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独立前の生活防衛資金はいくら必要? 会社員から独立するときの家計の考え方

会社を辞めて、自分の仕事で生きていきたい。独立が現実味を帯びてくるほど、仕事の準備だけではなく、銀行口座の残高まで気になるようになります。

ある程度の貯金はあるし、仕事の見込みもまったくないわけではない。それでも住宅ローンの返済日や子どもの進学を思い浮かべると、「本当に今、会社を辞めても大丈夫なのだろうか」と迷う人もいるでしょう。

この不安は、単純に貯金が少ないから生まれているとは限りません。会社員であれば、基本的には翌月も給与が入ることを前提に生活できます。しかし独立後は、仕事をしてから実際に入金されるまで時間が空くことがあり、売上が出ても、その全額を家計へ回せるわけではありません。

だから独立前に本当に知りたいのは、「500万円あれば十分か」「生活費を12か月分持っていれば安心か」という一つの数字ではないはずです。知りたいのは、仕事が予定通り進まなくても家族の生活を何か月維持でき、その間に事業を立て直したり、別の収入を増やしたり、働き方を変更したりする余裕が残っているかではないでしょうか。

この記事では、生活防衛資金を一律の月数で決めません。自分の家庭で毎月いくら不足するのかを計算し、教育資金や老後資金など別の目的を持つお金と分けたうえで、6か月、12か月、18か月と期間を変えながら家計の耐久時間を確認していきます。

なお、ここで示す計算式は公的機関が定めた生活防衛資金の基準ではありません。独立を検討する家庭が、自分たちの家計条件を整理し、独立後にどこまで選択肢を維持できるかを比較するための試算方法です。

この記事は主に、会社員から個人事業主として独立するケースを想定しています。

TABLE OF CONTENTS
目次

独立前の生活防衛資金はいくら必要か

最初に、この記事で使う計算方法を整理しておきます。

独立前の生活防衛資金は、「生活費の6か月分」「12か月分」と月数だけを先に決めるのではなく、まず独立後に家計から最低限いくら出ていくのかを確認し、そこから独立後も安定して家計へ入ると見込める収入を差し引いて考えます。

この記事では、次のように整理します。

独立後の最低家計支出 = 基本生活費 + 住宅費 + 継続する教育費 + 独立後に家計から支払う税金と社会保険料

ここでいう基本生活費には、別に計上する住宅費、教育費、税金や社会保険料を重ねて含めません。また、固定資産税や年払い保険料など特定の時期にまとめて支払うものは、毎月の最低家計支出へ含めるか、大型支出として実際の支払時期に加えるかを決めます。

そのうえで、毎月の不足額を出します。

毎月の不足額 = 独立後の最低家計支出 − 安定して見込める世帯収入

世帯収入が最低家計支出を上回る場合、毎月の不足額は0円とします。

さらに、生活防衛資金は次のように試算します。

生活防衛資金 = 毎月の不足額 × 想定する収入減少期間 + 期間中に発生する大型支出のうち別枠で確保していない金額

この記事で共通して使うルールは、一つです。

一つの支出は、一つの場所で確保します。

たとえば大学入学費用300万円を教育資金としてすでに別枠で準備しているなら、その300万円を生活防衛資金の大型支出へもう一度加える必要はありません。

税金についても、事業口座に納税用の資金を残したうえで家計へ回せる金額を計算するのであれば、同じ税金を家計側へ再び加えません。反対に、事業側で確保していない税金は、家計から出ていくお金として見込んでおく必要があります。

難しく見えるかもしれませんが、「同じお金を二度足さない」「必要なお金をどこにも入れず忘れない」と考えれば十分です。

生活防衛資金 = 毎月の不足額 × 想定する収入減少期間 + 期間中に発生する大型支出のうち別枠で確保していない金額 独立後の最低家計支出 基本生活費 + 住宅費 + 継続する教育費 + 独立後に家計から支払う税金と社会保険料 − 安定して見込める世帯収入 毎月の不足額 × 想定する収入減少期間 6か月、12か月、18か月 + 期間中に発生する大型支出のうち 別枠で確保していない金額 生活防衛資金
「同じお金を二度足さない」「必要なお金をどこにも入れず忘れない」と考えれば十分です。

安定して見込める世帯収入とは

必要な生活防衛資金を大きく左右するのが、「安定して見込める世帯収入」です。

この記事では、額面収入ではなく、税金や社会保険料などを差し引いたあとに実際に家計へ入る金額を基準にします。

たとえば配偶者の給与が額面25万円でも、実際に家計へ入る金額が20万円程度なら、試算では20万円を使います。家計から実際に出ていく支出と比べるため、収入側も家計で使える現金にそろえたほうが分かりやすいからです。

本人の事業収入についても、すべてを0円として扱う必要はありません。

独立前の段階ですでに契約が確定しており、一定期間の入金額と時期を具体的に見込めるのであれば、事業に必要な支出や運転資金を差し引いたあと、家計へ実際に回せる金額を安定収入へ含める考え方があります。

たとえば独立後1年間について、契約済みの仕事から毎月20万円を家計へ移せる見込みが具体的に立っているなら、その20万円を差し引いて試算できます。

一方、「営業すれば月20万円くらいは取れるだろう」「副業時代にこれくらい売れたから大丈夫だろう」といった未確定の見込みまで安定収入に入れると、必要な生活防衛資金を小さく見積もる可能性があります。

迷う場合には、本人の事業収入を含めるケースと、0円とするケースの両方を出して比較するとよいでしょう。

また、安定収入が試算期間の途中で変わる場合は、期間を分けて計算します。

たとえば最初の6か月だけ契約済みの仕事から月20万円を家計へ回せ、その後の契約は未定というケースなら、12か月すべてについて20万円を差し引くわけではありません。前半6か月と後半6か月に分け、それぞれの不足額を計算します。

生活防衛資金の簡単な計算例

独立後の最低家計支出が月35万円で、配偶者から実際に家計へ入る金額が月10万円ある家庭を考えます。

本人の事業収入をいったん0円として試算するなら、毎月の不足額は25万円です。

12か月分を確認する場合は、25万円×12か月で300万円になります。さらに、その12か月以内に大型支出が35万円予定されており、そのための資金を別に用意していないなら、必要な生活防衛資金は335万円です。

一方、その35万円をすでに専用口座へ確保しているなら、生活防衛資金へ再び加える必要はありません。

こうして考えると、生活防衛資金は単に「預金が何百万円あるか」を見るものではないことが分かります。どのお金を何のために残しているのかを分けて初めて、自分の家計が何か月持つのかが見えてきます。

独立前の生活防衛資金とは

独立を考え始めると、銀行口座にあるお金が、それまで以上に大きな意味を持つようになります。

預金が800万円あれば、「これだけあれば、しばらくは何とかなるだろう」と感じるかもしれません。会社員として働きながら少しずつ積み上げてきた800万円なら、これから会社という安定した環境を離れる自分を支えてくれるものにも見えるでしょう。

しかし、その800万円の中に子どもの進学資金や老後のために積み立ててきたお金が含まれているなら、すべてを独立後の生活や事業へ使えるわけではありません。

生活防衛資金とは、独立後に家計へ入るお金が減ったとしても、自分や家族の日常生活を維持するために確保しておく現金です。

そして、もう一つ重要な役割があります。

家計に余裕がなくなると、人は「今月を乗り切ること」を優先しやすくなります。本当なら断りたい低単価の仕事でも受けざるを得なくなったり、十分に検討しないまま事業へ追加資金を入れたりすることもあるでしょう。

生活防衛資金は生活費を払うだけではなく、そうした状況でも次の行動を考えられる時間を残すためのお金でもあります。

生活防衛資金と事業資金を分ける

生活防衛資金と事業資金は、同じ銀行預金であっても役割が異なります。

生活防衛資金は、食費、水道光熱費、住宅費、通信費、日常的な教育費など、家庭の生活を維持するためのお金です。一方、事業資金は仕入れ、外注費、広告費、設備費、事業用サービスなど、仕事を続けるために使います。

この二つを分けずにいると、「まだ300万円ある」という残高だけを見てしまいます。

しかし、その300万円のうち250万円を今後の生活のために確保する必要があるなら、事業へ自由に使えるのは50万円です。

独立後に仕事が伸びないと、「もう少し広告を増やせば変わるかもしれない」と思うこともあります。その判断が必要な場面もあるでしょう。

ただ、投入しようとしている資金が事業を成長させるためのお金なのか、それとも家族が数か月暮らすためのお金なのかによって、判断の重さは変わります。

その境界を見えるようにしておくことが、独立前の資金整理では重要です。

生活防衛資金 事業資金
食費、水道光熱費、住宅費、通信費、日常的な教育費など、家庭の生活を維持するためのお金 仕入れ、外注費、広告費、設備費、事業用サービスなど、仕事を続けるために使います

教育資金と老後資金も分ける

教育資金や老後資金にも、それぞれ使う目的があります。

たとえば2年後の大学進学に備えて300万円を確保している家庭で、独立後の資金繰りが厳しくなり、そのうち100万円を生活費へ回したとします。

今の家計は少し楽になります。しかし2年後には、進学のためのお金が100万円足りなくなる可能性があります。

「事業が伸びたら戻せばよい」と考えることもできますが、独立後の収入が計画通りになるとは限りません。教育資金を使う判断は、現在の生活を守るだけではなく、将来の教育計画を変更する可能性まで含んでいます。

老後資金も同じです。現在200万円を使えば独立時の余裕は増えますが、その200万円は将来の生活には使えなくなります。

だからこそ独立前には、「口座にあるから使える」という見方ではなく、「何のためのお金なのか」で現預金を分けて考えます。

口座残高全部が独立資金ではない

事業へ回せる自己資金は、次のように整理できます。

事業に回せる自己資金 = 現預金総額 − 教育資金・老後資金などの目的別資金 − 生活防衛資金

たとえば現預金1000万円のうち、教育資金300万円、老後資金200万円、生活防衛資金400万円を確保するなら、目的別資金は合計500万円です。

したがって、事業へ自由に使える自己資金は、

1000万円 − 500万円 − 400万円 = 100万円

となります。

通帳には1000万円あるのに、独立のために自由に動かせるお金は100万円しかない。この数字を見れば、少し不安になるかもしれません。

それでも、この事実を独立後に知るより、会社員である今の段階で知るほうが選択肢は残ります。

初期費用を抑える、独立までにもう少し貯蓄する、会社員でいる間に継続顧客を増やすなど、事業計画そのものを調整できるからです。

独立後の最低家計支出を計算する

生活防衛資金を計算するときに注意したいのが、会社員時代の生活費をそのまま独立後へ当てはめないことです。

会社員のときには、税金や社会保険料の一部が給与から差し引かれたあとに手取りが振り込まれます。そのため普段の家計では、自分で支払っている感覚が薄い支出があります。

退職すると、こうした支払いが家計の口座から出ていく場合があります。

「現在の生活費が月30万円だから360万円あれば1年持つ」と考えていたのに、実際には税金や社会保険料が加わり、想定より早く残高が減っていく。そのようなズレを防ぐためにも、独立後の現金支出を一度作り直します。

基本生活費を確認する

まず、現在の生活費と、収入が減った状態でも一定期間維持したい基本生活費を分けます。

現在月45万円使っている家庭でも、旅行、外食、趣味などを一時的に見直せば、月35万円程度で暮らせるかもしれません。

ただし、計算上の必要額を小さくするために、極端な節約額を設定する必要はありません。

月25万円まで落とせば生きてはいけるとしても、その生活を半年続けることで家族が疲れ、独立した本人まで仕事へ集中できなくなるのであれば、現実的な前提とは言いにくいでしょう。

独立後の最低家計支出は、生存できる最低額ではなく、一定期間なら家族が無理なく続けられる金額として考えます。

退職後の住民税を確認する

会社員から独立するときに見落としやすい支出の一つが住民税です。

住民税は主に前年の所得や所得控除などを基に決まります。そのため、独立直後の収入が少なくなっても、会社員だった前年の所得に応じた税負担が残る場合があります。

また退職時期などによって、給与から一括徴収されるのか、退職後に自分で納めるのかといった納付方法や支払時期が変わることがあります。

独立後に口座残高が減っているとき、予定していなかった税金の支払いが重なると、「想像していたより早くお金が減っている」と不安が大きくなるかもしれません。

そのため、一律の金額で考えるのではなく、自分の場合にいくらの税額が残り、いつ、どのように支払う予定なのかを居住する自治体の案内などで確認し、必要な現金を見込んでおきます。

健康保険と年金の負担を確認する

個人事業主として独立する場合など、退職後の健康保険には、加入していた健康保険の任意継続、国民健康保険、家族の健康保険の被扶養者になる方法などがあります。

どの方法を選べるのか、どの程度の負担になるのかは人によって異なります。

国民健康保険を選ぶ場合、保険料は前年の所得や世帯の加入者数などを基に計算され、具体的な算定方法や金額は自治体によって異なります。退職して現在の収入が減っていても、前年の所得が保険料へ反映されることがあるため、居住する自治体の案内や試算で確認しておきます。

なお、法人を設立して役員報酬を受ける場合は、通常、法人事業所として健康保険・厚生年金保険の適用手続きが必要です。個人事業主と同じ前提では計算せず、法人設立後の加入関係と実際の負担額を確認します。

年金については、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が退職後に厚生年金保険へ加入しない場合、原則として国民年金への切り替えが必要です。厚生年金保険に加入する配偶者の扶養に入る場合などは、第3号被保険者となるケースもあるため、自分がどの区分になるのかを確認します。

会社員のときには給与から差し引かれていた負担が、自分の口座から出ていくようになるだけでも、お金の減り方の感覚は変わります。

だからこそ、独立後に初めて金額を知るのではなく、退職前に概算を確認しておく意味があります。

住宅費を確認する

住宅ローンや家賃は、収入が減っても簡単には小さくできない支出です。

住宅ローンが月12万円なら、本人から家計へ回せる金額が半分になっても、原則として返済額まで半分になるわけではありません。

持ち家なら、固定資産税、保険、管理費、修繕積立金、設備交換なども確認します。

ここでは月々の住宅費だけを見るのではなく、「今後6か月、12か月、18か月のどこで大きな支払いがあるか」まで確認すると、家計の耐久時間がより分かりやすくなります。

日常的な教育費を確認する

子どもがいる家庭では、現在継続的に支払っている教育関連費も確認します。

学校関係費、保育料、通学費、塾や習い事などの中には、収入が減ったとしてもできる限り続けたいものがあるでしょう。

「独立したら全部やめる」という前提なら必要額は小さくなります。しかし、その前提で家族が納得できなければ、独立後の実際の生活とは合いません。

何を維持したいのか、何なら一時的に見直せるのかを独立前に話しておけば、最低家計支出も現実に近づきます。

一方、数年後の大学進学など、特定の目的に備えて確保している教育資金は、生活防衛資金とは分けて守ります。

大型支出は別枠資金を差し引いて考える

大型支出は、単純に年間額を月割りするのではなく、試算期間中に実際に支払う金額を確認します。

たとえば3か月後に30万円の支払いがあるなら、6か月の試算にも30万円全額を加えます。14か月後に発生する支出なら、6か月や12か月には入りませんが、18か月の試算では必要です。

ただし、すでに専用の資金を確保している支出は除きます。

たとえば14か月後の大学入学費用200万円に対して、教育資金口座へ200万円を確保済みなら、その200万円を生活防衛資金の18か月シナリオへもう一度加える必要はありません。

生活防衛資金へ加えるのは、試算期間中に発生する大型支出のうち、別枠でまだ確保していない金額です。

6か月 12か月 18か月で生活防衛資金を比較する

ここでは、独立後の最低家計支出が月30万円で、安定して見込める世帯収入がない家庭を考えます。

さらに、別枠では確保していない大型支出として、6か月以内に12万円、7か月目から12か月目までに15万円、13か月目から18か月目までに30万円が発生すると仮定します。

6か月なら192万円

6か月分の最低家計支出は180万円です。

そこへ最初の6か月以内に発生する大型支出12万円を加えるため、生活防衛資金は192万円になります。

独立直後から契約済みの仕事があり、比較的早く家計へ現金を移せる見込みがあるなら、6か月を一つの候補として考えることもできます。

ただし、半年分の資金があることと、半年後に仕事が安定することは同じではありません。6か月後に予定より家計収入が少なかった場合、どの行動へ移るのかまで合わせて考えておきます。

12か月なら387万円

12か月分の最低家計支出は360万円です。

この期間中に12万円と15万円の大型支出が発生するため、合計387万円になります。

6か月の場合との差は195万円です。

「さらに半年備えるだけで、200万円近く増えるのか」と感じるかもしれません。しかし、この195万円があることで、仕事の立ち上がりが予定より半年遅れても、家計だけを理由にすぐ判断を変えずに済む可能性があります。

ここで見るべきなのは金額の大きさだけではなく、そのお金によって確保できる時間です。

18か月なら597万円

18か月分の最低家計支出は540万円です。

18か月以内の大型支出57万円を加えると、597万円になります。

かなり大きな金額ですが、これは「600万円近くなければ独立できない」という意味ではありません。

この条件の家庭が、本人から十分な家計収入を得られない状態で18か月生活を維持するなら、これだけの現金が必要になるという試算です。

実際には配偶者の給与がある家庭もあれば、独立前から契約が確定している人もいます。

だから6か月、12か月、18か月を比べる目的は、最も大きな金額を正解にすることではありません。自分がどの程度の不確実さまで現金で受け止めたいのかを決めることです。

期間 最低家計支出 大型支出 生活防衛資金
6か月 180万円 12万円 192万円
12か月 360万円 12万円と15万円 387万円
18か月 540万円 57万円 597万円

家庭条件によって必要額を調整する

基本となる試算ができたら、住宅ローン、教育費、配偶者収入など、自分の家庭条件を重ねていきます。

大切なのは、テーマごとに別々の問題として考えることではありません。「毎月いくら不足するのか」「いつ大きなお金が必要になるのか」という同じ家計の時間軸へ置いて考えます。

住宅ローンがある家庭

住宅ローンを抱えながら独立を考えると、「仕事がうまくいかなかったら家まで失うのではないか」と不安になることがあります。

住宅は家族の暮らしそのものと結び付いているため、単なる固定費以上の重さを感じるのでしょう。

だからといって、住宅ローンがあるだけで独立できないわけではありません。

確認したいのは、今払えているかではなく、本人から家計へ回せる金額が減っても住宅費を含む生活を何か月維持できるかです。

ローン返済だけでなく、固定資産税や管理費、修繕関連費なども支払時期に合わせて確認します。

子どもがいる家庭

子どもがいる家庭では、教育費の総額以上に「いつお金が必要になるのか」が重要です。

子どもが5歳の家庭と高校2年生の家庭では、同じ子ども1人でも、独立後数年間の資金繰りはかなり違います。

高校生の子どもがいるなら、独立して間もない時期に受験費用や大学進学費用が重なる可能性があります。

教育資金をすでに確保できているなら、その資金は生活防衛資金とは分けて守ります。一方、必要額の一部しか準備できていないのであれば、その不足分がいつ家計へ影響するのかを確認します。

住宅 教育 老後を同じ時間軸で見る

住宅、教育、老後を一つずつ見ると、どれも問題ないように感じる家庭でも、支出時期を重ねると景色が変わることがあります。

独立3年後に子どもの進学があり、その翌年に住宅設備の大きな交換が予定されているなら、その時期に事業収入が安定しているかどうかで家計の余裕は大きく変わります。

未来を正確に予測する必要はありません。それでも、数年間の大きな支出予定を並べるだけで、「独立時点では余裕があるが3年後が厳しい」といった家計の弱点を見つけられます。

住宅 教育 老後を同じ時間軸で見る 住宅 教育 老後を同じ時間軸で見る 独立3年後 子どもの進学 その翌年 住宅設備の大きな交換
未来を正確に予測する必要はありません。

配偶者に安定収入がある家庭

配偶者などから安定して見込める収入がある場合、本人の事業収入がなくても世帯全体が無収入になるわけではありません。

たとえば最低家計支出が月40万円で、配偶者から実際に家計へ入る金額が月20万円なら、本人の事業から家計へ一円も回せなかった場合でも不足額は月20万円です。

一方、配偶者の働き方が育児や介護、体調などによって変わる可能性があるなら、その収入を現在のまま見込んでよいかは検討する必要があります。

不安がある場合には、「現在の収入が続くケース」と「途中から減るケース」を比較しておくと、必要額の変化を把握しやすくなります。

現預金を目的別に分ける3つのモデルケース

ここまでの計算を使い、実際に事業へ回せる自己資金がどの程度残るのかを見てみましょう。

いずれも説明用のモデルであり、この金額が安全な独立資金を示すわけではありません。

独身賃貸30代

現預金450万円、独立後の最低家計支出が月18万円、12か月以内に別枠で確保していない大型支出が20万円あるケースを考えます。

老後用として50万円を目的別資金として残すとすると、12か月分の生活防衛資金は、

18万円 × 12か月 + 20万円 = 236万円

です。

現預金450万円から目的別資金50万円と生活防衛資金236万円を差し引くと、

450万円 − 50万円 − 236万円 = 164万円

となり、事業へ回せる自己資金は164万円です。

通帳残高450万円だけを見ていたときとは、事業へ使ってよい金額の見え方が変わるでしょう。

夫婦住宅ローンあり40代

現預金800万円、最低家計支出月30万円、12か月以内の大型支出40万円、老後用の目的別資金200万円とします。

配偶者収入を見込まない場合、生活防衛資金は、

30万円 × 12か月 + 40万円 = 400万円

です。

したがって事業へ使える自己資金は、

800万円 − 200万円 − 400万円 = 200万円

となります。

一方、配偶者から実際に家計へ入る月8万円を安定収入として見込むなら、毎月の不足は22万円です。

22万円 × 12か月 + 40万円 = 304万円

となるため、事業へ使える自己資金は、

800万円 − 200万円 − 304万円 = 296万円

になります。

どちらか一方が正解なのではありません。「配偶者収入をどこまで安定収入と考えたか」という前提によって必要額が変わっています。

子ども2人住宅ローンあり40代

現預金1200万円、教育資金400万円、老後資金200万円、最低家計支出月42万円、12か月以内の大型支出60万円とします。

教育資金と老後資金を合わせた目的別資金は600万円です。

12か月分の生活防衛資金は、

42万円 × 12か月 + 60万円 = 564万円

となります。

そのため事業へ自由に使える自己資金は、

1200万円 − 600万円 − 564万円 = 36万円

です。

1200万円も貯金があるのに、自由に使えるのは36万円。この数字を見れば、独立計画そのものが急に厳しく見えるかもしれません。

ただ、ここで分かったのは「独立できない」という答えではなく、「現在の事業計画では家計側の余裕が小さい」ということです。

独立時期を調整する、初期投資の少ない方法へ変える、会社員の間に契約を増やすなど、どの条件を変えればよいかを考えられるようになります。

モデルケース 生活防衛資金 事業へ回せる自己資金
独身賃貸30代 236万円 164万円
夫婦住宅ローンあり40代 配偶者収入を見込まない場合 400万円 200万円
夫婦住宅ローンあり40代 配偶者から実際に家計へ入る月8万円を安定収入として見込む 304万円 296万円
子ども2人住宅ローンあり40代 564万円 36万円

家計へ回せる金額を3つのシナリオで確認する

生活防衛資金を計算したら、独立後の収入も一つの予定だけで考えないようにします。

ここで見るのは売上そのものではありません。

売上から仕入れ、外注費、広告費、事業固定費など必要な事業支出を差し引き、必要な運転資金などを残したうえで、実際に家計へ移せる現金を使います。

この例では、本人から家計へ月35万円入れば最低家計支出を満たせる家庭を考えます。

計画通りの場合

独立直後の3か月は家計へ月15万円を移し、4か月目から6か月目には35万円、7か月目以降は50万円を移せる計画とします。

最初の3か月は毎月20万円不足するため、生活防衛資金から補う金額は、

20万円 × 3か月 = 60万円

です。

つまり、仕事が計画通りに進んでいても、最初の数か月は残高が減ります。

このことを独立前に分かっていれば、残高が減っただけで計画失敗と考える必要はありません。想定していた減少なのか、想定を超えているのかを区別できます。

半年間必要額の50%しか回せない場合

次に、必要な月35万円の半分にあたる17万5000円しか、半年間家計へ移せない場合を考えます。

毎月の不足は17万5000円なので、

17万5000円 × 6か月 = 105万円

となります。

生活防衛資金から105万円を補ったあとにも十分な余裕があるなら、顧客獲得方法や単価、事業固定費などを見直しながら、改善する時間を持てるでしょう。

反対に、この段階で教育資金や老後資金へ手を付けなければ生活できないのであれば、独立時点の資金条件をもう一度検討する必要があります。

1年間ほとんど回せない場合

さらに厳しいケースとして、事業から家計へ月5万円しか移せない状態が12か月続くとします。

毎月の不足は30万円なので、

30万円 × 12か月 = 360万円

の不足です。

ここへ、その期間中に発生し、別枠で確保していない大型支出を加えます。

ここまで厳しい条件を見ると、「そんな状態まで考えたら、いつまでも独立できない」と感じる人もいるでしょう。

しかし、悪いケースを見る目的は、独立する気持ちを削ぐことではありません。この状態では耐えられないと分かったなら、独立前から継続契約を増やす、固定費を下げる、独立時期を調整するといった対策を選べます。

何も起きていない今だからこそ、悪いケースを冷静に見ることができます。

シナリオ 家計へ移せる金額 毎月の不足 不足
計画通りの場合 独立直後の3か月は月15万円 20万円 60万円
半年間必要額の50%しか回せない場合 17万5000円 17万5000円 105万円
1年間ほとんど回せない場合 月5万円 30万円 360万円

生活防衛資金が減ったときの行動ラインを決める

生活防衛資金の計算は、必要額を出して終わりではありません。

本当に家計を守るためには、「どこまで減ったら何を変えるのか」まで決めておく必要があります。

独立後に仕事が伸びなければ、「もう少しだけ続ければ状況が変わるかもしれない」と思うでしょう。長く準備した事業であれば、ここまで使った時間やお金を考えるほど、簡単には方向転換したくなくなります。

それ自体は不自然なことではありません。

ただ、資金が残り少なくなってから判断しようとすると、選べる方法まで少なくなります。生活防衛資金を使い切ったあとでは、低単価の仕事を断る余裕も、別の働き方を探す時間も失いやすくなるでしょう。

そこで、資金が十分に残っている独立前の段階で、残高と行動を結び付けておきます。

たとえば生活防衛資金が6か月分程度まで減ったら、家計と事業の固定費、単価、受注状況を再確認する。さらに資金が減るなら、事業一本で家計を支える前提を外し、業務委託や副業など別の収入を組み合わせられないか検討する、といった段階的な基準を作れます。

さらに残り数か月となり、受注見込みも弱いのであれば、教育資金や老後資金へ手を付ける前に、再就職を含めた働き方の変更を検討する方法もあります。

具体的な月数は家庭によって違います。大切なのは、生活防衛資金を使い切ってから次の方法を探すのではなく、まだ選択肢が残っている段階で動けるようにすることです。

生活防衛資金が減ったときの行動ラインを決める 生活防衛資金が減ったときの行動ラインを決める 生活防衛資金が6か月分程度まで減ったら 家計と事業の固定費、単価、受注状況を再確認する さらに資金が減るなら 事業一本で家計を支える前提を外し、 業務委託や副業など別の収入を組み合わせられないか検討する さらに残り数か月となり、受注見込みも弱いのであれば 教育資金や老後資金へ手を付ける前に、 再就職を含めた働き方の変更を検討する まだ選択肢が残っている段階で動けるようにすること
具体的な月数は家庭によって違います。

独立前に最低家計支出を実際に試す

計算上は月35万円で生活できると分かっても、「本当に半年間この金額で暮らせるのか」という疑問は残ります。

そこで独立前に、実際の家計で試してみます。

現在月45万円使っており、独立後の最低家計支出を35万円と設定したなら、1か月から数か月だけ35万円前後で生活してみる方法があります。

実際にやってみると、削れると思っていた支出が家族にとって重要だったことに気づく場合があります。反対に、何となく続けていた支出を減らしても、生活の満足度がほとんど変わらないかもしれません。

35万円では負担が大きかったなら、38万円へ修正すればよいのです。

独立後に初めて「この金額では暮らせなかった」と気づくより、給与がある今の段階で試算を修正できたほうがよいでしょう。

また独立まで半年から1年あるなら、生活防衛資金として積み増したい金額を毎月先に別口座へ移し、残ったお金で暮らしてみる方法もあります。

計算した家計を実際に経験すると、独立後の生活が数字だけの想像ではなくなっていきます。

独立前に最低家計支出を実際に試す 独立前に最低家計支出を実際に試す 現在月45万円 最低家計支出を35万円 1か月から数か月だけ 35万円前後で生活してみる 35万円では負担が大きかったなら、 38万円へ修正 給与がある今の段階で試算を修正できたほうがよいでしょう。
計算した家計を実際に経験すると、独立後の生活が数字だけの想像ではなくなっていきます。

独立前の数字は節目ごとに更新する

独立準備を進めている間にも条件は変わります。

半年後までの契約が新たに確定すれば、安定して見込める収入として計算できる金額が増えるかもしれません。子どもの進路や住宅関連費、配偶者の働き方が変われば、反対に必要額が増える可能性もあります。

そのため、独立半年前、3か月前、退職を最終決定する時点など、節目で同じ計算をやり直します。

安定収入の金額や期間が変わった場合には、一律に同じ金額を掛け続けるのではなく、条件が変わる時点で期間を分けて不足額を計算します。

ここで見るのは、単に必要額が増えたか減ったかではありません。

「何が変わったから必要額が変化したのか」が分かれば、次に調整すべき条件も見えてきます。

独立前の数字は節目ごとに更新する 独立前の数字は節目ごとに更新する 独立半年前 3か月前 退職を最終決定する 時点
そのため、独立半年前、3か月前、退職を最終決定する時点など、節目で同じ計算をやり直します。

独立前にFPと確認できること

住宅ローン、教育費、老後資金、独立後の収入をすべて一つの時間軸へ並べると、自分だけでは整理しにくい場合があります。

そのようなときは、FPへ家計全体を相談する方法があります。

家計管理、住宅資金、教育資金、老後設計、保険、年金や社会保険などを横断して確認することで、個別の支出だけを見ていたときには気づきにくかった家計の弱点が見えることがあります。

独立可否の判定より条件比較に使う

相談するときは、「500万円あれば独立して大丈夫ですか」と一つの答えを求めるより、条件を変えた場合の家計を比較するほうが判断材料を得やすくなります。

たとえば本人の契約済み収入を含める場合と0円の場合、配偶者収入が現在のまま続く場合と減る場合、教育費のピークと独立直後が重なる場合などを比べます。

すると、「独立できるか」という○か×かだけではなく、「どの条件までなら家計が耐えられるのか」が見えてきます。

FPへ人生の答えを決めてもらう必要はありません。自分で判断するために、家計条件を整理し、数字へ置き換えるために活用する方法があります。

税金と確定申告は税理士へ確認する

独立すると、所得税や住民税、経費、確定申告などについて考える場面が増えます。

ただし、家計の資金計画と個別具体的な税務判断は分けて考える必要があります。

この記事では、生活防衛資金を試算するときに、税金をどこで確保しているのかを整理する考え方を扱っています。一方、「この支出を経費にできるか」「自分の場合の税額はいくらになるか」「申告書をどのように作るか」といった個別具体的な税務判断は別の話です。

個別具体的な税額の判断や経費の税務上の取扱い、税務書類の作成などについて相談が必要な場合は、税理士へ確認します。

家計全体についてFPへ相談し、税額や経費、申告などの具体的な税務判断は税理士へ確認するというように役割を分けることで、独立前のお金を整理しやすくなります。

FP 税理士
家計管理、住宅資金、教育資金、老後設計、保険、年金や社会保険など 個別具体的な税額の判断や経費の税務上の取扱い、税務書類の作成など

独立前の生活防衛資金に関するFAQ

独立前の生活防衛資金は何か月分必要ですか?

すべての家庭に共通する月数はありません。毎月の不足額を出したうえで、6か月、12か月、18か月など複数期間を試算し、自分の仕事や家庭条件から備えたい期間を判断します。

安定して見込める世帯収入は額面収入を使いますか?

この記事では、額面収入ではなく、税金や社会保険料などを差し引いたあとに実際に家計へ入る金額を基準にします。家計から実際に出ていく最低家計支出と比較するため、収入側も家計で使える現金にそろえます。

本人の独立後の収入も安定収入として計算できますか?

契約がすでに確定しており、一定期間について入金額や時期を具体的に見込める場合には、事業に必要な支出や運転資金を差し引いたあとに家計へ回せる金額を含める考え方があります。

まだ受注していない将来の売上見込みまで安定収入に入れると必要額を小さく見積もる可能性があるため、迷う場合は本人収入を含めるケースと0円のケースを両方確認しましょう。

契約収入が途中でなくなる場合はどう計算しますか?

期間を分けて計算します。たとえば最初の6か月だけ月20万円の安定収入があり、その後6か月は0円とするなら、前半6か月と後半6か月でそれぞれ毎月の不足額を出します。

教育資金や老後資金は目的別資金に含めますか?

含めます。この記事でいう目的別資金には、教育資金や老後資金など、すでに用途を決めて確保しているお金を含みます。

教育資金を確保済みでも大型支出へ加えますか?

同じ支出を二重には計上しません。たとえば大学進学費用200万円を教育資金としてすでに別枠で確保しているなら、その200万円を生活防衛資金の大型支出へ再び加える必要はありません。

生活防衛資金と事業資金は分けるべきですか?

少なくとも計算上は明確に分けたほうが判断しやすくなります。生活防衛資金は家族の生活を維持する現金であり、事業資金は仕事を続けるための現金です。

売上はいくらあれば生活防衛資金を使わずに済みますか?

売上額だけでは判断できません。事業に必要な支出や運転資金などを考慮したあと、実際に家計へ移せる現金を見る必要があります。その金額とその他の安定収入を合わせて最低家計支出以上になれば、その月の通常の家計不足は0円です。

住宅ローンがあっても独立できますか?

住宅ローンがあることだけでは判断できません。収入が減った場合にも、住宅ローンを含む最低家計支出を何か月維持できるかを確認します。

子どもの教育費は生活防衛資金に含めますか?

現在継続して支払っている学校関係費などは最低家計支出へ含めます。一方、将来の進学に備えて確保済みの教育資金は目的別資金として分けて考えます。

配偶者に安定収入があれば必要額を減らせますか?

減らせる可能性があります。配偶者給与など独立後も継続する可能性が高い収入について、実際に家計へ入る金額を最低家計支出から差し引きます。

将来の収入減少が心配なら、現在の収入が続くケースと途中で減るケースを比較するとよいでしょう。

法人を設立して独立する場合も同じ計算でよいですか?

家計の耐久時間を見る基本的な考え方は使えますが、社会保険については個人事業主と同じ前提で計算しないほうがよいでしょう。

この記事は主に個人事業主として独立するケースを想定しています。法人を設立して役員報酬を受ける場合は、通常、法人事業所として健康保険・厚生年金保険の適用手続きが必要です。年齢や報酬の有無などによって取扱いが異なる場合もあるため、法人設立後の加入関係と実際の負担額を確認したうえで最低家計支出を計算します。

生活防衛資金が減ったらいつ事業を見直しますか?

一律の撤退基準はありません。生活防衛資金が一定の月数まで減ったら固定費を確認する、さらに減ったら別収入を組み合わせる、受注見込みも弱ければ再就職を検討するといったように、資金残高と行動を事前に結び付けておく方法があります。

FPには何を相談できますか?

家計管理、住宅資金、教育資金、老後設計、保険、年金や社会保険などを横断して相談できます。独立前なら一つの将来予測だけではなく、収入や支出条件を変えた複数ケースを比較すると、自分の家計の弱点を見つけやすくなります。

税金や確定申告については誰に相談すればよいですか?

個別具体的な税額の判断、経費の税務上の取扱い、税務相談や税務書類の作成などについて確認したい場合は、税理士へ相談します。

まとめ 独立前の生活防衛資金は選択肢を残すためのお金

独立前の生活防衛資金を考えるとき、最初から「12か月分」「500万円」といった一つの数字を正解にする必要はありません。

まず、基本生活費、住宅費、継続する教育費、税金や社会保険料などから、独立後の最低家計支出を出します。

次に、配偶者給与など独立後も安定して見込める収入を差し引きます。このとき使うのは額面ではなく、税金や社会保険料などを差し引いたあとに実際に家計へ入る金額です。

本人の事業収入については、すでに契約が確定し、入金額や時期を具体的に見込める部分を使う方法があります。途中で収入額が変わるなら、試算期間を分けて不足額を計算します。

そこで出た毎月の不足額に、6か月、12か月、18か月と想定期間を掛け、さらに期間中に発生する大型支出のうち、別枠で確保していない金額を加えます。

生活防衛資金 = 毎月の不足額 × 想定期間 + 未確保の大型支出

さらに現在の現預金から事業へ使える自己資金を出す場合は、

事業に回せる自己資金 = 現預金総額 − 教育資金・老後資金などの目的別資金 − 生活防衛資金

と整理します。

生活防衛資金 = 毎月の不足額 × 想定期間 + 未確保の大型支出 基本生活費、住宅費、継続する教育費、 税金や社会保険料など 独立後の最低家計支出 − 配偶者給与など独立後も安定して見込める収入 = 毎月の不足額 毎月の不足額 × 想定期間 + 未確保の大型支出 = 生活防衛資金 事業に回せる自己資金 = 現預金総額 − 教育資金・老後資金などの目的別資金 − 生活防衛資金
ここで覚えておきたいのは、一つの支出を一度だけ確保することです。

ここで覚えておきたいのは、一つの支出を一度だけ確保することです。教育資金として用意しているお金を大型支出へもう一度足したり、すでに別の場所で確保しているお金を重ねて計算したりしなければ、自分の家計に必要な金額が見えやすくなります。

そのうえで、独立後についても一つの予定だけを見るのではなく、計画通りに家計へお金を回せる場合、必要額の半分しか回せない場合、長期間ほとんど回せない場合を確認し、どこまで資金が減ったら何を見直すのかを決めておきます。

独立を前にして不安になるのは、数字が足りないからだけではありません。

会社員のときには翌月も見えていた給与という未来が、独立すると急に見えにくくなるからです。何が起きるか分からず、いつまで耐えられるのかも分からなければ、十分な預金があっても落ち着かないでしょう。

生活防衛資金を計算する意味は、その見えない時間に輪郭を与えることにあります。

「この条件なら12か月は持つ」「ここまで減ったら別収入を増やす」「教育資金には手を付けない」と決められれば、独立後に予定外のことが起きても、すぐにすべてを諦める必要はありません。

生活防衛資金は、独立できる人を判定するためのお金ではなく、予定が外れたときにも次の方法を自分で選べる状態を守るためのお金です。

独立まで半年から1年あるなら、まだ試せます。現在の家計から最低家計支出を出し、一度その金額で暮らしてみて、契約や家庭条件が変わったら数字を更新する。その積み重ねによって、「何となく怖いから動けない」という状態から、「自分はどの条件なら挑戦できるのか分かっている」という状態へ近づいていけるのではないでしょうか。

参考資料

日本年金機構 会社を退職したときの国民年金の手続き

名古屋市 会社を退職した後の市民税・県民税・森林環境税は?

全国健康保険協会 任意継続

厚生労働省 国民健康保険の保険料・保険税について

日本年金機構 法人化した場合の社会保険加入に関するFAQ

日本FP協会 FPとは

国税庁 税理士の業務

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