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教育費と住宅ローンは両立できる? 進学年表で家計のピークと不足額をシミュレーション

住宅ローンはまだ何年も残っている。それなのに子どもが大きくなるにつれて、「高校は私立かもしれない」「大学では一人暮らしになるかもしれない」と、これまで遠くにあった教育費が少しずつ現実味を帯びてきます。

今の家計は回っているのに、将来を考えると安心できない。その理由は、教育費がいくらかかるか分からないことだけではありません。住宅ローンを払いながら教育費が増える時期も、今の暮らしを維持できるのかが見えないことが、不安を大きくしているのではないでしょうか。

教育費と住宅ローンの両立を考えるとき、数千万円という総額同士を比べる必要はありません。確認したいのは、教育費が大きくなる年に家計からいくら出ていき、その年に不足するお金を事前に準備できるかどうかです。

本記事では、次の4段階で確認します。

  1. 子どもの進学年を年表へ置く
  2. 教育費が大きい年の年間収支を出す
  3. 各年の不足額を合計する
  4. 現在の教育資金を差し引き今から追加で準備する額を出す

日本FP協会でも、現在の家計とライフイベントを組み合わせたキャッシュフロー表を作り、教育費が終わる時期やリタイアまでの家計を長期で確認しながら、状況に応じて見直していく考え方が紹介されています。

この記事で「両立できるか」を考えるときも、教育費の赤字を埋められるだけでは判断しません。教育費ピークの不足を教育目的の資金で補えて、生活防衛資金や住宅修繕資金、老後資金を恒常的に取り崩さず、教育費終了後の家計も赤字が続かないかまで確認します。

「年収○万円なら大丈夫」といった一律の基準を示すものではありません。わが家の数字で、どこが苦しくなり、準備によってその時期を乗り越えられるかを見るためのシミュレーションです。

TABLE OF CONTENTS
目次

子ども5歳と住宅ローン30年で計算の全体像を見る

まず、この記事で使うモデル家庭を置いてみます。

現在5歳で翌春に小学校へ入学予定の子どもがおり、親は38歳とします。住宅ローンは3,000万円を返済期間30年、年1%、元利均等返済で借り、金利が期間中変わらないという単純な条件です。

この場合、住宅ローン返済額は月約9万6,500円、年間約115.8万円となります。

モデル条件 金額・条件
子ども 5歳 翌春に小学校入学予定
38歳
住宅ローン 3,000万円
返済期間 30年
金利 年1%で固定した単純モデル
年間住宅ローン返済 約115.8万円
年間手取り収入 680万円
家族の基本生活費 330万円
年間住宅関連費 156万円
その他の年間支出 40万円

年間住宅関連費156万円は、住宅ローン返済約116万円に加えて、固定資産税や保険、将来の修繕への備えなどを年間40万円と仮置きした本記事独自のモデルです。年間40万円が一般的な適正額という意味ではありません。

子どもが大学へ進学するころにも住宅ローン返済は続いています。ただし、住宅ローンが残っていることだけで、教育費との両立が難しいとは判断できません。 家計へ直接影響するのは、その年に住宅ローン返済や住宅維持費としていくら現金が出ていくかだからです。

なお、以下の教育費シミュレーションでは、現在公表されている文部科学省とJASSOの統計額を使用します。13年後の実際の教育費を予測した数字ではなく、将来の物価や学費の変動も織り込んでいません。また、比較を単純にするため、年間手取り収入680万円、基本生活費330万円、住宅関連費156万円、その他支出40万円も将来まで同額と仮定します。

大学については、JASSOの学生生活費を家計が全額負担する厳しめの条件で不足額を計算します。実際には、学生本人の収入や奨学金、将来の家計収支などを反映して置き換えてください。

未来の家計が13年間まったく変わらないという意味ではありません。今の数字を固定して比較することで、「進路が変わると家計がどの程度動くのか」を見つけやすくしています。

まず一本の基準ケースを作り、その後に自分の家庭の条件へ近づけていくための出発点と考えてください。

教育費と住宅ローンは総額ではなく時期で考える

教育費について調べると、「子ども一人に1,000万円以上」といった数字が目に入りやすくなります。

そこへ住宅ローン3,000万円といった数字が並ぶと、教育費と住宅ローンだけで数千万円になるため、「とても両方は払えないのでは」と感じるかもしれません。

しかし、この二つの総額をそのまま足しても、家計が苦しくなる年は分かりません。

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」訂正版では、幼稚園3歳から高校3年までについて、令和5年度の各学年の平均年額を単純合計した参考額は、すべて公立の場合で約614万円、すべて私立なら約1,969万円です。いずれも現在の統計を基にした合計額であり、将来15年間の実際の支出を予測した金額ではありません。

たとえば現在5歳で、翌春に小学校へ入学予定の子どもがいる家庭なら、標準的に進学すると大学入学は約13年後です。

「大学までに数百万円必要」とだけ考えれば、大きな壁のように感じるかもしれません。しかし、「13年後から数年間に使う資金」と置き換えれば、その13年間は準備に使える期間でもあります。

教育費への不安を、総額の大きさだけで受け止める必要はありません。

わが家では何年後に支出が最も重くなり、その年の住宅関連費と教育費はいくらになるのか。

ここから考えると、将来への不安を具体的な家計計画へ変えやすくなります。

幼稚園から高校までの教育費を確認する

シミュレーションに使う教育費の目安を確認しておきましょう。

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」訂正版では、年間の学習費総額は次のようになっています。

学校段階 公立の年間学習費 私立の年間学習費
幼稚園 約18.5万円 約34.7万円
小学校 約36.7万円 約174.2万円
中学校 約54.2万円 約156.0万円
高校 約59.7万円 約117.9万円

学習費総額には学校教育費のほか、学校給食費や学習塾、家庭教師、習い事などの学校外活動費も含まれています。

そのため、学習費総額を使ったシミュレーションへ平均的な塾代をさらに加えると、同じ支出を二重に数える可能性があります。

不安があると「念のため多めに見ておこう」と考えがちですが、多く見積もるほど正確になるわけではありません。何が含まれている数字なのかを確かめながら使う方が、実際に準備すべき金額をつかみやすくなります。

公立と私立で教育費の幅を見る

進路がまだ決まっていなくても、教育資金計画は作れます。

文部科学省の同調査では、令和5年度の各学年の平均年額を基に幼稚園から高校までを単純合計すると、すべて公立の場合は約614万円、幼稚園と高校を私立とした場合は約838万円、すべて私立では約1,969万円です。

進路モデル 幼稚園から高校までの参考額
すべて公立 約614万円
幼稚園と高校が私立 約838万円
すべて私立 約1,969万円

この数字は、どの進路が正しいかを決めるためのものではありません。

子どもが「この学校へ行きたい」と言ったとき、できればお金だけを理由に最初から諦めさせたくない。一方で、教育費を優先しすぎた結果、自分たちの生活や老後を維持できなくなることも避けたい。その二つの気持ちの間で迷うからこそ、進路を一つに決め打ちせず、複数のケースで家計を比べる意味があります。

教育費に使う金額と、子どもを応援する気持ちは同じものではありません。家族全体の暮らしを守りながら選択肢を残すことも、長期的には教育への備えになります。

大学費用は自宅とアパート等で比較する

大学進学では、国公立か私立かだけではなく、自宅から通うのか、自宅外で生活するのかによって支出が変わります。

JASSOの令和6年度「学生生活調査」では、学生生活費を学費と生活費を合わせた支出額として集計しています。大学学部昼間部について、主な居住形態別の年間学生生活費は次の通りです。

大学進学モデル 年間学生生活費
国立大学 自宅 約120.3万円
公立大学 自宅 約106.7万円
私立大学 自宅 約190.5万円
国立大学 アパート等 約180.1万円
公立大学 アパート等 約175.1万円
私立大学 アパート等 約268.9万円

私立大学では、自宅通学の学生生活費が年間約190.5万円なのに対し、アパート等では約268.9万円です。平均額では年間約78万円の差となるため、「私立大学だから高い」という見方だけでは足りません。どこから通うのかまで含めて考える必要があります。

ただし、この金額をそのまま「親が負担する大学費用」と考えないことも重要です。JASSOの学生生活費は学生本人の学費と生活費を合わせた支出であり、家庭からの支援以外にも奨学金やアルバイト収入などで賄われる場合があります。

また、JASSOの年額では、入学年度だけに支払った入学金などの特別納付金は「その他の学校納付金」から除かれています。本記事でJASSOの学生生活費を使う表やシミュレーションも、これらを除いた年額モデルとして扱います。大学1年目は、志望校の実際の入学金などを別途加えてください。

家計シミュレーションでは、現在の家族生活費との重複にも注意が必要です。ただし、JASSOの学生生活費の内容は居住形態によって異なります。

自宅通学者の「食費」は外食時の経費で、自宅での食事代は含まれません。また、「住居・光熱費」は自宅外通学者について計上される項目です。一方、自宅外通学者では、食費に外食や自炊材料費など、住居・光熱費に家賃や光熱水費などが含まれます。

本記事では、まずJASSOの学生生活費を家計が全額負担する厳しめの条件で家計の山場を見ます。

実際に自分の家計へ置き換える際は、自宅通学なら基本生活費側にも計上している学生本人分の費用がないかを確認し、自宅外進学なら子どもが家を出ることで家庭側で減る食費や光熱費なども基本生活費へ反映してください。

同じ「大学生の生活費」であっても、自宅にいる場合と家を出る場合では、家計の中で費用が発生する場所が違います。ここを一括して「二重計上」と考えるより、どの財布から何が出ているのかを見た方が、実際の不足額へ近づけやすくなるでしょう。

遠い大学費用については、平均額を仮置きとして使えば十分です。高校生になり志望校や進学地域が具体的になったら、学校の納付金や実際の家賃へ置き換えていきます。

遠い教育費は幅で考え、近い教育費は日付と金額で考える。

この切り替えが、長い教育資金計画を現実的に保つためのポイントです。

子どもの年齢から進学年表を作る

現在5歳で翌春に小学校へ入学予定の子どもなら、標準的な進学時期を前提にすると、小学校入学は約1年後、中学校入学は約7年後、高校入学は約10年後、大学入学は約13年後です。

親が現在38歳なら、子どもの大学入学時には51歳になります。

13年後と聞くと、まだ先のことに感じるかもしれません。しかし「自分が51歳になるころ」と置き換えると、住宅の修繕や老後資金の準備など、教育費以外の支出も同じ時期に近づいていることへ気づきやすくなります。

モデル家庭の進学年表へ、教育費と住宅ローン返済を重ねると次のようになります。幼稚園から高校までの金額は、その年齢・学年だけの平均額ではなく、文部科学省が公表する各学校段階の年間学習費総額の平均を参考値として置いています。

子どもの年齢 親の年齢 学校段階 教育費等の参考額 住宅ローン年間返済
5歳 38歳 公立幼稚園 約18万円 約116万円
6歳 39歳 公立小学校 約37万円 約116万円
12歳 45歳 公立中学校 約54万円 約116万円
15歳 48歳 公立高校 約60万円 約116万円
18歳 51歳 国立大学 自宅モデル 約120万円 約116万円
18歳 51歳 私立大学 自宅モデル 約191万円 約116万円
18歳 51歳 私立大学 アパート等モデル 約269万円 約116万円

幼稚園から高校までは文部科学省の学校段階別の年間学習費総額、大学はJASSOの学生生活費という異なる統計を使った参考モデルです。大学欄には入学金などの入学時特別納付金を含みません。

実際のピーク年を計算するときは、進学時期が近づいた段階で、学年別の支出や進学先の入学金、授業料などの実額へ置き換えてください。

この表の役割は、18歳の年に必ず約191万円かかると予測することではありません。小学校時代と比べ、大学進学期には住宅ローンと教育費の重なりが大きくなりやすいことを、まず時間軸で見つけるためのものです。

住宅を持つ家庭では住宅ローン返済だけが住宅費ではないため、ここからは固定資産税や保険、修繕への備えも含めた年間住宅関連費156万円を使い、年間収支へ進みます。

教育費ピーク時の年間収支を計算する

モデルでは年間手取り収入を680万円、家族の基本生活費を330万円、住宅関連費を156万円、その他の年間支出を40万円とします。

これらは将来も同額で続くという単純な仮定です。実際には昇給や働き方の変化、物価上昇、住宅費の増減などが起こる可能性がありますが、まず進路による教育費の差を見やすくするため固定します。

最初に、教育費をまだ入れない状態で年間収入から基本的な支出を引きます。

家計から教育費へ回せる額=年間手取り収入-基本生活費-住宅関連費-その他支出

今回のモデルでは、

680万円-330万円-156万円-40万円=154万円

となるため、教育費へ回せる金額は年間154万円です。

ここから進路ごとの教育費との差を不足額として確認します。

本記事では比較を単純にするため、現在の家族の基本生活費330万円を大学期も据え置き、そのうえでJASSOの学生生活費を家計が全額負担する条件で計算します。

ただし、JASSOの学生生活費と家庭の基本生活費がどの程度重なるかは、居住形態によって異なります。自宅通学者の食費は外食時の経費で、自宅での食事代は含まれず、住居・光熱費も自宅通学者には計上されません。

そのため、私立大学・自宅通学モデルでは、家庭内の食費や住居費が大きく二重計上されているとみなすのではなく、基本生活費側にも学生本人分として計上している費用がある場合に、その費目を調整します。自宅外進学では、子どもが家を出ることで家庭側で減る食費や光熱費なども併せて調整してください。

以下の不足額は、こうした家庭ごとの調整を行う前に、JASSOの学生生活費を家計が全額負担するという厳しめの前提で置いた比較値です。

この条件を明確にしておくのは、数字を弱く見せるためではありません。「37万円不足する」「115万円不足する」という結論だけを自分の家計へ持ち帰ってしまうと、本来調整すべき家庭ごとの差が消えてしまうからです。

私立大学自宅通学では年間約37万円不足するモデル

私立大学へ自宅から通う場合、JASSOの年間学生生活費は約190.5万円です。

家計から教育費へ回せる額は年間154万円なので、

約191万円-154万円=約37万円

となり、年間約37万円不足するモデルになります。

別の見方をすれば、家族の基本生活費330万円、住宅関連費156万円、大学生の学生生活費約191万円、その他支出40万円を合計した年間支出約717万円から、手取り680万円を引いても同じ約37万円です。

ただし、自宅通学者についてJASSOの「食費」に含まれるのは外食時の経費であり、自宅での食事代は含まれません。住居・光熱費も自宅通学者には計上されないため、家庭内の食費や住宅費を一律に二重計上しているモデルではありません。

一方で、基本生活費330万円の中に、大学生本人の通信費や日用品費などJASSO側にも含まれる支出を計上している家庭なら、その部分は調整する必要があります。

赤字という言葉を見ると、「やはり私立大学は無理なのか」と感じるかもしれません。しかし、この数字の役割は進路の合否を決めることではありません。

今置いた厳しめの条件では年間約37万円不足するため、自分の生活費の内訳を確認したうえで、残る不足額を準備する必要があるということです。

なお、この37万円は入学金などを除いた年額モデルです。大学1年目には、進学先の実際の入学金などを追加して不足額を確認してください。

私立大学アパート等では年間約115万円不足するモデル

私立大学でアパート等に暮らす場合、JASSOの年間学生生活費は約268.9万円です。

同じ154万円を家計から教育費へ回すモデルなら、

約269万円-154万円=約115万円

となり、年間約115万円不足します。

同じ程度の不足が4年間続く単純モデルなら、入学金等を除いて約460万円です。

自宅外進学の場合、JASSOの学生生活費には食費や住居・光熱費が含まれます。一方、子どもが家を出れば、現在の家庭側でかかっている食費や光熱費などが減る可能性があります。

本記事では基本生活費330万円を据え置いているため、そうした減少は115万円という不足額に反映していません。また、JASSOの学生生活費を家計が全額負担する条件も厳しめです。

したがって、115万円は「下宿すると必ずこれだけ不足する」という数字ではありません。家庭側で減る支出や学生本人の負担を反映する前の比較値として使い、自分の家計では実際の変化を加えて計算し直してください。

シミュレーションは進路を否定するためのものではありません。その進路を選ぶにはどの程度の準備が必要なのかを先に知り、そこから自分の家庭の条件へ修正するためのものです。

不足額から今後の追加準備額を出す

家計のピークを確認したら、次は「あといくら貯めればよいのか」を計算します。

まず年ごとの不足額を出します。

各年の不足額=その年に必要な教育費-その年の家計から支払える教育費

今回のモデルなら、家計から支払える教育費は年間154万円です。

ただし、自分の家計で計算するときは、自宅通学なら基本生活費と学生生活費の双方に入っている本人分の支出がないか、自宅外なら進学によって家庭側から減る費用がないかを確認したうえで、家計から支払える教育費を求めてください。

大学1年目には、JASSOの学生生活費だけでなく、実際の入学金なども「その年に必要な教育費」へ追加します。

複数年で不足する場合は、それぞれの年の不足額を合計します。

事前準備額=各年の不足額の合計

たとえば年間200万円の教育費が4年間必要で、その時期の家計から毎年120万円を支払えるなら、不足額は年間80万円です。

4年間同程度と仮定すると、

80万円×4年間=320万円

となり、事前準備額は320万円です。

ここで終わりではありません。すでに教育費として100万円を確保しているなら、これから新たに320万円すべてを貯める必要はありません。

今から追加で準備する額=事前準備額-現在確保している教育資金

320万円-100万円=220万円

不足額から今後の追加準備額を出す 不足額から今後の追加準備額を出す 各年の不足額= その年に必要な教育費- その年の家計から支払える教育費 事前準備額= 各年の不足額の合計 今から追加で準備する額= 事前準備額- 現在確保している教育資金

この家庭なら、単純モデルでは今から追加で準備する対象は220万円です。

教育費の記事を読んで「大学までに800万円必要」と言われても、今月から何をすればよいのかは見えにくいでしょう。一方、「今置いている進路なら13年後までにあと220万円」と分かれば、現在の家計へ戻って考えられます。

ただし、現在の預貯金をすべて教育資金として差し引くのは避けます。生活防衛資金や住宅修繕資金、老後資金など、別の目的があるお金まで教育費として計算すると、教育費を乗り越えた後に別の家計問題を作る可能性があるためです。

教育費と住宅ローンを両立できるか判断する

ここまでの計算で不足額を埋められそうでも、それだけで両立できるとは限りません。

本記事では、教育費ピークの不足を教育目的の資金で補えることに加えて、その結果として生活防衛資金や住宅修繕資金、老後資金を恒常的に取り崩さず、教育費終了後には家計収支が戻るかを確認します。

たとえば大学4年間の不足が460万円で、教育資金を500万円準備しているなら、教育費だけを見れば対応できそうです。

しかし、その500万円を使うことで手元の資金がほとんどなくなり、住宅設備の故障や収入減に対応できなくなるのであれば、「教育費を払える」と「家計として無理なく両立できる」は同じではありません。

反対に、大学期間だけ一時的に赤字になったとしても、計画していた教育資金から補い、卒業後には家計が黒字へ戻るのであれば、赤字があることだけを理由に計画全体を否定する必要もないでしょう。

両立の判断で見るべきなのは、赤字があるかではなく、その赤字を予定していた資金で乗り越えられるかです。

子ども2人は大学費用が重なる年を確認する

子どもが2人いる場合も、教育費総額を単純に2倍するだけでは家計の山場は分かりません。

たとえば3学年差で、二人とも通常の4年制大学へ標準的に進学するなら、上の子が大学4年生のときに下の子が大学1年生となり、1学年度は大学費用が重なります。

二人とも私立大学へ自宅から通い、JASSOの平均的な学生生活費を家計が全額負担する厳しめのモデルでは、重なる年の学生生活費は約381万円です。

住宅関連費156万円を加えると、教育費と住宅関連費だけで約537万円となります。

一人が私立大学自宅、もう一人が私立大学アパート等なら学生生活費は約459万円、住宅関連費と合わせて約615万円です。

二人とも私立大学アパート等なら学生生活費は約538万円となり、住宅関連費と合わせて約694万円になります。

いずれも現在のJASSO平均額を使い、学生生活費を家計が全額負担する年額モデルです。入学金等は別途必要であり、実際にはそれぞれの居住形態に応じて家庭側の生活費も調整する必要があります。

大きな金額を見ると、「二人とも大学へ行ったら家計が持たないのでは」と不安になるかもしれません。しかし、ここでも総額そのものより、二人の教育費がいつ重なるかを見ることが重要です。

通常の4年制大学で3学年差なら、二人の大学費用が同時に発生する1年間が特に重くなります。ピークが分かれば、その年へ向けて教育資金を厚めに残す準備もできます。

赤字が出た後に確認すること

シミュレーションで赤字が出たとき、すぐに「もっと節約しなければ」と考える必要はありません。赤字という結果そのものより、なぜ赤字になったのかを見る方が重要です。

まず、自宅通学なら家族の基本生活費と学生生活費の双方に計上している本人分の支出がないかを確認します。自宅外進学なら、子どもが家を出ることによって家庭側で減る食費や光熱費などがないかを見てください。

そのうえで、赤字が教育費のある数年間だけなのか、それとも教育費が終わった後も続くのかを確認します。

大学在学中だけ年間50万円不足するなら、その期間に使う教育資金を準備する方法があります。一方、子どもが卒業した後も毎年赤字が続くなら、原因は教育費だけではなく、住宅関連費や基本生活費、収入などを含む家計構造にある可能性があります。

家計のストレステストで弱点を見る

今回のモデルでは、年間手取り680万円、基本生活費330万円などを将来も変わらないものとして置いています。

もちろん、実際の13年後がそうなるとは限りません。昇給する可能性もあれば、働き方が変わって収入が減ることもあり、生活費や学費が上がる可能性もあるでしょう。

そこで基本ケースを作ったら、手取り収入が10%減った場合、教育費が現在の想定より増えた場合、住宅ローン返済額が変化した場合など、気になる条件を一つずつ変えて確認します。

一つの単純モデルを作る目的は、未来を決めつけることではありません。基準となる一本の線があれば、「収入が減ったらどうなるか」「学費が増えたらどこまで耐えられるか」を比較できるからです。

ここで見るのは老後の最終残高だけではなく、教育費ピークの時期に金融資産がどこまで減るのか、生活防衛資金を維持できるのかという途中の状態です。

厳しい結果が出ても、全部を一度に変える必要はありません。教育費の影響が大きいなら進路別予算を見直し、住宅費なら住宅関連支出を確認するというように、影響の大きな部分から一つずつ修正し、同じ条件でもう一度計算します。

繰上返済は教育資金と手元資金を一緒に見る

住宅ローンが残っていると、早く減らした方が安心だと感じることがあります。

しかし、繰上返済へ300万円を使えば、手元の現金も300万円減ります。数年後に大学入学を控えている家庭では、住宅ローン残高を減らした結果、入学金や教育費を支払う現金が不足する可能性もあります。

繰上返済の判断では、金利や返済期間だけでなく、教育費ピークまでの年数、教育資金、生活防衛資金、住宅修繕資金などを同じキャッシュフローで確認する必要があります。

公的支援は調査時点と現在の制度を分けて考える

教育費へ公的支援を反映するときは、統計に反映されている支援制度の時点と、2026年現在の制度を混同しないことが重要です。

文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」は令和5年度の家計支出を調査したもので、授業料を含め、保護者が実際に支出した経費を集計しています。そのため、調査時点で授業料の減免や就学支援によって家庭の支払額が減っていた場合、その影響を受けた平均額です。

したがって、記事で使っている高校の平均額へ、2026年現在の就学支援額をそのままもう一度引けば、支援を二重に反映する可能性があります。

一方、2026年4月から高等学校等就学支援金制度は改正され、所得制限が撤廃されています。私立高校全日制については、支給上限額が年45万7,200円となっています。

高校進学が近づいたら、

進学先で実際に必要な費用 → その時点で利用できる支援 → 家庭の自己負担額

という順番で計算し直します。

公的支援は調査時点と現在の制度を分けて考える 公的支援は調査時点と現在の制度を分けて考える 進学先で実際に必要な費用 その時点で利用できる支援 家庭の自己負担額

JASSOの令和6年度学生生活調査も、授業料について減免を受けている場合には、減免後の実際に納入する額を回答する設計です。そのため、JASSOの平均学生生活費から現在の支援額を単純にもう一度引くのではなく、実際の進学先が決まった段階で学校の納付額と利用可能な制度から自己負担を作り直します。

高等教育の修学支援新制度では、令和7年度から、多子世帯に属する学生について、所得制限なく国が定める一定額まで授業料や入学金の減免対象が拡大されています。ただし、「子どもが3人いるから必ず対象」と単純に判断できる制度ではありません。

JASSOでは、「多子世帯に属している」かどうかについて、原則として、申込時などに申告した生計維持者の扶養親族のうち「子ども」に該当する人数と、生計維持者全員の住民税情報上の扶養親族数の合計を比べ、いずれか少ない方が3人以上で、学生本人も生計維持者に扶養されていることを要件としています。

つまり、実際には3人の子どもがいる家庭でも、税情報や学生本人の扶養状況によっては多子世帯に該当しないことがあります。反対に、「兄や姉が少し収入を得ているから、もう絶対に対象外だろう」と早く決めつけるのも適切ではありません。

また、令和8年度住民税を用いる判定からは、特定親族特別控除の創設に伴い、扶養親族から外れる程度の一定の所得がある学生世代のきょうだい等でも「子ども」に加算できる場合があり、本人以外について別途申告が必要なことがあります。住民税情報の確定後に新たに生まれた子なども、一定の条件で加算できる場合があります。

制度がここまで細かいと、「うちは対象なのか」と戸惑う家庭もあるでしょう。しかも教育資金計画では、支援を受けられる前提と受けられない前提で必要な準備額が変わります。

だからこそ、制度を最初から完璧に理解しようとするより、子どもが小さいうちは支援を確実な収入として見込みすぎず、進学が近づいた段階で実際の申込条件を確認する方が安全です。

申込時に参照される住民税年度や扶養情報の基準日は、申込時期や手続きによって異なります。2026年度の在学採用でも、春と秋では使用する住民税情報が異なります。

制度は「今、子どもが何人いるか」だけで決まるとは限りません。進学が近づいたら、JASSOや学校の最新案内で、その申込時期に参照される扶養情報、特定親族に関する申告の要否、資産や学業などを含む制度要件を確認してください。

統計値は将来計画を作るための仮置き、制度は実際の自己負担額を確認するための情報として役割を分けて使うとよいでしょう。

年1回教育資金計画を更新する

教育資金計画は、一度作れば完成するものではありません。

今回使っている数字も、現在公表されている統計と、収入や生活費などを固定した仮定によるモデルです。

子どもが5歳の時点で、13年後の家計を細部まで決めることはできません。それでも、今の数字を使って「どの時期が重くなりそうか」を見つけておけば、何も見えない状態とは準備のしやすさが違います。

中学生、高校生と進むにつれて進路の希望が具体的になれば、家計の数字も具体化できます。

年1回程度、子どもの年齢、実際にかかった教育費、教育資金残高、手取り収入、基本生活費、住宅ローン返済額、住宅維持費を更新します。

高校生になって志望校が見えてきたら、平均額を学校の実額へ置き換え、大学1年目の入学金や最新の支援制度まで加えます。自宅通学なら家庭側で負担する本人分の費用、自宅外進学なら家庭側から減る食費や光熱費なども確認し、基本生活費を実態へ合わせてください。

前年は「あと300万円必要」だったものが、積立や収入増によって今年は250万円まで減っているかもしれません。反対に学費や生活費の上昇、進路変更によって不足額が増えることもあります。

計画が変わるのは、最初の計算が失敗だったからではありません。未来が少し具体的になった分だけ、家計計画も現実へ近づいているということです。

教育費と住宅ローンのチェックリスト

最初から20年分を完璧に作ろうとすると、数字を集めるだけで疲れてしまいます。まずは次の項目を埋め、分からない部分は「未定」のまま残して構いません。

  • 子どもの現在年齢 __歳
  • 親の現在年齢 __歳
  • 高校入学まで あと__年
  • 大学入学まで あと__年
  • 大学進学時の親の年齢 __歳
  • 想定する高校 公立/私立/未定
  • 想定する大学 国公立/私立/未定
  • 大学の通学方法 自宅/自宅外/未定
  • 大学入学時の入学金など __万円
  • 年間手取り収入 __万円
  • 年間基本生活費 __万円
  • 住宅ローン年間返済額 __万円
  • 住宅維持費 年間__万円
  • その他の年間支出 __万円
  • 自宅通学時に基本生活費側で負担する本人分 __万円
  • 自宅外進学で減りそうな家庭側の支出 __万円
  • 家計から教育費へ回せる額 __万円
  • 各年の教育費不足額 __万円
  • 不足額を合計した事前準備額 __万円
  • 現在確保している教育資金 __万円
  • 今から追加で準備する教育資金 __万円
  • 教育費ピーク時に残したい生活防衛資金 __万円
  • 教育費終了後の年間収支 黒字/赤字/未確認
  • 利用予定の公的支援 ____
  • 公的支援の判定に使われる扶養情報 確認済み/未確認
  • 次回の見直し予定 __年__月

「家計から教育費へ回せる額」は、基本的には次の式で確認します。

年間手取り収入-基本生活費-住宅関連費-その他支出

大学期には、自宅通学と自宅外進学で家計の変化が異なります。そのため、モデルの154万円をそのまま使うのではなく、実際の生活費の増減を確認したうえで計算してください。

すべてを埋められなくても、計画が不完全という意味ではありません。「下宿するか分からない」「大学は未定」と書ければ、次に家族で確認することが一つ見つかったということです。

教育費と住宅ローンのよくある質問

教育資金はいくら貯めておけばいい?

まず、年間手取り収入から生活費や住宅関連費、その他支出を引き、その年に教育費へ回せる額を確認します。

大学期については、自宅通学なら基本生活費側で負担する本人分の支出、自宅外進学なら家庭側で減る生活費を確認したうえで必要教育費との差を出します。

各年の不足額を合計し、そこからすでに教育費として確保している資金を引けば、今から追加で準備する金額を計算できます。

高校までの教育費も事前に貯めるべき?

家計から毎年無理なく払える部分まで、すべて事前に貯める必要があるとは限りません。

ただし、受験や私立進学によって特定の年だけ不足する場合は、その不足分を準備対象にします。高校の支援制度については、統計平均から現在の支援額を単純に引かず、進学時の学校費用とその時点の制度から実負担額を確認してください。

2026年4月からの高等学校等就学支援金は所得制限が撤廃され、私立高校全日制の支給上限額は年45万7,200円となっています。

この就学支援金は授業料を支援する制度であり、授業料が支給上限額を超える部分や、入学金、教材費、通学費などの授業料以外の費用まで一律になくなるわけではありません。

「無償化」という言葉を見ると、「高校ではほとんどお金がかからないのでは」と感じるかもしれません。しかし、家計で必要なのは制度の呼び方ではなく、進学する学校について実際に家庭からいくら出ていくのかを確認することです。

住宅ローンの繰上返済と教育資金はどちらを優先する?

一律には決められません。

繰上返済による利息軽減だけでなく、その結果として大学入学時の現金や生活防衛資金が不足しないかを確認します。

教育費ピークが近い場合は、手元資金を含めたキャッシュフローで比較するとよいでしょう。

子ども2人の場合はどう計算する?

一人ずつ進学年表を作り、同じ年へ重ねます。

3学年差で二人とも通常の4年制大学へ進むモデルなら、上の子が大学4年生、下の子が大学1年生となる1学年度に大学費用が重なります。

その年は下の子の入学金等も考慮し、それぞれが自宅通学なのか自宅外進学なのかによる家計変化も反映して、ピーク年の不足額を計算してください。

なお、子どもが複数いる場合でも、高等教育の修学支援新制度の多子世帯に該当するかは、単純な子どもの人数だけでは判断できません。申告した「子ども」に該当する人数や住民税情報上の扶養親族数、学生本人が扶養されているかなどによって判定されます。

私立大学で下宿する場合は何を見る?

JASSOの令和6年度調査では、私立大学の学生生活費は自宅で年間約190.5万円、アパート等で約268.9万円です。

ただし、これは親負担額ではなく、入学金等も含まれていません。

自宅外進学ではJASSOの学生生活費に食費や住居・光熱費が含まれる一方、子どもが家を出ることで家庭側の食費や光熱費などが減る可能性があります。

本記事の115万円は、その減少を反映せず、学生生活費も家計が全額負担する厳しめのモデルです。実際には、家庭側で減る支出、学生本人の収入、奨学金などを反映して不足額を計算してください。

シミュレーションはどのくらいの頻度で見直す?

年1回程度を目安にし、志望校や自宅外通学が具体化したとき、収入や住宅費が大きく変わったときにはその都度更新します。

現在の統計も、手取り680万円や基本生活費330万円というモデル条件も将来の予測値ではありません。進学が近づくほど平均額や仮定を実際の家計へ置き換えることが重要です。

公的支援についても、前年に確認した条件がそのまま使えるとは限りません。特に多子世帯支援は、申込時期や住民税情報、扶養状況に加え、制度改正によって扱いが変わることがあります。進学年度が近づいたら、最新情報で改めて確認してください。

まとめ 教育費と住宅ローンはピーク年と不足額で判断する

教育費と住宅ローンを両立できるか考えるとき、教育費の総額と住宅ローン残高を並べても答えは出ません。

最初に見るのは、子どもの進学年です。

その年へ教育費と住宅関連費を重ね、まず家計から教育費へいくら回せるのかを計算します。

家計から教育費へ回せる額=年間手取り収入-基本生活費-住宅関連費-その他支出

その金額と教育費との差が各年の不足額になります。

ただし、本記事の37万円や115万円は、現在の基本生活費330万円を大学期にも据え置き、JASSOの学生生活費を家計が全額負担するという厳しめのモデルです。

自宅通学者については、JASSOの食費は外食分で、自宅での食事代や住居・光熱費は学生生活費に含まれません。基本生活費側にも学生本人分として計上している費用がある場合は、その費目を確認して調整してください。

自宅外進学では、JASSOの学生生活費に食費や住居・光熱費が含まれる一方、子どもが家を出ることで家庭側の食費や光熱費などが減る可能性があります。そのため、115万円をそのまま自分の不足額とせず、実際の家計で減る支出も反映して計算してください。

不足する年が複数あれば合計し、すでに確保している教育資金を差し引けば、今から追加で準備する金額まで求められます。

そして最後に、教育費だけではなく家計全体を確認します。教育費ピークを予定していた教育資金で乗り越えられるか、生活防衛資金や住宅修繕資金、老後資金まで恒常的に使わずに済むか、教育費が終わった後には家計収支が戻るかという三つの視点です。

子どもの進路をできるだけ応援したい気持ちと、自分たちの暮らしも守らなければならないという気持ちは、どちらか一方を消せばよいものではありません。

制度についても同じです。「高校無償化だから大丈夫」「子どもが3人いるから大学の支援を受けられる」と大きな言葉だけで判断すると、実際に支払う段階とのずれが生まれることがあります。

特に多子世帯支援は、単純なきょうだい人数だけではなく、申告する子どもの人数、住民税情報上の扶養状況、学生本人の扶養関係などから判定されます。制度改正によって、一部の学生世代のきょうだいの扱いが変わることもあります。

だからこそ、子どもがまだ小さい段階では、公的支援を「必ず受け取れるお金」として家計を成立させるのではなく、まず支援なしでも家計の山場を確認しておく。そのうえで進学が近づいたら、利用できる支援を最新条件で反映する方が、家計計画としては安定します。

最初から完璧な数字を出す必要はありません。

まず現在の統計と家計から、何年後に山場が来そうなのかを知る。その後、進路が具体的になるにつれて、平均額を実際の授業料へ変え、家族生活費の変化も反映する。公的支援についても、その時点の制度条件へ置き換えます。

そうして少しずつ数字を現実へ近づけていけば、「払えるか分からない」という不安は、「あと何年で何を確認し、いくら準備するか」という自分たちの判断へ変えていけるでしょう。

参考資料

文部科学省 令和5年度子供の学習費調査

日本学生支援機構 令和6年度学生生活調査

日本FP協会 便利ツールで家計をチェック

文部科学省 高校生等への修学支援

文部科学省 高等教育の修学支援新制度

日本学生支援機構 多子世帯支援について

日本学生支援機構 2026年度に大学等で奨学金を申込予定の方へ

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