周囲を見れば、十分な資産を持っている人、高い学歴を持つ人、仕事で高く評価されている人、何か一つの分野で抜きん出ている人がいます。そうした姿が続けて目に入ると、自分には人に誇れる才能も有利な経歴もないように思え、「もっと努力しなければならないのだろうか」と焦りながらも、何を頑張れば状況が変わるのか分からなくなることもあるでしょう。
けれども、自分の強みを特別な才能や華やかな実績だけで考えていると、すでに手元にある重要な条件を見落としてしまいます。貯蓄や収入だけでなく、固定費の低さ、仕事で得た知識、これまでの経験、自由に使える時間、生活環境、人とのつながり、積み重ねてきた信用なども、これからの仕事や家計を考える際に使える材料だからです。
この記事では、現在の自分が実際に利用できるお金、時間、知識、経験、環境などを広く「資源」と捉えます。そして、その資源がある場所や状況で自分の行動を取りやすくしたり、負担を抑えながら選択肢を増やしたりするとき、初めて「アドバンテージ」として機能すると考えます。
つまり、資源は持っているだけでも資源ですが、それが自分の行動を支えて初めてアドバンテージになります。ここで扱う「自分の強み」とは、そのような資源を発見し、機能する場所を考え、実際に使いながら次の知識や経験、収入、信用、資産へ育てていくところまで含めた広い考え方です。
自分の強みに気づく前に知っておきたいこと
努力だけでは人生や家計の結果の差を説明できない
真面目に働き、無駄遣いも避け、自分なりに努力しているにもかかわらず、なぜか周囲のほうが早く前へ進んでいるように見えることがあります。そんな状態が続けば、「自分の頑張りが足りないから結果が出ないのではないか」と考え、仕事の時間を増やしたり、休息まで削って勉強したりする方向へ進む人もいるでしょう。
もちろん、努力そのものには意味があります。知識を増やすにも、仕事で経験を積むにも、一定の行動を続けなければ身につかないものがあるからです。
ただし、同じ努力量を投入したからといって、全員が同じ結果を得られるわけではありません。同じ一時間を勉強へ使うとしても、静かな部屋で集中できる人と、家事や育児の合間に何度も中断されながら学ぶ人では、同じ「一時間」という数字でも実際の条件は大きく異なります。
仕事についても同じことがいえるでしょう。同程度の能力を持っていても、その能力への需要が強い業界にいる人と、ほとんど評価されない職場にいる人とでは、努力が評価や収入へ変わる度合いに違いが生じる可能性があります。
さらに、新しい仕事へ挑戦するとき、半年程度の生活費を確保している人と、翌月の家賃まで現在の給与へ依存している人では、失敗したときに耐えられる範囲が同じとは限りません。前者なら一時的な収入減を受け入れられる場面でも、後者には生活そのものを守る必要があるため、慎重にならざるを得ないでしょう。
こうして条件まで含めて考えると、結果が出ないときに「もっと頑張る」という答えだけを選ぶ必要はないと分かってきます。努力を投入する場所を変えたり、生活コストを下げて余裕を作ったり、別の能力と組み合わせたりすることで、努力量そのものを増やさずに状況を改善できる可能性もあるからです。
努力が足りないと自分を責める前に、その努力がどのような条件の上で行われているのかを確かめることが、自分の強みを考える出発点になります。
同じ収入でも住居費や家族支援によって残るお金は変わる
家計について考える場合も、表面に見える収入額だけでは実際の余裕を判断できません。
たとえば、同じ手取り30万円を得ている二人がいたとして、一人は実家から勤務先へ通えるため住居費を抑えられ、もう一人は仕事のために都市部へ移り、家賃や光熱費、家具家電などをすべて自分で負担しているとします。この時点で、自由に使える金額にはかなりの差が生まれるでしょう。
そこへ会社の社宅や住宅手当、車の必要性、借入返済、家族への経済的な支援などが加われば、同じ給与でも家計の余力はさらに異なります。育児や介護を家族に手伝ってもらえる人がいる一方で、自分自身が家族を支える側に立っている人もいるため、単純な年収比較では見えない条件は少なくありません。
それにもかかわらず、周囲の貯蓄額だけを見ていると、「同じくらい稼いでいるのに、なぜ自分だけお金が残らないのだろう」と感じることがあります。本人には家計管理能力の差に見えていても、実際には生活を維持するための固定的な負担そのものが違っている場合もあるのです。
全国銀行協会でも、資産形成を考える前提として家計の収支を把握し、支出の見直しを行うことが案内されています。日々の小さな出費だけではなく、継続して発生する費用へ目を向けることは、家計の構造を確認するうえで重要でしょう。
家計を見るときには収入額だけではなく、その収入から無理なくお金を残せる構造になっているかまで確認する必要があります。
比較すべきなのは他人の成果ではなく自分のスタート地点
他人との比較がすべて無意味というわけではありません。周囲を見ることで市場の水準が分かったり、自分に不足している技能へ気づいたりすることもあるため、比較そのものを避ける必要はないでしょう。
ただし、相手の最終的な成果だけを切り取り、自分の現在と並べてしまうと、そこへ至るまでの条件が抜け落ちます。
30代で大きな資産を築いた人がいたとしても、その数字だけでは、これまでの収入、住居費、相続の有無、家族からの支援、働いてきた業界などは分かりません。転職で年収が大きく上がった人がいたとしても、その人が以前から持っていた専門知識や人とのつながりまで見えているとは限らないでしょう。
反対に、自分が持っている条件も、本人には見えにくいものです。勤務先まで徒歩で通えること、大きな借入がないこと、同じ業界で長く働いてきたこと、困ったときに相談できる人がいることなどは、毎日そこにあるため特別には感じにくくなります。
それでも、別の人なら時間やお金を使わなければ得られない条件を、自分はすでに利用できる場合があります。他人がどこまで到達したかを見るより、自分がどの条件から始められるのかを把握したほうが、これから取れる行動は具体的になるのではないでしょうか。
自分には何もないと感じるほど強みを見落としやすい
資産や学歴や才能など持っていないものへ意識が向く理由
自分の強みが分からないとき、人は自分にあるものより、ないものへ意識を向けやすくなります。
資産を築いている人を見れば自分のお金の少なさが気になり、高学歴の人が活躍していれば学歴の差を意識するでしょう。話すことが得意な人を見たあとにはコミュニケーション能力まで足りないように感じ、行動力のある人を見れば、自分には決断力もないと思うかもしれません。
比較する相手が変わるたびに、新しい不足が一つずつ増えていくような感覚になります。
とりわけ、他人の完成した結果だけが次々と目に入る環境では、自分だけが遅れているように感じるという可能性があります。相手がそこへ到達するまでに使った時間や環境は見えにくく、目立つ成果だけが比較対象になりやすいためです。
とはいえ、他人が持っている資源を数え続けても、自分が今日利用できる資源は増えません。不足を把握することは必要ですが、それと同時に、すでに手元にある条件へ意識を戻さなければ、自分なりの戦略は作りにくいでしょう。
自分にとって当たり前の能力ほど価値に気づきにくい
強みは、本人が「これは自分の得意分野だ」と認識しているものばかりではありません。
何年も繰り返して自然にできるようになったことほど、本人には普通の行動に見えるため、価値を低く評価しやすくなります。
ある会社で長く事務を担当している人なら、複数の締め切りを管理し、書類の抜け漏れを確認し、必要な相手へ順番を考えながら連絡することを日常的に行っているかもしれません。本人は単に通常業務をこなしているつもりでも、そこには情報整理、進行管理、調整、ミス防止など複数の能力があります。
営業を長く続けてきた人にも同じことが起こります。相手の反応を見ながら説明の順序を変え、専門用語を別の言葉へ置き換え、質問の内容から不安を読み取っていても、慣れてしまえば本人には特別な技術とは感じられません。
厚生労働省のマイジョブ・カードでも、特別な実績や専門資格がなくても、日々の業務や生活の中で発揮している強みを振り返ることが案内されています。また、強みが分からない場合には、過去の経験や成果を書き出して整理する方法も紹介されています。
自分にとって負担なくできることが、ほかの人にとっても同じように簡単だとは限りません。だからこそ、自己分析では「何を達成したか」だけではなく、「何を自然に繰り返しているか」まで見る必要があります。
相談される力や家計管理など日常の行動にも強みは隠れている
強みを仕事上の技能だけに限定すると、生活の中で繰り返し使っている能力を見落としてしまいます。
なぜか周囲から相談されることが多い人は、本人には「ただ話を聞いているだけ」と感じられるかもしれません。ところが、相手の話を途中で遮らず、感情的になっている言葉の中から問題を整理し、本人が考えられる状態まで落ち着かせているなら、そこには傾聴や情報整理の力があります。
家計を長期間大きく崩さず管理できている人も同様です。収入の範囲で支出を調整し、突然の出費を想定しながら一定額を残しているなら、計画を立て、優先順位を決め、その仕組みを継続する能力を使っています。
料理が苦にならず外食費を抑えられる人、自分で契約内容を比較して必要なサービスを選べる人、身の回りの物を修理しながら長く使える人も、生活の中で経済的な価値を生み出しています。
こうした行動は華やかな肩書きになりにくいため、「自分には強みがない」と感じる人ほど意識して拾い上げる必要があります。本人には普通でも、繰り返し再現できる行動であれば、別の場面へ持ち運べる可能性があるからです。
自分が使える資源はお金や才能だけではない
自分が少ない負担で使えるものも資源になる
資源という言葉から、多額の貯蓄や専門資格のように、はっきり価値が分かるものを想像する人は多いでしょう。
もちろん、自由に使えるお金が多ければ選択肢は広がります。しかし、実際の人生設計で役立つ資源は、それだけではありません。
家族に子どもの送迎を時々頼めるため学習時間を確保できる、自宅に静かな作業場所があるので外部のスペースを借りなくても済む、仕事でパソコンを使ってきたため新しいサービスを覚える心理的な負担が小さいといった条件もあります。
どれも世間一般で「才能」と呼ばれるものではありません。それでも、ほかの人がお金や時間を使わなければ用意できないものを、自分はすでに利用できるのであれば、行動を考える際の資源として数えられます。
熟達した起業家の意思決定を研究したエフェクチュエーションでも、不確実な状況で未来を正確に予測してから動くのではなく、自分が誰であり、何を知り、誰を知っているかという現在の手段から始める考え方が示されています。
ここで重要なのは、すでに持っているものを過大評価することではありません。目立たないという理由だけで候補から外さず、まず利用可能な材料として認識することです。
資産と知識と経験と時間と環境を広く確認する
自分の資源を見つけるときは、生活をいくつかの領域へ分けると整理しやすくなります。
まず、お金に関する資源があります。貯蓄額だけでなく、大きな借入がないこと、住居費が低いこと、勤務先の福利厚生を利用できることなども、家計を動かす条件として確認できます。
知識については、資格として証明できるものだけを見る必要はありません。長年仕事をしてきたことで分かる業界特有の習慣や、顧客が困りやすい場面、以前の失敗から覚えた判断なども知識の一部です。
経験には、営業や事務といった職歴だけではなく、子育て、介護、転職、引っ越し、厳しい家計を乗り越えた経験なども含まれるでしょう。
そのほかにも、自由に使える時間、生活している地域、現在の勤務先、元同僚とのつながり、周囲から寄せられている信用などがあります。
すべてを十分に持っている必要はありません。持っていないものだけを見て終わらず、自分の生活全体にどのような資源が分散しているのかを把握することが重要です。
一般的に優れているかではなく自分が使えるかで判断する
資源を書き出していると、「これくらいならできる人は大勢いる」と、すぐに候補から外したくなることがあります。
しかし、社会全体で珍しいかどうかと、現在の自分にとって役立つかどうかは別の問題です。
Excelをある程度使える人は珍しくありません。それでも、現在の職場でデータ整理をできる人が少なく、頻繁に頼られているのであれば、その環境では役割を持っています。
地方で暮らしていることにも、求人の種類が少ないという不利がある一方、住居費を抑えやすい人もいるでしょう。在宅で働ける仕事と組み合わせられれば、その低い生活コストが行動を支える条件になる可能性があります。
自分の資源を評価するときに見るべきなのは、誰より優れているかではありません。実際に利用でき、その条件によって何かを少し進めやすくできるかという点です。
家計ではお金が残りやすい仕組みが強みになる
高収入でも固定費が大きければ余力は小さくなる
高収入であることは、家計における大きな強みです。
それでも、収入が高いことと自由に使える余力が大きいことは、必ずしも一致しません。手取り40万円を得ていても、住宅ローン、車関連費、保険料、通信費などを合わせて毎月35万円必要なら、自由に動かせる金額は限られます。
一方で、手取り30万円でも生活費を20万円程度で維持できる人なら、毎月ある程度の余力を確保できるでしょう。
| 手取り40万円 | 手取り30万円 |
|---|---|
| 住宅ローン、車関連費、保険料、通信費などを合わせて毎月35万円必要なら | 生活費を20万円程度で維持できる人なら |
| 自由に動かせる金額は限られます | 毎月ある程度の余力を確保できるでしょう |
家族構成や必要な生活費が異なるため、単純にどちらが優れていると決めることはできません。ここで確認したいのは、自分の家計がどの程度柔軟に動ける状態になっているかという点です。
固定費が高ければ、収入が下がったときにも支出をすぐ変更しにくく、転職や働き方の変更を考える際にも心理的な負担が大きくなる場合があります。反対に、必要な生活費を低く保てていれば、一時的な収入減へ対応しやすくなるという可能性があるでしょう。
住居費や交通費が少ないことも経済的な余力になる
ある人は、同年代と比べて特別に高い収入を得ているわけではありませんでした。
ただ、職場まで徒歩で通える場所に住んでいたため、通勤用の車を持つ必要がありません。駐車場代や燃料代だけでなく、車検や保険などの負担もなく、さらに住居費も比較的低かったため、毎月一定額を残しやすい生活になっていました。
本人は長い間、「もっと給料が高ければ、将来のためにお金を使えるのに」と考えていました。しかし、家計全体を眺めると、すでに低い生活コストという資源を持っていたことになります。
これは「低収入でも問題ない」という意味ではありません。収入を増やしたほうがよい状況であっても、現在持っている低コストな生活環境を同時に利用できるという話です。
大きな借入がないことも同様でしょう。住宅ローンや奨学金などの借入があること自体を悪いと決めつける必要はありませんが、毎月の返済負担が小さければ、その分だけ将来の支出を調整しやすくなります。
低コストな生活環境を貯蓄や学習へつなげる
固定費が低ければ、それだけで将来が安定するわけではありません。
毎月3万円ほど住居費を抑えられていたとしても、その金額を何となく別の消費へ使っていれば、貯蓄や能力には変わらないからです。
そこで、「本来なら残せるはずのお金が実際に残っているか」を確認します。
生活上の備えが十分でなければ、まず現金として確保する方法があります。仕事の選択肢を増やしたい人なら、書籍や講座、資格取得などに一部を使うという判断もできるでしょう。
当面使う予定のない余裕資金については、長期的な資産形成を検討する選択肢もあります。ただし、投資には元本割れの可能性があるため、余力が生まれたからといって一律に投資へ回すことが適切とは限りません。
金融庁は、家計管理の基本として収入と支出を把握し、収支を黒字にして黒字分を貯蓄する考え方を示しています。また、投資には元本割れのおそれがあることを前提としたうえで、長期、積立、分散を資産形成の考え方として案内しています。
低コストで暮らせるという資源は、浮いた金額の行き先まで考えることで、初めて次の行動を支えるアドバンテージになり得ます。
自由に使える時間も将来の資源になる
家計の余力と時間の余力はつながっている
前章で扱った家計の余力と、ここで扱う時間の余力は別々のものではありません。
生活コストが低ければ、収入を増やすためにすべての時間を労働へ振り向けなくても済む場合があります。反対に、高い固定費を維持するため長時間働かなければならない状態では、勉強したり転職先を調べたりするための時間を作りにくくなることもあるでしょう。
つまり、お金の余裕が時間を守る場合もあれば、時間の余裕を使って将来のお金や仕事につながる知識を増やせる場合もあります。
家計とキャリアを分けて考えるだけでは見えにくいのは、このような資源同士のつながりです。
お金が少なくても時間という資源を持っている場合がある
貯蓄額が少ないと、自分には将来のために使えるものがないように感じることがあります。
しかし、資源をお金だけに限定しなければ別のものが見えてきます。
残業が少なく、毎日比較的決まった時間に帰宅できる人なら、平日に自分の裁量で使える時間があるかもしれません。通勤時間が短ければ、長距離通勤をしている人より一週間に使える時間が多くなるでしょう。
もちろん、家事、育児、介護などがあれば、勤務時間が短くても自由時間が十分とは限りません。そのため「理論上は空いている時間」ではなく、生活や睡眠を犠牲にせず、自分の判断で使える時間がどの程度あるかを確認する必要があります。
時間があること自体を無条件に強みと考えるのではなく、その時間を自分の意思で何かへ振り向けられるかを見ることが重要です。
時間を知識や準備へ変える
自由時間が見つかったとしても、そのすべてを勉強へ変える必要はありません。休息や娯楽も生活には必要であり、余裕をすべて自己投資へ回せば、かえって長く続けられなくなる可能性があります。
それでも、一週間の一部を将来の選択肢へ振り向けることはできます。
転職を考えているなら、自分の経験がどの職種で評価されているかを調べる時間として使えるでしょう。そこで不足している技能が分かった段階で、本当に必要な学習へ進むほうが、目的の分からない資格勉強を始めるより合理的な場合があります。
副業に関心があるなら、いきなり仕事を受けるのではなく、どのような需要があるのかを調べたり、小さな成果物を作ったりするところから始められます。
ただし、時間を使えば自動的に収入が増えるわけではありません。需要の少ない技能へ何年も時間を投入すれば、仕事へ結びつかないという可能性もあるため、「何を学びたいか」と同時に「誰がその能力を必要としているか」を確かめる必要があります。
時間を知識へ変え、知識を実務で使って経験へ育て、その経験が必要とされる場所へ移ることで、仕事の選択肢につながる場合があります。家計の余力から時間が生まれ、その時間から知識が育つという流れまで見えると、家計とキャリアが一つの人生設計の中でつながってきます。
知識と経験は数字に表れにくい資産になる
営業や事務などの仕事を行動まで分解する
自分のキャリアを「営業10年」「事務8年」とだけ捉えていると、何ができる人なのかが見えにくくなります。
強みを探すときには、職種名ではなく実際の行動まで分解してみましょう。
営業であれば、顧客の話を聞く、課題を整理する、提案資料を作る、価格を説明する、交渉する、契約後の問題へ対応するといった複数の行動があります。
事務職の場合も、書類作成、日程調整、データ管理、問い合わせ対応、他部署との連絡、ミスの防止、作業手順の改善などに細かく分けられるでしょう。
後輩へ仕事を教えてきた人なら、説明や育成の経験も含められます。
厚生労働省のjob tagでは、個人向けに自己診断や職業検索、キャリア分析などの機能が提供されており、自分の興味、価値観、能力と職業との接点を調べる際に利用できます。
職歴の価値は会社名や勤続年数だけで判断するのではなく、その期間にどのような行動を繰り返し、何を自分でできるようになったのかまで分解すると見えやすくなります。
子育てや転職や苦しい家計を乗り越えた経験から能力を探す
仕事以外の経験にも、現在使える能力が残っている場合があります。
子育てをしながら働いてきた人なら、予定どおりに進まない毎日の中で優先順位を変え、限られた時間を割り振り、突然の予定変更にも対応してきたでしょう。
何度か転職した人であれば、新しい環境へ入るたびに人間関係を作り、異なる仕事の進め方を覚え、自分に合う職場と合わない職場の違いについて理解している可能性があります。
家計が苦しかった時期を乗り越えた人なら、必要な支出の優先順位を考えたり、契約内容を調べ直したり、急な出費へ備える仕組みを作ったりしたかもしれません。
本人には「必要だったからやっただけ」と感じられるものです。それでも、現在似た状況へ直面したときに以前より落ち着いて対応できるのであれば、過去から得た判断が残っていると考えられます。
苦労した記憶と経験から得た価値を分けて考える
苦しかった経験を「強みに変えよう」と言われることへ、抵抗を覚える人もいるでしょう。
その感覚は自然です。
収入が不安定だった時期に強い不安を感じたなら、その苦しさを良い経験だったと考える必要はありません。人間関係で傷ついた出来事についても、「成長できたから結果的に良かった」と無理に意味づけしなくてよいのです。
ここで確認したいのは、出来事そのものの良し悪しではなく、その状況へ対応するために身についた行動です。
収入が不安定だったため、数か月先まで支出を予測する習慣が残った人もいるでしょう。仕事上のトラブルを何度も経験したことで、小さな異変を早めに確認する癖が身についた人もいます。
過去そのものを肯定しなくても、現在使える能力だけを取り出すことはできます。苦労を美化するのではなく、苦労とそこから得たものを切り分けることが大切です。
同じ能力でも場所とタイミングによって価値は変わる
評価されない原因が能力不足とは限らない
今の会社で評価されない状態が続くと、「自分には能力がないのではないか」と思いやすくなります。
もちろん、仕事に必要な技能が不足している場合には学び直しが必要です。それでも、能力があることと、その能力への需要が現在の場所にあることは別の問題でしょう。
ある会社では当たり前に使われている技術が、別の会社では不足していることがあります。同じ営業経験でも、新規顧客を増やしたい会社と既存顧客との関係維持を重視する会社では、評価される行動が変わります。
製造現場の経験とITの知識を持つ人なら、製造業のデジタル化を進める企業で二つの経験が同時に役立つかもしれません。介護現場で働いた経験に採用業務の知識が加われば、介護人材の採用や育成という別の場面で組み合わせられる可能性もあります。
今いる場所で評価されないことと、自分の経験そのものに価値がないことは同じではありません。
業界や会社が変わると同じ経験の市場価値も変わる
同じ経験でも、どの業界や会社で使うかによって必要とされる度合いは変わります。
長年の品質管理経験が、現在の会社では標準的な技能として扱われていたとしても、管理体制をこれから整えたい会社では重要な経験として見られることがあります。
反対に、現在の会社で高く評価されている技能でも、別の環境では一般的である場合もあるでしょう。
そのため、自分の市場価値を一つの点数のように考えるより、「誰が自分の経験を必要としているのか」という相手との関係で見るほうが現実的です。
転職を考える際にも、年収だけでなく、仕事内容、勤務時間、勤務地、必要な技能、福利厚生などを含め、自分の現在の資源と環境が噛み合うかを確認する必要があります。
もっと頑張るだけでなくどこで頑張るかを考える
結果が出ないとき、努力量を増やすことは非常に分かりやすい対策です。
一日一時間の勉強で足りなければ二時間へ増やし、職場で評価されなければ、さらに長く働こうと考える人もいるでしょう。
しかし、方向がずれている状態で投入量だけを増やすと、本人の疲労ばかりが大きくなる場合があります。
昇給余地が小さい会社で収入を大幅に増やしたいのであれば、残業量だけを増やすより、自分の経験を必要としている会社を調べるという方法があります。副業でも、需要の少ない市場で作業時間を増やし続けるより、その能力を必要としている相手がどこにいるかを確認したほうが有効な場合があるでしょう。
努力をやめる必要はありませんが、「どれだけ頑張るか」と同じくらい「どこへ努力を投入するか」を考えることが必要です。
自分を変える前に環境を変えられないか検討する
結果が出ないと、自分の性格まで変えなければならないように感じることがあります。
もっと社交的にならなければならない、もっと積極的に発言しなければならない、長時間働ける人にならなければならないと考え続ければ、仕事そのものより「今の自分では足りない」という感覚に疲れてしまうでしょう。
しかし、自分を大きく変えなくても、現在の性格や能力が機能しやすい環境へ移ることで状況が変わる場合があります。
人と絶えず話す仕事では消耗しやすい人が、一人で集中する時間の長い仕事へ移れば、これまで強い負担になっていた性質が問題になりにくくなるかもしれません。反対に、黙々と作業する環境では力を出しにくい人なら、調整や会話が多い仕事のほうが自然に動けることもあります。
環境を変えれば必ず収入が上がるという話ではありません。ただ、自分の能力を疑うだけではなく、能力と環境の組み合わせまで検討することで選択肢を増やせます。
人とのつながりと信用も見えないアドバンテージになる
人脈は有名人や経営者とのつながりだけではない
人脈という言葉を聞くと、経営者や有名人と知り合いであることを想像し、自分には関係のない話だと感じる人もいるでしょう。
けれども、実際の仕事や生活で役立つ人間関係は、もっと身近なところにもあります。
以前一緒に働いた元同僚、別の業界で働いている友人、困ったときに率直な意見を言ってくれる知人なども、自分の周囲にある人的な資源です。
知り合いが多いこと自体に価値があるわけではありません。必要なときに相談でき、こちらも相手へ何かを返せる関係があることのほうが、実際の行動では意味を持ちます。
人とのつながりを棚卸しするときは、「誰に何を頼めるか」という一方向の見方だけではなく、「自分はその人に何を提供できるか」まで考えると、関係をより現実的に捉えられるでしょう。
広告費がなくても過去の信用から仕事につながる場合がある
ある人は、小さな副業を始めたいと考えていました。
しかし、広告へ使えるお金はほとんどなく、SNSで大勢へ自分を売り込むことにも抵抗がありました。そこで、以前一緒に働いていた元同僚へ近況を伝える際に、自分が現在できる仕事についても話しました。
その人は以前から納期を守り、任された仕事を丁寧に返していたため、元同僚から小さな仕事について相談されました。
広告費という資源はありませんでしたが、過去の仕事によって築いた信用という別の資源があったわけです。
もちろん、信用があれば必ず仕事を紹介してもらえるわけではありません。それでも、機会へつながる手段が有料広告だけではないことは分かります。
信用は通帳には表示されませんが、誰かが仕事や情報を安心して渡せる理由になるなら、行動を支えるアドバンテージとして機能します。
関係を無理に増やすより今ある信用を正しく評価する
自分には人脈がないと感じると、交流会へ参加したり、SNSで知り合いを増やしたりしなければならないと思うことがあります。
しかし、人数が増えれば必ず機会も増えるとは限りません。相手が自分の仕事ぶりを知らず、こちらも相手についてほとんど理解していないなら、関係を維持するための時間だけが増える場合もあります。
それより、すでに築いている信用を確認したほうがよい場面もあります。
約束を守る、連絡を返す、期限を守る、依頼された仕事を雑に終わらせないといった行動は、一度だけでは目立ちません。それでも何年も積み重なることで、「あの人なら安心して相談できる」という評価につながります。
人とのつながりを強みにするときは、新しい関係を無理に大量へ増やすより、現在どのような理由で誰から信頼されているのかを確認することも大切です。
欠点や不利な条件から身についた能力を探す
弱点そのものを無理に長所へ言い換えない
自己分析では「短所も見方を変えれば長所になる」と説明されることがあります。
その考え方が役立つ場面はあるものの、あらゆる弱点を肯定的な言葉へ置き換える必要はありません。
期限を何度も守れない状態を「自由な発想がある」と表現しても、仕事上の問題は残ります。衝動的な買い物によって家計が苦しくなっているのであれば、それを「行動力」と呼んでも改善にはつながらないでしょう。
弱点には、弱点として対策したほうがよいものがあります。
そのうえで確認したいのが、その弱点や制約へ対応する中で、別の能力を身につけていないかという点です。
人前で話すのが苦手でも文章力が育っている場合がある
ある人は、大勢の前で即座に話すことが得意ではありませんでした。
会議で突然意見を求められると考えがまとまらず、帰宅してから「あのように説明すればよかった」と悔やむことが何度もありました。
そのため、会議の前には想定される質問を書き出し、自分の考えを文章へ整理し、複雑な内容については図まで準備するようになりました。
続けているうちに、その人が作る資料は「これを読めば状況が分かる」と周囲から評価されるようになります。
人前で話すことへの苦手意識が消えたわけではありません。それでも、その苦手さへ対応する過程で、複雑な情報を文章で整理する能力が育ちました。
弱点そのものが強みへ変わったのではなく、弱点を補うために身につけた別の能力が強みになったと捉えるほうが正確でしょう。
慎重さや資金不足への対応から得られる能力もある
お金が少ないこと自体をアドバンテージと考える必要はありません。
使える資金が多いほうが、選択肢を増やしやすい場面は明確にあります。
それでも、資金が限られていたことで別の能力を身につける人はいます。
ある人は新しいサービスを作りたいと考えましたが、高額なシステムを導入したり、多額の広告費を使ったりする余裕がありませんでした。
そこで、無料で利用できるツールを組み合わせ、必要最低限の試作品を作り、身近な少人数へ見せて反応を確かめました。
大きなお金を最初から使えなかったため、需要を小さく確認し、反応を見ながら改善する行動が習慣になったわけです。
エフェクチュエーションでは、不確実な状況で、将来得られる利益だけを見て大きく賭けるのではなく、自分が失っても耐えられる範囲を基準に行動する考え方も示されています。
資金不足という状態を美化する必要はありません。それでも、その制約へ対応する過程で小さく検証する力が身についたのであれば、その能力だけを別の状況へ持ち運ぶことができます。
不利な条件へ対応する過程で身についたものを見る
自分が不利だと感じてきた条件を振り返るときは、「それが本当は長所だった」と言い換えるのではなく、「そのために何をするようになったか」を考えます。
お金が限られていたため、商品や契約を比較する習慣がついた人もいるでしょう。人に頼ることが苦手だったため、自分で情報を調べ、問題を切り分ける能力が高まった人もいます。
何度か転職したことで、新しい環境に入ったときに何を先に確認すればよいのか分かるようになった人もいるかもしれません。
ただし、苦労をした人が必ず何か特別な能力を得るわけではありません。何も得られず、ただ大変だった経験もあります。
だからこそ、無理に意味を作るのではなく、現在の自分に実際に残っているものがある場合だけ、それを資源として拾い上げることが大切です。
小さな強みは組み合わせることで独自性が生まれる
一つの突出した才能を探し続ける必要はない
自分の強みを見つけようとすると、一つだけで人生を変えられるような特別な才能を求めてしまうことがあります。
しかし、誰もが一つの分野で圧倒的な能力を持っているわけではありません。
文章を書くことに比較的抵抗がなく、数字を見ることも苦ではなく、特定の業界で長く働いてきたという人もいるでしょう。
一つずつ見れば、それほど珍しい条件ではありません。
ところが、「業界経験がある」「文章で説明できる」「数字も扱える」という三つを同時に持つ人になると、条件は徐々に絞られます。
医療や福祉の経験と文章力があれば、専門的な内容を分かりやすく伝える場面で両方を使える可能性があります。営業経験にIT知識が加われば、技術的なサービスを顧客へ説明する仕事で組み合わせられるかもしれません。
ただし、強みを掛け合わせれば自動的に価値が生まれるわけではありません。重要なのは、その組み合わせによって誰のどのような問題を解決できるのかという点です。
家計の強みと仕事の強みも組み合わせられる
組み合わせるのは能力同士だけではありません。
収入は平均的でも、住居費が低く、大きな借入がなく、残業が少なく、さらに長年の業務経験を持っている人を考えてみます。
どれか一つだけなら、それほど目立たないでしょう。
しかし、低い固定費から生まれた余力の一部を学習へ振り向け、残業が少ないことで得られる時間を使って新しい技能を身につければ、以前から持っている業務経験へ別の能力を加えられます。
家計の余力が時間を守り、その時間が知識を増やし、過去の経験と新しい知識を組み合わせることで仕事の選択肢が増えるという流れです。
このように考えると、家計、時間、キャリアは別々の問題ではありません。自分が持つ一つの資源を別の資源へ変換することで、互いにつながっています。
他人が再現しにくい自分なりの条件を作る
最初から珍しい強みを持っていなくても、時間をかけて組み合わせを作ることはできます。
ある業界で働きながら、その分野について文章を書き続けてきた人がいるとします。業界経験だけなら同じ人は大勢いるかもしれませんし、文章を書ける人も珍しくないでしょう。
しかし、業界の実務を知り、その知識を一般の人へ説明でき、さらに何年も継続して成果物を蓄積している人となると、条件は変わってきます。
このような独自性は、一つの天才的な能力から生まれたものではありません。いくつかの普通の資源へ時間を重ねた結果として形成されています。
現在の自分に突出した才能がないと感じても、すでにある小さな強みの組み合わせを育てる余地は残されています。
自分のアドバンテージを棚卸しする方法
自分の強みがまったく思いつかない場合、頭の中だけで答えを探し続ける必要はありません。
最初から「これは価値がある」「これは役に立たない」と判断せず、現在持っている事実を一度外へ出すことから始めます。
まず確認したいのは、ほかの人より少ない負担で続けられる行動です。
長時間のデータ整理がそれほど苦にならない、細かなマニュアルを読むことが好き、知らないことを調べる作業を面倒に感じない、事務的な内容なら初対面の相手にも落ち着いて連絡できるなど、具体的な行動まで落として考えてみましょう。
次に、周囲から繰り返し頼まれることを振り返ります。
資料の確認、パソコンの設定、人間関係の相談、旅行の計画など、なぜか何度も任されることがあれば、自分では気づいていない能力を周囲が評価しているという可能性があります。
長く続いている行動についても確認します。
仕事、家計管理、読書、運動、趣味など、数年にわたって続いているものがあるなら、単に期間を見るだけでなく、なぜ続いたのかまで考えるとよいでしょう。興味があるため負担が少なかったのか、習慣化する仕組みを作ることが得意だったのかによって、見えてくる強みは変わります。
家計については、住居費が低い、車が必要ない、大きな借入がないなど、支出を抑えられている理由を整理します。時間についても、睡眠や家事を削る前提ではなく、自分の裁量で無理なく使える時間が一週間にどれくらいあるかを確認してください。
仕事は職種名で終わらせず、誰かへ説明できること、自分だけで判断できる業務、トラブルが発生したときに対応できることなどへ細かく分けます。
マイジョブ・カードでは、過去の経験や成果を書き出す自己分析や、ジョブ・カードを使ったキャリア整理が案内されているため、自分一人では言語化しにくい場合の補助として利用できます。
アドバンテージ棚卸しシート
| 資源 | 確認する内容 | 現在持っているもの | 使える可能性 |
|---|---|---|---|
| お金 | 貯蓄 借入 生活上の余力 | 生活防衛 学習 挑戦の準備 | |
| 家計構造 | 住居費 交通費 車 通信費 固定費 | 毎月の余力を確保する | |
| 知識 | 資格 業界知識 IT 金融 業務知識 | 現職 転職 副業 | |
| 経験 | 営業 事務 育児 転職 家計管理 | 別の仕事や役割へ応用 | |
| 時間 | 平日夜 休日 通勤時間 | 学習 情報収集 小さな実験 | |
| 環境 | 会社 業界 地域 作業場所 | 能力が機能する場所を探す | |
| 人とのつながり | 元同僚 家族 友人 知人 | 相談 情報交換 協力 | |
| 信用 | 納期 継続実績 周囲からの評価 | 紹介 仕事 共同作業 | |
| 制約への対応 | 苦手 資金不足 時間不足への工夫 | 対応過程で得た能力を利用 |
この段階では、書き出した項目を評価しすぎないことが大切です。
職場が近いことも、毎月一定額を残せることも、長く同じ業界で働いた経験も、いったん資源として置いておきます。そのあとで「どこで使えるか」「何と組み合わせられるか」を考えれば、最初には価値が分からなかった条件が別の意味を持つ場合があります。
棚卸しの目的は、自分を無理に高く評価することではありません。現在利用できる材料を見える状態へし、次に何を試せるのか判断できるようにすることです。
見つけた強みを人生と家計の行動へ変える
資源の種類に合わせて最初の行動を変える
棚卸しが終わったあと、すべての資源を同じ方法で活用する必要はありません。
自由時間という資源なら、まず生活を崩さず使える時間がどの程度あるかを確認し、その中から転職情報の収集や学習へ割ける範囲を決めます。
長い業界経験を持っている場合、最初に新しい資格へ申し込むとは限りません。現在の経験を必要としている職種が存在するか、求人やjob tagなどで需要を調べたほうが先になることもあるでしょう。
家計の固定費が低いのであれば、その差額が本当に毎月残っているのかを数字で確かめます。実際に余力が残っていると分かった段階で、生活上の備え、学習、将来の資産形成など、目的に応じた配分を考えるほうが自然です。
信用や人とのつながりが資源なら、大勢へ営業する前に、信頼できる人へ現在考えていることを伝え、業界や仕事について意見を聞く方法もあります。
このように、時間なら使い方を設計し、経験なら需要との接点を調べ、家計なら余力を計測し、人とのつながりなら対話へ変えるというように、資源によって最初の行動は異なります。
何でも「とりあえず挑戦してみる」という一つの形へ押し込めるのではなく、持っているものの性質に合った動かし方を選ぶことが重要です。
大きな決断より先に小さな確認を行う
自分の強みが見つかると、「それを活かすためには転職したほうがよいのではないか」「副業を始めるなら本格的に準備しなければならないのではないか」と考えることがあります。
しかし、最初から大きな決断をする必要はありません。
文章力を仕事へ活かしたい人であれば、小さな成果物を作り、信頼できる相手に読んでもらうことで、説明が伝わるかどうかを確認できます。
別の業界へ移りたい場合も、退職する前に求人を調べ、自分の経験がどのように扱われているかを見ることはできるでしょう。
副業についても、多額の初期費用を使う前に、現在持っている道具や低コストのサービスを使って需要を確かめられる場合があります。
重要なのは、失敗しないことではありません。失敗しても生活全体へ大きな影響が出ない範囲で必要な情報を集め、次の判断を少し正確にすることです。
1か月を目安に強みの使い方を検証する
1か月は強みそのものの価値を判定する期限ではない
一つの資源を小さく使い始めたら、まず一か月ほどを一区切りとして状況を確認します。
ただし、この一か月は「自分に才能があるか」「転職できるか」「副業で稼げるか」を最終判定する期限ではありません。
資格取得には数か月から数年かかることがありますし、転職や副業が実際の収入へつながるまでには、さらに長い時間が必要になる場合もあります。資産形成についても、一か月の値動きだけを見て方法の良し悪しを判断するようなものではないでしょう。
ここで確認するのは、その資源をどう使えばよいのかを考えるための情報が増えたかどうかです。
学習へ時間を使った人なら、予定した時間を生活の中で無理なく確保できたか、教材の難易度は適切だったか、以前より理解できる部分が増えたかを見ます。
家計の余力を残すことにした場合には、実際に金額を確保できたか、その金額を残したことで生活へ過度な負担が生じなかったかを確認するとよいでしょう。
自分の経験を活かせる仕事を調べた人なら、どの職種で需要があり、どの技能が不足していたのかが分かれば、それだけでも次の行動を決める材料になります。
1か月実践シート
| 持っている資源 | 小さく試す内容 | 1か月後に確認すること | 次の調整 |
|---|---|---|---|
| 自由時間 | 無理のない頻度で学習や調査を行う | 継続できる時間帯と理解度 | 時間帯 教材 学習量 |
| 低い固定費 | 一定額を先に残す仕組みを作る | 実際の残額と生活への負担 | 金額 配分 用途 |
| 業界経験 | 関連する求人や仕事を調査する | 求められる経験と不足技能 | 職種 業界 学習内容 |
| 文章力 | 小さな成果物を作成する | 相手の反応と自分の負担感 | テーマ 対象 提供方法 |
| 信用 | 信頼できる人へ具体的に相談する | 得られた情報と新しい視点 | 相手 質問内容 |
| 制約への対応力 | 低コストで小さく試作する | 需要 改善点 続けやすさ | 内容 規模 対象 |
一か月取り組んでも、大きな成果が見えないことは珍しくありません。
そこで「やはり自分には強みがない」と結論づけるのではなく、使った場所、届けた相手、行動の方法に問題がなかったかを確認します。
文章を書く能力があっても、読む人がほとんどいないテーマを選べば反応は小さいでしょう。専門知識を持っていても、その知識を必要としていない会社ばかり見ていれば評価されません。
一か月という期間の目的は、成果を急いで確定することではなく、「この使い方は続けられそうか」「別の場所なら機能しそうか」という判断材料を集めることにあります。
他人との比較を自分の戦略作りへ変える
記事の前半では、他人の成果だけを見て自分を評価すると、スタート地点の違いを見落としやすいことを確認しました。
ここからは、比較によって得られた情報を、自分が戦う場所を考える材料へ変えていきます。
大企業と同じ広告予算を用意できないと分かったなら、資金量で正面から競争する方法を避ける判断ができます。
学歴を強く重視する採用枠では不利だと分かった場合、実務経験や成果をより重く見る会社を調べるという選択肢が生まれるでしょう。
資金の多い人と同じ規模で事業を始められないなら、固定費を増やさず、小さな顧客から需要を確認する方法を選べるかもしれません。
このように比較から知りたいのは、自分がどれほど劣っているかではありません。どこでは自分が不利になりやすく、反対にどの場所なら現在持っている資源を使いやすいのかという情報です。
一方で、大きな借入がないこと、生活コストを低く保てること、長い実務経験があること、毎月一定の行動を続けられることなど、派手ではない条件も忘れてはいけません。
それらは人に自慢するための強みではなくても、生活を安定させたり、次の挑戦を支えたりする土台になる場合があります。比較を自己評価に使うだけでなく、自分の資源が機能する場所を選ぶために使うことで、同じ情報の意味も変わってくるでしょう。
今あるアドバンテージは使えるうちに次の資源へ変える
時間や体力や福利厚生には使いどきがある
現在自分を助けている条件が、10年後も同じように残っているとは限りません。
自由時間は、結婚、子育て、介護、転職などによって変化します。体力や健康状態も年齢とともに変わるでしょう。
勤務先から受けている住宅手当や社宅制度、資格取得支援なども、会社を離れれば利用できなくなる可能性があります。現在働いている業界が成長していたとしても、その市場環境が永久に続く保証はありません。
そのため、今あるアドバンテージへ依存し続けるのではなく、利用できる間に別の資源へ変えておく視点が必要になります。
住宅手当など一時的な条件を生活水準の上昇だけに使わない
会社の住宅手当により、実質的な住居費が低くなっている人を考えてみましょう。
浮いた金額を現在の楽しみへ使うこと自体に問題はありません。
ただ、その余力のすべてを生活水準の上昇へ使い、手当がなくなったあとにも高い支出だけが残れば、家計を急に縮小しなければならなくなる可能性があります。
そこで、一時的に生まれている余裕の一部を貯蓄や学習へ振り向けます。
今の生活を楽しむお金も残しながら、制度がなくなったあとにも持っていられるものを作っておくという考え方です。
時間を知識へ知識を経験へつなげる
時間にも同じことがいえます。
現在の仕事で残業が少ないなら、その余白の一部を使って知識を増やせます。学んだ内容を実務で使う機会が得られれば経験となり、その経験が別の会社でも必要とされれば、勤務先が変わっても持ち運べる資源へ育つでしょう。
そこから収入に余力が生まれた場合には、その一部を生活上の備えや将来の資産形成へつなげることもできます。
ただし、この流れは必ず予定どおりに進むものではありません。学んだ知識が仕事へつながらない場合もあれば、転職によって一時的に収入が下がることもあります。
だからこそ、一度にすべてを変えようとするのではなく、小さく試しながら次の資源へつなげることが重要です。
時間を知識へ、知識を経験へ、経験を仕事や信用へ、そこで生まれた経済的な余力を次の資産へつなげることで、一時的なアドバンテージをより長く残る資源へ変えられる可能性があります。
自分のアドバンテージを知ることが人生設計の出発点になる
人生や仕事について不安を感じると、人は新しいものを足す方向へ意識が向きます。
もっと収入を増やしたい、資格を取りたい、副業を始めたい、資産を作りたいと考えること自体は自然ですし、実際に不足している知識やお金を増やす必要がある場面もあるでしょう。
ただし、新しいものを求める前に、現在すでに持っている資源が十分に使われているかを確認する価値があります。
自由時間があるのに使い道を決めていない、専門知識があるのに別の会社で評価される可能性を調べていない、固定費が低いにもかかわらず毎月の余力が残っていないという状態なら、まだ手元の条件に使える余地があるからです。
今あるものを利用することと、新しいものを手に入れることは対立しません。
時間が比較的取りやすい時期であれば、いきなり資格勉強へ進む前に、何を身につければ将来の選択肢が増えるのかを調べ、その結果に応じて学習内容を決められます。家計に小さな余裕がある場合には、近い将来に必要なお金を確認したうえで、生活上の備えや学習のために一部を残す方法が考えられるでしょう。
長い実務経験を持つ人なら、「何年働いたか」で終わらせず、何を説明でき、どのような問題なら自力で対応できるのかを整理すると、別の職場との接点を探しやすくなります。相談できる人がいる場合も、大きなお願いをするのではなく、自分だけでは分からない業界事情について意見を聞くところから関係を活用できます。
このように、持っている資源によって次の行動は変わります。調べるべきものは調べ、残すべき余力は残し、言語化したほうがよい経験は整理し、人から情報を得たほうがよい部分は相談するというように、自分の現在地に合う方法を選ぶことが大切です。
完璧な条件がそろうまで人生を保留する必要はありません。
手元の資源を一つ動かせば、少なくとも以前にはなかった情報が得られます。思ったように機能しなければ使い方を調整し、役立つと分かったものには時間や経験を重ねていけばよいでしょう。
他人と同じ条件になることを待つのではなく、自分が今持っているものから次の選択肢を作ることが、現実的な人生設計の始まりです。
自分の強みの見つけ方に関するよくある質問
- 自分には特別な才能がありませんが強みは見つかりますか
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特別な才能や目立つ実績だけが強みではありません。
長く続けてきた仕事、普段自然にできている行動、生活コストを低く保てる環境、自由に使える時間、周囲から寄せられている信用なども、自分が使える資源になります。
誰よりも優れたものを探そうとすると何も見つからない人でも、少ない負担で続けられることや繰り返し頼まれていることまで対象を広げれば、候補が見えてくる場合があります。
- 自分の強みがまったく思いつかない場合は何から始めればよいですか
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最初から価値を判断せず、現在持っている事実を書き出すところから始めます。
長く続けていること、人へ説明できる仕事、周囲から頼まれること、毎月の支出を抑えられている理由、自分で使える時間などを整理すると、強みを才能だけに限定せず確認できます。
一人で客観視することが難しい場合には、家族や友人、元同僚へ自分の特徴を尋ねたり、マイジョブ・カードやjob tagなどの公的なツールを補助的に利用したりする方法もあります。
- お金が少なくても経済的なアドバンテージはありますか
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金融資産が少なければ、使えるお金という点では明確な制約があります。
一方で、住居費が低い、借入返済が少ない、車を所有する必要がないなど、毎月のお金を残しやすい構造を持っている場合があります。
ここで「お金がなくても有利」と言い換えるのではなく、資産が少ないという不利とは別に、現在利用できる経済的な資源がないかを確認することが重要です。
- 弱点を強みとして考えてもよいのでしょうか
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弱点そのものを無理に長所へ言い換える必要はありません。
人前で話すことが苦手なら、口頭での即時対応を多く求められる場面では実際に負担があります。
ただ、その苦手さへ対応するために文章で情報を整理する能力や、事前準備を丁寧に行う習慣が育っている場合には、その能力を弱点とは別に評価できます。
見るべきなのは弱点の言い換えではなく、弱点へ対応する過程で何が残ったかという点です。
- 強みは一つに絞ったほうがよいですか
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棚卸しを行う段階で、一つだけに絞る必要はありません。
業界経験、文章力、数字への強さ、低い固定費、自由時間など、性質の異なる資源をいくつか確認したほうが、自分らしい組み合わせを考えやすくなります。
ただし、組み合わせそのものを珍しくすることが目的ではありません。その組み合わせを必要としている人や会社が存在するかまで確認して、初めて現実的な価値が見えてきます。
- 見つけた強みをどう活かせばよいですか
-
強みの種類に応じて、最初の行動を変えることが重要です。
自由時間なら、まず何へ使うと選択肢が増えそうかを調べたうえで、必要な部分へ時間を配分します。業界経験を持つ人なら、求人や仕事内容を確認し、現在の経験を必要としている場所を探すほうが先になることもあるでしょう。
家計の固定費が低い場合には、そこから生まれるはずの余力が実際に残っているかを確認し、生活上の備えや学習などへ振り分けます。人とのつながりを活かすのであれば、大きな依頼をする前に、具体的な相談から始めるという方法があります。
- 1か月試して成果が出なかったら強みではないのでしょうか
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一か月は、強みそのものの価値を最終判定するための期限ではありません。
学習、転職、副業などは成果が表れるまで長い時間が必要になる場合があるため、一か月で金銭的な結果が出ないことだけを理由に否定する必要はないでしょう。
その期間で見るのは、無理なく続けられたか、需要について新しい情報を得られたか、届ける相手が合っていたかなど、使い方を改善するための材料です。
- 今ある強みはずっと使い続けられますか
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すべての強みやアドバンテージが、同じ形で永続するとは限りません。
自由時間、体力、勤務先の福利厚生、家族の支援、業界の需要などは、生活環境や制度の変化によって失われる可能性があります。
そのため、利用できる間に時間を知識へ変えたり、経験を信用へつなげたり、経済的な余力を将来にも残る資源へ移したりする視点が大切になります。
まとめ 自分の強みは見つけるだけでなく使って育てる
自分の強みの見つけ方を考えるとき、最初から大きな資産、高い学歴、珍しい資格、突出した才能を探す必要はありません。
この記事では、自分が現在利用できるお金、固定費の低さ、知識、経験、時間、生活環境、人とのつながり、信用などを広く「資源」として見てきました。
資源は、持っているだけでも資源です。ただし、それが自分の行動を取りやすくしたり、選択肢を増やしたりする状況に置かれたとき、初めてアドバンテージとして機能します。
そのため、同じ資源でも価値は一定ではありません。今の会社では評価されない経験が、別の業界では必要とされることがありますし、低い固定費から生まれる余力も、日々の消費へ流れればそこで終わる一方、生活上の備えや学習へつなげられれば次の資源を育てる土台になります。
弱点や不利な条件についても、無理に肯定的な言葉へ変える必要はありません。苦手なものは苦手なものとして認識し、その状況へ対応するために身についた文章力、慎重な確認、小さく検証する習慣などが残っているなら、そこだけを別の場面へ持っていけばよいのです。
一つの突出した才能がなくても問題ありません。業界経験と文章力、低い固定費と自由時間、専門知識と信用というように、複数の資源を組み合わせ、それらを必要としている場所を探すことで、自分なりの立ち位置が見える可能性があります。
そして、棚卸しだけで終わらせないことが重要です。
現在持っている資源から一つを選び、その性質に合った小さな行動へ変えます。その後は一か月程度を一区切りとして、成果そのものではなく使い方に関する情報を集め、機能しなければ場所や方法を修正し、役立つと分かったものには少しずつ時間を重ねていきます。
そうした試行を続けていけば、今ある時間が知識へ変わり、知識が経験へつながり、経験から仕事や信用が生まれ、そこで得た余力が次の資産を作るという流れも見えてくるでしょう。
他人と同じ条件がそろうまで、自分の人生を保留にする必要はありません。
まず自分の手元に何があるのかを確認し、その資源が機能する場所を探しながら、現在地から動かせるものを一つずつ次へつないでいく。その姿勢こそが、仕事や家計を含めた人生設計を、自分に合った方向へ進めるための現実的な第一歩になるのではないでしょうか。
参考資料
厚生労働省 マイジョブ・カード
自身の強みとは 自己分析の方法や面接での答え方
厚生労働省 職業情報提供サイト job tag
job tag 個人での利用
金融庁 NISA特設ウェブサイト
資産形成の基本
全国銀行協会
今こそ始めたい 資産形成という名の備え
University of Virginia Darden School of Business
Effectuation Overview