売上が伸びず、粗利益まで落ちているのに、給与や家賃、仕入代金、借入金の返済日は変わらずやってきます。月次の数字を見るたびに「どこかを削らなければ資金が持たない」と焦り、大きな支出から手を付けたくなる経営者は少なくないでしょう。
しかし、コスト削減で本当に避けたいのは、十分な削減額を確保できなかったことではありません。会社が売上をつくり、品質を守り、人材を育てるために必要だった費用まで削り、短期的な支出減少と引き換えに事業そのものを弱くしてしまうことです。
この記事では、コスト削減でやってはいけない七つの失敗だけでなく、すべての費用を削減する、効率化する、維持・投資するへ分ける判断方法まで解説します。さらに、変更後にどの数字を確認すれば失敗へ早く気付けるのかまで整理するため、読み終えた段階で自社の支出を具体的に見直せる状態を目指します。
コスト削減は支出を減らせば成功ではない
業績が低迷すると、経営者の視線はどうしても会社から出ていくお金へ向かいます。月額30万円の広告費を止めれば年間360万円、月額10万円のシステムを解約すれば年間120万円というように、削減効果をすぐ金額へ置き換えられるためです。
預金残高が少しずつ減り、来月の支払いまで気になり始めると、半年後の売上より今月のキャッシュアウトを止めたくなるでしょう。「まず何か削らなければ」と感じるのは、資金繰りに責任を持つ経営者であれば自然な反応です。
それでも、経費が減ったことと、会社の収益力が改善したことは同じではありません。
たとえば年間360万円の広告費を削減した結果、その広告が生み出していた限界利益を600万円失えば、会社全体の利益は悪化します。反対に、年間120万円を支払っている業務システムでも、それによって年間300万円相当の作業負担や残業を抑えているなら、単純な固定費として切り捨てるべきではないでしょう。
中小企業庁の2020年版小規模企業白書では、コスト削減を通じた利益拡大には限界があり、継続的な利益拡大には売上高の増加へ向けた取り組みが必要であることが示されています。
つまり、コスト削減そのものが悪いわけではありません。利益が減っている会社で不要な支出を放置すれば、資金繰りはさらに苦しくなるため、費用構造の見直しは必要です。
問題になるのは、会社から出ていくお金をすべて同じ性質のコストとして扱ってしまうことです。
長期間使われていないサービスのように、なくしても事業へほとんど影響しない支出がある一方、新規顧客を獲得する広告、品質を維持する検査工程、生産性を高めるシステム、将来の中核人材を育てる教育など、今後の利益を支える支出も存在します。
資金繰りへの不安が強いほど、広告、教育、採用、システムなど比較的止めやすい費用へ目が向きやすくなります。しかし、それらを一律に止めた結果、新規顧客が減り、社員の負担が増え、品質まで落ちれば、売上がさらに減って再びコスト削減が必要になるという可能性があります。
この状態が続けば、会社は利益体質になるのではなく、売上と経営資源を一緒に縮める方向へ進んでしまうでしょう。
中小企業活性化協議会の収益力改善支援でも、単なる費用の切り捨てではなく、収益力改善アクションプランと簡易な収支・資金繰り計画を組み合わせて改善を進める枠組みが示されています。
したがって、コスト削減で見るべきなのはいくら支出を減らしたかではなく、売上や限界利益を守りながら固定費を効率よく回収できる構造へ変えられたかという点です。
会社を細くするために支出を減らすのではなく、利益につながらない場所から資金を引き上げ、利益を生み出す場所へ戻すことが、本来のコストマネジメントではないでしょうか。
コスト削減でやってはいけない7つのこと
コスト削減に失敗する企業を見ると、対象となる費用は違っていても、判断方法には共通点があります。
広告費なら広告費、人件費なら人件費という勘定科目だけを見て、その支出が利益を生み出すまでの過程で何を担っているのかを十分に確認せず削ってしまうことです。
ここからは、中小企業経営者が特に注意したい七つの判断を見ていきます。
広告費を一律に削減する
業績が悪化したとき、広告宣伝費は削減候補として目につきやすい費用です。家賃や正社員の給与などと比べて変更しやすく、予算を減らせば比較的早い段階でキャッシュアウトを抑えられるためでしょう。
経営者が広告費を見て「ここを半分にできれば資金繰りが少し楽になる」と感じること自体は不自然ではありません。
しかし、広告費について確認すべきなのは毎月の支払額ではなく、その広告からどれだけの売上や利益が生まれているかです。
広告費は一切削ってはいけないという意味ではありません。成果が乏しい広告なら停止や改善を検討する必要がある一方、十分な限界利益を生み出している広告まで一律に削減すれば、削減額以上の利益を失う可能性があります。
ROASだけで広告費を判断しない
広告運用ではROASが代表的な指標として使われますが、広告から生じた売上高だけでは会社へ残る利益を判断できません。
ある商品で月50万円の広告費から300万円の売上が発生しているとします。
商品の変動費が250万円なら、広告費を差し引く前の限界利益は50万円ですが、変動費が150万円なら限界利益は150万円です。同じ売上額やROASでも、会社への経済的な貢献度は大きく異なります。
そのため広告を評価するときは、ROASやCPAだけではなく、受注率、平均購入額、粗利益、限界利益、継続購入率などを自社の収益構造に合わせて確認する必要があります。
Google広告でも、コンバージョンやコンバージョン値を測定し、広告から生じたビジネス上の成果を踏まえて入札や予算を最適化する考え方が示されています。
広告費が高いか安いかではなく、その広告費を使った結果として会社へ何円の利益が残っているのかを見ることが重要です。
Google広告の学習期間を固定値で考えない
スマート自動入札を利用している場合には、予算や目標を変更した直後の数字だけで成果を判断しないことも大切です。
Google広告の現在の公式説明では、学習期間はコンバージョン数、コンバージョンまでに必要な時間、入札戦略などによって変化し、新しい目標へ調整されるまで最長3週間、または1~2回程度のコンバージョンサイクルが必要になる場合があるとされています。
したがって「変更後7日が経過すれば評価できる」といった固定期間をすべてのキャンペーンへ当てはめるのは適切ではありません。
購入まで数分で完結する商品と、問い合わせから契約まで数週間かかるサービスでは、変更の影響を評価できる時期が異なるからです。
また、Googleの公式資料では、目標CPAや目標ROASの目標値を変更しても、それまで蓄積された学習内容がすべてリセットされるわけではないと説明されています。ただし、新しい目標が実際の成果へ反映されるまでには一定の時間が必要になるため、短期間に何度も判断を変えると結果を読み取りにくくなります。
広告費を見直す際には、成果の低い検索語句、配信対象、キャンペーンなどを確認し、利益を生み出している広告までまとめて停止しないことが大切です。
削るべきなのは広告という活動そのものではなく、広告費の中に残っている利益につながりにくい支出でしょう。
人件費と教育費を短期利益だけで削る
人件費は多くの会社で支出額が大きいため、利益が減ると強い削減圧力がかかります。
細かな経費を何十項目も見直すより、人件費を数%改善したほうが財務への効果は大きく見えるため「ここへ手を付けなければ意味がない」と感じる経営者もいるでしょう。
それでも、人件費を減らすときには給与額の後ろにある仕事まで見なければなりません。
人を減らしても仕事まで消えるとは限らない
ある会社で、受注処理、顧客対応、検品、社内調整を担当する社員が退職し、その後の補充採用を行わなかったとします。
一人分の給与は減りますが、その人が担当していた仕事まで消えるわけではありません。
残った社員へ仕事が移れば残業が増え、顧客への返信が遅れたり、営業活動へ使える時間が減ったりする可能性があります。その結果、削減した人件費の一部が残業代として戻るだけでなく、売上や顧客満足まで悪化するかもしれません。
社員側の心情も無視できません。
採用が止まり、研修がなくなり、昇給まで抑えられた状態で人員削減が続けば「この会社はこの先も大丈夫なのだろうか」と不安になる人が出てきます。
そのとき、他社でも活躍できる技能を持つ中核人材から転職を選べば、会社が守りたかった技術、営業関係、顧客との信頼まで一緒に失う可能性があります。
だからといって、人件費は絶対に削減できないという意味ではありません。
重要なのは、人を減らす前に不要な仕事を減らせないか確認することです。
二重入力、不要な会議、過剰な承認、紙からシステムへの転記、部署間の確認待ちなどを改善すれば、社員数を変えなくても必要な労働時間を減らせる場合があります。
教育費は目的と成果を確認する
教育研修費も、短期的な利益だけを見ると削減しやすい費用です。
研修費は支払った月に費用となる一方、社員が身につけた技能によって生産性や売上が改善するまでには時間差があります。そのため「今は利益が苦しいのだから研修は全部止めよう」と判断したくなるのでしょう。
しかし、教育費だからすべて残す必要もありません。
毎年同じ研修を慣例として続けているものの、受講後に現場の行動が何も変わっていないのであれば、内容や対象者を見直す余地があります。
教育費を評価するときは、研修を実施したかではなく、どの能力を高め、受講後にどの業務成果へつなげたいのかを明確にすることが重要です。
給与などの変更では法的確認も必要になる
人件費削減が給与や労働条件の変更へ及ぶ場合には、法的な確認も欠かせません。
労働条件の変更は労使の合意が原則であり、就業規則によって労働者に不利益となる変更を行う場合にも、変更の必要性、内容の相当性、労働者が受ける不利益などを踏まえた合理性が問題になります。
したがって、給与や雇用条件へ踏み込む場合には、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家へ確認することが望ましいでしょう。
人件費を考えるときに見るべきなのは社員の名前と給与額ではなく、会社がどの仕事へ何時間を使い、その時間からどのような付加価値が生まれているかという構造です。
安さだけで仕入先と外注先を変える
原材料費や外注費が上昇すると、現在より安い取引先へ変更したくなります。
毎月500万円の仕入れを5%下げられれば月25万円、年間では300万円になるため、見積書を並べた瞬間には非常に魅力的な改善策に見えるでしょう。
しかし、仕入先や外注先の価値は単価だけでは決まりません。
品質、不良率、納期、最低発注量、検品時間、仕様変更への対応、緊急時の柔軟性、支払条件なども会社全体のコストへ影響します。
安い仕入先が総コストでも安いとは限らない
ある部品について、現在より5%安い仕入先が見つかったとします。
切り替えた後に不良率が上昇し、検品時間が増え、納期遅延による緊急輸送まで必要になれば、調達単価の削減効果を追加費用が上回る可能性があります。
反対に、単価は現在とほぼ変わらなくても、小ロット発注へ対応してくれることで在庫金額が減り、キャッシュフローを改善できる仕入先もあるでしょう。
そのため仕入先を変更する場合は、いきなり全量を切り替えるのではなく、一部品目や少量発注から品質、納期、不良率、検品時間などを確認すると安全です。
価格差ではなく、仕入れ後に発生する費用まで含めた総コストで比較する必要があります。
取適法の対象取引では一方的な値下げ要求に注意する
自社のコスト削減目標を、そのまま取引先へ押しつける方法にも注意が必要です。
2026年1月1日から、従来の下請法は改正され、中小受託取引適正化法、通称取適法が施行されています。
ただし、取適法はすべての企業間取引へ一律に適用される法律ではありません。
公正取引委員会の運用基準では、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託、特定運送委託などの対象取引について、資本金や従業員数など所定の要件を満たす取引が適用対象になります。
そのうえで、取適法の適用対象となる取引では、中小受託事業者が価格について協議を求めたにもかかわらず、委託事業者が協議へ応じない、必要な説明を行わないなどのまま一方的に代金を決定する行為が禁止されています。
したがって「自社も厳しいから来月から一律10%下げてほしい」と通知するだけで終わらせるような方法には注意が必要です。
もちろん、取適法が直接適用されない取引であれば、同法の禁止規定がそのまま適用されるという意味ではありません。それでも契約内容や独占禁止法など別のルールが関係する場合があり、長期的な取引関係を考えても、合理的な協議を行うことが重要でしょう。
公正取引委員会は過去に、KADOKAWAにおける原稿作成等の発注単価引き下げや、ビッグモーターにおけるコーティング加工の発注単価引き下げなどについて、当時の下請法に基づく勧告を行っています。
こうした事例からも、自社の利益改善を理由として、取引先へ一方的に負担を移せばよいわけではないことが分かります。
原価改善では取引先へ値下げを求めるだけでなく、自社の発注量、発注頻度、仕様、納期設定、手戻りなどに無駄がないかも確認する必要があります。
削るべきなのは取引先の利益ではなく、自社と取引先の間に残っている非効率ではないでしょうか。
システム費を利用目的を確認せず解約する
クラウドサービスや業務システムは毎月一定額が請求されるため、固定費削減では真っ先に一覧へ上がりやすい費用です。
法人カードの明細に月額数千円から数万円のサービスが並んでいれば「本当に全部必要なのか」と疑問に思うのも自然でしょう。
その疑問を持つこと自体は重要ですが、利用目的や代替業務を確認せず解約すると、システムが裏側で担っていた仕事まで見落とすことがあります。
システムを止めると人の仕事が戻る場合がある
ある会社で月額5万円のシステムを利用しており、その固定費を削るために解約したとします。
解約後、それまで自動化されていた入力や集計が手作業へ戻り、毎月50時間の作業が増えた場合、社員の時間単価や残業代によっては月5万円以上の人件費が発生する可能性があります。
さらに転記ミス、確認、修正、データ反映の遅れまで増えれば、帳簿に見える金額以上の負担が生じるでしょう。
システムは正常に動いているほど、その価値が見えにくくなります。通知が自動で届くことや、データが連携されることが当たり前になると、導入前にどれだけの作業時間を使っていたのか忘れてしまうからです。
休眠アカウントと重複契約から確認する
システム費で最初に確認したいのは、退職者のアカウント、長期間使われていないライセンス、必要以上の上位プラン、部門ごとに重複している類似サービスなどです。
こうした支出であれば、主要業務への影響を抑えながら削減できる可能性があります。
契約中のサービスを一覧化するときは、料金だけではなく、利用人数、利用目的、削減できている作業時間、取り扱っている重要データ、解約した場合の代替方法まで記録するとよいでしょう。
そのうえで完全解約、ライセンス削減、プラン変更、サービス統合、現状維持を比較します。
システム費の削減とはITを減らすことではなく、同じ業務成果をより少ない総コストで実現することです。
在庫を減らしすぎて欠品を起こす
資金繰りが苦しくなると、倉庫に積み上がった商品や材料が、動かせない現金のように見えてきます。
仕入れたときには売れると思っていた在庫が何か月も動かなければ「これを減らせば資金が少し楽になる」と考えるでしょう。
過剰在庫を減らすことには明確な意味があります。在庫には仕入資金が固定されるだけでなく、保管、棚卸し、廃棄、陳腐化などの負担が発生するからです。
しかし、在庫は少なければ少ないほどよいわけではありません。
欠品による売上損失は帳簿に見えにくい
在庫削減が難しい理由の一つは、削減した在庫金額は帳簿へ表れる一方、欠品によって失った注文は売上として記録されないことです。
ある顧客が100万円分の商品を必要としていたものの、自社に在庫がなく他社へ注文した場合、その100万円は自社の損益計算書へ現れません。
経営者には在庫が300万円減ったという成果だけが見え、欠品によって失った販売機会を把握できていないという状況も起こります。
さらに顧客から「必要なときに商品がない会社」と認識されれば、次回以降の注文まで競合へ移る可能性があります。
全商品を同じ割合で減らさない
在庫を適正化するときは、すべての商品を一律20%減らすような方法ではなく、販売量、粗利益、出荷頻度、調達リードタイム、欠品時の影響などを商品ごとに確認します。
ABC分析などを利用し、販売額や出荷量への寄与が大きい商品を重点管理する方法も有効です。
ただし、売上金額が小さいCランク商品だから必ず削ってよいとは限りません。
重要顧客の設備を維持するための補修部品など、販売金額は小さくても欠品時の影響が大きい商品もあります。
在庫削減後には、在庫金額だけではなく欠品件数、失注、緊急発注、特急配送なども確認してください。
目標にするべきなのは在庫最小化ではなく、キャッシュフローと供給能力を両立できる適正在庫です。
赤字だからという理由だけで商品を廃止する
商品別損益を見ると、営業利益が赤字になっている商品を廃止したくなることがあります。
経営者からすれば「この商品の赤字が毎月30万円なら、販売を止めれば30万円改善する」と考えたくなるでしょう。
しかし、管理会計では商品別営業利益だけで撤退を決めると、全社利益をかえって悪化させる場合があります。
共通固定費の配賦で赤字に見える場合がある
全部原価計算では、本社家賃、管理部門人件費、共通設備費などを一定の基準で各商品へ配賦することがあります。
その結果、商品別営業利益では赤字でも、その商品自体は売上から変動費を差し引いた限界利益を生み出している場合があります。
ある商品Aの月間売上が100万円で、材料費や販売手数料などの変動費が60万円なら、限界利益は40万円です。
そこへ本社経費など50万円を配賦すれば、商品別営業利益は10万円の赤字になります。
ところが商品Aを廃止しても、本社家賃や管理部門の給与がそのまま残るのであれば、消えるのは赤字10万円ではありません。
商品Aが生み出していた限界利益40万円がなくなり、残った固定費をほかの商品から回収しなければならなくなります。
このため、赤字商品を廃止したにもかかわらず全社利益が悪化するということが起こり得ます。
撤退すると本当に消える費用を確認する
もちろん、赤字商品をすべて残すべきという意味ではありません。
限界利益が継続してマイナスなら、販売するほど固定費を回収する前の段階で損失が生じるため、価格や変動費を早急に見直す必要があります。
限界利益がプラスでも、その商品専用の設備リース、専任人員、倉庫、広告などがあり、撤退によって個別固定費を確実に削減できるなら、廃止が合理的になる可能性があります。
さらに、その商品をなくして空いた設備や人員を、より高い限界利益を生む商品へ振り向けられるかも重要です。
反対に、その商品が別の商品を買ってもらう入口になっていたり、重要顧客との取引維持に必要だったりする場合は、単品の損益だけでは判断できません。
撤退前には、値上げ、仕様変更、最低発注数量の設定、原材料変更、外注化、販売チャネル変更などで採算を改善できないかも検討します。
判断するべきなのは現在表示されている赤字額ではなく、その商品をなくした後に会社全体の利益がどう変わるかです。
小さな経費だけを削り大きな原価を放置する
業績が悪化すると、コピー用紙、文房具、電気、出張、飲み物など、社員にも分かりやすい経費から節約が始まることがあります。
経営者にとっても今日から始められるため、何もしないより対策しているという安心感を得やすいでしょう。
しかし、小口経費ばかりを厳しく管理し、損益計算書の大部分を占める材料費、商品仕入高、外注費、物流費などを放置すれば、利益への影響は限定的です。
削減率だけではなく費用総額を見る
月500円の支出を20項目削減しても月1万円ですが、毎月1,000万円発生している材料費を1%改善できれば月10万円になります。
年間では前者が12万円、後者は120万円となるため、同じコスト削減でも財務への影響は大きく異なります。
だからこそ、コスト削減では削減率だけを見るのではなく、年間でいくら支払っている費用なのかという母数を確認する必要があります。
小さな経費は取り組みやすいからこそ注意する
小口経費の節約が先行しやすいのは、実行が簡単だからです。
材料歩留まりを改善するには製造工程を調べる必要があり、物流費を改善するなら配送方法や倉庫運営まで確認しなければなりません。
外注費を見直す場合には仕様や工数を整理し、場合によっては取引先との協議も必要になります。
それに対して、備品購入を申請制へ変更するだけなら今日から始められます。
この違いによって、実施しやすい節約ばかりが増え、本来向き合うべき大きな原価が後回しになることがあります。
さらに、数百円の購入を減らすために社員が申請書を作り、上司が確認し、経理担当者が処理するのであれば、削減額以上の人件費を使っている可能性さえあるでしょう。
小さな経費を無視する必要はありませんが、まず年間費用を金額順へ並べ、上位の費目から1%でも改善できないかを確認することが重要です。
削るべきコストを決める3つの判断軸
七つの失敗例を見たところで「では、自社ではどの費用を削ればよいのか」という疑問が残るでしょう。
その判断を金額の大小だけで行わないために、売上・粗利益への影響、品質への影響、将来利益への影響という三つの軸から確認します。
売上と粗利益への影響
最初に確認するのは、その費用を減らしたとき売上や粗利益がどのように変化するかです。
広告、営業、人員、在庫、販売支援システムなどは、売上と比較的近い位置にある支出でしょう。
ただし、売上に関係していそうだから残すという感覚的な判断だけでは不十分です。
広告なら受注件数や限界利益、営業支援システムなら商談数や削減作業時間、在庫なら欠品による失注などを確認します。
月10万円を削減した結果、限界利益が30万円減るなら、その施策は支出を減らしただけで利益改善にはなっていません。
反対に、毎月10万円を使っているにもかかわらず売上や業務への効果が確認できず、なくしても事業がほとんど変わらないのであれば、削減候補としての優先度は高くなります。
品質と顧客満足への影響
次に確認したいのは、商品やサービスの品質への影響です。
材料変更、外注先変更、検査工程削減、顧客サポート縮小などでは、コスト削減の効果が先に数字へ表れ、品質低下の影響が少し遅れて現れることがあります。
最初の一か月は原価率が改善していても、その後に不良、返品、再加工、クレーム、顧客離反が増えれば、期待していた利益は残りません。
品質に関係する費用を変更した場合には、不良率、返品率、再作業時間、クレーム件数、納期遵守率なども同時に確認します。
削減後に発生した損失まで含めて評価して初めて、本当のコスト削減効果が分かるでしょう。
将来利益と競争力への影響
最も判断が難しいのが、将来利益への影響です。
採用、教育、研究開発、ブランド構築、デジタル化、セキュリティ、新規顧客開拓などは、支払った月に同額の利益が戻ってくる費用ではありません。
そのため業績が悪いと「成果が見えないから、いったん全部止めよう」と考えやすくなります。
しかし、これらを一律に停止した結果、半年後や一年後に人材が育っていない、新規顧客が増えない、新商品がない、業務改善も進んでいない状態になれば、短期的な削減効果以上の損失を受ける可能性があります。
一方で、将来への投資という名前だけで成果の乏しい支出を残すことも適切ではありません。
目的と期待成果を定め、一定期間ごとに効果を確認しながら投資先や方法を見直す必要があります。
将来投資という言葉で浪費を守らず、今月の利益を理由に未来の収益源まで削らないことが、三つ目の判断軸では重要です。
コストを削減と効率化と維持投資に3分類する
三つの判断軸から影響を確認したら、費用を①削減する ②効率化する ③維持・投資するへ分類します。
この記事で最も重要なのは、この分類です。
削るか残すかという二択にしない理由は、必要な費用ではあるものの、現在の使い方や契約方法には改善余地があるものが多いためです。
| 分類 | 該当しやすい費用 | 売上への影響 | 品質への影響 | 将来利益への影響 | 主な対応 |
|---|---|---|---|---|---|
| ①削減する | 休眠SaaS 不要回線 重複契約 利用実態のない会費 慣例だけの支出 | 小さい | 小さい | 小さい | 停止 解約 |
| ②効率化する | 材料費 物流費 外注費 在庫 システム 業務工程 | 確認が必要 | 確認が必要 | 改善余地あり | 数量 工程 契約 運用の改善 |
| ③維持・投資する | 利益を生む広告 中核人材 品質管理 セキュリティ DX基盤 | 大きい | 大きい場合あり | 大きい | 維持 最適化 再配分 |
①へ分類するのは、なくしても売上、品質、将来利益へほとんど影響しない費用です。
長期間使用していないサービスや重複契約などであれば、比較的早い段階でキャッシュアウトを止められます。
②には、費用そのものは必要でも、同じ成果をより少ない投入量で実現できる可能性があるものを入れます。
材料費なら購入単価だけでなく歩留まりを改善し、物流費なら配送単価だけでなく配送回数を減らし、システム費なら全面解約ではなくライセンス数やプランを適正化する方法があります。
③は、売上、品質、将来利益を支えている支出です。
ただし、ここを聖域にするのではなく、成果を測りながら投資先や使い方を最適化します。
基本的には、事業への影響が小さい①から不要なキャッシュアウトを止め、次に②で業務や調達の効率を高め、そこで生まれた資金を③の中でも特に利益貢献が大きい領域へ再配分するとよいでしょう。
この状態をつくれれば、コスト削減は単なる節約ではなく、経営資源の配分を改善する活動へ変わります。
金額が大きい費用から削るとは限らない
ある会社で、月額10万円の業務管理システムと月額5万円の別サービスを契約しているとします。
年間120万円になる業務管理システムは目につきやすく、利益が落ちている状況では「これを解約できれば大きい」と感じるでしょう。
ところが利用実態を確認すると、そのシステムによって毎月100時間ほどの入力、集計、連絡作業が自動化されており、解約後には月20万円相当の人件費や残業が戻るとします。
この場合、年間120万円を削るために、それ以上の業務コストを生み出す可能性があるため、①削減するではなく②効率化するか③維持・投資するへ分類するほうが合理的です。
一方、月額5万円の別サービスがほとんど利用されておらず、業務管理システムで同じ機能を代替できるなら、こちらは①削減する候補になります。
支払金額だけを見れば月10万円のサービスから削りたくなりますが、利益への影響を考えれば月5万円の支出を止めるほうが適切だと分かります。
大きな支出が大きな無駄とは限らず、少額だから残してよいとも限りません。
費用を三分類することで、削減額ではなく経済合理性を基準に判断しやすくなります。
材料費と外注費と物流費など費目別チェックリスト
三分類の考え方が分かっても、自社のどこから確認すればよいのか迷うことはあるでしょう。
実務では、まず損益計算書で年間金額の大きい費目を確認し、その費用がなぜ発生しているのかまで遡る方法が有効です。
| 費目 | 主な確認項目 | 期待できる効果 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 材料費 仕入高 | 不良率 歩留まり 発注量 発注頻度 規格統一 廃棄 相見積もり | 原価率改善 材料ロス削減 在庫適正化 | 安さだけで品質を下げない |
| 外注費 業務委託費 | 内製外製比較 仕様 工数 追加作業 発注方法 | 手戻り削減 発注精度向上 | 取引条件と適用法令を確認 |
| 物流費 保管費 | 積載率 小口配送 緊急便 梱包仕様 倉庫利用状況 | 配送回数削減 保管費圧縮 | 納期や顧客利便性を維持 |
| IT システム費 | 休眠ID 重複サービス 契約プラン 利用目的 | 固定費削減 システム統合 | 解約後に増える人件費も算定 |
| 人件費 | 残業 二重入力 会議 承認 属人化 待ち時間 | 生産性改善 残業抑制 | 労働条件変更時は法的確認 |
| 広告費 | CPA ROAS 受注率 粗利益 限界利益 継続率 | 顧客獲得効率改善 | 成果施策まで一律に減らさない |
| 在庫 | 回転日数 滞留 欠品 発注点 調達期間 | キャッシュ改善 保管費削減 | 売れ筋や重要品目の欠品防止 |
| 地代家賃 | 使用面積 遊休スペース 契約条件 移転費 | 固定費削減 | 原状回復費や移転費も比較 |
| 水道光熱費 | 契約容量 稼働時間 設備効率 | 基本料金 使用量削減 | 職場環境や品質への影響を確認 |
| 金融費用 | 金利 借入条件 返済期間 資金繰り | 利息負担改善 | 借換費用や保証条件も確認 |
材料費は単価より前に使用量を見る
材料費を下げようとすると、すぐに仕入先との値下げ交渉へ進みたくなるかもしれません。
しかし、製造工程で材料の5%を廃棄しているなら、購入価格を1%下げるより歩留まりを改善したほうが利益への影響は大きくなる可能性があります。
類似部材を複数の型番で購入しているのであれば、規格を統一して発注量をまとめる方法も考えられるでしょう。
材料費を見るときには購入価格だけではなく、使用量、廃棄、不良、発注方法まで確認することが重要です。
外注費は仕様と手戻りを確認する
外注先から追加請求が頻繁に発生している場合、外注単価が高いのではなく、自社の発注仕様が曖昧になっている可能性があります。
依頼後に内容を変更して何度も修正を求めれば、その作業時間は最終的に外注費として返ってきます。
要件、完成基準、納期、修正範囲などを発注前に整理するだけでも、単価を一方的に引き下げず総費用を改善できる場合があります。
物流費は配送が発生する原因まで遡る
物流費についても、運送会社の料金表だけを見るのでは不十分です。
小口注文を一日に何度も出荷している、欠品によって緊急便が増えている、梱包サイズが必要以上に大きいなど、自社側の運用が費用を増やしている場合があります。
単価を下げる前に、なぜその配送が発生しているのかを調べることで、品質や取引関係を壊さず改善できる可能性があります。
IT費と人件費は代替コストまで見る
IT費と人件費は互いに影響しやすいため、片方だけを切り離して見ないことが重要です。
システム費を削った結果、手作業が増えて人件費が上がれば総コストは改善しません。反対に、定型作業を自動化するためにシステム費が少し増えても、残業や入力ミスを大きく減らせるなら会社全体では改善している可能性があります。
費目別の削減額ではなく、変更によって会社全体の支出と利益がどう変わるかを確認してください。
コスト削減は小さく実行し30日60日90日を目安に検証する
どれだけ分析しても、実際に支出を変更するときには不安が残るでしょう。
広告を減らして売上が落ちたら困る、仕入先を変えて不良が増えたらどうしよう、システムを整理して現場が回らなくなったら戻せるだろうかと考えるのは、経営者として自然な反応です。
そこで、事業への影響を完全に予測できない費用ほど、一度に全面変更せず、影響を限定できる範囲から実行することが重要になります。
ここで示す30日、60日、90日は、すべての会社へ当てはまる外部基準や標準ルールではありません。削減直後、少し時間が経過した段階、中期的な影響が見え始める段階という三つの確認時点を設けるための実務上の目安として考えてください。
広告ならコンバージョンサイクル、在庫なら調達リードタイム、顧客契約なら更新周期というように、実際の確認時期は自社の事業特性に合わせて前後させる必要があります。
影響を限定できる範囲から変更する
広告費なら成果の低い一部キャンペーンから調整し、仕入先なら一部品目で品質と納期を確かめます。在庫なら全商品を同じ割合で減らさず、長期間動いていない商品から発注方法を変えるほうが安全でしょう。
システム費についても、いきなり解約せず休眠ライセンスを削り、それでも費用対効果が低ければプラン変更やサービス統合へ進む方法があります。
ある会社で広告費を月100万円から80万円へ調整し、自社のコンバージョンサイクルを踏まえた確認期間を設けても限界利益がほとんど変わらなかったとします。
この場合には、削減した20万円の中に利益へ寄与していない支出が含まれていた可能性があります。
反対に、20万円を減らした結果として限界利益が月50万円低下したのであれば、その広告費が利益創出に貢献していたと考えられるでしょう。
重要なのは、最初から絶対に失敗しない削減策を見つけることではありません。
予想が外れても損失を限定でき、数字を確認して戻せる範囲から実行することで、感覚だけに頼ったコスト削減を検証可能な経営判断へ変えられます。
削減額だけではなく副作用を測る
コスト削減の成否は、支払額が減っただけでは判断できません。
年間500万円の販管費を削減できても、その影響によって限界利益が700万円減っているのであれば、会社全体では悪化しています。
そこで、財務指標だけでなく品質、業務、人材、顧客の変化も同時に確認します。
| 確認領域 | 主な指標 | 確認する目的 | 注意したい変化 |
|---|---|---|---|
| 収益性 | 売上高 限界利益 限界利益率 営業利益 | 削減が最終的な利益改善につながったか確認 | 削減額以上に売上や限界利益が減る |
| 固定費構造 | 損益分岐点 キャッシュフロー | 固定費削減で財務体質が改善したか確認 | 固定費は減ったが売上も大幅に減少 |
| 品質 | 不良率 歩留まり率 返品率 クレーム件数 | 材料や外注変更の副作用を確認 | 再加工や返品が増える |
| 供給 | 欠品率 納期遵守率 緊急配送件数 | 在庫や物流削減の影響を確認 | 欠品や特急配送が増える |
| 組織 | 残業時間 離職率 有給取得状況 | 人員やシステム削減のしわ寄せを確認 | 中核人材の離職や残業増加 |
| 顧客 | 解約率 リピート率 契約更新率 クレーム | 顧客価値が損なわれていないか確認 | 継続取引や再購入が減る |
限界利益は、基本的に次のように考えます。
限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益率を確認する場合には、次の計算になります。
限界利益率 = 限界利益 ÷ 売上高 × 100
材料費を改善し、販売数量を維持したまま限界利益率が上昇しているなら、原価改善が利益へつながっている可能性があります。
しかし、安い原材料へ変更したことで品質が落ち、販売数量が減って限界利益額そのものが小さくなっているなら、変動費だけを減らせたとしても成功とは評価できません。
30日程度を目安に直接的な変化を確認する
実施から30日程度を一つの目安として、予定していた削減額が実際に発生しているかを確かめるとともに、売上、限界利益、不良、欠品、残業などへ急激な変化が出ていないかを確認します。
広告費を減らしたなら問い合わせや受注、仕入先を変えたなら初期不良、在庫を減らしたなら欠品というように、変更した費用と距離の近い指標から見ると異常へ気付きやすくなります。
ただし、契約更新まで半年かかるサービスや、コンバージョンまで数週間を要する広告では、この時点で長期的な成果を断定するべきではありません。
最初の確認では、想定外の大きな悪化が起きていないかを早めに察知することを重視します。
60日程度を目安に負担の移転を確認する
60日程度を一つの確認時点として、目に見える費用が減った代わりに、別の部署や社員へ負担が移っていないかまで調べます。
システム費は減ったものの手入力が増え、外注費を削った代わりに社内残業が増え、在庫削減によって緊急配送が多発しているなら、支出の発生場所を変えただけという可能性があります。
この時期になると、削減直後には分からなかった手戻り、現場の疲労、追加管理なども見え始めるでしょう。
単一の勘定科目だけを見ず、会社全体の総コストがどう変化したのかを確認する必要があります。
90日程度を目安に利益と事業基盤を評価する
90日程度を一つの区切りとして、営業利益、限界利益、キャッシュフロー、品質、顧客、社員への影響をまとめて確認します。
削減効果が維持され、売上や品質にも大きな問題がなければ、その方法を標準化して対象範囲を広げる判断ができます。
反対に、売上や品質への悪影響が削減効果を上回っているなら、変更前へ戻すか別の改善策へ切り替える必要があります。
ただし、ここでも90日を過ぎれば必ず結論を出せるという意味ではありません。
大型設備、長期契約、人材育成、研究開発など、効果が表れるまで長い時間が必要な費用もあります。自社の事業サイクルを無視して期限だけを当てはめれば、将来利益を生む投資を早すぎる段階で失敗と判断してしまう可能性があります。
30日、60日、90日という数字は、経営者が削減施策を実行したまま放置しないための確認タイミングとして利用するものです。
コスト削減の実務は、影響を確認して三分類し、小さく変更したうえで、自社に合った期間を置いて財務と副作用を測定するという流れに集約できます。
この一本道を守ることで、判断方法を増やしすぎず、必要な具体性も残したまま改善を進められるでしょう。
コスト削減に関するよくある質問
- コスト削減は何から始めればよいですか
-
最初に行いたいのは、直近12か月程度の支出を一覧化し、会社から何にいくら支払われているのかを把握することです。
損益計算書だけでは実態が分かりにくい場合には、総勘定元帳、銀行口座の引き落とし、法人カード、SaaS契約、外注契約なども確認します。
そのうえで年間金額の大きい順に並べ、売上・粗利益、品質、将来利益への影響を確認しながら、①削減する、②効率化する、③維持・投資するへ仮分類すると整理しやすくなります。
判断できない費用を無理に削る必要はありません。
広告なら受注粗利、システムなら削減工数、物流なら配送件数や緊急便、外注なら内製した場合の工数というように、何を調べれば判断できるのかを明確にしてから決めましょう。
コスト削減の最初の仕事は支出を止めることではなく、支出の意味を見える状態にすることです。
- 最初に削減しやすい固定費は何ですか
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比較的見直しやすいのは、なくしても売上や主要業務へ与える影響が小さい固定費です。
休眠SaaSアカウント、使用していない通信回線、重複サービス、利用実態のない会費、必要以上の契約プランなどは候補になりやすいでしょう。
ただし、固定費だから安全に削れるわけではありません。
家賃、人件費、基幹システムなどは金額が大きい一方、変更による事業への影響も大きくなる可能性があります。
削減額だけでなく、解約費用、移転費、代替業務、人材への影響、売上への影響まで比較して判断する必要があります。
- 広告費は削減しても大丈夫ですか
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広告費の削減自体は可能ですが、すべてのキャンペーンを同じ割合で減らす方法は避けたほうがよいでしょう。
CPA、ROAS、受注率、粗利益、限界利益などを確認し、利益への寄与が低い部分から改善します。
Google広告などでスマート自動入札を利用している場合には、変更後に必要となる学習や調整の時間がコンバージョンサイクルなどによって異なるため、固定日数だけで評価しないことも重要です。
広告費の大きさではなく、その広告によって最終的にどれだけの利益が残っているのかを判断基準にしてください。
- 人件費を削減する前に確認すべきことは何ですか
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人件費を見直す場合には、最初に人員ではなく業務を確認します。
二重入力、不要な会議、過剰な承認、確認待ち、紙からシステムへの転記などを改善できれば、社員数を変えなくても必要労働時間を減らせる可能性があります。
それでも給与や労働条件を変更する必要がある場合には、経営上の影響だけでなく法令上の要件を確認する必要があります。
人件費そのものを小さくするより、同じ人数と労働時間から生み出せる付加価値を高められないかを先に考えるほうが、長期的な利益改善につながりやすいでしょう。
- 赤字商品はすぐ廃止すべきですか
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商品別損益が赤字という理由だけで、直ちに廃止する必要はありません。
最初に限界利益を確認し、その商品が共通固定費の回収へどれだけ貢献しているかを見ます。
限界利益がプラスの場合には、商品別営業利益が赤字でも、廃止によって全社利益が悪化する可能性があります。
そのうえで、その商品をなくすことで専用設備、専任人員、倉庫、広告などの個別固定費が実際にどれだけ消えるのかを確認し、値上げや仕様変更などによる改善余地も検討してから撤退を判断します。
見るべきなのは廃止前の赤字ではなく、廃止後に会社全体の利益がどう変わるかです。
- コスト削減の効果はどの数字で確認しますか
-
財務面では、売上高、限界利益額、限界利益率、営業利益、損益分岐点、キャッシュフローなどが中心になります。
ただし、財務数値だけでは削減による副作用を見逃す可能性があります。
材料や仕入先を変更したなら不良率や歩留まり率、在庫を減らしたなら欠品率や納期遵守率、人員やシステムを見直したなら残業時間や離職率、顧客対応を変更したなら解約率やリピート率まで確認してください。
最終的に見るべきなのは、経費が何円減ったかではなく、利益と事業基盤を守りながら支出を減らせたかという点です。
コスト削減でやってはいけないことのまとめ
コスト削減で最も避けたいのは、支出額の大きさだけを基準に、会社の売上や品質を支えている費用まで削ってしまうことです。
広告費、人件費、材料費、外注費、物流費、システム費、在庫などにはそれぞれ改善余地がありますが、同じ費目の中にも、なくしてよい無駄、使い方を変えるべき支出、将来利益のために残すべき投資が混在しています。
そこで、まず売上・粗利益、品質、将来利益への影響を確認し、費用を①削減する ②効率化する ③維持・投資するへ分けてください。
そのうえで、影響を予測しきれない費用は一気に変更せず、小さく実行して自社の事業サイクルに合った期間で結果を確認します。30日、60日、90日という区切りも、固定的な評価ルールではなく、施策を放置せず段階的に振り返るための実務上の目安として使うことが大切です。
削減額だけでなく限界利益、品質、残業、欠品、顧客動向まで見ることで、支出を減らした代わりに別の損失を生み出していないか判断できます。
業績が苦しいときほど、経営者は「早く削らなければ」と焦るものです。しかし、そこで必要な費用まで切り落とせば、少し先の売上や利益を自ら失うことになりかねません。
利益につながらない支出を取り除き、効率化できる費用は使い方を変え、競争力を支える投資には必要な資金を残す。この判断ができれば、コスト削減は単なる防御策ではなく、会社の収益力を立て直すための経営手段になるでしょう。
参考資料
中小企業庁 2020年版小規模企業白書
コスト削減による利益拡大の限界と、継続的な利益拡大に向けた売上高増加の重要性を確認できます。
中小企業庁 2020年版小規模企業白書を確認する
中小企業庁 中小企業活性化協議会
収益力改善アクションプランと収支・資金繰り計画を組み合わせた経営改善支援の考え方を確認できます。
中小企業活性化協議会を確認する
公正取引委員会 取適法
2026年1月1日に施行された取適法の概要や制度変更を確認できます。
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公正取引委員会 取適法運用基準
取適法の対象取引や適用要件、一方的な代金決定に関する考え方を確認できます。
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公正取引委員会 KADOKAWA等に対する勧告
記事作成や写真撮影業務の発注単価引き下げについて、旧下請法上の買いたたきとして勧告された事例を確認できます。
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公正取引委員会 ビッグモーター等に対する勧告
コーティング加工等の発注単価引き下げを含む、旧下請法上の勧告事例を確認できます。
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スマート自動入札の学習期間が、コンバージョン数やコンバージョンサイクルなどによって変化することを確認できます。
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目標CPAや目標ROASの変更と既存の学習内容の関係、変更後のパフォーマンス評価について確認できます。
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厚生労働省 労働契約の基本ルール
人件費見直しに関連する労働条件変更の基本的な考え方を確認できます。
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