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事業計画の売上根拠はどう作る? 売上目標を数字に分解する方法と計算例

事業計画に売上1億円と書いたものの、なぜ1億円になるのかと尋ねられた瞬間、説明が止まってしまうことがあります。市場には可能性を感じていて、商品やサービスへの手応えもあるのに、それを客数や成約率、単価へ置き換えようとすると、急に根拠が弱く見えてしまうからです。

しかし、そこで必要なのは将来性をもっと強い言葉で語ることではありません。売上根拠は、まず誰や何を母数にするのかを決め、その母数から購入や受注へ進む割合と単価をつないで作ります。ユニーク顧客を起点にするなら購入回数を加え、来店客数やセッション数のように複数回の接触を含み得る数字を起点にするなら、同じリピートを二重に加えないことが重要です。

この記事では、日本政策金融公庫やJ-Net21が示している売上積算の考え方を土台にしながら、店舗型ビジネス、BtoB、EC・Webサービスの売上根拠を具体化します。売上1億円から必要KPIへ逆算する方法だけでなく、粗利益、人員計画、実績データ、予実管理までつなげ、自社の事業モデルに合った売上計算式を作れる状態を目指します。

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目次

事業計画では売上目標より売上の根拠が重要

事業計画を作り始めると、最初に売上目標を決めたくなるものです。現在3,000万円なら次は5,000万円、その先には1億円というように、経営者として目指したい規模が先に浮かぶことも珍しくありません。

目標を持つこと自体には意味があります。採用人数や設備投資、広告予算を考えるためには、将来どこまで事業を伸ばしたいのかという方向性が必要だからです。

一方で、目標額だけが先に決まると、計画書を読み返した自分自身が、どうしてこの数字になったのだろうと迷う場合があります。市場が伸びている、商品には自信がある、営業を強化すると説明できても、それだけでは5,000万円や1億円という具体的な金額までは計算できません。

日本政策金融公庫の創業計画書セルフチェックでは、計算根拠をもって売上高や売上原価の予測を立てているかが確認項目になっています。また、J-Net21でも、平均商品単価と年間販売数、1日あたりの客数と客単価と年間営業日数など、業態に応じて売上を積み上げる方法が示されています。

つまり、事業計画では大きな目標を掲げることと、その目標がどの数字からできているかを示すことの両方が必要です。

売上だけでは改善する場所が分からない

たとえば、年間売上1億円という計画に対して実績が8,000万円だったとします。

売上高だけを管理していれば、分かるのは2,000万円不足したという結果までです。しかし、売上を顧客との接点、購入や受注への転換率、取引単価などへ分けておけば、どこから計画との差が生まれたのかを確認できます。

顧客との接点は計画どおりだったものの購入率が低かったのか、購入件数は予定どおりでも平均単価が下がったのか、それとも供給能力が足りず受注を取り切れなかったのかによって、次に取るべき行動は違うでしょう。

売上未達を見れば、経営者として集客を増やさなければと焦ることもあります。しかし、原因が購入率や受注率にあるなら、広告費を増やして顧客との接点だけを広げても、同じ場所で離脱が続く可能性があります。

売上根拠を作る目的は、計画書をもっともらしく見せることではありません。実績が計画から外れたときに、次にどの数字を確認すればよいか分かる状態を作ることです。

悪い売上計画と良い売上計画の違い

同じ年間売上1億円という目標でも、その数字へ至る途中が見えるかどうかによって、経営に使える情報量は大きく変わります。

検証項目 悪い売上計画 良い売上計画
売上目標 3年後に売上1億円 3年後に売上1億円
根拠 市場が成長しているため KPIから積み上げる
母数 市場規模だけを記載 自社が実際に接触できる母数を設定
転換率 商品力への期待で設定 実績やテスト結果から設定
単価 希望価格をそのまま使用 販売構成や契約実績から設定
単位 人数と件数が混在 人数や件数を明確に区別
供給能力 確認していない 人員や設備の上限と照合
予実管理 売上高だけを見る 売上を構成するKPIまで見る

市場が成長しているという情報にも価値はありますが、市場全体が伸びたから自社も同じ割合で伸びるとは限りません。

自社が何人または何社へ接触でき、そのうち何件が購入や受注へ進み、一件あたりいくら売上になるのかまで分解することで、初めて経営行動と売上目標がつながります。

事業計画に必要なのは、未来を寸分違わず言い当てる精密さではありません。未来が想定と違ったとき、その理由を追える構造ではないでしょうか。

売上予測と売上保証は分けて考える

計算根拠を細かく作ったとしても、その売上が必ず実現するわけではありません。

売上予測とは、現在確認できる市場環境、自社実績、価格、営業能力、集客力などへ一定の前提を置き、その条件が続いた場合の将来を推計するものです。競合の参入や採用の遅れ、仕入価格の上昇などが起きれば、実績が計画から離れる可能性があります。

したがって、この計算なら融資が通る、この売上計画なら補助金に採択されると断定することはできません。

重要なのは、なぜこの数字を使ったのかを現時点で説明できるようにし、その後に実績が集まったら前提を更新することです。

未来を完璧に当てなければならないと思うと、事業計画を作ること自体が重荷になります。それでも、現時点で説明可能な仮説を作り、後から精度を高めるものだと考えれば、計画書は経営者を縛るものではなく、判断を助ける道具へ変わります。

売上計算で守りたい3つの原則

売上根拠を作るうえで、計算式そのものより重要なのが数字の定義です。

人数、来店客数、セッション、企業数、商談、案件、注文など、事業では多くの数字を取得できます。しかし、それらを同じように扱うと、二重計上や単位の不整合が生まれます。

そこで、記事全体を通じて使う原則を最初に整理します。

原則1 最初の母数を決める

最初に、誰または何を数えるのか決めます。

ユニーク顧客数は、同じ人が何度来店しても一人として数える考え方です。一方、店舗で日ごとの客数を積み上げる場合には、同じ顧客が別の日に再来店すれば、その日の客数として再び含まれます。

Webでも同様です。

同じユーザーが一か月に5回サイトへ訪問した場合、ユニークユーザーでは一人ですが、セッションは複数回になります。

BtoBでも、100社の見込み企業があることと、100件の商談案件があることは同じ意味ではありません。一社から複数案件が生まれる事業では、企業数と案件数を分ける必要があります。

最初の母数を決めないまま計算を進めると、途中で異なる単位が混ざりやすくなります。

原則2 転換率の分母と分子を決める

次に確認するのが、転換率の分母と分子です。

ECでCVRが2%と書かれていても、100セッションのうち2注文という意味なのか、100ユーザーのうち2人が購入したという意味なのかで数字の意味は変わります。

BtoBでも、商談化率を商談件数÷有効リード件数とするのか、商談企業数÷見込み企業数とするのかを統一する必要があります。

パーセントだけを見ると同じ数字に見えますが、分母が違えば別のKPIです。

原則3 最後の単価を同じ単位へ合わせる

最後に、転換した結果と掛ける単価の単位を揃えます。

セッション数から注文件数へ転換するなら、その後に掛けるのは1注文あたりの平均注文単価です。企業数から受注企業数へ進むのであれば、受注企業一社あたり売上を使うなど、計算の流れに合わせます。

この3原則を守れば、後の計算はかなり整理しやすくなります。

売上計画を細かく見せるためにKPIを増やす必要はありません。最初の母数、転換率、最後の単価という一本の流れを崩さないことの方が重要です。

売上根拠の基本式を母数別に考える

売上高を作る計算式は、何を最初の母数にするかによって変わります。

一つの万能式へ無理に事業を合わせるのではなく、自社のデータ構造に合わせて選びます。

ユニーク顧客候補数を起点にする場合

一定期間に接触できるユニークな顧客候補を母数にする場合は、次のように考えられます。

売上高 = ユニーク顧客候補数 × 購入顧客化率 × 購入者一人あたり平均購入回数 × 平均購入単価

年間にユニークな見込み顧客50,000人へ接触でき、そのうち10%が一度以上購入し、購入者一人あたり年間平均2回購入し、平均購入単価が5,000円なら、

50,000人 × 10% × 2回 × 5,000円 = 50,000,000円

となります。

この式では50,000人を年間のユニーク顧客候補としているため、購入回数を別に掛けてもリピート分を二重に数えていません。

実購入者数を起点にする場合

すでに購入者数を把握している既存事業なら、購入顧客化率を省くことができます。

売上高 = ユニーク購入者数 × 一人あたり平均購入回数 × 平均購入単価

年間購入者5,000人、年間平均購入回数2回、平均購入単価5,000円なら、

5,000人 × 2回 × 5,000円 = 50,000,000円

です。

この形は、リピーターの売上寄与を分析したい事業で使いやすいでしょう。

訪問数やセッション数を起点にする場合

同一顧客の複数回接触を含む訪問数やセッション数から計算する場合には、

売上高 = 訪問数またはセッション数 × 購入転換率 × 平均取引単価

と考えられます。

ここでは購入頻度をさらに掛けません。

訪問数やセッション数には同じ顧客の再訪が含まれている場合があるため、別途購入頻度を掛けるとリピート分を二重に数える可能性があるからです。

また、この式では3原則に従い、セッションを母数にするなら、CVRもセッションから注文への転換率として定義し、平均単価も1注文あたりの金額へ揃えます。

店舗型ビジネスの売上計算例

店舗型ビジネスでは、席数、店舗面積、営業時間、設備数、スタッフ数などの物理的条件が売上へ強く影響します。

日本政策金融公庫の「創業の手引」では、店舗販売について1日当たりの来店客数と客単価と営業日数を使う方法が示されています。また、飲食業や理美容業などでは、客単価、設備単位数、回転数、営業日数によって売上を積算する考え方も掲載されています。

飲食店では席数と回転数から考える

代表的には、

売上高 = 席数 × 回転数 × 客単価 × 営業日数

と計算できます。

座席数32席、平均回転数1日1.8回転、平均客単価5,800円、年間営業日数300日とすると、

32席 × 1.8回転 × 5,800円 × 300日 = 100,224,000円

となり、年間売上は約1億円です。

年間1億円とだけ聞くと、とても大きな目標に感じるかもしれません。しかし、数字を分けると、32席を平均1.8回転させ、客単価5,800円を維持しながら年間300日営業するという日々の状態へ置き換わります。

経営者が考えるべきことも、漠然と1億円を売れるかどうかではなくなります。この立地で1.8回転を維持できるのか、5,800円を支えられる商品構成なのか、300日を安定営業するスタッフを確保できるのかという具体的な問いへ変わるでしょう。

ランチとディナーを分ける

飲食店では、昼と夜を一つの平均値で計算すると実態が見えにくくなることがあります。

たとえば20席で月25日営業し、平日17日、休日8日とした場合を考えます。

営業区分 営業日数 席数 回転数 客単価 月間売上
ランチ平日 17日 20席 0.8回転 1,000円 272,000円
ランチ休日 8日 20席 1.0回転 1,000円 160,000円
ディナー平日 17日 20席 0.6回転 3,500円 714,000円
ディナー休日 8日 20席 0.8回転 3,500円 448,000円
合計 25日 20席 条件別 条件別 1,594,000円

このように分ければ、平日夜の回転数が想定より低いのか、休日ランチには余力が残っているのかを確認できます。

月商160万円という結果だけを見るより、その160万円がどの時間帯から生まれているかを見た方が、次の行動を考えやすくなります。

小売店では1日あたりの客数と客単価を使う

座席を使わない小売店なら、

売上高 = 1日あたりの客数 × 客単価 × 営業日数

という方法があります。

日本政策金融公庫の「創業の手引」では、小売業の店舗販売について、1日当たりの来店客数、客単価、営業日数を用いた積算例が示されています。またJ-Net21でも、顧客数が多い業態について、1日あたりの客数、客単価、年間営業日数を使う方法が紹介されています。

ここでいう客数は、各営業日に発生した来店や購買時点の客数を積み上げる考え方です。年間を通じて重複を除いたユニーク顧客数とは別の指標なので、同じリピート分を年間購入頻度として重ねて掛けないようにします。

たとえば同じ顧客が4月と6月に来店した場合、各日の客数にはそれぞれ含まれます。一方、年間ユニーク顧客数として見れば一人なので、どちらの指標を母数として使うかによって必要な計算式が変わるのです。

記事全体で人数と件数を分けて考える理由は、まさにここにあります。原典の客数という表現を無理に件数へ言い換えるのではなく、その数字がどの期間と集計方法で作られているのかを確認する方が安全です。

BtoBビジネスの売上計算例

BtoBでは、問い合わせが発生した時点で売上になるわけではありません。

見込み顧客との接触から商談へ進み、提案や見積もりを経て契約し、その後に納品や検収が行われるため、最初の接点から売上まで数か月かかることがあります。

それにもかかわらず、営業を強化して年間6,000万円とだけ置いてしまうと、その途中で何が起きているのか分かりません。

基本例では3段階へ揃える

売上目標から営業活動を逆算する基本を理解しやすくするため、ここではファネルを次の3段階へ統一します。

有効リード 商談 受注
有効リード → 商談 → 受注

計算式は、

年間売上高 = 有効リード数 × 商談化率 × 商談受注率 × 平均受注単価

です。

ここで、商談化率は商談数÷有効リード数、商談受注率は受注件数÷商談数として定義します。

平均受注単価500万円で年間6,000万円を目指し、商談化率30%、商談受注率20%とすると、

営業段階 転換率 年間件数
有効リード 起点 200件
商談 30% 60件
受注 20% 12件
売上 12件×500万円 6,000万円

となります。

年間6,000万円という財務目標が、年間200件の有効リードから60件の商談を作り、そのうち12件を受注する営業活動へ変わりました。

経営者や営業責任者は、月末の売上だけを待つ必要がなくなります。リード数が明らかに不足しているなら、その影響が数か月後の売上へ出る前に対応できるからです。

案件化を管理する企業は4段階にしてもよい

実務では、

有効リード 商談 案件 受注
有効リード → 商談 → 案件 → 受注

という4段階で管理している企業もあります。

その場合には、

年間売上高 = 有効リード数 × 商談化率 × 案件化率 × 案件受注率 × 平均受注単価

とします。

重要なのは、3段階と4段階のどちらが優れているかではありません。

一つの計算例の途中で商談受注率と案件受注率を入れ替えたり、案件化率だけを抜いたりせず、最初に選んだファネルを最後まで維持することです。

企業数と案件数も分ける

BtoBでは、もう一つ注意したい単位があります。

それが企業数と案件数です。

一社から一件だけ案件が発生するとは限りません。既存顧客の複数部門から受注したり、一年間に追加発注が何度も発生したりする事業では、一社と一案件は一致しないでしょう。

企業数を起点にするのであれば、

売上高 = 取引企業数 × 一社あたり平均受注件数 × 平均受注単価

のように分ける方法があります。

一方、日常の営業管理を案件単位で行っているなら、最初から有効リード案件、商談案件、受注案件という形へ統一した方が分かりやすくなります。

経営者としては、数字が細かくなるほど正しく見えるかもしれません。しかし本当に大切なのは、細かさではなく同じ物差しを使い続けることです。

営業担当者の感触だけで売上へ入れない

BtoBの計画がずれる背景には、営業担当者の期待が売上予測へ入り込むことがあります。

顧客から前向きな反応をもらえば、営業担当者は受注を期待するでしょう。資金繰りや目標達成を意識している経営者も、その案件が予定どおり決まってほしいと思うものです。

しかし、担当者の反応が好意的でも、予算確保、決裁者の承認、競合比較、契約条件が未確定なら、受注時期が後ろへずれるという可能性があります。

売りたい気持ちと売れる可能性を分けて考えることは簡単ではありません。それでも、過去の商談受注率や案件ステージの条件を使えば、期待と予測を少しずつ切り分けられます。

BtoBでは時間も売上根拠になる

年間40件を受注できる営業力があっても、契約まで平均半年かかるのであれば、初年度から毎月均等に売上が発生するとは限りません。

1月に問い合わせがあり、 2月に商談、 4月に契約、 6月に納品し、 入金が7月になる事業なら、
1月に問い合わせがあり、2月に商談、4月に契約、6月に納品し、入金が7月になる事業なら、最初の営業活動と現金の受領に半年近い差があります。

案件は増えているのに資金が足りないという状況は、この時間差から生まれることもあるでしょう。

BtoBでは、件数と転換率だけでなく、初回接触から受注までの期間、受注から売上計上までの期間、売上計上から入金までの期間も確認します。

ECとWebサービスの売上計算例

ECでは、流入数、CVR、平均注文単価を使って売上を計算できます。

日本政策金融公庫の「創業の手引」では、EC等について1カ月当たりの集客数である流入数にCVRと客単価を掛ける積算例が掲載されています。例として、10,000件×1%×4,000円=40万円という計算が示されています。

ただし、日本政策金融公庫の資料自体がCVRをセッション基準と明示しているわけではありません。

この記事では公式資料の式を土台としながら、一般化する際に3原則へ合わせ、実際に自社で使う流入指標とCVRの定義を揃える必要があると考えます。

セッション基準で管理する場合

自社がセッション数を母数としてCVRを管理しているなら、

月間売上高 = 月間セッション数 × セッション基準CVR × 平均注文単価

とします。

たとえば、

月間セッション数 85,500

セッション基準CVR 1.5%

平均注文単価 6,500円

なら、

85,500 × 1.5% × 6,500円 = 8,336,250円

となり、月商は約833万円です。

ここではCVRを注文件数÷セッション数として定義しているため、その後に掛ける単価も1注文あたりの平均注文単価へ揃えています。

Web分析ツールでは、セッション、ユーザー、購入者、注文などを簡単に取得できます。だからこそ、CVRの分母を確認しなければ、数字は揃っているように見えても売上計算の単位がずれます。

ユニーク顧客候補数から考える場合

一定期間のユニーク顧客候補数を把握できる場合には、購入回数を分けて計算できます。

年間売上高 = 年間ユニーク顧客候補数 × 購入顧客化率 × 年間平均購入回数 × 平均購入単価

年間に接触できるユニーク顧客候補数を800,000人、年間購入顧客化率2.5%、購入者一人あたり年間平均購入回数1.25回、平均購入単価4,000円とすると、

800,000人 × 2.5% × 1.25回 × 4,000円 = 100,000,000円

となります。

ここで800,000という数字は年間セッション数ではありません。同一人物を重複させないユニークな顧客候補数です。

セッション起点モデルとユニーク顧客起点モデルは、どちらも売上を説明できますが、同じ式の中で混ぜないようにします。

新規顧客と既存顧客を分ける

ECでは、新規と既存で購入行動や獲得コストが大きく異なることがあります。

セッション基準で管理している例を考えると、

顧客区分 月間セッション CVR 平均注文単価 月間売上
新規向け流入 30,000 1.2% 8,500円 3,060,000円
既存向け流入 5,000 8.0% 7,000円 2,800,000円
合計 35,000 約2.17% 加重平均約7,710円 5,860,000円

新規向け流入は量が多い一方で、既存向け流入は少ないセッションから大きな売上を作っています。

新規獲得単価が上昇しているなら、広告費を増やすより既存顧客の再購入を強化した方が利益へつながるという可能性があります。一方で既存顧客だけに依存すると、新しい顧客基盤が育たなくなるため、両方を分けて管理する必要があります。

サブスクリプションでは解約を含める

月額課金型Webサービスでは、

当月売上 = 有料会員数 × 月額単価

で当月の売上を計算できます。

しかし、将来予測には新規契約と解約が必要です。

毎月100件の新規契約を獲得していても、同じ期間に100件解約しているのであれば契約数は増えません。

そのため、新規有料会員数、既存有料会員数、解約数、解約率、平均継続期間などを確認します。

入口の数字だけを見ていると、売上が伸びない理由を新規獲得不足だと思い込むことがあります。実際には解約が多いのであれば、先にサービス継続の理由を見直す必要があるでしょう。

店舗型とBtoBとECの売上構造を比較する

同じ売上1億円でも、事業モデルによって追うべき数字は異なります。

比較項目 店舗型ビジネス BtoBビジネス EC・Webサービス
主な基本式 客数や席数×単価×営業条件 リード×商談化率×受注率×単価 流入数×CVR×注文単価
主な母数 日ごとの客数や席数 リード件数や企業数 セッションやユーザー
主な転換 稼働や購買 商談化や受注 購入
主な制約 席数や営業時間や人員 営業人員や納品能力 広告費や在庫や物流
注意する単位 年間ユニーク顧客数と日々の客数 企業数と案件数 セッションとユーザー

業態が変わっても、使う考え方は共通しています。

最初の母数を決め、次の段階へ進む割合を定義し、その結果へ対応する単価を掛けます。

ここまで理解できれば、他社の計算式を探してそのまま使う必要はありません。自社で売上が生まれる流れを一段ずつたどれば、自分たちに合った式を作れるようになります。

売上1億円から逆算する具体例

年間売上1億円という目標から逆算すると、数字合わせになるのではないかと不安になる人もいるでしょう。

確かに、1億円になるよう転換率や客数を都合よく調整すれば、計画の意味は薄くなります。

しかし、1億円に必要な条件を逆算し、その条件を現場の人員、設備、市場規模と照らし合わせるのであれば、逆算は無理を発見するために役立ちます。

売上1億円を3業態で比較する

指標 店舗型 BtoB EC
年間売上目標 100,000,000円 100,000,000円 100,000,000円
月間売上目標 約8,333,000円 約8,333,000円 約8,333,000円
平均取引単価 4,000円 2,500,000円 6,500円
年間必要取引件数 25,000件 40件 約15,385件
月間必要取引件数 約2,083件 約3.3件 約1,282件
主な追加前提 年300日営業 商談受注率25% CVR1.5%
必要活動量 1日約83件の取引 年160商談 月約85,500セッション

同じ1億円でも、現場で必要になる行動はまったく違います。

店舗型では1日の必要取引件数を見る

年間1億円を平均取引単価4,000円で割ると、

100,000,000円 ÷ 4,000円 = 25,000件

となります。

この25,000はユニーク顧客人数ではなく取引件数です。

年間300日営業なら、

25,000件 ÷ 300日 = 約83.3件

となり、1日平均約83件の取引が必要になります。

ここから、現在の店舗で83件を処理できるかを確認します。

必要件数を知ったことで、1億円という目標が席数、人員、営業時間へつながりました。

BtoBでは3段階のファネルで戻る

BtoBでは、逆算例を有効リード→商談→受注の3段階へ統一します。

平均受注単価250万円なら、

100,000,000円 ÷ 2,500,000円 = 40件

となり、年間40件の受注が必要です。

ここで商談受注率を25%と定義すると、

40件 ÷ 25% = 160商談

が必要になります。

さらに商談化率を20%とすれば、

160商談 ÷ 20% = 800件の有効リード

が必要です。

この例では商談受注率を受注件数÷商談件数、商談化率を商談件数÷有効リード件数としているため、途中の段階は飛んでいません。

年間800件の有効リードという数字を見て、現在の営業体制では現実的でないと分かったとしても、それは失敗ではありません。

むしろ1億円という目標と、現在の営業能力の間にある差を、投資する前に見つけられたということです。

ECでは月間セッションへ戻る

ECで平均注文単価6,500円、CVR1.5%とした場合、月商約833万円には、

8,333,000円 ÷ 6,500円 = 約1,282注文

が必要です。

CVRを注文件数÷セッション数としているなら、

1,282件 ÷ 1.5% = 約85,467セッション

となります。

おおむね月8万5,500セッションを安定して獲得する必要がある計算です。

ここから、広告だけで8万5,500セッションを集めるのか、検索やSNS、既存顧客の再訪も組み合わせるのかを考えます。

数字を逆算する意味は、1億円へ無理やり近づけることではありません。1億円を作るために、現場で何が必要なのかを見つけることです。

売上計画を粗利益と人員計画へつなげる

売上1億円を作る方法が見えても、事業計画はそこで完成しません。

次に確認するのは、その売上を作るためにどれだけの原価、人員、設備、広告費が必要となり、最終的に何円残るのかという点です。

売上から粗利益へつなげる

年間売上1億円、売上原価6,000万円なら、

売上高 100,000,000円

売上原価 60,000,000円

売上総利益 40,000,000円

売上総利益率 40%

となります。

この4,000万円から人件費、家賃、広告費、システム費などを負担します。

売上1億円という響きだけを見れば、かなり大きな事業になったように感じるでしょう。しかし、売上を作るための費用も大きく増えていれば、経営に残る余力はそれほど増えない場合があります。

売上は規模を示す数字ですが、持続可能性まで単独で説明できる数字ではありません。

人員計画も売上から考える

BtoBで年間160商談が必要だとして、一人の営業担当者が年間60商談まで十分に対応できるという自社実績があるなら、

160件 ÷ 60件 = 約2.67人分

の営業対応力が必要と考えられます。

その場合、3人相当の体制を準備するのか、一人あたりの対応力を高めるのか、商談前の選別を改善するのかを検討します。

店舗でも同じで、1日83件の取引が必要なのに、現在の人員では50件程度しか十分に対応できないのであれば、集客を増やす前に提供能力を確認する必要があります。

売上が増えても資金が楽にならないことがある

事業が伸びると、売上と同時に必要な支出も増えることがあります。

受注件数が増えたことで納品担当者を採用し、採用が間に合うまで外注を増やし、さらに新規顧客を獲得し続けるため広告予算まで拡大するという状況が重なることもあるでしょう。

経営者からすると、以前より明らかに忙しくなり、売上額も増えているのに、どうして手元資金が思ったほど増えないのだろうと戸惑う場面です。

その背景には、人件費、外注費、広告費、仕入れなどが売上と同時に膨らんでいるという可能性があります。

BtoBのように売上計上から入金まで時間がある事業では、支出だけが先行する場合もあります。

売上計画を粗利益、人員、経費、入金時期までつなげる理由は、成長しているのに資金が苦しくなる構造を早めに見つけるためでもあります。

売上根拠として準備したい実績データ

計算式を作った後には、それぞれの数字へ根拠を付けます。

購入率4%、平均注文単価6,500円、商談化率20%と置いたなら、なぜその数字を使ったのかを説明できる状態にします。

既存事業では自社実績を優先する

すでに事業を運営しているなら、直近の月次売上、取引件数、ユニーク顧客数、平均単価、商談化率、受注率、購入回数、解約率などを確認します。

過去12か月の平均商談受注率が18%なのに、翌年度計画で30%と置くなら、12ポイント改善する理由が必要です。

営業対象を変えるのか、提案方法を改善するのか、価格体系を見直すのかという施策までつながっていれば、30%は一つの仮説として説明できます。

一方で、何も変えないまま30%に上げているなら、期待が計画値へ入り込んでいる可能性があります。

新規事業では小さな実績を作る

創業や新規事業には十分な過去実績がありません。

その状態では、根拠がないから計画を作れないと感じるかもしれません。

それでも、少額広告、試験販売、事前予約、見込み顧客への営業などから、自社固有の数字を少しずつ集めることはできます。

20件の有効リードから6件の商談が生まれたなら、そのテスト条件では商談化率30%だったという観測値が残ります。

母数が少ないため、その30%が将来も続くと断定することはできません。それでも何も試していない状態より、仮説を検証する材料になります。

不確実だから計画を作れないのではなく、不確実な部分を見つけて小さく確かめるために計画を使うという考え方が重要です。

外部データは比較材料として使う

J-Net21では、業界、競合企業、地域事情、業歴なども踏まえながら売上を設定する考え方が示されています。

業界平均や公的統計は、自社の数字が極端に外れていないかを見るために役立ちます。

ただし、業界平均がそのまま自社の売上になるわけではありません。

同じ飲食店でも駅前と郊外では客数が異なり、同じBtoBサービスでも既存顧客を多く持つ企業と創業直後の企業では営業効率が変わります。

外部データは売上を保証するものではなく、自社の仮説を照らす比較材料として使うのが適切です。

売上の前提条件を書き込めるチェックリスト

計算式が完成すると、数字が揃ったことで安心してしまうことがあります。

しかし、式の形が正しくても、それぞれの前提が弱ければ売上計画は大きく変わります。

次の項目へ自社の数字を入れると、どこまで確認できているかを整理できます。

確認項目 自社の前提 根拠
年間売上目標 ______円 ______
月間売上目標 ______円 ______
最初の母数 ______ ______
母数の単位 人・社・件・セッションなど ______
転換率の分母 ______ ______
転換率の分子 ______ ______
平均取引単価 ______円 ______
年間購入回数 ______回 ______
商談化率 ______% ______
商談受注率 ______% ______
年間営業日数 ______日 ______
1日または月間対応上限 ______件 ______
必要スタッフ数 ______人 ______
売上原価率 ______% ______
売上総利益率 ______% ______
主な集客経路 ______ ______
季節変動 ______ ______
売上10%下振れ時の利益 ______円 ______
売上20%下振れ時の利益 ______円 ______
売上計上から入金まで ______日 ______
主な支払条件 ______ ______

すべてを最初から埋められなくても問題ありません。

空欄が残った場所は、計画が失敗している場所ではなく、次に検証すべき場所です。

経営者が本当に困るのは、不明点があることではありません。何が分かっていないのかさえ分からないまま、大きな投資や採用へ進んでしまうことではないでしょうか。

毎月確認するKPIを決める

事業計画を作った後は、売上高だけを見て一喜一憂しないことが重要です。

売上は最終結果であり、その前には顧客との接点や商談、購入、単価などの動きがあります。

管理段階 店舗型 BtoB EC
先行指標 予約数や日々の客数 有効リード数や商談数 流入数や広告クリック
中間指標 稼働率や購買率 商談化率や商談受注率 CVRやCAC
結果指標 取引件数や客単価や売上 受注件数や平均単価や売上 注文件数や注文単価や売上
継続指標 再来店率や年間利用回数 契約更新率 リピート率や解約率

BtoBでは、今月の有効リード不足が数か月後の売上不足として表面化することがあります。

ECでも現在の売上を既存顧客が支えていて、新規流入が継続的に減っているなら、数か月後に顧客基盤の縮小として影響が出る可能性があります。

店舗についても、月間売上が計画どおりであっても、客単価の上昇だけで売上を維持し、日々の客数が継続的に減っているのであれば、将来の集客面では注意が必要でしょう。

先行指標を見る目的は、売上が落ちてから慌てることではありません。売上になる前の変化を見つけることです。

小さく実践して変化を確認する

売上を分解すると、改善したい数字が一度にいくつも見つかる場合があります。

広告、価格、営業資料、商品構成、顧客ターゲットを同時に変えれば、一気に良くなるように感じるかもしれません。しかし、すべてを同時に動かすと、翌月の数字が改善しても何が効いたのか判断しにくくなります。

そこで、売上への影響が大きいと考えられるKPIを一つ選びます。

BtoBで商談受注率が低いなら、直近の失注理由を集め、価格なのか提案内容なのか、そもそも対象企業が合っていないのかを確認します。

ECでCVRが低いなら、流入をさらに増やす前に商品ページや購入導線を一つ改善し、同じ計測方法で変化を確認します。

店舗で平均単価が低いなら、セット提案や商品構成を一定期間だけ変更し、その前後で平均単価を見る方法があります。

一つ試して数字を確認し、 変化があれば続け、 ほとんど変わらなければ次の仮説へ進みます。
一つ試して数字を確認し、変化があれば続け、ほとんど変わらなければ次の仮説へ進みます。

この流れを繰り返すことで、事業計画は提出した日に役目を終える書類ではなく、経営者が実績を見ながら事業を修正するための基準へ変わります。

事業計画の売上根拠に関するFAQ

売上計画は何年分作ればよい?

必要な期間は、事業計画の目的によって変わります。

J-Net21では、業界や競合企業の状況、地域事情、業歴などを踏まえながら、1年目、2年目、3年目の売上を設定する考え方が示されています。

一方で、経営管理を目的とするなら、初年度を月別で細かく作り、その後を年次や四半期で見る方法も考えられます。

融資や補助金など特定の提出目的がある場合には、対象制度の最新様式や公募要領を確認してください。

新規事業で過去実績がない場合は何を根拠にする?

小規模なテスト販売、事前予約、見込み顧客への営業、少額広告、商圏調査、競合調査などを組み合わせます。

10件や20件のテストだけで将来の購入率を確定できるわけではありませんが、どの条件でどのような反応が得られたのかという記録は残ります。

最初から確実な数字を探すのではなく、小さな実績を積み上げながら前提を更新していく方が現実的です。

売上目標から逆算してもよい?

逆算して構いません。

重要なのは、逆算した結果として出てきた客数、取引件数、商談数、セッション数などが、現場の人員や設備、市場規模で実現可能かを確認することです。

必要活動量が実行できないなら、単価、顧客ターゲット、商品構成、営業方法、売上目標そのものを見直します。

逆算は目標を正当化する方法ではなく、目標成立に必要な条件を見つける方法です。

客数の予測はどう決める?

店舗では商圏人口、通行量、立地、営業時間、席数、過去の客数などを参考にします。

J-Net21でも、希望的観測だけではなく、通行量や商品の特性などを考慮して客数を考える必要があるとされています。

ここで扱う日々の客数と、年間で重複を除いたユニーク顧客数は別の指標です。どちらを使って売上を計算するのかを先に決めておくと、購入頻度を二重に加える問題を避けやすくなります。

BtoBなら対象企業数や有効リード数、過去の商談化率を利用し、ECなら検索、広告、SNSなど流入経路ごとに積み上げます。

CVRはどう設定する?

まず分母と分子を決めます。

セッション基準なら、注文件数÷セッション数としてCVRを求め、その後に平均注文単価を掛けます。

ユーザー基準なら、購入者数÷ユニークユーザー数とし、その後の売上計算も購入者単位と整合する形へ変えます。

CVRが何%かだけでなく、何を分母にしたCVRなのかを残すことが重要です。

BtoBの商談化率と受注率はどう決める?

この記事の基本例では、有効リード→商談→受注の3段階を使います。

商談化率は商談数÷有効リード数、商談受注率は受注件数÷商談数です。

案件化を別に管理する会社では、有効リード→商談→案件→受注という4段階にして構いません。

ただし、一つの計算の途中で定義を変えないことが重要です。

売上計画と資金繰り計画は何が違う?

売上計画は、どの時期にどれだけ売上が発生するかを考える計画です。

一方の資金繰り計画では、その代金が実際にいつ入金され、仕入れや人件費などをいつ支払うのかを確認します。

3月に100万円の売上が発生しても、入金条件が翌々月末なら現金が入るのは5月です。その間に給与や外注費の支払いがあれば、利益が出ていても手元資金が不足する可能性があります。

売上計画を完成させた後には、入金条件と支払条件を資金繰りへ反映させます。

まとめ

事業計画の売上根拠では、売上1億円という目標を置くだけでなく、その数字が何から生まれるのかを説明できる状態にすることが重要です。

そのために、最初の母数を決め、転換率の分母と分子を揃え、最後に掛ける単価の単位を合わせます。

店舗なら日々の客数や席数、回転数、客単価、営業日数へ分け、BtoBなら有効リード、商談化率、商談受注率、平均受注単価へつなげます。ECなら流入数、CVR、平均注文単価を基本にし、ユニーク顧客起点で考える場合には購入回数を別に組み込みます。

最初から完璧な予測を作る必要はありません。

一つの計算式を作り、実績との差を確認し、影響の大きいKPIを一つずつ改善していけば、事業計画は提出のための数字から、次の経営判断を支える地図へ変わっていくでしょう。

参考資料

日本政策金融公庫 創業の手引

店舗販売やECなどの売上高計算方法を確認できます。小売業では1日当たりの来店客数と客単価と営業日数、EC等では1カ月当たりの集客数とCVRと客単価を使った積算例が掲載されています。

日本政策金融公庫 創業計画書セルフチェック

売上高や売上原価について計算根拠を持って予測しているか、入金や支払いのタイミングを整理しているかなどを確認できます。

日本政策金融公庫 各種書式ダウンロード

創業計画書、記入例、売上高等の計算方法、月別収支計画書などを確認できます。

J-Net21 販売・仕入計画の書き方

平均商品単価と年間販売数、1日あたりの客数と客単価と年間営業日数、客単価と席数と回転率と営業日数など、業態に応じた売上積算方法を確認できます。

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