社会・経済

人手不足でも回る職場の作り方 人を増やす前に見直したい7つの仕組み

求人を出しても応募が集まらず、ようやく採用できても長く続かない。そんな状態が重なると、残った社員へ仕事が集まり、経営者や管理職は「もう一人いれば何とかなるのに」と感じるようになります。

その感覚は自然です。人手不足そのものは現実の経営課題であり、実際に採用しなければ事業を維持できない会社もあります。

ただし、人手不足への対応では、最初に一つだけ分けて考える必要があります。

本当に人数が足りない仕事と、仕事の仕組みを変えることで減らせる負担は同じではありません。

誰も使っていない資料を作り続け、承認を待つために仕事が止まり、同じ情報を複数の場所へ入力しているのであれば、人を増やしても忙しさの一部は残ります。

さらに、判断が必要になるたびに一人のベテラン社員へ質問が集まっている職場では、新しい社員を採用したことで、そのベテラン社員に教育や確認の仕事まで増えることがあります。

すると現場からは、「採用したのに楽にならない」「やはり経験者でなければ無理だった」という声が出るかもしれません。

人手不足でも回る職場づくりは、採用を否定する話ではありません。

採用を考える前に、今いる人の時間が何に使われているのかを分解し、本当に人を増やす必要がある仕事を見極めることが出発点です。

この記事では、そのための方法を七つの仕組みに整理します。

業務を見える化し、不要な仕事を減らします。その後、属人化している仕事を見つけ、手順と判断基準を共有し、副担当者が代われる状態を作ります。

残った反復作業には自動化やAI、ITを検討し、最後に改善前後の変化を確かめながら仕事を定期的に見直します。

すべてを一度に変える必要はありません。

読み終えたとき、自社で「まず一つ変える仕事」を決められれば十分です。

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目次

人手不足対策では採用と業務改善を分けて考える

朝から顧客対応が重なり、営業担当者は作りかけの見積書へなかなか戻れません。事務担当者も受注処理を進めていますが、途中で確認依頼や急ぎの案件が入り、そのたびに手を止めています。

少し離れた席では、若手社員がベテラン社員へ声をかけます。

「このお客様だけ、前回と条件が違いましたよね」

聞かれた側は、自分の仕事を中断しながら過去の経緯を思い出します。

本人も、本当は目の前の仕事へ集中したいでしょう。それでも「自分が答えなければ先へ進まない」とわかっているため、質問を後回しにはできません。

こうした状態が続けば、誰も怠けていないのに仕事が終わらなくなります。

管理職から見ても、社員は十分に働いています。だからこそ「仕事の仕組みに問題がある」と考えるより、「人数が足りない」と考えるほうが自然なのです。

実際、その判断が正しい場合もあります。

一方で、一人しか例外処理を判断できない仕事や、同じ情報を二度三度と入力している作業まで人数不足として扱うと、本当の原因が見えにくくなります。

新しい社員を一人採用しても、その人は現在の仕事の仕組みの中へ入ります。

ところが、忙しい職場では新人を教える時間も不足しています。

「未経験の人を一から育てる余裕はない。経験者を採ってほしい」

現場からそういう声が出るのは無理もありません。

即戦力なら教育負担が小さく、早く一人で仕事をしてくれるように感じるからです。

ただ、求める経験が増えるほど応募できる人は少なくなります。採用できなければ既存社員の負担が増え、さらに教育へ時間を使えなくなるという循環に入る可能性があります。

そこで採用条件についても、一度問い直します。

その経験は本当に入社した日に必要なのでしょうか。それとも、入社後に教える仕組みがないために必要だと考えているのでしょうか。

もちろん、安全上の理由から一定の技能や実務経験が必要な仕事や、業務に就くための資格・免許が必要な仕事もあります。

それでも「ベテランしかできない」とされている業務の中には、実際には「ほかの社員が覚えられる形へ整理されていない仕事」が混ざっているかもしれません。

採用しなければ解決できない不足と、仕事の設計によって増幅されている忙しさを分ける。

そこから職場改善が始まります。

仕組み1 業務を見える化する

忙しいという感覚を仕事の流れへ変える

「一番時間がかかっている仕事は何ですか」と聞かれても、忙しい社員ほど答えにくいことがあります。

一つの仕事を最初から最後まで続けられず、途中で別の依頼が入るからです。

顧客へ返信しているところに承認依頼が届き、必要な資料を探している途中で急ぎの案件が入ります。夕方になって机を見ると、朝から取りかかっていた仕事がまだ終わっていません。

本人には、「今日はずっと働いていたのに、なぜこんなに残っているのだろう」という疲れだけが残ります。

そこで最初に行うのが、業務の見える化です。

ただし、「営業」「経理」「総務」のような大きな業務名だけを書き出しても、改善場所は見つけにくいでしょう。

請求業務なら、売上情報を確認し、金額を照合して請求書を作成し、承認を受け、顧客へ送付した後に記録を保存するところまで分けます。

さらに、実際に手を動かしている時間以外も確認します。

請求書そのものは15分で作れていても、承認者の返答を10分待ち、契約書を探すために5分使い、入力ミスの修正へさらに10分かかっているかもしれません。

この場合、改善対象は入力速度ではありません。

承認の流れや資料管理、入力方法を見直すほうが効果的です。

忙しさは、社員が仕事をする速度だけから生まれるわけではありません。

仕事が止まる仕組みそのものが、人の時間を消費している場合があります。

最初は一週間程度から確認する

業務の見える化を完璧に行おうとすると、それ自体が新しい仕事になります。

すでに余裕のない職場で細かな記録を求めれば、「仕事を減らすために、また仕事が増えた」と感じる社員が出ても不思議ではありません。

そこで、最初は一週間程度から始めます。

主要な仕事について、誰が担当しているのか、どの程度の頻度で発生するのか、実際の作業と待ち時間を含めてどのくらい時間を使っているのかを確認します。

「受注処理40分」とまとめるのではなく、実入力20分、確認待ち10分、修正10分というように分けると、どこへ手を入れるべきかが見えてきます。

もちろん、一週間では月末業務や繁忙期だけの仕事を把握できません。

最初の記録は、すべてを調査し終えるためのものではなく、改善候補を見つける入口です。月次業務や季節によって大きく変わる仕事は、その後に補います。

数字だけでは見えない負担も確認する

改善前には、処理時間や残業の状況だけでなく、ミスや確認がどの程度発生しているかも見ておきます。

特定の社員へ質問が集中しているなら、その時間も職場全体で消費している人手の一部です。

さらに、担当者が休んだ場合に別の人が代われるかや、本人がどの業務を特に重く感じているかも確認します。

たとえば、作業時間だけを見ると短いのに、「この処理が来ると毎回緊張する」と感じている社員がいるかもしれません。

理由を聞くと、例外時の判断基準がなく、間違えれば顧客へ迷惑をかけるのではないかと不安を抱えていることがあります。

この場合、改善対象は処理時間より判断の仕組みです。

「平均40分かかっている」という事実と、「失敗するのが怖い」という本人の感覚を分けて確認すると、何を変えるべきかが見えやすくなります。

仕組み2 やらなくていい仕事を減らす

速くする前にその仕事が必要か考える

業務を見える化すると、「この作業をもっと速くできないか」と考えたくなります。

しかし、効率化より先に確認したいことがあります。

その仕事は本当に残す必要があるでしょうか。

毎週60分かけて作成している報告資料を30分で作れるようにすれば、30分の削減になります。

一方、その資料を誰も使っていないのであれば、作成そのものをやめることで60分すべてを別の仕事へ戻せます。

職場には、始めた当時には理由があったものの、今では目的が薄れている仕事があります。

前任の管理職が必要としていた集計表を、その人が異動した後も作っているかもしれません。以前のシステムでは必要だった確認作業が、新しいシステムになった後も慣習として残る場合もあります。

現場へ理由を尋ねると、「昔からやっているので」と返ってくることがあります。

本人が考えていないとは限りません。

むしろ、「自分の判断で止めて、後から必要だったと言われたら困る」と感じている可能性があります。

必要性がわからなくても、やめる責任を負うより続けるほうが安全なのです。

だから、不要業務を減らす判断を現場だけへ押し付けてはいけません。

管理職も「これは止めてよい」と責任を持つ必要があります。

ECRSを参考に仕事を整理する

業務改善ではECRSという考え方があります。

ECRSは、排除を意味するEliminate、結合を意味するCombine、再配置を意味するRearrange、簡素化を意味するSimplifyの四つの視点で仕事を見直す方法です。

この記事ではECRSそのものを独自解釈するのではなく、その発想を参考にしながら、現場で判断しやすいよう「やめる」「減らす」「任せる」「自動化する」という四つに整理します。

分類自社への問い具体例
やめる その仕事そのものが必要か 誰も利用していない報告書をなくす
減らす 回数や工程を少なくできないか 承認回数や入力項目を減らす
任せる 現在の担当者でなければできないか ベテラン社員の定型事務を別担当へ移す
自動化する 人が何度も繰り返す必要があるか 転記や定型集計を仕組みへ移す

ここで最初に見るのは「やめる」と「減らす」です。

不要な仕事を残したまま外注したりシステム化したりすると、必要のない作業へ費用を払い続けることになりかねません。

まず仕事そのものを軽くします。

やめるのが怖ければ試験的に止める

長年続けてきた仕事ほど、廃止することに不安が伴います。

その場合、最初から永久廃止にする必要はありません。

たとえば一か月だけ停止し、誰かが困るのか、業務に支障が出るのかを確認します。

問題がなければ正式にやめる判断がしやすくなり、必要性が見つかった場合は戻せます。

改善では、大きな決断を一度で正解にする必要はありません。

小さく試し、結果を見ながら決めます。

仕組み3 特定の人しかできない仕事を洗い出す

その人が一週間休んだら何が止まるか

仕事のできる人には、自然と依頼が集まります。

顧客の事情をよく知り、判断が速く、問題が起きても何とかしてくれるため、周囲からするとその人へ聞くのが一番早いからです。

本人にも事情があります。

「忙しい相手へ一から説明するより、自分でやったほうが早い」

そう考えて仕事を片付けているうちに、手順だけでなく判断基準まで一人の頭の中へ蓄積されます。

問題は、その人が休んだ日に表面化します。

見積価格を決められない。

特定の顧客へどこまで対応してよいかわからない。

機械の設定値は残っているものの、状況に応じてどこまで調整するのか説明できる人がいない。

こうした仕事があるなら、属人化している可能性があります。

そこで使いたい問いは一つです。

「その人が明日から一週間休んだら何が止まるか」

属人化という言葉を考えるより、この問いのほうが自社の危険な仕事を見つけやすくなります。

影響の大きな仕事から見る

属人化している仕事をすべて同時に改善する必要はありません。

担当者が不在になると業務そのものが止まり、顧客や売上へ直接影響する仕事は優先して確認します。

一方、多少遅れても別の人が応急対応できる仕事なら、優先順位を下げられるでしょう。

確認項目内容
業務名何の仕事か
主担当者誰へ集中しているか
属人化レベル高 中 低
不在時の影響顧客や他部署へ何が起きるか
判断基準本人だけが知っていることは何か
代替方法何を整えれば他の人が対応できるか

ここで注意したいのが、マニュアルの有無だけで判断しないことです。

操作方法が書かれていても、値引きできる範囲や異常時の停止条件を一人しか判断できないなら、その仕事はまだ人へ依存しています。

属人化を本人の責任だけにしない

属人化という言葉には、「本人が仕事を抱え込んでいる」という印象があります。

実際に仕事を渡したがらない人もいるでしょう。

ただし、その理由まで見なければ改善しません。

会社が引き継ぎ時間を用意してこなかったのかもしれません。他の人へ任せて失敗したとき、自分が責められると感じている可能性もあります。

長年頼られてきた人にとっては、自分にしかできない仕事が「会社で必要とされている理由」になっている場合もあります。

そこへ突然、「属人化は問題だから全部共有してください」と言われれば、自分の価値を否定されたように感じても不思議ではありません。

だから、最初からすべてを手放してもらおうとしません。

「この仕事だけ一緒に整理したい」と伝え、本人が何を見て判断しているのかを聞きます。

その人の価値を減らすのではなく、経験を会社全体で使える知識へ広げていくという考え方が必要です。

仕組み4 手順と判断基準を標準化する

マニュアルを作ることを目的にしない

属人化した仕事を見つけたら、次に標準化します。

ここで「マニュアルを作れば解決する」と考えると、分厚い資料だけが残ることがあります。

現場では今すぐ答えを知りたいのに、必要な情報が何ページ目にあるのかわかりません。

やがて社員は、「読むより○○さんへ聞いたほうが早い」と考えるようになります。

それでは、せっかくマニュアルを作っても人への依存は変わりません。

標準化の目的は、文書を完成させることではなく、担当者が変わっても必要な品質で仕事を進められる状態を作ることです。

手順だけでなく判断条件を残す

たとえば請求業務について、「金額を確認して送付する」と書くだけでは通常時しか対応できません。

現場で迷うのは、いつもと違うことが起きたときです。

契約書と請求額が違う場合はどうするのか。

値引きが一定の範囲を超えた場合は誰へ確認するのか。

送付先が以前の情報と違う場合は何を基準にするのか。

こうした条件まで残します。

マニュアルがあるのにベテラン社員への質問が減らないなら、足りないのは操作方法ではなく判断条件かもしれません。

社員がどのような質問をしているかを記録すると、標準化すべき場所が見つかります。

良いマニュアルは迷ったときに使える

比較項目使われにくいマニュアル使われるマニュアル
構成長い説明が続く実際の作業順で探せる
判断条件適切に対応するなど曖昧条件と対応方法が具体的
表現文章だけに頼る必要に応じて画面や写真を使う
例外通常時しか書かれていないよくある例外も確認できる
更新作成後に放置される現場で更新できる
利用読むための資料作業時に確認できる

仕事によっては、文章より写真や短い動画のほうが伝わる場合があります。

逆に、簡単なチェックリストだけで十分な仕事もあるでしょう。

形式を先に決めず、迷った人が次の行動を決められるかで判断します。

仕組み5 誰かが休んでも代われる体制を作る

読んだ人ではなく実際に代われる人を作る

標準化した後は、二人目が実際に仕事をできる状態へ進みます。

すべての社員にすべての仕事を覚えてもらう必要はありません。

それでは教育する側の負担が増え、改善活動そのものが新しい仕事になってしまいます。

まず、止まると困る重要業務を選びます。

主担当者と副担当者を決め、副担当者にも実際の作業を経験してもらいます。

ここで「マニュアルを読んだから大丈夫」と考えないことが大切です。

理解したことと、一人で作業できることには差があります。

最初は主担当者が作業しながら説明し、次は副担当者が実際に手を動かします。その後、副担当者だけで一通り進めてもらい、途中で迷った場所があればマニュアルを修正します。

質問が出たことを教育の失敗と考える必要はありません。

そこは、まだ会社の仕組みが人の経験に頼っていた場所です。

スキルマップで代替できる人を確認する

副担当者を育てる際には、たとえば次のような四段階で対応可能な業務を整理できます。

レベル状態
Level 1未経験または一人では対応できない
Level 2手順や指示があれば対応できる
Level 3通常業務なら一人で正確に対応できる
Level 4他者への指導や例外判断もできる

これは絶対的な基準ではなく、自社でスキル状況を見えるようにするための整理例です。

重要な業務についてLevel 3以上の社員が一人しかいなければ、その仕事はまだ一人へ依存しています。

そこで、Level 2の社員をもう一人Level 3へ近づけます。

全員を熟練者にする必要はありません。

止まると困る仕事に二人目を作ることが目的です。

休めない心理も仕組みの問題として考える

代わりがいない職場では、本人も簡単には休めません。

体調が悪くても、「今日休んだら誰も処理できない」と考えて出勤してしまう人がいるかもしれません。

周囲から見れば責任感の強い社員でしょう。

しかし本人は、ずっと「自分が抜けられない」という重さを抱えています。

副担当者が実際に仕事をできるようになれば、「今日は任せても大丈夫」と思えるようになります。

人手不足でも回る職場とは、誰も休まないことで成り立つ職場ではありません。

誰かが休んでも必要な仕事を続けられる職場です。

仕組み6 残った反復作業を自動化する

AIやITツールを業務整理より先に決めない

不要な仕事を減らし、残す仕事の手順を整えた後で、自動化を考えます。

人手不足が続いていると、「便利なシステムを導入すれば一気に楽になるのではないか」と期待したくなるのも自然です。

新しいAIやITサービスを見ると、今の苦しさから抜け出せるように感じることもあります。

しかし、仕事が整理されていない状態で導入すると、非効率な仕事をそのままデジタル化する場合があります。

たとえば五段階の紙承認を、そのまま電子承認へ変更したとします。

紙を運ぶ手間は減ります。

それでも、本当に五人の承認が必要なのかという問題は残ります。

AIやITは最後にしか使えないわけではありません。

業務改善とシステム検討を並行する会社もあるでしょう。

それでも、導入する道具を仕事の整理より先に決めないことが大切です。

小さな反復作業ほど総時間で見る

自動化候補になりやすいのは、転記や集計、定型通知などです。

一回5分程度の作業なら、本人も「これくらいなら自分でやればいい」と感じるでしょう。

しかし、一日に20回行えば100分になり、月20営業日なら約33時間になります。

反復作業は、一回にかかる時間だけではなく、発生回数を掛け合わせて判断します。

受注内容を別のシステムへ何度も入力しているなら、データ連携できないか確認します。

複数部署の数字を毎月手作業で集計しているなら、入力段階から同じ場所へ集められないかを考えます。

決まった条件で送る期限通知や完了連絡なども、自動化候補になるでしょう。

ここでの自動化は人の時間を戻すために使う

自動化の目的は企業によって異なります。

必要な採用数を抑えたい会社もあれば、人員を別の業務へ再配置したい会社もあります。

そのうえで、この記事では自動化を単純な人員削減から考えません。

人が毎回判断する必要のない反復作業を減らし、顧客対応や教育、改善活動などへ時間を戻す手段として考えます。

この目的を共有しないまま「自動化を進める」とだけ伝えれば、社員が「自分の仕事がなくなるのではないか」と不安になる可能性があります。

不安を抱えたままでは、現場から必要な情報も出にくくなるでしょう。

何を減らし、その時間を何へ使いたいのかまで説明することが重要です。

AIへ任せる範囲は失敗時の影響から考える

AIが技術的にできる仕事と、その仕事をAIへ任せてよいかどうかは同じではありません。

文章の形式を整えたり、一定条件で情報を分類したりする仕事であれば、間違いを見つけやすく、元へ戻しやすい場合があります。

一方、誤りによって大きな損失が発生したり、顧客の権利や会社の信用へ影響したりする仕事では、人による確認を残すほうが適切です。

自動化するときは「できるか」だけではなく、間違った場合に何が起きるのか、誤りへ気付けるか、修正できるかまで考えます。

仕組み7 Before Afterを測り定期的に仕事を見直す

やったことではなく変わったことを見る

マニュアルを作ったり、副担当者を決めたり、新しいシステムを導入したりすると、それだけで改善したように感じることがあります。

しかし、本当に確認したいのは実施内容ではありません。

職場がどう変わったかです。

以前より処理時間が短くなったのか、ミスや確認が減ったのか、特定社員への質問が少なくなったのかを確認します。

さらに、主担当者が休んだときに副担当者だけで仕事を進められるようになったかや、本人が以前より負担を軽く感じているかも見ておきます。

数字が良くなっていても、操作が複雑になり精神的な負担が増えているなら、新しい問題が生まれています。

反対に、時間削減は小さくても「安心して休めるようになった」のであれば、職場にとっては大きな変化です。

改善範囲は結果を追える大きさにする

改善効果を確認するには、何が結果を変えたのか追える範囲に変更を絞ります。

ただし、必ず一つだけ変更する必要はありません。

関連する工程を一緒に変えなければ意味がない場合もあります。

請求書の形式、担当者、承認方法、システムをすべて同時に全面変更すると、結果が良くても何が効いたのかわからなくなります。

一方、承認回数を減らし、それに合わせて承認条件を整理するような変更であれば、一つの改善として結果を確認できます。

重要なのは、後から「何を変えたからどうなったのか」を説明できる範囲にすることです。

月に一度やめられる仕事を確認する

一度仕事を整理しても、業務は少しずつ増えていきます。

トラブルが起きれば確認項目が追加され、新しい顧客へ対応するため報告資料が増えることもあります。

追加された当時には、それぞれ理由があります。

問題は、その理由がなくなった後も仕事だけが残ることです。

そこで月に一度、「今月一つだけやめるなら何か」を確認します。

新しい改善会議を作る必要はありません。

既存の打ち合わせの一部で確認し、改善案が出たら担当者と期限を決めます。

新しいことを始めた人だけではなく、不要な仕事をなくして時間を生み出した人も評価される職場になれば、仕事を増やすだけではない改善が続きやすくなります。

改善前後の変化 やったことではなく 変わったことを見る 処理時間 ミスや確認 特定社員への質問
職場がどう変わったかです。

公的支援も職場改善の選択肢になる

業務を見直したいと思っても、「社内だけでは、どこから確認すればよいかわからない」と感じる経営者もいるでしょう。

特に中小企業では、業務改善だけを担当する人を置くことが難しい場合があります。

こうしたときには、中小企業や小規模事業者の生産性向上を支援する公的な相談窓口があります。

現場改善を一緒に考える支援のほか、省力化設備やデジタル化、AI・IT活用などを後押しする制度が用意されている時期もあります。

ここで制度の細かな条件まで追う必要はありません。

大切なのは、「自社だけですべてを考えなければならないわけではない」と知っておくことです。

支援制度があるから設備を導入するのではなく、まず自社の課題を確認します。

その課題を改善するために外部の知見や設備、システムが必要になったとき、公的な相談窓口や支援制度も選択肢として確認します。

制度名や対象条件は変わるため、具体的に利用するときは、その時点の公式情報を確認してください。

7つの仕組みを使ったBefore After例

従業員15人ほどのサービス会社を考えてみます。

事務担当者の残業が続き、営業部門からも「処理が追いついていない」という声が出ていました。

社長は新しい事務社員を一人採用しようと考えます。

ところが募集を出しても応募が集まりません。

「給与条件をもっと上げなければ難しいのか」

そう考え始めたところで、その前に一週間だけ事務担当者の仕事を確認してみることにしました。

すると、営業担当者が入力した受注情報を、事務担当者が別の管理表へ転記していることがわかりました。

週次会議の資料作成にも時間を使っていましたが、実際の会議では一部しか利用されていません。

さらに請求処理を確認すると、操作自体は別の社員でもできるものの、通常と条件が違う顧客についてはベテラン社員しか判断できない状態でした。

そこで最初に、仕事の流れと時間を見えるようにします。

次に、利用されていない会議資料を試験的に止めました。

営業から事務へ渡す情報の形式もそろえます。

請求業務では、操作手順だけでなく「どの条件なら上長へ確認するか」まで記録しました。

副担当者にも実際の請求処理を経験してもらいます。

そこまで整理した後で、最後まで残った受注情報の転記についてデータ連携できないかを検討しました。

改善後には、処理時間だけではなく、入力ミスやベテラン社員への質問が減ったか、副担当者だけでも請求処理を進められるかを確認します。

この会社が今後一切採用しなくてよくなるわけではありません。

事業が成長すれば新しい社員が必要になるでしょう。

ただ、「人が足りない」と一つにまとめていた問題の中に、やめられる仕事と共有できる判断、自動化できる作業が混ざっていたことはわかりました。

ここまで整理した後なら、新しい社員を採用するとしても、何を任せるための採用なのかが以前より明確になります。

採用と業務改善は対立するものではありません。

仕事を整えることで、採用判断そのものも具体的になるのです。

1週間で始める人手不足の職場改善

七つの仕組みを読んで、「必要なのはわかるが、そんな改善をする余裕がない」と感じる人もいるでしょう。

忙しい職場では、その感覚こそ自然です。

だから、最初の一週間で会社全体を変えようとしません。

まず経営者や管理職から、「もっと効率よく働いてほしい」という話ではなく、「今いる社員の負担を減らすために仕事そのものを見直したい」と目的を共有します。

この説明を省くと、現場は「効率化という名前で、また新しい管理を増やされるのではないか」と警戒するかもしれません。

次に、一人につき主要な仕事を数個だけ書き出し、作業時間や待ち時間を確認します。

その中から、なくせそうな仕事を一つ選びます。

さらに、一人が休んだら止まる仕事を一つ探し、簡単な手順と判断基準を残します。

別の社員がその内容を使って実際に仕事を行い、迷った場所があれば修正します。

一週間で大きな削減効果を出す必要はありません。

「会議資料を一つやめられた」「副担当者が一つの仕事を経験できた」といった、小さくても実際に起きた変化を作ります。

改善を続けるために必要なのは、最初から完璧な仕組みではありません。

「自分たちでも仕事の進め方を変えられる」という実感です。

人手不足でも回る職場チェックリスト

次のチェックリストは、会社に点数を付けるためのものではありません。

チェックが付かなかった項目から、最初に見直す仕事を一つ選ぶために使います。

仕組み 確認内容 判定
1 見える化 主要業務とおおよその所要時間を把握している
1 見える化 待ち時間や資料探索や手戻りまで確認している
2 不要業務 利用されていない資料や会議を見直している
2 不要業務 回数や承認工程を減らせないか確認している
3 属人化 一人が休むと止まる仕事を把握している
4 標準化 手順だけでなく判断基準も共有している
5 副担当 重要業務に二人目の担当者がいる
5 副担当 二人目が実際にその仕事を経験している
6 自動化 転記や集計などの反復作業を把握している
6 自動化 ツールを決める前に対象業務を整理している
7 効果測定 改善前後の変化を確認している
7 継続改善 定期的にやめられる仕事を確認している

問題が見つかったら、改善内容だけではなく担当者と期限も決めます。

改善対象次に試すこと担当者期限結果
記入例 請求処理を一人しかできない 副担当者が一度実際に処理する ○○ ○月末 未確認

十個の問題を見つけて止まるより、一つを実際に変えるほうが職場は前へ進みます。

人手不足の職場改善でよくある質問

人手不足の職場では何から改善すればいいですか

最初は業務の見える化から始めます。

誰が何を担当しているかだけではなく、実際の作業時間や承認待ち、資料探索、再入力、修正なども確認します。

その中から、時間がかかる仕事や頻度の高い仕事、一人しかできない仕事、なくせそうな業務を探してください。

改善候補が複数見つかっても、一度に取り組む必要はありません。

属人化している仕事はどう見つけますか

「主担当者が一週間休んだら何が止まるか」と考える方法がわかりやすいでしょう。

顧客への回答ができない、見積価格を決められない、例外処理が止まるといった具体的な影響が出る業務から確認します。

操作方法だけでなく、本人しか知らない判断条件がないかまで見ることが重要です。

マニュアルを作れば人手不足は改善しますか

マニュアルだけで人手不足そのものが解消するわけではありません。

ただし、特定社員への依存を減らし、新人教育や引き継ぎを進めやすくする効果は期待できます。

文章量を増やすより、迷った人が次の行動を決められる内容にすることが大切です。

小さな会社でも業務の標準化は必要ですか

小さな会社ほど、一人が休んだときの影響が大きくなる場合があります。

すべての仕事を細かく統一する必要はありません。

止まった場合に顧客や売上へ影響する重要業務から、手順と判断基準を共有するとよいでしょう。

その後、副担当者が実際に経験するところまで進めます。

AIやDXはどの段階で導入すべきですか

業務整理より先に導入するツールを決めないことが基本です。

現在の仕事を見える化し、不要な工程を減らした後で、残った反復作業へAIやITを使います。

業務改善とシステム検討を並行する場合はありますが、「便利そうだから」という理由だけでツールを先に選ぶと、非効率な仕事をそのまま残す可能性があります。

ベテラン社員しかできない仕事はどう減らしますか

最初に、ベテラン社員の仕事を定型部分と高度な判断部分へ分けます。

定型部分は手順化し、別の社員が実際に経験できる状態を作ります。

判断部分については、「なぜその判断をしたのか」を聞き、条件や数値、過去事例へ分けながら言葉にしていきます。

本人の経験をすべて一度に文章へ変える必要はありません。

質問が多い仕事や、休まれると止まる仕事から始めるほうが現実的です。

まとめ 最初に変える一仕事を決める

人手不足を感じたとき、採用を考えること自体は間違いではありません。

ただ、その前に一度だけ、今いる社員の時間が何に使われているのかを見てください。

本当に人数が足りない仕事もあれば、仕事の進め方を変えることで負担を軽くできる部分もあります。

ここで全部を見直そうとすると、また改善そのものが大きな仕事になります。

最初に選ぶのは一つだけです。

「その人が一週間休んだら止まる仕事は何か」

まず、この問いから始めてみてください。

そこで一つ仕事が見つかったら、なぜその人しかできないのかを確認します。

手順がないのか、判断基準が共有されていないのか、それとも副担当者が実際に経験する機会がなかったのか。

理由が見えたら、小さく一つ変えます。

そして結果を確かめます。

最初に変える一仕事 最初に変える一仕事を決める その人が一週間休んだら 止まる仕事は何か なぜその人しかできないのか 手順がないのか 判断基準が共有されて いないのか
理由が見えたら、小さく一つ変えます。

その一仕事を改善する過程で、「人が足りない」と思っていた問題の中に、自分たちで変えられる部分があることに気付くかもしれません。

反対に、仕事を整理してもなお人が足りないのであれば、その時点で採用の必要性は以前より明確になります。

人手不足でも回る職場とは、少ない人数へ我慢を求める職場ではありません。

誰か一人の頑張りに頼らず、人の時間をどの仕事へ使うのかを会社自身が考え続けられる職場です。

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