不定期 なし | 日常運営の状況 |
| 管理規約 | 管理規約の有無 | あり なし | 管理ルールの整備 |
| 管理規約 | 最終改正時期 | 年月 不明 | 規約更新状況 |
| 会計 | 管理費と修繕積立金の区分 | 区分 未区分 不明 | 会計管理の状況 |
| 修繕積立金 | 積立の有無 | あり なし | 将来修繕への備え |
| 修繕積立金 | 滞納状況 | なし あり 不明 | 財務上の課題 |
| 長期修繕計画 | 計画の有無 | あり なし | 計画的維持管理 |
| 長期修繕計画 | 最終見直し時期 | 年月 不明 | 計画更新の状況 |
| 大規模修繕 | 実施時期と回数 | 年月 回数 | 修繕履歴の把握 |
| 居住状況 | 賃貸化と空き住戸 | 概算割合 | 合意形成への影響 |
| 所有者情報 | 連絡先不明所有者 | あり なし 不明 | 組合運営上の課題 |
| 防災 | 防災活動と備蓄 | 実施 未実施 | 地域防災との関係 |
| 管理課題 | 現在困っていること | 選択式と自由記述 | 支援需要の把握 |
特に軽視したくないのが自由記述欄です。
「毎年役員を決めるだけで負担になっています」「修繕積立金を増やす必要は分かっていますが、反対が多く話を進められません」といった言葉は、きれいな統計データへ変換しにくい情報でしょう。
それでも、自治体が次にどのような支援を用意するべきか考える際には、このような声から見えてくる背景が重要になることがあります。
調査票を作成した後には、それぞれの質問について「この回答を得たら、どの施策判断に使うのか」を確認するとよいでしょう。使い道を明確に説明できない項目が増えている場合には、調査票が必要以上に重くなっている可能性があります。
アンケート調査でマンション管理士ができること
マンション実態調査では、紙の郵送回答にオンライン回答を組み合わせている事例があります。
神奈川県の令和7年度町村部マンション実態調査では、紙の調査票を郵送するとともにGoogleフォームによる回答も用意されました。横浜市の令和7年度マンション管理組合実態把握調査でも、返信用封筒による郵送とオンラインの双方が採用されています。
したがって、全国的な普及状況を示す統計がない状態で「オンライン化が広がっている」と一般化するより、複数の自治体で紙とオンラインを併用する事例が確認できると整理するほうが正確です。
高齢の役員には紙のほうが安心して回答できる場合があります。一方、仕事の合間に回答する役員や管理会社担当者には、オンラインのほうが負担を感じにくいかもしれません。
回答方法を複数用意する意味は、調査側の効率化だけではなく、管理組合側の事情に合わせて回答しやすい入口を用意することにもあります。
問い合わせ対応も調査品質を左右する
アンケートを発送すると、設問の意味について質問が寄せられます。
ここで自治体職員や調査員ごとに説明内容が異なれば、回答結果にもばらつきが生じる可能性があります。マンション管理士が問い合わせ対応へ関与する場合には、管理者、総会、修繕積立金、長期修繕計画、大規模修繕などの用語を、管理実務を踏まえて補足できることが利点です。
問い合わせ対応まで委託する場合は、よくある質問への回答例を用意するだけでなく、自治体判断が必要な質問をどの段階で担当課へ戻すのかも決めておくとよいでしょう。回答の統一性を保つことは、調査結果の信頼性を高めるうえでも重要です。
未回答マンションへのフォローをどう行うか
実態調査を進めると、担当者が気になり始めるのが未回答マンションです。
「回答できるマンションだけが返してくれて、本当に状況を確認したいマンションほど回答していないのではないか」と感じることもあるでしょう。
とはいえ、未回答であることだけを理由に管理不全と判断することはできません。理事長交代の時期と重なった、調査票が管理組合へ適切に届かなかった、回答期限を忘れていた、調査目的が分からず保留していたなど、さまざまな事情が考えられます。
一方で、管理組合活動の停滞や連絡経路の不備が未回答の背景にある可能性もあります。そのため、未回答を単なる欠損データとして除外するのではなく、どの範囲まで追加確認するのかを調査設計時に決めておくことが重要です。
実在事例 神奈川県の未回答フォロー
神奈川県の令和7年度町村部マンション実態調査では、一般社団法人神奈川県マンション管理士会が受託者となっています。
県の公式案内では、マンション管理士会の調査員が現地調査を行い、外観等の目視確認や写真撮影とともに、アンケートへの回答がないマンションへ回答を依頼することが明記されています。
これは、マンション管理士会が調査票の作成や集計だけではなく、現地確認と未回答フォローまで担っていることを確認できる具体例です。
ただし、同じ方法がすべての自治体でそのまま実施できるわけではありません。管理組合用ポストへ再案内を投函するのか、管理員へ説明するのか、何回まで訪問するのかといったルールは、自治体の仕様書や契約条件で明確にしておく必要があります。
また、未回答フォローの目的は回答を迫ることではありません。行政がどのような目的で調査を行っているのかを説明し、これまで接点を持てていなかった管理組合とも必要に応じて対話できる状態をつくることに意味があります。
現地外観調査でマンション管理士が確認できること
アンケートから把握できるのは、基本的には回答者が認識している管理状態です。
一方、建物外観、掲示板、共用部分などについては、現地へ行って初めて確認できる情報があります。
神奈川県では、マンション管理士会の調査員による外観等の目視確認と写真撮影が実際に行われています。宮城県マンション管理士会の公表事例でも、対象マンションについて外観調査を実施し、写真台帳として整理する取組が行われています。
ここで注意したいのは、自治体の実態調査で行う外観目視と、専門的な建築診断を混同しないことです。
調査員が「外壁に目視できる欠損がある」と記録することと、「構造上危険であり特定の補修工法が必要である」と診断することでは、必要な専門性や調査方法が異なります。
実態調査では見えた状態を客観的に記録し、その情報から詳細診断の必要性を自治体が検討するという役割分担が適切でしょう。
編集モデル マンション実態調査の現地チェックリスト
以下は、公表されている調査事例を参考に本記事で整理した編集モデルであり、国や自治体が定めた標準仕様ではありません。
実際に使用する場合には、立入り可能な範囲や写真撮影条件、個人情報への配慮などを自治体ごとに定める必要があります。
| 調査場所 | 確認事項 | 記録方法例 | 行政での確認視点 |
|---|---|---|---|
| 建物全景 | 外観全体 | 全景写真 | 対象物件の確認 |
| 名称表示 | マンション名称 | 表示あり なし | 台帳との照合 |
| 外壁 | ひび割れ 欠損 剥落跡 | 場所と写真 | 追加確認の必要性 |
| バルコニー外側 | 著しい劣化 | 写真と位置 | 落下等の懸念 |
| 鉄部 | 腐食や破損 | 見える範囲を記録 | 維持管理状況 |
| 雨樋 | 破損や外れ | 状態を記録 | 雨水処理の状態 |
| 共用廊下 | 汚損や放置物 | 調査可能範囲で確認 | 日常管理状況 |
| 共用階段 | 腐食や破損 | 写真と位置 | 安全管理の参考 |
| 掲示板 | 掲示物の更新 | 最新日付等を確認 | 管理活動の参考 |
| 集合郵便受け | 郵便物の著しい滞留 | 個人情報を避けて記録 | 管理状況の参考 |
| ごみ置場 | 著しい散乱 | 状態を記録 | 衛生管理状況 |
| 管理員室 | 設置状況 | あり なし | 管理体制の参考 |
| 敷地周辺 | 周囲へ影響する状態 | 位置と状態 | 周辺環境への影響 |
重要なのは、現地調査員が「管理が悪い」といった評価を先に書かないことです。
たとえば掲示板であれば、「管理組合が活動していない」と記録するのではなく、「確認できた最新掲示物は令和○年○月付」と記録します。
外壁についても「危険」と断定するのではなく、確認した場所と見えた状態を記録したほうが、後から自治体職員や別の専門家が状況を検証できます。
写真撮影についても、建物全景、名称表示、特記事項など基本的な撮影パターンを定め、物件番号と写真番号を対応させておくことが重要です。
数百棟を対象とする場合は、現地撮影そのものよりも、後から大量の写真を正しいマンションへ紐付ける作業が大きな負担になることもあります。調査開始前に保存方法まで決めておけば、こうした混乱を減らせるでしょう。
編集モデル 調査員の1日の業務量
以下は、自治体が仕様書や予定工数を検討するために本記事で作成した仮想例です。
実際の標準勤務工程を示すものではなく、巡回件数はマンション規模、調査内容、交通事情、訪問対応の有無などによって大きく変わります。
| 時間帯 | 業務 | 主な作業 | 留意点 |
|---|---|---|---|
| 9時00分 | 事前確認 | 対象一覧と巡回順の確認 | 調査員証や機材も確認 |
| 9時30分 | 移動 | 調査地域へ移動 | 巡回経路を確認 |
| 10時00分 | 外観調査 | 全景撮影と確認項目の記録 | 無断立入を避ける |
| 11時00分 | 未回答フォロー | 管理員等へ調査趣旨を説明 | 回答を強要しない |
| 12時00分 | 中間確認 | 写真と記録漏れを確認 | 不要な再訪を防ぐ |
| 13時00分 | 午後調査 | 別エリアを巡回 | 管理員の勤務時間にも配慮 |
| 15時30分 | 特記事項整理 | 確認事項を整理 | 必要時は自治体へ速報 |
| 16時00分 | データ整理 | 写真と物件番号を紐付け | 当日中の整理を基本とする |
| 17時00分 | 終了報告 | 再訪対象や照会事項を共有 | 判断事項は自治体へ戻す |
地図上では近くに見えるマンションでも、入口が反対側にあるだけで移動時間は増えます。さらに管理員への説明が必要になったり、撮影した写真の不足に気付いたりすれば、想定した件数を回れない日もあるでしょう。
担当者としては予定より進まないことに焦りを感じるかもしれませんが、件数だけを優先すると確認漏れや写真の紐付けミスが増える可能性があります。
委託費や期間を検討する際には、現地で建物を見る時間だけでなく、移動、再訪、問い合わせ対応、写真整理、データ入力まで含めて工数を想定する必要があります。
管理組合へのヒアリングで分かること
アンケートを集計すると、「回答だけでは事情が分からない」と感じるマンションが出てきます。
たとえば「長期修繕計画あり」と回答しているにもかかわらず、大規模修繕の見通しが立っていないケースです。詳しく聞けば、「20年前に作った計画が残っているだけで、その後は見直していません」という事情が分かるかもしれません。
また、「総会は毎年開催している」と回答していても、「同じ区分所有者が何年も理事長を続けており、交代する人が見つからない」という問題を抱えている可能性があります。
こうした話を聞くほど、自治体担当者は「調査で問題を把握した以上、行政が解決しなければならないのではないか」と負担を感じることもあるでしょう。
しかし、ヒアリングの段階ですべてを解決する必要はありません。マンション管理士が関与する場合には、管理組合自身が決める問題、専門家から助言を受けることで進みやすい問題、自治体の制度へつなげられる問題を整理することが重要です。
問い方にも配慮が必要でしょう。「できていないことは何ですか」と欠点を探すように聞くより、「現在の管理で特に負担を感じていることは何でしょうか」と尋ねたほうが、管理組合側も状況を説明しやすくなります。
調査は問題点を指摘するためだけではなく、なぜその状態になっているのかを理解する機会でもあります。
調査結果の整理と分析でマンション管理士ができること
実態調査で多数の回答を集めても、「長期修繕計画ありが70%だった」という単純集計だけでは、自治体がどのマンションへ働きかけるべきか十分には見えてきません。
築年数、総会開催、管理者、長期修繕計画、修繕積立金、大規模修繕、現地確認結果などを組み合わせて見ることで、管理状態の違いを考えやすくなります。
築40年以上であっても、総会を継続して開催し、長期修繕計画を見直しながら必要な修繕を続けているマンションであれば、直ちに重点支援が必要とは限りません。
反対に、比較的新しいマンションでも管理組合の意思決定が停滞している場合には、予防的な情報提供や相談支援が役立つ可能性があります。
関連性と因果関係を分ける
調査データを見ると、複数の項目の間に一定の関連が確認される場合があります。
しかし、「総会を毎年開催しているマンションでは大規模修繕の実施割合が高かった」という結果が得られたとしても、「総会を開催すれば大規模修繕が実施できる」と因果関係まで断定することはできません。
修繕積立金の状況、マンション規模、管理会社による支援、区分所有者の構成など、別の要因が影響している可能性があります。
マンション管理士は管理実務の視点から回答内容の意味や組み合わせを整理できますが、高度な統計解析や因果推論については、データ分析の専門性を持つ事業者や研究者等と連携したほうがよい場合もあります。
支援候補として段階的に整理する
自治体が施策を検討するために、調査結果を一定の段階に整理する方法もあります。
たとえば「比較的良好な管理が確認できるマンション」「情報提供を検討するマンション」「個別相談を案内したいマンション」「追加確認が必要なマンション」といった整理です。
これは施策検討上のモデルであり、法令上の正式な分類ではありません。
アンケート回答だけを根拠として「管理不全マンション」と断定するより、「追加確認対象」「支援候補」といった表現で整理し、その後の確認を経て自治体として必要な判断を行うほうが、調査データの性質に合っています。
実在事例 宮城県マンション管理士会の調査活用
国土交通省が公開している宮城県マンション管理士会の取組は、マンション管理士会が自治体の実態調査へどのように関われるのかを考える際の参考事例です。
同事例では、Googleフォームを利用したWebアンケート、外観調査、写真台帳、マンション管理台帳などが活用されています。また、調査結果を管理計画認定制度などの施策へ結び付けることも意識されており、アンケートを実施して結果を集計するだけではない取組となっています。
この事例から注目したいのは、マンション管理士会の役割が「調査票を配布して集計する」ところで終わっていない点です。収集した情報を自治体がその後の政策や管理組合支援で利用しやすい状態へ整理することまで視野に入れています。
一方、宮城県で採用された方法が全国共通の標準仕様というわけではありません。対象マンション数、自治体がすでに持っている情報、予算、既存システムなどによって必要な調査方法や成果物は変わるため、自らの自治体で必要な部分を選んで参考にすることが重要です。
マンション管理台帳とGISを調査後に生かす
実態調査の成果をPDFの報告書だけに残してしまうと、数年後に再調査する際、再び基本情報の整理から始めなければならない可能性があります。
そこで検討したいのが、継続的に更新できるマンション管理台帳です。
住所、築年数、戸数、アンケート回答状況、長期修繕計画、現地確認日、相談履歴などを同一の識別番号で管理すれば、翌年度以降の支援対象を検討する際にも利用できます。GISと連携できれば、高経年マンションや未回答マンションがどの地区に分布しているのかを地図上で確認することも可能でしょう。
とはいえ、高機能なシステムを導入すること自体が目的になってはいけません。「納品されたときは立派だったが、担当者が異動したら誰も更新できなくなった」という状態では、せっかく集めた調査情報を政策資産として残せません。
成果物を決める際には、必要に応じてExcelやCSVなど自治体側でも扱いやすい形式を含め、翌年度以降に誰がどのように更新するのかまで仕様書で確認しておくことが重要です。
マンション管理士へ実態調査を依頼するメリット
ここまでの工程を踏まえると、マンション管理士へ実態調査の一部を依頼するメリットは、大きく三つに整理できます。
第一に、調査票と実際の管理組合運営を結び付けやすいことです。管理規約、総会、修繕積立金、長期修繕計画などについて、単に有無を聞くだけではなく、「何を確認すれば実際の管理状況を理解しやすいのか」という視点を調査設計へ反映できます。
第二に、管理組合との対話に専門性を生かせる点です。問い合わせやヒアリングで専門用語を補足しながら、回答欄だけでは見えにくい事情を整理できる可能性があります。
第三に、調査結果をその後の相談支援へつなげやすいことです。自治体に相談会や専門家派遣制度があれば、実態調査で把握した課題を次の支援へ結び付ける役割をマンション管理士が担える場合があります。
ただし、これらのメリットは「マンション管理士なら誰でもすべて対応できる」という意味ではありません。現地調査の経験、自治体との受託実績、データ処理能力、報告書作成、人員体制など、依頼する業務に合った実績と体制を持っているかを確認する必要があります。
実態調査を外部委託するときに決めること
外部委託で避けたいのは、仕様書へ「マンション実態調査業務一式」とだけ記載し、具体的な運用を受託者へ任せてしまうことです。
自治体側では当然含まれていると思っていた作業が契約上は対象外であれば、調査開始後に工程変更や追加費用が必要になる可能性があります。
調査目的と利用目的を決める
最初に決めるべきなのは、アンケートのページ数ではありません。
マンション管理適正化推進計画の見直しに使うのか、管理計画認定制度を案内する対象を考えるのか、管理上の課題を抱えるマンションへのアウトリーチを重視するのかによって、必要な調査内容は変わります。
「調査が終わった後に自治体は何を判断したいのか」を先に整理すると、必要な設問や成果物を選びやすくなります。
委託業務の範囲を決める
実態調査には、調査票設計、印刷、発送、Webフォーム、問い合わせ対応、未回答フォロー、現地調査、ヒアリング、入力、集計、分析、報告書、管理台帳作成など、多くの工程があります。
すべてを同じ事業者へ依頼する必要はありません。一方、アンケートと現地確認を同じ組織が担当したほうが、対象マンションに関する情報を共有しやすい場合もあるでしょう。
自治体職員がどこを担い、マンション管理士等へどこを依頼し、必要に応じて建築やデータ分析など別分野の専門家へ何を依頼するのかを明確にします。
調査対象を明確にする
区域内の全分譲マンションを対象とするのか、高経年マンションを中心とするのか、過年度の未回答マンションを重点対象とするのかを決めます。
団地型マンションについて一団地を一件とするのか、棟ごとに管理するのかなど、母数や集計結果へ影響する条件も最初に統一しておく必要があります。
個人情報の取扱いを決める
実態調査では、管理組合や役員の連絡先などを扱う場合があります。
受託者へ情報を提供する場合には、アクセス権限、保存方法、端末管理、持ち出し、再委託、保存期間、契約終了後の消去などを、自治体の個人情報保護や情報セキュリティに関するルールに沿って具体化する必要があります。
「適切に管理すること」という表現だけでは、現場で守るべき具体的な条件が十分に伝わらないでしょう。
現地調査の範囲を決める
公道から確認するのか、敷地内へ入る場合はどのような条件とするのか、共用部分をどこまで対象にするのか、写真を何枚撮影するのかを仕様として明確にします。
神奈川県の町村部マンション実態調査では、マンション管理士会の調査員が外観等の目視確認や写真撮影を行うことが県の案内で示されています。
他自治体で同様の方法を採用する場合にも、調査対象者への事前周知と、受託者が行える調査範囲の整理が必要です。
調査員の身分証明と住民対応を決める
マンションの周囲で建物写真を撮影している人がいれば、居住者が不審に感じる場合があります。
自治体の委託調査であることを確認できる調査員証を携帯させ、問い合わせを受けた担当課でも調査員名や調査期間を確認できる仕組みを整えておくとよいでしょう。
住民から「何を調べているのですか」と尋ねられた場合の説明内容も事前に統一しておけば、調査員によって説明が大きく異なることを防げます。
緊急性が疑われる場合の報告方法を決める
現地確認中に、落下や飛散につながる可能性を疑う状態が確認されることも考えられます。
そのような情報を最終報告書まで保留するのではなく、どのような状態を速報対象とするのか、受託者から自治体の誰へ連絡するのかを事前に決めておく必要があります。
ただし、実態調査員がその場で構造上の危険性まで断定するのではありません。確認した状態を自治体へ報告し、必要に応じて建築分野の専門家による詳細確認や関係部署への連絡を検討する形が適切です。
成果物とデータ形式を決める
報告書だけでなく、元データをどの形式で受け取るのかも重要です。
マンション番号、住所、築年数、回答状況、現地調査日、写真番号などをExcelやCSVで納品してもらえば、その後のマンション管理台帳の更新やGISへの展開にも利用できます。
仕様書を作成するときには、「担当者が異動した翌年度にも、この成果物を自治体だけで更新できるだろうか」という視点を持っておくとよいでしょう。
公開事例を参考にした実態調査の進め方
以下は、神奈川県、横浜市、宮城県マンション管理士会などの公表事例で確認できる考え方を参考に、本記事で再構成した仮想ケースです。
実在する一つの自治体やマンションを匿名化した事例ではありません。
A自治体では、高経年マンションが増えていることは把握していましたが、既存台帳に記録されているのは住所、築年数、戸数程度であり、管理組合がどの程度活動しているかまでは分かっていませんでした。
担当者は調査の必要性を感じながら、「回答してくれるのは管理状態の良いマンションだけではないか」「職員だけで未回答物件まで追えるのか」という不安を抱えていました。
そこで調査目的を、管理状態の優劣を一度の調査で判定することではなく、今後の支援を検討するために不足している情報を把握することと定め、アンケートと現地確認を組み合わせます。
調査を進めると、基本的な管理体制が整っているマンションの中にも、「役員交代ができず同じ人へ負担が集中している」「修繕積立金を見直したいが合意を得られない」といった悩みがあることが分かりました。
担当者は当初、管理組合が存在し、総会が開催されていれば大きな問題はないと考えていました。しかし回答内容を詳しく見ることで、形式的に組織が存在することと、無理なく運営を続けられることは別だと気付きます。
この振り返りによって、次回調査では管理組合の有無だけではなく、役員負担や意思決定上の課題も把握したほうがよいという改善点が見えてきます。
未回答マンションについても、一律に管理上の問題があると考えず再案内を行ったところ、調査票自体が管理組合へ十分に認識されていなかったケースなど、回答しなかった理由に違いがあることが分かりました。
自治体側も、自分たちが想定していた「未回答マンションの姿」と実際の事情が必ずしも一致しないことに気付きます。この発見は、翌年度の発送方法や管理組合連絡先の把握方法を見直す材料にもなるでしょう。
調査後には、比較的安定した管理が確認できるマンション、情報提供が役立ちそうなマンション、個別相談を案内したいマンション、さらに追加確認が必要なマンションという形で、施策上の整理を行いました。
そこで最初から大規模な新制度を設けるのではなく、既存の相談制度や専門家派遣を案内できるマンションから働きかけます。一定期間後に利用状況を確認すれば、どの支援が利用されたのかだけでなく、管理組合が実際にどのような行動を取ったのかも把握できます。
このように、最初の調査結果を絶対視するのではなく、管理組合がその状態になった背景を理解し、実行可能な支援を行った後で変化を確認する仕組みを持つことが、実態調査を継続的なマンション政策へつなげるポイントです。
実態調査後の支援をどう設計するか
実態調査の価値は、現状を把握した後にどのような支援へつなげるかによって変わります。
管理組合側から見れば、時間を使ってアンケートへ回答し、困っていることまで伝えたにもかかわらず、その後に何の情報も届かなければ「何のための調査だったのだろう」と感じるでしょう。
そのため、調査で管理上の悩みまで尋ねるのであれば、調査開始前から出口となる支援をある程度考えておく必要があります。
比較的管理状態が安定しているマンションには、管理計画認定制度などの情報提供が考えられます。役員不足や管理組合運営に関する悩みが確認されたマンションには、相談会やマンション管理士等の専門家派遣が役立つ可能性があります。
長期修繕計画や修繕積立金など具体的な課題を抱えている場合には、一般的なセミナーだけではなく個別相談へつなぐ方法も考えられるでしょう。
一方、複数の管理上の課題や周辺環境への影響が確認された場合は、調査受託者だけで結論を出すのではなく、自治体が追加確認を行い、関係法令や自治体の運用基準に基づいて必要な対応を判断します。
調査後支援で重要なのは、専門家が行政判断を代行することではありません。行政判断の主体とマンション管理士の役割を分けたうえで、調査によって得られた情報を次の相談や支援の接点へ変える仕組みを用意しておくことです。
自治体担当者からよく聞かれる質問
- マンション実態調査では何を調べますか
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調査目的によって異なりますが、所在地、建築年、戸数などの基本情報に加えて、管理組合、管理者、総会、管理規約、修繕積立金、長期修繕計画、大規模修繕などを確認する方法があります。
必要に応じて賃貸化、空き住戸、所有者との連絡状況、防災、役員不足などを調査項目へ含めることも考えられます。質問を増やすこと自体を目的とせず、それぞれの回答をどの施策判断へ利用するのかを先に整理することが重要です。
- マンション管理士に現地調査を依頼できますか
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自治体の仕様や契約条件に適合すれば、現地調査を業務へ含められる場合があります。
実際に神奈川県の令和7年度町村部マンション実態調査では、神奈川県マンション管理士会が受託し、外観等の目視確認、写真撮影、未回答マンションへの回答依頼を行っています。
ただし、実態調査としての目視確認と専門的な建築診断は異なるため、どこまでを委託業務とするのか明確にする必要があります。
- アンケート未回答のマンションにはどう対応しますか
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再送、再案内、現地での回答依頼などが考えられます。
未回答だけを理由に管理不全と判断することはできませんが、管理組合への連絡経路が十分に機能していない可能性もあります。そのため、どの段階まで未回答フォローを行うのかを調査開始前に決めておくことが重要です。
横浜市では過年度に未回答だったマンションも調査対象へ含めており、神奈川県ではマンション管理士会の調査員が未回答マンションへの回答依頼を行っています。
- マンション管理士へ依頼するメリットは何ですか
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管理規約、総会、修繕積立金、長期修繕計画などを管理組合の実務と結び付けながら、調査設計やヒアリングを進めやすいことがメリットです。
また、管理組合からの専門的な問い合わせへ対応したり、アンケートだけでは見えにくい事情を整理したりできる可能性があります。
自治体に専門家派遣制度や相談事業がある場合には、実態調査からその後の支援まで連続性を持たせやすくなるでしょう。
ただし、マンション管理士であれば建築診断、高度な統計分析、システム開発など、あらゆる業務に対応できるという意味ではありません。
- 実態調査後はどのような支援につなげられますか
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自治体の制度によりますが、管理計画認定制度の案内、マンション管理士等の専門家派遣、相談会、管理組合向けセミナーなどが考えられます。
複数の課題が確認された場合には、追加確認を行ったうえで個別の支援方法を検討します。行政上の助言や指導等が必要かどうかについては、関係法令や自治体の運用基準に基づいて自治体自身が判断します。
マンション実態調査をマンション管理士への委託判断につなげる
この記事で自治体担当者に最も持ち帰ってほしいのは、「実態調査をすべてマンション管理士へ任せればよい」という結論ではありません。
実態調査には、自治体自身が決めなければならない部分と、マンション管理士などの専門家を活用することで精度や実行力を高められる部分があります。
自治体が決めるべきなのは、何のために調査し、結果をどの施策へ利用し、どの段階から行政として判断するのかです。そのうえで、調査票設計、問い合わせ対応、未回答フォロー、現地確認、ヒアリング、結果整理などのうち、自治体だけでは人員や専門知識が不足する工程をマンション管理士へ相談する方法があります。
実態調査をこれから計画するのであれば、まず現在のマンション台帳を確認し、「すでに把握できている情報」と「支援を考えるために不足している情報」を整理するとよいでしょう。
不足している情報が分かれば、必要な調査項目も見えてきます。さらに各工程について、自治体職員が担当するのか、マンション管理士へ依頼するのか、建築やデータ分析など別分野の専門家が必要なのかを整理すれば、委託仕様書の骨格も作りやすくなるでしょう。
マンション管理士を活用する意味は、単に人手を外部へ出すことではありません。管理組合の事情を理解する専門家を調査工程へ入れることで、行政が把握している数字と現場で起きていることの間を埋め、調査結果を次の支援へ結び付けやすくすることにあります。
まとめ
マンション実態調査では、マンション管理士が調査項目の検討、アンケート問い合わせ対応、未回答マンションへのフォロー、現地外観調査、管理組合へのヒアリング、結果整理、調査後の相談支援などを担える可能性があります。
実際に神奈川県ではマンション管理士会が調査を受託し、外観確認、写真撮影、未回答マンションへの回答依頼まで実施しています。宮城県マンション管理士会の公表事例でも、Webアンケートや写真台帳、管理台帳などを組み合わせた調査が確認できます。
一方、詳細な建築診断、高度なデータ分析、行政としての最終判断まで、マンション管理士という資格だけを理由に一律で委託できるわけではありません。
自治体が調査目的と役割分担を明確にしたうえで、専門性が必要な工程へマンション管理士を活用することが重要です。調査によって得られた数字だけを見るのではなく、その背景にある管理組合の事情まで理解し、必要な支援へ結び付けられれば、マンション実態調査は一度限りの情報収集ではなく、地域のマンション管理を継続的に支える政策基盤になっていくでしょう。