住宅ローンの審査で希望していた金額を借りられそうだとわかれば、ひとまず安心するでしょう。ところが物件が決まり、契約が現実味を帯びてくると、「審査には通るとしても、この返済を35年続けながら教育費や老後資金まで準備できるのだろうか」と、別の不安がじわじわと大きくなることがあります。
住宅ローンで本当に知りたいのは、金融機関がいくらまで貸してくれるかだけではありません。生活費や将来の積立を維持しながら返済し、予定外の出来事にも対応できる余白を残せる金額こそ、自分たちにとって考えたい「返せる額」です。
この記事では、まず家計から毎月の返済額を考え、その金額から住宅ローンの借入額を逆算します。そのうえで3,000万円・3,500万円・4,000万円の違い、金利条件、返済期間、頭金、教育費、住宅維持費、収入減まで確認し、住宅購入後の暮らしまで含めて住宅予算を判断する方法を整理します。
住宅ローンの借りられる額と返せる額は違う
住宅を探していると、「この年収ならもう少し借りられます」と案内されることがあります。予算を500万円増やせば駅から近くなり、希望していた間取りまで選べるとなれば、「長く住む家なのだから」と気持ちが動くのも自然でしょう。
特に気に入った物件を見つけたあとでは、判断の順番そのものが変わりやすくなります。本来は「決めた予算の中でよい家を探す」はずだったのに、いつの間にか「この家を買うためには、どこまで予算を上げられるか」と考え始めることがあります。
さらに住宅ローンの審査にも通りそうだとわかれば、借入可能額が自分たちにとって妥当な住宅予算のように感じられるかもしれません。
しかし、金融機関が判断する借入可能額と、住宅購入後の生活を維持しながら返済できる金額は別です。
【フラット35】では、住宅ローンだけでなく自動車ローンや教育ローンなどを含む年間返済額について、年収400万円未満では総返済負担率30%以下、年収400万円以上では35%以下という申込基準があります。2026年8月13日時点でも、公式の利用条件でこの基準を確認できます。
ただし、この30%や35%は融資を利用するための申込基準です。その割合まで返済しても、教育費や老後資金を準備しながら生活に余裕を残せるという意味ではありません。
住宅ローンについて調べていると、返済負担率や年収倍率を使った目安が紹介されることもあります。こうした数字は検討の入口にはなりますが、すべての家庭に共通する安全基準とは言えないでしょう。
たとえば同じ年収600万円でも、子どもがいない家庭と数年後に大学進学を迎える子どもが2人いる家庭では、住宅へ使える金額が違います。車が何台必要なのか、共働きをいつまで続ける予定なのか、親への援助があるのかによっても毎月の支出は変わります。
だからこそ、住宅ローンでは年収だけから返せる額を決めるのではなく、自分たちの家計へ戻して考える必要があります。
銀行はいくら貸してくれるのかではなく、この家を買ったあとも自分たちらしい暮らしを続けられるのか。
この問いへ戻ることが、「借りられる額」と「返せる額」を分けて考える出発点です。
家計から考える毎月返済上限を計算する
住宅ローンはいくらまでなら無理なく返せるのかを考えるとき、最初から3,000万円や4,000万円といった借入額を決める必要はありません。
まず毎月の生活で必要なお金を確保し、そのうえで将来の積立と住宅維持費を取り分けます。さらに、自分たちが毎月の収支に残しておきたい家計余力まで差し引けば、「この家計条件なら住宅ローンへ月いくら回せそうか」が見えてきます。
考え方は次のとおりです。
家計から考える毎月返済上限
= 手取り収入 − 生活費 − 将来の積立 − 住宅維持費 − 最低限残したい家計余力
ここでいう「毎月返済上限」は、公的な安全基準や金融機関が定める限度額ではありません。自分たちが置いた生活費や積立額、家計余力を前提として算出する、家計上の仮の上限です。
前提を変えれば金額も変わるため、一度計算して終わりではなく、住宅購入後の生活を考えるための基準として使います。
また、ここでいう家計余力は毎月の収支に残す余白です。病気や休職、大きな臨時支出などに備えて保有する預貯金などの手元資金とは分けて考えます。
モデル世帯で毎月返済上限を出す
たとえば手取り収入が月50万円の家庭を考えます。
生活費は28万円、教育資金への積立は3万円、老後などへの積立は4万円とします。さらに固定資産税や保険の月割り額、将来の住宅修繕への積立を合わせて3万円確保すると、ここまでで38万円です。
手取り50万円から38万円を差し引くと、残るのは12万円になります。
ただし、この12万円をすべて住宅ローンへ使えば、普段より支出が増えた月に家計を調整する余地がほとんど残りません。
そこで、このモデル世帯では「毎月3万円程度は家計余力として残しておきたい」と仮定します。
すると、
50万円 − 28万円 − 3万円 − 4万円 − 3万円 − 3万円 = 9万円
となり、この家計条件では住宅ローンの毎月返済額を9万円前後に抑えるという基準ができます。
ここで置いた家計余力3万円は、「毎月3万円残せば安心」という一般的な基準ではありません。
十分な金融資産を持っている家庭と、住宅購入時に預貯金の多くを使う家庭では、毎月どの程度の余白を確保したいかも違います。毎月の収入が安定しているか、ボーナスへの依存度が高いか、近い将来に大きな支出が予定されているかによっても判断は変わるでしょう。
実のところ重要なのは3万円という数字そのものではなく、自分たちは住宅ローンを払ったあとに、毎月いくら残しておきたいのかを一度数字にすることです。
毎月返済上限から住宅ローン借入額を逆算する
家計から「住宅ローンは月9万円前後に抑えたい」と見えてきたら、次にその返済額がどの程度の借入額に対応するのかを確認します。
住宅金融支援機構には、毎月の返済額から借入可能金額を計算できるシミュレーターがあります。
ここでは比較のため、年1.0%、35年返済、元利均等返済、ボーナス返済なしという単純な条件を置きます。
| 毎月返済額 | 対応する借入額の目安 |
|---|---|
| 8万円 | 約2,834万円 |
| 9万円 | 約3,188万円 |
| 10万円 | 約3,543万円 |
| 11万円 | 約3,897万円 |
| 12万円 | 約4,251万円 |
先ほどのモデル世帯では、家計条件から毎月返済上限を9万円前後としました。この条件なら、対応する借入額は約3,188万円です。
もちろん、約3,188万円なら必ず無理なく返せるという意味ではありません。
金利や返済期間を変えれば借入額は変わりますし、住宅購入時に頭金や諸費用を支払ったあとで手元資金がどれだけ残るかも重要です。さらに教育費が増える時期や収入が減った場合にも返済を続けられるかを確認する必要があります。
それでも、
家計を確認する
→ 家計上の毎月返済上限を出す
→ 金利と返済期間を決める
→ 対応する借入額を逆算する
という順番にすると、「年収から最大でいくら借りられるか」だけを基準にしない住宅予算を作れます。
借入3,000万円と3,500万円と4,000万円を比較する
ここからは年1.0%、35年返済、元利均等返済、ボーナス返済なしを基準ケースとして比較します。
年1.0%は2026年8月時点の住宅ローンを代表する金利ではなく、借入条件による違いを横並びで見るために置いた仮定です。
| 借入額 | 毎月返済額 | 総返済額 | 支払利息 |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 約8.47万円 | 約3,556.8万円 | 約556.8万円 |
| 3,500万円 | 約9.88万円 | 約4,149.6万円 | 約649.6万円 |
| 4,000万円 | 約11.29万円 | 約4,742.4万円 | 約742.4万円 |
3,000万円から3,500万円へ借入額を増やすと、毎月返済額は約1万4,100円増えます。4,000万円まで増やせば、3,000万円の場合との差は月約2万8,200円です。
物件価格を何度も見ていると、500万円という差がだんだん小さく感じられることがあります。
「3,500万円まで出すなら4,000万円でもそれほど変わらないのでは」と思うかもしれません。35年間に分けて返済すると考えることで、一度に500万円を支払う感覚が薄れるからです。
そこで住宅価格ではなく、毎月の暮らしへ数字を戻して考えます。
月約1万4,000円あれば、教育資金の積立を増やしたり、車の買い替えへ備えたりできます。その一方で、500万円多く支払うことで通勤時間を短縮できたり、家族に必要な部屋数を確保できたりするなら、その住環境に価値を感じる家庭もあるでしょう。
住宅ローンのシミュレーションは、借入額をできるだけ小さくするためだけに行うものではありません。
追加で得られる住環境と、その代わりに小さくなる家計の余白を比べるために行います。
借入額ごとの家計余力を比較する
先ほどのモデル世帯で、借入額によって住宅ローン返済後の家計余力がどう変わるのかを確認します。
手取り収入50万円から生活費28万円、教育資金への積立3万円、老後などへの積立4万円、住宅維持費3万円を差し引くと、住宅ローンと家計余力に使える金額は12万円です。
| 借入額 | 毎月返済額 | ローンと家計余力に使える額 | 返済後の家計余力 |
|---|---|---|---|
| 3,000万円 | 約8.47万円 | 12万円 | 約3.53万円 |
| 3,500万円 | 約9.88万円 | 12万円 | 約2.12万円 |
| 4,000万円 | 約11.29万円 | 12万円 | 約0.71万円 |
この家庭では、毎月3万円程度を家計余力として残す前提を置いていました。
3,000万円なら約3万5,300円が残るため、その希望をおおむね満たします。一方、3,500万円では約2万1,200円、4,000万円では約7,100円まで小さくなります。
4,000万円を借りても、モデル上は住宅ローンそのものを支払えるでしょう。
ただし、普段より医療費が増えた月や予定外の家族支出が重なった月には、教育費や老後資金への積立を減らしたり、別に保有している預貯金へ頼ったりする場面が増える可能性があります。
ここに、「払える額」と「家計から考える返せる額」の違いがあります。
もちろん、家計余力が3万円を下回っただけで問題があると断定することはできません。住宅購入後にも十分な手元資金が残っている家庭なら、月2万円程度の余力でも納得できるという可能性があります。
反対に、頭金や諸費用で預貯金が大きく減る家庭では、毎月の家計余力も厚めに残しておきたいと考えるかもしれません。
重要なのは、月々の収支に残す家計余力と、すでに保有している手元資金の両方を見ながら判断することです。
金利条件を0.5ポイントと1ポイント高くして試す
借入額の候補が見えてきたら、次に金利条件を変えて家計を確認します。
低い金利で計算したときには希望する物件を買えそうでも、少し厳しい条件を試すと結果が変わるかもしれません。それを見るのが怖く感じられるのは、「予算を下げなければならない」と知りたくない気持ちがどこかにあるからでしょう。
それでも長期の住宅ローンでは、一つの条件だけで判断しないほうが家計の特徴をつかみやすくなります。
ここでは将来の金利推移を再現するのではなく、3,000万円を35年間借りるとして、全期間を年1.0%・1.5%・2.0%の一定金利と仮定します。
| 金利条件 | 毎月返済額 | 総返済額 | 支払利息 |
|---|---|---|---|
| 1.0% | 約8.47万円 | 約3,556.8万円 | 約556.8万円 |
| 1.5% | 約9.19万円 | 約3,857.9万円 | 約857.9万円 |
| 2.0% | 約9.94万円 | 約4,173.9万円 | 約1,173.9万円 |
年1.0%と年2.0%では、毎月返済額に約1万4,700円の差があります。
これは「将来必ず金利が1ポイント上昇する」という予測ではありません。
現在より厳しい条件を置いた場合にも、教育費や老後資金への積立を続けられるかを見るためのストレステストです。
たとえば金利条件を0.5ポイント高くしただけで、当初残したかった家計余力がほとんどなくなるなら、現在検討している借入額には余裕が少ないという可能性があります。
反対に1ポイント高い条件でも必要な積立と家計余力を維持できるのであれば、条件変化に対する耐久力は比較的大きいと考えられるでしょう。
実際の変動金利型住宅ローンで適用金利や返済額がどのように変化するかは、利用する金融機関や商品条件によって異なります。
未来の金利を当てることより、自分の家計がどの程度の変化に弱いのかを知ることが、この試算の目的です。
住宅ローン20年と35年と40年を比較する
返済期間を変えると、毎月返済額と支払利息の関係も変わります。
ここでは借入3,000万円、年1.0%という同じ条件で、返済期間だけを変えて比較します。
| 返済期間 | 毎月返済額 | 総返済額 | 支払利息 |
|---|---|---|---|
| 20年 | 約13.80万円 | 約3,311.2万円 | 約311.2万円 |
| 35年 | 約8.47万円 | 約3,556.8万円 | 約556.8万円 |
| 40年 | 約7.59万円 | 約3,641.1万円 | 約641.1万円 |
なお、実際に選べる返済期間や適用金利は金融機関や商品によって異なります。ここでの比較は、年1.0%という同じ条件を置き、返済期間だけを変えた場合の違いを見るためのものです。
35年から40年へ延ばすと、毎月返済額は約8,800円減ります。
一方、年1.0%が全期間続く単純モデルでは総返済額が約84万円増え、完済時期も5年遅くなります。
総返済額だけを見れば、できるだけ短く返したほうが有利に感じるでしょう。
ただ、子どもの教育費が重なる時期に月8,000円以上の余白を作り、そのお金を教育資金へ回せるなら、長い返済期間にも家計上の意味があります。反対に40年返済を選ぶことで退職後まで住宅ローンが残るなら、そのことを負担に感じる家庭もあるはずです。
そのため返済期間では、利息だけを見て答えを決めません。
いつ家計に余裕が必要なのかと、何歳までに住宅ローンを終えたいのかを一緒に考えることが重要です。
頭金0円と500万円と1,000万円を比較する
頭金を増やせば借入額が減るため、毎月返済額と支払利息を抑えられます。
借金を少なくできることに安心を感じる人は多いでしょう。ただし、頭金として使った現金は、住宅購入後の生活には使えなくなります。
ここでは3,000万円の住宅を購入し、年1.0%、35年返済という同じ条件で比較します。
| 頭金 | 借入額 | 毎月返済額 | ローン総返済額 | 支払利息 |
|---|---|---|---|---|
| 0円 | 3,000万円 | 約8.47万円 | 約3,556.8万円 | 約556.8万円 |
| 500万円 | 2,500万円 | 約7.06万円 | 約2,964.0万円 | 約464.0万円 |
| 1,000万円 | 2,000万円 | 約5.65万円 | 約2,371.2万円 | 約371.2万円 |
頭金500万円を入れると、頭金0円より毎月返済額は約1万4,100円減ります。1,000万円なら、毎月返済額は約2万8,200円軽くなる計算です。
数字だけを見ると、頭金を多く入れるほうが魅力的に映るでしょう。
しかし、購入前に1,200万円の預貯金を持っている家庭が1,000万円を頭金へ使えば、頭金だけを差し引いた単純計算では200万円が残ります。実際の住宅取得では、仲介手数料や登記関係費用、住宅ローン関連費用などの諸費用も発生するため、それらを見込んだあとに現金がいくら残るのかを確認する必要があります。
さらに引っ越し後に家具や家電をそろえ、数年以内に車の買い替えや子どもの進学が控えているなら、「住宅ローンは減ったのに、手元の現金が少なくて不安」という状態になる可能性があります。
頭金を判断するときには、借入額だけではなく、住宅取得に必要な支払いを終えたあとに手元資金がいくら残るかまで確認してください。
令和8年度税制改正により、住宅ローン減税の適用期限は5年間延長され、入居日の対象期間は2026年1月1日から2030年12月31日までとなっています。ただし、実際に適用を受けられるかや控除内容は、住宅性能や所得などの要件によって異なります。
頭金を増やすか現金を残すかは、支払利息だけで決めるものではありません。
教育費は住宅ローンと重なる時期を見る
教育費について調べると、大きな総額が目に入ることがあります。
住宅ローンが数千万円あり、そこへ教育費まで加わると考えれば、「本当に両立できるのだろうか」と不安になるのも自然でしょう。
ただし、家計で重要なのは教育費の総額だけではありません。
住宅ローンを返している何年目に、教育費の大きな支出が重なるのかを見る必要があります。
文部科学省の令和5年度「子供の学習費調査」は、数値の誤りを受けて2026年1月16日に訂正・差替えされています。現在公表されている訂正版を見ると、幼稚園から高校までの学習費には公立と私立で大きな違いがあります。なお、この調査に大学の費用は含まれていません。
そのため「子ども1人に一律いくら必要」と置くより、大学費用などは別に見積もったうえで、希望する進路と支出が発生する時期を家計へ入れるほうが現実的です。
たとえば現在5歳の子どもがいるなら、大学進学まではまだ十数年あります。
その時間は、大きな出費が来るのを待つだけの期間ではありません。教育費を準備できる期間でもあります。
子どもの年齢を横に並べ、中学校、高校、大学への進学時期を書き込み、その下へ住宅ローン返済、車の買い替え、住宅設備の更新などを重ねてみます。
すると、「この数年間は教育費と住宅関連支出が重なりそうだ」と家計の山場が見えてくるでしょう。
教育費と住宅ローンは総額同士を並べて判断するのではなく、支出が重なる時期に年間収支がどうなるのかを確認することが大切です。
修繕費と固定資産税を住宅費へ入れる
現在の家賃が月10万円で、検討している住宅ローンも月10万円なら、「住居費は今と変わらない」と感じることがあります。
しかし、住宅購入後に必要なのはローン返済だけではありません。
固定資産税や保険料があり、マンションなら管理費や修繕積立金も必要です。戸建てでも外壁、屋根、水回り、給湯設備などを将来修繕するために、自分で資金を準備する必要があります。
新築直後は設備も新しいため、修繕費には現実味がないかもしれません。それでも住宅ローンは35年や40年という長い期間に及ぶため、その途中には設備交換や修理が必要になるという可能性があります。
毎月支払わない費用ほど、普段の家計から見えにくくなります。
たとえば固定資産税などが年間18万円なら、月1万5,000円としてあらかじめ家計へ入れておく方法があります。
住宅購入前に比べたいのは、現在の家賃と住宅ローンだけではありません。
現在の総住居費と住宅購入後の総住居費を比較します。
住宅ローンは予定どおり支払えているのに、購入後に思ったほど貯蓄できないという状態を避けるためにも必要な確認です。
収入が減った場合の家計を試す
共働き家庭では、現在の二人分の収入を前提に住宅予算を考えることがあります。
それ自体は不自然なことではありません。
ただし35年や40年という期間には、育児、介護、転職、休職、働き方の変更などによって世帯収入が変わるという可能性があります。
「この家を買ったら、今と同じ働き方をずっと続けなければならないのでは」と考えると、住宅を持つことへの期待よりも負担感が大きくなる人もいるでしょう。
そこで収入減も、漠然と怖がるのではなく数字へ置き換えます。
現在の手取り収入を10%減らした場合や20%減らした場合を試し、毎月の収支がどの程度変わるか確認してください。
仮に月3万円不足するのであれば、ここで初めて毎月の家計余力だけでなく、別に確保している手元資金も確認します。現在の預貯金で何か月程度補えるのか、一時的に調整できる支出があるのかを考えることで、収入減への対応力が見えてきます。
目標は、どのような収入減が起きても絶対に困らない住宅ローンを作ることではありません。
未来のすべてを予測することはできないため、むしろ「自分たちの家計は何が起きると苦しくなりやすいのか」を知ることが重要です。
不安の正体が「将来がわからない」から「手取りがこの程度減ると毎月3万円不足し、手元資金なら何か月対応できる」へ変われば、住宅予算や残しておきたい現金も考えやすくなるでしょう。
我が家の住宅ローン返済計画を決める手順
ここまでの内容は、一つの判断手順へまとめられます。
最初に返済負担率や金融機関の借入可能額を確認します。ただし、そこで住宅予算を決めるのではなく、自分たちの手取り収入と支出へ戻ります。
生活費、教育費や老後への積立、住宅維持費を差し引き、さらに毎月残しておきたい家計余力を自分で置けば、家計上の毎月返済上限を計算できます。
その返済額を住宅ローンシミュレーターへ入力し、金利と返済期間から借入額を逆算します。
そこから借入額を500万円増減させ、金利条件を0.5ポイントや1ポイント高くした場合、返済期間を変えた場合、頭金を増やした場合などを確認します。さらに教育費が重なる時期や収入減も加え、どの条件で家計が最も苦しくなりやすいのかを見ていきます。
このとき、毎月の家計余力だけでなく住宅購入後に残る手元資金も一緒に確認することがポイントです。
たとえば家計上の毎月返済上限を9万円として約3,188万円という借入額が出ても、必ずその金額以下でなければならないわけではありません。
3,500万円へ増やすと家計余力が月2万円程度になるとしても、希望する立地や間取りに十分な価値を感じ、住宅購入後にも多くの手元資金が残るなら、その選択に納得できる家庭もあるでしょう。
反対に3,000万円へ抑えることで毎月3万円以上の余白を残し、そのお金を教育資金や将来の選択肢へ回したいと考える家庭もあります。
答えは家庭ごとに違って構いません。
家計から返済額の基準を作り、借入額へ変換し、条件を動かした結果を見ながら自分たちが納得できる住宅予算へ調整する。
ここまでできれば、「審査には通りそうだけれど本当に大丈夫だろうか」という不安に対して、自分たちの数字を使って考えられるようになります。
FP相談前に準備する家計の数字
自分たちだけで住宅予算を決めることに不安があれば、ファイナンシャルプランナーへ相談する方法もあります。
ただし、「年収600万円ならいくら借りられますか」と尋ねるだけでは、借入可能額の確認が中心になる場合があります。
住宅購入後の生活まで含めて相談したいなら、世帯年収と手取り収入、毎月の生活費、現在の預貯金、ほかの借入れ、頭金予定額、住宅取得時の諸費用、教育方針、大きな将来支出、住宅維持費、退職予定時期、そして毎月どの程度の家計余力を残したいのかを整理しておくと話が具体的になります。
また、現在の預貯金のうち「住宅購入に使うお金」と「購入後も手元資金として残すお金」を分けておくと、頭金を増やした場合の影響も比較しやすくなります。
将来の予定が決まっていなくても問題ありません。
「大学は私立になる可能性がある」「数年後に配偶者が勤務時間を減らすかもしれない」といった不確定な予定も、そのまま複数ケースを作るための材料になります。
日本FP協会では、現在の収支を整理し、ライフイベント表からキャッシュフロー表へつなげる方法を案内しています。キャッシュフロー表は20~30年分を一つの目安として作り、状況に応じて見直すという考え方です。
FPへ相談する目的は、人生の正解を決めてもらうことではありません。
自分たちだけでは輪郭をつかみにくかった不安を数字へ置き換え、住宅価格や返済期間など、どの条件を調整すれば暮らしを維持しやすくなるのかを考えるために活用します。
住宅ローン返済シミュレーションのよくある質問
- 住宅ローンはいくらまでなら無理なく返せる
-
年収だけで一律に決めることはできません。
手取り収入から生活費、教育費や老後資金への積立、住宅維持費、自分たちが毎月残したい家計余力を差し引き、家計上の毎月返済上限を計算します。
そのうえで金利と返済期間を置き、借入額へ逆算する方法が実用的です。
- 返済負担率は何%までなら大丈夫
-
何%以下なら必ず無理なく返せるという公的な基準はありません。
【フラット35】では2026年8月13日時点で、年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下という総返済負担率の申込基準があります。
これは融資の利用条件であり、生活上の余裕は手取り収入と実際の支出から別に確認する必要があります。
- 月9万円返済する場合はいくら借りられる
-
金利と返済期間によって変わります。
年1.0%、35年返済、元利均等返済、ボーナス返済なしという単純モデルでは、月9万円に対応する借入額は約3,188万円です。
ただし、この金額までなら必ず問題ないという意味ではありません。返済後に自分たちが残したい家計余力を確保できるか、住宅購入後に十分な手元資金が残るかまで確認してください。
- 家計余力と生活防衛資金は同じもの
-
この記事では別のものとして考えます。
家計余力は住宅ローンを払ったあとにも毎月の収支へ残しておく余白です。一方、生活防衛資金などの手元資金は、休職や大きな臨時支出などが起きたときに備えて保有する預貯金を指します。
どちらか一方だけではなく、月々の収支と手元資金の両方を見ることが大切です。
- 金利が1%高い条件では返済額はいくら変わる
-
3,000万円を35年間借りる単純比較では、年1.0%なら月約8.47万円、年2.0%なら月約9.94万円となり、差は月約1.47万円です。
これは途中で金利が1ポイント上昇する住宅ローンを再現したものではなく、それぞれの金利が全期間一定と仮定した比較です。
- 頭金を増やすほうがよい
-
頭金を増やせば借入額と利息負担を減らせますが、住宅購入後に残る現金も少なくなります。
頭金だけでなく仲介手数料や登記関係費用、住宅ローン関連費用なども見込み、そのあとに生活防衛資金や教育資金を十分残せるか確認する必要があります。
- 35年ローンと40年ローンはどちらがよい
-
同じ借入額と金利なら、40年返済は毎月返済額を抑えやすい一方、総利息が増えやすく完済時期も遅くなります。
実際に利用できる返済期間や適用金利は金融機関や商品によって異なるため、教育費が重なる時期の家計余力と完済予定年齢の両方を確認して判断しましょう。
- 住宅ローンを組んだあとも貯蓄は必要
-
住宅ローンを支払えていても、教育費、住宅修繕、老後資金などは別に準備する必要があります。
さらに、毎月の収支には家計余力を残し、まとまった支出や一時的な収入減へ備える手元資金も確保しておきたいところです。
住宅ローンを返済することで毎月の積立や家計余力がほとんど残らず、さらに住宅購入後の預貯金も少なくなる場合には、借入額や購入予算を改めて検討する余地があります。
住宅ローンの返せる額を判断するまとめ
住宅ローンの返せる額は、金融機関から提示された最大の借入可能額だけでは決まりません。
まず手取り収入から生活費、教育費や老後資金への積立、住宅維持費、自分たちが毎月残したい家計余力を差し引き、家計上の毎月返済上限を計算します。
次に、その返済額を金利と返済期間から借入額へ変換してください。
さらに借入額を増減し、金利条件、返済期間、頭金、教育費、収入減などを変えた場合にも、生活と貯蓄を維持できるか確認します。
その際には、毎月の収支に残す家計余力と、まとまった支出や一時的な収入減へ備える手元資金を分けて考えることも重要です。
家を買ったあとにも、子どもの希望を応援したい時期や、働き方を変えたい日が来るかもしれません。家族で出かけたり、自分の楽しみにお金を使ったりすることも、暮らしの一部です。
家を買うために住宅ローンを組むのであって、住宅ローンを返すためだけに暮らすわけではありません。
返済できる最大額ではなく、返済しながら生活と貯蓄を続けられ、必要な手元資金も残せる金額を選ぶことが、自分たちにとっての「返せる額」を見つける基本です。