マンション管理士

管理業者管理者方式の利益相反とは? 管理組合が確認したい7つの対策をマンション管理士の視点で解説

「理事のなり手が見つからないので、今後は管理会社に管理者もお願いしませんか」

管理会社からそう提案されたとき、毎年の役員選びや理事会運営に疲れている管理組合であれば、少し肩の荷が下りるように感じるかもしれません。

輪番制なのに辞退が続いている。以前理事長を務めた人へ再びお願いしている。大規模修繕や設備更新の話が出ても、専門的で判断に自信を持てない。こうした状態が続けば、「建物のことをよく知っている管理会社に任せた方が、むしろ安心なのではないか」と考えるのは自然な流れでしょう。

一方で、説明を聞いたあとに別の疑問が残ることもあります。

日常の管理業務を受託して管理委託費を受け取っている会社が、管理組合を代表する管理者にもなった場合、自社や関連会社への工事発注、管理委託契約の更新、設備交換の判断などについて、管理組合側と管理会社側の立場が重なる場面が出てきます。

そのとき、「管理組合にとって最も有利な判断」と「管理会社にとって利益のある判断」は、本当にいつも同じなのだろうかという違和感が生まれるかもしれません。

この感覚を、管理会社への不信感として片付ける必要はありません。

管理業者管理者方式を検討するときに重要なのは、管理会社を信用するか疑うかという二択ではなく、利益相反が生じ得る構造を理解したうえで、それでも管理組合が重要な判断と監督を続けられる仕組みになっているかを確認することです。

2026年4月1日には改正マンション管理適正化法の関係制度が施行され、同日に国土交通省の「マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン」も改訂されました。さらに、2025年12月12日にはマンション標準管理者事務委託契約書の策定、マンション標準管理委託契約書の改正、管理業者管理者方式を採用した場合のマンション標準管理規約書き換え表も公表されています。

制度としての整理は進みましたが、制度が整ったことと、自分たちのマンションで安全に運用できることは同じではありません。

この記事では、まず管理組合が確認したい7つの対策を示したうえで、なぜその確認が必要なのか、どのような利益相反が起こり得るのか、2026年の制度改正をどのように理解すればよいのかまで整理します。

TABLE OF CONTENTS
目次

管理業者管理者方式で問題になる利益相反とは

管理業者管理者方式とは、マンションの管理事務を受託しているマンション管理業者が、区分所有法上の「管理者」にも就任する方式です。

従来の理事会方式では、区分所有者の中から理事を選び、一般的には理事長が管理者を務めます。一方、管理会社は管理組合との管理委託契約に基づき、会計、清掃、設備管理、総会支援などの日常的な管理事務を受託します。

この仕組みでは、管理会社が修繕工事や設備更新を提案しても、それだけで実施が決まるわけではありません。理事会が内容を確認し、必要に応じて追加資料や見積もりを求め、重要な事項については総会で区分所有者が判断するという一定の距離がありました。

ところが、役員の高齢化、不在所有者の増加、区分所有者の生活スタイルの変化などによって、従来と同じ方法で理事会を維持することが難しいマンションもあります。

「次の理事長を頼める人がいない」「毎年同じ人へ役員をお願いしている」という状況が続けば、外部へ実務を任せたいと思うのは無理もありません。

そこで選択肢の一つとなるのが外部管理者方式であり、その中でも現在の管理会社自身が管理者になる形が管理業者管理者方式です。

管理業者管理者方式の基本構造

管理業者管理者方式では、管理会社が単に管理事務を代行するだけではありません。

管理者は、管理規約や総会決議、法令などに基づき、管理組合の業務を執行する重要な立場を担います。

一方、その管理会社は管理事務を受託して管理委託費を受け取る営利企業でもあり、自社や関連会社が修繕工事、設備更新、保守業務などを受注する場面も考えられます。

つまり、管理組合のために判断する立場と、その判断によって経済的利益を得る可能性がある立場が近づきます。

ここに、管理業者管理者方式で利益相反が問題となる理由があります。

利益相反は不正行為そのものではない

利益相反とは、一つの主体が異なる立場を持つことで、一方の利益を優先すれば、もう一方の利益へ影響する可能性が生じる状態です。

管理者には、必要な管理や修繕を適切な条件で実施し、管理組合の財産を守ることが求められます。

一方、管理会社は営利企業であり、適正な利益を得ながら事業を継続する必要があります。

通常の管理では、この二つが同じ方向を向く場面も多いでしょう。管理会社が質の高いサービスを提供し、管理組合が適正な対価を支払う関係そのものが問題なのではありません。

ただし、自社や関連会社への工事発注、管理委託契約の更新、追加業務の受注などでは、管理組合側の利益と管理会社側の経済的利益が完全には一致しない可能性があります。

だからといって、関連会社への発注が直ちに違法になるわけでも、管理会社が管理者になれば必ず問題が起こるわけでもありません。

反対に、「これまで問題なく管理してくれた会社だから安心だ」と考えるだけでも十分とはいえないでしょう。

利益相反は、担当者の人柄ではなく役割の構造から生まれる問題だからです。

そこで必要になるのが、誰と取引するのか、どのような条件なのかを管理組合が確認でき、必要に応じて管理者とは別の立場から監督できる仕組みです。

管理組合が最初に確認したい7つの利益相反対策

管理業者管理者方式について詳しい説明を聞けば聞くほど、「結局、自分たちは何を確認すればよいのか分からなくなった」と感じることがあります。

その場合には、まず次の7項目を確認してください。

確認項目 主な確認内容
1 利益相反取引の事前説明 関係性、取引内容、金額と積算根拠、相見積もりなどを判断前に確認できるか
2 管理者事務と管理事務の分離 管理者側と通常の管理事務側で担当体制を分けているか
3 財産管理の分離 印鑑等、電子認証、出金承認などの権限が一つの主体へ集中していないか
4 総会承認と発注透明性 利益相反取引や高額工事を管理者だけで決定しない仕組みがあるか
5 独立性のある監事 管理者の業務や財産状況を実質的に確認できる者がいるか
6 不透明な経済的利益の排除 紹介手数料や仲介料など、取引先から得る利益の扱いが明確か
7 任期と解任と引き継ぎ 管理者を変更したい場合の手続と出口が明確か

この7項目は、すべてにチェックが付けば絶対に安全という判定表ではありません。

むしろ、説明できない項目を見つけるための入口です。

たとえば担当体制が国土交通省の標準契約書と異なっているからといって、それだけで直ちに問題とはいえません。

しかし、なぜ異なるのかを誰も説明できず、どのように利益相反を牽制するのかも分からないのであれば、総会上程や契約締結の前に確認したい論点になります。

管理組合が目指したいのは、すべてを疑うことではありません。

分からないまま任せる部分を減らすことです。

7つの利益相反対策を詳しく確認する

1 利益相反取引の事前説明

第一に確認したいのは、利益相反のおそれがある取引について、区分所有者がいつ情報を知ることができるのかです。

関連会社への発注を決算報告で初めて知ったとしても、その段階ではすでに契約や工事が終わっている可能性があります。

2026年4月施行の改正マンション管理適正化法第77条の2では、管理事務を受託するマンション管理業者が管理者等でもある場合に、自社や法令上一定の関係を有する者との対象取引について、重要な事実を事前に説明する制度が設けられています。

重要な事実としては、取引相手と管理業者との関係、取引内容、金額とその積算根拠、相見積もりを行った場合の内容、相見積もりを行わなかった場合の理由などを確認することになります。

たとえば関連会社から3,000万円の工事見積もりが示されても、その数字だけでは高いのか安いのか判断できません。

同一条件で他社へ見積もりを依頼したのか、依頼した場合にどのような差があったのか、比較していないのであればなぜ比較しなかったのかまで分かることで、ようやく区分所有者が判断できる状態に近づきます。

ここで区別したいのは、法令上の義務と実務上の確認提案です。

法令上は、対象取引について必要な事前説明が行われることが重要です。

そのうえで本記事では、単に資料が配られたかではなく、区分所有者が比較して判断できる内容になっているかまで確認することを勧めます。

説明は、管理会社が説明責任を形式的に終えるためではなく、管理組合が判断するために行われるものだからです。

2 管理者事務と管理事務の分離

二つ目は、同じ管理会社の中で、管理者として判断する担当と、通常の管理事務を担当する者がどのように分かれているかです。

2025年12月に策定されたマンション標準管理者事務委託契約書第5条第2項では、同じマンション管理業者が管理事務も受託する場合、管理者事務担当者と管理事務担当者について、別の部門に所属する者が務める体制を整備するモデルが示されています。

これは単なる「役割を分けた方がよい」という抽象的な考え方よりも具体的です。

たとえば管理事務側の担当者が設備更新を提案し、その同じ人物が管理者側として自らその提案を判断する場合、提案から判断までが一人の中で完結しやすくなります。

別部門の担当者を置いたから完全な第三者関係になるわけではありませんが、少なくとも同じ担当者だけで一連の判断が進む状態を避けるための牽制になります。

ただし、この点を「法律上、必ず別部門でなければならない」と説明するのは適切ではありません。

別部門所属者とする体制は、国土交通省の標準管理者事務委託契約書に示された標準的な契約モデルです。

そのため、自分たちへ提示された契約案と標準契約書に違いがある場合には、「なぜ違うのか」「別の方法でどのように牽制を確保するのか」を管理会社へ確認するとよいでしょう。

3 印鑑等と資金管理の分離

三つ目は、管理組合の財産を誰が動かせるのかという問題です。

修繕積立金は、長年積み上がることで数千万円から数億円規模になる場合があります。

その資金について、支出を判断する者と実際に資金を動かせる者が実質的に同じであれば、内部統制の観点から確認が必要になります。

国土交通省の標準管理者事務委託契約書では、保管口座等に係る印鑑や引出用カード等について、監事または総会で選任された者が保管することを基本とする仕組みが示されています。

一方、法令上一定の要件を満たす場合には例外もあります。

したがって、「管理業者が印鑑を保管すればすべて違法」と単純に説明するのではなく、原則と例外を分けて確認する必要があります。

実務では、さらにオンラインバンキングについても確認したいところです。

印鑑を監事が持っていても、管理会社だけで電子送金が完結できる状態なら、実質的な資金管理の集中が残っている可能性があります。

電子認証を誰が管理するのか、送金指示を誰が行うのか、一定金額以上の出金には別の承認が必要なのかまで、一連の資金移動として見る必要があります。

「長年付き合っている会社を疑っているようで気が引ける」と感じる方もいるでしょう。

しかし、内部統制は信頼できない相手だけに設けるものではありません。

誤操作、担当者交代、認証情報の漏えいなど、人の善意だけでは防げない事故もあります。誰かを疑わなくても済むように仕組みを整えることが、結果として長い信頼関係を守ることにつながります。

4 総会承認と発注先選定の透明性

四つ目は、利益相反取引や高額な発注を誰が最終的に判断するのかという点です。

ここでは、改正マンション管理適正化法に基づく事前説明と、管理規約や契約に基づく総会承認を分けて理解する必要があります。

改正法第77条の2が直接定めているのは、一定の利益相反取引についての事前説明です。

一方、マンション標準管理者事務委託契約書や管理業者管理者方式に対応した標準管理規約の書き換え表では、利益相反取引について重要な事実を開示し、総会承認を得る仕組みが示されています。

つまり、法令上の事前説明を行ったからといって、管理組合内部で必要となる承認手続まで自動的に終わるわけではありません。

特に大規模修繕では、この区別に加えて発注先選定の仕組みが重要になります。

2026年版の国土交通省ガイドラインでは、管理業者管理者方式における大規模修繕工事について、原則として管理者は検討の主体とならず、修繕委員会を中心に検討することが望ましいとされています。

さらに、施工会社など発注先の検討・選定については、管理者を関与させず、選定過程の透明性を確保する考え方が示されています。

これは、利益相反対策を考えるうえで非常に具体的なポイントです。

相見積もりを三社から取得していても、その三社をすべて管理者側が選び、比較条件も管理者側だけで設定しているのであれば、形式的には比較していても独立した選定とは言いにくい場合があります。

高額工事ほど、候補会社を誰が選ぶのか、見積条件を誰が決めるのか、誰が比較するのかまで分けて考える必要があります。

5 独立性のある監事による監督

五つ目は、管理者の仕事を誰が確認するのかという点です。

理事会方式では、管理会社から示された内容について複数の理事が質問したり、総会前に内容を検討したりする機会があります。

理事会を置かない管理業者管理者方式では、その確認機能が弱くなる可能性があるため、監事の役割がより重要になります。

2026年4月改訂の国土交通省ガイドラインでは、外部管理者方式において、監事のうち少なくとも一人をマンション管理士、弁護士、公認会計士などの外部専門家から選任することが望ましいとされています。

また、区分所有者からも監事を選任することが望ましいとの考え方が示されています。

ここで大切なのは「望ましい」という位置付けです。

外部専門家監事はガイドライン上の推奨であり、すべての管理組合へ一律に課される法定義務とは区別する必要があります。

また、マンション管理士や弁護士であれば自動的に独立しているとも限りません。

管理会社から別の業務を受注している、継続的な紹介関係がある、特定施工会社との経済的関係が深いといった事情があれば、監事自身の利益相反についても考える必要があります。

資格の有無だけではなく、誰とどのような関係を持っているかまで確認することが重要です。

6 不透明な紹介手数料や経済的利益の排除

六つ目は、管理組合以外の者から管理者側へ流れる経済的利益です。

工事会社、設備会社、保険関係者などを紹介した際に、管理者側へ紹介手数料や仲介料などが支払われる仕組みがあれば、取引先選定へ別の利害が入り込む可能性があります。

標準管理者事務委託契約書では、管理者事務に関連し、役務の提供を伴わない紹介手数料などの金銭等を授受しない仕組みが示されています。

一方、実際に正当な役務を提供した対価まで、一律に不適切とする趣旨ではありません。

そのため、管理組合が確認したいのは「紹介料という名称かどうか」だけではなく、誰から、どのような役務の対価として、どの程度の金銭等を受け取っているのかという実態です。

協力費や業務提携費など別の名称が使われる可能性もあります。

本記事として特に確認を勧めたいのは、管理組合から見えない経済的利益が発注先選定へ影響する余地を残していないかという点です。

7 任期と解任と引き継ぎの出口

七つ目は、将来管理者を変更したくなった場合の仕組みです。

導入時には、「理事を探さなくて済む」「専門家に任せられる」という期待が強くなり、契約を終了する場面まで具体的に考えないことがあります。

ところが数年後、費用やサービス内容に納得できなくなる可能性もあれば、管理組合の状況が変わって理事会方式へ戻したくなることも考えられます。

国土交通省ガイドラインでは、区分所有者が管理者としての適切性を定期的に確認できるよう、管理者の任期を原則1年とし、毎年の総会で再任や不再任を判断することが望ましいとされています。

これも、すべての管理者について法律が一律に1年任期を義務付けているという意味ではありません。

原則1年という考え方はガイドライン上の推奨です。

実際には、自分たちの管理規約や管理者事務委託契約で任期がどのように決められているかを確認します。

さらに、解任の要件、中途解除の方法、後任管理者の選任、会計資料や契約書、議事録、電子データ、預金関係資料などの引き継ぎまで確認しておく必要があります。

導入前に出口を確認することは、管理業者管理者方式に否定的になることではありません。

変更できる仕組みが明確だからこそ、現在の管理者へ安心して仕事を任せることができます。

なぜ管理会社が管理者になると利益相反が起こり得るのか

7つの対策を確認すると、「そこまで仕組みを作らなければならないのか」と感じる方もいるかもしれません。

背景にあるのは、主に意思決定機能の集中と情報の非対称性です。

意思決定機能が一つの主体へ集まりやすい

従来の理事会方式では、管理会社が工事や契約を提案しても、そのまま実施が決まるわけではありません。

理事会が説明を聞き、必要であれば追加資料や見積もりを求め、重要な案件については総会へ上程します。

管理会社が提案する側にあり、理事会や総会が確認する側にあるため、一定のチェック機能が存在していました。

理事会を置かない管理業者管理者方式では、管理会社が管理者として業務執行を担い、総会議案の準備や契約手続にも関わります。

もちろん、総会決議が必要な事項まで管理者が自由に決められるわけではありません。

それでも、情報を集める人、選択肢を整理する人、実際に業務を実行する人の距離は近くなります。

そのため、管理業者管理者方式を検討するときには、「理事会をなくせるか」だけを考えるのではなく、理事会が担っていた確認機能を何によって置き換えるのかを考える必要があります。

管理会社と区分所有者には情報量の差がある

もう一つの背景が情報の非対称性です。

給排水設備の更新時期、エレベーターの修繕方法、防水工事の工法、工事価格の市場水準などについて、日常的にマンション管理へ携わる管理会社と一般の区分所有者では、持っている情報量に大きな差があります。

「この設備は交換時期です」と説明されても、本当に現在交換する必要があるのか、修理によって数年間使えるのか判断できないことがあります。

また、「この工事価格が一般的です」と言われても、同じ仕様による相見積もりや積算根拠がなければ、その説明が妥当なのかを判断することは容易ではありません。

専門知識を持っていること自体は、管理会社の大きな強みです。

だからこそ管理を委託しています。

しかし、その専門知識を持つ側が提案を行い、判断材料を作り、発注先選定へも関わり、さらに取引によって経済的利益を得られる場合には、別の立場から確認する仕組みが必要になります。

「詳しい人が言っているのだから正しいだろう」と思いたくなる心理まで含めて制度を設計しなければ、形式上は総会で決議していても、区分所有者が実質的に判断できていない状態になる可能性があります。

利益相反が問題になりやすい具体例

大規模修繕工事と関連会社への発注

最も分かりやすい場面が大規模修繕工事です。

マンションの規模によっては数千万円から億単位の資金が動くため、発注先の選定方法や工事価格の確認方法が極めて重要になります。

管理会社やその関連会社が施工会社候補になること自体が問題なのではありません。

その会社に必要な技術や実績があり、価格や条件について公正に比較した結果として選ぶのであれば、管理組合にとって合理的な選択になる場合もあります。

問題になるのは、他社との比較を行わず特命発注する、候補会社を管理者側だけで選んでいる、見積条件がそろっていない、積算根拠が十分に示されないといった場合です。

さらに、「修繕積立金に余裕があるので、この工事も同時に行いましょう」と提案されたときには、本当に現在実施すべきなのか、数年先へ延期できないのか、別の工法や修繕方法がないのかについても検討できる状態が望ましいでしょう。

2026年版ガイドラインでは、管理業者管理者方式の大規模修繕について、原則として管理者が検討の主体とならず、修繕委員会を中心として検討することが望ましいとの考え方が示されています。

特に施工会社など発注先の検討・選定については、管理者を関与させないという整理まで踏み込んでいます。

「管理会社を信頼するか」という感情だけで処理せず、発注先選定の場面では管理者と選定主体を分けるという発想が重要です。

日常修繕と設備更新

大規模修繕ほど目立たなくても、日常的な設備修繕も確認が必要です。

給排水ポンプ、防犯カメラ、消防設備、照明、機械式駐車場などでは、部品交換によって延命できる場合と設備全体を更新したほうがよい場合があります。

区分所有者が設備の専門家でなければ、管理会社から「交換が必要です」と説明されたとき、その判断が本当に妥当なのか確信を持てないこともあるでしょう。

もちろん、安全上すぐ交換しなければならないケースもあります。

一方、同じ関係会社への小規模発注が繰り返されているなら、一件ごとの金額だけではなく、年間発注額、発注回数、更新周期、発注先の偏りなどを見ることで、別の傾向が見えてくる場合があります。

一件十万円や二十万円の支出なら総会で大きな話題にならなくても、一年間積み重なれば相当な金額になることがあります。

管理委託契約の更新

管理業者管理者方式では、管理者を務める管理会社自身との管理委託契約を更新する場面もあります。

長年同じ管理会社へ委託しているマンションでは、契約更新が毎年の定例作業になり、契約内容を詳しく確認しなくなることがあります。

しかし、人件費や物価だけでなく、建物の状態、管理員業務、再委託先、設備管理の範囲なども時間とともに変わります。

そのため、「以前から同じ会社だから」という理由だけで更新するのではなく、現在の契約内容、実際の業務履行、管理品質、費用を分けて確認することが必要です。

もし「最近、管理費が高くなったように感じる」と思ったとしても、その感覚を否定する必要はありません。

どの費用が増えたのか、業務内容も増えているのか、同じ条件で他社へ依頼した場合はどうなのかへ置き換えることで、漠然とした不満が具体的な判断材料になります。

管理組合財産と資金移動

もう一つ重要なのが財産管理です。

管理者として支出を判断する権限と、実際に預金から資金を動かす手段が同じ主体へ集中すれば、内部統制上のリスクは高くなります。

「そこまでチェックすると、管理会社を疑っていると思われないだろうか」と気になる方もいるかもしれません。

しかし、複数の承認手続を設ける目的は、特定の人を疑うことではありません。

担当者は交代しますし、人は間違えることがあります。電子認証情報が漏れる可能性もあれば、引き継ぎの途中で事故が起こることも考えられます。

だからこそ、一人では重要な資金を動かせない仕組みをつくることが、管理会社と管理組合の双方を守ることにつながります。

2026年4月の制度改正を義務・モデル・推奨に分けて整理

管理業者管理者方式について調べていると、「法律で決まっています」「国土交通省が推奨しています」「標準規約に書いてあります」といった説明が混在し、何が必須なのか分からなくなることがあります。

この違いは非常に重要です。

2026年4月1日には改正マンション管理適正化法の関係制度が施行され、同日に外部管理者方式等に関するガイドラインも改訂されました。

一方、標準管理者事務委託契約書や標準管理規約は、個々のマンションへそのまま法律として適用されるものではありません。

そこで、制度上の位置付けを分けて確認します。

2026年4月の制度改正を義務・モデル・推奨に分けて整理 法令上の義務 標準管理規約と標準契約書で示されるモデル ガイドライン上望ましいとされる措置 本記事として確認を勧める事項

法令上の義務

改正マンション管理適正化法第77条の2では、管理事務を受託する管理業者が管理者等でもある場合に、自社または法令上一定の関係者との対象取引について事前説明を行う制度が設けられています。

取引相手との関係、取引内容、金額と積算根拠、相見積もりの内容、相見積もりを行わなかった場合の理由などが確認事項になります。

これは、対象となる場合には法令上の手続として扱う必要があります。

標準管理規約と標準契約書で示されるモデル

一方、利益相反取引の総会承認、管理者事務担当者と管理事務担当者を別部門所属者とする体制、管理者事務報酬の扱いなどについては、国土交通省の標準管理者事務委託契約書や標準管理規約書き換え表で具体的なモデルが示されています。

これらは、個々のマンションの管理規約や契約そのものではありません。

したがって、実際には現在有効な管理規約と締結する契約書を確認する必要があります。

ガイドライン上望ましいとされる措置

外部専門家監事の選任、管理者の原則1年任期、大規模修繕における修繕委員会主体の検討などは、ガイドライン上「望ましい」とされる内容を含んでいます。

ここを一律の法定義務として説明すると、制度を誤解する可能性があります。

「法律上必要なのか」「国土交通省の標準モデルなのか」「ガイドラインが望ましいとしているのか」を分けて理解することが大切です。

本記事として確認を勧める事項

本記事では、法令上必要となる事項だけでなく、管理組合が判断しやすくするための実務的な確認も提案しています。

たとえば、関連会社への年間発注総額を確認する、導入前後の支出を比較する、監事がどの資料をどの時期に受け取れるか決めるといった内容です。

これらがすべて法律上の義務という意味ではありません。

制度を導入したあとも「自分たちのマンションで何が起きているのか」を把握するための実務上の確認事項です。

管理規約と管理者事務委託契約で確認したい事項

管理業者管理者方式へ移行するときには、従来の管理委託契約書だけを変更すれば済むわけではありません。

管理者として行う業務を定める管理者事務委託契約、通常の管理事務を定める管理委託契約、管理組合の基本ルールである管理規約について、相互に矛盾がないか確認する必要があります。

2025年12月12日には、国土交通省がマンション標準管理者事務委託契約書を策定し、標準管理委託契約書の改正と管理業者管理者方式に対応した標準管理規約書き換え表を公表しました。

確認項目 主な確認内容 管理組合から確認したい点
管理者の権限 管理者が単独で執行できる範囲 高額な契約まで広く単独判断できないか
管理者事務 管理者として行う業務 通常の管理事務との境界が明確か
担当部門 管理者事務と管理事務の担当体制 標準契約書の別部門体制と比べてどうなっているか
管理者事務報酬 管理者としての業務に対する報酬 管理委託費と区別して確認できるか
利益相反取引 自社や一定の関係先との取引 事前説明と承認方法が明確か
関係会社等 利益相反の対象となり得る法人 対象となる会社を把握できるか
発注方法 工事や業務の発注手続 相見積もりや候補会社選定の方法が明確か
経済的利益 第三者から受ける金銭等 紹介手数料や仲介料の扱いが明確か
財産管理 印鑑等や電子認証の管理 資金移動権限が集中していないか
監事 管理者を監督する体制 必要な契約資料や会計資料へアクセスできるか
任期 管理者の就任期間 定期的に再任を判断できるか
解任 管理者を変更する方法 解任条件が過度に厳しくないか
契約終了 管理者事務委託契約の終了 中途解除条件が明確か
引き継ぎ 後任への移行方法 会計資料や契約書、データを円滑に引き渡せるか

契約書を前にすると、「こんな専門的な文章を自分たちだけで確認できるのだろうか」と不安になることがあります。

その場合でも、最初からすべての条文を完璧に理解しようとする必要はありません。

利益相反、関連会社、担当部門、監事、印鑑等、任期、解任といった重要な項目から読み、「この規定によって実際には誰が何を決められるのか」を説明してもらうと理解しやすくなります。

標準契約書と違う部分があれば、それだけで問題と決めるのではなく、違う理由と代わりにどのような安全策を設けているのかを確認します。

「標準と同じか」より「違う理由を説明できるか」を見ることが、個別マンションでは重要でしょう。

監事とマンション管理士によるチェック体制

管理業者管理者方式では、「誰を管理者にするのか」に関心が集中しやすい一方、「誰がその管理者を監督するのか」も同じくらい重要です。

管理会社は管理の専門家ですから、区分所有者より知識や情報を多く持っています。

そのため、「専門家に任せるのだから、細かいところまで監督しなくてもよいのではないか」と考えたくなるかもしれません。

しかし、専門性が高く、任せる権限が広いほど、別の立場からの確認には意味があります。

監事を形式的な役職にしない

監事が決算時に資料を確認して押印するだけでは、管理業者管理者方式で必要となる監督機能を十分に果たせない可能性があります。

管理者の業務執行、財産状況、重要契約、利益相反取引などを確認するため、必要な資料へ適切な時期にアクセスできる状態を整える必要があります。

たとえば高額工事の契約前に資料を確認できるのか、関連会社との取引一覧を把握できるのか、預金残高や収支を確認できるのかといった具体的な運用まで決めておくと、監事の役割が形だけになりにくくなります。

マンション管理士を監事にする意味

マンション管理士を監事として活用する場合には、管理規約、契約、総会手続、管理会社との関係などを横断して確認しやすい利点があります。

たとえば区分所有者から選ばれた監事が、「最近同じ会社への修繕発注が増えているような気がする」と感じたとき、その違和感を契約書、支出記録、発注手続と照らし合わせ、具体的な確認事項へ変える支援ができます。

区分所有者だから気付ける感覚と、専門家だから確認できる制度面を組み合わせるわけです。

ただし、マンション管理士なら利益相反が存在しないわけではありません。

管理会社から別の仕事を受注している、継続的な紹介関係がある、特定の施工会社との経済的関係があるといった事情も確認する必要があります。

資格と独立性は別の問題です。

建築士など他の専門家との役割分担

大規模修繕では、マンション管理士へ相談すれば技術的な問題まで一人で判断してもらえると考えられることがあります。

しかし、マンション管理士と建築士などの技術専門家では役割が異なります。

マンション管理士は、管理規約、総会手続、契約条件、施工会社選定の進め方、合意形成などを支援できます。

一方、設計や専門的な工事監理などは、建築士など適切な資格と専門性を持つ者の領域になります。

利益相反を避けるという意味でも、一人の専門家へすべてを集中させるより、役割を分け、それぞれが異なる角度から確認できる状態をつくることが望ましいでしょう。

管理会社による管理者とマンション管理士による外部管理者の違い

管理会社が管理者になる場合の利益相反を知ると、「それなら管理会社ではなくマンション管理士を管理者にすればよいのではないか」と考える方もいるでしょう。

ただし、この比較も単純な善悪では整理できません。

管理会社による管理者には、日常管理との情報共有がしやすく、法人として担当者の交代やバックアップを行いやすい利点があります。

一方、自社や関連会社への発注が発生する場面では、利益相反への確認を強く意識する必要があります。

マンション管理士など管理会社とは別の外部専門家が管理者になる場合には、管理会社との立場を分けやすい反面、管理委託費とは別に管理者報酬が必要となる場合があり、個人事務所に依存する場合には業務継続性も確認しなければなりません。

比較項目 管理会社による管理者 マンション管理士による外部管理者
基本構造 管理者事務と管理事務を同じ企業が担う 管理者と管理会社を別主体にできる
利益相反 自社や関連会社への発注時に特に確認が必要 管理会社との直接的な利益相反を分離しやすい
日常業務との連携 同一企業内で情報共有しやすい 管理会社との連携体制を別途整える必要がある
費用 業務集約により抑えられる場合がある 管理委託費とは別に管理者報酬が必要になる場合がある
継続性 法人として代替要員を確保しやすい 個人依存の場合には病気や引退への備えが必要
監督 独立した監事等による牽制が特に重要 管理者自身が独立していても別の監督機能が必要
工事発注 自社グループとの取引を重点的に確認する 管理会社から独立した確認を行いやすい場合がある

マンション管理士型であっても、特定施工会社との紹介関係や経済的利害があれば、別の利益相反が生じる可能性があります。

管理組合が比較したいのは「管理会社かマンション管理士か」という肩書だけではありません。

独立性、費用、継続性、権限、情報開示、監督方法を含めた管理体制全体を見る必要があります。

導入前に使いたい利益相反リスク診断チェックリスト

管理業者管理者方式を導入するか判断するときには、利益相反対策だけでなく、そもそも現在の管理方式を変える必要性がどの程度あるのかも確認したいところです。

役員候補が以前より減っていることと、現在の理事会が機能していないことは同じではありません。

役員を継続して選任できないのか、理事会を開催できないのか、大規模修繕や重要契約の判断が長期間止まっているのかを整理したうえで、外部管理者を受け入れる監督体制があるかを考えます。

必要性が高いことと、今すぐ安全に導入できることは別の問題です。

「もう誰かへ任せないと続けられない」と感じているときほど、受け皿を確認することが重要になります。

分類 確認項目 確認の目安 確認
導入判断 現在の問題 現行方式で何ができなくなっているか説明できる
導入判断 導入目的 役員負担軽減以外の目的も整理されている
契約 管理者事務委託契約 管理者事務の内容が明確になっている
契約 管理者事務報酬 通常の管理委託費と区別して確認できる
組織 担当部門 標準契約書の別部門体制との違いを確認した
組織 実際の担当者 管理者事務と管理事務の担当者を確認できる
任期 管理者の任期 任期と再任方法が明確になっている
利益相反 関係会社等 対象となる関係法人を確認できる
利益相反 関係先の更新 関係会社等を定期的に把握できる
情報開示 事前説明 取引決定前に必要な事実が示される
情報開示 金額根拠 金額と積算根拠を確認できる
発注 相見積もり 同一条件による比較内容を確認できる
発注 相見積もりなし 実施しない場合の理由が説明される
発注 候補会社 誰が候補会社を選んだか確認できる
発注 総会承認 利益相反取引を管理者だけで決定しない
修繕 修繕委員会 高額工事を管理者とは別の立場で検討できる
修繕 発注先選定 管理者を発注先選定へ関与させない体制を検討している
財産 印鑑等の保管 資金移動権限が管理会社だけへ集中していない
財産 電子認証 オンライン送金の認証権限が分離されている
財産 出金承認 多額の支払いを一人で完結できない
監査 独立した監事 管理者と利害関係のない監事がいる
監査 専門家活用 必要に応じて外部専門家へ相談できる
監査 資料閲覧 監事が契約や会計資料を確認できる
経済的利益 手数料等 不透明な紹介料等を排除できている
報告 定期報告 管理者事務の状況を区分所有者が確認できる
解任 管理者の解任 解任要件が過度に厳しくない
引き継ぎ 後任選任 次の管理者を選ぶ方法が決まっている
引き継ぎ 資料返却 会計資料や議事録等の引き継ぎ方法がある
規約 固有企業名 将来の管理者変更を難しくする規定になっていない

チェックが付かない項目があっても、直ちに危険な管理会社だと判断する必要はありません。

たとえば管理者事務と管理事務の担当部門が分からなければ、標準管理者事務委託契約書では別部門所属者とするモデルが示されていることを踏まえ、「今回の契約では誰がそれぞれの業務を担当しますか」と尋ねることができます。

関係会社の範囲が分からなければ一覧を求め、利益相反取引の説明方法が分からなければ、どの資料をどの時期に区分所有者へ示すのかを確認します。

質問への回答が具体的で、契約書や管理規約とも一致していれば、最初に感じていた漠然とした不安は判断材料へ変わっていくでしょう。

反対に、担当者によって説明が変わる、重要な条件を書面で確認できない、契約案が総会直前まで示されないといった場合には、導入を急がず確認する意味があります。

導入後に確認したい管理業者管理者方式の変化

管理業者管理者方式は、総会で導入を決めた時点で成功が決まる制度ではありません。

本当に確認したいのは、導入前に困っていた問題が改善したかという点です。

役員のなり手不足が問題だったのであれば、実際に区分所有者の負担が減ったのかを確認します。

大規模修繕や契約判断が停滞していたのであれば、必要な資料が適切な時期にそろい、意思決定が進むようになったかを見ます。

さらに、管理委託費、管理者事務報酬、小修繕費、設備更新費、関連会社への発注額などを導入前後で比較すると、管理体制変更による影響を把握しやすくなります。

支出が増えたからといって、それだけで問題とはいえません。

人件費や資材価格の上昇、必要な設備更新、以前先送りしていた修繕などによって合理的に増えることもあります。

確認したいのは、増えた理由を資料によって説明できるかという点です。

また、監事が実際に機能しているかも見ておきたいところです。

必要な会計資料を受け取れているか、重要契約や利益相反取引について質問できるか、その質問へ管理者から回答が得られているかを確認します。

導入前には「理事のなり手がいない」という問題に悩んでいたのに、導入後には「何をしているのか分からない」という別の不安が生じることもあります。

その場合には、制度そのものを直ちに失敗と考えるのではなく、報告方法が不足しているのか、管理者の権限が広すぎるのか、監事が十分に機能していないのか、契約条件が実態に合っていないのかを分けて確認します。

管理業者管理者方式を導入したこと自体を成果にするのではなく、導入前に困っていた問題が実際に改善したかを成果として見ることが重要です。

管理業者管理者方式の利益相反FAQ

管理会社が管理者になること自体は問題ですか

管理会社が管理者になること自体が、直ちに違法または不適切というわけではありません。

役員の担い手不足を補い、区分所有者の実務負担を軽減できる可能性があります。また、管理会社が建物の状況を継続的に把握していることによって、業務を効率的に進められる場合もあるでしょう。

一方、管理組合を代表して判断する立場と、管理業務や工事を受注する立場が近くなるため、利益相反への対策が重要になります。

管理会社であることだけを理由に賛成または反対するのではなく、事前説明、発注方法、監事、財産管理、任期、解任などの仕組みまで確認して判断することが大切です。

管理会社の関連会社への工事発注は利益相反になりますか

利益相反のおそれがある取引として確認が必要になる可能性があります。

ただし、関連会社への発注自体が一律に禁止されているわけではありません。

関連会社に必要な専門性や実績があり、価格や条件について適切に比較した結果、その会社を選ぶことが管理組合にとって合理的な場合もあります。

そのため、取引相手との関係、工事内容、金額と積算根拠、相見積もりの内容、相見積もりを行わない場合の理由などを確認し、管理組合自身が取引の妥当性を判断できる状態にすることが重要です。

利益相反取引は総会の承認が必要ですか

マンション標準管理者事務委託契約書や管理業者管理者方式に対応した標準管理規約書き換え表では、利益相反取引について重要な事実を示し、総会承認を得る仕組みが示されています。

一方、改正マンション管理適正化法第77条の2による事前説明と、規約や契約に基づく総会承認は異なる手続です。

具体的な取引で何が必要になるかについては、現在有効な管理規約と締結している契約内容を確認してください。

「法律上の事前説明を行ったため、それだけで承認手続も終わった」と考えないことが大切です。

管理規約には何を書いておくべきですか

管理者の選任、任期、業務範囲、辞任、解任、利益相反取引、監事、財産管理、緊急時対応などは重点的に確認したい事項です。

さらに、管理者が退任した場合に後任をどのように選ぶのか、資料や財産を誰へどのように引き継ぐのかまで確認しておくと、将来の変更にも対応しやすくなります。

現在の管理会社だけを前提にするのではなく、数年後に別の管理者へ変更しても制度が機能するかという視点が必要でしょう。

監事にマンション管理士を選ぶメリットはありますか

マンション管理士を監事に選任することで、管理規約、契約、総会手続、管理会社との関係などを専門的な視点から確認しやすくなる可能性があります。

国土交通省ガイドラインでも、外部管理者方式では監事のうち少なくとも一人をマンション管理士、弁護士、公認会計士などの外部専門家から選任することが望ましいという考え方が示されています。

ただし、マンション管理士なら自動的に独立しているわけではありません。

管理会社との取引関係や紹介関係なども確認し、実際に独立した立場から管理者を監督できるかを見る必要があります。

外部管理者を管理会社以外に変更できますか

別の管理会社やマンション管理士などの外部専門家を管理者に選任することや、管理組合の状況が整えば理事会方式へ戻すことも考えられます。

ただし、実際の変更方法は管理規約や管理者事務委託契約によって異なります。

導入時から任期、再任、解任、中途解除、後任選任、資料や財産の引き継ぎまで確認しておけば、将来の選択肢を残しやすくなります。

「必要になれば変更できるだろう」と考えるだけではなく、実際にどの規定によって変更できるのかを確認しておくことが大切です。

まとめ

管理業者管理者方式は、役員の担い手不足や理事会運営の負担を軽減し、マンション管理を持続しやすくする選択肢になり得ます。

その一方で、管理組合を代表して判断する立場と、管理業務や工事を受注する立場が近づくため、利益相反が生じ得る構造を持っています。

だからといって、管理会社が管理者になる方式そのものを危険と決めつける必要はありません。

確認したいのは、利益相反取引の事前説明、管理者事務と管理事務の分離、財産管理、総会承認と発注透明性、独立した監事、不透明な経済的利益の排除、任期と解任と引き継ぎという7つの仕組みが、自分たちのマンションで実際に機能するかという点です。

さらに、制度を理解するときには、法令上の義務、標準規約や標準契約書で示されるモデル、ガイドライン上望ましいとされる措置、本記事としての実務上の確認提案を分けて考える必要があります。

制度があるから自動的に安心なのではありません。

大手の管理会社だから安心なのでもなく、マンション管理士を選べば自動的に利益相反がなくなるわけでもありません。

誰へ実務を任せる場合でも、必要な情報を管理組合が受け取り、重要な事項について区分所有者が判断し、別の立場から業務を監督できる仕組みを残すことが、管理組合の財産と将来の選択肢を守ります。

管理業者管理者方式で目指したいのは、管理を手放すことではありません。

日常の実務を任せながらも、重要な判断と監督を管理組合が手放さない管理体制をつくることです。

管理業者管理者方式で目指したいのは、 管理を手放すことではありません。 日常の実務を任せながらも 重要な判断と監督を管理組合が手放さない 管理体制をつくることです。

参考資料

国土交通省 マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドラインの改訂について

国土交通省 マンションにおける外部管理者方式等に関するガイドライン

e-Gov法令検索 マンションの管理の適正化の推進に関する法律

国土交通省 マンション標準管理者事務委託契約書等の策定・改正について

国土交通省 マンション標準管理規約

横浜市 外部管理者方式や専門家との顧問契約について

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