マンション管理士

マンションの建替え検討は何から始める? 管理組合が最初に行う7つのステップ

理事会で「そろそろ建替えも考えた方がいいのではないか」という声が出ると、急に大きな決断を迫られたように感じることがあります。費用や仮住まいが頭に浮かび、「この話を住民へ出してよいのだろうか」と迷う役員もいるでしょう。

しかし、最初に建替えへの賛否を取る必要はありません。まず建物と管理状況を確認し、区分所有者の困りごとを把握し、修繕や改修を含めた選択肢を比べられる状態をつくることから始めます。

TABLE OF CONTENTS
目次

マンション建替え初期検討の7つのステップ

マンションの建替え検討で最初に知っておきたいのは、結論ではなく順番です。

「何から始めればよいのか分からない」という段階であれば、まず次の7STEPを全体像として押さえておくと、理事会で次に行うことが見えやすくなります。

STEP 管理組合が行うこと この段階の目的
STEP1 建物と管理状況を整理する 現在地を客観的に知る
STEP2 区分所有者の困りごとを予備的に把握する 比較すべき課題を見つける
STEP3 理事会で初期検討の進め方を整理する 検討目的と次の行動を共有する
STEP4 正式検討へ進む場合は検討組織を整える 管理組合として継続的に検討する
STEP5 区分所有者アンケートと意向調査を行う 全体の改善ニーズを組織的に把握する
STEP6 修繕改修と建替え等を比較する 改善効果と負担を同じ土俵で比べる
STEP7 検討結果を区分所有者へ共有する 判断材料と未確定事項を見える化する

この流れで特に重要なのは、STEP2とSTEP5を同じものとして扱わないことです。

STEP2では、既存の相談記録や修繕要望、理事会へ寄せられた声などから「どのような問題がありそうか」を予備的に探ります。一方、STEP5では、管理組合として正式な検討へ進んだ後に、一定の設計に基づいて区分所有者全体の意向や改善ニーズを調査します。

つまり、STEP2は論点発見であり、STEP5は組織的な意向把握です。

最初の理事会で7つすべてを進める必要はありません。今日できることが長期修繕計画を開くことだけなら、それが最初の一歩になります。

マンションの建替え検討は建替えると決めることではない

日本では、高経年マンションが急速に増えています。

国土交通省によると、築40年以上のマンションは2024年末時点で約148万戸あり、2044年末には約482.9万戸へ増える見込みです。20年間で約3.3倍になると推計されており、築年数の進んだマンションを今後どう維持し再生するかは、多くの管理組合に共通する課題になっています。

とはいえ、築年数が進んだからといって、すぐに建替えという答えが出るわけではありません。

これまでどの程度修繕してきたのか、設備を更新できるのか、耐震性に問題があるのか、今後の修繕積立金で維持できるのかによって、状況はマンションごとに変わります。

さらに、区分所有者にとってマンションは単なる建物ではありません。

「子どもをここで育てたので離れたくない」という人がいる一方、「階段がつらくなり、このまま住み続けられるか心配だ」という人もいるでしょう。投資用として所有している人であれば、実際に暮らしている人とは異なる視点から資産価値や費用負担を考える可能性があります。

理事会役員にも迷いがあります。

老朽化への対応を先送りしたくない気持ちと、建替えの話を出したことで住民関係がぎくしゃくするのではないかという心配が同時に生まれるからです。

こうした状況で必要なのは、早く結論を出すことではありません。

国土交通省の2026年3月改訂「マンション再生等手法の比較検討マニュアル」では、準備段階から検討段階へ進み、さらに計画段階へ移るという段階的なプロセスが示されています。最初から特定の再生方法を決めるのではなく、基礎的な検討を経ながら管理組合として判断材料を整えていく考え方です。

初期検討の中心は「建替えるかどうか」ではなく、「このマンションには何が起きているのか」を理解することだと考えると、理事会で取り組むべきことが見えやすくなります。

いきなり建替え賛否を取らない

まだ建物診断も十分に行っておらず、修繕を続けた場合の費用も、建替えを選んだ場合の負担も分からない状態で、「建替えに賛成ですか」と聞いたらどうなるでしょうか。

ある区分所有者は、ほとんど追加負担をせずに新しい住戸へ戻れる建替えを想像するかもしれません。一方、別の区分所有者は、多額の自己負担と数年間の仮住まいを想像して回答する可能性があります。

同じ質問を受けていても、頭の中で想像している条件が違います。

その状態で「賛成40%」「反対45%」という数字を作っても、何に対する賛否だったのかが明確ではありません。

さらに、「私は反対と回答した」「あの人は建替え推進派らしい」と立場だけが残れば、その後に修繕案や新しい費用試算が出てきても、柔軟に考えにくくなる可能性があります。

だからこそ、初期段階で聞きたいのは「建替えに賛成か」より、「現在のマンションで何に困っているか」です。

この順番を守れば、アンケートは多数派を探す道具ではなく、比較すべき課題を見つけるための材料になります。

この段階ではまだ決めなくてよいこと

建替えという話が出ると、区分所有者から具体的な質問が寄せられることがあります。

「いつ建替えるのですか」「一戸当たりいくら必要なのですか」と聞かれれば、理事会役員として何か答えなければならないように感じるでしょう。

しかし、初期検討の段階では答えられないことがあって当然です。

むしろ、分からない数字を急いで示すと、後から条件が変わったときに「最初に聞いた話と違う」という不信につながります。

この段階ではまだ決めなくてよいこと 理由
建替えを実施するか 修繕改修等との比較が終わっていないため
建替えの実施時期 建物状態や再生方法が確定していないため
区分所有者ごとの最終負担額 事業費や資産評価等の条件が未確定だから
再生後の間取りや専有面積 採用する再生手法と事業計画が未確定だから
デベロッパーや施工会社 後の計画段階で比較選定する事項だから
仮住まい先 再生方法と工程が具体化してから検討できるため
法定決議を行う時期 比較検討と合意形成が十分に進んでいないため
建替えへの最終的な賛否 判断材料をそろえてから確認すべきため

「まだ決めていません」と伝えることは、逃げではありません。

現時点で決まっていることと決まっていないことを区別できている方が、管理組合として誠実な説明になるのではないでしょうか。

STEP1 建物と管理状況を整理する

最初に行いたいのは、建替え事例を探すことでも、事業者へ建替えプランを依頼することでもありません。

まず、自分たちのマンションの現在地を確認します。

長く同じマンションに住んでいると、「築年数もかなり経ったから、そろそろ限界なのではないか」と感じることがあります。

しかし、築年数だけでは判断できません。

同じ築40年でも、計画的に大規模修繕や設備更新を続けてきたマンションと、必要な工事を長期間先送りしてきたマンションでは状態が大きく異なります。

そこで、建築面では建築年、構造、設計図書、耐震診断、建物診断、大規模修繕の履歴、給排水設備やエレベーターなどの更新履歴を確認します。

財務面では、現在の修繕積立金残高だけを見るのではなく、長期修繕計画で今後どのような工事が予定され、どの程度の支出が想定されているのかまで見ていきます。

管理面では、管理規約、過去の総会議事録、区分所有者名簿、連絡不能な所有者の有無、賃貸住戸の状況なども確認しておくと、その後の検討が進めやすくなります。

建物診断を建替えの証明に使わない

建物診断を始めると聞いた区分所有者が、「建替えが必要だという証拠を探しているのではないか」と感じる場合があります。

その不安を減らすためにも、診断の目的を明確にしておく必要があります。

建物診断の目的は、建替えを正当化することではありません。

現在どこに問題があり、修繕で解決できるのか、改修による性能向上が必要なのか、既存建物では改善が難しいのかを判断する材料をつくることです。

例えば給排水設備が老朽化していても、設備更新によって長期間使用を続けられる可能性があります。

一方で、耐震性やバリアフリー、設備配置など複数の問題が重なり、既存建物の制約によって十分な改善が難しいこともあるでしょう。

「古いから建替え」と考えるのではなく、「どの問題をどの方法なら改善できるのか」と考えることがSTEP1の中心です。

STEP1は3つの資料から始める

最初から大量の書類を整理しようとすると、役員の負担が大きくなります。

まずは最新の長期修繕計画、直近の大規模修繕工事報告書、現在の修繕積立金残高を理事会で確認してみます。

それだけでも、次の大きな工事はいつなのか、設備更新が迫っているのか、現在の積立状況で対応できそうなのかという論点が見え始めます。

長期修繕計画が古いことが分かったなら、次は更新の必要性を検討できます。

「何となく不安」という状態から、「給排水設備の更新時期が近い」という具体的な問題へ変わったなら、小さくても確かな前進です。

STEP2 区分所有者の困りごとを予備的に把握する

STEP2では、まだ全区分所有者を対象とした正式な意向調査を行う必要はありません。

ここで行いたいのは、現在のマンションにどのような生活上の課題があるのかを予備的に探り、後の比較検討で何を調べるべきかを見つけることです。

理事会には、それまでにもさまざまな声が寄せられているでしょう。

例えば、冬場の結露について繰り返し相談が寄せられていたり、上階からの生活音に悩む世帯がいたりするかもしれません。高齢になって階段や段差の負担を感じるようになった人や、宅配ボックスがなく日常的に不便を感じている人がいる可能性もあります。

こうした声を、単発の苦情として処理するだけではなく、「将来改善したい住宅性能や設備」という視点から一度整理してみます。

過去の居住者アンケート、理事会への要望書、修繕相談、管理会社へ寄せられた意見など、すでにある情報から始めても構いません。

ここでは、マンション全体の意向を統計的に確定する必要はありません。

「どのような困りごとがありそうか」を見つけることが目的です。

不満だけではなく残したい価値も見る

古くなったマンションについて話していると、問題点ばかりに目が向きます。

しかし、区分所有者の気持ちはもっと複雑です。

「設備は古いけれど駅に近くて便利だ」「この地域の人間関係を失いたくない」「日当たりの良さは新しいマンションに替えたくないほど気に入っている」という人もいるでしょう。

このような現在のマンションで残したい価値も確認しておく必要があります。

再生方法の比較とは、悪い部分をなくすことだけではありません。

現在持っている良さを、どこまで維持できるのかを見ることでもあります。

反対意見の背景まで考える

例えば、「これ以上お金をかけるのは反対です」という声があったとします。

文字だけを見れば、修繕にも建替えにも反対しているように感じるでしょう。

しかし、実際には「年金生活なので数百万円の一時金は難しいが、毎月の積立金を少しずつ上げるなら考えたい」という事情があるかもしれません。

「建替えは嫌です」という人も、建替えそのものより、「仮住まいを自分で探せるのか」「この地域から離れることになるのか」という不安を感じている可能性があります。

意見を賛成か反対かで分類するだけでは、この背景は見えません。

なぜそう感じるのかを知ることで、後に比較すべき項目が具体化します。

STEP2で確認したい変化

STEP2を終えた後、理事会で「古いから何とかしなければ」という話だけをしている状態から、「配管更新への不安が大きい」「高齢者にとって段差が問題になっている」といった具体的な話へ変わっていれば十分です。

ここで正式な多数意見まで決める必要はありません。

STEP2は、答えを出す段階ではなく、問いを見つける段階です。

STEP3 理事会で初期検討の進め方を整理する

建物の状態と、区分所有者が感じていそうな問題が見え始めたら、理事会として検討の目的を整理します。

このとき、言葉の選び方には注意が必要です。

例えば、「建替え推進について検討します」と説明すると、まだ何も判断していない区分所有者には「もう建替えを前提に動いている」と聞こえるかもしれません。

一方、「現在の建物と暮らしの課題を整理し、修繕改修や建替え等の選択肢を比較します」と説明すれば、初期検討の目的が伝わりやすくなります。

目的は建替えを成立させることではありません。

管理組合として判断するための材料を整えることです。

建替えの話が出たときの初期検討チェックリスト

チェック項目 確認内容 状況
検討目的 建替え推進ではなく選択肢比較になっているか
建物概要 築年数や構造や戸数を把握したか
診断資料 耐震診断や建物診断の有無を確認したか
修繕履歴 過去の大規模修繕や設備更新を整理したか
長期修繕計画 今後の工事と費用を確認したか
修繕積立金 残高と将来不足の可能性を確認したか
管理規約 現行規約と必要な手続きを確認したか
所有者情報 連絡先や所在等不明所有者の状況を確認したか
賃貸住戸 おおよその状況を確認したか
生活上の課題 予備的な困りごとを整理したか
情報発信 検討状況を伝える方法を考えたか
専門家 どの分野で助言が必要か整理したか
検討費用 規約と予算上の扱いを確認したか
次の段階 正式な再生検討が必要か整理したか

すべてを一度に埋める必要はありません。

例えば次回までに長期修繕計画を確認し、その次に過去の設備更新履歴を見るという進め方でも十分です。

理事会の会話が「建替えるかどうか」から「次に何を確認すれば判断しやすくなるか」へ変わってきたなら、初期検討の方向は整っています。

準備段階から正式検討へ進む境目

国土交通省の現行マニュアルでは、準備段階と管理組合としての正式な検討段階が分けられています。

準備段階では、有志や理事会による勉強会などを通じ、マンションの現状や再生制度について基礎的な情報を整理します。

その結果、「管理組合として再生等の必要性や構想、手法比較を正式に検討する必要がある」と判断した場合には、理事会から総会へ検討組織の設置と検討資金の拠出を議案として提起する流れが示されています。

この境目を曖昧にしないことが大切です。

準備段階 管理組合としての正式な検討段階
この境目を曖昧にしないことが大切です。

単なる情報収集なのか、管理組合として将来の再生方法を正式に比較する段階なのかを区別すると、「知らないうちに建替え検討が始まっていた」という不安を抑えやすくなります。

STEP4 正式検討へ進む場合は検討組織を整える

管理組合として再生等を正式に検討する段階へ進むと、理事会だけでは扱う仕事が多くなる場合があります。

建築、設備、法律、資金、区分所有者の意向など論点が増えるうえ、理事は数年で交代することが少なくありません。

前年まで積み上げてきた検討が、役員交代によって「また最初から」になれば、関係者にも疲れが生まれるでしょう。

そこで、正式検討を継続する体制として、再生等検討委員会や建替え・修繕検討委員会などの検討組織を設ける方法があります。

ただし、「法律上必ず建替え検討委員会という名称の組織を作らなければならない」という意味ではありません。

重要なのは、管理組合として何を正式に検討するのか、その仕事を誰が担い、理事会や総会とどのような関係で進めるのかを明確にすることです。

一般的な専門委員会と正式な再生検討組織を分ける

ここでは、二つの組織を混同しないことが重要です。

国土交通省のマンション標準管理規約第55条では、理事会は自らの責任と権限の範囲内で専門委員会を設置し、特定の課題を調査または検討させることができます。専門委員会は、その結果を理事会へ具申する組織です。

例えば、理事会の権限内で限定的な資料調査を行う専門委員会であれば、この一般的な仕組みが使える場合があります。

一方、管理組合として再生等の必要性や構想を検討し、修繕改修と建替えなど複数の再生手法を正式に比較する組織は位置付けが異なります。

2026年3月改訂の国土交通省マニュアルでは、この正式な検討組織について、理事会から総会へ組織の設置と検討資金の拠出を提案し、議決後に管理組合として正式な検討へ進む基本プロセスが示されています。検討組織は理事会の諮問機関として設けることが一般的で、通常は総会の普通決議によると説明されています。

「専門委員会なら全部理事会だけで作れる」と理解しないことが大切です。

総会を経て正式検討へ進む意味

この手続きには、単なる形式以上の意味があります。

区分所有者から見れば、「理事会でいつの間にか建替えの話が進んでいた」という状態と、「総会でこれから管理組合として再生方法を比較すると決めた」という状態では、受け止め方が違います。

再生検討には時間も費用も必要です。

だからこそ、「何を検討するのか」「どの程度の費用を使うのか」「誰が調査を担うのか」を区分所有者へ示し、管理組合として正式に検討を始めることに意味があります。

急ぐ側からすれば、総会手続きを面倒に感じる場合もあるでしょう。

それでも、後から「聞いていない」「いつ決まったのか」と不信を招くより、入口で手続きを共有しておく方が、その後の検討を続けやすくなります。

検討組織は理事会の諮問機関として考える

検討組織は、管理組合の意思決定を代行する組織ではありません。

再生等による改善の必要性、再生構想、修繕改修と建替えなどの比較について調査し、その結果を理事会へ報告する役割を担います。

委員会で「建替えがよい」という意見になったとしても、それだけで建替えが決まるわけではありません。

法令や管理規約上、総会等での決議が必要な事項については、所定の手続きによって区分所有者が判断します。

この役割分担が曖昧になると、「一部の委員だけで話が進んでいる」という不信につながりやすくなります。

検討組織を整えるケース

正式な検討を長期間続ける必要があり、通常の理事会だけでは調査時間を確保しにくい場合には、専任の検討組織を設ける意味があります。

建築、不動産、法律、財務などに知識を持つ区分所有者が継続的に参加できる場合、その知識を生かしやすくなる可能性もあります。

また、理事が短期間で交代する管理組合では、検討経緯を引き継ぐ仕組みを作ることにも意味があるでしょう。

ただし、「50戸以上なら作る」「30戸未満なら不要」というような一律の基準があるわけではありません。

マンションの規模だけではなく、検討内容、作業量、検討期間、現在の理事会体制などを踏まえて考えます。

まだ正式な検討組織を作らない段階

長期修繕計画を確認し始めた程度で、そもそも管理組合として正式な再生検討へ進む必要があるのか整理できていないなら、本格的な検討組織を急いで作る必要はありません。

まずは理事会や有志による勉強会で、基礎的な情報を集める方法があります。

組織を作ること自体が目的になると、委員を集めたものの「結局何を調べる委員会なのか分からない」という状態になりかねません。

準備段階で必要性を見極め、正式検討へ進むときに必要な体制を整えるという順番が分かりやすいでしょう。

検討組織を建替え推進組織にしない

正式な検討組織を設けた後も、注意すべきことがあります。

建替えへの関心が高い人だけが集まると、本人たちにそのつもりがなくても、議論が建替え中心へ傾く可能性があります。

外から見ている区分所有者が「あの委員会は建替えを進めるための組織だ」と感じれば、調査結果そのものへの信頼まで低下するでしょう。

慎重な意見が会議に入ると、話が遅くなったように感じるかもしれません。

それでも、後になって大きな反対が突然表面化するより、最初から異なる不安や価値観を確認できる方が、必要な調査項目を早く見つけられると考えられます。

検討組織が集めるべきなのは賛成票ではありません。

区分所有者が後から判断するための材料です。

STEP5 区分所有者アンケートと意向調査を正式に行う

STEP2では、既存資料や日常的な相談から困りごとを予備的に把握しました。

STEP5では、その段階から一歩進み、管理組合として正式な検討を進めるために、区分所有者全体を対象とした組織的なアンケートや意向調査を行います。

この違いを理解しておけば、「STEP2で聞いたのに、なぜもう一度調べるのか」という疑問も解消しやすくなります。

STEP2は論点を見つける作業であり、STEP5はマンション全体でその論点がどの程度共有されているのかを確認する作業です。

正式なアンケートでも最初から賛否を聞かない

正式なアンケートだからといって、直ちに「建替えに賛成ですか」という質問を置く必要はありません。

まだ修繕改修、建替え、その他の選択肢について改善効果や概算費用が十分に整理されていないなら、最終的な判断材料が足りないからです。

アンケートの冒頭で、「今回の調査は建替えへの賛否を決めるものではなく、現在の不満や改善したい事項を把握し、今後の比較検討に用いる基礎資料です」と説明しておくと、区分所有者の心理的な負担を下げやすくなります。

アンケート実施前に整理すべき項目

整理項目 主な内容
調査目的 再生方法を比較するための基礎資料と明記する
調査対象 原則として区分所有者全体
居住者意見 必要に応じて賃借人等の生活上の課題も別途把握する
現状への評価 満足している点や残したいものを聞く
建物への不満 劣化や耐震性への不安などを確認する
設備への不満 給排水や電気設備やエレベーターなどを確認する
生活上の課題 寒さや段差や遮音性などを把握する
将来の居住意向 今後も住み続けたいかなどを確認する
改善ニーズ 優先して改善したい事項を確認する
費用への考え 積立金増額や一時金への不安を把握する
自由記述 定型回答では拾えない事情を把握する
個人情報 回答と住戸番号の扱いを明確にする
結果共有 集計結果の公表方法をあらかじめ決める

金額を早く提示しすぎない

まだ事業条件を確認していない段階で、「500万円なら払えますか」といった具体的な金額を提示すると、その数字だけが一人歩きする場合があります。

後から1,000万円へ変われば、「最初は500万円だった」と受け止められるでしょう。

初期のアンケートでは、具体額で判断を迫るより、「まとまった一時金が必要になった場合にどのような不安があるか」「修繕積立金の段階的な増額についてどう考えるか」といった聞き方で制約を把握する方法があります。

具体的な再生案と概算負担が整理された段階では、それを示したうえで改めて意向を確認すればよいでしょう。

アンケート結果の理由まで読む

仮に、エレベーター設置を希望する区分所有者が40%だったとします。

数字だけを見れば、過半数ではありません。

しかし、その多くが高齢者であり、「階段がつらいため外出する回数を減らしている」と回答していたなら、利便性だけではなく生活継続に関わる問題として見る必要があります。

同様に、「負担増に反対」という回答でも、支出自体を拒否しているのか、金額や支払方法が分からないことへの不安なのかでは意味が違います。

数字の後ろにある理由を見ることが、意向調査では重要です。

STEP6 建替えと修繕改修を比較する

建物の状態と区分所有者の改善ニーズが整理できたら、具体的な再生方法を比較します。

ここで比較するのは、「どちらが安いか」だけではありません。

どの選択肢なら必要な改善をどこまで実現でき、そのためにどのような費用や生活上の負担が生じるのかを同じ土俵で確認します。

国土交通省の現行マニュアルでも、改修とそれ以外の再生手法について、改善効果と所要費用を踏まえて比較する考え方が示されています。マンションの状況や区分所有者のニーズに応じ、建替え、建物更新、売却などを相互に比較することも考えられています。

建替え修繕比較表のサンプル

比較項目 修繕改修 建替え 建物更新 売却系手法
建物の扱い 既存建物を維持して修繕改修 既存建物を除却して再建 既存躯体を残して法定の更新 売却等により区分所有関係の解消を図る
耐震性能 耐震改修可能性を検討 新築計画として検討 構造条件に応じて改善 移転後の住まいによる
断熱省エネ 改修範囲に応じて改善 新築計画へ反映しやすい 更新計画の中で検討 移転先による
バリアフリー 既存構造に制約がある場合あり 計画へ反映しやすい 更新内容に応じて検討 移転先による
給排水設備 更新や更生等を検討 新設できる 更新計画に応じて再構成 対象外
専有部分 大幅変更には制約あり 再計画できる 全専有部分の変更を伴う 売却後は対象外
工事中の生活 居住継続できる場合あり 原則として仮住まいが必要 工事内容により一時退去等を検討 転居を前提に検討
費用負担 工事内容と積立状況による 事業条件により大きく変動 更新範囲等により変動 売却価格や取壊し費用等による
主な制約 改善できない課題が残る場合あり 費用や期間や仮住まいの負担 法定要件と技術的実現性の確認が必要 現在の所有関係を終了する判断が必要

比較表は建替えを勝たせる表ではない

新築へ建替えれば、耐震性能や断熱性能、設備など多くの項目を改善しやすくなります。

だからといって、建替え欄だけに丸を付ける比較表では意味がありません。

建替えには、区分所有者の費用負担、仮住まい、引っ越し、長い事業期間などの負担があります。

また、「昔は建替えによって負担なしで新築へ戻れた」という事例を聞き、同じことが自分たちのマンションでも可能だと期待する人がいるかもしれません。

しかし、余剰容積、建築規制、敷地形状、建築費、市場価格などの条件はマンションによって異なります。

成功事例は可能性を知る材料にはなりますが、自分たちでも同じ条件が成立する証拠にはなりません。

修繕改修も万能ではない

逆に、「建替えは大変だから修繕でよい」と先に決めることも避けます。

修繕や改修によって多くの問題を改善できる可能性がありますが、既存構造の制約によって残る課題もあるでしょう。

例えば設備更新は可能でも、エレベーター設置や住戸の大幅な再構成が難しい場合があります。

比較表には、「改善できること」と「残ること」の両方を書きます。

どちらの方法を有利に見せるのでもなく、得られる改善と必要な負担を見えるようにすることが比較の目的です。

法定の建物更新は一般的な大規模改修と分ける

2026年4月施行の改正区分所有法で制度化された「建物更新」は、通常の大規模修繕や一般的なリノベーション全体を指す言葉ではありません。

区分所有法上の建物更新は、建物の構造上主要な部分の効用を維持または回復するために共用部分の形状を変更し、それに伴って全ての専有部分の形状、面積または位置関係を変更するものです。

国土交通省は、既存構造躯体を維持しながら一棟全体をスケルトン状態とし、共用部分と全専有部分を更新する工事を代表的なイメージとして示しています。

そのため、「大規模修繕をさらに大きくしたもの」と単純に考えることはできません。

自分たちのマンションで法定の建物更新が現実的な候補になるのかは、必要な段階で建築や法律の専門家を交えて確認します。

一つの問題から小さく比較する

最初から完全な比較表を作ろうとすると、調査項目が多すぎて手が止まります。

例えば給排水設備が大きな問題なら、まず修繕改修でどこまで対応できるのかを調べ、建替えやその他の再生方法なら何が変わるのかを比較してみます。

費用、工事中の暮らし、改善後の耐用性まで整理すると、次に専門家へ聞くべきことが見えてくるでしょう。

一つの課題を比較できたら、次に耐震性やバリアフリーへ対象を広げます。

小さな比較を積み重ねることで、管理組合に合った選択肢が徐々に見えてきます。

STEP7 検討結果を区分所有者へ共有する

調べたことは、理事会や検討委員会の中だけに置かないことが重要です。

情報が見えない状態が長く続くと、「理事会はもう建替えを決めているらしい」「何千万円も必要になるらしい」という話が、正式な説明より先に広がる可能性があります。

人は情報がないと、その空白を想像で埋めてしまいます。

だからこそ、最終結論が出る前から経過を共有します。

決まったことと未決定事項を分ける

報告するときは、「調べたこと」「分かったこと」「まだ分からないこと」「次に調べること」を分けます。

例えば、「長期修繕計画では今後給排水設備の更新が予定されています。現在の積立金でどこまで対応できるかは精査中です。建替えを行うかどうかは決まっておらず、今後は修繕改修とその他の方法について改善効果と負担を比較します」と説明できます。

この説明には、結論はありません。

それでも、管理組合が今どこにいるのかは伝わります。

区分所有者が安心するのは、必ずしも良い結果が示されたときだけではありません。

自分の知らないところで重要なことが決まっていないと分かることも、安心につながります。

説明会を説得の場にしない

初期段階の説明会で、「理事会としてはこの案が一番良いと思っています」と強く打ち出すと、区分所有者は意見を聞く会ではなく、賛成させるための会だと感じる可能性があります。

この時期には、むしろ質問を集める価値があります。

費用が心配なのか、仮住まいが心配なのか、修繕でどこまで改善できるのか知りたいのかによって、次に調べるべき内容は変わります。

説明会を行った結果、疑問が増えることもあるでしょう。

それは必ずしも失敗ではありません。

それまで見えなかった問題が表に出たのであれば、比較検討に必要な材料が一つ増えたと考えられます。

2026年4月改正後のマンション再生制度を整理する

ここまで7STEPを理解したうえで、2026年4月以降の制度について押さえておきます。

実務記事として重要なのは、制度を最初から暗記することではありません。

現在は「修繕か建替えか」だけではなく、条件によって建物更新や売却系手法も比較できること、そして手法によって法定の決議要件が異なることを理解しておけば、その後の専門家への相談もしやすくなります。

本記事で使う再生制度の用語

本記事では、区分所有法上の決議名を基本として「建物更新」「建物敷地売却」「建物取壊し敷地売却」と表記します。

国土交通省の資料では、区分所有法上の決議名とは別に、マンション再生円滑化法上の事業手続との関係から別の名称が使われる場合があります。

同じような言葉が複数登場すると「制度が別なのか」と戸惑いやすいため、この記事では決議制度を説明するときの用語をできる限り統一します。

再生手法ごとに決議要件は異なる

2026年4月以降、建替え決議と建物更新決議については、原則として区分所有者と議決権の各5分の4以上が必要です。

一定の客観的事由がある場合には、区分所有者と議決権の各4分の3以上へ緩和されます。

一方、建物敷地売却決議と建物取壊し敷地売却決議では、区分所有者と議決権に加えて、敷地利用権の持分の価格についても法定多数を満たす必要があります。

これらの売却系手法では、原則として三つの母数について各5分の4以上が必要であり、一定の客観的事由がある場合はそれぞれ各4分の3以上へ緩和されます。

再生手法 原則 一定の客観的事由がある場合
建替え 区分所有者と議決権の各5分の4以上 各4分の3以上
建物更新 区分所有者と議決権の各5分の4以上 各4分の3以上
建物敷地売却 区分所有者と議決権と敷地利用権持分価格の各5分の4以上 三つの母数について各4分の3以上
建物取壊し敷地売却 区分所有者と議決権と敷地利用権持分価格の各5分の4以上 三つの母数について各4分の3以上

この表は、初期検討から「あと何票必要か」を計算するためのものではありません。

手法によって決議条件まで違うため、最初から一つの再生方法へ誘導せず、必要性や実現性を比較した方がよいことを理解するためのものです。

客観的事由は自己判断しない

多数要件が緩和される客観的事由について、国土交通省資料では耐震性の不足、火災に対する安全性の不足、外壁等の剥落によって周辺へ危害を生ずるおそれ、給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ、一定のバリアフリー基準への不適合などが整理されています。

例えば、「配管が古いから4分の3でよい」という判断にはなりません。

法律上の要件に該当するかを、必要な診断や専門家の確認を通じて判断する必要があります。

このため初期検討では、「該当するかもしれない問題がある」と把握するところまでにとどめ、その時点で決議条件を断定しないことが安全です。

マンション建替え初期検討で起こりやすい失敗

初期検討では、法律や建築について正しい知識を持っていても、進め方によって不信感が生まれることがあります。

理事会側は良かれと思って急いでいるのに、区分所有者からは「結論ありきで進めている」と見えてしまうことがあるからです。

早すぎる賛否アンケートで立場を固定する

費用や改善内容が分からない段階で賛否を聞くと、具体的な計画ではなく、不安に対して回答する人が出ます。

「よく分からないので反対しておこう」という反応も自然でしょう。

問題は、その回答が後から「反対派」というラベルになって残ることです。

初期アンケートでは、賛成者の人数を数えるより、何に不安を感じているのかを把握します。

無負担建替えへの期待を膨らませる

過去の成功事例を見て、「建替えれば追加負担なしで新築へ戻れるのではないか」と期待する人もいます。

しかし、余剰容積、建築規制、建築費、不動産市場などの条件はマンションごとに違います。

可能性を調べることは必要ですが、まだ分からない段階から「無負担でできそうだ」と伝えると、後で条件が変わったときの失望が大きくなります。

可能性と確定事項を分けて説明することが重要です。

準備段階と正式検討を混同する

理事会内の勉強会を始めただけなのに、「建替え検討を開始しました」と説明すれば、区分所有者には正式な方針が決まったように聞こえる可能性があります。

反対に、再生の必要性や複数手法の比較まで本格的に行っているのに、「ただの勉強会だから」と理事会内部だけで進め続ければ、透明性に疑問を持たれるでしょう。

準備段階と正式検討の境目を意識することが大切です。

検討委員会が理事会を飛び越える

委員が熱心であるほど、「早く進めたい」という気持ちが強くなることがあります。

しかし、検討委員会が独自に事業者との契約を進めたり、理事会や総会で確認していない特定案を住民へ推奨したりすると、権限の問題が生じます。

その結果、「一部の人だけで勝手に進めている」と見られれば、それまで調査した内容まで信用されなくなる可能性があります。

検討組織の役割は、調べて比較し、理事会へ報告することだと明確にしておく必要があります。

建替え検討を理由に必要な修繕を止める

「建替えるかもしれないのだから、もう今の建物に修繕費を使わなくてもよいのではないか」と考える人が出る場合があります。

しかし、検討の結果として建替えを選ばない可能性がありますし、建替えを選ぶ場合でも実際に事業を実施するまで時間がかかるでしょう。

国土交通省の現行マニュアルでも、検討期間中に現状維持となる可能性や合意形成が長期化する可能性を踏まえ、計画的な修繕を行う必要性が示されています。

将来どうするかを考えている間も、現在の建物では人が生活しています。

今日必要な安全確保と、将来の再生検討は分けて考えなければなりません。

精度の低い費用を早く示す

「結局いくらかかるのですか」と聞かれたとき、役員として数字を示したくなるのは自然です。

しかし、条件を十分に整理していない段階で一戸当たりの費用を断定すると、その数字だけが長く残ります。

概算を示す場合は、何を前提に計算したのか、どの程度の精度なのか、今後変動する可能性があるのかを同時に説明します。

数字を示すことと、将来の負担額を約束することは同じではありません。

建替え初期検討でマンション管理士に相談できること

「まだ建替えをすると決めていないのに、専門家へ相談するのは早いのではないか」と感じる理事会もあるでしょう。

しかし、むしろ何も決まっていない時期だからこそ相談できることがあります。

マンション再生は建物だけの問題ではありません。

管理規約、理事会と総会の役割、検討組織、費用支出、アンケート、区分所有者への説明などが複雑に関係します。

初期段階で相談できる内容

マンション管理士には、現在の管理規約を確認しながら、準備段階で理事会が何を行えるのか、正式な検討段階へ移る場合にどのような手続きが考えられるのかを整理してもらう方法があります。

また、アンケート案について「建替えへ誘導する質問になっていないか」を確認したり、検討組織の目的や権限を整理したりする支援も考えられます。

建物診断が必要なら建築士、事業性を検討するなら再生分野のコンサルタントというように、次に相談すべき専門分野を整理する役割も期待できるでしょう。

マンション管理士だけですべて解決できるわけではない

マンション管理士に依頼すれば、建替えに関するすべてを処理できるわけではありません。

耐震診断や構造検討には建築の専門知識が必要であり、設備改修では設備設計や施工の知識が求められます。

建替えや建物更新の事業性を具体化する段階になれば、不動産、建築、都市計画など別の専門性も必要になります。

重要なのは、一人の専門家へ全部任せることではありません。

現在の課題を整理し、その問題に合う専門家を適切につないでいくことです。

マンション建替え初期検討のよくある質問

建替えの検討を始めるには総会決議が必要ですか?

基礎的な情報収集や理事会での勉強まで、すべて総会決議が必要というわけではありません。

国土交通省の現行マニュアルでは、準備段階として有志や理事会による勉強会などを行う流れが示されています。

一方、管理組合として再生等の必要性や構想、各再生手法の比較を正式に行う段階へ進む場合には、検討組織の設置と検討資金の拠出を総会へ提起し、議決後に正式な検討を始める基本プロセスが示されています。

建替え検討委員会は必ず必要ですか?

法律上、必ず「建替え検討委員会」という名称の組織を設置しなければならないという意味ではありません。

準備段階であれば、理事会や有志による勉強会でも進められます。

一方、管理組合として再生の必要性や手法比較を正式かつ継続的に検討する場合には、国土交通省の現行マニュアルでは検討組織を設ける基本的な流れが示されています。

重要なのは名称ではなく、誰が何を検討し、どこへ報告するのかを明確にすることです。

専門委員会なら理事会だけで設置できますか?

一般的な専門委員会については、標準管理規約第55条により、理事会の責任と権限の範囲内で設置できる場合があります。

ただし、正式な再生検討組織とは区別して考える必要があります。

再生等の必要性や構想、手法比較を管理組合として正式に検討する組織については、現行マニュアルが総会で組織設置と検討資金を議決して進む基本プロセスを示しています。

STEP2とSTEP5では何が違いますか?

STEP2は予備的な課題把握です。

これまで理事会や管理会社へ寄せられた相談、既存アンケート、修繕要望などから、マンションにどのような問題がありそうかを探ります。

STEP5は、正式な検討段階における組織的な意向調査です。

全区分所有者を対象として、一定の調査設計に基づき、改善ニーズや将来の居住意向などを確認します。

STEP2で論点を見つけ、STEP5で全体の状況を確認すると考えると分かりやすいでしょう。

アンケートでは建替えへの賛否を聞くべきですか?

初期段階で、いきなり賛成か反対かを中心に聞く必要はありません。

費用や修繕案との比較が分からない状態では、区分所有者ごとに異なる条件を想像して回答する可能性があるためです。

まず現在の不満、残したい価値、改善したい事項、将来の居住意向などを確認します。

各再生案と概算条件が整理された後なら、その条件を示したうえで意向を確認できます。

建替えと大規模修繕はどう比較すればよいですか?

工事費だけでなく、改善できる性能、残る問題、工事期間、仮住まい、区分所有者の負担、将来の維持管理などを同じ表で比較します。

大切なのは、「どちらが安いか」だけではなく、「自分たちが改善したい問題をどこまで解決できるか」を見ることです。

建物更新は大規模修繕と同じですか?

同じではありません。

区分所有法上の建物更新には法定の定義があり、一般的な大規模修繕やリノベーション全体を意味するものではありません。

国土交通省は、既存構造躯体を残しながら一棟全体をスケルトン状態とし、共用部分と全専有部分を更新する工事を代表的なイメージとして示しています。

マンション管理士にはどの段階から相談できますか?

理事会で「将来について考え始めた方がよいのではないか」という話が出た段階から相談できます。

初期であれば、必要な資料、理事会でできること、正式検討へ進む際の手続き、アンケート設計などを整理する支援が考えられます。

結論が決まった後だけが専門家へ相談する時期ではありません。

迷走しないための入口づくりも、専門家を活用できる場面です。

マンション建替え初期検討で大切なのは判断材料を整えること

マンションの建替え検討で最初に行うべきことは、賛成者と反対者の人数を調べることではありません。

まずSTEP1で建物と管理状況を確認し、STEP2で生活上の困りごとを予備的に把握します。

STEP3で理事会として検討目的を整理し、管理組合として正式に比較検討する必要があるなら、STEP4で適切な手続きを経て検討組織を整えます。

その後、STEP5で区分所有者全体の改善ニーズや意向を組織的に把握し、STEP6で修繕改修や建替え等を比較します。

STEP7では、結論だけではなく、分かったこととまだ分からないことを共有します。

この順番なら、建替えを進めるための検討ではなく、マンションの将来を選ぶための検討になります。

STEP1 建物と管理状況を整理する STEP2 区分所有者の困りごとを予備的に把握する STEP3 理事会で初期検討の進め方を整理する STEP4 正式検討へ進む場合は検討組織を整える STEP5 区分所有者アンケートと意向調査を行う STEP6 修繕改修と建替え等を比較する STEP7 検討結果を区分所有者へ共有する
この順番なら、建替えを進めるための検討ではなく、マンションの将来を選ぶための検討になります。

最初は、長期修繕計画を開くところからでも構いません。

そこから「思っていたより改修できそうだ」と分かるかもしれませんし、逆に「修繕を繰り返しても残る問題が多い」と気付く可能性もあります。

途中で考えが変わることは、検討が失敗したという意味ではありません。

新しい情報を知った結果として判断を更新できたのであれば、それこそ初期検討を行った意味ではないでしょうか。

まとめ

マンションの建替え初期検討は、建替えを決定するための投票から始めるものではありません。

建物と管理状況を把握し、区分所有者の困りごとを見つけ、正式な検討体制を整えたうえで意向を把握し、修繕改修や建替え等を比較していきます。

特に重要なのは、STEP2の予備的な課題把握と、STEP5の正式な意向調査を分けて考えることです。

また、2026年4月以降は建物更新や売却系手法など制度上の選択肢が広がりましたが、最初から法定決議の票数を考える必要はありません。

「このマンションの何を残したいのか」「何を改善しなければならないのか」を区分所有者が共通の材料を見ながら考えられる状態をつくることが、建替え初期検討の本当のスタートです。

参考資料

国土交通省 マンション再生等手法の比較検討マニュアル

国土交通省 理事会から管理組合集会への議案の提起

国土交通省 築40年以上のマンションストック数の推移

国土交通省 総会決議における多数決要件の見直し

国土交通省 マンションの再生等について

国土交通省 マンション標準管理規約

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